特許第6973674号(P6973674)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973674
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】絶縁回路基板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/14 20060101AFI20211118BHJP
   H01L 23/13 20060101ALI20211118BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20211118BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20211118BHJP
   H01L 23/36 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
   H01L23/14 M
   H01L23/12 C
   H05K1/03 610D
   H05K1/03 630H
   H05K3/38 C
   !H01L23/36 C
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2021-40435(P2021-40435)
(22)【出願日】2021年3月12日
(65)【公開番号】特開2021-153180(P2021-153180A)
(43)【公開日】2021年9月30日
【審査請求日】2021年8月6日
(31)【優先権主張番号】特願2020-47956(P2020-47956)
(32)【優先日】2020年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 晶
(72)【発明者】
【氏名】寺▲崎▼ 伸幸
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/24813(WO,A1)
【文献】 特開2012−59836(JP,A)
【文献】 国際公開第2019/146464(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/14
H01L 23/13
H05K 1/03
H05K 3/38
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の表面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板が積層されて接合された絶縁回路基板であって、
前記アルミニウム板には、前記セラミックス基板との接合界面においてCuが固溶しており、
前記接合界面と、前記接合界面から積層方向に100μmの位置とで、AlとCuの濃度(mass%)の合計が100となるようにして、それぞれ5点のCu濃度とその平均値を求め、接合界面におけるCu濃度A(mass%),接合界面から100μmの位置におけるCu濃度B(mass%)を算出し、
前記接合界面におけるCu濃度Amass%と前記接合界面から前記アルミニウム板側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aが0.30以上0.85以下であることを特徴とする絶縁回路基板。
【請求項2】
前記アルミニウム板において、前記接合界面から厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bが0.04mass%以上0.96mass%以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項1に記載の絶縁回路基板。
【請求項3】
−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に、前記アルミニウム板の前記接合界面から厚さ方向に100μmまでの領域に、前記アルミニウム板の結晶粒界および結晶粒内にAlとCuを含むAl−Cu化合物粒子が析出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の絶縁回路基板。
【請求項4】
接合界面から前記アルミニウム板側へ厚さ方向に50μmの範囲内において、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出した前記Al−Cu化合物粒子の個数密度が0.50個/μm以上8.50個/μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の絶縁回路基板。
【請求項5】
−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出した前記Al−Cu化合物粒子の円相当径の平均が30nm以上130nm以下の範囲内であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の絶縁回路基板。
【請求項6】
