特許第6973715号(P6973715)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三重県の特許一覧 ▶ 公立大学法人兵庫県立大学の特許一覧 ▶ 株式会社 アイエスイーの特許一覧

<>
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000002
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000003
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000004
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000005
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000006
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000007
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000008
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000009
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000010
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000011
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000012
  • 特許6973715-大きな有害動物の自動捕獲装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973715
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】大きな有害動物の自動捕獲装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/20 20060101AFI20211118BHJP
   A01M 23/38 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   A01M23/20
   A01M23/38
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-205828(P2017-205828)
(22)【出願日】2017年10月25日
(65)【公開番号】特開2019-76024(P2019-76024A)
(43)【公開日】2019年5月23日
【審査請求日】2020年9月28日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、農林水産省、「野生鳥獣被害拡大への対応技術の開発委託事業」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】594156880
【氏名又は名称】三重県
(73)【特許権者】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(73)【特許権者】
【識別番号】512050014
【氏名又は名称】株式会社 アイエスイー
(74)【代理人】
【識別番号】230115336
【弁護士】
【氏名又は名称】山下 綾
(74)【代理人】
【識別番号】100071548
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 賢二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勲
(72)【発明者】
【氏名】高橋 完
(72)【発明者】
【氏名】山端 直人
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 敦史
【審査官】 星野 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−243956(JP,A)
【文献】 特開2017−038549(JP,A)
【文献】 特開2017−029076(JP,A)
【文献】 特開2006−223174(JP,A)
【文献】 特開2013−176318(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 23/20
