(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1強磁性層を前記第2方向と前記第3方向とのうち少なくとも一方に挟む第1磁性体と第2磁性体とをさらに備える、請求項1〜8のいずれか一項に記載の磁性素子。
前記第1配線は、電流が流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物のいずれかを含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の磁性素子。
スピン軌道トルクを利用して磁化回転を行う磁性素子であって、第1強磁性層と、第1方向において前記第1強磁性層と面する第1配線と、を備え、前記第1配線は電流が流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有するスピン軌道トルク配線であって、前記第1方向と異なる第2方向に延びる配線部と、前記第1方向から見て前記第2方向と交差する第3方向の幅が前記配線部より広い拡幅部と、を有し、前記拡幅部は前記第1方向において前記第1強磁性層と前記配線部との間に配置するものであり、前記配線部の前記第3方向の中心位置と、前記第1強磁性層の前記第3方向の中心位置と、が異なる、磁性素子を複数備え、
前記複数の磁性素子の前記第1強磁性層を繋ぐスピン伝導層と、を備える、リザボア素子。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0027】
まず方向について定義する。+x方向は、後述する第1配線20が延びる一方向である。−x方向は、+x方向と反対の方向である。+x方向と−x方向を区別しない場合は、単に「x方向」と称する。x方向は、第2方向の一例である。+y方向は、x方向と直交する一方向である。−y方向は、+y方向と反対の方向である。+y方向と−y方向を区別しない場合は、単に「y方向」と称する。y方向は、第3方向の一例である。+z方向は、後述する磁気抵抗効果素子10の各層が積層されている方向である。−z方向は、+z方向と反対の方向である。+z方向と−z方向を区別しない場合は、単に「z方向」と称する。z方向は、第1方向の一例である。以下、+z方向を「上」、−z方向を「下」と表現する場合がある。上下は、必ずしも重力が加わる方向とは一致しない。
【0028】
本明細書で「x方向に延びる」とは、例えば、x方向、y方向、及びz方向の各寸法のうち最小の寸法よりもx方向の寸法が大きいことを意味する。他の方向に延びる場合も同様である。本明細書で「接続」とは、物理的に接続される場合に限定されず、電気的に接続される場合も含む。本明細書で「面する」とは、2つの部材が互いに接する場合に限定されず、2つの部材の間に別の部材が存在する場合も含む。
【0029】
「第1実施形態」
図1は、第1実施形態にかかる磁性素子100の斜視図である。
図2は、第1実施形態にかかる磁性素子100の断面図である。
図2は、磁性素子100を磁気抵抗効果素子10のx方向の中心を通るyz平面で切断した断面図である。
図3は、第1実施形態にかかる磁性素子100の平面図である。
【0030】
磁性素子100は、例えば、磁気抵抗効果素子10と第1配線20と第1磁性体31と第2磁性体32と絶縁層41、42、43を有する。磁性素子100は、スピン軌道トルク(SOT)を利用して磁化回転を行う素子であり、スピン軌道トルク型磁化回転素子、スピン軌道トルク型磁化反転素子、スピン軌道トルク型磁気抵抗効果素子と言われる場合がある。磁性素子100は、磁化の配向方向に応じて情報を記憶する記憶素子として機能する場合もある。
【0031】
磁気抵抗効果素子10は、第1配線20と面する。磁気抵抗効果素子10は、例えば、z方向からの平面視が円形の柱状体である。磁気抵抗効果素子10のz方向からの平面視形状は円形に問わず、例えば楕円形、矩形等でもよい。磁気抵抗効果素子10の外周長又は直径は、例えば、第1配線20から離れるに従い大きくなる。磁気抵抗効果素子10の側面10sは、例えば、z方向に対してx方向又はy方向に傾斜する。
【0032】
磁気抵抗効果素子10は、第1強磁性層1と第2強磁性層2と非磁性層3とを有する。第1強磁性層1は、第1配線20に面する。第2強磁性層2は、例えば、後述する電極60に面する(
図14参照)。非磁性層3は、第1強磁性層1と第2強磁性層2とに挟まれる。
【0033】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、それぞれ磁化を有する。第2強磁性層2の磁化は、所定の外力が印加された際に第1強磁性層1の磁化よりも配向方向が変化しにくい。第1強磁性層1は磁化自由層と言われ、第2強磁性層2は磁化固定層、磁化参照層と言われることがある。磁気抵抗効果素子10は、非磁性層3を挟む第1強磁性層1の磁化と第2強磁性層2との磁化の相対角の違いに応じて抵抗値が変化する。第1強磁性層1及び第2強磁性層2の磁化は、例えば、z方向又はxy面内のいずれかの方向に配向する。
