(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本発明に係る回路基板における幾つかの態様について列挙する。
【0014】
本発明に係る第1の態様の回路基板は、第1回路基板部及び第2回路基板部を含む複数の回路基板部を備え、前記第1回路基板部に低周波信号又は低速信号用の第1伝送線路が形成され、前記第2回路基板部に高周波信号又は高速信号用の第2伝送線路が形成され、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とが互いに並走する位置関係で、前記第1回路基板部に前記第2回路基板部が配置される。この構成によれば、第1回路基板部と第2回路基板部とのアイソレーションが確保され、第1伝送線路と第2伝送線路との間での信号の漏洩や干渉が抑制される。また、低周波・低速信号及び高周波・高速信号それぞれについて、所定の伝送特性が満足できる。
【0015】
本発明に係る第2の態様の回路基板では、前記第1回路基板部の誘電率は前記第2回路基板部の誘電率よりも高い。
【0016】
本発明に係る第3の態様の回路基板では、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、平面視で前記複数の回路基板部の面方向に沿って互いに並走する。この構成によれば、第1回路基板部と第2回路基板部とのアイソレーションをより高められる。
【0017】
本発明に係る第4の態様の回路基板では、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路とは、前記複数の回路基板部の積層方向に沿って互いに並走する。この構成によれば、第1回路基板部と第2回路基板部とが重なる部分の面方向の幅を狭められる。
【0018】
本発明に係る第5の態様の回路基板では、前記第1回路基板部が前記第2回路基板部に搭載されて、前記第1回路基板部から前記第2回路基板部が突出することで段差部が形成された、または前記第2回路基板部が前記第1回路基板部に搭載されて、前記第2回路基板部から前記第1回路基板部が突出することで段差部が形成されている。この構成によれば、第1回路基板部と第2回路基板部との重なる部分が相対的に厚くなるが、第1回路基板部又は第2回路基板部が部分的に突出するだけであるので、回路基板の占有体積を小さくでき、回路基板全体の平均的な厚みの増加も抑えられる。これにより電子機器の小型化に貢献できる。
【0019】
本発明に係る第6の態様の回路基板では、前記第2伝送線路が形成された部分での前記第2回路基板部の幅は前記第1回路基板部の幅より細く、前記第1回路基板部から前記第2回路基板部が突出することで段差部が形成される。この構成によれば、第1伝送線路と第2伝送線路との重なる部分の厚みが相対的に厚くなるが、第2回路基板部が部分的に段差部として突出するだけであるので、回路基板の占有体積を小さくでき、回路基板全体の平均的な厚みの増加も抑えられる。これにより電子機器の小型化に貢献できる。
【0020】
本発明に係る第7の態様の回路基板では、前記第1回路基板部は複数の絶縁性基材が積層され、第1層間接続導体を含む多層基板であり、前記第2回路基板部は複数の絶縁性基材が積層され、第2層間接続導体を含む多層基板であり、前記第1層間接続導体は金属体で構成され、前記第2層間接続導体は、少なくとも一部に導電性ペーストの固化物を有する。この構成によれば、第1伝送線路に適した層間接続導体を有する第1回路基板部と、第2伝送線路に適した層間接続導体を有する第2回路基板部とを有する回路基板が得られる。
【0021】
本発明に係る第8の態様の回路基板では、前記第1回路基板部又は前記第2回路基板部は、前記第1伝送線路と前記第2伝送線路との間に位置するグランド導体を備える。この構成によれば、第1伝送線路と第2伝送線路とがグランド導体によって遮蔽されるので、第1伝送線路と第2伝送線路とのアイソレーションがより高まる。
【0022】
また、前記第1回路基板部の誘電率は前記第2回路基板部の誘電率よりも高い。
【0023】
また、前記第1グランド導体と前記第2グランド導体との間には、前記第2回路基板部の誘電率よりも誘電率が高い絶縁体が配される。
【0024】
