(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
連続鋳造中において、鋳片の中心固相率が0.8以上であって完全凝固後を含む位置の前記鋳片を、少なくとも1対の圧下ロールによって圧下する鋼の連続鋳造方法であって、鋳造する鋳片幅をW(mm)、鋳片厚さをt(mm)とし、
前記1対の圧下ロールのうちの少なくとも一方については、ロール回転軸を含む断面におけるロール外周形状が、前記鋳片の幅方向中心位置を含む領域で外側に張り出す凸形状を有しており、
前記凸形状は、前記幅方向中心位置からロール幅方向の両側に合計で長さ0.80×Wの凸形状規定範囲において、外側に凸であって角部を有しない曲線形状、又は、外側に凸の曲線と長さが0.25×W以内の直線との組み合わせであって角部を有しない形状、のいずれかであり、
前記凸形状規定範囲の両端における圧下ロール半径に対し、前記幅方向中心位置における圧下ロール半径が0.005×t以上大きく、
前記ロール外周形状は、前記ロール回転軸に平行な直線を幅方向両端部に有しており、前記直線に滑らかに接続し、前記鋳片に接する外側に凹の曲線を有している
ことを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
前記1対の圧下ロールによる前記鋳片の圧下量は、前記幅方向中心位置において、0.005×t以上15mm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鋼の連続鋳造方法。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造方法によってスラブやブルームなどの鋳片を鋳造する場合に、鋳片の中心部にリンやマンガン等の成分が偏析する、いわゆる中心偏析が発生することがある。また、鋳片中心部にはセンターポロシティと呼ばれる空孔が発生する。
【0003】
連続鋳造中の凝固末期において、鋼が凝固する際の凝固収縮に伴って、鋳片内の所定体積に占める鋼量が不足する。未凝固溶鋼が流動可能である鋳片部位では、未凝固溶鋼が最終凝固部の凝固完了点に向かって流動し、固液界面の不純物濃化溶鋼が最終凝固部に集積し、これが中心偏析の原因となる。また、未凝固溶鋼が流動できない位置(鋳片中心固相率が0.8以上)では、鋳片中心部に空隙が生じ、センターポロシティの原因となる。
【0004】
中心偏析を軽減するためには、厚さ中心が固液共存領域であって未凝固溶鋼が流動可能である領域において、溶鋼の凝固収縮量に見合った分だけ凝固シェルを圧下することにより、最終凝固部付近の溶鋼流動を抑えることが有効となる。また、センターポロシティを軽減するためには、未凝固溶鋼が流動できない凝固完了位置付近又は完全凝固後の鋳片を圧下してセンターポロシティを圧着することが有効となる。このような考え方に基づき、連続鋳造末期の凝固完了前後においてサポートロールによって鋳片を圧下する軽圧下技術が用いられている。
【0005】
連続鋳造中に凝固が完了する前後において鋳片を圧下しようとするとき、すでに鋳片の両短辺側は凝固が完了して温度も低下しているために圧下に伴う変形抵抗が大きく、所定の圧下量が得られないことがあった。そこで、ロールの直径がロール幅方向に一定であるロール(以下「フラットロール」という。)を用いるのではなく、鋳片幅中央部に対応する部分のロール直径が大きく、鋳片幅両側に対応する部分のロール直径が幅中央部に比較して小さい形状のロール(以下「凸型ロール」という。)を用い、鋳片の凝固が完了した両短辺側は圧下せず、鋳片幅中央部のみを圧下する技術が開発された。
【0006】
特許文献1には、凸平面の幅200mm−240mmの凸型クラウン(平面)ロールを用い、未凝固状態の鋳片に圧下を加えることで、1段あたり0.5mm−10.0mmの圧下を施すことで中心偏析の発生を軽減可能であることが記されている。しかし、この発明では鋳片内部に未凝固部が残存していることを前提としており、要求される設備要件は過少となる傾向がある。また、凝固収縮による中心部キャビティ補償を主眼としていることから、鋳片中心部への圧下付与が、十分に最適化されていないという問題点がある。
【0007】
さらに、未凝固領域での軽圧下の圧下量を増大すると、内部割れの問題や逆V偏析発生の問題があるため、軽圧下量を少なくせざるを得ず、センターポロシティの減少には不十分な結果になっている。
