特許第6973659号(P6973659)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973659
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】粉末状紙力剤、紙力剤溶液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21H 17/37 20060101AFI20211118BHJP
   D21H 21/18 20060101ALI20211118BHJP
   C08F 220/56 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   D21H17/37
   D21H21/18
   C08F220/56
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-548349(P2020-548349)
(86)(22)【出願日】2019年9月9日
(86)【国際出願番号】JP2019035361
(87)【国際公開番号】WO2020059557
(87)【国際公開日】20200326
【審査請求日】2020年9月18日
(31)【優先権主張番号】特願2018-173413(P2018-173413)
(32)【優先日】2018年9月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000168414
【氏名又は名称】荒川化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神原 隆介
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 大輔
(72)【発明者】
【氏名】西浦 尚吾
【審査官】 南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/209105(WO,A1)
【文献】 特開2018−012909(JP,A)
【文献】 特開2013−060498(JP,A)
【文献】 特表2018−513286(JP,A)
【文献】 特開平10−195115(JP,A)
【文献】 特開平05−098595(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B 1/00−1/38
D21C 1/00−11/14
D21D 1/00−99/00
D21F 1/00−13/12
D21G 1/00−9/00
D21H 11/00−27/42
D21J 1/00−7/00
C08F 6/00−246/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分岐型(メタ)アクリルアミド系重合体(A)を含み、
前記(A)成分の構成成分は、(メタ)アクリルアミド(a1)と、アニオン性ビニルモノマー(a2)と、カチオン性ビニルモノマー(a3)と、架橋性ビニルモノマー(a4)(ただし、式(I)で表される架橋性ビニルモノマーを含むものを除く)とを含む、粉末状紙力剤。
【化1】
1、R2:炭素−炭素不飽和結合をもたない炭素、酸素、窒素および水素から選ばれる群からなる原子で構成される直鎖若しくは分岐を有する鎖状の官能基。
W:15族の非金属元素。
X、Y:それぞれ炭素、酸素、窒素および水素から選ばれる群からなる原子で構成される直鎖若しくは分岐を有する鎖状の官能基であって、かつそれぞれ炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ持つ。ただし、XとYは異なる構造を有する。
Z:塩素イオン、臭素イオンまたはヨウ素イオン。
【請求項2】
前記(a2)成分は、不飽和スルホン酸類または前記不飽和スルホン酸類の塩のうち、少なくともいずれか一方を含む、請求項記載の粉末状紙力剤。
【請求項3】
前記(a4)成分は、N,N−置換アミド基を有するビニルモノマーを含む、請求項1または2記載の粉末状紙力剤。
【請求項4】
前記(a1)成分の含有量は、前記(A)成分中、59.5〜98モル%であり、
前記(a2)成分の含有量は、前記(A)成分中、0.5〜20モル%であり、
前記(a3)成分の含有量は、前記(A)成分中、0.5〜20モル%であり、
前記(a4)成分の含有量は、前記(A)成分中、0.001〜1モル%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉末状紙力剤。
【請求項5】
前記(A)成分の重量平均分子量は、100万〜800万である、請求項1〜のいずれか1項に記載の粉末状紙力剤。
【請求項6】
(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分及び(a4)成分(ただし、式(I)で表される架橋性ビニルモノマーを含むものを除く)を溶媒で溶解して重合し(A)成分を得る工程、次いで得られた(A)成分を有機溶媒中へ滴下又は投入して沈殿を形成させる工程、沈殿物として得た(A)成分を乾燥して粉砕する工程を経て得られた粉末状紙力剤と、水とを混合する工程を含む、紙力剤溶液の製造方法
【化2】
