(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
X線源と、被検体を載置するテーブルと、前記X線源から照射され前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、X線撮影により取得した画像を表示する表示部を備えたX線検査装置において、
前記X線源、前記X線検出器、または、前記テーブルを移動させることにより前記X線源と前記X線検出器と前記被検体との相対的位置関係を変更する移動機構と、
前記移動機構を制御する移動制御部と、前記X線源を制御するX線制御部と、前記X線検出器の出力を取り込んで前記被検体のX線画像を構築する画像処理部と、前記画像処理部により得られた画像を前記表示部に表示する表示制御部と、を有する制御部と、を備え、
前記画像処理部は、
前記X線源、前記X線検出器、前記テーブルのいずれか1つを、最初のX線画像を取得したときのX線撮影位置と任意の位置との間で往復移動させる位置決めを行った後に、X線撮影を実行する動作を繰り返して複数のX線画像を取得し、
前記位置決めを繰り返し行ったときの繰り返し位置決め誤差を利用して、前記複数のX線画像から互いにサブピクセルレベルの位置ずれ量を持つ画像を超解像再構成処理のための入力画像群として取得し、
前記入力画像群に対して超解像再構成処理を実行することにより超解像画像を生成することを特徴とするX線検査装置。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
X線源から被検体までの距離を短くすることにより、幾何拡大率を高くすることができるが、実際には、被検体の物理的な厚みにより、X線源から被検体までの距離を短くするには限界がある。
【0005】
X線源は、正確には点光源ではなく、X線源の焦点は、直径数μm(マイクロメートル)程度の広がりを持つ領域である。焦点が持つ物理的な広がりが画像に及ぼす現象は、焦点ボケと呼ばれ、この焦点ボケの画像への影響は、幾何拡大率が高くなるほど、大きくなる。X線源の焦点サイズを小さくすることにより、幾何拡大率が高い撮影でも焦点ボケの影響を低減することが考えられるが、焦点サイズを小さくすることには物理的に限界がある。また、焦点サイズを小さくすると、一般的にはX線源から照射されるX線量も減ることになる。このため、画像のノイズが増える、あるいは、撮影に時間がかかる、などの問題が生じる。
【0006】
幾何拡大率を高くする方法としては、X線源とX線検出器の距離を長くすることが考えられる。しかしながら、X線源とX線検出器の距離を長くすると、装置が大きくなるという問題が生じる。また、X線検出器に入射するX線量は、X線源からX線検出器までの距離の2乗に反比例するため、X線源とX線検出器の距離を長くすれば、X線検出器に入射するX線量も減ることになる。このため、画像のノイズが増える、あるいは、撮影に時間がかかる、などの問題が生じる。
【0007】
同じ幾何拡大率でのX線撮影であっても、1画素の大きさが小さく、一定の視野中の画素数が多いX線検出器を用いれば、被検体におけるより細かい部分の観察が可能な解像度の画像を得ることができる。しかしながら、このようなX線検出器は高額であり、装置全体の価格を上昇させる原因となる。また、1画素の大きさが小さいX線検出器の場合、検出器そのもののサイズも小さくなる傾向にある。そして、検出器サイズが小さくなると、幾何拡大率を低くして観察する際の視野が狭くなり、観察が難しくなるという問題が生じる。さらに、1画素の大きさが小さいということは、X線検出器の1画素あたりの入射X線量も少なくなることから、画像のノイズが増える、あるいは、撮影に時間がかかる、などの問題が生じる。このように、被検体の細部の観察のために、X線検出器の仕様や幾何学的な拡大率を変更しても、物理的な限界がある。
【0008】
装置の幾何学的な拡大率の変更の他に、画像を拡大して表示装置に表示する手法として、デジタルズームと呼称される画像処理がある。しかしながら、単純なデジタルズームでは、画像の倍率は大きくなるものの画像分解能は変わらないため、鮮明な画像を得ることは困難である。
【0009】