【0008】
特許文献2には、センターポロシティを減少させるロール圧下方法として、鋳片が完全凝固した後でその切断前に、該鋳片の表面温度が700℃以上1000℃以下で、該鋳片の内部中心と表面との温度差が250℃以上となる領域を、回転する上下ロールで挟んで圧下する連続鋳造方法が開示されている。圧下部位では表層側に対して内部側が高温のため相対的に軟らかくなっており、鋳片の表面に加えた圧下力を鋳片の内部まで伝達させることができる。圧下ロールとして用いる凸型ロールは、幅方向の中央に水平部、水平部の両側に水平部に連接する傾斜部を備えた圧下用突出領域を有する。水平部の幅(圧下幅)が鋳片幅の40%以下であると好ましいとしている。圧下量は鋳片の厚さの2%以上が好ましいとしている。
【0009】
特許文献3には、圧下ロールとして少なくとも1箇のクラウンロールを設けて、鋳片の中央部及びその近傍を圧下する連続鋳造方法が開示されている。鋳片の凝固殻の生成割合が75%以上に相当する区域内においてクラウンロールで鋳片を圧下し、圧下された内部の未凝固部分の濃化溶鋼が上部に押上げ排除されるとしている。クラウンの形状は、鋳片幅方向中心部及びその近傍を圧下可能な形状であればよい、としており、図面には、ロール幅方向中心部が外側に膨出する形状の圧下ロールが記載されている。1段当たり圧下量は最大3mmとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
連続鋳造中の鋳片を圧下する場合、特に凝固完了後の鋳片を圧下する場合において、圧下ロールとしてフラットロールではなく凸型ロールを用いることにより、鋳片幅両端部の圧下抵抗が大きい部分の圧下を行わないことになる。このため、圧下を実現するための圧下ロールの圧下力を軽減することができる。しかし、従来の凸型ロールを用いるとしても、センターポロシティ低減を実現するために十分な圧下を行おうとすると、必要圧下力が過大となり、圧下力確保には大規模な設備増強が必要となる。また、凸型ロールを用いて圧下を行う結果として、連続鋳造後の鋳片には表面に凹みが形成され、この凹み部が原因となって、後工程の熱間圧延において疵の原因となることがあった。
【0012】
本発明は、大規模な設備増強を行うことなく、連続鋳造鋳片のセンターポロシティを軽減することができ、併せて後工程の熱間圧延での疵発生を軽減できる、鋼の連続鋳造方法及び連続鋳造用の圧下ロールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
即ち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
(1)本発明の第1態様に係る鋼の連続鋳造方法は、連続鋳造中において、鋳片の中心固相率が0.8以上であって完全凝固後を含む位置の前記鋳片を、少なくとも1対の圧下ロールによって圧下する鋼の連続鋳造方法であって、鋳造する鋳片幅をW(mm)、鋳片厚さをt(mm)とし、
前記1対の圧下ロールのうちの少なくとも一方については、ロール回転軸を含む断面におけるロール外周形状が、前記鋳片の幅方向中心位置を含む領域で外側に張り出す凸形状を有しており、
前記凸形状は、前記幅方向中心位置からロール幅方向の両側に合計で長さ0.80×Wの凸形状規定範囲において、外側に凸であって角部を有しない曲線形状、又は、外側に凸の曲線と長さが0.25×W以内の直線との組み合わせであって角部を有しない形状、のいずれかであり、
前記凸形状規定範囲の両端における圧下ロール半径に対し、前記幅方向中心位置における圧下ロール半径が0.005×t以上大き
く、
前記ロール外周形状は、前記ロール回転軸に平行な直線を幅方向両端部に有しており、前記直線に滑らかに接続し、前記鋳片に接する外側に凹の曲線を有している。
(2)上記(1)において、前記圧下ロールによって圧下する鋳造方向の鋳片位置は、完全凝固後の位置であってもよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記1対の圧下ロールによる前記鋳片の圧下量は、前記幅方向中心位置において、0.005×t以上15mm以下であってもよい。
(4)本発明の第2態様に係る連続鋳造用の圧下ロールは、連続鋳造中に、鋳片幅:W(mm)、鋳片厚さ:t(mm)の鋳片を圧下するための圧下ロールであって、
