(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
フレキシブル基板と、第1実装回路部材と、第2実装回路部材とを備え、前記第1実装回路部材と前記第2実装回路部材とが前記フレキシブル基板を介して接続されてなる電子機器であって、
前記フレキシブル基板は、
可撓性を有する基板と、
前記基板に形成され、前記第1実装回路部材に接続される第1接続部及び前記第2実装回路部材に接続される第2接続部と、
前記基板に形成され、前記第1接続部に繋がる第1線路及び前記第2接続部に繋がる第2線路と、
を備え、
前記第1線路及び前記第2線路は、前記第1線路と前記第2線路とが並走する領域である第1領域と、前記第1線路と前記第2線路とが並走する領域である第2領域とを有し、
前記第2領域における前記第1線路と前記第2線路との最大間隔は、前記第1領域における前記第1線路と前記第2線路との最大間隔よりも小さく、
前記第2領域における前記第1線路及び前記第2線路の長さは、前記第1線路及び前記第2線路を伝搬する信号の波長の1/4波長である、
電子機器。
フレキシブル基板と、第1実装回路部材と、第2実装回路部材とを備え、前記第1実装回路部材と前記第2実装回路部材とが前記フレキシブル基板を介して接続されてなる電子機器であって、
前記フレキシブル基板は、
可撓性を有する基板と、
前記基板に形成され、前記第1実装回路部材に接続される第1接続部及び前記第2実装回路部材に接続される第2接続部と、
前記基板に形成され、前記第1接続部に繋がる第1線路及び前記第2接続部に繋がる第2線路と、
を備え、
前記第1線路及び前記第2線路は、前記第1線路と前記第2線路とが並走する領域である第1領域と、前記第1線路と前記第2線路とが並走する領域である第2領域とを有し、
前記第2領域における前記第1線路と前記第2線路との最大間隔は、前記第1領域における前記第1線路と前記第2線路との最大間隔よりも小さく、
前記第1領域は、前記第1線路と前記第2線路との間に層間接続導体を有する、
電子機器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
まず、本発明に係るフレキシブル基板及び電子機器における幾つかの態様について列挙する。
【0017】
本発明に係る第1の態様のフレキシブル基板は、
可撓性を有する基板と、
前記基板に形成され、実装回路部材に接続される接続部と、
前記基板に形成され、前記接続部に繋がる第1線路及び第2線路と、
を備え、
前記第1線路及び前記第2線路は、前記第1線路と前記第2線路とが並走する領域である第1領域と、前記第1線路と前記第2線路とが、前記第1領域よりも互いに近接して結合する領域である第2領域とを有する。
【0018】
上記構成により、第1領域は伝送線路部、第2領域は結合線路部として作用し、第1線路及び第2線路を伝搬する信号は、第2領域の線路同士の結合に応じて、信号の間接的な入出力が行われる。
【0019】
本発明に係る第2の態様のフレキシブル基板では、前記第2領域で前記第1線路と前記第2線路とが互いに近接する部分の長さは、前記第1線路及び前記第2線路を伝搬する信号の波長の1/4波長である。この構造によれば、第2領域が方向性結合器として作用する。
【0020】
本発明に係る第3の態様のフレキシブル基板では、前記基板は積層された複数の絶縁性基材の積層体であり、前記第2領域の厚みは第1領域の厚みよりも厚い。この構造によれば、第2領域の構造上の剛性が高まり、結合線路部として作用が安定化する。
【0021】
本発明に係る第4の態様のフレキシブル基板では、前記第2領域は、前記第1線路と前記第2線路とが互いに段階的に近接する領域である。この構造によれば、第1領域と第2領域との境界におけるインピーダンス不整合による信号の反射が抑制される。
【0022】
本発明に係る第5の態様のフレキシブル基板では、前記基板は、前記第1線路又は前記第2線路に導通するアンテナ部を有する。この構造によれば、アンテナ部に対して信号を入出力する伝送線路部と共にアンテナ部をも一体化された構造体として用いることができる。
【0023】
本発明に係る第6の態様の電子機器は、
フレキシブル基板と、第1実装回路部材と、第2実装回路部材とを備え、前記第1実装回路部材と前記第2実装回路部材とが前記フレキシブル基板を介して接続されてなる電子機器であって、
前記フレキシブル基板は、
可撓性を有する基板と、
前記基板に形成され、前記第1実装回路部材に接続される第1接続部及び前記第2実装回路部材に接続される第2接続部と、
前記基板に形成され、前記第1接続部に繋がる第1線路及び前記第2請求項部に繋がる第2線路と、
を備え、
前記第1線路及び前記第2線路は、前記第1線路と前記第2線路とが並走する領域である第1領域と、前記第1線路と前記第2線路とが、前記第1領域よりも互いに近接して結合する領域である第2領域とを有する。
【0024】
上記構成により、第1線路及び第2線路を伝搬する信号は第2領域の線路同士の結合に応じて、間接的な入出力が行われる。
【0025】
本発明に係る第7の態様の電子機器では、前記第1実装回路部材は、アンテナが構成されるアンテナ基板であり、前記第2実装回路部材は回路基板である。この構造では、送信回路や受信回路が構成された回路基板とアンテナ基板とをフレキシブル基板を介して接続する構造となり、アンテナを有する小型の電子機器が構成できる。