1、R2:炭素−炭素不飽和結合をもたない炭素、酸素、窒素および水素から選ばれる群からなる原子で構成される直鎖若しくは分岐を有する鎖状の官能基。
W:15族の非金属元素。
X、Y:それぞれ炭素、酸素、窒素および水素から選ばれる群からなる原子で構成される直鎖若しくは分岐を有する鎖状の官能基であって、かつそれぞれ炭素−炭素不飽和結合を少なくとも1つ持つ。ただし、XとYは異なる構造を有する。
Z:塩素イオン、臭素イオンまたはヨウ素イオン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末状紙力剤、紙力剤溶液、紙に関する。
【背景技術】
【0002】
紙力剤は、抄紙工程において、パルプ原料へ添加、または一度できた紙の表面へ塗工されることにより、紙の強度を高める薬品である。紙力剤の形態は、ほとんどが水溶液(特許文献1)であり、水等で希釈して直ぐに添加または塗工できる。一方、紙力剤の構成成分にカチオン性ビニルモノマーが含まれていると、紙力剤は、分解が徐々に進み、紙力効果が経時的に低下しやすい。
【0003】
そのため、水溶液以外の形態として、粉末状の紙力剤が知られている。例えば、アクリルアミドと、特定の5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール誘導体および/またはその塩から選択された1種以上の化合物とを含有するアクリルアミド系重合体組成物(特許文献2)が公知である。特許文献2のアクリルアミド系重合体組成物は、乾燥、粉砕により粉末にされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−251252号公報
【特許文献2】特開2002−265740号公報
【発明の概要】
【0005】
しかしながら、特許文献2のアクリルアミド系重合体組成物は、分岐構造を有しておらず、当該組成物を用いて得られる紙の紙力効果が低くなる。本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、長期間に亘る保管安定性が優れ、添加して得た紙が高い紙力効果を示す粉末状紙力剤を提供することを目的とする。
【0006】
本発明者らは、優れた保管安定性を示すことと、製造直後および長期間保管後の粉末状紙力剤が共に紙の紙力効果を高めることに着目して、鋭意検討したところ、特定の(メタ)アクリルアミド系重合体の粉末が、上記の課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。上記課題を解決する本発明の粉末状紙力剤、紙力剤溶液および紙は、以下の構成を主に備える。
【0007】
上記課題を解決する本発明の一態様の粉末状紙力剤は、分岐型(メタ)アクリルアミド系重合体(A)を含む、粉末状紙力剤である。
【0008】
また、上記課題を解決する本発明の一態様の紙力剤溶液は、上記粉末状紙力剤と、水とを含む、紙力剤溶液である。
【0009】
さらに、上記課題を解決する本発明の一態様の紙は、上記紙力剤溶液が付与された、紙である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<粉末状紙力剤>
本発明の一実施形態の粉末状紙力剤は、分岐型(メタ)アクリルアミド系重合体(A)(以下、(A)成分という。)を含む。本実施形態の粉末状紙力剤は、このような構成を備えることにより、長期間に亘る保管安定性が優れる。また、このような粉末状紙力剤は、パルプスラリーへ添加することにより、得られた紙に高い紙力効果を付与することができる。なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル」は、メタクリルおよびアクリルの両方を含む。
【0011】
(分岐型(メタ)アクリルアミド系重合体(A)((A)成分))
(A)成分の構成成分は特に限定されない。一例を挙げると、(A)成分は、(メタ)アクリルアミドを含むものであればよく、(メタ)アクリルアミド(a1)(以下、(a1)成分ともいう。)、アニオン性ビニルモノマー(a2)(以下、(a2)成分ともいう。)、カチオン性ビニルモノマー(a3)(以下、(a3)成分ともいう。)および架橋性ビニルモノマー(a4)(以下、(a4)成分ともいう。)を含むもの等である。(A)成分の構成成分として、上記(a1)〜(a4)成分が含まれることにより、得られる粉末状紙力剤は、紙に優れた紙力効果を付与し得る。
【0012】
・(メタ)アクリルアミド(a1)((a1)成分)
(a1)成分は、メタクリルアミドまたはアクリルアミドのうち少なくともいずれか一方を含む。
【0013】
(a1)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(a1)成分の含有量は、(A)成分中、59.5モル%以上であることが好ましく、60モル%以上であることがより好ましく、80モル%以上がさらに好ましい。また、(a1)成分の含有量は、(A)成分中、98モル%以下であることが好ましい。(a1)成分の含有量が上記範囲内であることにより、得られる紙に優れた紙力効果を付与し得る。
【0014】
・アニオン性ビニルモノマー(a2)((a2)成分)