A01M 23/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱罠と、その出入口の昇降可能な開閉扉と、その開閉扉を上記箱罠の出入口から上昇した開扉状態に仮り止め保持するトリガーと、そのトリガーを解放して上記出入口の閉扉状態に作動制御するコントローラーと、上記箱罠に対する有害動物の侵入状態を検知する焦電型赤外線センサーと、その侵入した有害動物への投光により、その有害動物までの距離を測定する反射型フォトセンサーとを備えた有害動物の自動捕獲装置において、
上記反射型フォトセンサーを有害動物の侵入方向に沿い並列する前後一対として、しかもその前後相互間隔が捕獲すべき有害動物の大きさに応じて予め広く又は狭く設定されたそれとして、上記箱罠の上面へ固定設置し、
上記焦電型赤外線センサーが有害動物の侵入状態を検知した出力信号に基いて、前後一対の反射型フォトセンサーを起動させると共に、
その起動中の両反射型フォトセンサーが同時に反応して、その何れも有害動物への投光により有害動物までの距離を測定した数値が、地面までの測定距離として予め設定された数値以下であると検知した時に出力する信号に基いて、コントローラーが開閉扉のトリガーを解放すべく作動制御することを特徴とする大きな有害動物の自動捕獲装置。
【請求項2】
箱罠と、その出入口の昇降可能な開閉扉と、その開閉扉を上記箱罠の出入口から上昇した開扉状態に仮り止め保持するトリガーと、そのトリガーを解放して上記出入口の閉扉状態に作動制御するコントローラーと、上記箱罠に対する有害動物の侵入状態を検知する焦電型赤外線センサーと、その侵入した有害動物への投光により、その有害動物までの距離を測定する反射型フォトセンサーとを備えた有害動物の自動捕獲装置において、
上記反射型フォトセンサーを有害動物の侵入方向に沿い並列する前後一対として、しかもその前後相互間隔が捕獲すべき有害動物の大きさに応じて予め広く又は狭く設定されたそれとして、上記箱罠の上面へ固定設置し、
上記焦電型赤外線センサーが有害動物の侵入状態を検知した出力信号に基いて、前後一対の反射型フォトセンサーを起動させると共に、
その起動中の両反射型フォトセンサーが同時に反応して、その何れも有害動物への投光により有害動物までの距離を測定した数値が、捕獲すべき有害動物までの最長距離として予め設定された数値以下であると検知した時に出力する信号に基いて、コントローラーが開閉扉のトリガーを解放すべく作動制御することを特徴とする大きな有害動物の自動捕獲装置。
【請求項3】
両反射型フォトセンサーが測定する捕獲すべき有害動物までの最長距離を、予め長く又は短く設定しておくことを特徴とする請求項2記載の大きな有害動物の自動捕獲装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有害動物の目標とする大きな個体だけを確実に捕獲できる自動捕獲装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の出願人は特許文献1に記載の特許発明を実施して、現在までに相当の成果を収めることができた。
【0003】
この特許発明に係る有害動物の捕獲装置では、箱罠(C)の内部へ侵入した有害動物(A)を焦電型赤外線センサー(4)が検知した時、その検知出力信号に基いて別な反射型光電スイッチ(5)を起動させ、これからの投光を上記有害動物(A)へ当てて、その有害動物(A)との距離を測定することにより検知した個体の大きさが、予め設定された大きさ以上である時に、その光電スイッチ(5)の検知出力信号を受けたマイクロコントローラー(6)が、箱罠(C)の開閉扉用トリガー(2)を解放して、その出入口(1)の閉扉状態に作動制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5696997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許発明の構成では有害動物における捕獲したい大きさの目標数値(上記反射型光電スイッチの測定距離)を、有害動物の種別などに応じて大きく又は小さく調整した状態として、予め正しく設定しておいたとしても、使用中箱罠の内部に餌の残りが堆積すると、それだけ地面(又は箱罠の底面)が次第に盛り上がり、その設定された目標数値が狂う(変化する)ため、目標数値よりも小さい個体を誤って捕獲してしまうおそれがあり、信頼性に劣る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題の改良を目的としており、その目的を達成するために、請求項1では箱罠と、その出入口の昇降可能な開閉扉と、その開閉扉を上記箱罠の出入口から上昇した開扉状態に仮り止め保持するトリガーと、そのトリガーを解放して上記出入口の閉扉状態に作動制御するコントローラーと、上記箱罠に対する有害動物の侵入状態を検知する焦電型赤外線センサーと、その侵入した有害動物への投光により、その有害動物までの距離を測定する反射型フォトセンサーとを備えた有害動物の自動捕獲装置において、