本発明に係る第9の態様の電子機器は、上記第5又は第6の態様における回路基板、当該回路基板を収納する筐体、及び筐体内に収納される部品を備え、前記第1回路基板部及び前記第2回路基板部の一方の全体が他方に配置されていて、前記他方から前記一方が突出することで段差部が形成され、前記段差部により形成される空間に前記筐体又は前記部品(の一部又は全部)が配置される。この構成によれば、回路基板の段差部によって無駄なスペースが生じることがなく、集積度の低下が回避できる。
【0025】
以降、図を参照して幾つかの具体的な例を挙げて、本発明を実施するための複数の形態を示す。各図中には同一箇所に同一符号を付している。要点の説明又は理解の容易性を考慮して、実施形態を説明の便宜上分けて示すが、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせは可能である。第2の実施形態以降では第1の実施形態と共通の事柄についての記述を省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については実施形態毎には逐次言及しない。
【0026】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る回路基板101の平面図である。
図2(A)は回路基板101の側面図であり、
図2(B)は
図1におけるX−X部分の断面図である。但し、
図2(B)においては、内部の導体パターンの図示を省略している。
図1、
図2(A)、
図2(B)において,X,Y,Zは直交3軸を表している。このX,Y,Zの意味については、以降に示す他の図についても同様である。
【0027】
回路基板101は、第1回路基板部10及び第2回路基板部20を含む。第1回路基板部10は、絶縁性基材がポリイミド(PI)、変性ポリイミド等の熱硬化性樹脂シートや、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の熱可塑性樹脂シートで構成された多層基板である。第2回路基板部20は、絶縁性基材が液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の可撓性を有する低誘電率・低誘電正接の熱可塑性樹脂シートで構成された多層基板である。第2回路基板部20は第1回路基板部10に搭載されている。
【0028】
第1回路基板部10には、低周波信号又は低速信号用の複数の第1伝送線路11が形成されている。第2回路基板部20には、高周波信号又は高速信号用の複数の第2伝送線路21が形成されている。
【0029】
第2回路基板部20は、第1伝送線路11と第2伝送線路21とが互いに並走する位置関係で第1回路基板部10に配置されている。
【0030】
回路基板101は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、に分けることができる。第1領域R1には他の回路基板に接続されるコネクタ(レセプタクル)CN1が実装されている。第1領域R1の一部(第2領域R2につながる部分)は屈曲部BPである。第2領域R2には第2回路基板部20が搭載(実装)されている。第3領域R3には3つのアンテナの放射素子RE1,RE2,RE3が形成されている。また、第3領域R3には他の回路基板に接続されるコネクタ(レセプタクル)CN2が実装されている。屈曲部BPは第1回路基板部10の他の部分に比べて厚さが薄くてもよい。そのことによって、屈曲部BPの柔軟性を高めることができる。
【0031】
なお、上記他の回路基板との接続はコネクタ接続に限らず、はんだ接続であってもよい。上記他の回路基板は、例えばFR4のような安価なリジッド基板である。また、回路基板101の接続先は他の回路基板に限らず、筐体に直接接続される場合にも適用できる。
【0032】
第1回路基板部10には、コネクタCN1とコネクタCN2との間を接続する複数の第1伝送線路11が形成されている。また、第1回路基板部10には、コネクタCN1と第2回路基板部20の第2伝送線路21との間を接続する伝送線路12が形成されている。第1伝送線路11及び伝送線路12は第1回路基板部10の内部に形成されているが、
図1では、第1伝送線路11及び伝送線路12の信号導体のパターンを概念的に表している。