(a2)成分は、アニオン性を示すビニルモノマーであれば特に限定されない。一例を挙げると、(a2)成分は、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸類;ビニルスルホン酸、メタリルスルホン酸等の不飽和スルホン酸類等である。また、(a2)成分は、これらのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩であってもよく、アンモニウム塩等の塩であってもよい。(a2)成分は、併用されてもよい。
【0015】
(a2)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(a2)成分の含有量は、(A)成分中、0.5モル%以上であることが好ましい。また、(a2)成分の含有量は、(A)成分中、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましく、5モル%以下であることがさらに好ましい。(a2)成分の含有量が上記範囲内であることにより、粉末状紙力剤は、紙抄造時に添加されるカチオン性の製紙薬品(例えば、硫酸アルミニウム等)との相互作用が高められ、得られる紙に、優れた紙力効果を付与し得る。
【0016】
本実施形態の(a2)成分は、得られる(A)成分の重量平均分子量を高めることにより、粉末状紙力剤を添加して紙を製造した際に、得られる紙に高い紙力効果を付与し得る点から、不飽和スルホン酸類またはその塩のうち、少なくともいずれか一方を含むことが好ましく、メタリルスルホン酸またはメタリルスルホン酸ナトリウムを含むことがより好ましい。
【0017】
不飽和スルホン酸類が含まれる場合、不飽和スルホン酸類の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、不飽和スルホン酸類の含有量は、(A)成分中、0.1モル%以上であることが好ましい。また、不飽和スルホン酸類の含有量は、(A)成分中、2モル%以下であることが好ましく、1モル%以下であることがより好ましい。不飽和スルホン酸類の含有量が上記範囲内であることにより、得られる(A)成分は、重量平均分子量が高められやすい。また、得られる粉末状紙力剤は、製造直後の粉末紙力剤を添加して紙を製造した際に、得られる紙に高い紙力効果を付与し得る。また長期間保管後の粉末状紙力剤を添加して紙を製造した際にも高い紙力効果を維持し得る。
【0018】
・カチオン性ビニルモノマー(a3)((a3)成分)
(a3)成分は、カチオン性を示すビニルモノマーであれば特に限定されない。一例を挙げると、(a3)成分は、第3級アミノ基含有ビニルモノマー等である。第3級アミノ基含有ビニルモノマーは特に限定されない。一例を挙げると、第3級アミノ基含有ビニルモノマーは、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の第3級アミノ基含有(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の第3級アミノ基含有アルキル(メタ)アクリルアミド等である。(a3)成分は、第3級アミノ基含有ビニルモノマーの4級化塩であってもよい。第3級アミノ基含有ビニルモノマーの4級化塩は特に限定されない。一例を挙げると、第3級アミノ基含有ビニルモノマーの4級化塩は、第3級アミノ基含有ビニルモノマーの塩酸塩、硫酸塩等の無機酸塩;酢酸塩等の有機酸塩;第3級アミノ基含有ビニルモノマーと4級化剤とを反応させてなるもの等である。4級化剤は特に限定されない。一例を挙げると、4級化剤は、メチルクロライド、ベンジルクロライド、ジメチル硫酸、エピクロルヒドリン等である。(a3)成分は、併用されてもよい。中でも、(a3)成分は、(a1)成分と共重合性が優れる点から、第3級アミノ基含有(メタ)アクリレートまたは第3級アミノ基含有(メタ)アクリレートの4級化塩のうち少なくともいずれか一方を含むことが好ましく、より高分子量の(A)成分を得られやすい点から、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートの4級化塩であることがより好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレートベンジルクロライドがさらに好ましい。
【0019】
(a3)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(a3)成分の含有量は、(A)成分中、0.5モル%以上であることが好ましく、0.6モル%以上であることがより好ましい。また、(a3)成分の含有量は、(A)成分中、20モル%以下であることが好ましく、10モル%以下であることがより好ましい。(a3)成分の含有量が上記範囲内であることにより、得られる粉末状紙力剤は、紙を製造した際の紙力効果が高い。
【0020】
・架橋性ビニルモノマー(a4)((a4)成分)