X線検出器の画素に依存する解像度よりも高い解像度の画像を得る手法として、超解像再構成処理が提案されている。この超解像再構成処理を行うためには、互いにサブピクセルの距離だけシフトした複数の画像(1画素以下の位置ずれを持つ画像群)を取得する必要がある。特許文献1に記載のX線撮影装置では、X線検出器をX線光軸に直交する平面上に微動させる検出器微動機構を備えている。そして検出器微動機構によりX線検出器をその画素ピッチの整数分の一ピッチ微動させてX線撮影を行うことにより、超解像再構成処理のための1画素以下の位置ずれを持つ画像群を取得することが可能である。
【0010】
一般的な産業用X線透視装置での通常観察では、被検体を透視して得た各画像の位置が数画素ずれていたとしても、ユーザからの見た目に違和感を生じさせることはない。このため、通常観察を主に行う産業用X線透視装置の仕様では、その位置決め精度(最小の移動ピッチ)は、幾何拡大率が最大となるX線源、被検体、X線検出器の3つの要素の位置関係で、画像の画素数と同等かそれより大きい場合が多く、サブピクセルレベルの位置決めが可能な構成とはなっていない。特許文献1のように、微動機構を追加することで、構成要素の位置決め精度の問題を解決することは可能であるが、高い位置決め精度を実現できる部品は高額である場合が多く、高額部品の採用によって装置自体の価格が高くなる傾向がある。
【0011】
この発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、構成要素の位置決め精度が高くない装置でも超解像再構成処理のための画像群を取得することができ、超解像画像を生成することが可能なX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明は、X線源と、被検体を載置するテーブルと、前記X線源から照射され前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、X線撮影により取得した画像を表示する表示部を備えたX線検査装置において、前記X線源、前記X線検出器、または、前記テーブルを移動させることにより前記X線源と前記X線検出器と前記被検体との相対的位置関係を変更する移動機構と、前記移動機構を制御する移動制御部と、前記X線源を制御するX線制御部と、前記X線検出器の出力を取り込んで前記被検体のX線画像を構築する画像処理部と、前記画像処理部により得られた画像を前記表示部に表示する表示制御部と、を有する制御部と、を備え、前記画像処理部は、前記X線源、前記X線検出器、前記テーブルのいずれか1つを、最初のX線画像を取得したときのX線撮影位置と任意の位置との間で往復移動させる位置決めを行った後に、X線撮影を実行する動作を繰り返して複数のX線画像を取得し、前記位置決めを繰り返し行ったときの繰り返し位置決め誤差を利用して、前記複数のX線画像から互いにサブピクセルレベルの位置ずれ量を持つ画像を超解像再構成処理のための入力画像群として取得し、前記入力画像群に対して超解像再構成処理を実行することにより超解像画像を生成することを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のX線検査装置において、前記画像処理部は、画像間の位置合わせ手法を利用して、前記複数のX線画像の各々の前記位置ずれ量を求め、前記複数のX線画像のうち前記位置ずれ量が前記X線検出器の1画素より小さい画像を、その位置ずれ量とともに前記入力画像群として取得する。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載のX線検査装置において、前記画像処理部は、前記最初のX線画像上の所定の位置を基点として切り出した第2の基準画像を作成し、画像間の位置合わせ手法を利用して、前記複数のX線画像の各々の前記位置ずれ量を求め、前記位置ずれ量を整数部分と小数部分に分離し、前記複数のX線画像の各々の画像上の前記所定の位置に前記位置ずれ量の整数部分を加えた位置を基点として、前記第2の基準画像と同サイズの画像を切り出し、切り出した画像を前記位置ずれ量の小数部分とともに前記入力画像群として取得する。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載のX線検査装置において、前記移動機構は、前記テーブルに接続され、前記X線源と前記X線検出器からなるX線撮影系に対して前記テーブルの位置を移動させる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1から請求項4に記載の発明によれば、最初のX線撮影位置と任意の位置との間で往復移動させて変更する位置決めが行われた後に、画像処理部は、X線撮影を実行する動作を繰り返して複数のX線画像を取得し、位置決めを繰り返し行ったときの繰り返し位置決め誤差を利用して、複数のX線画像のうちサブピクセルレベルの位置ずれ量を持つ画像を超解像再構成処理のための入力画像群として取得することから、従来の移動機構の位置決め精度では、機械要素の動作によりサブピクセルレベルの移動を実現することが困難な装置でも、超解像再構成処理に必要なサブピクセルレベルの位置ずれ量を持つ入力画像群を容易に取得することが可能となる。