【0033】
第2回路基板部20に形成されている第2伝送線路21は、第2回路基板部20の内部に形成されているが、
図1では、第2伝送線路21の信号導体のパターンを概念的に表している。
【0034】
第1伝送線路11と第2伝送線路21とは、第1回路基板部10と第2回路基板部20との積層方向(Z方向)に沿って、互いに並走する。第1回路基板部10に第2回路基板部20が実装された状態で、第2伝送線路21は伝送線路12に接続される。
【0035】
第3領域R3に形成されている放射素子RE1,RE2,RE3それぞれは、例えばモノポールアンテナとして作用する。
【0036】
回路基板101は屈曲部BPが屈曲された状態で電子機器内に収納される。コネクタCN1は電子機器内の他の回路基板に設けられたコネクタ(プラグ)に接続される。同様に、コネクタCN2も電子機器内の他の回路基板に設けられたコネクタ(プラグ)に接続される。
【0037】
図2(A)、
図2(B)に表れているように、第2回路基板部20の全体が第1回路基板部10に配置されていて、第1回路基板部10から第2回路基板部20が突出することで、Y方向において、段差部STが形成されている。また、第2伝送線路21が形成された部分での第2回路基板部20の幅は第1回路基板部10の幅より細い。そのことで、第1回路基板部10から第2回路基板部20の突出部に、X方向において、段差部STが形成されている。
【0038】
図3(A)は第2回路基板部20の長手方向での断面図、
図3(B)及び
図3(C)は第2回路基板部20の幅方向での断面図である。いずれも、第2回路基板部20の単体状態における図である。特に、
図3(B)は3本の信号導体SL2A,SL2B,SL2Cがグランド導体G21,G22で挟まれている部分での断面図であり、
図3(C)は端子電極E21A,E21B,E21C形成部分での断面図である。
【0039】
第2回路基板部20は、複数の絶縁性基材S2が積層され、第2層間接続導体V21A,V21B,V21C,V22B等を含む多層基板である。3本の信号導体SL2A,SL2B,SL2Cと、これらを積層方向に挟むグランド導体G21,G22と、それらの間の絶縁性基材とで、3つのストリップライン構造の第2伝送線路21(
図1参照)が構成されている。信号導体SL2A,SL2B,SL2Cの一方端は、それぞれ層間接続導体V21A,V21B,V21Cを介して端子電極E21A,E21B,E21Cに導通している。信号導体SL2A,SL2B,SL2Cの他方端は、それぞれ層間接続導体を介して端子電極に導通している。
図3(A)に示す断面位置では、信号導体SL2Bの他方端が層間接続導体V22Bを介して端子電極E22Bに導通することが表れている。
【0040】
上記信号導体SL2A,SL2B,SL2C、グランド導体G21,G22、等は、例えばパターンニングされたCu箔である。また、第2層間接続導体V21A,V21B,V21C,V22B等は、例えばCu,Sn系の導電性ペーストの固化によるビアである。
【0041】
第2回路基板部20の実装面(下面)には端子電極E21B,E22B等を露出させる、絶縁性基材S2の開口H1,H4が形成されている。また、第2回路基板部20の実装面には、グランド導体G21を部分的に露出させる、絶縁性基材S2の開口H2,H3が形成されている。なお、絶縁性基材S2に、その略全面を覆うように保護膜を設ける場合には、その保護膜に開口H1,H2,H3,H4を設けてもよい。
【0042】
図4(A)は第1回路基板部10のY方向での部分断面図である。
図4(B)は第1回路基板部10のX方向での断面図であり、
図3(C)に示した第2回路基板部20の端子電極E21A,E21B,E21Cが接続される接続パッドP11A,P11B,P11Cの位置での断面図である。
【0043】
第1回路基板部10は、複数の絶縁性基材S1が積層され、第1層間接続導体V10を含む多層基板である。
図4(A)に表れているように、第1回路基板部10の上面には接続パッドP11B,P13,P14,P12B等が形成されている。また、
図4(B)に表れているように、第1回路基板部10の上面には接続パッドP11A,P11B,P11Cが形成されている。
【0044】