【0007】
上記反射型フォトセンサーを有害動物の侵入方向に沿い並列する前後一対として、しかもその前後相互間隔が捕獲すべき有害動物の大きさに応じて予め広く又は狭く設定されたそれ(間隔)として、上記箱罠の上面へ固定設置し、
【0008】
上記焦電型赤外線センサーが有害動物の侵入状態を検知した出力信号に基いて、前後一対の反射型フォトセンサーを起動させると共に、
【0009】
その起動中の両反射型フォトセンサーが同時に反応して、その何れも有害動物への投光により有害動物までの距離を測定した数値が、地面までの測定距離として予め設定された数値以下であると検知した時に出力する信号に基いて、コントローラーが開閉扉のトリガーを解放すべく作動制御することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2では箱罠と、その出入口の昇降可能な開閉扉と、その開閉扉を上記箱罠の出入口から上昇した開扉状態に仮り止め保持するトリガーと、そのトリガーを解放して上記出入口の閉扉状態に作動制御するコントローラーと、上記箱罠に対する有害動物の侵入状態を検知する焦電型赤外線センサーと、その侵入した有害動物への投光により、その有害動物までの距離を測定する反射型フォトセンサーとを備えた有害動物の自動捕獲装置において、
【0011】
上記反射型フォトセンサーを有害動物の侵入方向に沿い並列する前後一対として、しかもその前後相互間隔が捕獲すべき油外動物の大きさに応じて予め広く又は狭く設定されたそれ(間隔)として、上記箱罠の上面へ固定設置し、
【0012】
上記焦電型赤外線センサーが有害動物の侵入状態を検知した出力信号に基いて、前後一対の反射型フォトセンサーを起動させると共に、
【0013】
その起動中の両反射型フォトセンサーが同時に反応して、その何れも有害動物への投光により有害動物までの距離を測定した数値が、捕獲すべき有害動物までの最長距離として予め設定された数値以下であると検知した時に出力する信号に基いて、コントローラーが開閉扉のトリガーを解放すべく作動制御することを特徴とする。
【0014】
更に、上記請求項2に従属する請求項3では両反射型フォトセンサーが測定する捕獲すべき有害動物までの最長距離を、予め長く又は短く設定しておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の上記構成によれば、冒頭に述べた従来技術の課題を容易に改良でき、有害動物の目標とする大きな個体だけを確実に捕獲し得る効果がある。
【0016】
つまり、有害動物の侵入状態を検知した焦電型赤外線センサーの出力信号に基き、その起動中にある第1、2反射型フォトセンサーが同時に反応して、何れも有害動物への投光により有害動物までの距離を測定することは、その有害動物の大きさ(胴長さ)を検知することにほかならず、そのため上記反射型フォトセンサーからの検知出力信号に基いて、コントローラーが開閉扉のトリガーを解放すべく作動制御することにより、有害動物の目標とする大きな個体だけを確実に捕獲でき、誤って小さな個体(幼獣)を捕獲してしまうおそれはない。
【0017】
その場合、第1、2反射型フォトセンサーにより有害動物までの距離を測定した数値と言わば比較されるべき予めの設定値(基準値)は、地面までの測定距離として一定不変であるため、箱罠の内部に餌の残りが堆積して、有害動物における捕獲したい大きさ(背丈)の設定値が経時的に変化しても(狂っても)、その悪影響を受けることはない。その結果、上記大きさ(背丈)の設定値を再三調整しなければならない煩雑な作業が不要となる。
【0018】
他方、請求項2の構成によれば、請求項1の上記構成に比して、捕獲したい有害動物の大きさを予め設定するに当り、その胴長さの設定のみならず、背丈の設定も行う必要があるとしても、その背丈も検知した第1、2反射型フォトセンサーの出力信号により、コントローラーが開閉扉のトリガーを解放すべく作動制御するようになっているため、有害動物の目標とする大きな個体だけを完全に捕獲することができ、その信頼性に優れる。
【0019】
何れにしても、第1、2反射型フォトセンサーの前後相互間隔は捕獲目標とする有害動物の大きさ(胴長さ)に応じて、予め広く(長く)又は狭く(短く)調整・設定されているため、自動捕獲装置としての汎用性や使用上の利便性が著しく向上する。
【0020】
その場合、請求項3の構成を採用するならば、有害動物における胴長さの検知のみならず、背丈も検知した結果に基いて、その捕獲すべき個体の大きさを決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1本発明に係る有害動物の自動捕獲装置をその箱罠の開扉状態として示す全体概略斜面図である。
