(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973704
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】回生ブレーキフィードバックを提供するアクセルペダル
(51)【国際特許分類】
B60L 15/00 20060101AFI20211118BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20211118BHJP
F02D 11/04 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
B60L15/00 J
B60L15/20 J
F02D11/04 R
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-217062(P2019-217062)
(22)【出願日】2019年11月29日
(65)【公開番号】特開2020-96518(P2020-96518A)
(43)【公開日】2020年6月18日
【審査請求日】2020年1月17日
(31)【優先権主張番号】16/216,043
(32)【優先日】2018年12月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515301041
【氏名又は名称】アティエヴァ、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジャン−フィリップ ゴティエ
【審査官】
笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】
特表2016−536192(JP,A)
【文献】
特開2019−140868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 15/00
B60L 15/20
F02D 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のペダル位置と第2のペダル位置との間で調整可能なアクセルペダルであって、前記第1のペダル位置が、完全に踏み込まれたアクセルペダルに対応し、前記第2のペダル位置が、完全に解放されたアクセルペダルに対応する、アクセルペダルと、
前記アクセルペダルと機械的に連結されるアクチュエータであって、複数の制御信号を受信し、前記複数の制御信号のそれぞれに応答して、前記アクセルペダルの前記第2のペダル位置を、第1のアクセルペダル解放位置と、第2のアクセルペダル解放位置との間の位置範囲内で設定するように構成されるアクチュエータと、
前記複数の制御信号のそれぞれを前記アクチュエータに送信するように構成されるアクチュエータ制御ユニットと
を備える車両アクセルペダルアセンブリであって、
前記アクチュエータ制御ユニットが、(i)現在の車両速度、(ii)予め規定されたペダルトルクマップ、(iii)パワートレイン特性のセット、および/または、(iv)バッテリパック特性のセットのうちの少なくとも1つに関連して利用可能な回生制動トルクを求め、前記利用可能な回生制動トルクに基づいて、前記利用可能な回生制動トルクが多いほど前記第2のペダル位置に近くなるように、前記第1のアクセルペダル解放位置と前記第2のアクセルペダル解放位置との間の前記位置範囲内で特定のアクセルペダル解放位置を選択する、
車両アクセルペダルアセンブリ。
【請求項2】
前記アクセルペダルの中間ペダル位置が、前記第1のペダル位置と、前記第2のペダル位置との間に位置し、
前記アクセルペダルが前記中間ペダル位置に位置する場合、車両パワートレインが0%トルクをかけ、
前記アクセルペダルが前記第2のペダル位置と前記中間ペダル位置との間に位置する場合、前記車両パワートレインが制動トルクをかけ、
前記アクセルペダルが前記中間ペダル位置と前記第1のペダル位置との間に位置する場合、前記車両パワートレインが駆動トルクをかける、
請求項1に記載の車両アクセルペダルアセンブリ。
【請求項3】
前記アクチュエータ制御ユニットに連結される車両速度センサをさらに備え、
前記車両速度センサが、現在の車両速度をモニタし、
前記アクチュエータ制御ユニットが、前記現在の車両速度に関連して前記利用可能な回生制動トルクを求める、
請求項1又は2に記載の車両アクセルペダルアセンブリ。