第1回路基板部10の下面にはグランド導体G11が形成されている。第1回路基板部10の内部にはグランド導体G12、信号導体SL11等が形成されている。これら信号導体SL11等と、グランド導体G11,G12と、それらの間の絶縁性基材とによってストリップライン構造の第1伝送線路11及び伝送線路12(
図1参照)が構成されている。グランド導体G11,G12及び接続パッドP14は第1層間接続導体V10を介して接続されている。
【0045】
上記信号導体SL11、グランド導体G11,G12、等は、例えばパターンニングされたCu箔である。また、層間接続導体V10は例えば貫通孔内にCuめっきが施されためっきビアである。
【0046】
図5(A)は回路基板101のY方向での部分断面図であり、
図5(B)は回路基板101のX方向での断面図である。
図5(A)、
図5(B)は、
図4(A)、
図4(B)に示した第1回路基板部10に第2回路基板部20を実装した状態での、同じ位置での断面図である。
【0047】
第2回路基板部20の端子電極E21B,E22B等は、はんだを介して第1回路基板部10の接続パッドP11B,P12B等に接続される。また、第2回路基板部20のグランド導体G21は、
図3(A)に示した開口H2,H3を経由し、はんだを介して接続パッドP13,P14にそれぞれ接続される。このように、信号の入出力用端子以外に、第2回路基板部20の電極を第1回路基板部10の接続パッドに接続する構造により、第2回路基板部20が狭幅または長尺であっても、第1回路基板部10に対する第2回路基板部20の浮き上がりや面方向への屈曲が抑制される。また、信号の入出力用端子以外の電極と第1回路基板部10の接続パッドとでグランド同士を接続する構造とすると、グランド電位がより安定化し、第2伝送線路と他の回路との不要結合や不要輻射をより抑制できる。
【0048】
上記一方の接続パッドP11A,P11B,P11Cは伝送線路12(
図1参照)に繋がっている。また、他方の接続パッド(接続パッドP12B等)はアンテナの放射素子RE1,RE2,RE3(
図1参照)に繋がっている。
【0049】
以上に示した構造により、第1伝送線路11と第2伝送線路21とが互いに並走する位置関係で、第1回路基板部10に第2回路基板部20が配置された回路基板101が構成される。
【0050】
図6は、第1の実施形態に係る別の回路基板101Mの部分断面図である。
図5に示した例とは、第1回路基板部10及び第2回路基板部20の一部の構成が異なる。
図6に示す例では、第1回路基板部10のグランド導体G12に開口部AP1が形成されていて、第2回路基板部20のグランド導体G21に開口部AP2が形成されている。開口部AP1と開口部AP2は比較的近接しているが、第1回路基板部10と第2回路基板部20とは元々別の基板部であるので、第1回路基板部10に第2回路基板部20を配置された状態で、第1回路基板部10と第2回路基板部20との間には間隙GAが形成されている。そのため、第1回路基板部10に形成されている信号導体SL11等を含む第1伝送線路と、第2回路基板部20に形成されている信号導体SL2B等を含む第2伝送線路とのアイソレーションが確保される。
【0051】
本実施形態によれば、以下に列挙するような作用効果を奏する。
【0052】
(a)低周波・低速信号用の第1伝送線路11と、高周波・高速信号用の第2伝送線路21が、それぞれに適した材料・構造のストリップラインで構成されているので、低周波・低速信号及び高周波・高速信号それぞれについて、所定の伝送特性が満足できる。
【0053】
(b)第2回路基板20に形成されている信号導体SL2A,SL2B,SL2Cが第1回路基板10に対向する位置で、信号導体SL2A,SL2B,SL2Cから見て、第1回路基板10側にグランド導体G21,G12を介在するので、第1伝送線路11に対する第2伝送線路21から放射される電磁界の不要結合が抑制される。また、第1回路基板10の第1伝送線路11と第2回路基板20の第2伝送線路21との間にグランド導体G12,G21が設けられていることで、第1伝送線路11と第2伝送線路21とのアイソレーションを高められる。
【0054】
