(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記金属酸化物が、酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化イットリウムおよび酸化亜鉛のうちの少なくとも1種を含む請求項8に記載の電池。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について以下の順序で説明する。
1 第1の実施形態(ラミネートフィルム型電池の例)
2 第2の実施形態(円筒型電池の例)
3 第3の実施形態(電池パックおよび電子機器の例)
【0010】
<1 第1の実施形態>
[電池の構成]
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る非水電解質二次電池(以下単に「電池」という。)10は、いわゆるラミネートフィルム型電池であり、正極リード11および負極リード12が取り付けられた扁平状の巻回電極体20をフィルム状の外装材30の内部に収容したものであり、小型化、軽量化および薄型化が可能となっている。電池10は、例えば、負極の容量が、電極反応物質であるリチウム(Li)の吸蔵および放出による容量成分により表されるいわゆるリチウムイオン二次電池である。
【0011】
正極リード11および負極リード12は、それぞれ、外装材30の内部から外部に向かい例えば同一方向に導出されている。正極リード11および負極リード12は、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)またはステンレス等の金属材料によりそれぞれ構成されており、それぞれ薄板状または網目状とされている。
【0012】
外装材30は、例えば、柔軟性を有するラミネートフィルムからなる。外装材30は、例えば、熱融着樹脂層、金属層、表面保護層を順次積層した構成を有する。なお、熱融着樹脂層側の面が、巻回電極体20を収容する側の面となる。この熱融着樹脂層の材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が挙げられる。金属層の材料としては、例えばアルミニウムが挙げられる。表面保護層の材料としては、例えばナイロン(Ny)が挙げられる。具体的には例えば、外装材30は、例えば、ナイロンフィルム、アルミニウム箔およびポリエチレンフィルムをこの順に貼り合わせた矩形状のアルミラミネートフィルムにより構成されている。外装材30は、例えば、熱融着樹脂層側と巻回電極体20とが対向するように配設され、各外縁部が融着または接着剤により互いに密着されている。外装材30と正極リード11および負極リード12との間には、外気の侵入を防止するための密着フィルム31が挿入されている。密着フィルム31は、正極リード11および負極リード12に対して密着性を有する材料、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂により構成されている。
【0013】
なお、外装材30は、上述したラミネートフィルムに代えて、他の構造を有するラミネートフィルム、ポリプロピレン等の高分子フィルムまたは金属フィルムにより構成するようにしてもよい。あるいは、アルミニウム製フィルムを心材として、その片面または両面に高分子フィルムを積層したラミネートフィルムを用いてもよい。
【0014】
また、外装材30としては、外観の美しさの点から、有色層をさらに備えるもの、および/または、熱融着樹脂層および表面保護層のうちから選ばれる少なくとも一種の層に着色材を含むものを用いてもよい。熱融着樹脂層と金属層との間、および表面保護層と金属層との間の少なくとも一方に接着層が設けられている場合には、その接着層が着色材を含むようにしてもよい。
【0015】
図2、
図3に示すように、電池素子としての巻回電極体20は、帯状の正極21と帯状の負極22とを、帯状のセパレータ23および電解質層24を介して積層し、扁平状かつ渦巻状に巻回したものであり、最外周部は保護テープ(図示せず)により保護されている。なお、
図2では、巻回電極体20の巻回構造の理解を容易とするために、電解質層24の図示を省略すると共に、巻回電極体20の各構成部材間に隙間を設けて示している。
【0016】
以下、巻回電極体20を構成する正極21、負極22、セパレータ23および電解質層24について順次説明する。
【0017】
(正極)
正極21は、正極集電体21Aと、正極集電体21Aの両面に設けられた正極活物質層21Bとを備える。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。正極活物質層21Bは、例えば、電極反応物質であるリチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質と、バインダーと、導電剤とを含む。
【0018】
(正極活物質)
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物またはリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物が適当であり、これらの2種以上を混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(A)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(B)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。リチウム含有化合物としては、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)および鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、式(C)、式(D)もしくは式(E)に示した層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、式(F)に示したスピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、または式(G)に示したオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられ、具体的には、LiNi
0.50Co
0.20Mn
0.30O
2、Li
aCoO
2(a≒1)、Li
bNiO
2(b≒1)、Li
c1Ni
c2Co
1-c2O
2(c1≒1,0<c2<1)、Li
dMn
2O
4(d≒1)またはLi
eFePO
4(e≒1)等がある。
【0019】
Li
pNi
(1-q-r)Mn
qM1
rO
(2-y)X
z ・・・(A)
(但し、式(A)中、M1は、ニッケル、マンガンを除く2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。Xは、酸素以外の16族元素および17族元素のうち少なくとも1種を示す。p、q、y、zは、0≦p≦1.5、0≦q≦1.0、0≦r≦1.0、−0.10≦y≦0.20、0≦z≦0.2の範囲内の値である。)
【0020】
Li
aM2
bPO
4 ・・・(B)
(但し、式(B)中、M2は、2族〜15族から選ばれる元素のうち少なくとも一種を示す。a、bは、0≦a≦2.0、0.5≦b≦2.0の範囲内の値である。)
【0021】
Li
fMn
(1-g-h)Ni
gM3
hO
(2-j)F
k ・・・(C)
(但し、式(C)中、M3は、コバルト、マグネシウム(Mg)、アルミニウム、ホウ素(B)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、鉄、銅、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、スズ(Sn)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)およびタングステン(W)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。f、g、h、jおよびkは、0.8≦f≦1.2、0<g<0.5、0≦h≦0.5、g+h<1、−0.1≦j≦0.2、0≦k≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、fの値は完全放電状態における値を表している。)
【0022】
Li
mNi
(1-n)M4
nO
(2-p)F
q ・・・(D)
(但し、式(D)中、M4は、コバルト、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。m、n、pおよびqは、0.8≦m≦1.2、0.005≦n≦0.5、−0.1≦p≦0.2、0≦q≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、mの値は完全放電状態における値を表している。)
【0023】
Li
rCo
(1-s)M5
sO
(2-t)F
u ・・・(E)
(但し、式(E)中、M5は、ニッケル、マンガン、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。r、s、tおよびuは、0.8≦r≦1.2、0≦s<0.5、−0.1≦t≦0.2、0≦u≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、rの値は完全放電状態における値を表している。)
【0024】
Li
vMn
2-wM6
wO
xF
y ・・・(F)
(但し、式(F)中、M6は、コバルト、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、クロム、鉄、銅、亜鉛、モリブデン、スズ、カルシウム、ストロンチウムおよびタングステンからなる群のうちの少なくとも1種を表す。v、w、xおよびyは、0.9≦v≦1.1、0≦w≦0.6、3.7≦x≦4.1、0≦y≦0.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、vの値は完全放電状態における値を表している。)
【0025】
Li
zM7PO
4 ・・・(G)
(但し、式(G)中、M7は、コバルト、マンガン、鉄、ニッケル、マグネシウム、アルミニウム、ホウ素、チタン、バナジウム、ニオブ(Nb)、銅、亜鉛、モリブデン、カルシウム、ストロンチウム、タングステンおよびジルコニウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。zは、0.9≦z≦1.1の範囲内の値である。なお、リチウムの組成は充放電の状態によって異なり、zの値は完全放電状態における値を表している。)
【0026】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質としては、これらの他にも、MnO
2、V
2O
5、V
6O
13、NiS、MoS等のリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0027】
リチウムを吸蔵および放出することが可能な正極活物質は、上記以外のものであってもよい。また、上記で例示した正極活物質は、任意の組み合わせで2種以上混合されてもよい。
【0028】
(バインダー)
