特許第6973697号(P6973697)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973697
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20211118BHJP
   H01F 27/00 20060101ALI20211118BHJP
   H01G 4/40 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   H01F17/00 D
   H01F27/00 S
   H01G4/40 321A
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-548616(P2021-548616)
(86)(22)【出願日】2021年2月24日
(86)【国際出願番号】JP2021006732
【審査請求日】2021年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2020-74677(P2020-74677)
(32)【優先日】2020年4月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】重松 悟史
【審査官】 井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−88720(JP,A)
【文献】 特開2012−199353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/00
H01G 4/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の積層方向に互いに対向する第1主面及び第2主面を有し、前記第1主面及び前記第2主面が長辺と短辺を有する直方体状の積層体で構成された電子部品であって、
キャパシタを構成するキャパシタ電極と、
前記積層方向に対して平行な巻回軸を有し、インダクタを構成するコイル導体と、
前記コイル導体及び前記キャパシタ電極に接続された端子電極と、
前記端子電極には接続されず、前記積層体の長辺に沿って延びるダミー電極と、
を備え、
前記積層方向において、前記コイル導体は前記キャパシタ電極よりも前記第1主面に近接し、
前記積層方向において、前記ダミー電極は前記コイル導体よりも前記第1主面に近接し、
前記積層方向に視て、前記ダミー電極は前記コイル導体のコイル開口とは重ならない、
電子部品。
【請求項2】
前記端子電極は前記第2主面に露出する、
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記ダミー電極は前記第1主面に形成されている、
請求項1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記ダミー電極は複数の導体パターンで構成されている、
請求項1から3のいずれかに記載の電子部品。
【請求項5】
前記ダミー電極は、前記第1主面における互いに対向する第1長辺及び第2長辺に沿ってそれぞれ形成されている、
請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記ダミー電極は、前記第1長辺にそれぞれ沿って形成された複数の導体パターンと、前記第2長辺にそれぞれ沿って形成された複数の導体パターンとで構成されている、
請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記積層方向から視て、前記ダミー電極は前記コイル導体に重なる、
請求項1から6のいずれかに記載の電子部品。
【請求項8】
前記インダクタと前記キャパシタとでLCフィルタが構成されている、
請求項1から7のいずれかに記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材層の積層体内にインダクタ及びキャパシタを備えて構成される電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材層の積層体内にコイル導体及びキャパシタ電極を設けることによって、LCフィルタとして作用する電子部品が構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、基材層が積層されてなる積層体にインダクタ及びキャパシタが形成されることによって構成されるフィルタ素子が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−340039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフィルタ素子においては、インダクタを構成する導体パターンとキャパシタを構成する電極とは、基材層の積層方向に視て重なるように配置されている。