【0034】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、強磁性体を含む。強磁性体は、例えば、Cr、Mn、Co、Fe及びNiからなる群から選択される金属、これらの金属を1種以上含む合金、これらの金属とB、C、及びNの少なくとも1種以上の元素とが含まれる合金等である。強磁性体は、例えば、Co−Fe、Co−Fe−B、Ni−Fe、Co−Ho合金、Sm−Fe合金、Fe−Pt合金、Co−Pt合金、CoCrPt合金である。
【0035】
第1強磁性層1及び第2強磁性層2は、ホイスラー合金を含んでもよい。ホイスラー合金は、XYZまたはX
2YZの化学組成をもつ金属間化合物を含む。Xは周期表上でCo、Fe、Ni、あるいはCu族の遷移金属元素または貴金属元素であり、YはMn、V、CrあるいはTi族の遷移金属又はXの元素種であり、ZはIII族からV族の典型元素である。ホイスラー合金は、例えば、Co
2FeSi、Co
2FeGe、Co
2FeGa、Co
2MnSi、Co
2Mn
1−aFe
aAl
bSi
1−b、Co
2FeGe
1−cGa
c等である。ホイスラー合金は高いスピン分極率を有する。
【0036】
磁気抵抗効果素子10は、第2強磁性層2の非磁性層3と反対側の面に、スペーサ層を介して反強磁性層を有してもよい。第2強磁性層2、スペーサ層、反強磁性層は、シンセティック反強磁性構造(SAF構造)となる。シンセティック反強磁性構造は、非磁性層を挟む二つの磁性層からなる。第2強磁性層2と反強磁性層とが反強磁性カップリングするとことで、反強磁性層を有さない場合より第2強磁性層2の保磁力が大きくなる。反強磁性層は、例えば、IrMn,PtMn等である。スペーサ層は、例えば、Ru、Ir、Rhからなる群から選択される少なくとも一つを含む。
【0037】
磁気抵抗効果素子10は、第1強磁性層1、第2強磁性層2及び非磁性層3以外の層を有してもよい。
【0038】
第1配線20は、x方向に延びる。第1配線20は、例えば、z方向から見てx方向の長さがy方向より長い。第1配線20は、磁気抵抗効果素子10の第1強磁性層1に面する。第1配線20の少なくとも一部は、z方向において、非磁性層3と共に第1強磁性層1を挟む。
【0039】
第1配線20は、電流Iが流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる機能を有する金属、合金、金属間化合物、金属硼化物、金属炭化物、金属珪化物、金属燐化物のいずれかを含む。第1配線20は、スピン軌道トルク配線と言われる場合がある。
【0040】
スピンホール効果は、電流を流した場合にスピン軌道相互作用に基づき、電流の流れ方向と直交する方向にスピン流が誘起される現象である。スピンホール効果は、運動(移動)する電荷(電子)が運動(移動)方向を曲げられる点で、通常のホール効果と共通する。通常のホール効果は、磁場中で運動する荷電粒子の運動方向がローレンツ力によって曲げられる。これに対し、スピンホール効果は磁場が存在しなくても、電子が移動するだけ(電流が流れるだけ)でスピンの移動方向が曲げられる。
【0041】
第1配線20は、電流Iが流れる際のスピンホール効果によってスピン流を発生させる。第1配線20に電流Iが流れると、一方向に配向した第1スピンS1と、第1スピンS1と反対方向に配向した第2スピンS2とが、それぞれ電流Iの流れ方向と直交する方向にスピンホール効果によって曲げられる。例えば、+y方向に配向した第1スピンS1が−z方向に曲げられ、−y方向に配向した第2スピンS2が+z方向に曲げられる。
【0042】
非磁性体(強磁性体ではない材料)は、スピンホール効果により生じる第1スピンS1の電子数と第2スピンS2の電子数とが等しい。すなわち、−z方向に向かう第1スピンS1の電子数と+z方向に向かう第2スピンS2の電子数とは等しい。第1スピンS1と第2スピンS2は、スピンの偏在を解消する方向に流れる。第1スピンS1及び第2スピンS2のz方向への移動において、電荷の流れは互いに相殺されるため、電流量はゼロとなる。電流を伴わないスピン流は特に純スピン流と呼ばれる。
【0043】
第1スピンS1の電子の流れをJ
↑、第2スピンS2の電子の流れをJ
↓、スピン流をJ
Sと表すと、J
S=J
↑−J
↓で定義される。スピン流J
Sは、z方向に生じる。第1スピンS1は、第1配線20に面する第1強磁性層1に注入される。第1配線20は、例えば、第1強磁性層1の磁化を反転できるだけのSOTを第1強磁性層1の磁化に与える。
【0044】
第1配線20は、配線部21と拡幅部22とを有する。配線部21は、第1配線20の一部である。配線部21は、x方向に延びる。配線部21は、例えば、二つのビア配線Cw(
図14参照)を接続する。配線部21のy方向の側面は、例えば、z方向に対して傾斜する。
【0045】
拡幅部22は、例えば、z方向において、配線部21と第1強磁性層1との間に位置する。拡幅部22は、z方向から見て、y方向の幅w22が配線部21の幅w21より広い。配線部21のy方向の幅w21は、x方向の位置によらず略一定である。拡幅部22は、z方向からの平面視で、y方向に突出している。拡幅部22は、例えば、磁気抵抗効果素子10とz方向に重なる位置にある。拡幅部22は、z方向からの平面視で、配線部21と重畳しない第1領域22Aと、配線部21と重畳する第2領域22Bと、を有する。配線部21は、第2領域22Bに面する。