バインダーは、融点が166℃以下であるフッ素系バインダーを含む。フッ素系バインダーの融点が166℃以下であると、フッ素系バインダーと正極活物質粒子との親和性が向上し、フッ素系バインダーにより正極活物質粒子を良好に被覆することができるため、正極活物質粒子と電解液との反応を抑制することができる。したがって、ガス発生による電池10の膨れを抑制することができる。また、フッ素系バインダーにより正極活物質粒子を良好に被覆することで、正極21の熱安定性を向上することができるため、電池10の安全性(例えば釘刺し試験により評価される短絡系安全性や、加熱試験により評価される加熱系安全性)を向上することもできる。フッ素系バインダーの融点の下限値は特に限定されるものではないが、例えば150℃以上である。
【0029】
上記のフッ素系バインダーの融点は、例えば次のようにして測定される。まず、電池10から正極21を取り出し、ジメチルカーボネート(DMC)で洗浄、乾燥させたのち、正極集電体21Aを取り除き、適切な分散媒(例えばN−メチルピロリドン等)中で加熱、撹拌することで、バインダーを分散媒中に溶解させる。その後、遠心分離によって正極活物質を取り除き、上澄み液を濾過したのち、蒸発乾固または水中で再沈殿することで、バインダーを取り出すことができる。
【0030】
次に、DSC(示差走査熱量計 例えば株式会社リガク製 Rigaku Thermo plus DSC8230)により数〜数十mgのサンプルを1〜10℃/minの昇温速度で加温していき、最大吸熱量を示した温度をフッ素系バインダーの融点とする。本発明では、加熱、加温により高分子が流動性を示すようになる温度を融点と定義する。
【0031】
フッ素系バインダーは、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)である。ポリフッ化ビニリデンとしては、フッ化ビニリデン(VdF)を単量体として含む単独重合体(ホモポリマー)を用いることが好ましい。ポリフッ化ビニリデンとして、フッ化ビニリデン(VdF)を単量体として含む共重合体(コポリマー)を用いることも可能であるが、共重合体であるポリフッ化ビニリデンは、電解液に膨潤および溶解しやすく、結着力が弱いため、正極21の特性が低下する虞がある。ポリフッ化ビニリデンとしては、その末端等の一部をマレイン酸等のカルボン酸で変性したものを用いてもよい。なお、フッ素系バインダーとして、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を用いてもよい。また、バインダーとして、フッ素系バインダーに代えて、合成ゴム(フッ素ゴム)を用いてもよい。
【0032】
正極活物質層21B中におけるフッ素系バインダーの含有量が、0.5質量%以上2.8質量%以下、好ましくは0.7質量%以上2.8質量%以下である。フッ素系バインダーの含有量が0.5質量%未満であると、正極活物質粒子同士の結着、および正極活物質粒子と正極集電体21Aとの結着が不十分になり、正極21を扁平状に巻回したときに、正極集電体21Aから正極活物質層21Bが脱落する虞がある。また、フッ素系バインダーによる正極活物質粒子の被覆が不十分になり、電池10の膨れを抑制することが困難となると共に、電池10の安全性が低下する虞もある。一方、フッ素系バインダーの含有量が2.8質量%を超えると、正極活物質層21Bの柔軟性が低下し、正極21を扁平状に巻回したときに、正極活物質層21Bに割れが発生する虞がある。
【0033】
上記のフッ素系バインダーの含有量は、例えば次のようにして測定される。まず、電池10から正極21を取り出し、DMCで洗浄、乾燥させる。次に、数〜数十mgのサンプルを示差熱天秤装置(TG−DTA 例えば株式会社リガク製Rigaku Thermo plus TG8120)を用い、1〜5℃/minの昇温速度で、空気雰囲気下にて600℃まで加熱し、その際の重量減少量から、正極活物質層21B中におけるフッ素系バインダーの含有量を求める。なお、バインダーに起因する重量減少量であるか否かは、上述のバインダーの融点の測定方法で説明したようにしてバインダーを単離し、バインダーのみのTG−DTA測定を空気雰囲気下で行い、バインダーが何℃で燃焼するかを調べることにより確認可能である。
【0034】
(導電剤)
導電剤としては、例えば、黒鉛、炭素繊維、カーボンブラック、ケッチェンブラックまたはカーボンナノチューブ等の炭素材料が挙げられ、これらのうちの1種を単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、炭素材料の他にも、導電性を有する材料であれば金属材料または導電性高分子材料等を用いるようにしてもよい。
【0035】
正極活物質層21B中における導電剤の含有量が、0.3質量%以上2.8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上2.8質量%以下であることがより好ましい。導電剤の含有量が0.3質量%以上であると、導電剤によるガス吸収能力が向上し、電池10の膨れを更に抑制できる。また、正極活物質層21Bの柔軟性を向上し、正極21を扁平状に巻回したときに、正極活物質層21Bに割れが発生することを抑制することができる。一方、導電剤の含有量が2.8質量%以下であると、導電剤に吸着するバインダーの量を抑制し、正極21を扁平状に巻回したときに、正極集電体21Aから正極活物質層21Bが脱落することを抑制することができる。また、導電剤に吸着するバインダーの量の抑制により、バインダーによる正極活物質粒子の被覆が不十分となることを抑制することができる。したがって、電池10の安全性が低下することを抑制することができる。
【0036】
上記の導電剤の含有量は、例えば次のようにして測定される。まず、電池10から正極21を取り出し、DMCで洗浄、乾燥させる。次に、数〜数十mgのサンプルを示差熱天秤装置(TG−DTA 例えば株式会社リガク製Rigaku Thermo plus TG8120)を用い、1〜5℃/minの昇温速度で、空気雰囲気下にて600℃まで加熱する。そして、その際の重量減少量からバインダーの燃焼反応に起因する重量減少量を引くことで、導電剤の含有量を求める。なお、バインダーに起因する重量減少量であるか否かは、上述のバインダーの融点の測定方法で説明したようにしてバインダーを単離し、バインダーのみのTG−DTA測定を空気雰囲気下で行い、バインダーが何℃で燃焼するかを調べることにより確認可能である。
【0037】
(負極)
負極22は、負極集電体22Aの片面または両面に負極活物質層22Bが設けられた構造を有しており、負極活物質層22Bと正極活物質層21Bとが対向するように配置されている。なお、図示はしないが、負極集電体22Aの片面のみに負極活物質層22Bを設けるようにしてもよい。負極集電体22Aは、例えば、銅箔、ニッケル箔またはステンレス箔等の金属箔により構成されている。
【0038】
負極活物質層22Bは、リチウムを吸蔵および放出することが可能な1種または2種以上の負極活物質を含む。負極活物質層22Bは、必要に応じてバインダーや導電剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0039】
なお、この電池10では、負極22または負極活物質の電気化学当量が、正極21の電気化学当量よりも大きくなっており、理論上、充電の途中において負極22にリチウム金属が析出しないようになっていることが好ましい。
【0040】
(負極活物質)
負極活物質としては、例えば、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維または活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素または易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れたサイクル特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池10の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0041】
また、高容量化が可能な他の負極活物質としては、金属元素および半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素(例えば、合金、化合物または混合物)として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。なお、本発明において、合金には2種以上の金属元素からなるものに加えて、1種以上の金属元素と1種以上の半金属元素とを含むものも含める。また、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物またはそれらのうちの2種以上が共存するものがある。
【0042】
このような負極活物質としては、例えば、リチウムと合金を形成することが可能な金属元素または半金属元素が挙げられる。具体的には、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、チタン、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)または白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0043】
負極活物質としては、短周期型周期表における4B族の金属元素または半金属元素を構成元素として含むものが好ましく、より好ましいのはケイ素およびスズの少なくとも一方を構成元素として含むものである。ケイ素およびスズは、リチウムを吸蔵および放出する能力が大きく、高いエネルギー密度を得ることができるからである。このような負極活物質としては、例えば、ケイ素の単体、合金または化合物や、スズの単体、合金または化合物や、それらの1種または2種以上の相を少なくとも一部に有する材料が挙げられる。
【0044】
ケイ素の合金としては、例えば、ケイ素以外の第2の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモン(Sb)およびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。スズの合金としては、例えば、スズ以外の第2の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムからなる群のうちの少なくとも1種を含むものが挙げられる。
【0045】
スズの化合物またはケイ素の化合物としては、例えば、酸素または炭素を含むものが挙げられ、スズまたはケイ素に加えて、上述した第2の構成元素を含んでいてもよい。
【0046】
その他の負極活物質としては、例えば、リチウムを吸蔵および放出することが可能な金属酸化物または高分子化合物等も挙げられる。金属酸化物としては、例えば、チタン酸リチウム(Li
4Ti
5O
12)等のチタンとリチウムとを含むリチウムチタン酸化物、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデン等が挙げられる。高分子化合物としては、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロール等が挙げられる。
【0047】
(結着剤)