(a4)成分は、(A)成分に分岐構造を導入するための成分であり、架橋性を有するビニルモノマーであれば特に限定されない。一例を挙げると、(a4)成分は、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN,N−置換アミド基を有するビニルモノマー;N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のN−置換アミド基を有するビニルモノマー;N,N−メチレンビスアクリルアミド、1,3,5−トリアクロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン等である。(a4)成分は、併用されてもよい。これらの中でも、(a4)成分は、N,N−置換アミド基を有するビニルモノマーを含むことが好ましく、N,N−ジメチルアクリルアミドを含むことがより好ましい。これにより、得られる(A)成分は、重量平均分子量を高められやすい。また、得られる粉末状紙力剤は、製造直後および長期間保管後のいずれにおいても、粉末状紙力剤を用いて紙を製造した際に高い紙力効果が得られやすい。
【0021】
(a4)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(a4)成分の含有量は、(A)成分中、0.001モル%以上であることが好ましい。また、(a4)成分の含有量は、(A)成分中、1モル%以下であることが好ましく、0.8モル%以下であることがより好ましく、0.5モル%以下であることがさらに好ましい。(a4)成分の含有量が上記範囲内であることにより、得られる(A)成分は、重量平均分子量を高められやすい。また、得られる(A)成分は、架橋反応が適切に進行しやすく、得られる(A)成分のゲル化が起こりにくい。
【0022】
・ビニルモノマー(a5)((a5)成分)
(A)成分は、好適に含まれる(a1)〜(a4)成分に加え、(a1)〜(a4)成分とは異なるビニルモノマー(a5)(以下、(a5)成分という)が含まれてもよい。(a5)成分は特に限定されない。一例を挙げると、(a5)成分は、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニルモノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のアルキル(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル等である。(a5)成分は、併用されてもよい。
【0023】
(a5)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(a5)成分の含有量は、(A)成分中、5モル%未満であることが好ましい。(a5)成分の含有量が上記範囲内であることにより、紙に高い紙力効果を付与することができる。
【0024】
・他の成分(a6)((a6)成分)
(A)成分が製造される際、上記した(a1)〜(a5)成分以外に、他の成分(a6)(以下、(a6)成分という)が使用されてもよい。(a6)成分は特に限定されない。一例を挙げると、(a6)成分は、2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類;エタノール、イソプロピルアルコールやペンタノール等のアルコール;α−メチルスチレンダイマー、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、クメン等の芳香族化合物;四塩化炭素;クエン酸、コハク酸、シュウ酸等の有機酸;塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の無機塩基;消泡剤、酸化防止剤等の添加剤等である。(a6)成分は、併用されてもよい。
【0025】
(a6)成分の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、(a6)成分の含有量は、(A)成分を構成する他の成分(例えば(a1)〜(a5)成分)100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましい。また、(a6)成分の含有量は、(A)成分中を構成する他の成分100質量部に対し、5質量部以下であることが好ましい。(a6)成分の含有量が上記範囲内であることにより、紙に高い紙力効果を付与することができる。
【0026】
本実施形態の粉末状紙力剤の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、粉末状紙力剤は、電子線、紫外光若しくは可視光等を照射し(以下、照射工程ともいう)、得られた塊状の(A)成分を粉砕する方法により製造され得る。
【0027】
具体的には、照射工程において、たとえば、上記した(a1)〜(a4)成分および必要に応じて(a5)〜(a6)成分等が混合され、重合開始剤が加えられる。その後、電子線、紫外光または可視光等が照射される。なお、(a1)〜(a6)成分を溶解させるために、溶媒が用いられることが好ましい。溶媒は特に限定されない。一例を挙げると、溶媒は、水である。
【0028】
重合時の各成分の合計の濃度は特に限定されない。一例を挙げると、濃度は、20重量%以上であることが好ましく、25重量%以上であることがより好ましい。また、濃度は、80重量%以下であることが好ましく、60重量%以下であることがより好ましい。濃度が上記範囲内であることにより、得られる(A)成分は、短時間で乾燥でき、かつ、重合度が適切に調整されやすい。
【0029】