【0046】
配線部21のy方向の中心位置21cは、第1強磁性層1のy方向の中心位置1cと異なる。中心位置21c、1cは、z方向からの平面視における幅の中心である。また配線部21の重心と第1強磁性層1の重心とは、y方向に異なる位置にある。第1配線20は、y方向に非対称である。第1配線20の厚みは、y方向の位置によって異なる。第1配線20の厚みは、第1領域22Aと第2領域22Bとのy方向の境界位置で、大きく変化する。第1配線20の+z方向の第1面は、第1領域22Aと第2領域22Bとのy方向の境界位置に段差(変曲点)を有する。
【0047】
第1配線20の主成分は、非磁性の重金属であることが好ましい。重金属は、イットリウム(Y)以上の比重を有する金属を意味する。非磁性の重金属は、最外殻にd電子又はf電子を有する原子番号39以上の原子番号が大きい非磁性金属であることが好ましい。第1配線20は、例えば、Hf、Ta、Wである。非磁性の重金属は、その他の金属よりスピン軌道相互作用が強く生じる。スピンホール効果はスピン軌道相互作用により生じ、第1配線20内にスピンが偏在しやすく、スピン流J
Sが発生しやすくなる。
【0048】
第1配線20は、磁性金属を含んでもよい。磁性金属は、強磁性金属又は反強磁性金属である。非磁性体に含まれる微量な磁性金属は、スピンの散乱因子となる。微量とは、例えば、第1配線20を構成する元素の総モル比の3%以下である。スピンが磁性金属により散乱するとスピン軌道相互作用が増強され、電流に対するスピン流の生成効率が高くなる。
【0049】
第1配線20は、トポロジカル絶縁体を含んでもよい。トポロジカル絶縁体は、物質内部が絶縁体又は高抵抗体であるが、その表面にスピン偏極した金属状態が生じている物質である。トポロジカル絶縁体は、スピン軌道相互作用により内部磁場が生じる。トポロジカル絶縁体は、外部磁場が無くてもスピン軌道相互作用の効果で新たなトポロジカル相が発現する。トポロジカル絶縁体は、強いスピン軌道相互作用とエッジにおける反転対称性の破れにより純スピン流を高効率に生成できる。
【0050】
トポロジカル絶縁体は、例えば、SnTe、Bi
1.5Sb
0.5Te
1.7Se
1.3、TlBiSe
2、Bi
2Te
3、Bi
1−xSb
x、(Bi
1−xSb
x)
2Te
3などである。トポロジカル絶縁体は、高効率にスピン流を生成することが可能である。
【0051】
配線部21と拡幅部22とは、異なる材料を含んでもよい。拡幅部22のスピン抵抗は、例えば、配線部21のスピン抵抗以下である。スピン抵抗は、スピン流の流れやすさ(スピン緩和のし難さ)を定量的に示す量である。スピン抵抗Rsは、Rs=ρλ/Aで定義される。λは材料のスピン拡散長、ρは材料の電気抵抗率、Aは材料の断面積である。非磁性体では、断面積Aが等しい場合、スピン抵抗率であるρλの値によってスピン抵抗の大きさが決まる。
【0052】
スピン抵抗が異なる物質の界面では、スピン流の反射(戻り)が生じる。すなわちスピン抵抗の小さい材料からスピン抵抗の大きい材料へはスピン流の一部しか注入されない。拡幅部22のスピン抵抗が配線部21のスピン抵抗より小さいと、第1強磁性層1にスピンを効率的に供給できる。
【0053】
また例えば、配線部21と拡幅部22とは、スピンホール角の極性が異なる。「スピンホール角」は、スピンホール効果の強さの指標の一つであり、第1配線20に沿って流す電流に対して発生するスピン流の変換効率を示す。スピンホール角の極性が異なると、第1スピンS1及び第2スピンS2のz方向における移動方向が反対となる。スピンホール角の極性の異なる物質を接触させることで、第1強磁性層1へスピンを注入する効率を高めることができる。
【0054】
第1磁性体31及び第2磁性体32は、第1強磁性層1をx方向とy方向とのうち少なくとも一方に挟む位置にある。第1磁性体31及び第2磁性体32は、磁性体を含む。第1磁性体31及び第2磁性体32は、例えば永久磁石であり、例えばCo−Cr−Pt、Nd−Fe−B、Sm−Co、Ho−Fe、Sm−Feの合金又はフェライト等の強磁性酸化物である。第1磁性体31と第2磁性体32との間には、磁場が生じる。第1磁性体31及び第2磁性体32がx方向に第1強磁性層1を挟む場合、第1磁性体31及び第2磁性体32は第1強磁性層1のx方向に磁場を印加する。第1磁性体31及び第2磁性体32がy方向に第1強磁性層1を挟む場合、第1磁性体31及び第2磁性体32第1強磁性層1のy方向に磁場を印加する。
【0055】
第1磁性体31及び第2磁性体32は、第1強磁性層1に磁場を印加する磁場印加機構の一例である。磁場印加機構は、第1強磁性層1に磁場を印加できればよく、第1磁性体31及び第2磁性体32に限られない。例えば、磁場印加機構は、印加磁場強度を可変制御できる電磁石型、ストリップライン型でもよい。また第1強磁性層1には、磁場に変えて電場を印加してもよい。
【0056】