図2図1の要部を拡大して示す側断面図である。
図3図2の3−3線に沿う拡大断面図である。
図4箱罠の閉扉状態を示す図2に対応する側断面図である。
図5自動捕獲装置の電気配線系統を示すブロック図である。
図6トリガーの変形実施形態を示す図1に対応する概略側面図である。
図7基本仕様の捕獲作用を示すフローチャートである。
図8図7に対応する大きな有害動物の検知作用を示す説明図である。
図9同じく基本仕様の非捕獲作用を示すフローチャートである。
図10図9に対応する小さな有害動物の検知作用を示す説明図である。
図11変形仕様の捕獲作用を示すフローチャートである。
図12図11に対応する有害動物の検知作用を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基いて本発明の好適な実施形態を詳述すると、その有害動物の自動捕獲装置は図1〜5のような1個の出入口(1)を有する堅牢な箱罠(檻)(T)と、その出入口(1)の開閉扉(D)と、その開閉扉(D)を出入口(1)から上昇した開扉状態に仮り止め保持するトリガー(2)と、そのトリガー(2)を解放して、上記開閉扉(D)を出入口(1)の閉扉状態に落下させるアクチュエーター(3)と、上記箱罠(T)に対する有害動物(A)の侵入状態を検知する1個の焦電型赤外線センサー(4)と、その赤外線センサー(4)が有害動物(A)の侵入状態を検知した出力信号に基いて起動されることにより、その有害動物(A)における個体の大きさを検知する前後一対の第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)と、その第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)が同時に反応して、上記個体の大きいことを検知した時、そのフォトセンサー(5)(6)の検知出力信号に基いて上記アクチュエーター(3)をトリガー(2)が解放するように作動制御するためのコントローラー(制御装置/電気制御回路基板)(7)とを備え、有害動物(A)の目標とする大きな個体だけを自ずと確実に捕獲でき、小さな個体(幼獣)を誤って捕獲しないようになっている。
【0023】
上記コントローラー(7)とこれに接続配線されたアクチュエーター(3)、上記焦電型赤外線センサー(4)、上記第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)の何れか一方(図例では前側の第1反射型フォトセンサー)並びにその他の後述する電装品は、1個の共通する制御ボックス(C)に内蔵されており、他方の反射型フォトセンサー(図例では後側の第2反射型フォトセンサー)(6)を内蔵した別個なセンサーボックス(S)と上記制御ボックス(C)とが、適当な長さのケーブル(8)を介して電気的に接続配線されている。
【0024】
上記主要な構成部材のうち、先ず箱罠(檻)(T)はフラットバーやアングル形鋼、チャンネル形鋼、鉄筋などの強固な縁取り骨材(9)から、鹿や猪、熊、その他の各種有害動物(A)を自由に受け入れることができる大きさのほぼ直方体(例えば幅:約1m×長さ:約2m×高さ:約1m)に枠組み一体化されており、その出入口(1)を除く5面(上下両面と囲い壁面)が、悉く金属格子や金網(ワイヤーラス)、メタルラス、その他の交錯線条材(10)から、内部全体を透視できる形態に作成されている。
【0025】
(11)は上記箱罠(T)の出入口(1)を形作る左右一対の背高い昇降ガイド支柱(開口枠)であって、向かい合う溝レール(12)を有するチャンネル形鋼から成り、これに沿って出入口(1)の開閉扉(D)が昇降するようになっている。その開閉扉(D)も金属格子やメタルラスなどの交錯線条材(13)と、その周囲の正方形又は長方形な縁取り骨材(14)とから作成されている。
【0026】
上記開閉扉(D)は自重落下式であって、その出入口(1)の開扉状態(上昇状態)を示した図1、2から明白なように、一定の長さを有する扉吊持ワイヤー(15)の切り離し端部(基端部)が、上記開閉扉(D)の下端中央部に取り付け固定されていると共に、その開閉扉(D)の下端中央部から箱罠(T)の上面に沿って後方へ引き出された扉吊持ワイヤー(15)の半折り中間部(先端部)が下向きの係止フック(16)として、丸棒材から成るストッパー(17)の円周面ヘ巻き掛け状態に係止されている。
【0027】
そのストッパー(17)は前後方向に沿って延在する一定長さのピン形状をなし、図1、2のように箱罠(T)の上面へ内側から当てがわれて、その上面の交錯線条材(10)と係止した状態にあるが、その状態のままでは扉吊持ワイヤー(15)を介して、開閉扉(D)の重量を受担するため、そのワイヤー(15)との係止状態を到底維持することができず、飛散してしまうことになる。