前記アルミニウム板と前記セラミックス基板の接合界面において、前記接合界面の幅方向の端部から中心に向かって1mmの範囲内でのAl−Cu共晶相の面積率が30%以下であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の絶縁回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、セラミックス基板と、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板とが接合されてなる絶縁回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パワーモジュール、LEDモジュール及び熱電モジュールにおいては、絶縁層の一方の面に導電材料からなる回路層を形成した絶縁回路基板に、パワー半導体素子、LED素子及び熱電素子が接合された構造とされている。
また、上述の絶縁回路基板においては、セラミックス基板の一方の面に導電性の優れた金属板を接合して回路層とし、また、他方の面に放熱性に優れた金属板を接合して金属層を形成した構造のものも提供されている。
さらに、回路層に搭載した素子等から発生した熱を効率的に放散させるために、絶縁回路基板の金属層側にヒートシンクを接合したヒートシンク付き絶縁回路基板も提供されている。
【0003】
例えば、特許文献1に示す絶縁回路基板においては、セラミックス基板の一方の面にアルミニウム板からなる回路層が形成されるとともに他方の面にアルミニウム板からなる金属層が形成された絶縁回路基板と、この回路層上にはんだ材を介して接合された半導体素子と、を備えた構造とされている。
ここで、セラミックス基板と回路層及び金属層となるアルミニウム板を接合する際には、通常、Al−Si系ろう材が用いられている。
【0004】
ここで、上述の絶縁回路基板には、冷熱サイクルを負荷した場合であっても接合信頼性を十分に確保する必要があった。
そこで、特許文献2には、セラミックス基板およびアルミニウム板の接合面の少なくとも一方にCuを固着してCu層を形成し、このCu層を介して積層したセラミックス基板とアルミニウム板とを積層方向に加圧して加熱し、セラミックス基板とアルミニウム板とをさらに強固に接合する技術が提案されている。
この特許文献2においては、Cuがアルニウム板側に拡散しており、接合界面から50μm以内の範囲内におけるCu濃度が0.05〜5wt%の範囲内とされ、アルミニウム板の幅方向端部にはAlとCuの共晶相が形成されており、接合信頼性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3171234号公報
【特許文献2】特許第5359953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、最近では、半導体素子がSiC等で構成され、従来よりも高温で動作する高温半導体デバイスが提供されている。
このため、上述の絶縁回路基板においては、従来よりも厳しい環境下で使用されることになり、過酷な冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス基板の割れや回路層の変形等を抑制することが求められている。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス基板の割れやアルミニウム板の変形等を抑制でき、セラミックス基板と回路層との接合信頼性に優れた絶縁回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の絶縁回路基板は、セラミックス基板の表面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板が積層されて接合された絶縁回路基板であって、前記アルミニウム板には、前記セラミックス基板との接合界面においてCuが固溶しており、前記接合界面と、前記接合界面から積層方向に100μmの位置とで、AlとCuの濃度(mass%)の合計が100となるようにして、それぞれ5点のCu濃度とその平均値を求め、接合界面におけるCu濃度A(mass%),接合界面から100μmの位置におけるCu濃度B(mass%)を算出し、前記接合界面におけるCu濃度Amass%と前記接合界面から前記アルミニウム板側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aが0.30以上0.85以下であることを特徴としている。
【0009】
この構成の絶縁回路基板によれば、前記アルミニウム板の前記セラミックス基板との接合界面側においてCuが固溶しており、前記接合界面におけるCu濃度Amass%と前記接合界面から前記アルミニウム板側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aが0.30以上0.85以下とされているので、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板の内部にまで十分にCuが拡散しており、アルミニウム板の接合界面近傍にはCuが過飽和に固溶した領域が形成される。このため、冷熱サイクル負荷後におけるアルミニウム板の変形やアルミニウム板内でのクラックの発生を抑制できる。
また、CuがAlの母相中に固溶しているので、硬いAl−Cuの共晶相が形成されておらず、セラミックス基板の割れの発生を抑制することができる。