絶縁層41,42,43は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。絶縁層41,42,43は、例えば、酸化シリコン(SiO
x)、窒化シリコン(SiN
x)、炭化シリコン(SiC)、窒化クロム、炭窒化シリコン(SiCN)、酸窒化シリコン(SiON)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化ジルコニウム(ZrO
x)等である。
【0057】
次いで、磁性素子100の製造方法について説明する。磁性素子100の製造方法は、積層膜の一部に溶解可能なマスク層を形成する工程と、マスク層を介して積層膜を加工し、磁気抵抗効果素子を形成する工程と、マスク層及び磁気抵抗効果素子の周囲に絶縁層を形成する工程と、マスク層を除去し、マスク層が除去された部分の一部に導電層を形成する工程と、を有する。
【0058】
まず
図4に示すように、強磁性層80、非磁性層81、強磁性層82、導電層83を順に積層し、積層体を積層する。各層の成膜は、例えばスパッタリング法、化学気相成長法等が用いられる。強磁性層80は第2強磁性層2の基となる層であり、非磁性層81は非磁性層3の基となる層であり、強磁性層82は第1強磁性層1の基となる層であり、導電層83は第1配線20の拡幅部22の基となる層である。各層の材料は、形成後の膜の材料と同様である。
【0059】
次いで、積層体の一部に、第1マスク84と第2マスク85とを順に積層する。各層の成膜は、例えばスパッタリング法、化学気相成長法等が用いられる。第1マスク84は、薬液に溶解可能である。第1マスク84は、例えば、Si、SiO
2、Al
2O
3、レジストである。第2マスク85は、例えば、Al、Cu、Ta、Ti、Zr、NiCr、窒化物(例えばTiN、TaN、SiN)、酸化物(例えばSiO
2)である。
【0060】
次いで、
図5に示すように、第1マスク84及び第2マスク85を介して積層体を加工する。積層体は、例えば、イオンミリング等で加工する。第2マスク85は、例えば、積層体の加工と同時に除去される。第2マスク85の一部は、残存してもよい。第2マスク85が残存する場合は、残存した第2マスク85は、例えば、化学機械研磨(CMP)により除去される。積層体は加工により磁気抵抗効果素子10となる。第1マスク84及び第2マスク85を用いることで、磁気抵抗効果素子10のxy面内のサイズが微細化する。磁気抵抗効果素子10及び拡幅部22は、z方向からの平面視で、例えば、円形、楕円形に加工される。
【0061】
次いで、
図5に示すように、磁気抵抗効果素子10、拡幅部22及び第1マスク84の周囲に、絶縁層41、磁性層30、絶縁層42を順に積層する。磁性層30は、第1磁性体31及び第2磁性体32となる。第1磁性体31及び第2磁性体32は、絶縁層41により磁気抵抗効果素子10と電気的に絶縁される。
【0062】
次いで、
図6に示すように、第1マスク84を溶解し除去する。第1マスク84は、第1マスク84の材料に応じて薬液を選択する。第1マスク84が除去されることで、絶縁層41及び拡幅部22により囲まれる凹部が形成される。
【0063】
次いで、
図6に示すように、凹部の一部が露出するように、レジスト86を形成する。次いで、レジスト86を介して導電膜を形成する。レジスト86が形成されていない部分に成膜された導電膜は、配線部21となる。配線部21のz方向の表面は、例えば、レジスト86によるシャドー効果により傾斜する。そして、レジスト86を除去した後に、絶縁層43で配線部21を覆うことで、
図2に示す磁性素子100が得られる。
【0064】
また
図7に示すように、第1マスク84を溶解し凹部を形成した後、z方向に対して傾斜した斜め方向からスパッタリングをし、凹部に導電膜211を形成してもよい。斜め方向からスパッタリングすることで、凹部の一部に導電膜211が形成される。
【0065】
次いで、
図8に示すように、導電膜211と重なる位置にx方向に延びる導電膜212を積層する。導電膜211,212は、第1配線20の配線部21となる。そして、絶縁層43で配線部21を覆うことで、
図2に示す磁性素子100が得られる。
【0066】
次いで、磁性素子100の機能について説明する。磁性素子100は、第1強磁性層1の磁化を容易に反転できる。また磁性素子100は、外部磁場を印加しなくても(無磁場環境下でも)、安定的に磁化反転を行うことができる。
【0067】
磁性素子100は、配線部21のy方向の中心位置と第1強磁性層1のy方向の中心位置とが異なるため、第1強磁性層1に注入されるスピンの強度のy方向の対称性が崩れている。第1強磁性層1に注入されるスピンの強度のy方向の対称性が崩れていると、第1強磁性層1の磁化に磁化反転のきっかけを与えることができ、磁化反転が容易になる。その結果、無磁場下でも磁化反転が可能になる。
【0068】
第1配線20に電流Iを印加すると、第1強磁性層1にスピンが注入される。注入されたスピンは、第1強磁性層1の磁化にスピン軌道トルクを与え、磁化反転が生じる。
【0069】