【請求項4】
前記アクチュエータ制御ユニットがアクセス可能なメモリ内に保持されるルックアップテーブル内に含まれる車両パワートレイン特性のセットをさらに備え、
前記アクチュエータ制御ユニットが、前記現在の車両速度に関連して、前記車両パワートレイン特性のセットに基づいて前記利用可能な回生制動トルクを求める、
請求項3に記載の車両アクセルペダルアセンブリ。
【請求項5】
第1のペダル位置と第2のペダル位置との間で調整可能なアクセルペダルであって、前記第1のペダル位置が、完全に踏み込まれたアクセルペダルに対応し、前記第2のペダル位置が、完全に解放されたアクセルペダルに対応する、アクセルペダルと、
前記アクセルペダルと機械的に連結されるアクチュエータであって、複数の制御信号を受信し、前記複数の制御信号のそれぞれに応答して、前記アクセルペダルの前記第2のペダル位置を、第1のアクセルペダル解放位置と、第2のアクセルペダル解放位置との間の位置範囲内で設定するように構成されるアクチュエータと、
前記複数の制御信号のそれぞれを前記アクチュエータに送信するように構成されるアクチュエータ制御ユニットであって、前記第1のアクセルペダル解放位置と前記第2のアクセルペダル解放位置との間の前記位置範囲内で特定のアクセルペダル解放位置を選択する、アクチュエータ制御ユニットと、
を備え、
前記アクセルペダルの中間ペダル位置が、前記第1のペダル位置と、前記第2のペダル位置との間に位置し、
前記アクセルペダルが前記中間ペダル位置に位置する場合、車両パワートレインが0%トルクをかけ、
前記アクセルペダルが前記第2のペダル位置と前記中間ペダル位置との間に位置する場合、前記車両パワートレインが制動トルクをかけ、
前記アクセルペダルが前記中間ペダル位置と前記第1のペダル位置との間に位置する場合、前記車両パワートレインが駆動トルクをかける、
車両アクセルペダルアセンブリ。
【請求項6】
前記アクチュエータがDCモータを含む、
請求項1から5のいずれか一項に記載の車両アクセルペダルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には車両に関し、より詳細には、利用可能な回生制動トルクの量に関するフィードバックをユーザに提供するアクセルペダルメカニズムの設計および構成に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関エンジン(ICE)を利用した従来型の車両では、アクセルペダルの機能は非常に直観的である。具体的には、運転者がアクセルペダルを踏み込むと、自動車は加速し、運転者がアクセルペダルを特定の位置で維持すると、自動車の速度は(平坦な道または均一な傾斜の道を想定すると)一定に保たれ、運転者がアクセルペダルへの圧力を解くと、自動車は減速し、減速のペースは、エンジンがギアに入っているか否か、傾斜レベル、自動車重量などに依存する。運転者がより速いペースで減速を行うことを望む場合を想定すると、運転者は、ブレーキペダルを踏み込んで、さらなる減速をもたらす摩擦ベースの制動システムを作動させることが可能である。
【0003】
ハイブリッド車両および電気車両では、従来式の摩擦ベースの制動システムに加えて、これら車両が何らかの形式の回生制動も利用することが一般的である。ある回生制動システムは、減速中に電力を生成するために車両の(1つまたは複数の)電気モータを利用し、これにより、システムが、自動車を減速しながら、バッテリパックを部分的に充電することが可能になる。回生制動システムは、エネルギーが熱を通して失われるのではなく、エネルギーを再び得ることを可能にするので、従来式の摩擦ベースの制動システムよりもエネルギー効率が高いが、残念なことに欠点もある。具体的には、回生制動システムからの利用可能な制動トルクが、現在のバッテリ状態(例えば、最大バッテリ充電電流、バッテリ充電状態(SOC)、バッテリ温度)および最大モータトルクに関連するので変動し続けることである。したがって、運転者が一定のアクセルペダル位置を維持しても、制動トルクの量が変動し得る。こうしたばらつきのあるペダル/制動特性は、しばしば運転者を不快にする。
【0004】
