特許第6973628号(P6973628)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973628
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】陽電子放射断層撮影装置および光検出器
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20211118BHJP
   G01T 1/164 20060101ALI20211118BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   G01T1/161 C
   G01T1/164 G
   G01T1/20 E
   G01T1/20 G
   G01T1/20 F
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-513961(P2020-513961)
(86)(22)【出願日】2018年12月27日
(86)【国際出願番号】JP2018048108
(87)【国際公開番号】WO2019202781
(87)【国際公開日】20191024
【審査請求日】2020年8月31日
(31)【優先権主張番号】特願2018-80474(P2018-80474)
(32)【優先日】2018年4月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 誠之
【審査官】 亀澤 智博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−250035(JP,A)
【文献】 特開2016−048231(JP,A)
【文献】 特開2008−022104(JP,A)
【文献】 特開2003−057350(JP,A)
【文献】 特開平09−246517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00 − 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に投与された陽電子放出核種を含む薬剤から互いに対向する方向に放射される一対の放射線に基づいて被検体の内部を撮影する陽電子放射断層撮影装置であって、
前記放射線が入射することにより光を出力するシンチレータと、
前記シンチレータに対応するように設けられる光検出器と、
を備え、
前記光検出器は、
前記シンチレータから発せられた前記光が入射することにより電気信号を出力する光電変換素子と、
前記光電変換素子から出力された前記電気信号を増幅するための増幅部と、
複数の前記光電変換素子と前記増幅部とを接続し、前記複数の光電変換素子から前記増幅部に前記電気信号を送信するための信号線と、
を含み、
前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間のそれぞれの前記信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている、陽電子放射断層撮影装置。
【請求項2】
前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間のそれぞれの前記信号線の断面積または長さの少なくとも一方を調整することにより、前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間のそれぞれの前記信号線における前記インピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている、請求項1に記載の陽電子放射断層撮影装置。
【請求項3】
前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間の前記信号線の長さを互いに略等しくすることにより、前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間の前記インピーダンスが互いに略等しくするように構成されている、請求項2に記載の陽電子放射断層撮影装置。
【請求項4】
前記信号線は、前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間において、前記複数の光電変換素子それぞれからの前記信号線が合流する接続点を含み、
前記複数の光電変換素子それぞれと前記接続点との間のそれぞれの前記信号線の長さを互いに略等しくすることにより、前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間のそれぞれの前記信号線における前記インピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている、請求項2に記載の陽電子放射断層撮影装置。
【請求項5】
前記信号線は、前記光電変換素子が設けられる基板の一方側の面に配置される部分と、前記基板の他方側の面に配置される部分と、前記一方側の面に配置される部分と前記他方側の面に配置される部分とを接続するように前記基板に埋め込まれた埋込み部分と、を含み、
前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間のそれぞれの前記信号線において、前記埋込み部分の断面積または長さの少なくとも一方と前記埋込み部分以外の断面積または長さの少なくとも一方とを調整することにより、前記複数の光電変換素子それぞれと前記増幅部との間のそれぞれの前記信号線における前記インピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている、請求項2に記載の陽電子放射断層撮影装置。
【請求項6】
光が入射することにより電気信号を出力する光電変換素子と、
前記光電変換素子から出力された前記電気信号を増幅するための増幅部と、
複数の前記光電変換素子と1つの前記増幅部とを接続し、前記複数の光電変換素子から前記1つの増幅部に前記電気信号を送信するための信号線と、
を備え、