【0026】
本発明に係る第8の態様の電子機器では、前記第2領域は前記回路基板よりも前記アンテナ基板に近い位置に有する。この構造によれば、アンテナから送信される信号の電力をより高精度で検出できる。
【0027】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0028】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係るフレキシブル基板101及びそれを備える電子機器201Aの主要部の正面図である。電子機器201Aは、フレキシブル基板101、アンテナ基板10及び回路基板20を備える。フレキシブル基板101は、可撓性を有する基板30と、プラグ31,32とを備える。後に示すように、基板30には第1線路、第2線路、伝送線路部及び結合線路部が形成されている。
【0029】
アンテナ基板10には導体パターンによるアンテナ素子が形成されている。回路基板20には、上記アンテナ素子に繋がる高周波回路が形成されている。
【0030】
アンテナ基板10には上記アンテナ素子に繋がるレセプタクル11が実装されている。回路基板20には上記高周波回路に繋がるレセプタクル21が実装されている。レセプタクル11とプラグ31とで一つの同軸コネクタが構成されている。同様に、レセプタクル21とプラグ32とで一つの同軸コネクタが構成されている。プラグ31,32は本発明に係る「接続部」に相当する。また、プラグ31は本発明に係る「第1接続部」に相当し、プラグ32は本発明に係る「第2接続部」に相当する。
【0031】
アンテナ基板10は本発明に係る「第1実装回路部材」に相当し、回路基板20は本発明に係る「第2実装回路部材」に相当する。
【0032】
図2はフレキシブル基板101の縦断面図である。このフレキシブル基板101は、それぞれに導体パターンが形成された絶縁性の基材30S1,30S2,30S3の積層体を含む。基材30S1,30S2,30S3は例えば液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂のシート材である。基材30S1の上面にはパッドPD1及びグランド導体G1が形成されていて、基材30S2の上面には第1線路パターンSL1が形成されている。また、基材30S3の下面にはパッドPD2及びグランド導体G2が形成されている。
図2は第1線路パターンSL1に沿った位置での縦断面図であるので、
図2には表れていないが、基材30S2には第2線路パターン(後に示す第2線路パターンSL2)も形成されている。これら第1線路パターンSL1、第2線路パターンSL2及びグランド導体G1,G2は、基材にラミネートされたCu箔がパターンニングされたものである。第1線路パターンSL1とそれを積層方向に挟むグランド導体G1,G2とでストリップライン構造の第1線路が構成されている。同様に、上記第2線路パターンSL2とそれを積層方向に挟むグランド導体G1,G2とでストリップライン構造の第2線路が構成されている。後に示すとおり、フレキシブル基板101は結合線路部A2を有する。この結合線路部A2は、フレキシブル基板101に部品が実装されることで構成されたものではなく、フレキシブル基板101自体で構成されたものである。
【0033】
基材30S1には、第1線路パターンSL1とパッドPD1とを接続するビア導体V1が形成されている。基材30S2,30S3には、第1線路パターンSL1とパッドPD2とを接続するビア導体V21,V22が形成されている。これらビア導体V1,V21,V22は、例えばSnフィラーを含む導電性フィラー、樹脂材及びフラックス等を含む導電性ペーストがビア孔に充填され、加熱プレスにより固化された層間接続導体である。
【0034】
なお、
図1、
図2では、フレキシブル基板101を、プラグ31,32を介してアンテナ基板10及び回路基板20に接続する例を示したが、フレキシブル基板101を、プラグ31,32を介することなく他の基板に接続してもよい。例えば、このフレキシブル基板101を、リジットな回路基板20に直接的に接続していてもよい。接続部にプラグを用いれば接続力を高めることができ、プラグを用いなければ、そのプラグの分だけ省スペース化できる。
【0035】
積層体の表面にはプラグ31,32が実装されている。プラグ31の中心導体(ピン)はパッドPD1に導通し、外導体はグランド導体G1に導通する。また、プラグ32の中心導体(ピン)はパッドPD2に導通し、外導体はグランド導体G2に導通する。
【0036】
積層体の、プラグ31,32の実装位置以外の領域には、エポキシやポリイミド等のレジスト膜33が被覆されている。
【0037】