キャパシタを構成する電極は、電極同士の対向面積を大きくするために、層方向に拡がる。それに対してインダクタを構成する導体パターンは線長を長くするために細い線幅の導体パターンが形成される。また、一般に、キャパシタを構成する複数の電極は、積層体の積層方向の層間で容量が生じるように、積層方向に微小な間隔が生じるように形成される。一方、インダクタを構成する導体パターンは、層間で不要な浮遊容量が生じないように、積層方向の導体間隔は広く形成される場合がある。これらの構造によって、積層体内のキャパシタ形成層とインダクタ形成層とでは、導体密度が異なる。
【0006】
このように、積層体の積層方向で導体密度が異なると、その導体密度に応じて、積層体の焼成時に、基材層の収縮率に差が生じる。つまり、導体密度の「密」な領域に比べて「疎」の領域の収縮率が高い。つまり、インダクタ形成層はキャパシタ形成層に比べてより収縮するので、積層体はインダクタ形成層方向に反ってしまう。
【0007】
なお、特許文献1には、インダクタ及びキャパシタを構成する「内部電極導体層」を積層方向に挟むように「シールド電極導体層」が形成されているので、上記導体密度の不均衡性が多少は回避される。しかし、この「シールド電極導体層」はインダクタの発生する磁束を遮るため、そのシールド電極導体層によってインダクタのQ値が劣化してしまう。
【0008】
そこで、本発明の目的は、導体密度の不均衡性による反りの問題及びインダクタのQ値の劣化の問題を解消した電子部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電子部品は、基材層の積層方向に互いに対向する第1主面及び第2主面を有し、前記第1主面及び前記第2主面が長辺と短辺を有する直方体状の積層体で構成された電子部品であって、キャパシタを構成するキャパシタ電極と、前記積層方向に対して平行な巻回軸を有し、インダクタを構成するコイル導体と、前記コイル導体及び前記キャパシタ電極に接続された端子電極と、前記端子電極には接続されず、前記積層体の長辺に沿って延びるダミー電極と、を備える。そして、前記積層方向において、前記コイル導体は前記キャパシタ電極よりも前記第1主面に近接し、前記積層方向において、前記ダミー電極は前記コイル導体よりも前記第1主面に近接し、前記積層方向に視て、前記ダミー電極は前記コイル導体のコイル開口とは重ならない。
【0010】
上記構成により、積層体の第1主面寄りと第2主面寄りとで、導体密度の均衡性が改善される。また、ダミー電極が、積層体の収縮時の突っ張り部材として作用する。また、ダミー電極はコイル導体のコイル開口を遮らない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、導体密度の不均衡性による反りが抑制され、また、インダクタのQ値の劣化が回避された電子部品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は第1の実施形態に係る電子部品101の斜視図である。
図2図2は、電子部品101の絶縁性の各基材層に形成されている導体パターンを示す分解平面図である。
図3図3は電子部品101のX−Z面に平行な所定面での断面図である。
図4図4(A)、図4(B)は、積層体1の焼成時の基材層の収縮による応力について示す正面図である。
図5図5は、図2に示した各導体パターン及び電極との対応関係を明示した、電子部品101の回路図である。
図6図6(A)は電子部品101の回路図である。図6(B)は電子部品101の等価回路図である。
図7図7は第1の実施形態の電子部品101について、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域を示すための平面図である。
図8図8(A)、図8(B)、図8(C)は、第1の実施形態の電子部品101において、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域についての他の例を示す平面図である。