前記複数の光電変換素子それぞれから前記1つの増幅部までの間の前記信号線におけるインピーダンス同士が互いに略等しくなるように構成されている、光検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、陽電子放射断層撮影装置および光検出器に関し、特に、複数の光電変換素子と増幅部とを接続する信号線を含む陽電子放射断層撮影装置および光検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の光電変換素子と増幅部とを接続する信号線を含む光検出器を備える陽電子放射断層撮影装置が知られている。このような陽電子放射断層撮影装置は、たとえば、Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093に開示されている。
【0003】
Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093には、光が入射することにより電気信号を出力するシリコン光電子増倍管(SiPM、光電変換素子)と、シリコン光電子増倍管から伝達された電気信号を増幅するプリアンプ(増幅部)とを含む陽電子放射断層撮影装置に用いられる光検出器が開示されている。シリコン光電子増倍管が出力する電気信号は、シリコン光電子増倍管への放射線の入射タイミングを示す指標となるタイミング信号として用いられる。Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093に記載の光検出器では、1つのプリアンプは、信号線により複数のシリコン光電子増倍管と接続(マルチプレクサ接続)されている。また、Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093に記載の光検出器では、プリアンプは、複数のシリコン光電子増倍管から伝達されるタイミング信号を増幅して、後段に設けられたオシロスコープに伝達するように構成されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093には明記されていないものの、Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093のような従来の光検出器では、シリコン光電子増倍管がマルチプレクサ接続された構成においてタイミング信号を取得する場合、信号線の配線レイアウトの簡便性により、シリコン光電子増倍管と増幅器とを接続する信号線が最短となるように配線する(最短配線にする)場合が一般的であると考えられる。このように信号線の配線レイアウトを最短配線にする際に、信号線の素材および断面積が等しい場合には、インピーダンスは信号線の長さに依存するので、それぞれのシリコン光電子増倍管と増幅部との間のインピーダンスが異なると考えられる。このため、たとえば、1つのシリコン光電子増倍管と増幅部との間の信号線におけるインピーダンス(配線インピーダンス)を、増幅部の入力側のインピーダンスと整合させた場合でも、他のシリコン光電子増倍管と増幅部との間の信号線におけるインピーダンスと増幅部の入力側のインピーダンスとが整合しない。
【0006】
このように、インピーダンスが整合されていない信号線においてタイミング信号が伝達されると、タイミング信号の反射が生じるので、反射されたタイミング信号の影響により自身のタイミング信号に遅れや乱れ等の劣化が生じる。この結果、1つの増幅部に接続された複数のシリコン光電子増倍管から伝達されるタイミング信号の伝達速度が平均的に遅れるので、光検出器で検出されるタイミング信号の立ち上がり時間に全体的に遅れが生じる。したがって、Bieniosek, et al., "Effects of SiPM Multiplexing on Timing Performance", IEEE Nuclear Science Symposium and Medical Imaging Conference (NSS/MIC), USA,IEEE, 2015, DOI:10.1109/NSSMIC.2015.7582093のような従来の光検出器のように、シリコン光電子増倍管(光電変換素子)がマルチプレクサ接続された構成においてタイミング信号を取得する構成において、信号線を最短配線とする配線レイアウトとなっている場合、タイミング信号の劣化によりタイミング信号の立ち上がり時間が遅くなることに起因して、光検出器の時間分解能が低下するという問題点が発生すると考えられる。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、光電変換素子がマルチプレクサ接続された構成においてタイミング信号を取得する場合に、タイミング信号の立ち上がり時間が遅くなることに起因して時間分解能が低下することを抑制することが可能な陽電子放射断層撮影装置および光検出器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による陽電子放射断層撮影装置は、被検体に投与された陽電子放出核種を含む薬剤から互いに対向する方向に放射される一対の放射線に基づいて被検体の内部を撮影する陽電子放射断層撮影装置であって、放射線が入射することにより光を出力するシンチレータと、シンチレータに対応するように設けられる光検出器と、を備え、光検出器は、シンチレータから出力された上記光が入射することにより電気信号を出力する光電変換素子と、光電変換素子から出力された電気信号を増幅するための増幅部と、複数の光電変換素子と増幅部とを接続し、複数の光電変換素子から増幅部に電気信号を送信するための信号線と、を含み、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。
【0009】
