特許第6973685号(P6973685)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機ビルテクノサービス株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000002
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000003
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000004
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000005
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000006
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000007
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000008
  • 特許6973685-エレベーターのロープの拘束具 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973685
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】エレベーターのロープの拘束具
(51)【国際特許分類】
   B66B 7/00 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   B66B7/00 K
【請求項の数】2
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2021-516718(P2021-516718)
(86)(22)【出願日】2020年12月2日
(86)【国際出願番号】JP2020044908
【審査請求日】2021年3月23日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】特許業務法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】明石 正雄
(72)【発明者】
【氏名】水谷 謙一郎
【審査官】 三宅 達
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−210332(JP,A)
【文献】 特開2014−098435(JP,A)
【文献】 特開2014−214788(JP,A)
【文献】 実公昭18−005617(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 7/00−7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の保持体に分離可能であり、シーブに巻き掛けられるエレベーターのロープにおいて前記シーブの一方側から垂れ下がる部分を前記一対の保持体の間に挟み込んで保持する第1保持部、および前記ロープにおいて前記シーブの他方側から垂れ下がる部分を前記一対の保持体の間に挟み込んで保持する第2保持部が設けられる保持具と、
前記一対の保持体を前記第1保持部および前記第2保持部の間において締結する締結具と、
を備え、
前記第1保持部および前記第2保持部の各々は、前記一対の保持体の各々に設けられた前記ロープに沿う保持溝であり、
前記第1保持部および前記第2保持部を結ぶ方向を左右方向として、前記一対の保持体の各々は、左右方向の両端において、互いに対向する面の左右方向の縁と直角をなす平坦な面を有する
エレベーターのロープの拘束具。
【請求項2】
前記締結具は、前記一対の保持体の各々からの分離を防ぐ分離防止部を有する
請求項1に記載のエレベーターのロープの拘束具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターのロープの拘束具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターの調速機ロープの取り換え用具の例を開示する。取り換え用具は、調速機ロープの一方側の端部を保持した状態でかごに留められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本特開平7−10417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の取り換え用具は、調速機ロープの一方側のみを保持する。