移動機構を位置決め精度の高い高額な部品で構成する必要がないため、装置のコストアップを抑制することができる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、画像処理部は、位置ずれ量がX線検出器の1画素より小さい画像のみを超解像再構成処理のための入力画像群として取得することで、繰り返し位置決め誤差がX線検出器の1画素よりも大きい画像を除き、超解像再構成処理のためのサブピクセルレベルの位置ずれ量を持つ入力画像群を確実に取得することが可能となる。
【0018】
請求項3に記載の発明によれば、位置ずれ量がX線検出器の1画素より大きい画像でも、その画像の切り出しの基点の位置を調整して画像を切り出すことで、超解像再構成処理に必要なサブピクセルレベルの位置ずれ量を持つ入力画像群を容易に取得することが可能となる。位置ずれ量がX線検出器の1画素より大きい画像を破棄して撮影をやり直す必要がないため、撮影時間が長くなることがないという利点がある。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、移動機構が、X線撮影系に対してテーブルの位置を移動させるテーブルの移動機構であることから、X線源とX線検出器の位置が固定されている既存の装置でも、装置の機械的な改変を行うことなく超解像画像を得る機能を付加することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この発明に係るX線検査装置の概要図である。
【0022】
このX線検査装置は、被検体であるワークWに下方から上方に向けてX線を照射するX線管から成るX線源41と、このX線源41から照射された後、ワークWを透過したX線を検出するX線検出器42と、ワークWを載置するためのステージ43とを備える。X線検出器42としては、フラットパネルディテクタやイメージインテンシファイア(I.I.)等が採用される。X線源41とX線検出器42は、ステージ43を挟んで対向配置される。ステージ43は、図示しないモータを備えたステージ移動機構44の作用により、水平(互いに直交するX軸とY軸)方向および鉛直(Z軸)方向に移動可能となっている。ステージ移動機構44によりステージ43を移動させることにより、X線源41とX線検出器42とからなるX線撮影系に対してワークWを相対的に移動させることができる。なお、X線源41、X線検出器42、ステージ43およびステージ移動機構44は、X線遮蔽部材より構成されるケーシング40の内部に配設されている。
【0023】
このX線検査装置は、装置の制御に必要な動作プログラムを格納するROM、プログラム実行時にプログラムをロードして一時的にデータを記憶するRAMなどから成るメモリ31、論理演算を実行するCPU(central processing unit)などの演算装置32を備え、装置全体を制御する制御部30を備える。なお、メモリ31は、演算装置32と、超解像画像等を記憶する記憶装置38とに、バス39を介して接続されている。また、この制御部30は、X線検出器42により検出したX線画像等を表示する液晶表示パネル等の表示部45と、ユーザが操作して各種指示を入力するためのマウスやキーボード等を備えた操作部46とに接続されている。
【0024】
この制御部30のメモリ31には、演算装置32を動作させて機能を実現するプログラムが格納されている。
図1においては、メモリ31に格納されているプログラムを機能ブロックとして記載している。
図1に示すように、制御部30は、表示部45にユーザが操作部46を介して選択可能な複数のGUI部品やX線画像を含む画像を表示させる表示制御部33と、X線検出器42からの出力を取り込んでX線画像を構築し、X線画像に対して後述する超解像再構成処理を実行するための画像処理部34と、ステージ移動機構44のモータに入力する特定数のパルスを作成してステージ43の動作を制御するための移動制御部35と、X線管の管電圧・管電流等を制御することによりX線源41からのX線照射を制御するX線制御部36とを備える。
