特許第6973675号(P6973675)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973675
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】電力変換装置の短絡保護装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20211118BHJP
   H02M 1/08 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   H02M1/00 H
   H02M1/00 L
   H02M1/08 341B
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2021-43060(P2021-43060)
(22)【出願日】2021年3月17日
【審査請求日】2021年4月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】特許業務法人旺知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 翔直
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−044954(JP,A)
【文献】 特許第6187904(JP,B2)
【文献】 特開2001−169533(JP,A)
【文献】 特開2013−143138(JP,A)
【文献】 特開2011−232086(JP,A)
【文献】 特開2017−124728(JP,A)
【文献】 特開2009−027826(JP,A)
【文献】 特開2003−189628(JP,A)
【文献】 特開2008−236907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M1/00,1/08,7/48,G01R31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列接続された複数のスイッチング素子部を介して負荷に電力を供給する電力変換装置の短絡保護装置において、
前記複数のスイッチング素子部の個数Mよりも1だけ少ないMa個の電流検出器であって、前記複数のスイッチング素子部における2以上のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出し、検出結果を示す検出信号を出力するMa個の電流検出器と、
前記Ma個の電流検出器から得られる検出信号に基づき、前記複数のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断し、前記複数のスイッチング素子部のオンオフ駆動を停止させる遮断指示信号を出力する短絡判断部と、を有し、
前記Ma個の電流検出器におけるN番目(Nは1〜Maまでの整数)の電流検出器は、1番目からM番目までのスイッチング素子部のうちN番目のスイッチング素子部以外の全てのスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出するものであり、
前記短絡判断部は、前記Ma個の電流検出器による電流検出値の全てが閾値を越えている場合に、前記M番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断し、前記Ma個の電流検出器のうち1個の電流検出器の電流検出値が閾値を越えておらず、他のMa−1個の電流検出器の電流検出値が閾値を越えている場合に、当該1個の電流検出器において電流検出対象となっていないスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する短絡保護装置。
【請求項2】
並列接続された複数のスイッチング素子部を介して負荷に電力を供給する電力変換装置の短絡保護装置において、
前記複数のスイッチング素子部の個数Mよりも1だけ少ないMa個の電流検出器であって、前記複数のスイッチング素子部における2以上のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出し、検出結果を示す検出信号を出力するMa個の電流検出器と、
前記Ma個の電流検出器から得られる検出信号に基づき、前記複数のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断し、前記複数のスイッチング素子部のオンオフ駆動を停止させる遮断指示信号を出力する短絡判断部と、を有し、
前記Ma個の電流検出器におけるN番目(Nは1〜Maまでの整数)の電流検出器は、1番目からM番目までのスイッチング素子部のうちN番目およびN+1番目のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出するものであり、
前記短絡判断部は、前記Ma個の電流検出器のうち1番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越え、かつ、2番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越えていない場合に、1番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断し、前記Ma個の電流検出器のうちMa番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越え、かつ、Ma−1番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越えていない場合に、M番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断し、前記Ma個の電流検出器のうちN番目の電流検出器による電流検出値とN+1番目の電流検出器による電流検出値の両方が閾値を越えている場合に、N+1番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する短絡保護装置。
【請求項3】
前記電流検出器はロゴスキーコイルを含む請求項1または2に記載の短絡保護装置。
【請求項4】
前記ロゴスキーコイルとして第1のロゴスキーコイルと第2のロゴスキーコイルが基板に実装され、前記第1のロゴスキーコイルと前記第2のロゴスキーコイルの重なり部分における一方のロゴスキーコイルの戻り線が当該ロゴスキーコイルの中心軸よりも他方のロゴスキーコイルの戻り線から遠方に配置されたことを特徴とする請求項3に記載の短絡保護装置。
【請求項5】
前記ロゴスキーコイルとして第1のロゴスキーコイルと第2のロゴスキーコイルが基板に実装され、前記第1のロゴスキーコイルと前記第2のロゴスキーコイルの重なり部分のコイルが互い違いに配置されたことを特徴とする請求項3または4に記載の短絡保護装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子部はワイドギャップ半導体素子を含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の短絡保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の短絡保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等の負荷を駆動する電力変換装置では、電力変換装置を構成する半導体スイッチング素子に過大電流が流れる場合がある。このような過大電流が長時間に亙って流れると、半導体スイッチング素子が破壊に至る恐れがある。そこで、半導体スイッチング素子に流れる過大電流を検知し、電力変換装置を停止させる短絡保護装置が電力変換装置に設けられる。
【0003】