この発明の第1の局面による陽電子放射断層撮影装置では、上記のように、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成する。これにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のいずれの信号線にタイミング信号が伝達される場合でも、タイミング信号の反射が生じるのを抑制することができるので、タイミング信号の反射に起因するタイミング信号の遅れや乱れ等の劣化が生じるのを抑制することができる。その結果、光電変換素子がマルチプレクサ接続された構成においてタイミング信号を取得する場合に、タイミング信号の立ち上がり時間が遅くなることに起因して時間分解能が低下することを抑制することができる。なお、陽電子放射断層撮影装置では、被検体に投与された陽電子放出核種を含む薬剤から互いに対向する方向に放射される一対の放射線が、環状に設けられたシンチレータによりシンチレータ光に変換され、シンチレータと対応するように設けられた光検出器によりシンチレータ光が検出される。そして、検出された一対の放射線に基づくシンチレータ光の検出タイミングの差に基づいて、一対の放射線が入射されたシンチレータの位置同士を結ぶ直線上における被検体に投与された薬剤の位置(薬剤が集積した悪性腫瘍の位置)が推定される。したがって、陽電子放射断層撮影装置に、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成された光検出器を用いることは、薬剤の位置の推定精度の向上に繋がる光検出器の時間分解能が向上する点において特に有用である。
【0010】
上記第1の局面による陽電子放射断層撮影装置において、好ましくは、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線の断面積または長さの少なくとも一方を調整することにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。ここで、信号線の素材が等しい場合には、信号線におけるインピーダンスは、信号線の断面積または長さの少なくとも一方に依存する。したがって、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線の断面積または長さの少なくとも一方を調整することによって、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0011】
この場合、好ましくは、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間の信号線の長さを互いに略等しくすることにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のインピーダンスを互いに略等しくするように構成されている。このように構成すれば、たとえば、信号線の素材および断面積が略等しい場合に、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間の信号線の長さを互いに略等しくすることにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスを互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0012】
上記複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線の長さを調整する構成において、好ましくは、信号線は、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間において、複数の光電変換素子それぞれからの信号線が合流する接続点を含み、複数の光電変換素子それぞれと接続点との間のそれぞれの信号線の長さを互いに略等しくすることにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。このように構成すれば、信号線の素材および断面積が略等しい場合、複数の光電変換素子それぞれと接続点との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなる。また、信号線における接続点の増幅部側では、複数の光電変換素子それぞれからの信号線が合流して共通化されるので、接続点で合流した複数の信号線における光電変換素子それぞれと接続点との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスは共通の値となる。その結果、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0013】
上記複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線の長さを調整する構成において、好ましくは、信号線は、光電変換素子が設けられる基板の一方側の面に配置される部分と、基板の他方側の面に配置される部分と、一方側の面に配置される部分と他方側の面に配置される部分とを接続するように基板に埋め込まれた埋込み部分と、を含み、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線において、埋込み部分の断面積または長さの少なくとも一方と埋め込み部分以外の断面積または長さの少なくとも一方とを調整することにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。ここで、埋込み部分は、基板に埋め込まれるため、基板の一方側の面または他方側の面に設けられる埋込み部分以外と断面積または長さが異なることが一般的である。したがって、信号線に埋込み部分が含まれる場合に、埋込み部分の断面積または長さの少なくとも一方と埋込み部分以外の断面積または長さの少なくとも一方とを調整することにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0014】
上記目的を達成するために、この発明の第2の局面による光検出器は、光が入射することにより電気信号を出力する光電変換素子と、光電変換素子から出力された電気信号を増幅するための増幅部と、複数の光電変換素子と1つの増幅部とを接続し、複数の光電変換素子から1つの増幅部に電気信号を送信するための信号線と、を備え、複数の光電変換素子それぞれから1つの増幅部までの間の信号線におけるインピーダンス同士が互いに略等しくなるように構成されている。
【0015】