このため、調速機ロープなどのエレベーターのロープの交換作業などの際に、ロープが巻き掛けられたシーブの両側において荷重のアンバランスが生じる場合に、ロープの他方側が自走してしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、シーブに巻き掛けられたエレベーターのロープの交換作業における自走を抑えられる拘束具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターのロープの拘束具は、一対の保持体に分離可能であり、シーブに巻き掛けられるエレベーターのロープにおいて前記シーブの一方側から垂れ下がる部分を前記一対の保持体の間に挟み込んで保持する第1保持部、および前記ロープにおいて前記シーブの他方側から垂れ下がる部分を前記一対の保持体の間に挟み込んで保持する第2保持部が設けられる保持具と、前記一対の保持体を前記第1保持部および前記第2保持部の間において締結する締結具と、を備え、前記第1保持部および前記第2保持部の各々は、前記一対の保持体の各々に設けられた前記ロープに沿う保持溝であり、前記第1保持部および前記第2保持部を結ぶ方向を左右方向として、前記一対の保持体の各々は、左右方向の両端において、互いに対向する面の左右方向の縁と直角をなす平坦な面を有する
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る拘束具によれば、シーブに巻き掛けられたエレベーターのロープの交換作業における自走が抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態1に係るエレベーターの構成図である。
図2】実施の形態1に係る拘束具の上面図である。
図3】実施の形態1に係る拘束具の側面図である。
図4】実施の形態1に係る拘束具を用いた調速機ロープの交換作業の例を示す図である。
図5】実施の形態1に係る拘束具を用いた調速機ロープの交換作業の例を示す図である。
図6】実施の形態1に係る拘束具を用いた調速機ロープの交換作業の例を示す図である。
図7】実施の形態1に係る拘束具を用いた調速機ロープの交換作業の例を示す図である。
図8】実施の形態1に係る拘束具を用いた調速機ロープの交換作業の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係るエレベーター1の構成図である。
【0011】
エレベーター1は、例えば複数の階床を有する建物に適用される。建物において、エレベーター1の昇降路2が設けられる。昇降路2は、複数の階床にわたる鉛直方向に長い空間である。この例において、昇降路2の上方に機械室3が設けられる。昇降路2の底部において、ピット4が設けられる。昇降路2において、一対のガイドレール5が設けられる。各々のガイドレール5は、鉛直方向に沿って互いに平行に配置される。図1において、一方のガイドレール5が示されている。エレベーター1は、巻上機6と、主ロープ7と、かご8と、釣合い錘9と、調速機10と、を備える。
【0012】
巻上機6は、例えば機械室3に配置される。巻上機6は、昇降路2の上部などに配置されてもよい。巻上機6は、モーター11と、駆動シーブ12と、を備える。モーター11は、駆動力を発生させる装置である。駆動シーブ12は、モーター11が発生させる駆動力によって回転するシーブである。
【0013】
主ロープ7は、駆動シーブ12に巻き掛けられる。主ロープ7は、駆動シーブ12の一方側においてかご8の荷重を支持する。主ロープ7は、駆動シーブ12の他方側において釣合い錘9の荷重を支持する。なお、かご8および釣合い錘9の荷重を主ロープ7によって支持するローピングの方式は、図1に示されるローピングの方式に限定されない。
【0014】
かご8は、昇降路2を鉛直方向に走行することでエレベーター1の利用者を複数の階床の間で輸送する装置である。かご8は、一対のガイドレール5の間に配置される。かご8は、巻上機6のモーター11が発生させる駆動力によって、ガイドレール5に案内されながら鉛直方向に走行する。かご8は、非常止め13を備える。非常止め13は、かご8の走行を強制的に停止する装置である。非常止め13は、例えばガイドレール5を挟み込むことなどによってかご8の走行を停止させる。
【0015】
釣合い錘9は、駆動シーブ12の両側にかかる荷重の釣合いをかご8との間でとる機器である。釣合い錘9は、巻上機6のモーター11が発生させる駆動力によって、昇降路2においてかご8の反対方向に走行する。
【0016】
調速機10は、調速機シーブ14と、調速機ロープ15と、張り車16と、取付け部17と、連結腕18と、把持装置19と、を備える。調速機シーブ14は、例えば機械室3などに配置される。調速機シーブ14は、例えば昇降路2などに配置される。調速機ロープ15は、調速機シーブ14および張り車16に巻き掛けられる環状のロープである。張り車16は、例えばピット4に配置される。張り車16は、例えば張り車16に取り付けられた錘20の重量などによって調速機ロープ15に張力を与えるシーブである。取付け部17は、調速機ロープ15をかご8に取り付ける部分である。取付け部17は、例えば調速機ロープ15の両端部を保持することで調速機ロープ15を環状にしてもよい。連結腕18は、調速機ロープ15およびかご8の非常止め13を連結する機器である。調速機ロープ15は、取付け部17によってかご8の走行に連動して移動する。このとき、調速機シーブ14は、調速機ロープ15の移動に連動して回転する。把持装置19は、調速機シーブ14の回転速度が基準の速度を超えるときに調速機ロープ15を把持する装置である。把持装置19が調速機ロープ15を把持すると、調速機ロープ15の移動が停止する。このとき、連結腕18を通じて非常止め13が作動することによって、かご8の走行が停止する。