特許文献1に開示の技術では、電圧駆動型半導体素子を各々含む複数のアームに対して、各アームに流れる電流を検出する電流検出器を各々設け、各々が駆動する電圧駆動型半導体素子のアーム電流が所定値を越えたとき、ゲート駆動手段が出力するゲートパルスをオフすることで短絡保護を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−236907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電力変換装置では、大容量化のために、複数のスイッチング素子を並列接続して個々のアームを構成する場合がある。この場合、各スイッチング素子に電流検出器が必要となるため、コストの増加・装置の大型化を招くことが懸念される。
【0006】
この発明は以上に説明した課題に鑑みてなされたものであり、複数のスイッチング素子を並列接続した場合に短絡保護のために発生する電力変換装置のコストの増加・装置の大型化を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による電力変換装置の短絡保護装置は、並列接続された複数のスイッチング素子部を介して負荷に電力を供給する電力変換装置の短絡保護装置において、前記複数のスイッチング素子部の個数Mよりも少ないMa個の電流検出器であって、前記複数のスイッチング素子部における2以上のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出し、検出結果を示す検出信号を出力するMa個の電流検出器と、前記Ma個の電流検出器から得られる検出信号に基づき、前記複数のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断し、前記複数のスイッチング素子部のオンオフ駆動を停止させる遮断指示信号を出力する短絡判断部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、電流検出器の個数をスイッチング素子部の個数よりも少なくすることができ、複数のスイッチング素子部を並列接続した場合に短絡保護のために発生する電力変換装置のコストの増加・装置の大型化を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の一実施形態である短絡保護装置を備えた電力変換装置の構成を示す回路図である。
図2】同短絡保護装置の短絡判断部の構成例を示すブロック図である。
図3】同実施形態の動作例を示す波形図である。
図4】同実施形態の動作例を示す波形図である。
図5】同実施形態の動作例を示す波形図である。
図6】同短絡保護装置における2個のロゴスキーコイルの実装例を示す斜視図である。
図7】同ロゴスキーコイルの構成例を示す平面図である。
図8】同2個のロゴスキーコイルの重なり部の第1の実装例を示す斜視図である。
図9】同2個のロゴスキーコイルの重なり部の第2の実装例を示す斜視図である。
図10】同第2の実装例を示す側面図である。
図11】この発明の他の実施形態におけるロゴスキーコイルの設置例を示す図である。
図12】同設置例に対応した短絡判断部の構成を示すブロック図である。
図13】この発明の他の実施形態におけるロゴスキーコイルの設置例を示す図である。
図14】同設置例に対応した短絡判断部の構成を示すブロック図である。
図15】同実施形態における他の設置例を示す図である。
図16】同設置例に対応した短絡判断部の構成を示すブロック図である。
図17】この発明の他の実施形態におけるロゴスキーコイルの設置例を示す図である。
図18】同設置例に対応した短絡判断部の構成を示すブロック図である。
図19】この発明の他の実施形態におけるロゴスキーコイルの設置例を示す図である。
図20】同設置例に対応した短絡判断部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1はこの発明の一実施形態である短絡保護装置50を備えた電力変換装置100の構成を示す回路図である。電力変換装置100は、上位装置200からの指令に従って電力変換装置100の各部を制御する制御部1と、電力を変換する駆動部2aおよび2bを備える。
【0011】
本実施形態において、電力変換装置100は、インバータ1相分に相当する装置である。図1にはこのインバータにおける1相分の駆動部2aおよび2bが図示されている。駆動部2aは、図示しない直流電源の正極に接続された高電位電源線101と、図示しない負荷に接続された出力端子103との間に接続されている。また、駆動部2bは、同直流電源の負極に接続された低電位電源線102と、同出力端子103との間に接続されている。なお、電力変換装置100は、複数相分の駆動部2aおよび2bが高電位電源線101および低電位電源線102間に並列接続されることでインバータを構成する。
【0012】
以下、駆動部2aの内部構成について説明する。駆動部2bについてはその内部構成が基本的に駆動部2aと同一であるので、その説明は省略する。
【0013】
駆動部2aは、並列接続された複数のスイッチング素子部20a、20bおよび20cと、駆動制御部24と、短絡保護装置50とを含む。
【0014】
スイッチング素子部20a、20bおよび20cは、パワースイッチング素子27a、27bおよび27cを各々含む。これらのパワースイッチング素子27a、27bおよび27cは、各々MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体構造の電界効果トランジスタ)であり、SiC、GaN等のワイドギャップ半導体素子により構成されている。パワースイッチング素子27a、27bおよび27cには、ダイオード28a、28bおよび28cが各々逆並列接続されている。駆動部2bも、駆動部2aと同様、並列接続された複数のスイッチング素子部を含む。電力変換装置100は、これらの各駆動部2aおよび2bにおいて並列接続された複数のスイッチング素子部を介して、出力端子103に接続された負荷に電力を供給する。
【0015】
駆動制御部24は、制御部1から供給される制御信号Sm1に基づき、パワースイッチング素子27a、27bおよび27cをオフからオンへまたはオンからオフへ切り換える駆動信号Son/offを出力する。また、駆動制御部24は、短絡保護装置50から遮断指示信号Fxが出力された場合に、パワースイッチング素子27a、27bおよび27cをオフさせる駆動信号Son/offを出力する。
【0016】
短絡保護装置50は、並列接続されたスイッチング素子部20a、20bおよび20cにおける短絡故障の発生を検知し、スイッチング素子部20a、20bおよび20cを短絡故障から保護する装置である。図1に示すように、短絡保護装置50は、ロゴスキーコイル21_1および21_2と、積分器22_1および22_2と、短絡判断部23とを含む。スイッチング素子部20a等における短絡故障には、パワースイッチング素子27a等の誤オンや短絡故障と、ダイオード28a等の短絡故障があり得る。
【0017】
ロゴスキーコイル21_1および21_2は、並列接続された複数のスイッチング素子部の個数M(この例ではM=3)より少ないMa個、具体的にはMa=M−1個(この例ではMa=2)の電流検出器であって、複数のスイッチング素子部における2以上のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出し、検出結果を示す検出信号を出力するMa個の電流検出器である。本実施形態において、ロゴスキーコイル21_1および21_2は、パワースイッチング素子27a、27bおよび27cのソース側の電流路に設けられている。
【0018】
本実施形態において、Ma個の電流検出器におけるN番目(Nは1〜Maまでの整数)の電流検出器は、1番目からM番目までのスイッチング素子部のうちN番目のスイッチング素子部以外の全てのスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出する。
【0019】
具体的には、本実施形態において、1番目のスイッチング素子部はスイッチング素子部20c、2番目のスイッチング素子部はスイッチング素子部20a、3番目のスイッチング素子部はスイッチング素子部20bである。そして、1番目の電流検出器はロゴスキーコイル21_1、2番目の電流検出器はロゴスキーコイル21_2である。
【0020】