したがって、利用可能な回生制動トルクに基づくフィードバックを提供することにより、EV減速中にいくらかの運転者が感じる不快を軽減するのに役立つアクセルペダルシステムが必要である。本発明は、こうしたアクセルペダルフィードバックシステムを提供する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、(i)第1のペダル位置と第2のペダル位置との間で調整可能なアクセルペダルであって、上記第1のペダル位置が、完全に踏み込まれたアクセルペダルに対応し、上記第2のペダル位置が、完全に解放されたアクセルペダルに対応する、アクセルペダルと、(ii)上記アクセルペダルと機械的に連結されるアクチュエータであって、複数の制御信号を受信し、上記複数の制御信号のそれぞれに応答して、上記アクセルペダルの上記第2のペダル位置を、第1のアクセルペダル解放位置と、第2のアクセルペダル解放位置との間の位置範囲内で調整するように構成されるアクチュエータと、(iii)上記複数の制御信号のそれぞれを上記アクチュエータに送信するように構成されるアクチュエータ制御ユニットとからなる車両アクセルペダルアセンブリであって、上記アクチュエータ制御ユニットが、上記第1のアクセルペダル解放位置と、上記第2のアクセルペダル解放位置との間の上記位置範囲内で、特定のアクセルペダル解放位置を選択する、車両アクセルペダルアセンブリを提供する。
【0006】
一態様では、上記アクセルペダルの上記第1のペダル位置と、上記第2のペダル位置との間に中間ペダル位置が位置する。上記アクセルペダルが上記中間ペダル位置に位置する場合、車両パワートレインが0%トルクをかける。上記アクセルペダルが上記中間ペダル位置と上記第2のペダル位置との間に位置する場合、上記車両パワートレインが制動トルクをかける。上記アクセルペダルが上記第1のペダル位置と上記中間ペダル位置との間に位置する場合、上記車両パワートレインが駆動トルクをかける。
【0007】
他の態様では、上記アクチュエータ制御ユニットが、利用可能な回生制動トルクを求め、上記利用可能な回生制動トルクに基づいて、上記特定のアクセルペダル解放位置を選択するように構成され得る。上記利用可能な回生制動トルクは、現在の車両速度、予め規定されたペダルトルクマップ、パワートレイン特性のセット、および/または、バッテリパック特性のセットに関連して求められ得る。
【0008】
他の態様では、車両パワートレイン特性のセットが、上記アクチュエータ制御ユニットがアクセス可能なメモリ内に保持されるルックアップテーブル内に含まれ得る。上記アクチュエータ制御ユニットは、上記車両パワートレイン特性のセットおよび上記現在の車両速度に基づいて、上記利用可能な回生制動トルクを求めるように構成され得る。
【0009】
本明細書の残り部分および図面を参照すれば、本発明の性質および長所がさらに理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
添付の図面は、本発明の範囲を限定するのではなく、説明することのみを意図したものであることを理解するべきであり、縮尺通りに描かれているとみなされるべきではない。さらに、異なる図面での同一の参照ラベルは、同一の構成部品または機能の類似する構成部品を指すことを理解されたい。
【0011】
【
図1】最大回生制動トルク対車両速度のグラフ図である。
【0012】
【
図2】ペダル解放中に回生制動が起こる先行技術EV構成について、アクセルペダルの動作特性を示す図である。
【0013】
【
図3】20mph(16km/h)で走行している一般的な先行技術EVでのアクセルペダル特性のグラフ図である。
【0014】
【
図4A】同一のEVについて特定の時点に対応し、運転者が異なる量の回生制動トルクを利用可能である、例示的アクセルペダル401について本発明を示す図である。
【
図4B】同一のEVについて特定の時点に対応し、運転者が異なる量の回生制動トルクを利用可能である、例示的アクセルペダル401について本発明を示す図である。
【
図4C】同一のEVについて特定の時点に対応し、運転者が異なる量の回生制動トルクを利用可能である、例示的アクセルペダル401について本発明を示す図である。
【
図4D】同一のEVについて特定の時点に対応し、運転者が異なる量の回生制動トルクを利用可能である、例示的アクセルペダル401について本発明を示す図である。
【0015】
【
図5】
図4A〜
図4Dに示す例示的実施形態について、利用可能な回生制動トルクに対する、完全解放時のアクセルペダル位置を、グラフを用いて示す図である。
【0016】
【
図6】本発明の少なくとも1つの実施形態で使用される主な構成部品、アセンブリおよびサブシステムのブロック図である。