(A)成分を製造する際、重合開始剤が配合されてもよい。重合開始剤は、特に限定されない。一例を挙げると、重合開始剤は、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩、2,2’−アゾビス[2(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]塩酸塩等のアゾ系化合物;過酸化水素等である。重合開始剤は、併用されてもよい。これらの中でも、重合開始剤は、溶液重合を充分に進行させる点から、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)塩酸塩であることが好ましい。また、重合開始剤の添加方法は特に限定されない。一例を挙げると、添加方法は、一括添加または分割添加または連続滴下等である。また、重合開始剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、重合開始剤の含有量は、(a1)〜(a5)成分100質量部に対して、0.001質量部以上であることが好ましく、0.01質量部以上であることがより好ましい。また、重合開始剤の含有量は、(a1)〜(a5)成分100質量部に対して、5質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
また光重合を行う場合は、光重合開始剤が使用できる。光重合開始剤は、光によって分解し、開始ラジカルを発生する開始剤であれば特に限定されない。一例を挙げると、光重合開始剤は、上記したアゾ系開始剤、α−ヒドロキシケトン類、アシルホスフィンオキサイド化合物等である。より具体的には、光重合開始剤は、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾフェノン等である。また、光重合開始剤は、水に希釈してモノマー成分の混合液に添加することが好ましい。光重合開始剤は、水に不溶の場合は、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトンやトルエン等の有機溶媒で希釈して添加してもよい。
【0031】
重合開始剤または光重合開始剤を加えるときの温度は、特に限定されない。一例を挙げると、温度は、10〜80℃である。また、光増感剤を加えて紫外光あるいは可視光、電子線等で照射する場合、温度は、0℃以上であることが好ましく、10〜40℃であることがより好ましい。
【0032】
光重合の場合、紫外域の光(特に近紫外線)を照射することが好ましい。近紫外線を発生させる装置は特に限定されない。一例を挙げると、近紫外線を発生させる装置は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光ケミカルランプ、蛍光青色ランプ等である。また、近紫外線の波長領域は、300〜500nmが好ましい。
【0033】
紫外線の照射強度は、特に限定されない。一例を挙げると、照射強度は、0.1〜100W/m2である。中でも、照射強度は、10W/m2以下であることが好ましく、8W/m2以下であることがより好ましく、6W/m2以下であることがさらに好ましい。また、近紫外線を照射して重合する間は、近紫外線の照射強度は、一定であっても変化させても良い。
【0034】
重合に用いる反応容器の形態は特に限定されない。一例を挙げると、反応容器は、シート等の薄膜状であってもよく、直方体等の厚みのある形態であってもよい。
【0035】
重合後は、得られた塊状の(メタ)アクリルアミド系重合体は、粉砕される。粉砕方法は、塊状の(メタ)アクリルアミド系重合体をそのまま粉砕しても良いし、乾燥して粉砕しても良いし、または溶媒を一部含んだ(メタ)アクリルアミド系重合体を粗砕し、乾燥後に粉砕しても良い。
【0036】
粗砕装置は特に限定されない。一例を挙げると、粗砕装置は、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、振動ミル、コーンクラッシャー、ハンマークラッシャー等である。粗砕後の(A)成分の平均粒子径は0.5〜20mmであることが好ましく、1〜10mmであることがより好ましい。平均粒子径が0.5mm未満の場合、粗砕装置の負荷が大きくなる傾向がある。また、平均粒子径が20mmを超える場合、(メタ)アクリルアミド系重合体は、乾燥時に充分に内部まで乾燥することが困難になる傾向がある。
【0037】
乾燥方法は特に限定されない。一例を挙げると、乾燥方法は、循風乾燥機等の熱風乾燥;真空乾燥、ドライヤー乾燥等の伝導伝熱乾燥;赤外線、電磁波等の輻射熱乾燥等である。また、乾燥条件は特に限定されない。一例を挙げると、乾燥温度は、50〜150℃程度(好ましくは50〜105℃)であり、乾燥時間は、0.5〜240分程度(好ましくは1〜180分)である。なお、ドライヤー乾燥は、特に限定されない。一例を挙げると、ドライヤー乾燥は、ダブルドラムドライヤー、シングルドラムドライヤー、ツインドラムドライヤー等である。
【0038】
粉砕装置は特に限定されない。一例を挙げると、粉砕装置は、グラインダー(石臼型粉砕機)、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー、高圧衝突型粉砕機、ボールミル、ビーズミル、振動ミル等である。
【0039】
本実施形態の粉末状紙力剤は、(a1)成分、(a2)成分、(a3)成分および(a4)成分を溶媒で溶解して重合(以下、“溶液重合”という)する工程、次いで得られた(A)成分を乾燥、粉砕させる工程を経る製造方法でも得ることができる。