ロール回転軸を含む断面におけるロール外周形状が、前記鋳片の幅方向中心位置を含む領域で外側に張り出す凸形状を有しており、
前記凸形状は、前記幅方向中心位置からロール幅方向の両側に距離0.80×Wの凸形状規定範囲において、外側に凸であって角部を有しない曲線形状、又は、外側に凸の曲線と長さが0.25×W以内の直線との組み合わせであって角部を有しない形状、のいずれかであり、
前記凸形状規定範囲の両端における圧下ロール半径に対し、前記幅方向中心位置における圧下ロール半径が0.005×t以上大き
く、
前記ロール外周形状は、前記ロール回転軸に平行な直線を幅方向両端部に有しており、前記直線に滑らかに接続し、前記鋳片に接する外側に凹の曲線を有している。
【発明の効果】
【0014】
連続鋳造中の完全凝固後の鋳片を圧下するに際し、圧下ロールとして本発明の凸型曲線ロールを用いることにより、少ない圧下量で十分な圧下を行ってセンターポロシティを軽減できるとともに、鋳片圧下形状に起因する熱間圧延での疵を軽減できる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1〜
図8に基づいて第1の実施の形態及び第2の実施の形態について説明する。
条用の鋼製品を製造するための素材となる鋳片10を連続鋳造するには、ブルーム連続鋳造又はビレット連続鋳造が適用される。ブルーム連続鋳造においては、鋳造された鋳片10の断面形状は長方形であり、例えば幅500mm×厚さ300mmの鋳片が鋳造される。このような断面が長方形の鋳片10を鋳造する場合、鋳片10の厚さ中央部が完全凝固する直前の位置において、鋳片10の未凝固部は、鋳片幅方向中心位置から幅方向両側に合計で「鋳片幅−鋳片厚さ」の範囲にわたっており、センターポロシティもこの領域で発生する。そのため、センターポロシティ対策として凸型ロール3を用いて鋳片10を圧下する場合においても、上記センターポロシティ発生領域を確実に圧下すべく、凸型ロール3として、従来、
図4に示すように、鋳片10(不図示)の幅方向中心位置(以下、幅中心位置という場合がある。)13に水平部20を有するロールが用いられていた。水平部20の幅方向両側には傾斜部21を設け、水平部20と傾斜部21との接合位置は角部15を構成している。なお、完全凝固とは、固液の割合で決定される固相率が1.0に達し、液相が存在しない状態を示し、温度が固相線温度TS以下である状態である。言い換えると、完全凝固とは、C断面(圧延方向に垂直な断面)のどの点においても温度がTSを下回っている状態である。鋳片が完全凝固であることは、鋳片の表面又は内部の温度を数点実測し、伝熱計算により推定した温度分布から算出した推定固相率を補正することにより確認できる。また、鋳片に鋲を打ち込み、鋲の成分が残存している液相中に拡散する場合、凝固シェルの形状が推定できるとともに完全凝固でないことを確認でき、鋲が原形を留める場合に完全凝固であることを確認できる。
【0017】
本発明者は、鋳片10を圧下する凸型ロール3において、従来の
図4に示すような、水平部20−角部15−傾斜部21を形成するロールではなく、凸型ロール3の外周面とロール回転軸12を含む断面とが交差する部分であるロール外周形状11を、
図1から
図3に示すような、外側に凸であって角部を有しない曲線形状とすることにより、鋳片10のセンターポロシティを確実に軽減しつつ、圧下に要する圧下力を軽減し、さらに後工程の熱間圧延での疵発生を軽減できるのではないかと着想した。以下、水平部20−角部15−傾斜部21を有する凸型ロール3を「凸型ディスクロール5」、外側に凸であって角部を有しない曲線形状を構成する凸型ロール3を「凸型曲線ロール4」と呼ぶ。なお、「角部を有する」とは、実質的には、ロール外周形状を規定する関数の二階微分値(関数の接線の傾きの変化率)が、半径10mmの円弧で定義される関数の二階微分値よりも大きくなる箇所が存在することとみなすことができる。「滑らかに接続する」とは、ロール外周形状を規定する関数の二階微分値が0となる変曲点を有し、変曲点の前後で二階微分値が連続することとして定義できる。
【0018】