【0028】
この事態を防ぐための上記トリガー(2)は、図1、2のような左右方向に沿って延在する一定長さの板材や棒材から成り、箱罠(T)の上面へやはり内側から上記ストッパー(17)と平面視での交叉(好ましくは直交)する関係状態に当てがわれて、そのストッパー(17)を上方から押え付け拘束することにより、上記開閉扉(D)を図1、2のような箱罠(T)の出入口(1)から上昇した開扉状態に仮り止め保持する。
【0029】
つまり、上記扉吊持ワイヤー(15)の先端部へ係脱自在に係止されるストッパー(17)と、そのストッパー(17)を上方から押え付け拘束するトリガー(2)とによって、上記開閉扉(D)が昇降し得る人工的な仕掛けを形作っており、そのトリガー(2)をアクチュエーター(3)によって前後方向へ進退(移動)させるようになっているのである。但し、その場合ストッパー(17)は飛散しないように、これを扉吊持ワイヤー(15)の先端部へ予め取り付け一体化しておいても良い。
【0030】
上記トリガー(2)のアクチュエーター(3)は図例の場合、バッテリ(18)を直流電源として回転駆動されるモーターから成り、そのモーター出力軸(19)上のリール(20)に巻き付けられる索条(紐やロープ、ワイヤーなど)(21)の先端部が、上記トリガー(2)に取り付け固定されている。
【0031】
そのトリガー(2)をアクチュエーター(モーター)(3)によって図4のように引き戻し後退させれば、上記扉吊持ワイヤー(15)の先端部にあるストッパー(17)と、トリガー(2)との係止状態が解除されることになるため、上記開閉扉(D)が自重によって瞬時に落下し、その箱罠(T)における出入口(1)の閉扉状態を得られる。
【0032】
図1〜5では一定長さの板材や棒材から成るトリガー(2)を、アクチュエーター(モーター)(3)の回転によって進退(移動)させているが、図6の変形実施形態に示すような上記扉吊持ワイヤー(15)の先端部に取り付けられた鉄やニッケル、フェライトなどの磁性体(22)と、上記制御ボックス(C)に固定支持された電磁ホルダー(23)とから成る電子トリガー(マグネット式仕掛け)(24)を採用し、そのバッテリ(18)から給電されていない状態において磁力を発生する電磁ホルダー(23)が、磁性体(22)を吸着することにより、上記出入口(1)の開閉扉(D)を上昇させた開扉状態に仮り止め保持すると共に、上記電磁ホルダー(23)へ給電すれば、そのホルダー(23)は磁力を発生せず、上記吸着力が解除されることにより、開閉扉(D)は瞬時に落下して、その出入口(1)を閉扉状態に保つように定めても良い。
【0033】
先に一言した制御ボックス(C)は、防錆処理した金属製又は高強度な合成樹脂製のボックス本体(25)とその開閉蓋(26)とから成り、上記箱罠(T)の上面へ図1〜4のように、外側から取り付け固定されるようになっている。その制御ボックス(C)の大きさは一例として、幅:約13cm×長さ:約23cm×高さ:約11cmのほぼ直方体であり、約1kgの重量を有する。
【0034】
この点、図例のボックス本体(25)は断面ほぼU字形の合成樹脂成形品であり、これに同じ合成樹脂から成形された断面ほぼ倒立U字形の開閉蓋(26)が、一対の水平なヒンジ(蝶番)(27)を介して起伏的な回動自在に枢着されているが、その内部の防水状態に保たれるならば、上記制御ボックス(C)のボックス本体(25)とその開閉蓋(26)とを着脱自在(分離可能)に組み立てても良い。
【0035】
そして、上記ボックス本体(25)の底面を図2〜4に示す如く、内側から複数の短かいボルト(28)によって、枕木(29)へ取り付け固定する。他方、上記箱罠(T)の上面へ内側から座金(30)を水平に当てがうと共に、上記枕木(29)をやはりボックス本体(25)の内側から複数の長いボルト(31)によって、上記座金(30)のネジ孔(32)へ螺合締結するのである。
【0036】
そうすれば、上記短かいボルト(28)と長いボルト(31)の何れも、ボックス本体(25)の内側からでなければ、工具を使って回動操作できないため、その閉蓋された制御ボックス(C)を、箱罠(T)へ盗難のおそれがない状態に固定維持することができることになる。(33)は上記ボックス本体(25)とその開閉蓋(26)との閉合片(34)へ、抜き差し自在に差し込み貫通された錠前であり、これによる施錠も盗難防止に役立つ。
【0037】
但し、上記座金(30)のネジ孔(32)に対する長いボルト(31)の螺合締結に代えて、そのボックス本体(25)の枕木(29)を箱罠(T)の上面における交錯線条材(10)へ、図外の結束線材などによって巻き付け固定しても良く、その箱罠(T)への取り付け固定手段は適当に選定することができる。
【0038】