図3は上記基材30S2の平面図である。基材30S2には、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2が形成されている。第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2には、互いに並走する領域である伝送線路部A1と、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが、伝送線路部A1よりも互いに近接して結合する領域である結合線路部A2とを有する。換言すれば、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2には、互いに並走する領域である伝送線路部A1と、互いに並走する領域である結合線路部A2とを有し、結合線路部A2における第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との最大間隔は、伝送線路部A1における第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との最大間隔よりも小さい。
【0038】
伝送線路部A1は本発明に係る「第1領域」に相当し、結合線路部A2は本発明に係る「第2領域」に相当する。この結合線路部A2で、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが近接する部分の長さは、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2を伝搬する信号の波長の1/4波長である。ただし、測定誤差などによるずれは許容される。この構造によれば、結合線路部A2が方向性結合器として作用する。
【0039】
平面視で、フレキシブル基板101の両側部に、
図2に示したグランド導体G1−G2間を接続する複数のビア導体Vが配列されている。また、伝送線路部A1において、平面視で、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との間にも、グランド導体G1−G2間を接続する複数のビア導体Vが配列されている。結合線路部A2の第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との間にはビア導体Vは配列されていない。このように、伝送線路部A1における第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との間に、グランド電位のビア導体Vが存在することにより、伝送線路部A1における第1線路と第2線路との不要結合が抑制される。
【0040】
図3に示すように、伝送線路部A1と結合線路部A2との境界をポートP1〜P4として表すと、ポートP1への入力信号(入射波)の一部はポートP2に現れ、残りはポートP4に現れる。ポートP2に現れる信号強度とポートP4に現れる信号強度とは、結合線路部A2の結合度に応じて定まる。また、結合線路部A2からポートP1への反射波に比例する強度の信号がポートP3に現れる。
【0041】
ポートP1への入力信号の電力をPi、ポートP4に現れる信号の電力をpi、ポートP3から出力される反射信号の電力をpr、で表すと、
結合度Cは、C=10logPi/pi
方向性Dは、D=10logPi/pr
で表される。
【0042】
例えば、上記結合度Cを用いて、伝送線路部A1における、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との結合度と、結合線路部A2における、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との結合度を測定すると、結合線路部A2における結合度の方が、伝送線路部A1における結合度よりも大きい。結合線路部A2での結合度Cは具体的にはC=10dB 〜 40dB程度である。
【0043】
後に例示するように、送信信号が第1線路パターンSL1を含む第1線路を伝搬し、ポートP1に入力され、ポートP2から出力される。このポートP2から出力される信号はアンテナへ導かれる。結合線路部A2のポートP4から、第2線路パターンSL2を含む第2線路を伝搬する信号はアンテナへの出力電力のモニタリング信号として扱われる。
【0044】
図1に示したように、結合線路部A2は回路基板20よりもアンテナ基板10に近い位置に形成されている。この構造によれば、アンテナ基板10のアンテナ素子に供給される送信信号の強度がアンテナ素子の直近で検出されるので、アンテナから送信される信号の電力をより高精度で検出できる。
【0045】
図4は、第1の実施形態に係る別の電子機器201Bの主要部の正面図である。電子機器201Bは、フレキシブル基板101、アンテナ基板10及び回路基板20を備える。フレキシブル基板101の構成は、
図1に示したフレキシブル基板101と同じである。
【0046】
回路基板20には、レセプタクル21以外に実装部品22が実装されている。この実装部品22は後に示す増幅器、デュプレクサ、RFIC等である。
【0047】
本発明によれば、アンテナ基板10又は回路基板20に方向性結合器を設ける必要がないので、全体に小型化できるだけでなく、方向性結合器を介する信号をアンテナ基板10と回路基板20との間で伝送するための特別なケーブルが不要となる。また、ケーブルの接続部での損失も無くなる。
【0048】
また、本発明のフレキシブル基板は、筐体や周辺の部材を回避するように、例えば隙間に沿って配置できるように、部分的に又は全体的に屈曲させて用いることができる。換言すれば、本発明のフレキシブル基板は、少なくとも部分的に曲げられた基板である。また、本発明のフレキシブル基板は、熱可塑性樹脂で一体形成されていることで、加熱により塑性変形させることができる。そのため、上記屈曲も容易となる。