まず、有限要素法を用いた変形解析により、上記凸型ディスクロール5と凸型曲線ロール4のそれぞれを用いて、同一の圧下力で連続鋳造中の鋳片10を圧下したときに、鋳片表面と鋳片厚さ中央部がどのように変形するか、変形挙動を求めた。連続鋳造する鋳片10は幅Wが550mmであり、鋳片10の縦横比(幅/厚さ)が1.3である。凸型ディスクロール5は、
図4に示すように、幅中央に0.4×Wの幅を有する水平部20を有し、水平部20の両側に傾斜17°の傾斜部21を設けている。凸型曲線ロール4は、
図3に示すように、ロール回転軸12を通る断面におけるロール外周形状11が、円弧半径R
1が0.8×Wの円弧形状18としている。どちらの凸型ロール3も、幅中心位置13のロール半径r
Cは0.8×Wである。凸型ディスクロール5は、圧下量10mmまでは水平部20と傾斜部21のみで鋳片10に接している。凸型曲線ロール4は、圧下量10mmまでは円弧形状18のみで鋳片10に接している。
図1に示すように、圧下ロール対(1対の圧下ロール1,2)のうち、F側(下側)の圧下ロール2はフラットロールであり、L側(上側)の圧下ロール1にそれぞれの凸型ロール3を用いている。
【0019】
圧下を行う位置の鋳片内部の温度分布として、完全凝固した位置から3分後(10m)の位置における温度分布を設定した。最終凝固部の幅方向範囲は0.2×Wの範囲であり、この範囲が、センターポロシティ発生領域となる。鋳片表面温度は850℃、厚さ中心部・幅中心部の温度は1400℃であった。
【0020】
凸型ディスクロール5と凸型曲線ロール4のそれぞれについて、圧下力を100トン重(980.665kN)として圧下力を付与し、有限要素法による変形解析を行った。変形解析の結果として、鋳片表面の圧下量(mm)と、鋳片10の厚さ中心部における塑性歪み(規格化相当塑性歪み)について解析を行った。鋳片幅方向の寸法については、幅中央部を原点とし、W/2が1となるように規格化し、xで表示した。
【0021】
相当塑性歪みとは、単軸方向の塑性歪み(ε
1p,ε
2p,ε
3p)から(式1)のε
Bで定義され、3次元変形における歪みを単軸変形に換算しスカラー量化したものである。今回の解析では、歪みが大きいほど圧下による内部変形量が多くなり、ポロシティ低減効果も大きくなるとの考えに基づいている。このため解析モデルのメッシュごとに相当塑性歪みを算出し、ロール形状毎に厚さ中心部の変形量を出力することで、圧下効率を評価した。さらに、規格化相当塑性歪みとは、相当塑性歪みε
Bについて、凸型ディスクロールを用いて圧下したときの幅中心位置13の相当塑性歪みの値が1となるように規格化したものである。
ε
B=√[(2/3){(ε
1p)
2+(ε
2p)
2+(ε
3p)
2}] (式1)
【0022】
図5は、有限要素法の変形解析で求めた、鋳片表面圧下量の幅方向分布を示すグラフである。
図5に示すように、同じ圧下力100トン重を付与したにも関わらず、幅中心位置13の表面圧下量は、凸型ディスクロール5が4mm程度、凸型曲線ロール4が9mm程度であった。一方、幅中心位置13から距離が離れるに従って、凸型ディスクロール5は圧下量が一定であるのに対し、凸型曲線ロール4は圧下量が減少し、幅中心位置13から距離x=0.3付近で表面圧下量が同一となり、それよりも外側からx=0.4まで凸型ディスクロール5の方が大きな表面圧下量となっている。凸型ディスクロール5、凸型曲線ロール4のいずれも、それぞれのロールの外形形状にならった表面圧下量が実現されている。
【0023】
図6は、有限要素法の変形解析で求めた、鋳片における厚さ中心の規格化相当塑性歪みの幅方向分布を示すグラフである。
図6に示すように、驚くべきことに、幅方向の全域にわたって、凸型ディスクロール5に比較して凸型曲線ロール4の方が、規格化相当塑性歪みの値が大きな値となっている。幅中心位置13については、表面圧下量は、凸型曲線ロール4の方が大きいのであるから、厚さ中心部における規格化相当塑性歪みも大きな値となることは予想のとおりである。一方、幅中心位置13から距離x=0.3を超える領域においては、表面圧下量において凸型ディスクロール5の方が大きいのであるから、厚さ中心部における規格化相当塑性歪みについても凸型ディスクロール5の方が大きくなると予想されるところ、有限要素法による変形解析では予想に反し、幅方向端部に至るまで凸型曲線ロール4の方が厚さ中心部における規格化相当塑性歪みが大きくなるという結果であった。
【0024】