【0010】
ここで、本発明の絶縁回路基板においては、前記アルミニウム板において、前記接合界面から厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bが0.04mass%以上0.96mass%以下の範囲内とされていることが好ましい。
この場合、アルミニウム板の内部に向けて十分にCuが拡散しており、アルミニウム板の接合界面近傍にはCuが過飽和に固溶した領域が十分に形成される。このため、冷熱サイクル負荷後におけるアルミニウム板の変形やアルミニウム板内でのクラックの発生をさらに抑制することが可能となる。
【0011】
さらに、本発明の絶縁回路基板においては、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に、前記アルミニウム板の前記接合界面から厚さ方向に100μmまでの領域に、前記アルミニウム板の結晶粒界および結晶粒内にAlとCuを含むAl−Cu化合物粒子が析出することが好ましい。
この場合、アルミニウム板の接合界面近傍がAl−Cu化合物粒子によって強化されており、冷熱サイクル負荷後におけるアルミニウム板の変形やアルミニウム板内でのクラックの発生を確実に抑制できる。
【0012】
また、本発明の絶縁回路基板においては、接合界面から前記アルミニウム板側へ厚さ方向に50μmの範囲内において、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出した前記Al−Cu化合物粒子の個数密度が0.50個/μm以上8.50個/μm以下の範囲内であることが好ましい。
この場合、接合界面から前記アルミニウム板側へ厚さ方向に50μmの範囲内において、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出した前記Al−Cu化合物粒子の個数密度が0.50個/μm以上とされているので、接合界面近傍のアルミニウム板の変形抵抗が上昇し、アルミニウム板の変形をさらに抑制することができる。また、前記Al−Cu化合物粒子の個数密度が8.50個/μm以下とされているので、接合界面近傍のアルミニウム板が必要以上に硬くならず、セラミックス基板の割れをさらに抑制することができる。
【0013】
さらに、本発明の絶縁回路基板においては、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出した前記Al−Cu化合物粒子の円相当径の平均が30nm以上130nm以下の範囲内であることが好ましい。
この場合、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出した前記Al−Cu化合物粒子の円相当径の平均が上述の範囲内とされているので、接合界面近傍のアルミニウム板を十分に析出強化することができ、前記アルミニウム板の変形をさらに抑制することができる。
【0014】
また、本発明の絶縁回路基板においては、前記アルミニウム板と前記セラミックス基板の接合界面において、前記接合界面の幅方向の端部から中心に向かって1mmの範囲内でのAl−Cu共晶相の面積率が30%以下であることが好ましい。
この場合、前記アルミニウム板と前記セラミックス基板の接合界面において、Al−Cu共晶相の面積率が30%以下に制限されているので、硬いAl−Cu共晶相が少なく、セラミックス基板の割れの発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス基板の割れや回路層(金属層)の変形等を抑制でき、セラミックス基板と回路層(金属層)との接合信頼性に優れた絶縁回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態である絶縁回路基板を用いたパワーモジュールの概略説明図である。
図2】本発明の実施形態である絶縁回路基板における回路層(金属層)とセラミックス基板の接合界面の拡大説明図である。
図3】本発明の実施形態である絶縁回路基板の回路層(アルミニウム板)および金属層(アルミニウム板)とセラミックス基板との接合界面の観察写真である。(a)が冷熱サイクル負荷前であり、(b)が冷熱サイクル負荷後である。
図4図3(b)の拡大写真である。
図5図1に示す絶縁回路基板およびパワーモジュールの製造方法を示すフロー図である。
図6】本発明の実施形態である絶縁回路基板の製造方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態について、添付した図面を参照して説明する。
【0018】
図1に、本発明の実施形態である絶縁回路基板10、および、この絶縁回路基板10を用いたパワーモジュール1を示す。
図1に示すパワーモジュール1は、絶縁回路基板10と、絶縁回路基板10の一方側(図1において上側)にはんだ層2を介して接合された半導体素子3と、絶縁回路基板10の他方側(図1において下側)に配設されたヒートシンク31と、を備えている。
【0019】
はんだ層2は、例えばSn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−In系、若しくはSn−Ag−Cu系のはんだ材(いわゆる鉛フリーはんだ材)とされている。