図9図9(A)、図9(B)は、第2の実施形態に係る電子部品の、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域を示す平面図である。
図10図10は、第2の実施形態に係る他の電子部品の、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域を示す平面図である。
図11図11は、第2の実施形態に係る更に他の電子部品の、積層体1におけるダミー電極EDの形成領域を示す平面図である。
図12図12は、第3の実施形態に係る電子部品の絶縁性の各基材層に形成されている導体パターンを示す分解平面図である。
図13図13は第4の実施形態に係る電子部品104の斜視図である。
図14図14は、第4の実施形態に係る電子部品104の絶縁性の各基材層に形成されている導体パターンを示す分解平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
《第1の実施形態》
図1は第1の実施形態に係る電子部品101の斜視図である。この電子部品101は、後に示す複数の基材層の積層方向に互いに対向する第1主面MS1及び第2主面MS2を有し、第1主面MS1及び第2主面MS2が長辺と短辺を有する直方体状の積層体1で構成された電子部品である。図1においてZ軸に平行な方向が上記積層方向であり、X軸に平行な方向が長辺方向であり、Y軸に平行な方向が短辺方向である。
【0014】
積層体1の内部には、後に示すキャパシタを構成するキャパシタ電極と、積層体1の積層方向に対して平行な巻回軸を有し、インダクタを構成するコイル導体と、を備えるが、図1においては、それらの図示を省略している。
【0015】
積層体1の第2主面MS2には、コイル導体及びキャパシタ電極に接続された、第1端子電極E11、第2端子電極E12、第3端子電極E13及び第4端子電極E14を備える。また、積層体1の第1主面MS1には、端子電極E11,E12,E13,E14には接続されず、積層体1の長辺に沿って延びるダミー電極ED1,ED2を備える。積層体1の第1主面MS1には方向性識別マークMDが形成されている。
【0016】
図2は、電子部品101の絶縁性の各基材層に形成されている導体パターンを示す分解平面図である。図3は電子部品101のX−Z面に平行な所定面での断面図である。図2中の一点鎖線はその所定面の位置を示している。
【0017】
基材層S1は最上層の基材層であり、基材層S14は最下層の基材層である。基材層S2〜S13は、最上層の基材層S1と最下層の基材層S14との間にある基材層である。基材層S14には、第1端子電極E11、第2端子電極E12、第3端子電極E13及び第4端子電極E14が形成されている。基材層S2〜S13には側部端子電極E21,E22,E23,E24が形成されている。各基材層に形成されている側部端子電極E21,E22,E23,E24は同一符号の端子電極同士で導通する。また、側部端子電極E21は基材層S14に形成されている第1端子電極E11に導通し、側部端子電極E22は基材層S14に形成されている第2端子電極E12に導通し、側部端子電極E23は基材層S14に形成されている第3端子電極E13に導通し、側部端子電極E24は基材層S14に形成されている第4端子電極E14に導通する。
【0018】
基材層S2,S3,S4には第1コイル導体L11,L12,L13がそれぞれ形成されている。また、基材層S6,S7,S8には第2コイル導体L21,L22,L23がそれぞれ形成されている。図2において破線はビア導体による接続関係を示している。
【0019】
第1コイル導体L11の第1端は側部端子電極E21に接続されている。基材層S2には、第1コイル導体L11の第2端と第1コイル導体L12の第1端とを接続するビア導体が形成されている。また、基材層S3には、第1コイル導体L12の第2端と第1コイル導体L13の第1端とを接続するビア導体が形成されている。第1コイル導体L13の第2端は側部端子電極E23に接続されている。上記第1コイル導体L11,L12,L13及びビア導体によって第1コイルL1が構成される。
【0020】
第2コイル導体L23の第1端は側部端子電極E23に接続されている。基材層S6には、第2コイル導体L23の第2端と第2コイル導体L22の第1端とを接続するビア導体が形成されている。また、基材層S7には、第2コイル導体L22の第2端と第2コイル導体L21の第1端とを接続するビア導体が形成されている。第2コイル導体L21の第2端は側部端子電極E22に接続されている。上記第2コイル導体L21,L22,L23及びビア導体によって第2コイルL2が構成される。