第1配線20から第1強磁性層1に注入されるスピンの向きはy方向に配向している。第1強磁性層1の磁化の向きがy方向に向いていない場合、注入されるスピンの向きと第1強磁性層1の磁化の向きが直交する。注入されたスピンは、第1強磁性層1の磁化にスピン軌道トルクを与える。スピン軌道トルクは、第1強磁性層1の磁化を初期状態から90°傾けるように作用する。
【0070】
第1強磁性層1に注入されるスピンの強度がy方向のいずれの位置でも同じ場合、磁化が90°傾いた状態から反転する確率と、初期状態に戻る確率は、理論的にはそれぞれ50%となる。
【0071】
これに対し、第1強磁性層1のy方向の各位置で第1強磁性層1に注入されるスピンの強度が異なる場合、第1強磁性層1の磁化が受けるスピン軌道トルクの大きさはy方向の各位置で異なる。すなわち、磁化が受ける力のバランスがy方向に乱れる。
【0072】
磁化は、歳差運動を起こしながら磁化反転する。磁化の歳差運動は、スピン軌道トルクの影響を受けて増幅される。第1強磁性層1のy方向の各位置で磁化が受けるスピン軌道トルクの大きさが異なると歳差運動が乱される。歳差運動が乱れると、磁化が90°傾いた状態から反転する確率と、元の状態に戻る確率とのバランスが乱れる。その結果、磁化は一方の状態を選択しやすくなり、磁化反転が安定化する。
【0073】
磁化が受けるy方向の力のバランスは、外部磁場の印加により乱すこともできるが、磁性素子100は構造的にy方向の力のバランスを乱している。
【0074】
また第1配線20を流れる電流Iは、配線部21から拡幅部22に至る際に、急激にy方向に広がる。その結果、拡幅部22において電流はy方向の成分も有する。電流がy方向に流れると、第1強磁性層1にx方向に配向したスピンが注入される。その結果、第1強磁性層1の磁化が受けるスピン軌道トルクのバランスがxy面内でより乱され、第1強磁性層1の磁化反転がより容易になる。
【0075】
以上、第1実施形態にかかる磁性素子100の一例について詳述したが、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0076】
(第1変形例)
図9は、第1変形例にかかる磁性素子101の断面図である。
図9は、磁性素子101を磁気抵抗効果素子10のx方向の中心を通るyz平面で切断した断面図である。第1変形例にかかる磁性素子101は、キャップ層50を有する点が、
図2に示す磁性素子100と異なる。その他の構成は、磁性素子100と同様であり、同様の構成については同様の符号を付し、説明を省く。
【0077】
キャップ層50は、拡幅部22の一部に面する。キャップ層50は、第1領域22Aの第1面22Aaに面する。一方で、キャップ層50は、第2領域22Bの第1面22Baに、面していない。第1領域22Aは、z方向から見て、拡幅部22の配線部21と重ならない部分であり、第2領域22Bは拡幅部22の配線部21と重なる部分である。第1面22Aa,22Baは、拡幅部22の磁気抵抗効果素子10から遠い側の面である。
【0078】
キャップ層50は、拡幅部22を構成する元素を含む酸化物、窒化物、硫化物、フッ化物のいずれかを含む。キャップ層50は、Ta
2O
5、W
2O
3、HfO
2である。キャップ層50は、例えば、拡幅部22の一部が自然酸化したものでもよい。
【0079】
また第1領域22Aから第1強磁性層1に注入されるスピンの量は、第2領域22Bから第1強磁性層1に注入されるスピンの量より少ない。第2領域22Bは、配線部21と接し多くの電流が流れるためである。キャップ層50は、第1領域22Aの間に界面を形成し、この界面によるラシュバ効果によって、第1領域22Aのスピン流を増大させるという効果を持つ。また、キャップ層50は絶縁体であることが好ましく、ラシュバ効果によって発生したスピン流がキャップ層50に流入しにくく、主に第1領域22Aのスピン流を増大させるという効果を持つ。相対的にスピンを注入しにくい第1領域22Aからのスピンの供給量を増やすことで、第1強磁性層1の磁化反転を容易に行うことができる。
【0080】
またキャップ層は、配線部21の+z方向の表面に形成されてもよい。この場合、第1領域22Aに面するキャップ層50と、配線部21に面するキャップ層のz方向の高さ位置が異なる。第1領域22Aに面するキャップ層50は、配線部21に面するキャップ層より第1強磁性層1に近い位置にある。キャップ層は、界面の効果により結晶歪みを解消するため、キャップ層と他の層との距離が近いほど、結晶性を高める効果が高い。
【0081】
(第2変形例)
図10は、第2変形例にかかる磁性素子102の斜視図である。第2変形例にかかる磁性素子102は、配線部23がx方向に離間された2つの部分からなる点が、
図1に示す磁性素子100と異なる。その他の構成は、磁性素子100と同様であり、同様の構成については同様の符号を付し、説明を省く。
【0082】
磁性素子102は、磁気抵抗効果素子10と第1配線26とを備える。第1配線26は、拡幅部22と配線部23とを有する。配線部23は、x方向に延びる。配線部23は、第1部分231と第2部分232とを有する。第1部分231と第2部分232とは、z方向から見て、拡幅部22と重なる位置でx方向に互いに離間している。配線部23は、第1部分231と第2部分232とに分断されているともいえる。第1部分231及び第2部分232は、拡幅部22と接続されている。