バインダーとしては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、スチレンブタジエンゴムおよびカルボキシメチルセルロース等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種が用いられる。
【0048】
(導電剤)
導電剤としては、正極活物質層21Bと同様の炭素材料等を用いることができる。
【0049】
(セパレータ)
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータ23は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンあるいはポリエチレン等の樹脂製の多孔質膜によって構成されており、これらの2種以上の多孔質膜を積層した構造とされていてもよい。中でも、ポリオレフィン製の多孔質膜は短絡防止効果に優れ、かつシャットダウン効果による電池10の安全性向上を図ることができるので好ましい。特にポリエチレンは、100℃以上160℃以下の範囲内においてシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性にも優れているので、セパレータ23を構成する材料として好ましい。他にも、化学的安定性を備えた樹脂を、ポリエチレンあるいはポリプロピレンと共重合またはブレンド化した材料を用いることができる。あるいは、多孔質膜は、ポリプロピレン層と、ポリエチレン層と、ポリプロピレン層とを順次に積層した3層以上の構造を有していてもよい。
【0050】
(集電体露出部)
正極21の外周側端部の内側面には、正極活物質層21Bが設けられず、正極集電体21Aの内側面が露出した正極集電体露出部21C
1が設けられている。また、正極21の外周側端部の外側面には、正極活物質層21Bが設けられず、正極集電体21Aの外側面が露出した正極集電体露出部21D
1が設けられている。巻回方向における正極集電体露出部21D
1の長さは、例えば、巻回方向における正極集電体露出部21C
1の長さよりも約1周長い。
【0051】
正極集電体露出部21C
1および正極活物質層21Bの境界にある段差部と、正極集電体露出部21C
1とは、保護テープ25A
1により覆われている。また、正極集電体露出部21D
1および正極活物質層21Bの境界にある段差部と、正極集電体露出部21D
1とは、保護テープ25B
1により覆われている。
【0052】
正極21の内周側端部の内側面には、正極活物質層21Bが設けられず、正極集電体21Aの内側面が露出した正極集電体露出部21C
2が設けられている。また、正極21の内周側端部の外側面には、正極活物質層21Bが設けられず、正極集電体21Aの外側面が露出した正極集電体露出部21D
2が設けられている。巻回方向における正極集電体露出部21C
2、21D
2の長さは、例えば、ほぼ同一である。正極集電体露出部21C
2には正極リード11が接続されている。
【0053】
正極集電体露出部21C
2および正極活物質層21Bの境界にある段差部と、正極集電体露出部21C
2とは、保護テープ25A
2により覆われている。また、正極集電体露出部21D
2および正極活物質層21Bの境界にある段差部と、正極集電体露出部21D
2とは、保護テープ25B
2により覆われている。
【0054】
負極22の外周側端部の内側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの内側面が露出した負極集電体露出部22C
1が設けられている。また、負極22の外周側端部の外側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの外側面が露出した負極集電体露出部22D
1が設けられている。巻回方向における負極集電体露出部22C
1、22D
1の長さは、例えば、ほぼ同一である。
【0055】
負極22の内周側端部の内側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの内側面が露出した負極集電体露出部22C
2が設けられている。また、負極22の内周側端部の外側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの外側面が露出した負極集電体露出部22D
2が設けられている。巻回方向における負極集電体露出部22C
2の長さは、例えば、巻回方向における負極集電体露出部22D
2の長さよりも約1周長い。負極集電体露出部22D
2には負極リード12が接続されている。
【0056】
負極集電体露出部22C
2のうち、正極集電体21Aの内周側の先端に対向する部分には保護テープ26Aが設けられている。また、負極集電体露出部22D
2のうち、正極集電体21Aの内周側の先端に対向する部分には保護テープ26Bが設けられている。なお、保護テープ25A
1、25A
2、25B
1、25B
2、26A、26Bは必要に応じて設けられるものであって、設けなくてもよい。
【0057】
正極21の外周側端部に設けられた正極集電体露出部21C
1と、負極22の外周側端部に設けられた負極集電体露出部22D
1とが、セパレータ23を介して対向する第1の対向部を構成している。また、正極21の外周側端部に設けられた正極集電体露出部21D
1と、負極22の外周側端部に設けられた負極集電体露出部22C
1とが、セパレータ23を介して対向する第2の対向部を構成している。このように巻回電極体20の外周部に第1、第2の対向部を設けることで、釘刺し試験等の外傷試験において低抵抗の短絡を形成することができる。したがって、短絡時のジュール発熱量を抑制し、安全性を向上することができる。
【0058】
正極21の内周側端部に設けられた正極集電体露出部21C
2と、負極22の内周側端部に設けられた負極集電体露出部22D
2とが、セパレータ23を介して対向する第3の対向部を構成している。また、正極21の内周側端部に設けられた正極集電体露出部21D
2と、負極22の内周側端部に設けられた負極集電体露出部22C
2とが、セパレータ23を介して対向する第4の対向部を構成している。このように巻回電極体20の内周部に第3、第4の対向部を設けることで、釘刺し試験等の外傷試験において低抵抗の短絡を形成することができる。したがって、短絡時のジュール発熱量を抑制し、安全性を向上することができる。
【0059】
第1〜第4の対向部は、安全性の向上の観点から、少なくとも巻回方向におけるフラット面20Sの中心部に設けられていることが好ましい。また、第1〜第4の対向部は、安全性のさらなる向上の観点から、巻回方向に少なくとも1つのフラット面20Sに渡って設けられていることが好ましく、巻回方向に少なくとも2つのフラット面20Sに渡って設けられていることがより好ましい。
【0060】
巻回方向における第1〜第4の対向部の長さは、安全性の向上の観点からすると、好ましくは1/4周以上、より好ましくは巻回方向におけるフラット面20Sの長さ以上、さらにより好ましくは半周以上、特に好ましくは1周以上の範囲に渡って設けられていている。巻回方向における第1〜第4の対向部の長さは、エネルギー密度の低下を抑制する観点からすると、好ましくは2周以下、より好ましくは1周半以下、さらにより好ましくは1周以下の範囲に渡って設けられている。
【0061】
(電解質層)
電解質層24は、中間層の一例であって、非水電解液と、この非水電解液を保持する保持体となる、高分子化合物としてフッ素樹脂とを含み、フッ素樹脂は非水電解液により膨潤されている。フッ素樹脂の含有比率は適宜調整可能である。電解質層24がフッ素樹脂を含むことで、融点が166℃以下であるフッ素系バインダーを含む正極活物質層21Bと、セパレータ23との密着性を高めることができる。電解質層24が、ゲル状の電解質層であることが好ましい。電解質層24がゲル状の電解質層であると、高いイオン伝導率を得ることができると共に、電池10の漏液を特に抑制することができるからである。
【0062】
電解液は、溶媒と、この溶媒に溶解された電解質塩とを含む。電解液が、電池特性を向上するために、公知の添加剤を含んでいてもよい。
【0063】
溶媒としては、炭酸エチレンあるいは炭酸プロピレン等の環状の炭酸エステルを用いることができ、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレンのうちの一方、特に両方を混合して用いることが好ましい。サイクル特性を向上させることができるからである。
【0064】
溶媒としては、また、これらの環状の炭酸エステルに加えて、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルあるいは炭酸メチルプロピル等の鎖状の炭酸エステルを混合して用いることが好ましい。高いイオン伝導性を得ることができるからである。
【0065】
溶媒としては、さらにまた、2,4−ジフルオロアニソールあるいは炭酸ビニレンを含むこと好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、炭酸ビニレンはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量およびサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0066】
これらの他にも、溶媒としては、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3−メトキシプロピロニトリル、N,N−ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、ジメチルスルフォキシドあるいはリン酸トリメチル等が挙げられる。
【0067】
なお、これらの非水溶媒の少なくとも一部の水素をフッ素で置換した化合物は、組み合わせる電極の種類によっては、電極反応の可逆性を向上させることができる場合があるので、好ましい場合もある。
【0068】
電解質塩としては、例えばリチウム塩が挙げられ、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiAsF
6、LiClO
4、LiB(C
6H
5)
4、LiCH
3SO
3、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2CF
3)
2、LiC(SO
2CF
3)
3、LiAlCl
4、LiSiF
6、LiCl、ジフルオロ[オキソラト−O,O']ホウ酸リチウム、リチウムビスオキサレートボレート、あるいはLiBr等が挙げられる。中でも、LiPF
6は高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0069】
高分子化合物としてのフッ素樹脂は、例えば、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1種を含む。特に電気化学的な安定性の点から、ポリフッ化ビニリデンおよびポリヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0070】
[電池電圧]
第1の実施形態に係る電池10では、一対の正極21および負極22当たりの完全充電状態における開回路電圧(すなわち電池電圧)は、4.25V未満でもよいが、好ましくは4.25V以上、より好ましくは4.3V、更により好ましくは4.4V以上になるように設計されていてもよい。電池電圧を高くすることにより、高いエネルギー密度を得ることができる。一対の正極21および負極22当たりの完全充電状態における開回路電圧の上限値は、好ましくは6.00V以下、より好ましくは4.60V以下、さらにより好ましくは4.50V以下である。