1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21_1は、1番目のスイッチング素子部10cを除いた他のスイッチング素子部20aおよび20bに流れる電流の総和を検出し、検出結果を示す検出信号Vi1を積分器22_1に出力する。この検出信号Vi1は、スイッチング素子部20aおよび20bに流れる電流の総和の時間微分を示す。積分器22_1は、検出信号Vi1を積分することにより、スイッチング素子部20aおよび20bに流れる電流の総和を示す電流検出値Si1を生成し、短絡判断部23に出力する。
【0021】
2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21_2は、2番目のスイッチング素子部20aを除いた他のスイッチング素子部20bおよび20cに流れる電流の総和を検出し、検出結果を示す検出信号Vi2を積分器22_2に出力する。この検出信号Vi2は、スイッチング素子部20bおよび20cに流れる電流の総和の時間微分を示す。積分器22_2は、検出信号Vi2を積分することにより、スイッチング素子部20bおよび20cに流れる電流の総和を示す電流検出値Si2を生成し、短絡判断部23に出力する。
【0022】
短絡判断部23は、電流検出値Si1およびSi2に基づいて、スイッチング素子部20a、20bおよび20cの短絡故障に関する判断を行う。そして、短絡判断部23は、スイッチング素子部20aに短絡故障が発生したと判断した場合には短絡故障信号Faを、スイッチング素子部20bに短絡故障が発生したと判断した場合には短絡故障信号Fbを、スイッチング素子部20cに短絡故障が発生したと判断した場合には短絡故障信号Fcを制御部1に出力する。制御部1はこの短絡故障信号Fa、FbまたはFcを上位装置200に送信する。これにより上位装置200は、短絡故障が発生したスイッチング素子部20a、20bまたは20cを特定する情報を例えば表示部に表示する、といった処理を行う。また、短絡判断部23は、スイッチング素子部20a、20bまたは20cのいずれかに短絡故障が発生したと判断した場合、駆動制御部24に遮断指示信号Fxを出力する。これにより駆動制御部24は、パワースイッチング素子27a、27bおよび27cのオンオフ駆動を停止する。
【0023】
図2は短絡判断部23の構成例を示すブロック図である。図2に示すように、短絡判断部23は、コンパレータ300aおよび300bと、OR演算子301と、AND演算子302a、302bおよび302cと、オンディレイ演算子303a、303bおよび303cと、NOT演算子304aおよび304bとを有する。オンディレイ演算子303a、303bおよび303cは、各々への入力信号の非アクティブレベルからアクティブレベルへの変化を所定時間遅らせて出力する演算子であり、短絡判断部23の動作を安定化させる役割を果たす。
【0024】
コンパレータ300aは、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和を示す電流検出値Si1が短絡電流判定閾値thを越えない場合に出力信号を非アクティブレベルとし、越えた場合にアクティブレベルとする。コンパレータ300bは、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和を示す電流検出値Si2が短絡電流判定閾値thを越えない場合に出力信号を非アクティブレベルとし、越えた場合にアクティブレベルとする。この場合、短絡電流判定閾値thは例えば定格パワースイッチング素子電流の300%等にして良い。
【0025】
OR演算子301は、コンパレータ300aおよび300bの各出力信号の少なくとも一方がアクティブレベルである場合、すなわち、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和と、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和のうちの少なくとも一方が短絡電流判定閾値thを越えている場合に、スイッチング素子部20a、20bまたは20cのいずれかに短絡故障が発生したと判断し、遮断指示信号Fxを駆動制御部24に出力する。
【0026】
AND演算子302bは、コンパレータ300aの出力信号がアクティブレベルであり、かつ、コンパレータ300bの出力信号がアクティブレベルである場合、すなわち、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和が短絡電流判定閾値thを越えており、かつ、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和が短絡電流判定閾値thを越えている場合に、スイッチング素子部20bに短絡故障が発生したと判断し、オンディレイ演算子303bを介して短絡故障信号Fbを制御部1に出力する。このようにAND演算子302bは、Ma個の電流検出器による電流検出値(この例ではロゴスキーコイル21_1および21_2により得られた電流検出値Si1およびSi2)の全てが閾値thを越えている場合に、M番目のスイッチング素子部(この例ではスイッチング素子部20b)に短絡故障があったと判断する。
【0027】
AND演算子302aは、コンパレータ300aの出力信号がアクティブレベルであり、かつ、コンパレータ300bの出力信号をNOT演算子304aにより反転した信号がアクティブレベルである場合、すなわち、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和が短絡電流判定閾値thを越えており、かつ、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和が短絡電流判定閾値thを越えていない場合に、スイッチング素子部20aに短絡故障が発生したと判断し、オンディレイ演算子303aを介して短絡故障信号Faを制御部1に出力する。このようにAND演算子302aは、Ma個の電流検出器のうち1個の電流検出器の電流検出値(この例ではロゴスキーコイル21_2により得られた電流検出値Si2)が閾値を越えておらず、他のMa−1個の電流検出器の電流検出値(この例ではロゴスキーコイル21_1により得られた電流検出値Si1)が閾値を越えている場合に、当該1個の電流検出器において電流検出対象となっていないスイッチング素子部(この例ではスイッチング素子部20a)に短絡故障があったと判断する。
【0028】
AND演算子302cは、コンパレータ300aの出力信号をNOT演算子304bにより反転した信号がアクティブレベルであり、かつ、コンパレータ300bの出力信号がアクティブレベルである場合、すなわち、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和が短絡電流判定閾値thを越えておらず、かつ、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和が短絡電流判定閾値thを越えている場合に、スイッチング素子部20cに短絡故障が発生したと判断し、オンディレイ演算子303cを介して短絡故障信号Fcを制御部1に出力する。このようにAND演算子302cは、Ma個の電流検出器のうち1個の電流検出器の電流検出値(この例ではロゴスキーコイル21_1により得られた電流検出値Si1)が閾値を越えておらず、他のMa−1個の電流検出器の電流検出値(この例ではロゴスキーコイル21_2により得られた電流検出値Si2)が閾値を越えている場合に、当該1個の電流検出器において電流検出対象となっていないスイッチング素子部(この例ではスイッチング素子部20c)に短絡故障があったと判断する。
【0029】
図3図5は、各々本実施形態における短絡故障検出時の動作例を示す波形図である。以下、これらの図を参照し、本実施形態の動作を説明する。
【0030】
図3に示す動作例では、スイッチング素子部20aに短絡故障が発生する。この短絡故障が発生する前の正常時において、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和を示す電流検出値Si1は短絡電流判定閾値thよりも低い。また、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和を示す電流検出値Si2も短絡電流判定閾値thよりも低い。