以上の有限要素法による変形解析の結果からは、実際の連続鋳造において凸型ロール3を用いた圧下によってセンターポロシティ低減を図るに当たり、同一の圧下力であれば、圧下ロール1として、凸型ディスクロール5よりも凸型曲線ロール4を用いた方が、改善効果が大きいであろうことが示唆された。
【0025】
そこで、実際の連続鋳造において、連続鋳造用の圧下ロール1として凸型ディスクロール5と凸型曲線ロール4のそれぞれを用いたときの、鋳片10のセンターポロシティ軽減効果の比較を行った。鋳造する鋳片10の縦横比(幅/厚さ)は1.3である。鋳片10の幅をW(mm)とする。圧下ロール1として、凸型ディスクロール5は、幅中央に0.4×Wの幅を有する水平部20を有し、水平部20の両側に傾斜17°の傾斜部21を設けている。凸型曲線ロール4は、ロール回転軸12を通る断面におけるロール外周形状11が、円弧半径R
1が0.8×Wの円弧形状18としている。どちらの凸型ロール3も、幅中心位置13におけるロール半径r
Cは0.8×Wである。またどちらの凸型ロール3も、幅両側のフラット部分におけるロール半径r
Fは0.65×Wである。どちらも、圧下ロール対のF側の圧下ロール2にはフラットロールを用いている。
【0026】
連続鋳造中において、最終凝固位置から3分後位置(10m)において圧下ロールに100トン重の圧下力を付加し、鋳片10の圧下を行った。鋳造した鋳片10の表面形状と、鋳片厚さ中央部のセンターポロシティ発生状況について評価を行った。
【0027】
鋳片10の上面側には、いずれも凸型ロール3の凸部に起因する凹みが形成されていた。鋳片10の幅両端部の厚さと幅中央部の厚さを比較すると、凸型ディスクロール5による凹み量は約4mmであり、凸型曲線ロール4による凹み量は約9mmであった。凹み形状は、いずれも凸型ロール3の外形形状にならった形状となっていた。
【0028】
鋳片10のセンターポロシティについては、鋳片断面のカラーチェックにより算出したポロシティ面積率を指標として評価を行った。その結果、凸型ディスクロールはポロシティ面積率が3%、凸型曲線ロール4はポロシティ面積率が0.3%との結果が得られた。凸型曲線ロール4を用いることによるセンターポロシティ改善効果が明らかである。
【0029】
以上のとおり、連続鋳造中に圧下ロールによって鋳片10を圧下するに際し、圧下ロールとして第1の実施の形態に係る凸型曲線ロール4を用いることにより、同じ圧下力において、凸型ディスクロール5を用いる場合と比較してセンターポロシティ改善効果が優れていることが明らかとなった。また、センターポロシティ改善効果を同一の程度とする場合には、凸型ディスクロールに比較して凸型曲線ロール4の方が、少ない圧下力で同じ効果が得られることも明らかとなった。
【0030】
次に、本実施形態に係る圧下ロール1である凸型曲線ロール4が具備すべき要件について、以下、第1の実施の形態、第2の実施の形態の順で説明する。
【0031】
第1の実施の形態において、
図1から
図3に基づいて説明する。圧下ロール1は、ロール回転軸12を通る断面におけるロール外周形状11が、以下の形状を具備している。まず、ロール外周形状11は、鋳片10の幅方向中心位置(幅中心位置13)を含む領域で外側に張り出す凸形状を構成する。外側とは、ロール外周がロール回転軸12から遠ざかる方向である。このような形状を構成することにより、幅中心位置13においてロール半径r
Cが最大となり、鋳片10を圧下したときに鋳片表面の圧下量は幅中心位置13が最大となる。次に、幅中心位置13からロール幅方向の両側に合計で長さ0.80×Wの範囲を「凸形状規定範囲14」とする。凸型ロール3を用いた鋳片10の圧下において、鋳片10の幅両端部は変形抵抗が大きいため、圧下を行わないことが特徴である。前記凸形状規定範囲14あるいはこれより狭い幅において鋳片10を圧下することとすれば、必要な圧下量を確保しつつ圧下に要する圧下力を低く抑えることができる。そのため、凸形状規定範囲14内において圧下ロール1の凸形状を定めておけば、第1の実施の形態により、良好な圧下を行うことができる。凸形状規定範囲14内における凸形状は、外側に凸であって角部を有しない曲線形状とする。外側に凸とは、ロール回転軸12から遠ざかる方向に凸との意味である。さらに、鋳造する鋳片10の厚さをt(mm)とし、凸形状規定範囲14両端における圧下ロール半径r