【0083】
第1配線26をx方向に流れる電流は、第1部分231、拡幅部22、第2部分232の順、又は、第2部分232、拡幅部22、第1部分231の順に流れる。拡幅部22のz方向の厚みは、例えば、第1部分231及び第2部分232の厚みより薄い。拡幅部22における電流密度は、第1部分231及び第2部分232における電流密度より大きい。第1強磁性層1に面する位置で、第1部分231と第2部分232とが離間することで、拡幅部22に流れる電流の電流密度を高めることができる。第1強磁性層1の磁化は、所定の電流密度を超えた時点で、十分なトルクが与えられ、磁化反転する。拡幅部22の電流密度を高めることで、第1強磁性層1の磁化反転を容易に行うことができる。
【0084】
(第3変形例)
図11は、第3変形例にかかる磁性素子103の断面図である。
図11は、磁性素子103を磁気抵抗効果素子10のx方向の中心を通るyz平面で切断した断面図である。第3変形例にかかる磁性素子103は、拡幅部25と配線部24との位置関係が、
図2に示す磁性素子100と異なる。その他の構成は、磁性素子100と同様であり、同様の構成については同様の符号を付し、説明を省く。
【0085】
磁性素子103は、磁気抵抗効果素子10と第1配線27とを備える。第1配線27は、配線部24と拡幅部25とを有する。配線部24は、x方向に延びる。拡幅部25は、z方向から見て、配線部24よりy方向に突出している。拡幅部25は、z方向に配線部24と重畳しない第1領域25Aと、z方向に配線部24と重畳する第2領域25Bを含む。第1領域25Aの第1面25Aaは、第2領域25Bの第1面25Baより+z方向に位置する。第2領域25Bの厚みh2は、第1領域25Aの厚みh1より薄い。拡幅部25は、第1領域25Aと第2領域25Bとの境界に段差を有する。段差は、例えば、
図6における配線部21を積層する前に、拡幅部22の表面酸化膜を除去する際に形成される。
【0086】
配線部24は、第2領域25Bに面する。配線部24と第1強磁性層1との距離(第2領域25Bの厚みh2)が近づくほど、配線部24から第1強磁性層1に供給されるスピンの量が増加する。
【0087】
(第4変形例)
図12は、第4変形例にかかる磁性素子104の断面図である。第4変形例にかかる磁性素子104は、非磁性層3及び第2強磁性層2を有さない点が、
図1に示す磁性素子100と異なる。その他の構成は、磁性素子100と同様であり、同様の構成については同様の符号を付し、説明を省く。
【0088】
磁性素子104は、単独で、異方性磁気センサ、磁気カー効果又は磁気ファラデー効果を利用した光学素子として利用できる。
【0089】
第4変形例にかかる磁性素子104は、非磁性層3及び第2強磁性層2を除いただけであり、磁性素子100と同様に、データの書き込み効率を高めることができる。
【0090】
第1実施形態にかかる磁性素子について、いくつかの例を示し、具体的に説明した。これらの例は磁性素子の一例であり、磁性素子はこれらの例に限定されるものではない。例えば、第1変形例から第4変形例の特徴的な構成を組み合わせてもよい。
【0091】
「第2実施形態」
第1実施形態にかかる磁性素子100、101、102、103、104は、例えば、磁気記録アレイとして用いることができる。
図13は、第2実施形態にかかる磁気記録アレイ300の構成図である。
【0092】
磁気記録アレイ300は、複数の磁性素子100と、複数の書き込み配線Wp1〜Wpnと、複数の共通配線Cm1〜Cmnと、複数の読み出し配線Rp1〜Rpnと、複数の第1スイッチング素子110と、複数の第2スイッチング素子120と、複数の第3スイッチング素子130とを備える。磁気記録アレイ300は、例えば、磁気メモリ等に利用できる。
【0093】
書き込み配線Wp1〜Wpnは、電源と1つ以上の磁性素子100とを電気的に接続する。共通配線Cm1〜Cmnは、データの書き込み時及び読み出し時の両方で用いられる配線である。共通配線Cm1〜Cmnは、基準電位と1つ以上の磁性素子100とを電気的に接続する。基準電位は、例えば、グラウンドである。共通配線Cm1〜Cmnは、複数の磁性素子100のそれぞれに設けられてもよいし、複数の磁性素子100に亘って設けられてもよい。読み出し配線Rp1〜Rpnは、電源と1つ以上の磁性素子100とを電気的に接続する。電源は、使用時に磁気記録アレイ300に接続される。
【0094】
図13に示す第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120、第3スイッチング素子130は、複数の磁性素子100のそれぞれに接続されている。第1スイッチング素子110は、磁性素子100のそれぞれと書き込み配線Wp1〜Wpnとの間に接続されている。第2スイッチング素子120は、磁性素子100のそれぞれと共通配線Cm1〜Cmnとの間に接続されている。第3スイッチング素子130は、磁性素子100のそれぞれと読み出し配線Rp1〜Rpnとの間に接続されている。