この発明の第2の局面による光検出器では、上記のように、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のそれぞれの信号線におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成する。これにより、複数の光電変換素子それぞれと増幅部との間のいずれの信号線にタイミング信号が伝達される場合でも、タイミング信号の反射が生じるのを抑制することができるので、タイミング信号に遅れや乱れ等の劣化が生じるのを抑制することができる。その結果、陽電子放射断層撮影装置以外の装置に光検出器を備えた構成においても、光電変換素子がマルチプレクサ接続された構成においてタイミング信号を取得する場合に、タイミング信号の立ち上がり時間が遅くなることに起因して時間分解能が低下することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記のように、光電変換素子がマルチプレクサ接続された構成においてタイミング信号を取得する場合に、タイミング信号の立ち上がり時間が遅くなることに起因して時間分解能が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態による陽電子放射断層撮影装置の全体構成を説明するための図である。
図2】本発明の一実施形態による陽電子放射断層撮影装置のシンチレータおよび光検出器を説明するための図である。
図3】本発明の一実施形態による光検出器の回路構成図である。
図4】本発明の一実施形態による光検出器における信号線の埋込み部分を説明するための図である。
図5】本発明の一実施形態による光検出器における信号線の長さを説明するための図である。
図6】本発明の一実施形態による光検出器におけるタイミング信号の波形のシミュレーション結果を説明するための図である。
図7】本発明の一実施形態による光検出器におけるタイミング信号の波形の実測結果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
図1図7を参照して、本発明の一実施形態による陽電子放射断層撮影装置100の構成について説明する。陽電子放射断層撮影装置100は、被検体Pに投与された陽電子放出核種を含む薬剤から互いに対向する方向に放射される一対のガンマ線(放射線)に基づいて被検体Pの内部を撮影する装置である。
【0020】
具体的には、陽電子放射断層撮影装置100は、薬剤の電子と陽電子との対消滅によって生じる一対のガンマ線を検出することによって、薬剤の対消滅が生じた位置を取得するように構成されている。そして、陽電子放射断層撮影装置100は、薬剤の対消滅が生じた位置を複数取得することによって、被検体Pの内部の画像を形成する(撮影する)ように構成されている。そして、形成された画像は、がん細胞の有無などの画像診断に用いられる。
【0021】
図1に示すように、陽電子放射断層撮影装置100は、ガンマ線が入射することにより光を出力するシンチレータ10と、シンチレータ10に対応するように設けられる光検出器20と、を備えている。シンチレータ10および光検出器20は、被検体Pの体軸(頭部から脚部に伸びる軸)に向けられた状態で、被検体Pの周囲を取り囲むように複数配置されている。また、シンチレータ10および光検出器20は、被検体Pの体軸の伸びる方向(紙面奥方向)にも同様の構成で複数配置されている。また、シンチレータ10および光検出器20は、それぞれ、被検体Pから近い側および遠い側に配置されている。
【0022】
図2に示すように、シンチレータ10および光検出器20は、アレイ状に集積されている。シンチレータ10は、薬剤の対消滅により発生する511keVのエネルギーを有するガンマ線が入射されるように構成されている。シンチレータ10は、ガンマ線が入射するとシンチレーション光を発する蛍光体を有するシンチレータ素子Sを含む。そして、光検出器20では、シンチレータ10から発せられたシンチレーション光を入射させることにより、シンチレーション光を検出するように構成されている。
【0023】
図3に示すように、光検出器20は、シンチレーション光が入射することにより電気信号を出力するSiPM21と、SiPM21から出力された電気信号を増幅するためのプリアンプ22と、SiPM21とプリアンプ22との間で電気信号を伝達する信号線23と、を含む。なお、SiPM21およびプリアンプ22は、それぞれ、特許請求の範囲の「光電変換素子」および「増幅部」の一例である。
【0024】
SiPM21は、アバランシェフォトダイオード(APD:Avalanche Photodiode)を含む。SiPM21は、p−n接合に逆バイアスが印加された半導体であり、平常時は暗電流を除いて電流が流れない。そして、SiPM21に光子が入射すると、光子により電子・正孔対が生じて電流が流れる。
【0025】
プリアンプ22は、複数のSiPM21から伝達された電気信号を増幅するように構成されている。陽電子放射断層撮影装置100では、プリアンプ22により増幅された電気信号は、プリアンプ22の後段に設けられ、電気信号を読み出すためのデジタル回路に伝達されるように構成されている。なお、複数のSiPM21からプリアンプ22に伝達される電気信号は、シンチレータ10へのガンマ線の入射タイミングを示す指標となる「タイミング信号」として用いられる。以下の説明では、SiPM21からプリアンプ22に伝達される電気信号を、「タイミング信号」と呼ぶ場合がある。
【0026】
本実施形態では、信号線23は、複数のSiPM21とプリアンプ22とを接続している。具体的には、8つのSiPM21(21a、21b、21c、21d、21e、21f、21gおよび21h)が、信号線23により、1つのプリアンプ22と接続されている。また、信号線23は、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間において、複数(8つ)のSiPM21それぞれからの信号線23が合流する接続点24を含む。
【0027】
より具体的には、SiPM21a、21b、21cおよび21dは、それぞれ、信号線23a、23b、23cおよび23dにより、接続点24aと接続されている。SiPM21e、21f、21gおよび21hは、それぞれ、信号線23e、23f、23gおよび23hにより、接続点24bと接続されている。そして、接続点24aおよび接続点24bは、それぞれ、信号線23iおよび信号線23jにより、接続点24cと接続されている。さらに、接続点24cは、信号線23kにより、プリアンプ22と接続されている。言い換えると、信号線23a、23b、23cおよび23dは、接続点24aにおいて合流するとともに、信号線23e、23f、23gおよび23hは、接続点24bにおいて合流している。また、信号線23iおよび信号線23jは、接続点24cにおいて合流している。以下の説明では、このように、複数のSiPM21が1つのプリアンプ22と接続されていることを、「マルチプレクサ接続」と呼ぶ場合がある。