Eに対し、幅中心位置13におけるロール半径r
Cが0.005×t以上大きい。これにより、圧下ロール1で鋳片10を圧下するに際し、圧下ロール1の凸形状規定範囲14全体が鋳片10を圧下するようにすれば、幅中心位置13における鋳片10の圧下量を0.005×t以上とすることができる。幅中心位置13におけるロール半径r
Cは、0.010×t以上大きいことがより好ましい。
【0032】
凸形状規定範囲14内における凸形状のうちで最も簡潔にして効果的な形状として、
図3に示すように、単一の円弧半径R
1を有する円弧形状18とすることができる。このとき、凸形状規定範囲14内のロール外周形状11は、凸形状規定範囲14の長さ部分を弦31とする弓形形状を構成する。凸形状規定範囲14の長さ(弦31の長さ)をs、弓形の半径をR、弓形の弧32の高さ(凸形状規定範囲14の両端における圧下ロール半径r
Eと幅中心位置13におけるロール半径r
Cとの差)をhとしたとき、以下の関係が成立する。弓形の中心角を2θとする。
h=R(1−cosθ) (式2)
s=2R・sinθ (式3)
これらの式から、以下の式が導かれる。
cosθ=(s
2−4h
2)/(s
2+4h
2) (式4)
従って、まず、目標とするsとhを定め、上記(式4)にsとhを代入することよってθを定め、さらに(式2)又は(式3)にθを代入してRを定めることができる。例えば、s=150mm、h=9mmを目標とする場合、上記式に代入することにより、R=316mmと導き出すことができる。
【0033】
凸形状規定範囲14内における凸形状としては、上記単一の円弧半径R
1を有する円弧形状18の他、放物線形状、楕円形状、双曲線形状、場所によって半径が異なる円弧を滑らかに接続した形状などから、任意に選択することができる。凸形状を構成する、角部を有しない曲線形状において、曲線の曲率半径は最小でも1×h以上とすると好ましい。これにより、凸形状が曲線であることによる第1の実施の形態の効果を十分に発揮することができる。曲線の最小曲率半径については、後述の第2の実施の形態においても同様である。
【0034】
圧下ロール1の凸形状規定範囲14の外側で幅方向端部側のロール外周形状11については、特に規定するものではない。好ましくは、ロール外周形状11を、直線状又は角部を有しない曲線状とする。圧下ロール1の幅方向両端部のロール形状を、ロール回転軸12に対して略平行な外周面を有する円筒形状(Cylindrical configuration)22とする場合、ロール外周形状11は、凸形状規定範囲14から幅方向両端部の円筒形状22の位置に至るまで、直線と曲線の組み合わせであって角部を有しない滑らかな形状とすると好ましい。ロール外周形状11において、円筒形状22の位置から凸形状規定範囲14に向けて推移する部分は、ロール回転軸12から離れる方向となる外側に凹の曲線とすると良い。このように、ロール外周形状11は、ロール回転軸12に平行な直線を幅方向両端部に有しており、その直線に滑らかに接続する、外側に凹の曲線を有している。
【0035】
圧下ロール1のロール外周形状11として最も簡潔にして効果的な形状は、
図3に示すように、凸形状規定範囲14とその外の両側の所定の範囲(半径R
1範囲23)については単一の円弧半径R
1の円弧形状18である。さらにその両側の半径R
2範囲24については、単一の円弧半径R
2の円弧形状19であって外側に凹の形状を円滑に接続し、最終的にフラットロールの円筒形状22の直線に滑らかに接続する形状を採用することができる。したがって、ロール外周形状11のいずれの部位にも角部が存在しないので、圧下ロール1でのロール圧下量が増大して、幅方向におけるロールでの圧下範囲が凸形状規定範囲14を超え、凸形状規定範囲14から幅方向両端部の円筒形状22に接続する直前における外側に凹の曲線の部分に至るまでの圧下を行う場合においても、圧下後の鋳片表面のいずれの部位についても、角が形成されない滑らかな表面とすることができる。さらに、フラットロールの円筒形状22部が鋳片10に接するまでの圧下を行う場合においても、圧下後の鋳片表面のいずれの部位についても、角が形成されない円滑な表面とすることができる。このように、ロール圧下量が大きくても、圧下後の鋳片表面のいずれの部位についても、角が形成されない円滑な表面とすることができる。その結果、連続鋳造に続く後工程の熱間圧延において、凸型ロール3で圧延したために生成した鋳片10の凹形状に起因する圧延疵が発生することを軽減できる。円弧半径R