上記制御ボックス(C)の就中ボックス本体(25)には図2〜4から明白なように、上記トリガー(2)のアクチュエーター(モーター)(3)を初め、その直流電源のバッテリ(18)、コントローラー(制御装置/電気制御回路基板)(7)、操作板(35)、焦電型赤外線センサー(4)並びに第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)の何れか一方(図例では前側の第1反射型フォトセンサー)が内蔵設置されている。
【0039】
その場合、図例の操作板(35)は倒立L字型の金属板から成り、その水平板片(35a)の下面(裏側)にコントローラー(7)が付属一体化されていると共に、同じく金属板の垂直板片(35b)に面ファスナー(36)などの固定具を介して、上記バッテリ(18)が着脱自在に貼り付けられている。
【0040】
(37)は上記ボックス本体(25)内の底面に固定設置された取付台盤であって、合板や合成樹脂板などの電気絶縁材から成り、これに上記トリガー(2)のアクチュエーター(モーター)(3)や操作板(35)、焦電型赤外線センサー(4)、第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)の何れか一方(図例では前側の第1反射型フォトセンサー)が取り付けられている。
【0041】
その第1反射型フォトセンサー(5)は図8のような投光部(5a)と受光部(5b)とを備えた反射型(好ましくは反射ミラーの不要な直接/拡散反射型)のフォトセンサー(光電スイッチ)として、焦電型赤外線センサー(4)と同じく上記取付台盤(37)へ下向き状態に埋設されている。(38)(39)は上記ボックス本体(25)の底面に開口分布された前後一対の光透過孔、(40)は上記バッテリ(18)を受け持つクッション座である。
【0042】
また、上記制御ボックス(C)のボックス本体(25)には外部から操作できる電源スイッチ(41)が取り付けられており、その電源スイッチ(41)と上記焦電型赤外線センサー(4)並びに第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)は図5のブロック図に示す如く、すべて上記コントローラー(7)に接続配線されているが、その電気配線は図示省略してある。
【0043】
上記焦電型赤外線センサー(4)は有害動物(A)の動き(受光する熱線量の変化)に反応して、その箱罠(T)に対する有害動物(A)の侵入状態を検知するものであり、図例ではこれを箱罠(T)の上面に固定設置しているが、その箱罠(T)に対する有害動物(A)の侵入状態を検知できる限り、箱罠(T)の囲い壁面や出入口(1)の付近に固定設置しても良く、また箱罠(T)から離れた適当個所に据え付けてもさしつかえない。
【0044】
更に、他方の反射型フォトセンサー(図例では後側の第2反射型フォトセンサー)(6)を内蔵するセンサーボックス(S)も図1、2のように、上記制御ボックス(C)と同じくボックス本体(42)とその開閉蓋(43)とから、比較的小型のほぼ直方体に作成されており、そのボックス本体(42)の底面が上記箱罠(T)の上面へ、やはり盗難のおそれがない状態に取り付け固定されている。
【0045】
そして、上記ボックス本体(42)内の底面にはやはり電気絶縁材から成る取付台盤(44)が固定設置されており、その取付台盤(44)に上記第2反射型フォトセンサー(6)が下向き状態に埋設されている。その第2反射型フォトセンサー(6)も上記第1反射型フォトセンサー(5)と同じく、図8のような投光部(6a)と受光部(6b)を備えた反射型(望ましくは反射ミラーの不要な直接/拡散反射型)のフォトセンサー(光電スイッチ)である。(45)はそのボックス本体(42)の底面に開口形成された光透過孔である。
【0046】
尚、そのセンサーボックス(S)内の第2反射型フォトセンサー(6)が図5のブロック図に示す如く、上記制御ボックス(C)内の第1反射型フォトセンサー(5)やコントローラー(7)などと電気的に接続配線されていることは言うまでもない。
【0047】
何れにしても、上記第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)はその各別な制御ボックス(C)とセンサーボックス(S)を介して箱罠(T)の上面へ、その箱罠(T)の出入口(1)から侵入する有害動物(A)の侵入方向(前後方向)(F)に沿い並列する前後一対として固定設置されており、その何れも有害動物(A)へ投光して、有害動物(A)までの距離(Y1)(Y2)を測定することにより、その有害動物(A)の大きさ(背丈)を検知するようになっている。
【0048】
しかも、その前後一対の第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)は同時に反応して、上記有害動物(A)からの反射光を受けることにより、その有害動物(A)の大きさ(所謂胴長さ)を検知するようになっている。