【0049】
図5は電子機器201Bの構成を示すブロック図である。この電子機器201Bは、送受信回路111、アンテナ12、及び送受信回路111とアンテナ12との間を接続するフレキシブル基板101を備える。アンテナ12は
図4に示したアンテナ基板10に形成された素子である。アンテナ基板10には終端抵抗RTが設けられている。送受信回路111は回路基板20に構成された回路である。
【0050】
図5においてフレキシブル基板101内に形成された方向性結合器をCPで表している。ポートP1〜P4は
図3に示したポートP1〜P4と対応している。この例ではポートP3は終端抵抗RTで終端されている。
【0051】
送受信回路111は、電力増幅器PA、デュプレクサDUP、低雑音増幅器LNA及びRFICを備える。RFICはモデムとして作用する。
【0052】
回路基板20のレセプタクル21にはデュプレクサDUPの共通ポートが接続される。電力増幅器PAから出力される送信信号はデュプレクサDUPの送信信号入力ポートに入力される。低雑音増幅器LNAはデュプレクサDUPの受信信号出力ポートから出力される受信信号を増幅する。
【0053】
RFICは電力増幅器PAへ送信信号及びゲイン制御信号を出力する。また、RFICは低雑音増幅器LNAから出力される受信信号を入力する。さらに、RFICはフレキシブル基板101の方向性結合器CPのポートP4から出力される信号を入力し、その強度に応じて電力増幅器PAのゲインを制御する。つまり、方向性結合器CPのポートP4から出力される信号の電力はアンテナ12へ出力される送信電力に比例するので、この電力が所定値となるように、電力増幅器PAのゲインを適正化する。
【0054】
図6〜
図8は、
図5に示した電子機器201Bとは一部の構成が異なる電子機器のブロック図である。
【0055】
図6に示す電子機器201Cは、
図5に示した方向性結合器CPのポートP3が開放されている。その他の構成は電子機器201Bと同じである。方向性結合器CPのポートP3からの反射信号はポートP4からRFIC側へ伝送されるが、その強度が問題とならない場合には、必ずしも抵抗終端させずに、開放させてもよい。
【0056】
図7に示す電子機器201Dは、
図5に示した方向性結合器CPのポートP3から出力される信号を送受信回路111へ戻すように構成されている。また、方向性結合器CPのポートP3は接地されている。その他の構成は電子機器201Bと同じである。上述のとおり、方向性結合器CPのポートP3からの反射信号はポートP4からRFIC側へ伝送されるが、その強度が問題とならない場合には、必ずしも抵抗終端させずに接地させてもよい。また、アンテナ基板(
図1におけるアンテナ基板10)に接地部が存在しない場合、この例で示すように、回路基板(
図1における回路基板20)側で接地してもよい。また、回路基板側で抵抗終端してもよい。
【0057】
図8示す電子機器201Eは、送受信回路112、アンテナ12、及び送受信回路112とアンテナ12との間を接続するフレキシブル基板101を備える。この電子機器201Eは、方向性結合器CPのポートP4だけでなく、ポートP3から出力される信号も送受信回路112へ戻すように構成されている。
【0058】
この電子機器201Eにおいて、RFICは、方向性結合器CPのポートP4から出力される信号を入力し、前述のとおり、その強度に応じて電力増幅器PAのゲインを適正化する。また、RFICは方向性結合器CPのポートP3から出力される信号の強度に応じて、アンテナ12から方向性結合器CPへ戻る反射信号の強度を検出する。
【0059】
RFICは方向性結合器CPのポートP3から出力される信号を入力し、その強度に応じても電力増幅器PAのゲインを制御する。つまり、方向性結合器CPのポートP3から出力される信号の電力はアンテナ12と空間とのインピーダンス不整合に起因する反射波の電力に比例するので、アンテナ12からの反射強度に応じても電力増幅器PAのゲインを適正化する。
【0060】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、アンテナ部を有するフレキシブル基板及びそれを備える電子機器の例を示す。
【0061】
図9は第2の実施形態に係る電子機器202の主要部の正面図である。電子機器202は、フレキシブル基板102及び回路基板20を備える。フレキシブル基板102は、可撓性を有する基板30と、プラグ32とを備える。基板30には、第1の実施形態で示した例と同様の第1線路、第2線路、伝送線路部A1及び結合線路部A2が形成されている。基板30には更にアンテナ部12Aが形成されている。このアンテナ部12Aは導体パターンによるアンテナ素子であり、第1の実施形態ではアンテナ基板10に形成されていた導体パターンと同じものである。
【0062】
図9に示すように、上記アンテナ部12A及び結合線路部A2は電子機器202の絶縁性の筐体40の内面に沿って配置されている。アンテナ部12A及び結合線路部A2は電子機器202の筐体40の内面に接合されていてもよい。これらのことにより、基板30がフレキシブルでありながら、アンテナ部12Aの形状及び結合線路部A2の形状が安定化される。
【0063】