2は、鋳片10に圧延疵が発生することを軽減する観点から、5mm以上が好ましく、10mm以上がより好ましく、100mm以上が更に好ましい。
【0036】
圧下ロール1での圧下制御を行う圧下制御装置において、圧下変位量を目標とする変位量に制御できる装置(圧下変位制御ができる装置)を用いることとすれば、圧下量を圧下ロール1の上記h以下の値に制御することができる。その結果、圧下時に鋳片10に接するロール表面は、凸形状規定範囲14内に収めることができる。凸形状規定範囲14内は、角部を有しない曲線形状であるため、圧下後の鋳片表面にも接平面の角度変化が急峻な凹みが形成されず、後工程の熱間圧延時に疵発生の原因となることがない。
【0037】
一方、圧下制御装置として圧下変位制御ができない装置を用いる場合には、凸形状規定範囲14を外れる位置におけるロール外周形状11を、上記最も簡潔にして効果的な形状を採用すると好ましい。圧延ロールのロール外周形状11には、凸形状規定範囲14及びその両側であって円筒形状22部分まで続くいずれの部位についても角部を有しない滑らかな形状である。そのため、圧下力が大きいために幅両端のフラットロール部まで鋳片10に接するような圧下が行われたとしても、圧下後の鋳片表面には、疵の原因となるような接平面の角度変化が急峻な形状が形成されることがない。
よって、少ない圧下量で十分な圧下を行ってセンターポロシティを軽減できるとともに、鋳片圧下形状に起因する熱間圧延での疵を軽減できる。
【0038】
本実施形態に係る圧下ロール1である凸型曲線ロール4が具備すべき要件として、第2の実施の形態について、
図7及び
図8に基づいて説明する。第2の実施の形態において、圧下ロール1は、ロール回転軸12を含む断面におけるロール外周形状11が、以下の形状を具備している。即ち、前記第1の実施の形態においては、凸形状規定範囲14内における凸形状として、外側に凸であって角部を有しない曲線形状と定めていた。これに対して第2の実施の形態では、凸形状規定範囲14内における凸形状として、外側に凸の曲線16と長さが0.25×W以内の直線17との組み合わせであって角部を有しない形状と定める。以下、このように定めた根拠について説明する。
【0039】
上記第2の実施の形態についても、有限要素法を用いた変形解析によってその有効性を確認した。ロール外周形状11として、
図7に示すように、凸の曲線16と直線17との組み合わせについて、凸の曲線は円弧半径R
1が0.8×Wの円弧形状18とし、直線17は、幅中心位置13を中心にしてロール軸に平行に任意の長さの直線部を設け、円弧形状18と直線17とを滑らかに接続した。直線17の長さを種々に設定した上で、圧下力を100トン重として圧下力を付与し、有限要素法による変形解析を行った。変形解析の結果として、鋳片10の厚さ中心部における塑性歪み(規格化相当塑性歪み)について解析を行った。その結果を
図8に示す。直線17の長さDについて、図中にD/Wで表記している。D/Wが大きくなるほど、即ち直線17の長さDが長くなるほど、幅方向全域において厚さ中心部の規格化相当塑性歪みは減少するものの、直線17の長さDが0.25×W以下の範囲であれば、凸型ディスクロール5よりも良好な規格化相当塑性歪みの値を実現できることがわかった。そこで、このような圧下ロール1の形状を第2の実施の形態とした。
よって、少ない圧下量で十分な圧下を行ってセンターポロシティを軽減できるとともに、鋳片圧下形状に起因する熱間圧延での疵を軽減できる。
【0040】
第2の実施の形態に係る凸型曲線ロール4が、従来の凸型ディスクロール5に比較して、同一の圧下力でもセンターポロシティを良好に改善できたメカニズムについて検討する。凝固後圧下によるポロシティ低減は、圧下によりポロシティ生成領域への歪みが付与され、ポロシティが圧着されることによる。歪み付与量は、原則として圧下量が増えるほど増加する。特に表面部分の歪みは、幅方向の押し込み量が直接反映されるため、凸型曲線ロール4と従来の凸型ディスクロール5を比較したときに、幅方向で見ると、凸型ディスクロール5が鋳片表面での歪み付与量で上回る箇所が存在する。一方で、歪みが厚さ中心へ浸透するに従い、歪みは幅方向へも拡散する。このため、厚さ方向中心部の歪み量は、曲線部で大きく圧下量を稼ぐことが可能な凸型曲線ロール4が優位となることから、全幅で凸型曲線ロール4が勝るという解析結果となったと考えられる。