【0017】
ここで、調速機ロープ15または主ロープ7などのエレベーター1のロープは、例えば損傷した場合または使用期間が耐用年数を超えた場合などに、新規のロープに交換される。ロープの交換作業において、調速機シーブ14または駆動シーブ12などのシーブの両側からロープの両端が垂れ下がる状態となることがある。このとき、シーブの両側においてロープが拘束されていない場合に、シーブの両側において荷重のアンバランスが生じると荷重の大きい側にシーブが回転する可能性がある。シーブの回転によって荷重のアンバランスがより大きくなると、ロープが自走してしまう可能性がある。このため、ロープの交換作業を行う作業員は、図1に図示されない拘束具21を用いて、シーブの両側においてロープの拘束を行う。ここで、ロープの拘束は、ロープの両側の相対的な位置関係を拘束するようなロープの拘束を指す。
【0018】
図2は、実施の形態1に係る拘束具21の上面図である。
【0019】
拘束具21は、保持具22と、ボルト23と、を備える。
【0020】
保持具22は、エレベーター1のロープを保持する器具である。この例の保持具22は、調速機ロープ15を保持する器具である。この例において、保持具22は、直方体状の形状である。この例において、保持具22は、左右対称な形状である。この例において、保持具22は、上下対称な形状である。保持具22の左右方向の幅は、例えば60mm程度の幅である。保持具22は、分離可能な2つの部品である前方保持体24aおよび後方保持体24bからなる。前方保持体24aおよび後方保持体24bは、一対の保持体の例である。この例の保持具22において、前方保持体24aおよび後方保持体24bは、互いに結合されていない。特に、この例の保持具22において、前方保持体24aおよび後方保持体24bの左右の端部は、例えばヒンジなどによって結合されていない。
【0021】
ボルト23は、前方保持体24aおよび後方保持体24bを締結する器具である。ボルト23は、締結具の例である。ボルト23は、頭部23aおよび軸部23bを有する。ボルト23において、軸部23bに雄ネジが切られている。この例のボルト23の頭部23aにおいて、図2に図示されない十字状の溝が設けられている。ボルト23は、例えば十字状の溝に噛み合うネジ回しなどによって締め回される。
【0022】
前方保持体24aは、保持具22の前方側をなす部分である。前方保持体24aにおいて、中心部を前後方向に貫く中心孔25aが設けられる。中心孔25aの内径は、ボルト23の軸部23bの外径より大きい。中心孔25aの直径は、ボルト23の頭部23aの外径より小さい。前方保持体24aにおいて、後面に一対の保持溝26aが設けられる。各々の保持溝26aは、上下方向に沿うように上面から下面に至る半円形状の溝である。各々の保持溝26aの幅は、調速機ロープ15の直径に合わせた幅である。各々の保持溝26aの深さは、調速機ロープ15の半径に合わせた深さである。各々の保持溝26aの幅および深さは、例えば締め代などの範囲で調速機ロープ15の直径または半径と異なっていてもよい。一方の保持溝26aは、中心孔25aの左側に設けられる。他方の保持溝26aは、中心孔25aの右側に設けられる。この例の前方保持体24aにおいて、一対の保持溝26aの他に溝は設けられていない。
【0023】
後方保持体24bは、保持具22の後方側をなす部分である。後方保持体24bにおいて、中心部を前後方向に貫く中心孔25bが設けられる。中心孔25bにおいて、ボルト23の軸部23bに切られた雄ネジに噛み合う雌ネジが切られている。前方保持体24aにおいて、後面に一対の保持溝26bが設けられる。各々の保持溝26bは、上下方向に沿うように上面から下面に至る半円形状の溝である。各々の保持溝26bの幅は、調速機ロープ15の直径に合わせた幅である。各々の保持溝26bの深さは、調速機ロープ15の半径に合わせた深さである。各々の保持溝26bの幅および深さは、例えば締め代などの範囲で調速機ロープ15の直径または半径と異なっていてもよい。一方の保持溝26bは、中心孔25bの左側に設けられる。他方の保持溝26bは、中心孔25bの右側に設けられる。この例の後方保持体24bにおいて、一対の保持溝26bの他に溝は設けられていない。
【0024】