【0095】
第1スイッチング素子110及び第2スイッチング素子120をONにすると、所定の磁性素子100に接続された書き込み配線Wp1〜Wpnと共通配線Cm1〜Cmnとの間に書き込み電流が流れる。第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130をONにすると、所定の磁性素子100に接続された共通配線Cm1〜Cmnと読み出し配線Rp1〜Rpnとの間に読み出し電流が流れる。
【0096】
第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130は、電流の流れを制御する素子である。第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120及び第3スイッチング素子130は、例えば、トランジスタ、オボニック閾値スイッチ(OTS:Ovonic Threshold Switch)のように結晶層の相変化を利用した素子、金属絶縁体転移(MIT)スイッチのようにバンド構造の変化を利用した素子、ツェナーダイオード及びアバランシェダイオードのように降伏電圧を利用した素子、原子位置の変化に伴い伝導性が変化する素子である。
【0097】
第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120、第3スイッチング素子130のいずれかは、同じ配線に接続された磁性素子100で、共用してもよい。例えば、第1スイッチング素子110を共有する場合は、書き込み配線Wp1〜Wpnの上流に一つの第1スイッチング素子110を設ける。例えば、第2スイッチング素子120を共有する場合は、共通配線Cm1〜Cmnの上流に一つの第2スイッチング素子120を設ける。例えば、第3スイッチング素子130を共有する場合は、読み出し配線Rp1〜Rpnの上流に一つの第3スイッチング素子130を設ける。
【0098】
図14は、磁気記録アレイ300を構成する半導体装置200の断面図である。
図14は、磁性素子100を後述する第1配線20のy方向の幅の中心を通るxz平面で切断した断面である。半導体装置200は、磁性素子100と、磁性素子100に接続された複数のスイッチング素子(第1スイッチング素子110、第2スイッチング素子120、第3スイッチング素子130)とを有する。第3スイッチング素子130は、
図14に示す断面上には存在せず、例えば紙面奥行き方向(−y方向)に位置する。第3スイッチング素子130は、y方向に延びる電極60と電気的に接続される。電極60は導体であり、例えばCu、Alである。
【0099】
図14に示す第1スイッチング素子110及び第2スイッチング素子120は、トランジスタTrである。トランジスタTrは、ゲート電極Gと、ゲート絶縁膜GIと、基板Subに形成されたソース領域S及びドレイン領域Dと、を有する。基板Subは、例えば、半導体基板である。
【0100】
トランジスタTrのそれぞれと磁性素子100との間は、複数のビア配線Cwを介して、電気的に接続されている。ビア配線Cwは、導電性を有する材料を含む。ビア配線Cwは、z方向に延びる。
【0101】
磁性素子100とトランジスタTrとは、ビア配線Cwを除いて、絶縁層40によって電気的に分離されている。絶縁層40は、多層配線の配線間や素子間を絶縁する絶縁層である。絶縁層41、42、43は、絶縁層40の一部である。
【0102】
第2実施形態にかかる磁気記録アレイ300は、第1実施形態にかかる磁性素子100を含む。それぞれの磁性素子100は磁化反転しやすく、反転電流密度を小さくできる。その結果、磁気記録アレイ300の消費電力を低減できる。磁性素子100は、例えば、変形例にかかる他の磁性素子としてもよい。
【0103】
「第3実施形態」
第1実施形態にかかる磁性素子100、101、102、103、104は、例えば、リザボア素子として用いることができる。リザボア素子は、ニューロモルフィック素子の一つであるリザボアコンピュータに用いられる素子である。ニューロモルフィック素子は、ニューラルネットワークにより人間の脳を模倣した素子である。ニューロモルフィック素子は、例えば、認識機として用いられる。認識機は、例えば、入力された画像を認識(画像認識)して分類する。
【0104】
図15は、第3実施形態にかかるニューロモルフィック素子500の概念図である。ニューロモルフィック素子500は、入力部401とリザボア素子400と出力部402とを有する。入力部401及び出力部402は、リザボア素子400に接続されている。
【0105】
ニューロモルフィック素子500は、入力部401から入力された信号を、リザボア素子400で圧縮し、出力部402で圧縮された信号に重み付け(学習)を行い、外部に信号を出力する。
【0106】
入力部401は、外部から入力された信号をリザボア素子400に伝える。入力部401は、例えば、複数のセンサを含む。複数のセンサは、ニューロモルフィック素子500の外部の情報を感知し、リザボア素子400に情報を信号として入力する。信号は、外部の情報の変化を経時的に連続してリザボア素子400に入力してもよいし、所定のタイムドメインで分割してリザボア素子400に入力してもよい。