半導体素子3は、半導体を備えた電子部品であり、必要とされる機能に応じて種々の半導体素子が選択される。
【0020】
絶縁回路基板10は、図1に示すように、セラミックス基板11と、このセラミックス基板11の一方の面(図1において上面)に配設された回路層12と、セラミックス基板11の他方の面(図1において下面)に形成された金属層13と、を備えている。
【0021】
セラミックス基板11は、回路層12と金属層13との間の電気的接続を防止するものであって、絶縁性の高いSi(窒化ケイ素)で構成されている。また、セラミックス基板11の厚さは、0.2mm以上1.5mm以下の範囲内に設定されており、本実施形態では、0.32mmに設定されている。
【0022】
回路層12は、セラミックス基板11の一方の面に、アルミニウム又はアルミニウム合金からなるアルミニウム板22が接合されることにより形成されている。
本実施形態においては、回路層12は、純度が99.99mass%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板22がセラミックス基板11に接合されることにより形成されている。
【0023】
金属層13は、セラミックス基板11の他方の面にアルミニウム板23が接合されることにより形成されている。
本実施形態においては、金属層13は、回路層12と同様に、純度が99.99mass%以上のアルミニウム(いわゆる4Nアルミニウム)の圧延板からなるアルミニウム板23がセラミックス基板11に接合されることで形成されている。
【0024】
ヒートシンク31は、絶縁回路基板10側の熱を放散するためのものである。ヒートシンク31は、熱伝導性が良好なアルミニウム又はアルミニウム合金で構成されており、本実施形態においては、A6063合金で構成されている。このヒートシンク31の厚さは、3mm以上10mm以下の範囲内に設定されている。
なお、ヒートシンク31と絶縁回路基板10の金属層13とは、ろう材を用いて接合されている。
【0025】
そして、本実施形態においては、図2に示すように、回路層12および金属層13においては、セラミックス基板11との接合界面においてCuが固溶しており、接合界面におけるCu濃度Amass%と接合界面から回路層12および金属層13側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aが0.30以上0.85以下とされている。
すなわち、接合界面から回路層12および金属層13側へ厚さ方向に100μmの位置においても、Cuが十分に存在していることになる。
比B/Aが、0.30未満であると、接合界面が固くなり接合信頼性が悪化したり、回路層12(金属層13)にCuが十分拡散せず、回路層12(金属層13)に変形および割れが生じたりするおそれがある。
比B/Aが、0.85を超えると、Cuが拡散しすぎて、回路層12(金属層13)全体が硬くなり回路層が温度サイクルで受ける応力を緩和することができず割れが生じるおそれがある。
なお、接合界面におけるCu濃度Amass%と接合界面から回路層12および金属層13側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aの上限は、0.70以下であることが好ましく、0.50以下であることがより好ましい。
【0026】
ここで、本実施形態においては、回路層12および金属層13において、接合界面から厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bが0.04mass%以上0.96mass%以下の範囲内とされていることが好ましい。
なお、接合界面から厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bの下限は0.10mass%以上であることがより好ましく、0.14mass%以上であることがさらに好ましい。一方、接合界面から厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bの上限は0.50mass%以下であることがより好ましく、0.45mass%以下であることがさらに好ましい。
【0027】
また、本実施形態においては、回路層12および金属層13とセラミックス基板11の接合界面の幅方向の端部から中心に向かって1mmの範囲内でのAl−Cu共晶相の面積率が30%以下に制限されていることが好ましい。
なお、回路層12および金属層13とセラミックス基板11の接合界面におけるAl−Cu共晶相の面積率は20%以下であることがさらに好ましく、17%以下であることがより好ましい。Al−Cu共晶相の面積率の下限値は、0%であってもよく、6.2%以上であってもよい。
【0028】
さらに、本実施形態においては、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に、回路層12および金属層13の接合界面から厚さ方向に100μmまでの領域に、回路層12および金属層13の結晶粒界および結晶粒内にAlとCuを含むAl−Cu化合物粒子が析出することが好ましい。
【0029】
ここで、図3および図4に、本実施形態である絶縁回路基板10の回路層12および金属層13とセラミックス基板11との接合界面の観察結果を示す。