【0031】
スイッチング素子部20aに短絡故障が発生すると、スイッチング素子部20aに流れる電流が正常時よりも大きくなる。この場合、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和を示す電流検出値Si1のみが短絡電流判定閾値thを越え、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和を示す電流検出値Si2は短絡電流判定閾値thを越えない。このため、遮断指示信号Fxと、短絡故障箇所としてスイッチング素子部20aを特定する短絡故障信号Faがアクティブレベルとなる。
【0032】
図4に示す動作例では、スイッチング素子部20bに短絡故障が発生する。この短絡故障が発生する前の正常時の動作は、図3の動作例と同様である。
【0033】
スイッチング素子部20bに短絡故障が発生すると、スイッチング素子部20bに流れる電流が正常時よりも大きくなる。この場合、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和を示す電流検出値Si1と、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和を示す電流検出値Si2の両方が短絡電流判定閾値thを越える。このため、遮断指示信号Fxと、短絡故障箇所としてスイッチング素子部20bを特定する短絡故障信号Fbがアクティブレベルとなる。
【0034】
図5に示す動作例では、スイッチング素子部20cに短絡故障が発生する。この短絡故障が発生する前の正常時の動作は、図3の動作例と同様である。
【0035】
スイッチング素子部20cに短絡故障が発生すると、スイッチング素子部20cに流れる電流が正常時よりも大きくなる。この場合、スイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和を示す電流検出値Si1は短絡電流判定閾値thを越えず、スイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和を示す電流検出値Si2のみが短絡電流判定閾値thを越える。このため、遮断指示信号Fxと、短絡故障箇所としてスイッチング素子部20cを特定する短絡故障信号Fcがアクティブレベルとなる。
【0036】
以上のように、本実施形態によれば、スイッチング素子部20a、20bおよび20cの並列数3よりも1個少ない2個のロゴスキーコイル21_1および21_2により各スイッチング素子部の短絡故障を検出してスイッチング素子部20a、20bおよび20cの駆動を停止させ、かつ、短絡故障箇所であるスイッチング素子部を特定することができる。従って、複数のスイッチング素子部を並列接続した場合に短絡保護のために発生する電力変換装置100のコストの増加・装置の大型化を低減することができる。また、本実施形態において、2個のロゴスキーコイル21_1および21_2は、いずれも2個のスイッチング素子部の電流の総和を検出する。従って、各ロゴスキーコイルの電流検出精度を同じにすることができ、各スイッチング素子部の短絡故障を正確に判断することができる。
【0037】
次に本実施形態に好適なロゴスキーコイルの例を説明する。図6は基板400に実装されたロゴスキーコイル21_1および21_2を例示する斜視図である。この例では、ロゴスキーコイル21_1および21_2が重なり部分OVにおいて重なった状態で基板400に実装されている。
【0038】
この基板400において、ロゴスキーコイル21_1により囲まれており、かつ、ロゴスキーコイル21_2により囲まれていない領域には貫通孔Haが開口しており、この貫通孔Haにスイッチング素子部20aの電流路が挿通される。また、基板400において、ロゴスキーコイル21_1および21_2の両方に囲まれた領域、すなわち、重なり部分OVの領域に貫通孔Hbが開口しており、この貫通孔Hbにスイッチング素子部20bの電流路が挿通される。また、基板400において、ロゴスキーコイル21_1により囲まれておらず、かつ、ロゴスキーコイル21_2により囲まれた領域に貫通孔Hcが開口しており、この貫通孔Hcにスイッチング素子部20cの電流路が挿通される。この場合、ロゴスキーコイル21_1とロゴスキーコイル21_2はスイッチング素子部20bの周辺で重なり合っている。
【0039】
ロゴスキーコイル21_1は、貫通孔HaおよびHbを囲っており、これらの貫通孔HaおよびHbに挿通された電流路に流れるスイッチング素子部20aおよび20bの電流の総和を検出する。また、ロゴスキーコイル21_2は、貫通孔HbおよびHcを囲っており、これらの貫通孔HbおよびHcに挿通された電流路に流れるスイッチング素子部20bおよび20cの電流の総和を検出する。
【0040】
図7はロゴスキーコイル21_1を例示する平面図である。図7に示すように、ロゴスキーコイル21_1は、螺旋状に延びたコイル21_1_Cと、このコイル21_1_Cのコイル内をコイル21_1_Cの終了点から開始点に戻る戻り線21_1_Rとを有する。図示は省略したが、ロゴスキーコイル21_2もロゴスキーコイル21_1と同じ構成である。
【0041】
図8図6の重なり部分OVにおけるロゴスキーコイル21_1および21_2の第1の実装例を示す斜視図である。図8では多層プリント基板400aにロゴスキーコイル21_1とロゴスキーコイル21_2が実装されている。
【0042】
多層プリント基板400aの第1層L1には、ロゴスキーコイル21_2のコイル21_2_Cの下側水平部分が形成されている。第1層L1の上層の第2層L2には、ロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rが形成されている。第2層L2の上層の第3層L3には、ロゴスキーコイル21_2のコイル21_2_Cの上側水平部分が形成されている。そして、第3層L3と第1層L1とを繋ぐスルーホールTH3−1を利用してコイル21_2_Cの上側水平部分と下側水平部分とを繋ぐ垂直部分が形成されている。
【0043】
第3層L3の上層の第4層L4には、ロゴスキーコイル21_1のコイル21_1_Cの下側水平部分が形成されている。第4層L4の上層の第5層L5には、ロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rが形成されている。第5層L5の上層の第6層L6には、ロゴスキーコイル21_1のコイル21_1_Cの上側水平部分が形成されている。そして、第6層L6と第4層L4とを繋ぐスルーホールTH6−4を利用してコイル21_1_Cの上側水平部分と下側水平部分とを繋ぐ垂直部分が形成されている。
【0044】
図8に示す例では、第2層L2および第3層L3間の間隔と、第4層L4および第5層L5間の間隔が、他の隣り合った2層間の間隔より広くなっている。このため、ロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rはロゴスキーコイル21_2から遠方に離れており、ロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rはロゴスキーコイル21_1から遠方に離れている。具体的には、ロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rは。当該ロゴスキーコイル21_1の中心軸よりも、ロゴスキーコイル21_2から遠方に離れており、ロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rは、当該ロゴスキーコイル21_2の中心軸よりも、ロゴスキーコイル21_1から遠方に離れている。
【0045】