【0017】
【
図7A】フロアに取り付けたアクセルペダルとともに使用する場合のペダルアクチュエータについて、考えられる1つの取付け位置を示す図である。
【
図7B】フロアに取り付けたアクセルペダルとともに使用する場合のペダルアクチュエータについて、考えられる1つの取付け位置を示す図である。
【
図7C】フロアに取り付けたアクセルペダルとともに使用する場合のペダルアクチュエータについて、考えられる1つの取付け位置を示す図である。
【0018】
【
図8A】吊り下げたアクセルペダルとともに使用する場合のペダルアクチュエータについて、考えられる1つの取付け位置を示す図である。
【
図8B】吊り下げたアクセルペダルとともに使用する場合のペダルアクチュエータについて、考えられる1つの取付け位置を示す図である。
【
図8C】吊り下げたアクセルペダルとともに使用する場合のペダルアクチュエータについて、考えられる1つの取付け位置を示す図である。
【0019】
【
図9】車両が停車した際に回生制動がゼロになるように、予め設定された低速度で制動トルクを減少させる予め規定されたペダルトルクマップを、グラフを用いて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書では、文脈がそうではないことを明確に示さない限り、単数形の「a」、「an」および「the」は、複数形も含むことを意図する。本明細書中の「含む」、「備える」、および/または「有する」(「comprises」、「comprising」、「includes」、および/または「including」)といった語は、記載された特徴、完全体、段階、動作、要素、および/または構成部品の存在を特定するが、1つもしくは複数の他の特徴、完全体、段階、動作、要素、構成部品、および/またはこれらの群の存在ならびに追加を排除しない。本明細書中では、「および/または」といった表現および「/」といった記号は、互いに関連する書き出した項目のうちの1つまたは複数の任意の組合せおよび全ての組合せが含まれることを意図する。さらに、様々な段階または計算を説明するために、第1、第2などの表現が本明細書中で使用され得るが、これらの段階または計算は、これらの表現により限定されるべきではなく、こうした表現は、1つの段階または計算を他の段階または計算と区別するためのみに使用される。例えば、第1の計算を第2の計算と呼ぶことも可能であり、同様に、第1の段階を第2の段階と呼ぶことも可能であり、同様に、第1の構成部品を第2の構成部品と呼ぶことも可能であり、これらは全て、本開示の範囲から逸脱することなく行われる。本明細書中の「バッテリパック」という語は、所望の電圧および容量を実現するために電気的に相互に接続された1つまたは複数のバッテリを指す。「電気車両」および「EV」といった表現は、区別なく使用してよく、全電気車両、プラグインハイブリッド車両を指すこと、PHEVまたはハイブリッド車両を指すこと、HEVを指すことができ、ただし、ハイブリッド車両は、電気駆動システムを含めた複数の推進力源を利用する。本明細書では、「駆動トルク」は、走行方向にかかるトルクを指し、「制動トルク」は、走行方向とは反対の方向にかかるトルクを指す。したがって、自動車が前進方向に走行している場合、駆動トルクは、自動車の前方への動きを促進および維持するモータトルクを指し、制動トルクは、自動車を減速させるために、反対方向にかかるモータトルクを指す。同様に、自動車が後ろ方向に走行している場合、駆動トルクは、自動車の後方への動きを促進および維持するモータトルクを指し、制動トルクは、自動車の後方への動きを減速させるために、反対方向にかかるモータトルクを指す。
【0021】
図1は、例示的EVについて、車両速度に対する最大回生制動トルクを、グラフを用いて示す。曲線101が示すように、低車両速度では、利用可能な最大回生制動トルクは非常に高く、すなわち約−42%である。これらの低速では、制動トルクが、主にEVのモータにより制限されるので、相対的に一定に維持される。曲線のこうした側面は、部分103により表される。この特定のEVでは、車両が約30mph(48km/h)の速度に達した後、利用可能な最大回生制動トルクが、徐々に減少し始める(すなわち、曲線101の部分105)。曲線の部分105で示される減少トルクは、車両のバッテリパックの制限に起因する。この曲線の目的上、回生システムが、バッテリパックに貯蔵することが可能な量を超えるエネルギーを生成することはないこと、すなわち、バッテリパックのSOCは常に100%未満であることが想定されることに留意されたい。したがって、曲線101に影響するバッテリの制限は、主に最大充電電力に基づく。