【0071】
[電池の動作]
上述の構成を有する電池10では、充電を行うと、例えば、正極活物質層21Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して負極活物質層22Bに吸蔵される。また、放電を行うと、例えば、負極活物質層22Bからリチウムイオンが放出され、電解液を介して正極活物質層21Bに吸蔵される。
【0072】
[電池の製造方法]
次に、本発明の第1の実施形態に係る電池10の製造方法の一例について説明する。
【0073】
(正極の作製工程)
正極21を次にようにして作製する。まず、例えば、正極活物質と、導電剤と、バインダーとを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体21Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層21Bを形成し、正極21を形成する。
【0074】
(負極の作製工程)
負極22を次にようにして作製する。まず、例えば、負極活物質と、バインダーとを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体22Aに塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層22Bを形成し、負極22を作製する。
【0075】
(電解質層の形成工程)
電解質層24を次にようにして作製する。まず、マトリックス高分子と、電解液と、希釈溶剤とを含む電解質溶液を調製する。次に、この電解質溶液を、上述のようにして得られた正極21および負極22のそれぞれに均一に塗布して含浸させる。その後、希釈溶剤を気化させて除去することにより、電解質層24を形成する。
【0076】
(巻回工程)
巻回電極体20を次にようにして作製する。まず、正極集電体21Aの端部に正極リード11を溶接により取り付けると共に、負極集電体22Aの端部に負極リード12を溶接により取り付ける。次に、電解質層24が形成された正極21と負極22とをセパレータ23を介して積層し積層体としたのち、この積層体をその長手方向に巻回して、最外周部に保護テープ25を接着して巻回電極体20を形成する。
【0077】
(封止工程)
外装材30により巻回電極体20を次のようにして封止する。まず、例えば、柔軟性を有する外装材30の間に巻回電極体20を挟み込み、外装材30の外縁部同士を熱融着等により密着させて封止する。その際、正極リード11および負極リード12と外装材30との間には密着フィルム31を挿入する。なお、正極リード11、負極リード12にそれぞれ密着フィルム31を予め取り付けておいてもよい。また、外装材30に予めエンボス成型を施し、巻回電極体20を収容する収容空間としての凹部を形成しておいてもよい。以上により、外装材30により巻回電極体20が収容された電池10が得られる。
【0078】
(プレス工程)
次に、必要に応じて、ヒートプレスにより電池10を成型する。より具体的には、電池10を加圧しながら、常温より高い温度で加熱する。次に、必要に応じて、電池10の主面に加圧板等を押しつけて、電池10を一軸加圧する。
【0079】
[効果]
第1の実施形態に係る電池10は、以下の構成(A)、(B)の両方を備えることで、電池10の安全性を向上することができる。また、ガス発生による電池10の膨れを抑制することができる。また、正極21を扁平状に巻回したときに、正極集電体21Aから正極活物質層21Bが脱落することを抑制し、かつ正極活物質層21Bに割れが発生することも抑制することができる。
構成(A):電池10が、正極21とセパレータ23との間、および負極22とセパレータ23との間に設けられ、フッ素樹脂を含む電解質層24と、融点が166℃以下であるフッ素系バインダーと導電剤とを含み、フッ素系バインダーの含有量が0.5質量%以上2.8質量%以下であり、導電剤の含有量が0.3質量%以上2.8質量%以下である正極活物質層21Bとを備える。
構成(B):正極集電体露出部21C
1、21D
1および負極集電体露出部22C
1、22D
1がセパレータ23を介して対向するように、正極21、負極22およびセパレータ23が巻回されている。
【0080】
上記の安全性の向上に関する効果は、上記構成(A)、(B)をそれぞれ単独で採用した場合には予測できない効果である。すなわち、上記構成(A)、(B)が機能的または作用的に関連して得られる効果である。
【0081】
上記効果の発現は、以下の理由によるものと推測される。熱暴走に至る反応はある温度を超えると爆発的に進むと考えられる。正極の安全性向上のメカニズムが主として反応抑制であるが、少し過酷な状況下におかれると反応は一気に進み、熱暴走に至る。ある温度を超える、超えないは与えられるエネルギーつまり、この場合、短絡により生じるジュール発熱である。そこで、ジュール発熱を抑制することで、「反応が生じにくい状況」、「与えられるエネルギーの抑制」を同時に対応することが可能となり、各々を単独で行った効果を足した効果よりも同時におこなったことが著しい向上に至ったメカニズムと推定される。
【0082】
<2 第2の実施形態>
図4に示すように、本発明の第2の実施形態に係る電池40は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶(外装材)41の内部に、一対の帯状の正極51と帯状の負極52とがセパレータ53を介して積層後、巻回された巻回電極体20を有している。電池缶41は、ニッケルのめっきがされた鉄またはアルミニウム等により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶41の内部には、液状の電解質としての電解液が注入され、正極51、負極52およびセパレータ53に含浸されている。また、巻回電極体50を挟むように巻回周面に対して垂直に一対の絶縁板42、43がそれぞれ配置されている。電解液は、第1の実施形態における電解液と同様である。
【0083】
電池缶41の開放端部には、電池蓋44と、この電池蓋44の内側に設けられた安全弁機構45および熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)46とが、封口ガスケット47を介してかしめられることにより取り付けられている。これにより、電池缶41の内部は密閉されている。電池蓋44は、例えば、電池缶41と同様の材料により構成されている。安全弁機構45は、電池蓋44と電気的に接続されており、内部短絡あるいは外部からの加熱等により電池の内圧が一定以上となった場合に、ディスク板15Aが反転して電池蓋44と巻回電極体50との電気的接続を切断するようになっている。封口ガスケット47は、例えば、絶縁材料により構成されており、表面にはアスファルトが塗布されている。
【0084】
巻回電極体50の中心には、例えばセンターピン54が挿入されている。巻回電極体50の正極51にはアルミニウム等よりなる正極リード55が接続されており、負極52にはニッケル等よりなる負極リード56が接続されている。正極リード55は安全弁機構45に溶接されることにより電池蓋44と電気的に接続されており、負極リード56は電池缶41に溶接され電気的に接続されている。
【0085】
図5に示すように、正極51は、正極集電体51Aと、正極集電体51Aの両面に設けられた正極活物質層51Bとを備える。負極52は、負極集電体52Aと、負極集電体52Aの両面に設けられた負極活物質層52Bとを備える。正極集電体51A、正極活物質層51B、負極集電体52Aおよび負極活物質層52Bの構成はそれぞれ、第1の実施形態における正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bと同様である。
【0086】
正極51の外周側端部の内側面には、正極活物質層51Bが設けられず、正極集電体51Aの内側面が露出した正極集電体露出部51Cが設けられている。また、正極51の外周側端部の外側面には、正極活物質層51Bが設けられず、正極集電体51Aの外側面が露出した正極集電体露出部51Dが設けられている。巻回方向における正極集電体露出部51Dの長さは、例えば、巻回方向における正極集電体露出部51Cの長さよりも約1周長い。
【0087】
正極集電体露出部51Cおよび正極活物質層51Bの境界にある段差部は、保護テープ57Aにより覆われている。また、正極集電体露出部51Dおよび正極活物質層51Bの境界にある段差部は、保護テープ57Bにより覆われている。
【0088】
負極52の外周側端部の内側面には、負極活物質層52Bが設けられず、負極集電体52Aの内側面が露出した負極集電体露出部52Cが設けられている。また、負極52の外周側端部の外側面には、負極活物質層52Bが設けられず、負極集電体52Aの外側面が露出した負極集電体露出部52Dが設けられている。巻回方向における負極集電体露出部52C
、52Dの長さは、例えば、ほぼ同一である。
【0089】
正極51の外周端部に設けられた正極集電体露出部51Dと、負極52の外周端部に設けられた負極集電体露出部52Cとが、セパレータ53を介して対向する対向部を構成している。このように巻回電極体50の外周部に対向部を設けることで、釘刺し試験等の外傷試験において低抵抗の短絡を形成することができる。したがって、短絡時のジュール発熱量を抑制し、安全性を向上することができる。
【0090】
巻回方向における対向部の長さは、安全性の向上の観点からすると、好ましくは1/4周以上、より好ましくは半周以上、特に好ましくは1周以上の範囲に渡って設けられていている。巻回方向における対向部の長さは、エネルギー密度の低下を抑制する観点からすると、好ましくは2周以下、より好ましくは1周半以下の範囲に渡って設けられている。
【0091】
セパレータ53は、基材と、基材の片面または両面に設けられた表面層を備える構成を有する。表面層は、中間層の一例であり、電気的な絶縁性を有する無機粒子と、無機粒子を基材の表面に結着すると共に、無機粒子同士を結着する樹脂材料とを含む。なお、片面にのみ表面層を設ける場合には、表面層は正極51に対向する側の面に設けられることが好ましい。セパレータ53が上記の表面層を備えることで、融点が166℃以下であるフッ素系バインダーを含む正極活物質層21Bと、セパレータ53との密着性を高めることができるので、電池40の膨れを抑制し、かつ電池40の安全性を向上することもできる。
【0092】
表面層に含まれる樹脂材料は、例えば、フィブリル化し、フィブリルが相互連続的に繋がった三次元的なネットワーク構造を有していてもよい。無機粒子は、この三次元的なネットワーク構造を有する樹脂材料に担持されることにより、互いに連結することなく分散状態を保つことができる。また、樹脂材料はフィブリル化せずに基材の表面や無機粒子同士を結着してもよい。この場合、より高い結着性を得ることができる。上述のように基材の片面または両面に表面層を設けることで、耐酸化性、耐熱性および機械強度を基材に付与することができる。
【0093】
基材は、多孔性を有する多孔質層である。基材は、より具体的には、イオン透過度が大きく、所定の機械的強度を有する絶縁性の膜から構成される多孔質膜であり、基材の空孔に電解液が保持される。基材は、セパレータの主要部として所定の機械的強度を有する一方で、電解液に対する耐性が高く、反応性が低く、膨張しにくいという特性を要することが好ましい。