この第1の実装例では、重なり部分OVの全長に亙って、ロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rと、ロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rとが平行に延びる。従って、戻り線21_1_Rおよび21_2_Rが接近していると、一方の戻り線に電流が流れることによりその戻り線廻りに磁界が発生した場合に、この磁界と相殺する磁界を発生する電流が他方の戻り線に誘発され、電流計測の妨げとなる可能性がある。しかしながら、第1の実装例において戻り線21_1_Rおよび21_2_Rは互いに遠く離れており、各戻り線は他方の戻り線に流れる電流の影響を受け難い。このため、ロゴスキーコイル21_1および21_2による高精度な電流計測が可能である。
【0046】
図9図6の重なり部分OVにおけるロゴスキーコイル21_1および21_2の第2の実装例を示す斜視図である。また、図10は同実装例の側面図である。第2の実装例では多層プリント基板400bにロゴスキーコイル21_1とロゴスキーコイル21_2が実装されている。
【0047】
図10に示すように、第2の実装例では、ロゴスキーコイル21_1とロゴスキーコイル21_2の重なり部分OVにおいて、ロゴスキーコイル21_1のコイル21_1_Cとロゴスキーコイル21_2のコイル21_2_Cは、互いの軸(あるいは戻り線)に沿った方向(図10では水平方向)において互い違いに配置される。この第2の実装例の詳細は次の通りである。
【0048】
図9において、多層プリント基板400bの第1層L1には、ロゴスキーコイル21_2のコイル21_2_Cの下側水平部分が形成されている。第1層L1の上層の第2層L2には、ロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rが形成されている。第2層L2の上層の第3層L3には、ロゴスキーコイル21_1のコイル21_1_Cの下側水平部分が形成されている。第3層L3の上層の第4層L4には、ロゴスキーコイル21_2のコイル21_2_Cの上側水平部分が形成されている。そして、第4層L4と第1層L1とを繋ぐスルーホールTH4−1を利用してコイル21_2_Cの上側水平部分と下側水平部分とを繋ぐ垂直部分が形成されている。
【0049】
第4層L4の上層の第5層L5には、ロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rが形成されている。第5層L5の上層の第6層L6には、ロゴスキーコイル21_1のコイル21_1_Cの上側水平部分が形成されている。そして、第6層L6と第3層L3とを繋ぐスルーホールTH6−3を利用してコイル21_1_Cの上側水平部分と下側水平部分とを繋ぐ垂直部分が形成されている。
【0050】
第2の実装例において、第5層L5に形成されたロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rと、第2層L2に形成されたロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rは、互いに遠方に離れている。具体的には、ロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rは、当該ロゴスキーコイル21_1の中心軸よりも、ロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rから離れており、ロゴスキーコイル21_2の戻り線21_2_Rは、当該ロゴスキーコイル21_2の中心軸よりも、ロゴスキーコイル21_1の戻り線21_1_Rから離れている。従って、第1の実装例と同様、ロゴスキーコイル21_1および21_2は、高精度の電流計測が可能である。
【0051】
また、第2の実装例では、ロゴスキーコイル21_1のコイル21_1_Cとロゴスキーコイル21_2のコイル21_2_Cを互い違いに配置するので、ロゴスキーコイルが実装された多層プリント基板400bの厚みを低減し、同基板の低コスト化・小型化が可能になる。
【0052】
<他の実施形態>
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明には他にも実施形態が考えられる。例えば次の通りである。
【0053】
(1)上記実施形態では、並列接続された複数のスイッチング素子部の個数は3個であったが、この発明は4個以上のスイッチング素子部が並列接続された電力変換装置にも適用可能である。図11は4個のスイッチング素子部20_1、21_2、20_3および20_4が並列接続された電力変換装置におけるロゴスキーコイルの設置例を示す図である。
【0054】
この適用例では、M=4、Ma=3であり、スイッチング素子部20_1が1番目、スイッチング素子部20_2が2番目、スイッチング素子部20_3が3番目、スイッチング素子部20_4が4番目のスイッチング素子部である。そして、N番目(N=1〜Ma)の電流検出器は、N番目のスイッチング素子部を除いた他のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出する。具体的には、1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21a_1は、1番目のスイッチング素子部20_1を除いた他のスイッチング素子部20_2、20_3および20_4に流れる電流の総和を検出する。また、2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21a_2は、2番目のスイッチング素子部20_2を除いた他のスイッチング素子部20_1、20_3および20_4に流れる電流の総和を検出する。また、3番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21a_3は、3番目のスイッチング素子部20_3を除いた他のスイッチング素子部20_1、20_2および20_4に流れる電流の総和を検出する。
【0055】
図12はこの態様における短絡判断部23aの構成を示すブロック図である。なお、この図12では、図2におけるコンパレータ300aおよび300bに相当するものとオンディレイ演算子303a〜303cに相当するものの図示は省略されている。
【0056】
図12において、信号Da_1はロゴスキーコイル21a_1による電流検出値が閾値を越えている場合にアクティブレベル、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。信号Da_2はロゴスキーコイル21a_2による電流検出値が閾値を越えている場合にアクティブレベル、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。信号Da_3はロゴスキーコイル21a_3による電流検出値が閾値を越えている場合にアクティブレベル、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。
【0057】
図12に示す短絡判断部23aは、Ma個の電流検出器による電流検出値の全てが閾値を越えている場合に、M番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する。具体的には、短絡判断部23aのAND演算子424は、ロゴスキーコイル21a_1、21a_2および21a_3による電流検出値の全てが閾値を越え、信号Da_1、Da_2およびDa_3の全てがアクティブレベルである場合に、M番目のスイッチング素子部であるスイッチング素子部20_4を短絡故障箇所として特定する信号Ea_4をアクティブレベルにする。この信号Ea_4は、図示しないオンディレイ演算子を介すことにより短絡故障信号として出力される。後述する信号Ea_1〜Ea_3も同様である。
【0058】
また、短絡判断部23aは、Ma個の電流検出器のうち1個の電流検出器の電流検出値が閾値を越えておらず、他のMa−1個の電流検出器の電流検出値の全てが閾値を越えている場合に、当該1個の電流検出器において電流検出対象となっていないスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する。
【0059】