【0040】
溶液重合は、例えば、従来公知の滴下重合法、同時重合法、またはこれらを組み合わせた方法等により、(a1)〜(a4)成分、必要に応じて、(a5)〜(a6)成分等を溶媒中で重合開始剤の存在下重合させて(メタ)アクリルアミド系重合体の溶液を得る方法である。溶媒は、(A)成分を構成する構成成分を溶解させる点から、水を用いることが好ましい。
【0041】
重合条件は、特に限定されない。一例を挙げると、重合条件は、予め反応装置に仕込んだ溶媒(好ましくは水)中へ、(a1)〜(a6)成分の混合液および重合開始剤の溶液をそれぞれ添加した後、50〜100℃程度で1〜8時間重合させる方法等である。
【0042】
重合開始剤は、特に限定されない。重合開始剤の種類および使用量は、上記と同様である。
【0043】
次いで得られた(A)成分は、乾燥、粉砕される。なお、得られた(A)成分は、乾燥と粉砕とが同時に行われても良く、乾燥が行われてから粉砕されてもよい。
【0044】
乾燥方法は、特に限定されない。乾燥方法は、上記と同様である。
【0045】
乾燥条件は、特に限定されない。一例を挙げると、乾燥条件は、温度60〜150℃程度(好ましくは80〜130℃)で、0.5〜10分程度(好ましくは0.5〜5分)である。
【0046】
粉砕方法、粉砕装置等は、特に限定されない。粉砕方法、粉砕装置等は、上記と同様である。
【0047】
なお、本実施形態の粉末状紙力剤は、上記溶液重合で得られた(A)成分を有機溶媒中へ滴下または投入して沈殿を形成させる工程、沈殿物として得た(A)成分を乾燥し粉砕する工程を経る製造方法でも得ることができる。当該方法は、(A)成分の分解を抑制しやすい利点がある。
【0048】
沈殿を形成させる際に用いる有機溶媒は、特に限定されない。一例を挙げると、有機溶媒は、(A)成分を比較的溶解させず、乾燥時に有機溶媒を揮発させやすくする点から、水性溶剤であることが好ましく、メタノール、エタノール等のアルコール;アセトン等のケトン等であることがより好ましく、アルコールであることがさらに好ましい。アルコールは、メタノールであることが好ましい。有機溶媒は、併用されてもよい。
【0049】
有機溶媒の使用量は、特に限定されない。一例を挙げると、有機溶媒の使用量は、(A)成分をより効率的に沈殿させやすくする点から、(A)成分の溶液100重量部に対して、300〜10000重量部程度であることが好ましい。
【0050】
沈殿を形成させた後は、得られた(A)成分の沈殿物を金網等でろ過する等して回収する。回収した(A)成分の沈殿物は、有機溶媒を揮発させるため、乾燥することが好ましい。乾燥方法は、特に限定されない。乾燥方法は、上記と同様である。乾燥条件も特に限定されない。一例を挙げると、乾燥条件は、乾燥温度が50〜150℃程度(好ましくは50〜105℃)であり、乾燥時間が30〜240分程度(好ましくは30〜180分)である。
【0051】
粉砕方法、粉砕装置等は、特に限定されない。粉砕方法、粉砕装置等は、上記と同様である。
【0052】
上記これらの方法により得られた粉末状紙力剤の平均粒子径は、特に限定されない。一例を挙げると、平均粒子径は、水等の溶媒に対して粉末状紙力剤を溶解しやすくする点から、0.01〜2mm程度が好ましい。
【0053】
(A)成分(または粉末状紙力剤)の物性は、特に限定されない。一例を挙げると、紙の充分な紙力効果を確保する点から、(A)成分の重量平均分子量(ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により得られた値をいう。以下同様)は、100万〜800万であることが好ましく、130万〜700万であることがより好ましい。
【0054】
本実施形態の紙力剤溶液は、上記粉末状紙力剤および水を含む。
【0055】
紙力剤溶液の調製方法は、特に限定されない。一例を挙げると、紙力剤溶液は、粉末状紙力剤に水を一括で加えて混合することにより調製されてもよく、水を分割して加えて混合することにより調製されてもよく、水中へ粉末紙力剤を加えて混合することにより調製されてもよい。混合手段は、特に限定されない。一例を挙げると、混合手段は、攪拌機等である。紙力剤溶液は、混合時に加熱されても良い。混合時の温度は特に限定されない。一例を挙げると、混合時の温度は、5〜60℃程度であることが好ましく、10〜50℃程度であることがより好ましい。
【0056】
紙力剤溶液の固形分濃度は、特に限定されない。一例を挙げると、固形分濃度は、5〜40重量%であることが好ましい。また、紙力剤溶液の濃度5重量%の水溶液における温度25℃での粘度は、5〜1000mPa・s程度であることが好ましい。なお、粘度はブルック・フィールド粘度計(B型粘度計)で測定した値である。
【0057】
紙力剤溶液は、必要に応じて、各種添加剤が配合されても良い。添加剤は、酸、アルカリ、消泡剤、防腐剤、クエン酸等のキレート剤;水溶性アルミニウム化合物、ボウ硝、尿素、多糖類等である。
【0058】
本実施形態の紙は、上記紙力剤溶液を付与して得られるものである。紙を得る方法は特に限定されない。一例を挙げると、紙は、紙力剤溶液を原料パルプスラリー中へ内添する、あるいは原紙表面に塗工すること等により得ることができる。なお、紙力剤溶液は水で希釈されることが好ましい。希釈後の水溶液の濃度は、0.01〜3重量%であることが好ましい。