(c)第1伝送線路11と第2伝送線路21とは、第1回路基板部10と第2回路基板部20との積層方向に沿って互いに並走するので、第1回路基板部10と第2回路基板部20とが重なる部分の面方向の幅を狭められる。
【0055】
(d)第1回路基板部10の全体が第2回路基板部20に配置されていて、第1回路基板部10から第2回路基板部20が突出することで段差部STが形成されているので、第1回路基板部10と第2回路基板部20との重なる部分の厚みが相対的に厚くなるが、第1回路基板部10が部分的に突出するだけであるので、回路基板101の占有体積を小さくでき、回路基板101全体の平均的な厚みの増加も抑えられる。これにより電子機器の小型化に貢献できる。また、第2伝送線路21が形成された部分での第2回路基板部20の幅は第1回路基板部10の幅より細く、第1回路基板部10から第2回路基板部20が突出することで段差部STが形成されているので、つまり、第1回路基板部10が部分的に突出するだけであるので、回路基板101の占有体積を小さくでき、回路基板101全体の平均的な厚みの増加も抑えられる。これにより電子機器の小型化に貢献できる。
【0056】
(e)第1回路基板部10は、ポリイミド、変性ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート等の低コストの樹脂シートを絶縁性基材S1とする多層基板であるので、比較的低い周波数帯の信号又は直流電流を通電するのに適した、低コストの回路基板部が構成できる。また、第1層間接続導体V10がめっきビア等の金属ビアであるので、導体損失・電力損失の低い回路基板部が構成できる。一方、第2回路基板部20は、液晶ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン、ポリテトラフルオロエチレン等の低誘電率・低誘電正接の熱可塑性樹脂シートを絶縁性基材S2とする多層基板であるので、高周波帯域においても、信号伝送損失の低い回路基板部が構成できる。また、第2層間接続導体V21A,V21B,V21C,V22B等がCu,Sn系の導電性ペーストの固化によるビアであるので、めっきビアに比べて設計の自由度が高い。また、多層基板の内部に層間接続導体を自由に形成でき、所望のインピーダンスを得るために複雑な形状の配線がしやすい。
【0057】
(f)第2回路基板部20よりも第1回路基板部10が高誘電率、高誘電正接を有することで、第2伝送線路21に対する第1伝送線路11から外部へ放射される電磁界が抑制されるので、第1伝送線路11と第2伝送線路21との不要結合が抑制される。
【0058】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、第1回路基板部10の形状、及び第1回路基板部10と第2回路基板部20との位置関係が第1の実施形態で示したものとは異なる回路基板について示す。
【0059】
図7は第2の実施形態に係る回路基板102の平面図である。回路基板102は、第1回路基板部10及び第2回路基板部20を含む。第2回路基板部20は第1回路基板部10に搭載されている。
【0060】
第1回路基板部10には、低周波信号又は低速信号用の複数の第1伝送線路11が形成されている。第2回路基板部20には、高周波信号又は高速信号用の複数の第2伝送線路21が形成されている。
【0061】
第2回路基板部20は、第1伝送線路11と第2伝送線路21とが互いに並走する位置関係で第1回路基板部10に配置されている。
【0062】
回路基板102は、第1領域R1、第2領域R2、第3領域R3、に分けることができる。この第1領域R1に第2回路基板部20が実装されている。また、第1領域R1には他の回路基板のコネクタ(レセプタクル)CN1が実装されている。さらに、第1領域R1には、3つのアンテナの放射素子RE1,RE2,RE3の一部が形成されている。第2領域R2は第1領域R1と第3領域R3とのつなぐ領域であり、第1伝送線路11及び3つのアンテナの放射素子RE1,RE2,RE3の一部が形成されている。この第2領域R2は屈曲部BPを有する。第3領域R3には3つのアンテナの放射素子RE1,RE2,RE3が形成されている。また、第3領域R3にはコネクタ(レセプタクル)CN2、半導体集積回路等のその他の電子部品PT1,PT2が実装されている。