【0025】
図2は、超解像再構成処理の手順を説明するフローチャートである。
【0026】
超解像再構成処理は、互いにサブピクセルの距離だけシフトした複数の画像(1画素以下の位置ずれを持つ画像群)を用いて、X線検出器42の仕様により定まる解像度よりも高い解像度の1枚の高解像度画像(超解像画像)を作成するデジタル画像処理である。超解像再構成処理は、次の3つの手順を含んでいる。第1に、ステージ43を移動および元の位置に復帰させたときに生じるサブピクセルレベルの位置ずれ量(X線検出器42の1画素の大きさよりも小さい量)を持つ複数枚の画像(入力画像群)を取得する工程と、第2に、取得した入力画像の各々と、ステージを移動させる前の基準画像との位置ずれ量を算出する工程と、第3に、各入力画像と位置ずれ量とから超解像画像を作成する再構成処理工程と、を含む。
【0027】
まず、制御部30は、最初のX線撮影位置を決めるためのステージ43の位置決めを実行する(ステップS11)。ユーザが操作部46を操作して、ステージ43の位置決め指示を行うと、操作部46からの入力を受けた制御部30は、移動制御部35によりステージ43の駆動信号を作成し、駆動信号をステージ移動機構44に送信する。ステージ移動機構44の駆動によりワークWを載置したステージ43が指示された位置に移動すると、ケーシング40内でのワークWの位置が決まる。これにより、X線管とワークWとの間の距離、および、ワークWとX線検出器42との間の距離が決まり、幾何拡大率が決まる。
【0028】
次に、ユーザは操作部46を操作して、撮影に関するパラメータを設定する。ここで、撮影枚数Mが設定される(ステップS12)。Mは2以上の整数である。パラメータの設定が終わると、制御部30は、上述した超解像再構成処理のための第1から第3の各工程を実行する。
【0029】
ステップS11で位置決めされたステージ43の現在位置でX線撮影が実行されると、画像処理部34は、後述するステージ43の繰り返し位置決め誤差により発生する画像のずれ量を求める際の基準画像(I
0)となる最初の入力画像を取得する(ステップS13)。しかる後、超解像再構成処理のための入力画像群とずれ量の取得工程が実行される(ステップS14)。
【0030】
ステップS14における入力画像群とずれ量の取得工程の詳細について、さらに説明する。
図3は、第1実施形態に係る入力画像群とずれ量の取得手順を説明するフローチャートである。
【0031】
ステップS14は、上述した超解像再構成処理の第1および第2の工程に相当し、超解像再構成処理のための連続したX線撮影の実行により入力画像群を取得する工程である。ステップS14が開始されると、画像処理部34は、後述する再構成処理(ステップS15)に使用する入力画像(I
i)とそのずれ量(Δu
i,Δv
i)を1枚目からM枚目まで順次取得する。なお、iはゼロ以上の整数であり、i=0は、ステップS13において取得された基準画像(I
0)となる最初の入力画像である。ステップS21では、現在のiに1を加算して(1回目では0+1=1)iを更新する。制御部30は、取得しようとする入力画像数iが撮影枚数M以下の値であるか否かを判断し(ステップS22)、入力画像数iが撮影枚数Mより大きい値であれば、画像処理部34による入力画像群とずれ量を取得する動作を終了する。一方、入力画像数iがM以下であれば、入力画像(I
i)とそのずれ量(Δu
i,Δv
i)を取得するための以下の工程を実行する。なお、ずれ量(Δu
i,Δv
i)の単位は、ピクセルであってもよく、mm(ミリメートル)などの長さの単位であってもよい。
【0032】
制御部30は、移動制御部35の作用により、ステージ43を任意の位置に向けて(+x,+y)だけ移動させ(ステップS23)、続いて、ステージ43を(−x,−y)だけ移動させる(ステップS24)。ステージ43は、移動制御部35からステージ移動機構44のモータに与えられた信号に従って移動する。しかる後、X線制御部36の作用により、その時のステージ43の位置でX線撮影を行い、画像処理部34は、入力画像(I
i)を取得する(ステップS25)。なお、ここで駆動量を表すxとyはステージ43を駆動するパルスの数を表している。すなわち、+xとはステージ43のX軸を正の方向にxパルスだけ駆動することであり、−xは負の方向にxパルスだけ駆動することである。同様に、+yとはステージ43のY軸を正の方向にyパルスだけ駆動することであり、−yは負の方向にyパルスだけ駆動することである。