回路基板20にはアンテナ部12Aに繋がる高周波回路が形成されていて、回路基板20にはこの高周波回路に繋がるレセプタクル21が実装されている。レセプタクル21とプラグ32とで一つの同軸コネクタが構成されている。
【0064】
図10は第2の実施形態に係る電子機器202の構成を示すブロック図である。この電子機器202は、送受信回路111とフレキシブル基板102とを備える。アンテナ12はフレキシブル基板102に形成されたアンテナ部に相当する。送受信回路111は回路基板20に構成された回路である。
【0065】
図10に示すように、フレキシブル基板102内に方向性結合器CPが形成されている。ポートP1〜P4は
図3に示したポートP1〜P4と対応している。この例ではポートP3は開放している。送受信回路111の構成は
図5等に示したとおりである。
【0066】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、第1の実施形態で示したフレキシブル基板101とは構造が異なるフレキシブル基板及びそれを備える電子機器の例を示す。
【0067】
図11(A)、
図11(B)は、第3の実施形態に係る電子機器203A,203Bの主要部の正面図である。電子機器203Aは、フレキシブル基板103A、アンテナ基板10及び回路基板20を備える。また、電子機器203Bは、フレキシブル基板103B、アンテナ基板10及び回路基板20を備える。
【0068】
フレキシブル基板103A,103Bの基本的な構成は
図1に示したフレキシブル基板101と同じであるが、結合線路部A2の厚みが伝送線路部A1の厚みより厚い。この構造によれば、結合線路部A2の構造上の剛性が高いので、方向性結合器としての特性の安定性が高い。特に、
図11(B)に示すフレキシブル基板103Bでは、プラグ31の実装領域の厚みも伝送線路部A1の厚みに比べて厚い。この構造によれば、アンテナ基板10に対する接続部の構造上の剛性も高いので、方向性結合器としての特性の安定性は更に高い。
【0069】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、フレキシブル基板に形成される方向性結合器の他の構造例を示す。
【0070】
図12は第4の実施形態に係るフレキシブル基板の所定の基材の平面図であり、特に方向性結合器の形成領域の平面図である。この基材には、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2が形成されている。第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2には、互いに並走する領域である伝送線路部A1と、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが、伝送線路部A1よりも互いに近接して結合する領域である結合線路部A20,A21とを有する。換言すれば、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2には、互いに並走する領域である伝送線路部A1と、互いに並走する領域である結合線路部A20,A21とを有し、結合線路部A20,A21における第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との最大間隔は、伝送線路部A1における第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との最大間隔よりも小さい。伝送線路部A1は本発明に係る「第1領域」に相当し、結合線路部A20,A21は本発明に係る「第2領域」に相当する。
【0071】
結合線路部A20で、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが近接する部分の長さは、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2を伝搬する信号の波長の1/4波長である。同様に、結合線路部A21で、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが近接する部分の長さも1/4波長である。ただし、測定誤差などによるずれは許容される。この構造によれば、多段階で結合する結合線路部A20,A21が方向性結合器として作用する。
【0072】
第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2の、結合線路部A21での線幅は伝送線路部A1での線幅より細い。また、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2の、結合線路部A20での線幅は結合線路部A20での線幅より更に細い。
【0073】
本実施形態のように、結合線路部の線間が段階的に変化する構造であれば方向性結合器として作用する周波数帯域が広くなる。つまり周波数依存性が小さくなって、広帯域に亘って方向性結合器として作用する。また、線間が狭い箇所ほど線幅が細い構造であることにより、第1線路及び第2線路の特性インピーダンスを一定値に近似でき、方向性結合器での信号の反射が抑制される。
【0074】