図3(a)に示すように、冷熱サイクルを負荷する前の状態では、回路層12および金属層13には、Al−Cu化合物粒子が存在しておらず、Alの母相中にCuが固溶した組織とされている。
−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後では、図3(b)および図4に示すように、結晶粒が微細化されており、結晶粒界および結晶粒内にAlとCuを含むAl−Cu化合物粒子15が確認される。
【0030】
本実施形態においては、接合界面から回路層12および金属層13側へ厚さ方向に50μmの範囲内において、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出したAl−Cu化合物粒子15の個数密度が0.50個/μm以上8.50個/μm以下の範囲内であることが好ましい。
なお、Al−Cu化合物粒子の個数密度は0.60個/μm以上であることがさらに好ましく、0.75個/μm以上であることがより好ましい。また、Al−Cu化合物粒子の個数密度は8.30個/μm以下であることがさらに好ましく、8.10個/μm以下であることがより好ましい。本実施形態においては、粒径が0.01μm以上2μm以下の範囲内のAl−Cu化合物粒子を対象として、個数密度を算出している。なお、個数密度の算出においては、粒子形状が円形状でない場合は、最も短い部分(短径)で判断する。
【0031】
さらに、本実施形態においては、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出したAl−Cu化合物粒子の円相当径の平均が30nm以上130nm以下の範囲内であることが好ましい。
なお、Al−Cu化合物粒子15の円相当径の平均は37μm以上であることがさらに好ましく、45μm以上であることがより好ましい。Al−Cu化合物粒子15の円相当径の平均は125μm以下であることがさらに好ましく、120μm以下であることがより好ましい。
【0032】
次に、本実施形態である絶縁回路基板10およびパワーモジュール1を製造する方法について、図5および図6を用いて説明する。
【0033】
(Cu層形成工程S01)
まず、図5および図6に示すように、回路層12となるアルミニウム板22および金属層13となるアルミニウム板23とセラミックス基板11の接合面の少なくとも一方にCu層26を形成する。本実施形態では、図6に示すように、セラミックス基板11の両面にそれぞれCu層26を形成している。なお、Cu層26の形成方法に特に制限はなく、スパッタ、蒸着、CVD、めっき、ペースト、箔材等の既存の手段を適宜用いることができる。
ここで、Cu層26におけるCuの固着量は、0.08mg/cm以上2.0mg/cm以下の範囲内とすることが好ましい。
【0034】
(積層工程S02)
次に、セラミックス基板11の一方の面にCu層26を介して回路層12となるアルミニウム板22を積層し、セラミックス基板11の他方の面にCu層26を介して金属層13となるアルミニウム板23を積層する。
【0035】
(接合工程S03)
次いで、回路層12となるアルミニウム板22、セラミックス基板11、金属層13となるアルミニウム板23の積層体を、加圧装置を用いて積層方向に加圧した状態で真空加熱炉に装入し、アルミニウム板22とセラミックス基板11とを接合して回路層12を形成し、アルミニウム板23とセラミックス基板11とを接合して金属層13を形成する。
【0036】
ここで、接合工程S03においては、積層方向への加圧荷重を0.098MPa以上2.94MPa以下の範囲内とする。
また、接合温度は600℃以上650℃以下の範囲内とし、接合温度での保持時間は180分以下とする。
そして、AlとCuの共晶温度(548℃)から接合温度までの昇温速度を、5℃/分以上20℃/分以下の範囲内とする。
【0037】
以上のような工程によって、本実施形態である絶縁回路基板10が製造される。
【0038】
(ヒートシンク接合工程S04)
次に、この絶縁回路基板10の金属層13の他方側に、ろう材を介してヒートシンク31を積層し、絶縁回路基板10とヒートシンク31とを積層方向に加圧した状態で真空加熱炉に装入し、金属層13とヒートシンク31を接合する。
【0039】
(半導体素子接合工程S05)
次いで、回路層12の一方の面に、はんだ材を介して半導体素子3を積層し、加熱炉内においてはんだ接合する。
上記のようにして、図1に示すパワーモジュール1が製造される。
【0040】
以上のような構成とされた本実施形態である絶縁回路基板10によれば、回路層12および金属層13のセラミックス基板11との接合界面側においてCuが固溶しており、接合界面におけるCu濃度Amass%と接合界面から回路層12および金属層13側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aが0.30以上0.85以下とされているので、アルミニウムからなる回路層12および金属層13の内部にまで十分にCuが拡散しており、回路層12および金属層13の接合界面近傍にはCuが過飽和に固溶した領域が形成されることになる。このため、回路層12および金属層13が強化され、冷熱サイクル負荷後における回路層12および金属層13の変形や回路層12および金属層13内でのクラックの発生を抑制できる。
【0041】