【0021】
Z軸に平行方向に視て、上記第1コイル導体L11,L12,L13のコイル開口と上記第2コイル導体L21,L22,L23のコイル開口とは重なるので(巻回軸が揃っているので)、第1コイルL1と第2コイルL2とは磁界結合する。
【0022】
基材層S9,S10には、第2キャパシタ電極C22,C21がそれぞれ形成されている。この第2キャパシタ電極C22,C21によって第2キャパシタC2が構成される。
【0023】
また、基材層S9には、第1キャパシタ電極C12Bが形成されていて、基材層S10には第1キャパシタ電極C11Bが形成されていて、基材層S11には、第1キャパシタ電極C12Aが形成されていて、基材層S12には第1キャパシタ電極C11Aが形成されている。これら第1キャパシタ電極C12B,C11B,C12A,C11Aによって第1キャパシタC1が構成される。
【0024】
基材層S1にはダミー電極ED1,ED2が形成されている。これらダミー電極ED1,ED2は端子電極E11,E12,E13,E14には接続されず、積層体1の長辺に沿って延びる。また、基材層S1には方向性識別マークMDが形成されている。
【0025】
基材層S1〜S14の積層方向において、コイル導体L11,L12,L13,L23,L22,L21はキャパシタ電極C12B,C22,C11B,C21,C12A,C11Aよりも第1主面MS1に近接している。換言すると、基材層S1〜S14の積層方向において、キャパシタ電極C12B,C22,C11B,C21,C12A,C11Aはコイル導体L11,L12,L13,L23,L22,L21よりも第2主面MS2に近接している。
【0026】
基材層S1〜S14の積層方向に視て、ダミー電極ED1,ED2はコイル導体L11,L12,L13,L23,L22,L21のコイル開口とは重ならない。
【0027】
積層体1の各基材層S1〜S14は、感光性絶縁ペースト及び感光性導電ペーストのスクリーン印刷、露光及び現像によって形成され、これら基材層の積層形成によって積層体1は形成される。
【0028】
具体的には、感光性絶縁ペースト層をスクリーン印刷し、紫外線を照射し、アルカリ溶液で現像する。これにより外部電極用の開口やビアホール等を有する絶縁基材パターンを形成する。また、感光性導電ペーストをスクリーン印刷し、紫外線を照射し、アルカリ溶液で現像することによって導体パターンを形成する。この絶縁基材パターン及び導体パターンの積層によって、マザー積層体を得る。その後、このマザー積層体を個片に分断することによって多数の積層体1を得る。各外部電極の表面には、はんだ付け性向上、導電率向上、耐環境性向上を目的として、例えばNi / Auめっきを施す。
【0029】
上記積層体1の形成方法はこれに限らない。例えば、導体パターン形状に開口したスクリーン版による導体ペーストを印刷し積層する工法でもよい。外部電極の形成方法についてもこれに限らず、例えば、積層した素体に対する導体ペーストのディッピングやスパッタリング法によって、積層体1の底面及び側面に外部電極を形成してもよく、さらに、その表面にめっき加工を施してもよい。
【0030】
図4(A)、図4(B)は、積層体1の焼成時の基材層の収縮による応力について示す正面図である。図4(A)は本実施形態の積層体1の反りについて示す図、図4(B)は比較例としての積層体1の反りを示す図である。
【0031】
図3に示したように、コイル導体L11,L12,L13,L23,L22,L21は第1主面MS1寄りにあり、キャパシタ電極C12B,C22,C11B,C21,C12A,C11Aは第2主面MS2寄りにあるので、導体密度は、第1主面MS1側が「疎」、第2主面MS2側が「密」である。そのため、積層体1の焼成による積層体1の収縮率は、第2主面MS2に比べて第1主面MS1が大きい。したがって、積層体1は焼成後、図4(B)に示すように、第1主面MS1方向へ反る傾向がある。
【0032】
これに対し、本実施形態によれば、積層体1の第1主面MS1にダミー電極ED1,ED2が形成されているので、積層体1の第1主面MS1寄りと第2主面MS2寄りとで導体密度の均衡性が改善される。また、ダミー電極ED1,ED2が、積層体1の収縮時の突っ張り部材として作用する。したがって、積層体1の反りは抑制される。
【0033】