【0033】
ステージ43は、ある位置から+xだけ移動させた状態から、−xだけ移動させると、数字上は、元の位置に戻ることになる。しかしながら、実際にはステージ43の機械的な移動誤差に起因した位置決め誤差により、別の位置に動かす指令をした後に、その逆の指令をしても、元の位置と全く同じ位置に戻ることはなく、毎回微妙に異なる位置に移動している。このような往復移動を繰り返し行った場合、移動位置のバラツキは正規分布に近いランダムな結果となる。さらに、X方向、Y方向のように直交する2軸でこの動作を繰り返すと、2次元平面上で移動位置がランダムに分散することになる。この発明においては、ステージ43をX線源41からX線検出器42に向かうX線の光軸に垂直な任意の位置に向けて(+x,+y)だけ移動させた後、そこからステージ43を(−x,−y)だけ移動させるという動作を繰り返し行ったときのランダムなバラツキ(繰り返し位置決め誤差)を利用して、互いに平行移動した複数の画像を取得する。なお、ここでいう繰り返し位置決めの具体的な態様は、上述のような2つの位置の間で直接往復する駆動だけでなく、2点以上の位置を経て3点目以降として最終的に最初の位置に戻るように往復する態様を採用してもよい。また、xおよびyの値は、とくに限定はされないが、2〜5パルス程度が適当である。
【0034】
制御部30は、入力画像(I
i)を取得すると、画像処理部34による画像間の位置合わせ手法(レジストレーション手法)を利用して、基準画像(I
0)と入力画像(I
i)との間のずれ量(Δu
i,Δv
i)を得る(ステップS26)。ステップS26でのレジストレーションは、入力画像(I
i)を撮影したときの位置が基準画像(I
0)を撮影したときの位置からどれだけ平行移動しているかを測定するものであり、レジストレーション手法としては、例えば、画像間の正規化相互相関を求める手法が利用できる。
【0035】
ずれ量(Δu
i,Δv
i)が求まると、X方向のずれ量Δu
iがX線検出器42の1画素(pixel)より小さいか否か、および、Y方向のずれ量Δv
iがX線検出器42の1画素(pixel)より小さいか否かが判定され(ステップS27)、X方向のずれ量Δu
iとY方向のずれ量Δv
iの両方が1画素より小さい値であるときは、次の入力画像取得のためにステップS21に戻り、iに1を加算してiの値を更新する。X方向のずれ量Δu
iとY方向のずれ量Δv
iのうちどちらか一方が1画素より大きい値、または、X方向のずれ量Δu
iとY方向のずれ量Δv
iの両方が1画素より大きい値であるときは、入力画像(I
i)を一旦破棄して(ステップS28)、再度、入力画像(I
i)とそのずれ量(Δu
i,Δv
i)の取得のためステップS23に戻り、ステップS27までの工程を繰り返し実行する。そして、画像間のずれ量が、X方向とY方向の両方で1画素より小さければ、そのずれ量を持つ画像をサブピクセルレベルのずれ量を持つ入力画像として記憶し、次枚目の入力画像とすれ量の取得のため、ステップS21に戻る。1枚目からM枚目の入力画像(I
i)とそのずれ量(Δu
i,Δv
i)を取得するまで、ステップS21〜ステップS28を繰り返し、ステップS22で、これから取得しようとする入力画像数iがステップS12で設定された撮影枚数Mを超えると、入力画像群とずれ量の取得工程(ステップS14)は終了する。
【0036】
再度、
図2を参照して説明する。入力画像群とずれ量の取得工程(ステップS14)が終了すると、画像処理部34は、サブピクセルレベルのずれ量を持つ入力画像群を用いて、再構成処理(ステップS15)を実行する。この再構成処理は、制御部30における画像処理部34のプログラムにより実現される。再構成処理には、X線CT画像の再構成に使用されている、反復逆投影法(IBP法)などが用いられる。従来、IBP法で画像解像度をN倍にする場合は、縦・横方向に1/N画素ずつ位置ずれのあるN×N枚のX線撮影画像を入力画像として取得しておく必要がある。例えば、超解像再構成処理によりX線検出器42の画素によって定まる解像度よりも4倍高い解像度の超解像画像を得たい場合には、ステップS12で設定する撮影枚数Mを4×4=16と設定することが好ましい。なお、この発明においては、ステージ43を任意の位置に繰り返し移動させたときの繰り返し位置決め誤差を利用して、互いに平行移動した複数の画像を取得しているため、従来のように、各入力画像の位置ずれは、正確に縦・横方向に1/N画素ではないが、ずれ量の取得工程(ステップS14)により位置ずれ量が正確に測定できていれば超解像再構成処理は可能である。そして、ステージ移動機構44のステージ43の移動精度をサブピクセルレベルの移動が可能なものにする必要がないため、位置決め精度の高い部品を採用する必要がなく、装置の高額化を抑止することが可能である。