具体的には、例えばロゴスキーコイル21a_1による電流検出値が閾値を越えておらず、ロゴスキーコイル21a_2および21a_3による電流検出値の全てが閾値を越えている場合に、信号Da_1をNOT演算子411により反転した信号と、信号Da_2およびDa_3がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子421が、ロゴスキーコイル21a_1において電流検出対象となっていないスイッチング素子部20_1を短絡故障箇所として特定する信号Ea_1をアクティブレベルにする。
【0060】
また、ロゴスキーコイル21a_2による電流検出値が閾値を越えておらず、ロゴスキーコイル21a_1および21a_3による電流検出値の全てが閾値を越えている場合、信号Da_2をNOT演算子412により反転した信号と、信号Da_1およびDa_3がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子422が、ロゴスキーコイル21a_2において電流検出対象となっていないスイッチング素子部20_2を短絡故障箇所として特定する信号Ea_2をアクティブレベルにする。
【0061】
また、ロゴスキーコイル21a_3による電流検出値が閾値を越えておらず、ロゴスキーコイル21a_1および21a_2による電流検出値の全てが閾値を越えている場合、信号Da_3をNOT演算子413により反転した信号と、信号Da_1およびDa_2がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子423が、ロゴスキーコイル21a_3において電流検出対象となっていないスイッチング素子部20_3を短絡故障箇所として特定する信号Ea_3をアクティブレベルにする。
【0062】
(2)上記実施形態では、並列接続された複数のスイッチング素子部の個数をMとした場合、Ma=M−1個の電流検出器が各々Ma個のスイッチング素子部の電流の総和を検出した。しかし、そのようにする代わりに、Ma=M−1個の電流検出器が各々2個のスイッチング素子部の電流の総和を検出するようにしてもよい。
【0063】
図13はこの態様においてM=4、Ma=3である場合のロゴスキーコイルの設置例を示す図である。この態様では、Ma個の電流検出器におけるN番目(Nは1〜Maまでの整数)の電流検出器は、1番目からM番目までのスイッチング素子部のうちN番目およびN+1番目のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出する。
【0064】
具体的には、図13において、スイッチング素子部20_1〜20_4は、1番目〜4番目(M番目)のスイッチング素子部である。また、ロゴスキー21b_1〜21b_3は1番目〜3番目(Ma番目)の電流検出器である。
【0065】
図13に示すように、1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_1は、1番目のスイッチング素子部20_1および2番目のスイッチング素子部20_2の電流の総和を検出する。2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_2は、2番目のスイッチング素子部20_2および3番目のスイッチング素子部20_3の電流の総和を検出する。3番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_3は、3番目のスイッチング素子部20_3および4番目のスイッチング素子部20_4の電流の総和を検出する。
【0066】
図14はこの態様における短絡判断部23bの構成を示すブロック図である。なお、この図14では、図2におけるコンパレータ300aおよび300bに相当するものとオンディレイ演算子303a〜303cに相当するものの図示は省略されている。
【0067】
図14において、信号Db_1はロゴスキーコイル21b_1による電流検出値が閾値を越えている場合にアクティブレベル、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。信号Db_2はロゴスキーコイル21b_2による電流検出値が閾値を越えている場合にアクティブレベル、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。信号Db_3はロゴスキーコイル21b_3による電流検出値が閾値を越えている場合にアクティブレベル、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。
【0068】
図14に示す短絡判断部23bは、Ma個の電流検出器のうち1番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越え、かつ、2番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越えていない場合に、1番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する。
【0069】
さらに詳述すると、1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_1による電流検出値が閾値を越え、かつ、2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_2による電流検出値が閾値を越えていない場合に、信号Db_1と、信号Db_2をNOT演算子512により反転した信号がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子521が、1番目のスイッチング素子部20_1を短絡故障箇所として特定する信号Eb_1をアクティブレベルにする。
【0070】
また、短絡判断部23bは、Ma個の電流検出器のうちMa番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越え、かつ、Ma−1番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越えていない場合に、M番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する。
【0071】
さらに詳述すると、Ma番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_3による電流検出値が閾値を越え、かつ、Ma−1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_2による電流検出値が閾値を越えていない場合、信号Db_3と、信号Db_2をNOT演算子512により反転した信号がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子524が、4番目(M番目)のスイッチング素子部20_4を短絡故障箇所として特定する信号Eb_4をアクティブレベルにする。
【0072】
また、短絡判断部23bは、Ma個の電流検出器のうちN番目の電流検出器による電流検出値とN+1番目の電流検出器による電流検出値の両方が閾値を越えている場合に、N+1番目のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する。
【0073】
さらに詳述すると、1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_1による電流検出値と2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_2による電流検出値が閾値を越えている場合、信号Db_1と信号Db_2がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子522が、2番目のスイッチング素子部20_2を短絡故障箇所として特定する信号Eb_2をアクティブレベルにする。
【0074】
また、2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_2による電流検出値と3番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21b_3による電流検出値が閾値を越えている場合、信号Db_2と信号Db_3がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子523が、3番目のスイッチング素子部20_3を短絡故障箇所として特定する信号Eb_3をアクティブレベルにする。