【0028】
また、図4に示すように、本実施形態では、信号線23は、SiPM21が設けられる基板30の一方側の面30aに配置される部分と、基板30の他方側の面30bに配置される部分と、一方側の面30aに配置される部分と他方側の面30bに配置される部分とを接続するように基板30に埋め込まれたVIA23ivと、を含む。具体的には、光検出器20を構成する回路は、基板30上に設けられている。そして、接続点24aと接続点24cとを接続する信号線23iは、VIA23ivを介して、基板30の一方側の面30aと他方側の面30bとに設けられている。なお、光検出器20では、信号線23は、略均一の素材から構成されている。また、信号線23は、VIA23ivとVIA23iv以外とで断面積が異なるように構成されている。なお、光検出器20では、信号線23において、信号線23iのみにVIA23ivが設けられ、他の信号線23(23a〜23h、23jおよび23k)には、VIAは設けられていない。なお、VIA23ivは、特許請求の範囲の「埋込み部分」の一例である。
【0029】
ここで、本実施形態では、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。詳細には、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23の断面積または長さLを調整することにより、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。
【0030】
より詳細には、本実施形態では、複数(8つ)のSiPM21それぞれと接続点24(接続点24aおよび接続点24b)との間のそれぞれの信号線23の長さを互いに略等しくすることにより、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。具体的には、図5に示すように、信号線23a、23b、23cおよび23dは、それぞれ、互いに等しい長さLa、Lb、LcおよびLdを有する。また、信号線23e、23f、23gおよび23hは、それぞれ、互いに略等しい長さLe、Lf、LgおよびLhを有する。また、信号線23a〜23hには、VIA23ivが含まれないので、信号線23a〜23hにおけるインピーダンスは、それぞれ、互いに略等しくなる。
【0031】
また、本実施形態では、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23において、VIA23ivの長さLとVIA23iv以外の長さLとを調整することにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成されている。具体的には、VIA23ivを含む信号線23iは、VIA23ivを含まない信号線23jの長さLjより短いLiを有する。ここで、信号線23におけるインピーダンスは、信号線23の長さが大きくなるのに伴って大きくなる。また、信号線23におけるインピーダンスは、信号線23の断面積が大きくなるのに伴って小さくなる。上述したように、VIA23ivの断面積は、VIA23iv以外の断面積よりも大きい。したがって、信号線23iにおけるVIA23ivの長さを考慮して、VIA23ivを含む信号線23iの長さLiを、VIA23ivを含まない信号線23jの長さLjよりも小さくしている。これにより、信号線23iおよび信号線23jにおけるインピーダンスを、それぞれ、互いに略等しくすることが可能である。
【0032】
また、信号線23kは、接続点24cとプリアンプ22との間において、接続点24cで合流した信号線23iおよび23jが共通化されている。接続点24cとプリアンプ22との間の信号線23kは、長さLkを有する。なお、SiPM21a、21b、21cおよび21dそれぞれとプリアンプ22との信号線23の長さは、それぞれ、互いに等しい長さWLa、WLb、WLcおよびWLdを有する。また、SiPM21e、21f、21gおよび21hそれぞれとプリアンプ22との信号線23の長さは、それぞれ、互いに等しく、かつ、長さWLa、WLb、WLcおよびWLdとは異なる、長さWLe、WLf、WLgおよびWLhを有する。ここで、長さWLa(WLb、WLc、WLd)は、長さLa(Lb、Lc、Ld)と、長さLiと、長さLkとを足し合わせた長さである。また、長さWLe(WLf、WLg、WLh)と、長さLjと、長さLkとを足し合わせた長さである。
【0033】
以上の構成により、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスを互いに略等しくすることが可能である。
【0034】
ここで、光検出器20では、SiPM21とプリアンプ22との間の信号線23におけるインピーダンスと、プリアンプ22の入力側のインピーダンスとを整合させるように構成されている。したがって、上記のように、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスを互いに略等しくすることにより、複数(8つ)のSiPM21のそれぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスと、プリアンプ22の入力側のインピーダンスとが整合される。これにより、いずれのSiPM21から出力されたタイミング信号においても、インピーダンスの不整合に起因するタイミング信号の遅れや乱れ等の劣化が生じにくい。
【0035】
なお、信号線23におけるインピーダンスを互いに略等しく場合、SiPM21から信号線23により伝達されるタイミング信号のプリアンプ22への到達時間が略等しくなる。すなわち、複数(8つ)のSiPM21それぞれに入射されたシンチレーション光がプリアンプ22に等しい時間遅れて伝達されることになる。以下の説明では、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスを互いに略等しくした配線レイアウトを、「等遅延配線」と呼ぶ場合がある。
【0036】