【0094】
基材を構成する樹脂材料は、例えばポリプロピレン若しくはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、ポリエステル樹脂またはナイロン樹脂等を用いることが好ましい。特に、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状ポリエチレン等のポリエチレン、若しくはそれらの低分子量ワックス分、またはポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は溶融温度が適当であり、入手が容易なので好適に用いられる。また、これら2種以上の多孔質膜を積層した構造、もしくは、2種以上の樹脂材料を溶融混練して形成した多孔質膜としてもよい。ポリオレフィン樹脂からなる多孔質膜を含むものは、正極21と負極22との分離性に優れ、内部短絡の低下をいっそう低減することができる。
【0095】
基材としては、不織布を用いてもよい。不織布を構成する繊維としては、アラミド繊維、ガラス繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、またはナイロン繊維等を用いることができる。また、これら2種以上の繊維を混合して不織布としてもよい。
【0096】
無機粒子は、例えば、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物および金属硫化物等のうちの少なくとも1種を含む。金属酸化物は、酸化アルミニウム(アルミナ、Al
2O
3)、ベーマイト(水和アルミニウム酸化物)、酸化マグネシウム(マグネシア、MgO)、酸化チタン(チタニア、TiO
2)、酸化ジルコニウム(ジルコニア、ZrO
2)、酸化ケイ素(シリカ、SiO
2)および酸化イットリウム(イットリア、Y
2O
3)等のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。金属窒化物は、窒化ケイ素(Si
3N
4)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化硼素(BN)および窒化チタン(TiN)等のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。金属炭化物は、炭化ケイ素(SiC)および炭化ホウ素(B
4C)等のうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。金属硫化物は、硫酸バリウム(BaSO
4)等を含むことが好ましい。また、ゼオライト(M
2/nO・Al
2O
3・xSiO
2・yH
2O、Mは金属元素、x≧2、y≧0)等の多孔質アルミノケイ酸塩、層状ケイ酸塩、チタン酸バリウム(BaTiO
3)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)等の鉱物のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。中でも、アルミナ、チタニア(特にルチル型構造を有するもの)、シリカおよびマグネシア等のうちの少なくとも1種を含むことが好ましく、アルミナを含むことがより好ましい。無機粒子は耐酸化性および耐熱性を備えており、無機粒子を含有する正極対向側面の表面層は、充電時の正極近傍における酸化環境に対しても強い耐性を有する。無機粒子の形状は特に限定されるものではなく、球状、板状、繊維状、キュービック状およびランダム形状等のいずれも用いることができる。
【0097】
表面層を構成する樹脂材料としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム、スチレン−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体またはその水素化物、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体またはその水素化物、メタクリル酸エステル−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド、全芳香族ポリアミド(アラミド)等のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリエーテル、アクリル酸樹脂またはポリエステル等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の高い耐熱性を有する樹脂等が挙げられる。これら樹脂材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。中でも、耐酸化性および柔軟性の観点からは、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系樹脂が好ましく、耐熱性の観点からは、アラミドまたはポリアミドイミドを含むことが好ましい。
【0098】
無機粒子の粒径は、1nm〜10μmの範囲内であることが好ましい。1nmより小さいと、入手が困難であり、また入手できたとしてもコスト的に見合わない。一方、10μmより大きいと電極間距離が大きくなり、限られたスペースで活物質充填量が十分得られず電池容量が低くなる。
【0099】
表面層の形成方法としては、例えば、マトリックス樹脂、溶媒および無機物からなるスラリーを基材(多孔質膜)上に塗布し、マトリックス樹脂の貧溶媒且つ上記溶媒の親溶媒浴中を通過させて相分離させ、その後、乾燥させる方法を用いることができる。
【0100】
なお、上述した無機粒子は、基材としての多孔質膜に含有されていてもよい。
【0101】
表面層が無機粒子を含まず、樹脂材料のみにより構成されていてもよい。この場合、樹脂材料としては、フッ素樹脂が用いられる。表面層が無機粒子を含まない場合であっても、表面層がフッ素樹脂を含んでいれば、融点が166℃以下であるフッ素系バインダーを含む正極活物質層51Bと、セパレータ53との密着性を高めることができるので、電池40の安全性を向上することができる。
【0102】
フッ素樹脂としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム等の融点およびガラス転移温度の少なくとも一方が180℃以上の高い耐熱性を有する樹脂等が挙げられる。これら樹脂材料は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0103】
第2の実施形態では、外装材として金属缶を備える円筒型電池に対して本発明を適用した例について説明したが、本発明はラミネートフィルム型電池、特に扁平形状を有するラミネートフィルム型電池に適用することが好ましい。これは以下の理由による。すなわち、円筒型電池の場合には、外装材が金属缶であるため、電池に膨れが発生し難い。また、巻回電極体が円筒形状を有するため、巻回電極体の巻回時に電極に割れが発生することも少ない。これに対して、ラミネートフィルム型電池では、外装材がラミネートフィルムであるため、電池に膨れが発生しやすい。また、巻回電極体が扁平形状であるため、巻回電極体の巻回時に電極に割れが発生しやすい。
【0104】
<3 第3の実施形態>
第3の実施形態では、上述の第1または第2の実施形態に係る電池を備える電池パックおよび電子機器について説明する。
【0105】
図8は、応用例としての電池パック300および電子機器400の構成の一例を示す。電子機器400は、電子機器本体の電子回路401と、電池パック300とを備える。電池パック300は、正極端子331aおよび負極端子331bを介して電子回路401に対して電気的に接続されている。電子機器400は、例えば、ユーザにより電池パック300を着脱自在な構成を有している。なお、電子機器400の構成はこれに限定されるものではなく、ユーザにより電池パック300を電子機器400から取り外しできないように、電池パック300が電子機器400内に内蔵されている構成を有していてもよい。
【0106】
電池パック300の充電時には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、充電器(図示せず)の正極端子、負極端子に接続される。一方、電池パック300の放電時(電子機器400の使用時)には、電池パック300の正極端子331a、負極端子331bがそれぞれ、電子回路401の正極端子、負極端子に接続される。
【0107】
電子機器400としては、例えば、ノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話(例えばスマートフォン等)、携帯情報端末(Personal Digital Assistants:PDA)、表示装置(LCD、ELディスプレイ、電子ペーパ等)、撮像装置(例えばデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等)、オーディオ機器(例えばポータブルオーディオプレイヤー)、ゲーム機器、コードレスフォン子機、電子書籍、電子辞書、ラジオ、ヘッドホン、ナビゲーションシステム、メモリーカード、ペースメーカー、補聴器、電動工具、電気シェーバー、冷蔵庫、エアコン、テレビ、ステレオ、温水器、電子レンジ、食器洗い器、洗濯機、乾燥器、照明機器、玩具、医療機器、ロボット、ロードコンディショナー、信号機等が挙げられるが、これに限定されるものでなない。
【0108】
(電子回路)
電子回路401は、例えば、CPU、周辺ロジック部、インターフェース部および記憶部等を備え、電子機器400の全体を制御する。
【0109】
(電池パック)
電池パック300は、組電池301と、充放電回路302とを備える。電池パック300が、必用に応じて組電池301および充放電回路302を収容する外装材(図示せず)をさらに備えるようにしてもよい。
【0110】
組電池301は、複数の二次電池301aを直列および/または並列に接続して構成されている。複数の二次電池301aは、例えばn並列m直列(n、mは正の整数)に接続される。なお、
図8では、6つの二次電池301aが2並列3直列(2P3S)に接続された例が示されている。二次電池301aとしては、上述の第1または第2の実施形態に係る電池が用いられる。
【0111】
ここでは、電池パック300が、複数の二次電池301aにより構成される組電池301を備える場合について説明するが、電池パック300が、組電池301に代えて1つの二次電池301aを備える構成を採用してもよい。
【0112】
充放電回路302は、組電池301の充放電を制御する制御部である。具体的には、充電時には、充放電回路302は、組電池301に対する充電を制御する。一方、放電時(すなわち電子機器400の使用時)には、充放電回路302は、電子機器400に対する放電を制御する。
【0113】
外装材としては、例えば、金属、高分子樹脂またはこれらの複合材料等より構成されるケースを用いることができる。複合材料としては、例えば、金属層と高分子樹脂層とが積層された積層体が挙げられる。
【0114】
<4 変形例>
以上、本発明の実施形態について具体的に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0115】