【0075】
図15はこの態様においてM=5、Ma=4である場合のロゴスキーコイルの設置例を示す図である。図15において、スイッチング素子部20_1〜20_5は、1番目〜5番目(M番目)のスイッチング素子部である。また、ロゴスキー21c_1〜21c_4は1番目〜4番目(Ma番目)の電流検出器である。前掲図13と同様、Ma個の電流検出器のうちN番目の電流検出器は、N番目のスイッチング素子部およびN+1番目のスイッチング素子部の電流の総和を検出する。
【0076】
図16図15の構成に対応した短絡判断部23cの構成を示すブロック図である。なお、この図16では、図2におけるコンパレータ300aおよび300bに相当するものとオンディレイ演算子303a〜303cに相当するものの図示は省略されている。
【0077】
図16において、信号Dc_1〜Dc_4は、各々ロゴスキーコイル21c_1〜21c_4による電流検出値が閾値を越えている場合にアクティブレベル、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。
【0078】
1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21c_1による電流検出値が閾値を越え、かつ、2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21c_2による電流検出値が閾値を越えていない場合に、信号Dc_1と、信号Dc_2をNOT演算子532により反転した信号がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子541が、1番目のスイッチング素子部20_1を短絡故障箇所として特定する信号Ec_1をアクティブレベルにする。
【0079】
また、Ma番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21c_4による電流検出値が閾値を越え、かつ、Ma−1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21c_3による電流検出値が閾値を越えていない場合、信号Dc_4と、信号Dc_3をNOT演算子533により反転した信号がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子545が、5番目(M番目)のスイッチング素子部20_5を短絡故障箇所として特定する信号Ec_5をアクティブレベルにする。
【0080】
また、1番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21c_1による電流検出値と2番目の電流検出器であるロゴスキーコイル21c_2による電流検出値が閾値を越えている場合、信号Dc_1と信号Dc_2がアクティブレベルとなる。この場合、AND演算子542が、2番目のスイッチング素子部20_2を短絡故障箇所として特定する信号Ec_2をアクティブレベルにする。
【0081】
他の場合も同様であり、2番目と3番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越えている場合には、AND演算子543が3番目のスイッチング素子部20_3を短絡故障箇所として特定する信号Ec_3をアクティブレベルにする。また、3番目と4番目の電流検出器による電流検出値が閾値を越えている場合には、AND演算子544が4番目のスイッチング素子部20_4を短絡故障箇所として特定する信号Ec_4をアクティブレベルにする。
【0082】
この態様によれば、上記実施形態(図1参照)と同様、並列接続されるスイッチング素子部の個数よりも電流検出器の数を減らすことができる。また、上記実施形態では、M個のスイッチング素子部に対し、Ma=M−1個のスイッチング素子部の電流の総和を検出するロゴスキーコイルをMa個設ける。このため、Ma個のロゴスキーコイルを多層プリント基板に実装する場合において、スイッチング素子部の個数Mが増えた場合に、重なり部分OV(図6参照)において重なり合うロゴスキーコイルの個数が増え、必要な多層プリント基板の層数が増える問題がある。しかしながら、この態様では、複数のロゴスキーコイルを多層プリント基板に実装する場合、N番目の電流検出器であるロゴスキーコイルとN+1番目の電流検出器であるロゴスキーコイルの2個のみが重なり部分V(図6参照)において重なり合う。従って、必要な多層プリント基板の層数を少なくし、製造コストを抑えることができる。
【0083】
(3)並列接続された複数のスイッチング素子部に対する複数の電流検出器の割り当て方法は、上記実施形態の方法に限定されるものではない。図17に示す態様では、16個のスイッチング素子部20_11〜20_14、20_21〜20_24、20_31〜20_34および20_41〜20_44に対し、第1群の電流検出器であるロゴスキーコイル21x_1〜21x_4と、第2群の電流検出器であるロゴスキーコイル21y_1〜21y_4を割り当てている。
【0084】
ここで、第1群の電流検出器は、M個のスイッチング素子部の第1の分割を行うことにより得られた重複部分のない複数のグループの各々における電流の総和を検出するものである。具体的には、第1群の電流検出器におけるロゴスキーコイル21x_1は、スイッチング素子部20_11、20_12、20_13および20_14からなるグループにおける電流の総和を検出する。また、ロゴスキーコイル21x_2は、スイッチング素子部20_21、20_22、20_23および20_24からなるグループにおける電流の総和を検出する。また、ロゴスキーコイル21x_3は、スイッチング素子部20_31、20_32、20_33および20_34からなるグループにおける電流の総和を検出する。また、ロゴスキーコイル21x_4は、スイッチング素子部20_41、20_42、20_43および20_44からなるグループにおける電流の総和を検出する。
【0085】
第2群の電流検出器は、第1の分割において同一グループに属した複数のスイッチング素子部が同一グループに属しないようにM個のスイッチング素子部について第2の分割を行うことにより得られた複数のグループの各々における電流の総和を検出するものである。具体的には、第2群の電流検出器におけるロゴスキーコイル21y_1は、スイッチング素子部20_11、20_21、20_31および20_41からなるグループにおける電流の総和を検出する。また、ロゴスキーコイル21y_2は、スイッチング素子部20_12、20_22、20_32および20_42からなるグループにおける電流の総和を検出する。また、ロゴスキーコイル21y_3は、スイッチング素子部20_13、20_23、20_33および20_43からなるグループにおける電流の総和を検出する。また、ロゴスキーコイル21y_4は、スイッチング素子部20_14、20_24、20_34および20_44からなるグループにおける電流の総和を検出する。
【0086】
図18図17の構成に対応した短絡判断部23dの構成を示すブロック図である。図18において、信号Dx_1〜Dx_4は、第1群に対応したロゴスキーコイル21x_1〜21x_4による電流検出値が閾値を越えた場合にアクティブレベルとなり、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。信号Dy_1〜Dy_4は、第2群に対応したロゴスキーコイル21y_1〜21y_4による電流検出値が閾値を越えた場合にアクティブレベルとなり、そうでない場合に非アクティブレベルとなる。そして、短絡判断部23dには、短絡故障箇所を特定する信号E_11〜E_14を出力するAND演算子611〜613、信号E_21〜E_24を出力するAND演算子621〜623、信号E_31〜E_34を出力するAND演算子631〜633、および信号E_41〜E_44を出力するAND演算子641〜643が設けられている。