【0037】
再構成処理(ステップS15)により作成された超解像画像は、表示制御部33の作用により、表示部45に表示され
(ステップS16)、記憶装置38に記憶される。これにより、ユーザは、X線検出器42の画素と幾何拡大率により決まる解像度よりも高い解像度の画像を得ることができる。
【0038】
入力画像群とずれ量の取得工程の他の態様について説明する。
図4は、第2実施形態に係る入力画像群とずれ量の取得手順を説明するフローチャートである。
図5および
図6は、入力画像群として取得する画像の切り出し工程を説明する模式図である。
【0039】
この実施形態では、ステップS13で取得した基準画像(I
0)から画像(I´
0)を作成する。画像(I´
0)は基準画像(I
0)から切り出された第2の基準画像であり、この実施形態では、画像(I´
0)と同サイズの入力画像(I´
i)とそのずれ量(Δu´
i,Δv´
i)を、超解像再構成処理のための入力画像群とその位置ずれ量として取得する。
【0040】
制御部30は、
図5に示すように、画像処理部34により、基準画像(I
0)上の所定の位置(s、t)を基点として、X方向の距離w、Y方向の距離hの矩形画像を切り出し、基準画像(I
0)から画像(I´
0)を作成する(ステップS31)。なお、s、t、w、hの単位はピクセルであってもよく、mm(ミリメートル)などの長さの単位であってもよい。画像(I´
0)の切り出しは、ユーザが操作部46のマウスを操作して表示部45に表示された基準画像(I
0)上の任意のクリック位置から矩形範囲選択を行うことにより実行してもよく、また、ステップS12におけるパラメータ設定において、s、t、w、hをユーザが操作部46のキーボードを操作して数値入力することにより予め設定してもよい。
【0041】
現在のi(1回目ではi=0)に1を加算してiを更新し(ステップS32)、1枚目から入力画像(I´
i)とそのずれ量(Δu´
i,Δv´
i)の取得を開始する。制御部30は、画像処理部34が取得しようとする入力画像数iがステップS13で設定された撮影枚数M以下の値であるか否かを判断し(ステップS33)、入力画像数iがMより大きい値であれば、入力画像群とずれ量の取得を終了する。一方、入力画像数iがM以下であれば、入力画像(I´
i)とそのずれ量(Δu´
i,Δv´
i)を取得するための以下の工程を実行する。
【0042】
制御部30は、移動制御部35の作用により、ステージ43を位置(+x,+y)に移動させ(ステップS34)、つづいて、ステージ43を位置(−x,−y)に移動させる(ステップS35)。しかる後、その時のステージ43の位置でX線撮影を行い、画像(I
i)を取得する(ステップS36)。
【0043】
制御部30は、画像(I
i)を取得すると、画像処理部34の作用により、レジストレーション手法を用いて基準画像(I
0)と画像(I
i)との画像間のずれ量(Δu
i,Δv
i)を得る(ステップS37)。しかる後、ずれ量(Δu
i,Δv
i)を、整数部分(u
i,v
i)と小数部分(Δu´
i,Δv´
i)とに分離する(ステップS38)。このステップS38においては、ずれ量(Δu
i,Δv
i)およびs、t、w、hの単位がピクセルの場合は、ずれ量(Δu
i,Δv
i)からそのまま分離した画素単位の整数部分と小数部分とが、整数部分(u
i,v
i)と小数部分(Δu´
i,Δv´
i)となる。一方、ずれ量(Δu
i,Δv
i)およびs、t、w、hの単位がmmやμm(マイクロメートル)などの長さの単位である場合は、ずれ量(Δu
i,Δv
i)を1画素のX方向・Y方向の長さで割った値を求め、その値を整数部分と小数部分に分離し、長さの単位の整数部分(u
i,v
i)と小数部分(Δu´
i,Δv´
i)としている。これにより、小数部分(Δu´
i,Δv´
i)が1画素より小さいサブピクセルレベルのずれ量となる。
【0044】
画像処理部34は、
図6に示すように、先に基準画像(I
0)から画像(I´