例えば、上述の実施形態において挙げた構成、方法、工程、形状、材料および数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料および数値等を用いてもよい。また、化合物等の化学式は代表的なものであって、同じ化合物の一般名称であれば、記載された価数等に限定されない。
【0116】
また、上述の実施形態の構成、方法、工程、形状、材料および数値等は、本発明の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0117】
(変形例1)
第1の実施形態では、巻回電極体20が、正極集電体露出部21C
1と負極集電体露出部22D
1とがセパレータ23を介して対向する第1の対向部、および正極集電体露出部21D
1と負極集電体露出部22C
1とがセパレータ23を介して対向する第2の対向部の両方を備える場合について説明したが、巻回電極体20の構成はこれに限定されるものではない。例えば、巻回電極体20が、
図6に示すように、第2の対向部のみを備えるようにしてもよい。この場合、負極22の外周側端部の内側面には、負極活物質層22Bが設けられず、負極集電体22Aの内側面が露出した負極集電体露出部22C
1が設けられているのに対して、負極22の外周側端部の外側面には、負極活物質層22Bが設けられ、負極集電体22Aの外側面がほぼ露出しない構成となる。なお、図示はしないが、巻回電極体20が、第1の対向部のみを備えるようにしてもよい。
【0118】
(変形例2)
第2の実施形態では、巻回電極体50が、正極51の外側面に設けられた正極集電体露出部51Dと、負極52の内側面に設けられた負極集電体露出部52Cとが、セパレータ53を介して対向する対向部を構成する場合について説明したが、巻回電極体50の構成はこれに限定されるではない。例えば、
図7に示すように、巻回電極体50が、正極51の内側面に設けられた正極集電体露出部51Cと、負極52の外側面に設けられた負極集電体露出部52Dとが、セパレータ53を介して対向する対向部を構成するようにしてもよい。この場合、正極51の外周側端部の外側面には、正極活物質層51Bが設けられ、正極集電体51Aの外側面がほぼ露出しない構成としてもよい。
【0119】
(変形例3)
第1の実施形態では、セパレータ23を介して正極集電体露出部および負極集電体露出部が対向する対向部が、巻回電極体20の内周側端部および外周側端部の両方に設けられている場合について説明したが、巻回電極体20の内周側端部および外周側端部のうちのいずれか一方に設けられていてもよい。但し、安全性の向上の観点からすると、第1の実施形態におけるように、対向部が、巻回電極体20の内周側端部および外周側端部の両方に設けられていることが好ましい。
【0120】
対向部を巻回電極体20の内周側端部および外周側端部のうちのいずれか一方に設ける場合には、安全性の向上の観点からすると、対向部を巻回電極体20の外周側端部に設けることが好ましい。また、対向部を設ける位置は、巻回電極体20の内周側および外周側端部に限られるものではなく、内周側端部および外周側端部以外の位置、例えば巻回電極体20の中周部に設けるようにしてもよい。
【0121】
(変形例4)
正極活物質層21B、51Bが、必要に応じて、フッ素系バインダー以外のバインダーを含んでいてもよい。例えば、フッ素系バインダー以外に、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンブタジエンゴム(SBR)およびカルボキシメチルセルロース(CMC)等の樹脂材料、ならびにこれら樹脂材料を主体とする共重合体等から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0122】
正極活物質層21B、51Bが、必要に応じて、ポリフッ化ビニリデン以外のフッ素系バインダーを含んでいてもよい。例えば、ポリフッ化ビニリデン以外に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびVdFを単量体の一種として含むVdF系共重合体(コポリマー)のうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0123】
VdF系共重合体としては、例えば、フッ化ビニリデン(VdF)と、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフロロエチレン(CTFE)およびテトラフルオロエチレン(TFE)等からなる群より選ばれる少なくとも1種との共重合体を用いることができる。より具体的には、PVdF−HFP共重合体、PVdF−CTFE共重合体、PVdF−TFE共重合体、PVdF−HFP−CTFE共重合体、PVdF−HFP−TFE共重合体、PVdF−CTFE−TFE共重合体およびPVdF−HFP−CTFE−TFE共重合体等からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。VdF系共重合体としては、その末端等の一部をマレイン酸等のカルボン酸で変性したものを用いてもよい。
【0124】
(変形例5)
第1の実施形態に係る電池10が、セパレータ23に代えて第2の実施形態におけるセパレータ53を備えると共に、電解質層24に代えて電解液を備えるようにしてもよい。この場合にも、第1の実施形態に係る電池と同様の効果を得ることができる。
【0125】
(変形例6)
第2の実施形態に係る電池40が、セパレータ53および電解液に代えて、第1の実施形態におけるセパレータ23および電解質層24を備えるようにしてもよい。
【0126】
(変形例7)
第1の実施形態に係る電池10において、正極21とセパレータ23との間に設けられた電解質層24が、粒子をさらに含んでいてもよい。粒子は、第2の実施形態においてセパレータ53に用いた粒子と同様である。また、同様に、負極22とセパレータ23との間に設けられた電解質層24が、粒子をさらに含んでいてもよい。
【0127】
(変形例8)
第1の実施形態に係る電池10において、正極21とセパレータ23との間に設けられた電解質層24が、フッ素樹脂以外の樹脂と、粒子とを含んでいてもよい。粒子は、第2の実施形態においてセパレータ53に用いた粒子と同様である。また、同様に、負極22とセパレータ23との間に設けられた電解質層24が、フッ素樹脂以外の樹脂と、粒子とを含んでいてもよい。
【0128】
(変形例9)
第1の実施形態では、正極21とセパレータ23との間に設けられた電解質層24と、負極22とセパレータ23との間に設けられた電解質層24とのいずれもフッ素樹脂を含む場合について説明したが、負極22とセパレータ23との間に設けられた電解質層24はフッ素樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。この場合、負極22とセパレータ23との間に設けられた電解質層24は、例えば、高分子化合物として、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレンおよびポリカーボネートのうちの少なくとも1種を含む。特に電気化学的な安定性の点から、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリヘキサフルオロプロピレンおよびポリエチレンオキサイドのうちの少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0129】
(変形例10)
第1、第2の実施形態では、扁平形状および円筒形状を有する電池に本発明を適用した例について説明したが、本発明は角型形状、湾曲形状または屈曲形状を有する電池に対しても適用可能である。また、本発明はフレキシブル電池にも適用可能である。
【実施例】
【0130】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0131】
以下の実施例および比較例において、箔箔構造1、2および通常構造1とは、以下に示す、巻回電極体の外周部構造のことをいう。
箔箔構造1:第1の実施形態にて説明した第1、第2の対向部の構造(
図2参照)
箔箔構造2:変形例1にて説明した第2の対向部の構造(
図6参照)
通常構造1:
図9に示すように、円柱形状の巻回電極体20Aが外周部に正極集電体露出部と負極集電体露出部とが対向する対向部を備えていない構造
【0132】
(実施例1−1−A)
(正極の作製工程)
正極を次のようにして作製した。正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)99.2質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF(フッ化ビニリデンのホモポリマー))0.5質量%と、導電剤としてカーボンナノチューブ0.3質量%とを混合することにより正極合剤としたのち、この正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン:NMP)に分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて正極集電体(アルミニウム箔)に正極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて、正極活物質層を形成した。最後に、プレス機を用いて正極活物質層を圧縮成型した。
【0133】
(負極の作製工程)
負極を次のようにして作製した。まず、負極活物質として人造黒鉛粉末96質量%と、
第1のバインダーとしてスチレンブタジエンラバー(SBR)1質量%と、第2のバインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)2質量%と、増粘剤としてカルボキシメチルセルロース(CMC)1質量%とを混合することにより負極合剤としたのち、この負極合剤を溶剤に分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて負極集電体(銅箔)に負極合剤スラリーを塗布してから乾燥させた。最後に、プレス機を用いて負極活物質層を圧縮成型した。
【0134】
(電解液の調製工程)
電解液を次のようにして調製した。まず、炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)と炭酸ジエチル(DEC)とを、質量比でEC:PC:DEC=15:15:70となるようにして混合して混合溶媒を調製した。続いて、この混合溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1mol/lとなるように溶解させて電解液を調製した。
【0135】
(ラミネート型電池の作製工程)
ラミネート型電池を次のようにして作製した。まず、正極および負極を所定サイズに切断(スリット)したのち、正極集電体にアルミニウム製の正極リードを溶接すると共に、負極集電体に銅製の負極リードを溶接した。続いて、正極および負極を、微多孔性のポリエチレンフィルムの両面にフッ素樹脂(フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(VDF−HFP共重合体))がコートされたセパレータを介して密着させたのち、長手方向に巻回して、最外周部に保護テープを貼り付けることにより、扁平形状の巻回電極体を作製した。なお、巻回電極体の外周部に箔箔構造1(