中心孔25aおよび中心孔25bの中心軸を合わせるときに、前方保持体24aの後面は、後方保持体24bの前面に対向する。このとき、前方保持体24aの左側の保持溝26aは、後方保持体24bの左側の保持溝26bに対向する。また、前方保持体24aの右側の保持溝26aは、後方保持体24bの右側の保持溝26bに対向する。前方保持体24aの後面および後方保持体24bの前面を合わせるときに、互いに対向する保持溝26aおよび保持溝26bは、保持孔27を形成する。保持孔27は、上下方向に沿うように保持具22の上面から下面に至る円柱状の孔である。保持孔27の直径は、調速機ロープ15の直径に対応する。左右の一方の保持溝26aおよび保持溝26bが形成する保持孔27は、第1保持部の例である。左右の他方の保持溝26aおよび保持溝26bが形成する保持孔27は、第2保持部の例である。左右の各々の保持孔27の形状は、例えば締め代などの範囲で調速機ロープ15の太さの直径の円から異なる形状であってもよい。
【0025】
図3は、実施の形態1に係る拘束具21の側面図である。
【0026】
拘束具21は、ボルト23の軸部23bが前方から後方に前方保持体24aの中心孔25aおよび後方保持体24bの中心孔25bを貫くように組み立てられる。ボルト23の軸部23bは、後方保持体24bの後面から後方に突出している。このとき、ボルト23の軸部23bに切られた雄ネジは、中心孔25bの雌ネジに噛み合っている。ボルト23は、例えばネジ回しなどによって締め回されることによって、前方保持体24aおよび後方保持体24bを締結する。
【0027】
ボルト23の軸部23bの後端部において、カシメ加工部28が設けられる。カシメ加工部28は、ボルト23の軸部23bが中心孔25aおよび中心孔25bを貫くように組み立てられた後にカシメ加工された部分である。カシメ加工部28によって、ボルト23による締結を緩めた場合においてもボルト23の軸部23bが中心孔25bから抜けなくなる。これにより、ボルト23による締結を緩めた場合においても、後方保持体24bの拘束具21からの脱落が防止される。また、後方保持体24bの脱落が防止されるので、前方保持体24aの拘束具21からの脱落が防止される。このように、ボルト23と前方保持体24aおよび後方保持体24bとの分離がカシメ加工部28によって防がれる。カシメ加工部28は、分離防止部の例である。
【0028】
続いて、図4から図8を用いて、拘束具21を用いた調速機ロープ15の交換作業の例を説明する。
図4から図8は、実施の形態1に係る拘束具21を用いた調速機ロープ15の交換作業の例を示す図である。
【0029】
図4において、エレベーター1全体の概略図が示される。
この例において、既設の調速機ロープ15pを図4に図示されない新設の調速機ロープ15qに交換する交換作業の例が示される。ここで、新設の調速機ロープ15qの直径は、既設の調速機ロープ15pの直径と同じである。なお、本開示において、既設の調速機ロープ15pおよび新設の調速機ロープ15qを特に区別しない場合に、単に調速機ロープ15と記載することがある。
【0030】
交換作業を行う作業員は、取付け部17および連結腕18から既設の調速機ロープ15pを取り外す。その後、作業員は、例えば張り車16に取り付けられた錘20を外すことまたは錘20の重量を他の機器に預けることなどによって、張り車16が既設の調速機ロープ15pに与える張力を緩める。その後、作業員は、環状に結合された状態の既設の調速機ロープ15pの両端部を例えばピット4または最下階の乗場などの作業場所に移動させる。その後、作業員は、調速機シーブ14の一方側から垂れ下がる既設の調速機ロープ15pの部分および調速機シーブ14の他方側から垂れ下がる既設の調速機ロープ15pの部分を拘束具21によって図4に示されるように拘束する。
【0031】
図5において、既設の調速機ロープ15pを拘束するときの拘束具21の斜視図が示される。
【0032】
作業員は、ボルト23による締結を緩めた状態の拘束具21を左手で持つ。このとき、ボルト23による締結が緩められているので、前方保持体24aおよび後方保持体24bの間に隙間29が生じている。保持具22の左側の端部において、左側の保持溝26aおよび左側の保持溝26bに通じる隙間29が生じている。保持具22の右側の端部において、右側の保持溝26aおよび右側の保持溝26bに通じる隙間29が生じている。
【0033】
その後、作業員は、拘束具21を持っていない右手で既設の調速機ロープ15pを掴む。作業員は、調速機シーブ14の一方側から垂れ下がる既設の調速機ロープ15pの部分を、保持具22の左側の端部に生じた隙間29に通して左側の保持溝26aおよび左側の保持溝26bに掛ける。作業員は、調速機シーブ14の他方側から垂れ下がる既設の調速機ロープ15pの部分を、保持具22の右側の端部に生じた隙間29に通して右側の保持溝26aおよび右側の保持溝26bに掛ける。これにより、前方保持体24aの後面および後方保持体24bの前面を合わせると、左右の保持孔27の各々に既設の調速機ロープ15pが入り込んだ状態となる。
【0034】
その後、作業員は、右手に持ったネジ回しによってボルト23を締め回す。このとき、保持孔27の直径は調速機ロープ15の直径に対応しているので、左右の保持孔27の各々において、既設の調速機ロープ15pが前方保持体24aおよび後方保持体24bの間に挟み込まれて保持される。