図5は、図2に示した各導体パターン及び電極との対応関係を明示した、電子部品101の回路図である。図5に示す第1端子T1は第1端子電極E11に対応し、第2端子T2は第2端子電極E12に対応し、基準電位端子TGは第4端子電極E14に対応する。
【0034】
図6(A)は電子部品101の回路図である。図6(B)は電子部品101の等価回路図である。図6(A)において、シリーズ接続された第1コイルL1及び第2コイルL2と、シャント接続されたキャパシタC1とによってT型のLCフィルタが構成されている。
【0035】
第1コイルL1は、図5に示した第1コイル導体L11,L12,L13によって構成され、第2コイルL2は第2コイル導体L21,L22,L23によって構成される。第1キャパシタC1はキャパシタ電極C11A,C12A,C11B,C12Bによって構成され、第2キャパシタC2はキャパシタ電極C21,C22によって構成される。
【0036】
図5図6(A)、図6(B)において、この電子部品101の回路は、基準電位端子TGが基準電位(グランド電位)に接続されて、第1端子T1及び第2端子T2に不平衡信号が入出力されるフィルタ回路として作用する。第1端子T1、第2端子T2には、それぞれインピーダンスが例えば50Ωの回路が接続される。
【0037】
図6(A)に示す第1コイルL1と第2コイルL2とは、上記基材層の積層方向に巻回軸を有し、コイル開口が互いに重なって磁界結合し、第1コイルL1及び第2コイルL2は互いの巻回方向が逆関係で直列接続されている。ここで、第1コイルL1のインダクタンスをL1、第2コイルL2のインダクタンスをL2、第1コイルL1と第2コイルL2との結合による相互インダクタンスをMで表すと、図6(B)に示すとおり、2つのシリーズ接続素子のインダクタンスは(L1−M),(L2−M)、シャント接続素子のインダクタンスはMで表すことができる。このシャント接続された、インダクタンスMと第1キャパシタC1とで構成されるLC直列回路によって第1減衰極が形成される。
【0038】
図6(B)において、互いに磁界結合する第1コイルL1と第2コイルL2との直列回路のインダクタンスは(L1−M)+(L2−M)=L1+L2−2Mである。この直列回路と第2キャパシタC2とでLC並列回路が構成され、このLC並列回路によって第2減衰極が形成される。
【0039】
図7は本実施形態の電子部品101について、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域を示すための平面図である。この図7に示す例では、積層体1の基材層の積層方向に視て、ダミー電極ED1,ED2は長辺LSに沿って延びる電極パターンであり、ダミー電極ED1,ED2はコイル導体のコイル開口COとは重ならない。ここで、「コイル開口」とは、図2に示した第1コイル導体L11,L12,L13及び第2コイル導体L21,L22,L23のコイル開口のうち最も内側にあるコイル開口である。図7に示す例では、ダミー電極ED1,ED2は第1コイル導体L11の一部に重なるが、第1コイル導体L12には重ならない。
【0040】
図8(A)、図8(B)、図8(C)は、第1の実施形態の電子部品101において、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域についての他の例を示す平面図である。図8(A)は、ダミー電極ED1,ED2の短辺SS方向の幅Wcがコイル開口COのぎりぎりの位置まで幅広く形成された例である。つまり、コイル導体のコイル開口COのうち、最も内側のコイル導体L12のコイル開口COに接する位置までダミー電極ED1,ED2の幅Wcを大きくしている。また、図8(B)は、ダミー電極ED1,ED2の短辺SS方向の幅Wcがコイル導体の最も外側のコイル導体L11の内周に接する幅に定められた例である。さらに、また、図8(C)は、ダミー電極ED1,ED2の短辺SS方向の幅Wcがコイル導体の最も外側のコイル導体L11の外周に接しない幅に定められた例である。
【0041】
本実施形態によれば、積層体1の第1主面寄りと第2主面寄りとで導体密度の均衡性が改善され、また、ダミー電極ED1,ED2が、積層体1の収縮時の突っ張り部材として作用し、しかもダミー電極ED1,ED2はコイル導体のコイル開口COを遮らない。そのため、積層体1の反りが抑制され、また、インダクタのQ値の劣化が回避された電子部品が得られる。
【0042】
《第2の実施形態》
第2の実施形態では、積層体の長辺に沿って複数の導体パターンが形成された電子部品の例について示す。
【0043】