次に、図6および図7を参照して、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23を、「最短配線」とする従来の構成におけるタイミング信号の波形と、「等遅延配線」とした本実施形態の構成におけるタイミング信号の波形との差異を説明する。
【0037】
図6の左段に示すように、「最短配線」とする従来の構成のシミュレーション結果では、複数(8つ)のSiPM21それぞれからのタイミング信号には、波打つような乱れ(リンギング)が生じている。また、複数(8つ)のSiPM21それぞれからのタイミング信号同士にずれが生じることにより、タイミング信号同士で、波形のピーク部分にずれが生じている。なお、波形のピーク部分は、光検出器20において、タイミング信号の立ち上がり時間と見なされる。
【0038】
図6の右段に示すように、「等遅延配線」とした本実施形態の構成のシミュレーション結果では、複数(8つ)のSiPM21それぞれからのタイミング信号には、「最短配線」とする従来の構成と比較して、リンギングは殆ど生じていない。また、複数(8つ)のSiPM21それぞれからのタイミング信号同士は、略等しい波形を有する。なお、「等遅延配線」とした本実施形態の構成のシミュレーションは、SiPM21のそれぞれとプリアンプ22とを接続する信号線23それぞれの長さを互いに等しくした「等長配線」を用いて行った。
【0039】
図7の上段に示すように、「最短配線」とする従来の構成の実測結果では、タイミング信号の波形には、シミュレーション結果(図6参照)と同様に、リンギングが生じている。また、タイミング信号の立ち上がり時間が約6〜8nsとなっている。なお、図7では、多数のタイミング信号の波形を重ね合わせた(積算した)ものを示しており、斜線の間隔の大きさにより、タイミング信号の波形の積算度合いの大きさを示している。
【0040】
図7の下段に示すように、「等遅延配線」とした本実施形態の構成の実測結果では、タイミング信号の波形には、シミュレーション結果(図6参照)と同様に、「最短配線」とする従来の構成と比較して、リンギングは殆ど生じていない。また、タイミング信号の立ち上がり時間が、「最短配線」とする従来の構成よりも速い、約3〜4nsとなっている。
【0041】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0042】
本実施形態では、上記のように、光検出器20を、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成する。これにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のいずれの信号線23にタイミング信号が伝達される場合でも、タイミング信号の反射が生じるのを抑制することができるので、タイミング信号の反射に起因するタイミング信号の遅れや乱れ等の劣化が生じるのを抑制することができる。その結果、SiPM21がマルチプレクサ接続された構成においてタイミング信号を取得する場合に、タイミング信号の立ち上がり時間が遅くなることに起因して時間分解能が低下することを抑制することができる。したがって、陽電子放射断層撮影装置100において、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成された光検出器20を用いることにより、光検出器20の時間分解能を向上させ、薬剤の位置の推定精度を向上させることができる。
【0043】
また、本実施形態では、上記のように、光検出器20を、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23の断面積または長さLを調整することにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成する。これにより、信号線23の素材が等しい場合には、信号線23におけるインピーダンスは、信号線23の断面積または長さLの少なくとも一方に依存するので、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23の断面積または長さLの少なくとも一方を調整することによって、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0044】
また、本実施形態では、上記のように、信号線23は、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間において、複数のSiPM21それぞれからの信号線23が合流する接続点24を含み、光検出器20を、複数のSiPM21それぞれと接続点24との間のそれぞれの信号線23の長さLを互いに略等しくすることにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成する。これにより、信号線23の素材および断面積が略等しい場合、複数のSiPM21それぞれと接続点24との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなる。また、信号線23における接続点24のプリアンプ22側では、複数のSiPM21それぞれからの信号線23が合流して共通化されるので、接続点24で合流した複数の信号線23におけるSiPM21それぞれと接続点24との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスは共通の値となる。その結果、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0045】
また、本実施形態では、上記のように、信号線23は、SiPM21が設けられる基板30の一方側の面30aに配置される部分と、基板30の他方側の面30bに配置される部分と、一方側の面30aに配置される部分と他方側の面30bに配置される部分とを接続するように基板30に埋め込まれたVIA23ivと、を含み、光検出器20を、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23において、VIA23ivの長さLとVIA23iv以外の長さLとを調整することにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成する。これにより、VIA23ivとVIA23iv以外とで断面積が異なっていたとしても、信号線23にVIA23ivが含まれる場合に、VIA23ivの長さLとVIA23iv以外の長さLとを調整することにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0046】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0047】