【0035】
図6において、エレベーター1全体の概略図が示される。
【0036】
作業員は、拘束具21で既設の調速機ロープ15pを拘束した後に、環状に結合された既設の調速機ロープ15pの両端部の結合を解く。作業員は、結合を解いた既設の調速機ロープ15pの一端を、既設の調速機ロープ15pを回収するドラムなどに巻き掛ける。作業員は、結合を解いた既設の調速機ロープ15pの他端を、図6に示されるように新設の調速機ロープ15qの一端につなぐ。
【0037】
図7において、エレベーター1全体の概略図が示される。
【0038】
作業員は、既設の調速機ロープ15pの一端をドラムなどに巻き掛け、多端を新設の調速機ロープ15qにつないだ後に、既設の調速機ロープ15pから拘束具21を取り外す。作業員は、例えば既設の調速機ロープ15pを拘束具21で拘束するときの逆の手順によって拘束具21を既設の調速機ロープ15pから取り外す。すなわち、作業員は、例えば次のように拘束具21を取り外す。作業員は、例えば左手で拘束具21を持つ。作業員は、拘束具21を持っていない右手で、例えばネジ回しなどによってボルト23による締結を緩める。作業員は、左側の保持溝26aおよび左側の保持溝26bに掛かっていた既設の調速機ロープ15pの部分を、保持具22の左側の端部に生じた隙間29を通して外す。作業員は、右側の保持溝26aおよび右側の保持溝26bに掛かっていた既設の調速機ロープ15pの部分を、保持具22の右側の端部に生じた隙間29を通して外す。
【0039】
その後、作業員は、例えば既設の調速機ロープ15pの一端が巻き掛けられたドラムを巻き取ることなどによって、既設の調速機ロープ15pを回収する。このとき、既設の調速機ロープ15pの他端に引かれて、新設の調速機ロープ15qは既設の調速機ロープ15pを置き換えるように配置される。これにより、新設の調速機ロープ15qは、図7に示されるように調速機シーブ14に巻き掛けられるようになる。
【0040】
図8において、エレベーター1全体の概略図が示される。
【0041】
作業員は、調速機シーブ14の一方側から垂れ下がる新設の調速機ロープ15qの部分および調速機シーブ14の他方側から垂れ下がる新設の調速機ロープ15qの部分を、既設の調速機ロープ15pの拘束と同様の手順によって拘束具21で拘束する。すなわち、作業員は、例えば次のように調速機ロープ15qを拘束する。作業員は、例えば左手で拘束具21を持つ。作業員は、拘束具21を持っていない右手で新設の調速機ロープ15qを掴む。作業員は、調速機シーブ14の一方側から垂れ下がる新設の調速機ロープ15qの部分を、保持具22の左側の端部に生じた隙間29に通して左側の保持溝26aおよび左側の保持溝26bに掛ける。作業員は、調速機シーブ14の他方側から垂れ下がる新設の調速機ロープ15qの部分を、保持具22の右側の端部に生じた隙間29に通して右側の保持溝26aおよび右側の保持溝26bに掛ける。その後、作業員は、右手に持ったネジ回しによってボルト23を締め回す。これにより、左右の保持孔27の各々において、新設の調速機ロープ15qが前方保持体24aおよび後方保持体24bの間に挟み込まれて保持される。
【0042】
作業員は、拘束具21で新設の調速機ロープ15qを拘束した後に、新設の調速機ロープ15qおよび既設の調速機ロープ15pの結合を解く。作業員は、新設の調速機ロープ15qの両端部を環状に結合する。その後、作業員は、環状に結合された状態の新設の調速機ロープ15qの両端部をかご8の位置に移動させる。その後、作業員は、張り車16の錘20の重量などによって新設の調速機ロープ15qに張力を掛ける。その後、作業員は、取付け部17および連結腕18を新設の調速機ロープ15qに取り付ける。
【0043】
以上に説明したように、実施の形態1に係る拘束具21は、保持具22と、ボルト23と、を備える。保持具22は、前方保持体24aおよび後方保持体24bに分離可能である。保持具22において、左右の保持孔27が設けられる。左右の一方の保持孔27は、調速機ロープ15において調速機シーブ14の一方側から垂れ下がる部分を前方保持体24aおよび後方保持体24bの間に挟み込んで保持する部分である。左右の他方の保持孔27は、調速機ロープ15において調速機シーブ14の他方側から垂れ下がる部分を前方保持体24aおよび後方保持体24bの間に挟み込んで保持する部分である。ボルト23は、前方保持体24aおよび後方保持体24bを左右の保持孔27の間において締結する。
【0044】