図9(A)、図9(B)は、第2の実施形態に係る電子部品の、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域を示す平面図である。図9(A)に示す例では、積層体1の第1長辺LS1にそれぞれ沿って2つのダミー電極ED11,ED12が形成されていて、積層体1の第2長辺LS2にそれぞれ沿って2つのダミー電極ED21,ED22が形成されている。図9(B)に示す例では、積層体1の第1長辺LS1方向に分離された2つのダミー電極ED11,ED12が形成されていて、積層体1の第2長辺LS2方向に分離された2つのダミー電極ED21,ED22が形成されている。
【0044】
図9(A)、図9(B)に示した例では、第1長辺LS1、第2長辺LS2にそれぞれ2つのダミー電極を形成したが、それ以上備えてもよい。
【0045】
図9(A)に示した例のように、各ダミー電極ED11,ED12,ED21,ED22が積層体1の長辺に沿って連続していれば、積層体1の焼成による収縮時の突っ張り部材としてより効果的に作用する。
【0046】
図10は、第2の実施形態に係る他の電子部品の、積層体1におけるダミー電極ED1,ED2の形成領域を示す平面図である。この例では、積層体1の長辺に達しない(接しない)範囲にダミー電極ED1,ED2が形成されている。ただし、ダミー電極ED1,ED2はコイル開口COより外側に形成されている。このように、ダミー電極ED1,ED2は積層体1の周辺に達しない形状であってもよい。
【0047】
図11は、第2の実施形態に係る更に他の電子部品の、積層体1におけるダミー電極EDの形成領域を示す平面図である。この例では、コイル開口COに重ならない範囲で、積層体1の外周に沿って、ダミー電極EDが連続的に形成されている。ただし、コイル開口COの周囲を周回するループを形成しないように、間隙Gが形成されている。ダミー電極EDは閉ループを形成しないので、渦電流が流れることによる磁束の遮蔽がなく、インダクタンスの低下が回避できる。
【0048】
このように、ダミー電極EDは積層体1の短辺SSに沿った部分を有していてもよい。また、長辺LSに沿って形成されたダミー電極と短辺SSに沿って形成されたダミー電極とが連続していてもよい。
【0049】
《第3の実施形態》
第3の実施形態では、積層体内におけるダミー電極の形成層の位置が、第1の実施形態で示した例とは異なる電子部品について示す。
【0050】
図12は、第3の実施形態に係る電子部品の絶縁性の各基材層に形成されている導体パターンを示す分解平面図である。基材層S0は最上層の基材層であり、基材層S14は最下層の基材層である。基材層S1〜S13は、最上層の基材層S1と最下層の基材層S14との間にある基材層である。第1の実施形態において図2に示した例では、最上層の基材層S1にダミー電極ED1,ED2が形成されていたが、第3の実施形態では、最上層の基材層S0より内層の基材層である基材層S1にダミー電極ED1,ED2が形成されている。その他の構成は第1の実施形態で示したとおりである。
【0051】
本実施形態の電子部品においても、基材層の積層方向において、コイル導体はキャパシタ電極よりも第1主面に近接している。したがって、基材層の積層方向において、ダミー電極ED1,ED2がコイル導体よりも第1主面に近接していることで、積層体の焼成時の反りが抑制される。
【0052】
このように、ダミー電極は積層体の内層に形成されていてもよい。
【0053】
《第4の実施形態》
第4の実施形態では、積層体の内外における電極の形状が、第1の実施形態で示した例とは異なる電子部品について示す。
【0054】
図13は第4の実施形態に係る電子部品104の斜視図である。この電子部品104は、複数の基材層の積層方向に互いに対向する第1主面MS1及び第2主面MS2を有し、第1主面MS1及び第2主面MS2が長辺と短辺を有する直方体状の積層体1で構成された電子部品である。図13においてZ軸に平行な方向が上記積層方向であり、X軸に平行な方向が長辺方向であり、Y軸に平行な方向が短辺方向である。
【0055】
積層体1の内部には、キャパシタを構成するキャパシタ電極と、積層体1の積層方向に対して平行な巻回軸を有し、インダクタを構成するコイル導体と、を備えるが、図13においては、それらの図示を省略している。
【0056】