【0059】
紙力剤溶液の使用量(固形分換算)は特に限定されない。一例を挙げると、紙力剤溶液の使用量は、パルプの乾燥重量に対して、0.01〜4重量%程度である。また、パルプの種類は特に限定されない。一例を挙げると、パルプの種類は、広葉樹パルプ(LBKP)、針葉樹パルプ(NBKP)等の化学パルプ;砕木パルプ(GP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の機械パルプ;段ボール古紙等の古紙パルプ等である。なお、紙力剤溶液を内添する場合、硫酸や水酸化ナトリウム等のpH調整剤;硫酸アルミニウム等の定着剤;サイズ剤や湿潤紙力剤等の製紙用薬品;タルク、クレー、カオリン、二酸化チタン、炭酸カルシウム等の填料等が添加されてもよい。
【0060】
原紙の表面に紙力剤溶液が塗工される場合、紙力剤溶液は、各種公知の手段により原紙表面に塗工される。希釈溶液の粘度は特に限定されない。一例を挙げると、希釈溶液の粘度は、温度50℃で1〜40mPa・sである。原紙の種類は特に限定されない。一例を挙げると、原紙は、木材セルロース繊維を原料とする未塗工の紙を用いることができる。塗工手段は特に限定されない。一例を挙げると、塗工手段は、バーコーター、ナイフコーター、エアーナイフコーター、キャレンダー、ゲートロールコーター、ブレードコーター、2ロールサイズプレスやロッドメタリング等である。紙力剤溶液の塗布量(固形分換算)は特に限定されない。塗布量は、0.001〜2g/m2程度であることが好ましく、0.005〜1g/m2程度であることがより好ましい。
【0061】
本実施形態の紙は、様々な製品に用いられ得る。一例を挙げると、本実施形態の紙は、コート原紙、新聞用紙、ライナー、中芯、紙管、印刷筆記用紙、フォーム用紙、PPC用紙、カップ原紙、インクジェット用紙、感熱紙等に用いられ得る。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に格別限定されない。なお、上記した実施形態は、以下の構成を有する発明を主に説明するものである。
【0063】
(1)分岐型(メタ)アクリルアミド系重合体(A)を含む、粉末状紙力剤。
【0064】
このような構成によれば、粉末状紙力剤は、長期間に亘る保管安定性が優れる。また、このような粉末状紙力剤は、紙に添加することにより、高い紙力効果を付与することができる。
【0065】
(2)前記(A)成分は、(メタ)アクリルアミド(a1)と、アニオン性ビニルモノマー(a2)と、カチオン性ビニルモノマー(a3)と、架橋性ビニルモノマー(a4)とを含む、(1)記載の粉末状紙力剤。
【0066】
このような構成によれば、粉末状紙力剤は、より優れた紙力効果を発揮する。
【0067】
(3)前記(a2)成分は、不飽和スルホン酸類または前記不飽和スルホン酸類の塩のうち、少なくともいずれか一方を含む、(2)記載の粉末状紙力剤。
【0068】
このような構成によれば、粉末状紙力剤は、より優れた紙力効果を発揮する。
【0069】
(4)前記(a4)成分は、N,N−置換アミド基を有するビニルモノマーを含む、(2)または(3)記載の粉末状紙力剤。
【0070】
このような構成によれば、得られる分岐型(メタ)アクリルアミド系重合体の重量平均分子量が大きくなりやすい。また、粉末状紙力剤は、より優れた紙力効果を発揮する。
【0071】
(5)前記(a1)成分の含有量は、前記(A)成分中、59.5〜98モル%であり、前記(a2)成分の含有量は、前記(A)成分中、0.5〜20モル%であり、前記(a3)成分の含有量は、前記(A)成分中、0.5〜20モル%であり、前記(a4)成分の含有量は、前記(A)成分中、0.001〜1モル%である、(2)〜(4)のいずれかに記載の粉末状紙力剤。
【0072】
このような構成によれば、粉末状紙力剤は、紙に充分な紙力効果を付与しやすい。
【0073】
(6)前記(A)成分の重量平均分子量は、100万〜800万である、(1)〜(5)のいずれかに記載の粉末状紙力剤。
【0074】
このような構成によれば、粉末状紙力剤は、紙に充分な紙力効果を付与しやすい。
【0075】
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の粉末状紙力剤と、水とを含む、紙力剤溶液。
【0076】
このような構成によれば、紙力剤溶液は、紙に添加することにより、高い紙力効果を付与することができる。
【0077】
(8)(7)に記載の紙力剤溶液が付与された、紙。
【0078】
このような構成によれば、得られる紙は、上記した粉末状紙力剤を含む紙力剤溶液が付与されており、高い紙力効果を示す。
【実施例】
【0079】
以下に、実施例を挙げて本発明を説明する。本発明はこれらに限定されない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断りのない限り、重量基準である。
【0080】
以下の略称は、それぞれ以下の化合物を示す。
AM:アクリルアミド
IA:イタコン酸
AA:アクリル酸
SMAS:メタリルスルホン酸ナトリウム
DM:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート
DML:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートベンジルクロライド
MBAA:N,N’−メチレンビスアクリルアミド
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
APS:過硫酸アンモニウム
【0081】
(重量平均分子量)
ゲルパーメーションクロマトグラフィー(GPC)法により、以下の測定条件で重量平均分子量および分子量分布を測定した。
カラム:東ソー(株)製 ガードカラムPWXL1本およびGMPWXL2本
溶離液:リン酸緩衝液(0.05mol/Lリン酸(富士フイルム和光純薬(株)製)+0.13mol/Lリン酸二水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬(株)製)水溶液、pH約2.5)
流速:0.8mL/分
温度:40℃
RI検出器:昭和電工(株)製 Shodex RI−101
MALS検出器:WYATT社製 DAWN HELEOS−II
測定サンプル:(A)成分の濃度が0.1%となるように、上記溶離液で希釈して測定した。
【0082】
実施例1
攪拌機、温度計、還流冷却管、窒素ガス導入管および2つの滴下ロートを備えた反応装置に、イオン交換水581.3部を入れ、窒素ガスを通じて反応系内の酸素を除去した後、90℃まで加熱した。一方の滴下ロートに、AMの50%水溶液533.19部、DM34.76部、DMLの60%水溶液104.55部、IA11.51部、AAの80%水溶液7.97部、SMAS5.595部、MBAA0.0682部、DMAA1.75部およびイオン交換水426.48部を仕込み、62.5%硫酸によりpHを3に調整した。また、他方の滴下ロートにAPS0.6部とイオン交換水180部を入れた。次に、両方の滴下ロートより系内にモノマーおよび触媒を約3時間かけて滴下した。滴下終了後、APS0.4部とイオン交換水10部を入れ1時間保温し、イオン交換水89.7部を投入し、濃度20.0%、重量平均分子量400万の(A−1)成分を得た。構成成分および得られた(A−1)成分の物性を表1に示す(以下同様)。
【0083】
次いで得られた(A−1)成分100部をメタノール1500部中へ滴下した後、金網(100メッシュ、SUS304)でろ過して沈殿物を得た。温度105℃の循風乾燥機で沈殿物を3時間乾燥した後、ボールミルにて2分間粉砕して粉末状紙力剤を得た。
【0084】
実施例2〜12、比較例2〜4
表1に示される組成に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、粉末状紙力剤をそれぞれ得た。
【0085】
比較例1
実施例1の(A−1)成分を水溶液のまま用いた。
【0086】
実施例1〜12および比較例1〜4において得られたそれぞれの紙力剤について、以下の評価方法により、保管安定性、比破裂強度を測定した。結果を表1または表2に示す。
【0087】
(保管安定性)
各粉末紙力剤、および比較例1の紙力剤水溶液を温度40℃の恒温機にて2ヶ月保管した。保管前後のカチオン価を測定した。以下に示される(式1)によりカチオン価を算出し、(式2)よりカチオン分解率を算出した。なお、カチオン価は、紙力剤の濃度が0.5%となるように脱イオン水で希釈した液を塩酸にてpH2.0とした後、トルイジンブルーを指示薬として1/400規定(N)のポリビニル硫酸カリウム水溶液(ファクター:f=1.00)によりコロイド滴定することによって測定した。測定液の色が青から赤紫色に変化し、赤紫色が10秒以上保持される点を終点とした。
【0088】
(式1)
(カチオン価)(meq/g)=1/400×f×V/(W×C/100)
f:1/400規定(N)のポリビニル硫酸カリウム水溶液のファクター
V:1/400規定(N)のポリビニル硫酸カリウム水溶液の滴定量(mL)
W:紙力剤の採取量(g)
C:紙力剤の濃度(%)
【0089】
(式2)
(カチオン分解率)(%)=[{(保管前のカチオン価)−(保管後のカチオン価)}/(保管前のカチオン価)]×100
【0090】
【表1】
【0091】
(比破裂強度)
段ボール古紙をナイアガラ式ビーターにて叩解し、カナディアン・スタンダード・フリーネス(C.S.F)300mLに調整したパルプに硫酸バンドを1.5%添加した。5%水酸化ナトリウム水溶液を添加しpH6.7に調整した。次に各実施例および比較例(比較例1を除く)の粉末状紙力剤の濃度1%水溶液(紙力剤溶液)を固形分換算で対パルプ1%添加して、攪拌した後、タッピ・シートマシンにて、坪量180g/m2となるよう抄紙し、5kg/cm2で2分間プレス脱水をした。次いで、回転型乾燥機で105℃において3分間乾燥し、温度23℃、湿度50%の条件下にて24時間調湿して紙を得た。また、比較例1の紙力剤溶液については濃度1%の水溶液に希釈した後、同様に添加した。さらに温度40℃で2ヶ月保管したサンプルについても同様に行い、紙をそれぞれ得た。得られた紙を用いて、JIS P 8131に準拠して、比破裂強度(kPa・m2/g)を測定した。また、以下の(式3)より比破裂強度の低下率(%)を算出した。比破裂強度の数値が大きく、低下率の数値が小さいほど紙力効果に優れることを意味する。
【0092】
(式3)比破裂強度の低下率(%)=[{(合成直後の比破裂強度)−(保管後の比破裂強度)}/(合成直後の比破裂強度)]×100
【0093】
【表2】