図2参照)が形成されるように、正極の作製工程および負極の作製工程において、正極合剤スラリーおよび負極合剤スラリーの塗布位置を調整した。
【0136】
次に、この巻回電極体を外装材の間に装填し、外装材の3辺を熱融着し、一辺は熱融着せずに開口を有するようにした。外装材としては、最外層から順に25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとが積層された防湿性のアルミラミネートフィルムを用いた。
【0137】
その後、電解液を外装材の開口から注入し、外装材の残りの1辺を減圧下において熱融着し、巻回電極体を密封した。これにより、目的とするラミネート型電池が得られた。なお、このラミネート型電池は、正極活物質量と負極活物質量とを調整し、完全充電時における開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.40Vになるように設計されたものである。
【0138】
(実施例1−2−A)
巻回電極体の外周部に箔箔構造2(
図6参照)が形成されるように、正極の作製工程および負極の作製工程において正極合剤スラリーおよび負極合剤スラリーの塗布位置を調整すること以外は実施例1−1−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0139】
(実施例1−3−A)
微多孔性のポリエチレンフィルムの両面にアルミナが保持されたセパレータを用いること以外は実施例1−1−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0140】
(実施例1−4−A)
微多孔性のポリエチレンフィルムの両面にアルミナが保持されたセパレータを用いること以外は実施例1−2−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0141】
(実施例1−5−A)
セパレータとして微多孔性のポリエチレンフィルムを用い、正極、負極上にゲル状電解質層を形成させたものを用い、電解液を注液しないこと以外は実施例1−1−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0142】
なお、ゲル状電解質層は、次のようにして形成した。まず、炭酸エチレン(EC)と炭酸プロピレン(PC)とを、質量比でEC:PC=50:50となるようにして混合して混合溶媒を調製した。続いて、この混合溶媒に、電解質塩として六フッ化リン酸リチウム(LiPF
6)を1mol/lとなるように溶解させて電解液を調製した。
【0143】
次に、調製した電解液と、電解質用高分子化合物としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、有機溶剤としてジメチルカーボネート(DMC)とを含む前駆溶液を調製したのち、その前駆溶液を正極および負極に塗布し、ゲル状の電解質層を形成した。
【0144】
(実施例1−6−A)
セパレータとして微多孔性のポリエチレンフィルムを用い、正極、負極上にゲル状電解質層を形成させたものを用い、電解液を注液しないこと以外は実施例1−2−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。なお、ゲル状電解質層は実施例1−5−Aと同様にして行った。
【0145】
(実施例1−7−A、1−8−A、1−9−A)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)98.8質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)0.7質量%と、導電剤としてカーボンブラック0.5質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は実施例1−1−A、1−3−A、1−5−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0146】
(実施例1−10−A、1−11−A)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)97.1質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.4質量%と、導電剤としてカーボンブラック1.5質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は実施例1−1−A、1−5−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0147】
(実施例1−12−A、1−13−A、1−14−A、1−15−A、1−16−A,1−17−A)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.4質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.8質量%と、導電剤としてカーボンブラック2.8質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は実施例1−1−A、1−2−A、1−3−A、1−4−A、1−5−A、1−6−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0148】
(比較例1−1−A、1−2−A、1−3−A)
巻回電極体の外周部に通常構造1(
図9参照)が形成されるように、正極の作製工程および負極の作製工程において正極合剤スラリーおよび負極合剤スラリーの塗布位置を調整すること以外は実施例1−1−A、1−3−A、1−5−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0149】
(比較例1−4−A、1−5−A、1−6−A)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)98.8質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)0.7質量%と、導電剤としてカーボンブラック0.5質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−1−A、1−2−A、1−3−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0150】
(比較例1−7−A、1−8−A)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)97.1質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)1.4質量%と、導電剤としてカーボンブラック1.5質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−1−A、1−3−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0151】
(比較例1−9−A、1−10−A、1−11−A)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.4質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.8質量%と、導電剤としてカーボンブラック2.8質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−1−A、1−2−A、1−3−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0152】
(比較例1−1−B、1−2−B、1−3−B)
セパレータとして微多孔性のポリエチレンフィルムを用いた以外は比較例1−1−A、1−4−A、1−7−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0153】
(比較例1−4−B、1−5−B、1−6−B)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.3質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.8質量%と、導電剤としてカーボンブラック2.9質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−1−A、1−2−A、1−3−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0154】
(比較例1−7−B、1−8−B)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.2質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.8質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−1−A、1−2−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0155】
(比較例1−9−B、1−10−B、1−11−B、1−12−B)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.1質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.9質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−1−A、1−2−A、1−1−B、1−3−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0156】
(比較例1−13−B)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)93.5質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)3.5質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−3−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0157】
(比較例1−1−C、1−2−C)
セパレータとして微多孔性のポリエチレンフィルムを用いた以外は、実施例1−1−A、1−2−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0158】
(比較例1−3−C、1−4−C)
セパレータとして微多孔性のポリエチレンフィルムを用いた以外は、実施例1−7−A、1−10−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0159】
(比較例1−5−C、1−6−C、1−7−C)
巻回電極体の外周部に箔箔構造1(
図2参照)が形成されるように、正極の作製工程および負極の作製工程において正極合剤スラリーおよび負極合剤スラリーの塗布位置を調整すること以外は比較例1−4−B、1−5−B、1−6−Bと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0160】