【0063】
第1回路基板部10には、コネクタCN1と、コネクタCN2及び電子部品PT1,PT2との間を接続する複数の第1伝送線路11が形成されている。第1伝送線路11は第1回路基板部10の内部に形成されているが、
図1では、第1伝送線路11の信号導体のパターンを概念的に表している。
【0064】
第2回路基板部20の構成は第1の実施形態で示したものと同様である。回路基板102の屈曲部BPを180度屈曲させることで、第1領域R1と第3領域R3とが面で対向して、全体に省スペース化され、電子機器内に納めされる。
【0065】
本実施形態によれば、第1伝送線路11と第2伝送線路21とは、平面視で第1回路基板部10の面方向に沿って互いに並走するので、第1回路基板部10と第2回路基板部20とのアイソレーションがより高められる。また、第1伝送線路11と第2伝送線と21とが最も近接して並走する部分において、両者が異なる基材で離間しているので、第1回路基板部10と第2回路基板部20とのアイソレーションがより高められる。
【0066】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では電子機器の主要部の構成例について示す。
【0067】
図8は第3の実施形態に係る電子機器201の断面図である。ただし、この断面位置では、回路基板102部分でのみ断面が表れている。
【0068】
電子機器201は、回路基板102、この回路基板102を収納する筐体30,31、及び筐体内に収納される部品40を備える。
【0069】
回路基板102は第2の実施形態で示した回路基板102である。
図8は、
図7における第2回路基板部20が実装された位置で、かつこの第2回路基板部20の幅方向をよぎる面での断面図である。回路基板102は、第1回路基板部10と第2回路基板部20とで形成され、X方向において段差部STを有する。この段差部STにより形成される空間に筐体31及び部品40が配置されている。
【0070】
図7に示した回路基板102は、その第2領域R2が屈曲されて、平面視で第3領域R3が第1領域R1に重なるが、
図8では第3領域R3を図示していない。この第3領域R3は例えば筐体31や部品40の上部に配置される。
【0071】
本実施形態によれば、回路基板102段差部によって無駄なスペースが生じることがなく、集積度の高い電子機器201が得られる。
【0072】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、第1の実施形態で示したものとは構造が異なる第2回路基板部の例について示す。
【0073】
図9は第4の実施形態に係る第2回路基板部の断面図である。
図3(B)に示した第2回路基板部20では、3本の信号導体SL2A,SL2B,SL2Cが同一面に配置され、それらがグランド導体G21,G22で挟まれているものであった。これに対し、第4の実施形態では、グランド導体G21,G22以外にグランド導体G23を有する。そして、グランド導体G21とグランド導体G23との間に信号導体SL2A,SL2Cが形成されている。また、グランド導体G22とグランド導体G23との間に信号導体SL2Bが形成されている。
【0074】
上記信号導体SL2A,SL2Cと、これらを積層方向に挟むグランド導体G21,G23と、それらの間の絶縁性基材とで、2つのストリップライン構造の第2伝送線路が構成されている。同様に、信号導体SL2Bと、これを積層方向に挟むグランド導体G22,G23と、それらの間の絶縁性基材とで、1つのストリップライン構造の第2伝送線路が構成されている。
【0075】
このようにして、複数の第2伝送線路を絶縁性基材の積層方向に並ぶように配置してもよい。また、複数の第2伝送線路をグランド導体で相互に遮蔽してもよい。
【0076】
《第5の実施形態》
第5の実施形態では、これまでに示した例とは、第1回路基板部10及び第2回路基板部20の構造が異なる回路基板について示す。
【0077】
図10(A)は、第5の実施形態に係る回路基板の構成要素である第1回路基板部10及び第2回路基板部20の断面図である。
図10(B)は第5の実施形態に係る回路基板105の断面図である。
【0078】