【0041】
第2の実施の形態に係る鋼の連続鋳造方法は、上記第2の実施の形態に係る圧下ロール1を用い、連続鋳造中において、鋳片10の中心固相率が0.8以上であって完全凝固後を含む位置の鋳片10を、少なくとも1対の圧下ロール1によって圧下するものである。鋳片10の中心固相率が0.8以上であれば、鋳片厚さ中心部の残溶鋼の流動困難領域となっているので、圧下を行ったとしても、内部割れの問題や逆V偏析発生の問題が発生しづらい。1対の圧下ロール1のうちの少なくとも一方については、上記第2の実施の形態に係る圧下ロール1を用いる。なお、中心固相率は、C断面における鋳片厚さ方向の中心で、かつ、鋳片幅方向の中心の固相率と定義できる。中心固相率は、中心温度を熱電対で直接測温する方法、伝熱計算による推定、鋲打ちによる推定等により測定できる。
【0042】
圧下ロール1によって圧下する鋳造方向の鋳片位置は、完全凝固後の位置であるとより好ましい。完全凝固後の位置において鋳片10を圧下することにより、内部割れの問題や逆V偏析発生の問題を発生させることなく、センターポロシティの圧着消滅を図ることができる。完全凝固後の鋳片10を圧下するに際し、鋳造下流側の圧下位置好適範囲限界は、幅中心表面温度が650℃以上の領域である。幅中心表面温度が650℃未満であると、温度低下により鋳片10が硬化し、ロール形状によらず、十分な圧下が困難となるためである。
連続鋳造中の圧下位置を定めるにあたり、中心固相率が0.8となる位置、完全凝固位置、完全凝固後の圧下位置好適範囲限界位置のそれぞれについては、連続鋳造中における鋳片表面の温度測定、鋳片10の伝熱凝固計算を組み合わせることによって定めることができる。
【実施例】
【0043】
鋳片形状が、幅:550mm、厚さ:400mmのブルームを鋳造する湾曲型のブルーム連続鋳造において、実施例を適用した試験を行った。鋳造速度0.4m/分において、凝固完了位置が鋳造長で20mの位置であった。F面ロールはフラットロール、L面ロールが凸型ロール3である1対の圧下ロール1を準備し、鋳造長で30mの位置で圧下を行った。圧下力は100トン重とした。
【0044】
従来型の凸型ディスクロール5としては、
図4に示すように、幅中心位置13の水平部20の長さが200mm、その両側に角部15を介して角度17°の傾斜部21を有する。水平部20のロール半径は、幅両端のフラットロール部のロール半径よりも20mm大きい。
【0045】
実施例の凸型曲線ロール4としては、
図3に示すように、凸形状規定範囲14(幅中心位置13からロール幅方向の両側に合計で長さ0.80×Wの範囲)を含んで半径が430mm一定の円弧形状18であり、凸形状規定範囲14両端における圧下ロール半径r
Eに対し、幅中心位置13におけるロール半径r
Cが60mm大きいロールを用いた。幅中心位置13のロール半径r
Cは400mmである。凸形状規定範囲14内の円弧形状18は、凸形状規定範囲14の外側まで継続し(半径R
1範囲23)、その後、円弧半径R
2=100mmで外に凹の円弧形状19(半径R
2範囲24)と滑らかに接続し、最終的にロール半径r
Fが340mmの円筒形状22を有するフラットロール部に滑らかに接続している。
【0046】
鋳片10のセンターポロシティについては、前述のとおり、鋳片断面のカラーチェックにより算出したポロシティ面積率を指標として評価を行った。圧下ロール1として凸型ディスクロール5を用いた従来例は、センターポロシティ面積率が3%以上となった。凸型曲線ロール4を用いた実施例では、センターポロシティ面積率は0.3%であった。このように、本実施形態による連続鋳造鋳片のセンターポロシティを軽減する効果を確認できた。
【0047】
実施例と従来例の鋳片を、一般的な熱延プロセスとして熱間圧延を行った。鋳片の表面形状に起因する製品不良率について比較した結果、従来例の鋳片においては製品不良率が5%程度であったものが、実施例の鋳片10を用いた結果、製品不良率が0.5%以下まで低減した。このように、本実施形態による熱間圧延での疵を軽減する効果を確認できた。