【0022】
図2および
図3は、アクセルペダルを介して運転者に回生制動を提供する一般的な手法を示す。完全踏込み(すなわち、位置203として示す100%踏込み)と完全開放(すなわち、位置205として示す0%踏込み)との間の動き範囲でのアクセルペダル201を
図2に示す。完全踏込み位置と完全開放位置との間には、部分的踏込みペダル位置207がある。この例では、部分的踏込み位置207は、30%のペダルの踏込みで位置づけている。
【0023】
図3は、20mph(32km/h)で走行している一般的な先行技術EVでのアクセルペダル特性を、グラフを用いて示す。このグラフは、パワートレイントルク要求対アクセルペダル位置を具体的に示す。ペダル201が部分的踏込みペダル位置207にある時、パワートレインはトルクを生成していない。この位置を、一般に中間点と称する。運転者が、完全踏込み位置203に向かって中間位置を超えてペダルを踏み込む場合、パワートレインが駆動トルクを生成し、自動車が加速する。運転者が、中間位置を超えて、すなわち、完全開放位置205に向かって、かつ/または完全開放位置205でペダルを解放する場合、パワートレインが制動トルクを生成し、自動車が減速する(すなわち、回生制動により車両が減速される)。
【0024】
上記のアクセルペダルの構成により、少なくとも限られた範囲内で運転者が1つのペダル駆動を利用することが可能になるが、利用可能な回生トルクの変動に起因して、このシステムは、一貫性のあるフィードバックを運転者に提供しない。例えば、この例示的システムに基づくと、20mph(32km/h)で進行する間、運転者がペダルを完全に解放すると、パワートレインは、約−150Nmの制動トルクを生成する。しかし、60mph(97km/h)で進行する間に、運転者がペダルを同じ位置まで解放すると、パワートレインは、約−100Nmの制動トルク(すなわち、
図1に示す利用可能な最大制動トルク)しか生成しない。よりいっそう大きな問題は、運転者がこのペダル位置を維持した場合に起こる事柄である。具体的には、このペダル位置を維持すると、車両が60mph(97km/h)から減速されるにつれて、制動トルクの量が増加することである。この一貫性の欠如により、全ての人にとって、特に、運転初心者、相対的に高齢の運転者、およびたまにしか運転を行わないユーザにとって、運転体験が、楽しさの低減されたもの、また、より困難なものになり得、したがって、その人たちは、このペダル構成を、従来型のICEベースの車両に見られるこれまでのアクセルペダル構成よりも直感的でないと考え得る。
【0025】
従来型のEVアクセルペダルでの一貫性の欠如を解消するために、本発明では、利用可能な回生制動トルクに基づいて、アクセルペダルが完全に解放された時のアクセルペダルの位置を制御する。この結果、利用可能な回生制動トルクについて、直接的で一定のフィードバックが運転者に提供される。
【0026】
図4A〜
図4Dは、例示的アクセルペダル401について本発明を示す図であって、それぞれが、同一のEVについて特定の時点に対応し、運転者が異なる量の回生制動トルクを利用可能である様の図である。説明目的で、本発明を明確にするのに役立つように、これら図面のそれぞれで運転者の足403は、アクセルペダルの面に置くのではなく、同じ位置で示されている。本明細書中で詳細に説明するように、アクチュエータ405が、ペダルの解放位置、すなわち、ペダルが踏込み0%で完全に解放されるペダル位置を位置づける。アクチュエータ405によりもたらされる解放位置は、利用可能な回生制動トルクに基づく。このトルクは、バッテリパック特性、パワートレイン特性、および車両特性(例えば、車両速度)に基づく。解放ペダル位置は中間ペダル位置407に関連して与えられ、ただし、この中間ペダル位置は、パワートレインがトルクを全くかけない、すなわち正のトルクも、負のトルクもかけない位置として規定されることに留意されたい。
【0027】
図4Aでは、完全解放ペダルの位置409は、最も離れたペダルの位置、すなわち、ペダル位置409と中間ペダル位置407との間の距離411が最大になる位置である。好適な実施形態では、この位置が、最大回生制動トルクを利用可能であることを運転者に示す。したがって、