図5(A)に示した例とは異なり、第1回路基板部10の上面(第2回路基板部20に対向する面)にカバーレイフィルムCF1が形成されている。また、第2回路基板部20の下面(第1回路基板部10に対向する面)にカバーレイフィルムCF2が形成されている。カバーレイフィルムCF1は第1回路基板部10の表面を保護する保護膜であり、カバーレイフィルムCF2は第2回路基板部20の表面を保護する保護膜である。
【0079】
このように、第1回路基板部10や第2回路基板部20の対向面には保護膜を設けられることが好ましい。このことにより、第1回路基板部10や第2回路基板部20の加工時の損傷を防げる。また、この保護膜が第1回路基板部10の絶縁性基材の材料よりも高誘電率、高誘電正接であれば、第1伝送線路11と第2伝送線路21との間に漏れる電磁界は保護膜で減衰されるので、第1伝送線路11と第2伝送線路21との不要結合がより抑制される。
【0080】
なお、カバーレイフィルムは第1回路基板部10又は第2回路基板部20の一方にのみ形成されていても上記効果を奏する。
【0081】
《第6の実施形態》
第6の実施形態では、これまでに示した例とは、特に第2伝送線路21の構成が異なる回路基板について示す。
【0082】
図11(A)は第6の実施形態に係る回路基板106のY方向での断面図であり、
図11(B)は回路基板106のX方向での断面図である。
【0083】
第2回路基板部20の下部のグランド導体G21には開口部AP2が形成されている。この開口部AP2の形成範囲では、第2回路基板部20に形成されている信号導体SL2Bは、第2回路基板部20のグランド導体G22と第1回路基板部10のグランド導体G12とで、積層方向に挟まれる。このような構造により、積層方向でグランド導体G22からグランド導体G12までの範囲に、信号導体SL2B等を含むストリップラインが構成される。
【0084】
図11(A)に示した例では、接続パッドP13に導通するグランド導体G21を設け、その他の領域を開口AP2として設けたが、第2回路基板部20の下面の全面に亘ってグランド導体を無くしてもよい。
【0085】
本実施形態によれば、第2回路基板部20を薄くできる。また、第2回路基板部20の柔軟性が高まる。
【0086】
《第7の実施形態》
第7の実施形態では、主に第2回路基板部20にフィルタ部等の機能回路部を設けた回路基板の例を示す。
【0087】
図12(A)は第7の実施形態に係る回路基板107の断面図である。回路基板107は、第1回路基板部10と、この第1回路基板部10上に配置された第2回路基板部20とで構成される。第2回路基板部20にはフィルタ部FPが形成されている。
図12(B)は、このフィルタ部FPの信号導体の形状とグランド導体G21の形状などを示す平面図である。
図12(B)においては、グランド導体G22や絶縁性基材の図示は省略している。信号導体SL2A,SL2B,SL2Cのうち、信号導体SL2Bは、2つのキャパシタ形成部CPと、その間のインダクタ形成部LPとを有する。インダクタ形成部LPの下部にはグランド導体G21の開口AP2が形成されている。
【0088】
図12(A)に示すように、第1回路基板部10のグランド導体G12には、上記開口AP2に対向する位置に開口AP1が形成されている。したがって、インダクタ形成部LPは、インダクタ形成部LPの信号導体とグランド導体までの間隔が大きくなり、シリーズ方向のインダクタンス成分が大きくなって、インダクタ部として作用する。キャパシタ形成部CPは、グランド導体G21,G22との間に生じる容量成分が大きくなって、キャパシタとして作用する。このようにして、C−L−C型のフィルタが構成される。なお、この例に限らず、例えばL−C−L型のフィルタやその他の回路を構成することもできる。
【0089】
図12(A)に表れているように、フィルタ部FPの近傍に第1層間接続導体V10が形成されている。この第1層間接続導体V10近傍は回路上のグランド電位に近い。フィルタ部FPのグランドはこの安定したグランドにシャント接続されることになるが、フィルタ部FPのグランドから上記安定したグランドまでの経路が短いので、その間に生じる寄生容量が抑制され、この寄生容量の影響を受けることなく、所定のフィルタ特性が得られる。
【0090】