このような構成により、拘束具21は、調速機シーブ14の両側から垂れ下がる調速機ロープ15の部分を互いに拘束する。このため、調速機シーブ14が回転しても荷重のアンバランスが拡大しにくくなるので、調速機シーブ14に掛けられた調速機ロープ15の不安定性が抑えられる。これにより、調速機ロープ15などのエレベーター1のロープの交換作業における自走が抑えられる。また、締結部による締結を緩めることで、保持具22の左右の端部において、左右の保持孔27に通じる隙間29が生じるようになる。このため、作業員は、調速機ロープ15を保持具22の左右の端部から左右の保持孔27まで容易に差し込めるようになる。これにより、調速機ロープ15の交換作業の効率が高められる。また、締結具は、左右の保持孔27の間で前方保持体24aおよび後方保持体24bを締結するので、調速機ロープ15の一方側が減径していても保持具22は調速機ロープ15の両側を均等な力で保持できる。これにより、調速機ロープ15が部分的に減径している場合においても、拘束具21は、調速機ロープ15を安定して拘束できる。
【0045】
また、左右の各々の保持孔27は、前方保持体24aに設けられた調速機ロープ15に沿う保持溝26a、および後方保持体24bに設けられた調速機ロープ15に沿う保持溝26bにより形成される。
【0046】
このような構成により、保持具22は、調速機ロープ15をより確実に保持できるようになる。
【0047】
また、ボルト23は、前方保持体24aおよび後方保持体24bの各々からの分離を防ぐカシメ加工部28を有する。
【0048】
このような構成により、ボルト23などの締結具および保持具22の脱落が防がれる。このため、調速機ロープ15などのロープの交換作業がより容易になる。
【0049】
また、この例の保持具22は、保持溝26aまたは保持溝26bの他に溝を有していない。すなわち、拘束具21は、既定の直径の調速機ロープ15の専用の器具である。複数の直径の調速機ロープ15に対応する保持孔27が設けられていないので、直径に対応しない大きさの保持孔27に作業員が調速機ロープ15を誤って入れることが防がれる。なお、保持具22において、対応する調速機ロープ15の直径などの情報を示す刻印などが施されていてもよい。
【0050】
なお、第1保持部および第2保持部は、左右の保持溝26aおよび保持溝26bが形成する保持孔27でなくてもよい。第1保持部および第2保持部は、例えば前方保持体24aの後面および後方保持体24bの前面に設けられた調速機ロープ15の左右への位置ずれを抑える線状の突起などであってもよい。あるいは、第1保持部および第2保持部は、例えば前方保持体24aの後面および後方保持体24bの前面に貼り付けられた弾性体などであってもよい。
【0051】
また、分離防止部は、ボルト23の軸部23bの後端部のカシメ加工部28でなくてもよい。分離防止部は、ボルト23の軸部23bの後端部に設けられた、中心孔25bの内形より大きい抜け防止部などであってもよい。
【0052】
また、締結具は、中心孔25bに噛み合うボルト23でなくてもよい。締結具は、ボルトおよびナットであってもよい。締結具は、例えばベルト、ラチェット、またはバックルなどによって締結するものであってもよい。なお、作業員が一方の手で拘束具21を持った状態で締結の作業を行いうるように、締結具は、作業員の他方の手で締結および締結の解除ができる構造であることが好ましい。
【0053】
また、拘束具21は、調速機ロープ15の他のエレベーター1のロープの交換作業にも適用できる。拘束具21は、例えば駆動シーブ12に巻き掛けられた主ロープ7の交換作業に適用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示に係る拘束具は、調速機ロープなどのエレベーターのロープの交換作業に適用できる。
【符号の説明】
【0055】
1 エレベーター、 2 昇降路、 3 機械室、 4 ピット、 5 ガイドレール、 6 巻上機、 7 主ロープ、 8 かご、 9 釣合い錘、 10 調速機、 11 モーター、 12 駆動シーブ、 13 非常止め、 14 調速機シーブ、 15 調速機ロープ、 16 張り車、 17 取付け部、 18 連結腕、 19 把持装置、 20 錘、 21 拘束具、 22 保持具、 23 ボルト、 23a 頭部、 23b 軸部、 24a 前方保持体、 24b 後方保持体、 25a、25b 中心孔、 26a、26b 保持溝、 27 保持孔、 28 カシメ加工部、 29 隙間
【要約】
シーブに巻き掛けられたエレベーターのロープの交換作業における自走を抑えられる拘束具を提供する。拘束具(21)は、保持具(22)と、ボルト(23)と、を備える。保持具(22)は、前方保持体(24a)および後方保持体(24b)に分離可能である。保持具(22)において、左右の保持孔(27)が設けられる。左右の一方の保持孔(27)は、調速機ロープ(15)において調速機シーブ(14)の一方側から垂れ下がる部分を前方保持体(24a)および後方保持体(24b)の間に挟み込んで保持する部分である。左右の他方の保持孔(27)は、調速機ロープ(15)において調速機シーブ(14)の他方側から垂れ下がる部分を前方保持体(24a)および後方保持体(24b)の間に挟み込んで保持する部分である。ボルト(23)は、前方保持体(24a)および後方保持体(24b)を左右の保持孔(27)の間において締結する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8