【0107】
リザボア素子400は、複数のチップCpを有する。複数のチップCpは、相互作用する。リザボア素子400に入力される信号は、多数の情報をもつ。信号がもつ多数の情報は、複数のチップCpが相互作用することで、必要な情報に圧縮される。圧縮された信号は、出力部402に伝わる。リザボア素子400は、学習をしない。すなわち、複数のチップCpはそれぞれ相互作用するだけであり、複数のチップCpの間を伝達する信号に重み付けは行わない。
【0108】
出力部402は、リザボア素子400のチップCpから信号を受け取る。出力部402は、学習する。出力部402は、各チップCpからの信号ごとに、学習により重み付けをする。出力部402は、例えば、不揮発性メモリを含む。不揮発性メモリは、例えば、磁気抵抗効果素子である。出力部402は、ニューロモルフィック素子500の外部に信号を出力する。
【0109】
ニューロモルフィック素子500は、リザボア素子400でデータを圧縮し、出力部402でデータに重み付けをすることで、問題の正答率を高める。
【0110】
またニューロモルフィック素子500は、消費電力に優れる。ニューロモルフィック素子500において学習は、出力部402のみで行われる。学習は、各チップCpから伝わる信号の重みを調整することである。信号の重みは、信号の重要度に応じて決定される。信号の重みを随時調整すると、チップCp間の回路がアクティブになる。アクティブな回路が多いほど、ニューロモルフィック素子500の消費電力は大きくなる。ニューロモルフィック素子500は、最終段階の出力部402のみ学習すればよく、消費電力に優れる。
【0111】
図16は、第3実施形態にかかるリザボア素子の斜視図である。リザボア素子400は、ビア配線Cwと第1配線20と第1強磁性層1とスピン伝導層410とを備える。
【0112】
スピン伝導層410は、例えば、複数の第1強磁性層1の間を繋ぐ。スピン伝導層410は、例えば、非磁性の導電体からなる。スピン伝導層410は、第1強磁性層1から染みだしたスピン流を伝播する。
【0113】
スピン伝導層410は、例えば、金属又は半導体である。スピン伝導層410に用いられる金属は、例えば、Cu、Ag、Al、Mg、Znからなる群から選択されるいずれかの元素を含む金属又は合金である。スピン伝導層410に用いられる半導体は、例えば、Si、Ge、GaAs、Cからなる群から選択されるいずれかの元素の単体又は合金である。例えば、Si、Ge、Si−Ge化合物、GaAs、グラフェン等が挙げられる。
【0114】
第1配線20に電流Iが流れると、第1強磁性層1にスピンが注入され、第1強磁性層1の磁化にスピン軌道トルクが加わる。第1配線20に高周波電流を印加すると、第1強磁性層1に注入されるスピンの向きが変化し、第1強磁性層1の磁化は振動する。
【0115】
スピン流は、第1強磁性層1からスピン伝導層410に至る。第1強磁性層1の磁化は振動しているため、スピン伝導層410を流れるスピン流も磁化に対応して振動する。第1強磁性層1とスピン伝導層410との界面に蓄積されたスピンは、スピン流としてスピン伝導層410内を伝播する。
【0116】
二つの第1強磁性層1の磁化がそれぞれ生み出すスピン流は、スピン伝導層410内で合流し、干渉する。スピン流の干渉は、それぞれの第1強磁性層1の磁化の振動に影響を及ぼし、二つの第1強磁性層1の磁化の振動が共振する。二つの磁化の振動の位相は、同期する又は半波長(π)ずれる。
【0117】
第1配線20への電流Iの印加が止まると、第1強磁性層1磁化の振動は止まる。共振後の第1強磁性層1の磁化は、平行又は反平行となる。2つの振動の位相が同期した場合、二つの磁化の向きが揃い平行となる。2つの振動の位相が半波長(π)ずれた場合は、2つの磁化の向きが逆向きになり、反平行となる。
【0118】
2つの第1強磁性層1の磁化が平行な場合は、リザボア素子400の抵抗値は反平行な場合より小さくなる。リザボア素子400は、例えば、リザボア素子400の抵抗値が大きい場合(2つの磁化が反平行な場合)に“1”、小さい場合(2つの磁化が平行な場合)に“0”の情報を出力する。
【0119】
第1配線20に入力される電流Iは、様々な情報を有する。例えば、電流Iの周波数、電流密度、電流量等である。一方で、リザボア素子400は、抵抗値として、“1”、 “0”の情報を出力する。すなわち、第1実施形態にかかるリザボア素子400は、複数の第1強磁性層1の磁化の振動をスピン流に変換して、スピン伝導層410内で干渉することで、情報を圧縮する。第1強磁性層1は、
図15におけるチップCpに対応する。
【0120】
第3実施形態にかかるニューロモルフィック素子500は、第1実施形態にかかる磁性素子100を含む。それぞれの磁性素子100は磁化反転しやすく、反転電流密度を小さくできる。その結果、ニューロモルフィック素子500の消費電力を低減できる。磁性素子100は、例えば、変形例にかかる他の磁性素子としてもよい。