たとえば、上記実施形態では、光検出器20を、複数(8つ)のSiPM21それぞれと接続点24との間のそれぞれの信号線23の長さLを互いに略等しくするように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数(8つ)のSiPM21それぞれと接続点24との間のそれぞれの信号線23の長さLを互いに異なるように構成してもよい。
【0048】
また、上記実施形態では、SiPM21a、21b、21cおよび21dを、それぞれ、信号線23a、23b、23cおよび23dにより、接続点24aと接続させ、SiPM21e、21f、21gおよび21hを、それぞれ、信号線23e、23f、23gおよび23hにより、接続点24bと接続させ、接続点24aおよび接続点24bを、それぞれ、信号線23iおよび信号線23jにより、接続点24cと接続させるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、接続点24に合流させる信号線23の本数および接続点24の個数は幾つでもよい。
【0049】
また、上記実施形態では、光検出器20を、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23において、VIA23ivの長さLとVIA23iv以外の長さLとを調整することにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、光検出器20を、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23において、VIA23ivの断面積とVIA23iv以外の断面積とを調整してもよいし、VIA23ivの断面積と、VIA23ivの長さLと、VIA23iv以外の断面積と、VIA23iv以外の長さLとを、適宜組み合わせて調整することにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成してもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、VIA23ivを、接続点24aと接続点24cとを接続する信号線23iに設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、VIAを、信号線23のいずれの部分に設けてもよい。また、VIAを、信号線23に2箇所以上設けてもよい。また、VIA23ivを設けないように構成してもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、SiPM21a(21b、21c、21d)とプリアンプ22との信号線23の長さWLa(WLb、WLc、WLd)と、SiPM21e(21f、21g、21h)とプリアンプ22との信号線23の長さWLe(WLf、WLg、WLh)とが異なるように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、SiPM21a、21b、21c、21d、21e、21f、21gおよび21hそれぞれとプリアンプ22と間のそれぞれの信号線23の長さWLa、WLb、WLc、WLd、WLe、WLf、WLgおよびWLhを互いに略等しくしてもよい。これにより、たとえば、信号線23の素材および断面積が略等しい場合に、SiPM21a、21b、21c、21d、21e、21f、21gおよび21hそれぞれとプリアンプ22との間の信号線23の長さを互いに略等しくする(「等長配線」にする、つまり、図3において、各信号線23にVIAを設けないとともに各信号線23の断面積が互いに等しい構成とする)ことにより、複数のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスを互いに略等しくなるように容易に構成することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、8つのSiPM21をマルチプレクサ接続するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、SiPM21をマルチプレクサ接続する個数は幾つでもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、陽電子放射断層撮影装置100が、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成した光検出器20を備える例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、複数(8つ)のSiPM21それぞれとプリアンプ22との間のそれぞれの信号線23におけるインピーダンスが互いに略等しくなるように構成した光検出器20を陽電子放射断層撮影装置100以外の装置に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10 シンチレータ
20 光検出器
21(21a、21b、21c、21d、21e、21f、21g、21h) SiPM(光電変換素子)
22 プリアンプ(増幅部)
23(23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23h、23i、23j、23k) 信号線
23iv VIA(埋込み部分)
24(23a、23b、23c) 接続点
30 基板
30a (基板の)一方側の面
30b (基板の)他方側の面
100 陽電子放射断層撮影装置
P 被検体
L(La、Lb、Lc、Ld、Le、Lf、Lg、Lh、Li、Lj、Lk)、WL(WLa、WLb、WLc、WLd、WLe、WLf、WLg、WLh) (信号線の)長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7