【0049】
そのため、両反射型フォトセンサー(5)(6)の前後相互間隔(L)を有害動物(A)の種別やその捕獲したい個体の大きさ(胴長さ)などに応じて、予め広く(長く)又は狭く(短く)調整・設定しておくことにより、目標とする動物種の大きな個体だけを捕獲できることになる。
【0050】
つまり、図7〜10の基本仕様に示す如く、第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)の電源オンした初期動作時に、予め地面までの距離(H)を自動測定し、その測定した一定距離(H)を言わば不変の設定値(基準値)(H)として確保しておけば、上記第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)により有害動物(A)までの距離(Y1)(Y2)を測定した数値は、必らずその設定値(基準値)(H)以下となるため、上記第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)の同時反応により有害動物(A)の大きさ(胴長さ)を検知した結果に基いて、その捕獲すべき個体の大きさを決めれば良い。
【0051】
但し、予め地面までの距離(H)を測定することにより、その測定値(H)を一定不変の設定値(基準値)(H)として確保しておくことをせず、図11、12の変形仕様に示す如く、第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)が測定する有害動物(A)までの最長距離(h)を、有害動物(A)の種別やその捕獲したい個体の大きさ(背丈)などに応じて、予め長く(遠く)又は短く(近く)調整・設定しておくことにより、有害動物(A)における上記胴長さの検知のみならず、背丈も検知した結果に基いて、その捕獲すべき個体の大きさを決めても良い。
【0052】
つまり、第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)により有害動物(A)までの距離(Y1)(Y2)を測定した数値が、捕獲すべき有害動物(A)までの最長距離(h)として予め設定された数値以下であれば、その有害動物(A)はボーダーレベル(B−B)よりも高い背丈の大きな個体として検知されたことになるため、これを捕獲する一方、第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)による上記距離(Y1)(Y2)の測定値が最長距離(h)としての設定値以上であれば、その有害動物(A)はボーダーレベル(B−B)よりも低い背丈の小さな個体として検知された意味であるため、これを捕獲せず、見逃すことにする。
【0053】
次に、本発明の使用による有害動物(A)の捕獲方法を説明すると、その箱罠(檻)(T)を目標とする鹿や猪、熊などの有害動物(A)が出没する現場に据付けた上、図1、2のように、その扉吊持ワイヤー(15)の先端部を後方へ引き出す一方、箱罠(T)の上面に固定されている制御ボックス(C)から、アクチュエーター(モーター)(3)の索条(21)を逆な前方へ導出させて、その扉吊持ワイヤー(15)側のストッパー(17)とアクチュエーター(3)側のトリガー(2)とを係脱自在に係止させることにより、その箱罠(T)における出入口(1)の開閉扉(D)を上昇した開扉状態に仮り止め保持し、有害動物(A)が侵入できるように準備する。
【0054】
そして、図7、8の基本仕様に示す如く、上記制御ボックス(C)内の第1反射型フォトセンサー(5)とセンサーボックス(S)内の第2反射型フォトセンサー(6)とを初期動作させて、これらから地面までの距離(H)を自動測定し、その測定距離(H)を一定不変の設定値(基準値)として確保しておく。
【0055】
他方、目標とする有害動物(A)が好む図外の餌を、上記箱罠(T)の出入口(1)から内部まで誘導状態に並べ置き、上記設定後に閉蓋・施錠した制御ボックス(C)の電源スイッチ(41)を、使用者が外部からオン操作して、箱罠(T)の据付け現場から立ち去れば良い。
【0056】
このような準備状態での待機中に、その箱罠(T)の内部へ有害動物(A)が侵入し、その存在が焦電型赤外線センサー(4)によって検知された時には、図7のフローチャートから明白なように、その焦電型赤外線センサー(4)の検知出力信号を受けたコントローラー(7)により、前後一対の第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)が何れも起動されることになる。
【0057】