図1に示すシステムでは、このペダル位置が、曲線101の部分103に対応する。
【0028】
図4Bでは、完全解放ペダルの位置413が、最も低い位置、すなわち、完全解放ペダル位置(つまり、位置413)と中間ペダル位置(つまり、位置407)に差がない位置である。好適な実施形態では、この位置が、利用可能な回生制動トルクが存在しないことを運転者に示す。
【0029】
図4Cおよび
図4Dでは、利用可能な回生制動トルクは、0%(すなわち、
図4Bに示すペダル位置413)と、利用可能な最大回生制動トルク(すなわち、
図4Aに示すペダル位置409)との間である。
図4Cでは、完全解放ペダル位置(すなわち、位置415)が、
図4Dに示す完全開放ペダル位置(すなわち、位置417)よりも、ペダル位置409の近くにある。これは、
図4Dに表す時点よりも、
図4Cに表す時点の方が多くの回生制動トルクを運転者が利用可能であることを示す。
【0030】
図5は、
図4A〜
図4Dに示す例示的実施形態を、グラフを用いて示す。図示のように、曲線501は、利用可能な回生制動トルクに対する、完全解放時のアクセルペダル位置を表し、ただし、アクセルペダル位置は、アクチュエータ405により決定される。データポイント503は、最大回生制動トルクが利用可能であるポイントを表し、したがって
図4Aに対応する。データポイント505は、利用可能な回生制動トルクが存在しないポイントを表し、したがって
図4Bに対応する。この例示的実施形態では、データポイント505は、30%のペダルの踏込みに対応し、ただし、30%のペダルの踏込みは、中間ペダル位置にも対応する。データポイント507および509は、それぞれ
図4Cおよび
図4Dに対応する。
【0031】
図6は、本発明の少なくとも1つの実施形態で使用される主な構成部品、アセンブリおよびサブシステムのブロック図を示す。図示のように、アクセルペダルアセンブリ601には、ペダルアクチュエータ603が取り付けられる。アクチュエータ603は、
図4A〜
図4Dのアクチュエータ405に対応する。本発明は特定のアクセルペダルアセンブリに限定されることも、特定のアクチュエータに限定されることもないことを理解されたい。
図7〜
図9は、いくつかの例示的ペダルアセンブリを示す。これらのアセンブリはそれぞれ、アクチュエータ711に連結するように示されており、したがって、ペダル解放位置を制御することが可能になる。アクチュエータ711については、切れ目なく変動するように動作してよく、または、一連の固定された個別的段階で動作してよい。アクチュエータ711は、DCモータ、例えば、ねじ機構に連結されたDCモータを利用するのが好ましい。
【0032】
好ましい実施形態ならびに従来型のEVの構成では、運転者がアクセルペダル601を踏み込む際に、ペダルの踏込みの度合いをセンサ605がモニタし、これにより、モータ制御サブシステム607が、モータ609の速度を制御することが可能になり、したがって、車両の速度を制御することが可能になる。モータ609を動作するのに必要な電力は、バッテリパック611内の1つまたは複数のバッテリにより提供される。当業者に理解されるように、ペダル位置センサ605をアクセルペダルアセンブリに統合することができる多数の方法が存在する。通常、センサ605はペダルリンケージに直接連結されるが、他の技術も使用され得る。
【0033】
本発明によれば、アクチュエータ603の制御、したがってアクセルペダル601の解放位置の制御は、制御ユニット613により実現される。ユニット613は、単独の電子制御ユニット(ECU)であってよく、または、車両の制御システムに統合されてよい。制御ユニット613は、上記のように、利用可能な回生制動トルクに基づいて、ペダル601の所望の解放位置を求める。利用可能な回生制動トルクを求めるためには、制御ユニット613は、モータ609のモータ特性を必要とする。通常、こうしたモータ特性は、メモリ614に保持されるルックアップテーブル内に含まれる。モータ特性のルックアップテーブルを使用することに代えて、またはモータ特性のルックアップテーブルを使用することに加えて、制御ユニット613が、直接的にモータ609をモニタしてもよく、またはモータコントローラ607を介してモータ609をモニタしてもよい。制御ユニット613は、車両速度も考慮する。