(比較例1−8−C、1−9−C)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.2質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.8質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は実施例1−1−A、1−2−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0161】
(比較例1−10−C、1−11−C)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.2質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.8質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は実施例1−3−A、1−4−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0162】
(比較例1−12−C、1−13−C、1−14−C)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.1質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.9質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は比較例1−5−C、1−6−C、1−7−Cと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0163】
(比較例1−15−C、1−16−C)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)94.1質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)2.9質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は実施例1−5−A、1−6−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0164】
(比較例1−17−C)
正極活物質としてリチウムコバルト複合酸化物(LiCoO
2)93.5質量%と、バインダーとして融点が155℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)3.5質量%と、導電剤としてカーボンブラック3.0質量%とを混合することにより正極合剤とすること以外は実施例1−5−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0165】
(実施例2−1−A〜2−17−A)
バインダーとして融点が166℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は実施例1−1−A〜1−17−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0166】
(比較例2−1−A〜2−11−A)
バインダーとして融点が166℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は比較例1−1−A〜1−11−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0167】
(比較例2−1−B〜2−13−B)
バインダーとして融点が166℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は比較例1−1−B〜1−13−Bと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0168】
(比較例2−1−C〜2−17−C)
バインダーとして融点が166℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は比較例1−1−C〜1−17−Cと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0169】
(比較例3−1−A〜3−17−A)
バインダーとして融点が172℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は実施例1−1−A〜1−17−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0170】
(比較例3−1−B〜3−11−B)
バインダーとして融点が172℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は比較例1−1−A〜1−11−Aと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0171】
(比較例3−1−C〜3−13−C)
バインダーとして融点が172℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は比較例1−1−B〜1−13−Bと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0172】
(比較例3−1−D〜3−17−D)
バインダーとして融点が172℃のポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いること以外は比較例1−1−C〜1−17−Cと同様にしてラミネート型電池を得た。
【0173】
[評価]
上述のようにして得られた電池について、以下のようにして高温保存膨れ率、釘刺し試験および正極割れの評価を行った。また、上述の電池の作製段階で正極活物質層の脱落を評価した。
【0174】
(高温保存膨れ率)
電池を満充電状態にした後、60℃環境下で1ヶ月保存し、保存前からの膨れ変化率を測定した。
【0175】
(釘刺し試験)
電池電圧が4.40Vになるように電池を満充電にした後、φ2.5mmの釘を電池の中央部を40℃環境下で100mm/secの突き刺し速度で、釘を貫通させ、熱暴走の有無を確認した。
【0176】
また、上記の釘刺し試験で熱暴走に至らなかった実施例1−1−A〜1−17−Aの電池について、以下の釘刺し試験をさらに行った。新たに電池を用意し、充電電圧を0.025V上げる以外は上記と同様にして充電を行ったのち、釘刺し試験を再度実施した。上述の手順を繰り返して、釘刺し試験により電池が熱暴走しない充電電圧の上限値を求めた。
【0177】
(正極活物質層の脱落)
正極をスリットした段階で、正極集電体上の一部の正極活物質層が正極集電体から剥がれるかどうかを確認した。
【0178】
(正極割れ)
完成した電池を解体し、最内周部の正極集電体に孔が生じていないかどうかを確認した。
【0179】
表1A、1Bは、実施例1−1−A〜1−17−A、比較例1−1−A〜1−11−A、比較例1−1−B〜1−13−B、比較例1−1−C〜1−17−Cのラミネート型電池の構成および評価結果を示す。
【表1A】
【0180】
【表1B】
【0181】
表2A、2Bは、実施例2−1−A〜2−17−A、比較例2−1−A〜2−11−A、比較例2−1−B〜2−13−B、比較例2−1−C〜2−17−Cのラミネート型電池の構成および評価結果を示す。
【表2A】
【表2B】
【0182】
表3A、3Bは、比較例3−1−A〜3−17−A、比較例3−1−B〜3−11−B、比較例3−1−C〜3−13−C、比較例3−1−D〜3−17−Dのラミネート型電池の構成および評価結果を示す。
【表3A】
【表3B】
【0183】
表1A〜3Bから以下のことがわかる。
実施例1−1−A〜1−17−A、比較例1−1−A〜1−11−A、実施例2−1−A〜2−17−A、比較例2−1−A〜2−11−A、比較例3−1−A〜3−17−A、比較例3−1−B〜3−11−Bの評価結果を比較すると、正極バインダーの融点が166℃以下であるラミネート型電池では、高温保存膨れ率が10%以下となる。また、巻回電極体の外周部にセパレータを介して正極集電体露出部と負極集電体露出部とが対向する箔箔構造1または箔箔構造2を有する場合、40℃釘刺し試験で熱暴走に至っていない。これに対して、正極バインダーの融点が172℃であるラミネート型電池では、高温保存膨れ率が20%以上と著しく高い。また、巻回電極体の外周部にセパレータを介して正極集電体露出部と負極集電露出部とが対向する箔箔構造1または箔箔構造2を有していても、40℃釘刺し試験で熱暴走に至っている。
【0184】
したがって、高温保存膨れおよび40℃釘刺し安全性の両立という観点から考えると、正極バインダーの融点は、166℃以下であることが好ましく、巻回電極体の外周部にセパレータを介して正極集電体と負極集電体が対向する箔箔構造1または箔箔構造2を有することが望ましいことがわかる。
【0185】
実施例1−1−A〜1−17−A、比較例1−1−A〜1−11−A、比較例1−1−B〜1−13−B、比較例1−1−C〜1−17−Cの評価結果を比較すると、正極バインダーの融点が155℃である場合、(a)正極活物質層中におけるバインダーの含有量が0.5質量%以上2.8質量%以下であり、(b)導電剤の含有量が0.3質量%以上2.8質量%以下であり、(c)正極とセパレータとの間にフッ素樹脂含有層(フッ素樹脂コート層、ゲル状電解質層)、金属酸化物粒子またはその両方を有し、(d)巻回電極体の外周部にセパレータを介して正極集電体と負極集電体が対向する構造を有するラミネート型電池では、高温保存膨れ率が10%以下で、40℃釘刺し試験で熱暴走に至らず、組立時の正極割れもなく、正極スリット時の正極活物質層の脱落も見られない。これに対して、上記の構成(a)、(b)、(c)、(d)のいずれかを有していないラミネート型電池では、高温保存膨れ率、40℃釘刺し試験、正極割れ、および正極活物質層の脱落の少なくとも1つの項目で不具合が生じるか、もしくは電池の完成に至っていない。電池の完成に至っていないのは、巻回時に正極が割れたためである。
【0186】
実施例2−1−A〜2−17−A、比較例2−1−A〜2−11−A、比較例2−1−B〜2−13−B、比較例2−1−C〜2−17−Cのラミネート型電池の評価結果についても、実施例1−1−A〜1−17−A、比較例1−1−A〜1−11−A、比較例1−1−B〜1−13−B、比較例1−1−C〜1−17−Cの評価結果に関する上記考察と同様のことが言える。
【0187】
比較例3−1−A〜3−17−A、比較例3−1−B〜3−11−B、比較例3−1−C〜3−13−C、比較例3−1−D〜3−17−Dのラミネート型電池の評価結果より、正極バインダーの融点が172℃である場合、上記の構成(a)、(b)、(c)、(d)の全てを有しているから否かに関わらず、高温保存膨れ率、40℃釘刺し試験、正極割れ、および正極活物質層の脱落の少なくとも1つの項目で不具合が生じるか、もしくは電池の完成に至っていない。
【0188】
実施例1−1−A〜1−17−Aの釘刺し試験の評価結果(上限電圧の評価結果)から、安全性のさらなる向上の観点からすると、電極とセパレータとの間に無機粒子を含む中間層を設ける構成が、電極とセパレータとの間にフッ素樹脂を含む中間層を設ける構成よりも好ましいことがわかる。