また、CuがAlの母相中に固溶しているので、硬いAl−Cuの共晶相が形成されておらず、セラミックス基板11の割れの発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態において、回路層12および金属層13とセラミックス基板11の接合界面の幅方向の端部から中心に向かって1mmの範囲内でのAl−Cu共晶相の面積率が30%以下である場合には、硬いAl−Cu共晶相が少なく、セラミックス基板11の割れの発生を抑制することができる。
【0042】
本実施形態において、回路層12および金属層13のセラミックス基板11との接合界面から厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bが0.04mass%以上0.96mass%以下の範囲内とされている場合には、回路層12および金属層13の内部に向けて十分にCuが拡散しており、冷熱サイクル負荷後における回路層12および金属層13の変形や回路層12および金属層13内でのクラックの発生をさらに抑制できる。
【0043】
本実施形態において、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に、回路層12および金属層13のセラミックス基板11との接合界面から厚さ方向に100μmまでの領域において、回路層12および金属層13の結晶粒界および結晶粒内にAlとCuを含むAl−Cu化合物粒子15が析出している場合には、回路層12および金属層13のセラミックス基板11との接合界面近傍がAl−Cu化合物粒子15によって強化されており、冷熱サイクル負荷後における回路層12および金属層13の変形や回路層12および金属層13内でのクラックの発生を確実に抑制できる。
【0044】
本実施形態において、接合界面から回路層12および金属層13側へ厚さ方向に50μmの範囲内において、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出したAl−Cu化合物粒子の個数密度が、0.50個/μm以上8.50個/μm以下の範囲内である場合には、回路層12および金属層13の接合界面近傍の変形抵抗が上昇し、回路層12および金属層13の変形をさらに抑制することができるとともに、回路層12および金属層13の接合界面近傍が必要以上に硬くならず、セラミックス基板11の割れをさらに抑制することができる。
【0045】
本実施形態において、Al−Cu化合物粒子15の円相当径の平均が30nm以上130nm以下の範囲内である場合には、回路層12および金属層13の接合界面近傍部分を十分に析出強化することができ、回路層12および金属層13の変形をさらに抑制することができる。
【0046】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、セラミックス基板を窒化ケイ素で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、アルミナで構成されていてもよいし、窒化アルミニウムで構成されていてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、絶縁回路基板の回路層にパワー半導体素子を搭載してパワーモジュールを構成するものとして説明したが、これに限定されることはない。例えば、絶縁回路基板にLED素子を搭載してLEDモジュールを構成してもよいし、絶縁回路基板の回路層に熱電素子を搭載して熱電モジュールを構成してもよい。
【0048】
また、本実施形態では、絶縁回路基板(金属層)とヒートシンクとをろう付けによって接合するものとして説明したが、これに限定されることはなく、固相拡散接合、TLP等の他の接合方法を適用してもよい。
さらに、本実施形態では、ヒートシンクをアルミニウムからなるものとして説明したが、これに限定されることはなく、銅等で構成されていてもよいし、内部に冷却媒体が流通される流路を備えたものであってもよい。また、ヒートシンクと絶縁回路基板の間に、例えば、4N−アルミニウムからなる緩衝層を設けてもよい。
【実施例】
【0049】
以下に、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果について説明する。
【0050】
(実施例1)
表1に示すセラミックス基板(40mm×40mm)を準備し、このセラミックス基板の一方の面および他方の面に、スパッタ法によりCu層を形成した。このときのCuの固着量を表1に示す。
そして、セラミックス基板の一方の面にCu層を介して4Nアルミニウムからなるアルミニウム板(37mm×37mm×0.4mmt)を積層し、セラミックス基板の他方の面にCu層を介して4Nアルミニウムからなるアルミニウム板(37mm×37mm×0.4mmt)を積層した。
【0051】
そして、表1に示す条件で、アルミニウム板とセラミックス基板とを接合し、絶縁回路基板を製造した。なお、表1に記載の昇温速度は、AlとCuの共晶温度(548℃)から接合温度までの昇温速度を示す。
得られた絶縁回路基板の金属層に4N−アルミニウム(厚さ0.9mm)の緩衝層を介してヒートシンク(50mm×60mm, 厚さ5mmのアルミニウム板(A6063))を接合し、ヒートシンク付絶縁回路基板を得た。なお、金属層と緩衝層及び緩衝層とヒートシンクの接合はAl−Si箔を用いたろう付けにより行った。