図示の構成では、車両速度は、車両速度センサ165から得られる。さらに、制御ユニット613は、バッテリパックの状態を考慮しなければならない。図示の実施形態では、バッテリパック管理システム617が、適当なセンサのセットを使用して、バッテリパック611の状態および動作をモニタする。この情報を車両制御システムに提供して、バッテリパック性能を最適化することを可能にすることに加えて、バッテリパック管理システム617は、必要なバッテリパック情報および関連するバッテリパック情報の全てを制御ユニット613に提供する。管理システム617によりモニタされ得る特性のいくつかには、充電状態(SOC)、温度(すなわち、バッテリパック内部温度および/または個別バッテリ温度)、現在のバッテリパック容量、充電速度、放電速度、現在までの充電サイクル数、バッテリパック圧、バッテリパック湿度水準、閉回路、開回路などが含まれる。制御ユニット613に必ず通信されるものは、利用可能な回生制動トルクを求めることに関連する情報のみであることが理解されるであろう。制御ユニット613は、車両の回生システム619から入力されるデータも受信する。
【0034】
上記のように、ペダルアクチュエータは、任意の種類のアクセルペダルに連結され得る。
図7A〜
図7Cおよび
図8A〜
図8Cは、いくつかの例示的構成を示す。これらの図面はそれぞれ、アクセルペダル701および参照用の運転者の足703を含んでいる。さらに、これらの図面はそれぞれ、完全踏込み(705)、中間ペダル位置(707)、および完全解放(709)でのペダル位置を示す参照平面を提供する。本明細書で説明するように、完全解放位置はアクチュエータ711に依存することが理解されるであろう。アクチュエータ711は、所与の期間での利用可能な回生制動トルクに依存する。
図7A〜
図7Cは、フロアに取り付けたアクセルペダルの構成であって、アクチュエータ711をペダルアセンブリの最上部に連結した状態(
図7A)、アクチュエータ711をペダルアセンブリの底部に連結した状態(
図7B)、および、アクチュエータ711をペダルアセンブリの枢動点に連結した状態(
図7C)の構成を示す。
図8A〜
図8Cは、吊り下げたアクセルペダルの構成であって、アクチュエータ711をペダルアセンブリの最上部に連結した状態(
図8A)、アクチュエータ711をペダルアセンブリの底部に連結した状態(
図8B)、および、アクチュエータ711をペダルアセンブリの枢動点に連結した状態(
図8C)の構成を示す。本発明は他のアクセルペダルアセンブリおよび他のアクチュエータ構成にも等しく適用可能であることを理解されたい。
【0035】
上記の構成の一修正形態では、アクセルペダルの解放位置が、予め規定されたペダルトルクマップであって、バッテリパック特性、パワートレイン特性、および車両特性を考慮するだけでなく、車両が停車している(すなわち、0mph(0km/h))時に、高い回生トルクを命じることが望ましくないことも考慮したペダルトルクマップに従う。したがって、また、
図9の例示的ペダルトルクマップに示すように、予め定めた低車両速度(この例では10mph(16km/h))では、ペダルトルクマップは、利用可能回生制動トルクの曲線で認められるように、回生制動トルクが一定に保たれるのではなく、減少を開始することを指示する。このペースで制動トルクを減少させる結果、車両停車時にはゼロの回生制動が要求される。理解されるように、
図9に示すような予め規定されたペダルトルクマップを使用して、ペダルアクチュエータを制御し、こうして、アクセルペダルの解放位置を制御することにより、利用可能な回生制動トルクについて、信頼のできる直接的で、一定のフィードバックが運転者に提供される。
【0036】
本発明の詳細の理解への助けとして、システムおよび方法を総称で説明してきた。いくつかの例では、本発明の態様を不明瞭にすることを避けるために、周知の構造、材料、および/または動作については、具体的な図示または詳細な説明を行っていない。他の例では、本発明の完全な理解を実現するために、具体的詳細を提供した。例えば、特定のシステム、装置、状況、材料、または構成部品に適応するために、本発明の趣旨または本質的特性から逸脱することなく、本発明が他の具体的形式で体現され得ることを当業者は理解するであろう。したがって、本明細書中の開示および記載は、本発明の範囲を限定するのではなく、説明を行うことを意図している。