《第8の実施形態》
第8の実施形態では、第1回路基板部10と第2回路基板部20とを用いて、フィルタ等の機能回路部を形成した回路基板の例を示す。
【0091】
図13は第8の実施形態に係る回路基板108の平面図である。回路基板108は、第1回路基板部10及び第2回路基板部20を含む。第2回路基板部20は第1回路基板部10に搭載されている。
【0092】
第1回路基板部10には、低周波信号又は低速信号用の複数の第1伝送線路11が形成されている。第2回路基板部20には、高周波信号又は高速信号用の複数の第2伝送線路21が形成されている。
【0093】
第2回路基板部20には、導体パターンによってフィルタ部FPが形成されている。第1回路基板部10にはフィルタ部FPに関連する外付けチップ部品EPがフィルタ部FPの近傍位置に実装されている。その他の構成は
図7に示した回路基板102と同様である。
【0094】
上記チップ部品EPは、例えばフィルタ部FPに電気的に接続されるチップインダクタやチップキャパシタである。フィルタ部FPは例えば
図12(B)に示したように、導体パターンで構成されている。外付けチップ部品は、例えばフィルタの周波数特性の微調整用や、スプリアス特性の改善のために用いることができる。また、このような特性調整用に部品を後に必要に応じて実装可能なように、実装用の電極を形成しておいてもよい。
【0095】
《第9の実施形態》
第9の実施形態では、他の回路基板と共に用いる回路基板について例示する。
【0096】
図14(A)、
図14(B)は、第9の実施形態に係る回路基板109の取り付け構造を示す図である。
図14(A)に示す例では、第1回路基板部10に第2回路基板部20が搭載されて回路基板109が構成されていて、この回路基板109が他の回路基板50にコネクタCN1,CN2を介して接続されている。また、
図14(B)に示す例では、回路基板109に、他の回路基板51,52がコネクタCN1,CN2を介してそれぞれ接続されている。
【0097】
第1回路基板部10は安価なフレキシブル基板であり、第2回路基板部20は高周波特性に優れた基板であり、他の回路基板50,51,52はFR4等の安価なリジッド基板である。このように、本発明の回路基板は他の回路基板と共に用いることもできる。
【0098】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【0099】
例えば、以上に示した各実施形態では、第1回路基板部10に単一の第2回路基板部20を実装した構造の回路基板を例示したが、第1回路基板部10に複数の第2回路基板部20を実装してもよい。
【0100】
また、以上に示した各実施形態では、第1回路基板部10と第2回路基板部20とを備える回路基板の例について示したが、3つ以上の複数の回路基板部を備える回路基板についても同様に構成できる。例えば、第1回路基板部に、第2回路基板部以外に例えば第3回路基板部を実装してもよい。また、第1回路基板部10に第2回路基板部20を搭載し、この第2回路基板部20の上にさらに第3回路基板部を搭載してもよい。
【0101】
また、以上に示した各実施形態では、第1回路基板部10に第2回路基板部20の全体を配置した例を示したが、第1回路基板部10に第2回路基板部20の一部が配置(接続)された構造であってもよい。
【0102】
また、以上に示した各実施形態では、第1回路基板部10に第2回路基板部20の全体を配置した例を示したが、逆に、第2回路基板部20に第1回路基板部10の全体が配置された構造であってもよい。
【0103】
また、以上に示した各実施形態では、第2伝送線路21が形成された部分での第2回路基板部20の幅が、その部分での第1回路基板部10の幅より細い例を示したが、第2伝送線路21が形成された部分での第2回路基板部20の幅と、その部分での第1回路基板部10の幅とが等しくてもよい。
【0104】
また、以上に示した各実施形態では、全体の厚みが一定の第1回路基板部10を備える例を示したが、絶縁性基材の積層数の異なることで段差部が形成された第1回路基板部10を備え、この第1回路基板部10の厚みの薄い箇所に第2回路基板部20を実装することで、第2回路基板部20の突出高さを抑制した回路基板を構成してもよい。