【0052】
得られたヒートシンク付絶縁回路基板について、アルミニウム板の接合界面におけるCu濃度A、接合界面からアルミニウム板の内部へ100μmの位置におけるCu濃度B、初期接合率、冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の有無、冷熱サイクル試験後の接合率、冷熱サイクル試験後の基板の割れの有無、について評価した。
【0053】
(Cu濃度A,Cu濃度B)
ヒートシンク付絶縁回路基板を積層方向に沿う断面で切断し、基板の幅方向中央の断面において、電子線マイクロアナライザー(日本電子社製 JXA−8530F)を用いて、倍率500倍,加速電圧15kVの条件で、接合界面と接合界面から積層方向に100μmの位置でCuについて定量分析を行った。観察領域において、接合界面と接合界面から積層方向に100μmの位置とでそれぞれ5点のCu濃度とその平均値を求め、接合界面におけるCu濃度A(mass%),接合界面から100μmの位置におけるCu濃度B(mass%)を得た。この時、AlとCuの濃度(mass%)の合計が100となるようにして、Cu濃度を算出した。
【0054】
(初期接合率)
アルミニウム板とセラミックス基板との接合率を評価した。具体的には、ヒートシンク付絶縁回路基板において、アルミニウム板とセラミックス基板との界面の接合率について超音波探傷装置(株式会社日立パワーソリューションズ製FineSAT200)を用いて評価し、以下の式から算出した。ここで、初期接合面積とは、接合前における接合すべき面積、すなわち回路層の面積とした。超音波探傷像を二値化処理した画像において剥離は接合部内の白色部で示されることから、この白色部の面積を剥離面積(非接合部面積)とした。
(接合率)={(初期接合面積)−(非接合部面積)}/(初期接合面積)×100
【0055】
(冷熱サイクル試験)
冷熱衝撃試験機エスペック社製TSB−51を使用し、ヒートシンク付絶縁回路基板に対して、液槽(フロリナート)で、−65℃×5分←→150℃×5分の冷熱サイクルを2000回実施した。
【0056】
(冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の有無)
上記冷熱サイクル後のヒートシンク付絶縁回路基板について、積層方向に切断した後、基板の幅方向中央の断面において走査型電子顕微鏡(カールツァイス社製 GeminiSEM 500)を用いて、倍率5000倍,加速電圧5.0kVの条件で、アルミニウム板とセラミックス基板との接合界面を含む領域(17μm×23μm)を観察した。
この観察では、SEM画像及びCu,Alの元素MAPを取得し、SEM画像にて白色で観察される粒状の領域が観察され、かつ、この領域においてCuとAlが共存していた場合、Al−Cu化合物粒子が「有」と評価した。そしてアルミニウム板の接合界面から厚さ方向に100μmまでの領域を観察し、Al−Cu化合物粒子の有無を評価した。
そしてアルミニウム板の接合界面から厚さ方向に100μmまでの領域を観察し、Al−Cu化合物粒子の有無を評価した。
【0057】
(冷熱サイクル試験後の接合率)
冷熱サイクル試験後のヒートシンク付絶縁回路基板について、上述のように超音波探傷装置(株式会社日立パワーソリューションズ製FineSAT200)を用いて評価し、接合率を算出した。
【0058】
(冷熱サイクル試験後の基板の割れの有無)
冷熱サイクル試験後のヒートシンク付絶縁回路基板について、超音波探傷装置(株式会社日立パワーソリューションズ製FineSAT200)を用いて基板の割れの有無を評価した。回路層、金属層、セラミックス基板のいずれかに割れが確認された場合を「有」と評価した。
【0059】
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
接合界面におけるCu濃度Amass%と接合界面からアルミニウム板側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aが0.30未満又は0.85越とされた比較例1〜4においては、冷熱サイクル試験後の接合率が低く、冷熱サイクル試験後に基板に割れが認められた。
【0062】
これに対して、接合界面におけるCu濃度Amass%と接合界面からアルミニウム板側へ厚さ方向に100μmの位置におけるCu濃度Bmass%との比B/Aが0.30以上0.85以下とされた本発明例1〜8においては、冷熱サイクル試験後においても接合率が十分に高く、かつ、基板に割れが確認されなかった。
【0063】
(実施例2)
表3に示すセラミックス基板(40mm×40mm)を準備し、このセラミックス基板の一方の面および他方の面に、スパッタ法によりCu層を形成した。このときのCuの固着量を表3に示す。
そして、セラミックス基板の一方の面にCu層を介して4Nアルミニウムからなるアルミニウム板(37mm×37mm×0.4mmt)を積層し、セラミックス基板の他方の面にCu層を介して4Nアルミニウムからなるアルミニウム板(37mm×37mm×0.4mmt)を積層した。
そして、表3に示す条件で、アルミニウム板とセラミックス基板とを接合し、絶縁回路基板を製造した。