0)を切り出したときの基点(s、t)に整数部分(u
i,v
i)を加算した画像(I
i)上の(s+u
i,t+v
i)を基点として、X方向の距離w、Y方向の距離hの矩形画像を入力画像(I´
i)として切り出す(ステップS39)。そして、切り出し後の入力画像(I´
i)に対して、小数部分(Δu´
i,Δv´
i)がずれ量として記憶される(ステップS40)。すなわち、入力画像(I´
i)がサブピクセルレベルのずれ量(Δu´
i,Δv´
i)を持つ入力画像として取得される。入力画像数iがステップS12で設定された撮影枚数Mを超えると(ステップS33)、入力画像群とずれ量の取得工程(ステップS14)は終了する。
【0045】
入力画像群とずれ量の取得工程(ステップS14)が終了すると、画像処理部34は、サブピクセルレベルのずれ量を持つ入力画像群を用いて、再構成処理(ステップS15)を実行する。再構成処理(ステップS15)により生成された超解像画像は、記憶装置38に記憶されるとともに、表示制御部33の作用により、表示部45に表示される
(ステップS16)。これにより、ユーザは、X線検出器42の画素と幾何拡大率により決まる解像度よりも高い解像度の画像を得ることができる。
【0046】
この実施形態では、次の再構成処理(ステップS15)の入力画像群に、X線画像から切り出した画像を用いることとし、基準画像(I
0)と画像(I
i)との間のずれ量(Δu
i,Δv
i)を整数部分(u
i,v
i)と小数部分(Δu´
i,Δv´
i)に分離し、整数部分(u
i,v
i)は、入力画像(I´
i)を切り出す際の画像上の基点位置に反映している。このように、基準画像(I
0)と画像(I
i)との間のずれ量(Δu
i,Δv
i)に応じて、入力画像(I´
i)を切り出す際の画像上の基点位置を調整することで、画像(I´
0)に対して、サブピクセルレベルのずれ量(Δu´
i,Δv´
i)を持つ画像(I´
0)を常に得ることができる。第1実施形態では、基準画像(I
0)と画像(I
i)との間のずれ量(Δu
i,Δv
i)が1画素未満でない画像(I
i)を破棄してX線撮影をやり直すため、撮影時間が長くなることがある。しかしながら、この第2実施形態では、X線撮影をやり直すという状況が発生しないため、第1実施形態と比較して、入力画像群とずれ量の取得のための時間が長くなることはない。
【0047】
上述した第1実施形態および第2実施形態では、X線の光軸と垂直な方向(XY方向)にステージ43を繰り返し移動させているが、Z方向に移動させた場合でも、機械的移動誤差がXY方向の位置ずれとして現れることがあるため、ステージ43の移動方向は、X線の光軸と垂直な方向に限定されない。また、上述した第1実施形態および第2実施形態では、ステージ43の繰り返し位置決め誤差を利用した超解像画像作成のためのサブピクセルレベルの位置ずれ量を持つ入力画像群取得例を示したが、X線撮影系と被検体との相対位置を変更できるのであれば、繰り返し位置決めされる構成要素は、ステージ43に限定されない。すなわち、X線撮影系を構成するX線源41やX線検出器42がモータの駆動によりX線の光軸と垂直な方向(XY方向)に移動可能に構成されている場合には、これらの要素の繰り返し移動により生じる繰り返し位置決め誤差を利用してもよい。
【0048】
この発明においては、X線検査装置の機械要素の繰り返し位置決め誤差を利用して、2次元平面上でランダムにばらついた位置でX線撮影を行い、超解像再構成に必要な入力画像群を取得するため、ステージ移動機構44のステージ43の移動精度をサブピクセルレベルの移動が可能なものにする必要がない。このため、既存の産業用X線検査装置の移動機構を位置決め精度の高い部品に交換することなく、超解像画像を得る機能を付加することができるとともに、装置の高額化を抑制することが可能である。
【0049】
なお、上述した実施形態では、X線透視撮影を行う産業用X線検査装置にこの発明を適用した例を説明したが、X線CT撮影装置にこの発明を適用することもできる。X線CT撮影装置において、断層像を再構成する前のX線透視データを取得する段階で本発明の手法を適用することで、最終的に得られる断層像においても解像度の高い像を得ることができる。すなわち、X線源、X線検出器、被検体の相対的位置関係を変更するために、X線源、X線検出器、被検体を載置するテーブルのいずれか1つが、移動機構により移動する構成となっていれば、この発明を適用して、超解像画像を得ることが可能である。