このような結合線路部は所定の長さを要するので、結合線路機能を有する素子を回路基板に実装しようとすると、その素子を実装するための広いスペースが必要となるが、本発明では、全体の長さが相対的に長いフレキシブル基板内に結合線路部を形成するので、全体的に省スペース化できる。
【0075】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、フレキシブル基板に形成される方向性結合器の他の構造例を示す。
【0076】
図13(A)は第5の実施形態に係るフレキシブル基板の所定の基材の平面図であり、特に方向性結合器の形成領域の平面図である。
図13(B)は第5の実施形態に係るフレキシブル基板の縦断面図であり、
図13(A)におけるB−B部分での断面図である。
【0077】
第1の実施形態や第4の実施形態では、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが同一の基材に形成された例を示したが、
図13(A)、
図13(B)に示す例では、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが、互いに異なる基材に形成されている。そして、結合線路部A2で、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とは、基材の積層方向に近接する。結合線路部A2での第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との間隔は、伝送線路部A1での第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との間隔より狭い。
【0078】
本実施形態によれば、フレキシブル基板の幅方向(線間方向、線幅方向)寸法を縮小化できる。
【0079】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、フレキシブル基板に形成される方向性結合器の他の構造例を示す。
【0080】
図14(A)、
図14(B)は、第6の実施形態に係るフレキシブル基板の方向性結合器の形成領域の縦断面図である。
【0081】
図14(A)に示す例では、複数の基材の積層体の内部に第1線路パターンSL1,SL10、第2線路パターンSL2,SL20が形成されている。第1線路パターンSL1と第1線路パターンSL10とはビア導体を介して接続されている。同様に、第2線路パターンSL2と第2線路パターンSL20とはビア導体を介して接続されている。第1線路パターンSL10と第2線路パターンSL20とは、積層方向に近接する。第1線路パターンSL10と第2線路パターンSL20との間隔は、伝送線路部A1での第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2との間隔より狭い。第1線路パターンSL10と第2線路パターンSL20の線長は、第1線路パターンSL1,SL10及び第2線路パターンSL2,SL20を伝搬する信号の波長の1/4波長である。ただし、測定誤差などによるずれは許容される。これら第1線路パターンSL10及び第2線路パターンSL20の形成範囲が結合線路部A2である。この構造によれば、結合線路部A2が方向性結合器として作用する。
【0082】
図14(B)に示す例では、複数の基材の積層体の内部に第1線路パターンSL1,SL10,SL11、第2線路パターンSL2,SL20,SL21が形成されている。第1線路パターンSL1と第1線路パターンSL11とはビア導体を介して接続されている。また、第1線路パターンSL11と第1線路パターンSL10とはビア導体を介して接続されている。同様に、第2線路パターンSL2と第2線路パターンSL21とはビア導体を介して接続されていて、第2線路パターンSL21と第2線路パターンSL20とはビア導体を介して接続されている。第1線路パターンSL11と第2線路パターンSL21とは積層方向に近接する。第1線路パターンSL10と第2線路パターンSL20とは積層方向に更に近接する。第1線路パターンSL10と第2線路パターンSL20の線長は、第1線路パターンSL1,SL10及び第2線路パターンSL2,SL20を伝搬する信号の波長の1/4波長である。また、第1線路パターンSL11と第2線路パターンSL21の線長も1/4波長である。ただし、測定誤差などによるずれは許容される。これら第1線路パターンSL10及び第2線路パターンSL20の形成範囲が結合線路部A20であり、第1線路パターンSL11及び第2線路パターンSL21の形成範囲が結合線路部A21である。この構造によれば、多段階で結合する結合線路部A20,A21が方向性結合器として作用する。
【0083】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0084】
例えば、以上に示した例では、結合線路部A2で、第1線路パターンSL1と第2線路パターンSL2とが近接する部分の長さは、第1線路パターンSL1及び第2線路パターンSL2を伝搬する信号の波長の1/4波長である例を示したが、特別な高精度が要求されるわけではない。上記長さが1/4波長でなくても、結合線路部での結合度に応じて、アンテナ等への出力電力に比例する電力を検出することはできる。