【0087】
図18に示す短絡判断部23dは、第1群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがあり、第2群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがある場合に、当該第1群の電流検出器と当該第2群の電流検出器において共通して電流検出対象となっているスイッチング素子部に短絡故障があったと判断する。
【0088】
例えば第1群の中のロゴスキーコイル21x_2による電流検出値が閾値以上であり、かつ、第2群の中のロゴスキーコイル21y_3による電流検出値が閾値以上である場合、信号Dx_2およびDy_3がアクティブレベルとなる。この場合、AND623が、ロゴスキーコイル21x_2とロゴスキーコイル21y_3において共通して電流検出対象となっているスイッチング素子部20_23を短絡故障箇所として特定する信号E_23をアクティブレベルにする。
【0089】
この態様によれば、並列接続されるスイッチング素子部の数が多い場合に、上記実施形態よりも電流検出器の数を減らすことができる。
【0090】
(4)上記(3)の態様において、第1の分割では、電流検出の対象とならないグループを1つ生成し、当該グループ以外のグループを電流検出の対象としてもよい。この場合、短絡判断部23(図1参照)は、第2群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがあり、第1群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがない場合に、電流検出値が閾値を越えた第2群の電流検出器の電流検出対象に属し、かつ、電流検出の対象となっていないグループに属するスイッチング素子部に短絡故障があったと判断すればよい。
【0091】
図19はこの態様の構成例を示す図である。図19では、前掲図17において、スイッチング素子部20_41、20_42、20_43および20_44からなるグループを電流検出の対象にならないグループとし、ロゴスキーコイル21x_4を削除している。
【0092】
図20図19の構成に対応した短絡判断部23eの構成を示すブロック図である。図20では図18における信号Dx_4が削除されており、その代わりに負論理入力(あるいは入力ローアクティブ)のAND演算子650が設けられている。このAND演算子650は、第1群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがない場合、すなわち、信号Dx_1、Dx_2およびDx_3のいずれもが非アクティブレベルである場合に、AND演算子641〜644に供給する信号をアクティブレベルにする。
【0093】
この態様において、第1群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがある場合の動作は前掲図19の短絡判断部23dの動作と同じである。しかし、第1群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがない場合の動作は前掲図19の短絡判断部23dの動作と異なったものとなる。例えば第1群の電流検出器の中に電流検出値が閾値を越えているものがなく、第2群のうちロゴスキーコイル21y_1による電流検出値が閾値を越えている場合、AND演算子650の出力信号がアクティブレベルとなり、信号Dy_1がアクティブレベルとなる。この場合、電流検出値が閾値を越えたロゴスキーコイル21y_1の電流検出対象に属し、かつ、電流検出の対象となっていないスイッチング素子部20_41、20_42、20_43および20_44のグループに属するスイッチング素子部20_41が短絡故障個所となり、AND演算子641がこの短絡個所を特定する信号E_41をアクティブレベルにする。
【0094】
この態様によれば、上記(3)の態様よりも、さらに電流検出器の数を減らすことができる。
【0095】
(5)上記実施形態では、並列接続されたパワースイッチング素子27a、27bおよび27cのソース側の電流路にロゴスキーコイル21_1および21_2を設けたが、パワースイッチング素子27a、27bおよび27cのドレイン側の電流路にロゴスキーコイル21_1および21_2を設けてもよい。
【0096】
(6)上記実施形態では、ロゴスキーコイル21_1および21_2から得られる検出信号Vi1およびVi2を積分して電流検出値Si1およびSi2を求め、この電流検出値Si1およびSi2を閾値thと比較することにより短絡故障に関する判断を行った。しかし、そのようにする代わりに、ロゴスキーコイル21_1および21_2から得られる検出信号Vi1およびVi2を閾値と比較することにより短絡故障に関する判断を行ってもよい。
【0097】
(7)上記実施形態において複数のスイッチング素子部のうち短絡故障が発生したスイッチング素子部を特定する必要がない場合には、全てのスイッチング素子部の電流の総和を1個のロゴスキーコイルにより検出してもよい。
【0098】
(8)この発明は、DC/DCコンバータ等、インバータ以外の電力変換装置に適用してもよい。
【0099】
(9)上記実施形態では、パワースインチング素子の例としてMOSFETを挙げたが、パワースイッチング素子はこれに限定されるものではなく、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor;絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)等の他のパワースイッチング素子であってもよい。
【0100】
(10)上記実施形態では、電流検出器としてロゴスキーコイルを用いたが、シャント抵抗、CT(Current Transformer;変流器)等、他の種類の電流検出器を用いてもよい。
【符号の説明】
【0101】
100……電力変換装置、200……上位装置、2a,2b……駆動部、1……制御部、20a,20b,20c,20_1〜20_5,20_11〜20_14,20_21〜20_24,20_31〜20_34,20_41〜20_44……スイッチング素子部、27a,27b,27c……パワースイッチング素子、28a,28b,28c……ダイオード、24……駆動制御部、50……短絡保護装置、21_1,21_2,21a_1,21a_2,21a_3,21b_1,21b_2,21b_3,21c_1,21x_2,21c_3,21c_4,21x_1〜21x_4,21y_1〜21y_4……ロゴスキーコイル、21_1_C,21_2_C……コイル、21_1_R,21_2_R……戻り線、22_1,22_2……積分器、23,23a,23b,23c.23d,23e……短絡判断部、300a,300b……コンパレータ、301……OR演算子、302a,302b,302c,421〜424,521〜524,541〜545,611〜614,621〜624,631〜634,641〜644……AND演算子、303a,303b,303c……オンディレイ演算子、304a,304b,411〜413,512,532,533……NOT演算子、400……基板、400a,400b……多層プリント基板。
【要約】
【課題】 複数のスイッチング素子を並列接続した場合に短絡保護のために発生する電力変換装置のコストの増加・装置の大型化を低減する。
【解決手段】 並列接続された複数のスイッチング素子部20a〜20cを介して負荷に電力を供給する電力変換装置100の短絡保護装置50を提供する。短絡保護装置50は、スイッチング素子部より少ない個数のであって、複数のスイッチング素子部における2以上のスイッチング素子部に流れる電流の総和を検出し、検出結果を示す検出信号Vi1およびVi2を出力するロゴスキーコイル21_1および21_2と、これらの検出信号に基づき、複数のスイッチング素子部に短絡故障があったと判断し、複数のスイッチング素子部のオンオフ駆動を停止させる遮断指示信号Fxを出力する短絡判断部23とを有する。
【選択図】図1
図1
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