積層体1の第2主面MS2には、コイル導体及びキャパシタ電極に接続された、第1端子電極E11、第2端子電極E12、第3端子電極E13及び第4端子電極E14を備える。また、積層体1の第1主面MS1には、端子電極E11,E12,E13,E14にそれぞれ接続された端子電極E31,E32,E33,E34を備える。積層体1の第1主面MS1には方向性識別マークMDが形成されている。
【0057】
図14は、電子部品104の絶縁性の各基材層に形成されている導体パターンを示す分解平面図である。
【0058】
基材層S1は最上層の基材層であり、基材層S14は最下層の基材層である。基材層S2〜S13は、最上層の基材層S1と最下層の基材層S14との間にある基材層である。
【0059】
基材層S2〜S13には側部端子電極E21,E22,E23,E24が形成されている。各基材層に形成されている側部端子電極E21,E22,E23,E24は同一符号の端子電極同士で導通する。
【0060】
図1図2、に示した第1の実施形態に係る電子部品101とは、最上層の基材層S1に形成されている電極のパターンが異なる。基材層S1には、第1端子電極E11、第2端子電極E12、第3端子電極E13及び第4端子電極E14が形成されている。基材層S14には、第1端子電極E31、第2端子電極E32、第3端子電極E33及び第4端子電極E34が形成されている。その他の電極は第1の実施形態に係る電子部品101と同様である。
【0061】
側部端子電極E21は基材層S1に形成されている第1端子電極E31及び基材層S14に形成されている第1端子電極E11に導通し、側部端子電極E22は基材層S1に形成されている第2端子電極E32及び基材層S14に形成されている第2端子電極E12に導通する。同様に、側部端子電極E23は基材層S1に形成されている第3端子電極E13及び基材層S14に形成されている第3端子電極E33に導通し、側部端子電極E24は基材層S1に形成されている第4端子電極E14及び基材層S14に形成されている第4端子電極E34に導通する。
【0062】
したがって、最上層の基材層S1に形成されている第1端子電極E11、第2端子電極E12、第3端子電極E13、第4端子電極E14も、基材層S2〜S13に形成されている側部端子電極E21,E22,E23,E24にそれぞれ導通する。
【0063】
最後に、上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。当業者にとって変形及び変更が適宜可能である。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲内と均等の範囲内での実施形態からの変更が含まれる。
【符号の説明】
【0064】
C1…第1キャパシタ
C2…第2キャパシタ
C11A,C12A,C11B,C12B…第1キャパシタ電極
C21,C22…第2キャパシタ電極
CO…コイル開口
E11,E31…第1端子電極
E12,E32…第2端子電極
E13,E33…第3端子電極
E14,E34…第4端子電極
E21,E22,E23,E24…側部端子電極
ED,ED1,ED2…ダミー電極
ED11,ED12,ED21,ED22…ダミー電極
G…間隙
L1…第1コイル
L2…第2コイル
L11,L12,L13…第1コイル導体
L21,L22,L23…第2コイル導体
LS…長辺
LS1…第1長辺
LS2…第2長辺
M…相互インダクタンス
MD…方向性識別マーク
MS1…第1主面
MS2…第2主面
S0〜S14…基材層
SS…短辺
T1…第1端子
T2…第2端子
TG…基準電位端子
1…積層体
101,104…電子部品
【要約】
電子部品(101)は、基材層の積層方向に互いに対向する第1主面(MS1)及び第2主面(MS2)を有し、第1主面(MS1)及び第2主面(MS2)が長辺と短辺を有する直方体状の積層体(1)で構成された電子部品である。電子部品(101)は、キャパシタを構成するキャパシタ電極と、積層体(1)の積層方向に対して平行な巻回軸を有し、インダクタを構成するコイル導体と、コイル導体及びキャパシタ電極に接続された端子電極と、この端子電極には接続されず、積層体の長辺に沿って延びるダミー電極と、を備える。基材層の積層方向において、コイル導体はキャパシタ電極よりも第1主面(MS1)に近接し、ダミー電極(ED1,ED2)はコイル導体よりも第1主面(MS1)に近接し、積層方向に視て、ダミー電極(ED1,ED2)はコイル導体のコイル開口とは重ならない。
図1
図2
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図10
図11
図12
図13
図14