そして、その起動中にある両反射型フォトセンサー(5)(6)が同時に反応して、上記侵入状態の有害動物(A)へ各々投光することにより、その有害動物(A)までの距離(Y1)(Y2)を測定し、その測定された数値は上記地面までの測定距離(H)として予め設定された数値(基準値)よりも、必らず小さいものとして検知されることになるが、両反射型フォトセンサー(5)(6)の同時反応により上記有害動物(A)の大きさ(胴長さ)が検知されているため、その検知出力信号を受けた上記コントローラー(7)により、アクチュエーター(3)がそのトリガー(2)を図2から図4のように解放(引き戻し後退)すべく作動制御し、箱罠(T)における出入口(1)の開閉扉(D)を瞬時に落下させて、その有害動物(A)の目標とする大きな個体だけを確実に捕獲するのである。
【0058】
この点、図7、8と対応する捕獲しない作用を示す図9、10から示唆されるように、第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)の何れか一方(図例では前側の第1反射型フォトセンサー)は、箱罠(T)内の侵入した有害動物(A)に反応して、その有害動物(A)までの距離(Y1)を測定しているが、残る他方(図例では後側の第2反射型フォトセンサー)は有害動物(A)に反応しておらず、その有害動物(A)までの距離(Y2)は言わば無測定(零)として、予めの設定値である地面までの距離(H)と同等となるため、上記コントローラー(7)を制御するための検知出力信号は発生しない。
【0059】
つまり、第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)が同時に反応して、その何れも箱罠(T)内に居る有害動物(A)までの距離(Y1)(Y2)を測定・検知しない限り、その有害動物(A)を捕獲すべき目標とする大きさの個体とはみなさず、これによって目標よりも小さい個体(幼獣)までも誤って捕獲しないようになっているのである。
【0060】
図11、12は図7〜10と対応する変形仕様の作用説明図であるが、これでは第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)が同時に反応して、有害動物(A)の胴長さを検知した結果だけでなく、その有害動物(A)の背丈を検知した結果にも基いて、捕獲すべき個体の大きさを決めるために、上記第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)が測定する有害動物(A)までの最長距離(h)を、予め長く(遠く)又は短く(近く)設定している。
【0061】
そして、焦電型赤外線センサー(4)が有害動物(A)の侵入状態を検知した出力信号に基いて、前後一対の第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)が起動し、その起動中の両反射型フォトセンサー(5)(6)が同時に反応して、その何れも有害動物(A)までの距離(Y1)(Y2)を測定した数値が、捕獲すべき有害動物(A)までの最長距離(h)として予め設定された数値以下であると検知した時に出力する信号に基いて、上記コントローラー(7)が開閉扉(D)のトリガー(2)を解放すべく作動制御するようになっている。
【0062】
この点、図11、12の第1、2反射型フォトセンサー(5)(6)による有害動物(A1)(A2)までの測定距離(Y1)(Y2)は、予め設定された最長距離(h)よりも大きな数値であり、その有害動物(A1)(A2)は捕獲目標とする個体の大きさ(背丈)よりも小さい意味となるため、たとえ両反射型フォトセンサー(5)(6)が同時に反応したとしても、コントローラー(7)を制御するための検知出力信号は発生せず、上記有害動物(A1)(A2)を捕獲しないのである。
【符号の説明】
【0063】
(1)・・・出入口
(2)・・・トリガー
(3)・・・アクチュエーター(モーター)
(4)・・・焦電型赤外線センサー
(5)・・・第1反射型フォトセンサー
(6)・・・第2反射型フォトセンサー
(7)・・・コントローラー
(11)・・・昇降ガイド支柱(開口枠)
(15)・・・扉吊持ワイヤー
(18)・・・バッテリ
(21)・・・索条
(24)・・・電子トリガー
(25)(42)・・・ボックス本体
(26)(43)・・・開閉蓋
(35)・・・操作板
(37)(44)・・・取付台盤
(38)(39)(45)・・・光透過孔
(A)・・・有害動物
(B−B)・・・ボーダーレベル
(C)・・・制御ボックス
(D)・・・開閉扉
(S)・・・センサーボックス
(T)・・・箱罠
(F)・・・有害動物の侵入方向(前後方向)
(H)・・・地面までの測定距離(設定値)
(h)・・・有害動物までの最長距離(設定値)
(L)・・・反射型フォトセンサーの前後相互間隔
(Y1)(Y2)・・・有害動物までの測定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12