【0064】
得られた絶縁回路基板について、アルミニウム板の接合界面におけるCu濃度A、接合界面からアルミニウム板の内部へ100μmの位置におけるCu濃度B、初期接合率、冷熱サイクル試験後の接合率、冷熱サイクル試験後の基板の割れの有無、について、実施例1と同様の手順で評価した。
また、接合界面のAl−Cu共晶相の面積率、冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の個数密度、Al−Cu化合物粒子の円相当径の平均を、以下のように評価した。
【0065】
(接合界面のAl−Cu共晶相の面積率)
接合界面において、幅方向の端部から中心に向かって1mmの範囲におけるBSE像を走査型電子顕微鏡(カールツァイス社製 GeminiSEM 500)により得て、このBSE像を2値化処理した。Al−Cu共晶相の面積、および、接合界面の端部から1mmまでの範囲の面積を求め、以下の式により、接合界面のAl−Cu共晶相の面積率を算出した。
(Al−Cu共晶相の面積率)=(Al−Cu共晶相の面積)/(端部から中心に向かって1mmまでの面積)×100
【0066】
(冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の個数密度)
上記冷熱サイクル試験後の絶縁回路基板について、積層方向に切断した後、基板の幅方向中央の断面において、上述した方法によりAl−Cu化合物粒子の有無を確認した。Al−Cu化合物粒子が確認された領域(接合界面からアルミニウム板側へ厚さ方向に50μmの範囲内)において、走査型電子顕微鏡(カールツァイス社製 GeminiSEM 500)の1000倍のASB像を取得し、Al−Cu化合物粒子が白色となるようにASB像を二値化した。
そして、Al−Cu化合物粒子の個数を計測し、測定範囲の面積で割ることにより、個数密度を算出した。なお、個数密度の算出は、粒径が0.01μm以上2μm以下の範囲内のAl−Cu化合物粒子を対象として算出している。また、粒子形状が円形状でない場合の粒径は、最も短い部分(短径)で判断している。さらに、粒子の一部が測定範囲外にあるなどして、粒子の形状が不明である場合、この粒子は除外して計測した。
【0067】
(冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の円相当径の平均)
個数密度を求めたときと同様にして、ASB像を二値化した。その後、測定領域内の各Al−Cu化合物粒子の面積を求め、この面積から円相当半径を算出し平均値を求めた。この平均値を表に示す。なお、面積を求める際に、粒子の一部が測定範囲外にあるなどして、面積を求められない場合、この粒子は除外した。
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
本発明例11,13,15,17,18においては、接合界面からアルミニウム板側へ厚さ方向に50μmの範囲内において、−65℃で5分保持と150℃で5分保持を1サイクルとする冷熱サイクルを2000回実施した後に析出したAl−Cu化合物粒子の個数密度が0.50個/μm以上8.50個/μm以下の範囲内であった。前記Al−Cu化合物粒子の円相当径の平均が30nm以上130nm以下の範囲内であった。アルミニウム板とセラミックス基板の接合界面において、接合界面の幅方向の端部から中心に向かって1mmの範囲内でのAl−Cu共晶相の面積率が30.0%以下であった。冷熱サイクル試験後においても接合率が十分に高く、かつ、基板に割れが確認されなかった。
【0071】
また、本発明例12では、Al−Cu共晶相の面積率が32.0%であった。本発明例14では、冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の個数密度が8.70個/μmであり、かつAl−Cu化合物粒子の円相当径が27nmであった。本発明例16では、冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の個数密度が0.47個/μmであり、かつAl−Cu化合物粒子の円相当径が133nmであった。これら本発明例12,14,16に比べて、本発明例11,13,15,17,18では、Al−Cu共晶相の面積率が30.0%以下であり、冷熱サイクル試験後のAl−Cu化合物粒子の個数密度が0.50個/μm以上8.50個/μm以下の範囲内であり、かつAl−Cu化合物粒子の円相当径が30nm以上130nm以下の範囲内であった。本発明例12,14,16に比べて、本発明例11,13,15,17,18においては、接合率がさらに優れていることが確認された。
【0072】
本実施例の結果から、本発明例によれば、厳しい冷熱サイクルを負荷した場合であっても、セラミックス基板の割れや回路層(金属層)の変形等を抑制でき、セラミックス基板と回路層との接合信頼性に優れた絶縁回路基板を提供可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0073】
1 パワーモジュール
3 半導体素子
10 絶縁回路基板
11 セラミックス基板
12 回路層
13 金属層
15 Al−Cu化合物粒子
22,23 アルミニウム板
図1
図2
図3
図4
図5
図6