特許第6973718号(P6973718)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973718プラズマCVD装置、及びフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973718
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】プラズマCVD装置、及びフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/50 20060101AFI20211118BHJP
   C23C 16/511 20060101ALI20211118BHJP
   C23C 16/515 20060101ALI20211118BHJP
   C23C 16/54 20060101ALI20211118BHJP
   C23C 16/42 20060101ALI20211118BHJP
   C23C 16/32 20060101ALI20211118BHJP
   H05H 1/46 20060101ALI20211118BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20211118BHJP
   B32B 7/025 20190101ALI20211118BHJP
   B32B 37/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C23C16/50
   C23C16/511
   C23C16/515
   C23C16/54
   C23C16/42
   C23C16/32
   H05H1/46 B
   H05H1/46 L
   B32B15/08 K
   B32B7/025
   B32B37/00
【請求項の数】16
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-51429(P2018-51429)
(22)【出願日】2018年3月19日
(65)【公開番号】特開2019-163500(P2019-163500A)
(43)【公開日】2019年9月26日
【審査請求日】2020年11月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 一規
(74)【代理人】
【識別番号】100159581
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 勝誠
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100158540
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 博生
(74)【代理人】
【識別番号】100106264
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 耕治
(74)【代理人】
【識別番号】100187768
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 賢一
(72)【発明者】
【氏名】豊田 浩孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽香
(72)【発明者】
【氏名】慈幸 範洋
(72)【発明者】
【氏名】奈良井 哲
【審査官】 山田 貴之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−104174(JP,A)
【文献】 特開2005−159049(JP,A)
【文献】 特開2008−010683(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/194557(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/094140(WO,A1)
【文献】 特開2000−336196(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−0822275(KR,B1)
【文献】 特開2016−015436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00
H05H 1/46
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/314
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマCVDにより基材に成膜するプラズマCVD装置であって、
内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、
上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、
上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、
上記アンテナに正バイアスを印加する電源と
を備え、
上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされ、
上記保持機構が少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを有し、
上記成膜ロール以外の上記チャンバの構成部材が、絶縁部材で被覆されるプラズマCVD装置。
【請求項2】
プラズマCVDにより基材に成膜するプラズマCVD装置であって、
内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、
上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、
上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、
上記アンテナに正バイアスを印加する電源と
を備え、
上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされ、
上記保持機構が少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを有し、
上記成膜ロール及び上記アンテナ間の上記プラズマが生成される空間が、絶縁部材で覆われるプラズマCVD装置。
【請求項3】
上記電源がDCパルス電源である請求項1又は請求項2に記載のプラズマCVD装置。
【請求項4】
マイクロ波発生部と、
マイクロ波発生部で発生されたマイクロ波をチャンバ内に導入するための導波管と
をさらに備え、
上記導波管が上記アンテナに接続される請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプラズマCVD装置。
【請求項5】
上記アンテナが誘導結合型の電極であり、上記電極に上記電源が接続される請求項1、請求項2又は請求項3に記載のプラズマCVD装置。
【請求項6】
上記成膜ロールが上記アンテナに近接して配置される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプラズマCVD装置。
【請求項7】
プラズマCVD装置を用いて基材に皮膜を成膜するフィルムの製造方法であって、
上記プラズマCVD装置が、
内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、
上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、
上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、
上記アンテナに正バイアスを印加する電源と
を備え、
上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされ、上記保持機構が少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを有し、上記成膜ロール以外の上記チャンバの構成部材が、絶縁部材で被覆され、
上記アンテナに向けて上記成膜の原料ガスを供給する工程と、
上記電源が上記アンテナに正バイアスを印加する工程と
を有するフィルム製造方法。
【請求項8】
プラズマCVD装置を用いて基材に皮膜を成膜するフィルムの製造方法であって、
上記プラズマCVD装置が、
内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、
上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、
上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、
上記アンテナに正バイアスを印加する電源と
を備え、
上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされ、上記保持機構が少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを有し、上記成膜ロール及び上記アンテナ間の上記プラズマが生成される空間が、絶縁部材で覆われ、
上記アンテナに向けて上記成膜の原料ガスを供給する工程と、
上記電源が上記アンテナに正バイアスを印加する工程と
を有するフィルム製造方法。
【請求項9】
上記正バイアス印加工程で、DCパルス電源で上記アンテナに正バイアスを印加する請求項7又は請求項8に記載のフィルム製造方法。
【請求項10】
上記プラズマが、マイクロ波方式又は誘導結合方式で生成される請求項7、請求項8又は請求項9に記載のフィルム製造方法。
【請求項11】
上記保持機構が少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを有し、上記基材がロールツーロール方式で送給される請求項7から請求項10のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【請求項12】
上記基材が鉄、銅、アルミニウム、又は炭素を含む請求項7から請求項11のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【請求項13】
上記基材が、樹脂又はガラスを含む少なくとも1つの絶縁層と、少なくとも1つの導電層とを有する請求項7から請求項11のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【請求項14】
上記皮膜が絶縁性皮膜である請求項7から請求項13のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【請求項15】
上記原料ガスがヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含み、ケイ素、酸素及び炭素を含む上記皮膜が上記基材上に形成される請求項7から請求項14のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【請求項16】
上記原料ガスがアセチレン又はメタンを含み、炭素及び水素を含む上記皮膜が上記基材上に形成される請求項7から請求項14のいずれか1項に記載のフィルム製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマCVD装置、及びフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電気機器、電子機器の高性能化の要求に伴い、フレキシブルデバイスや軽量デバイスが求められている。特に、基材を熱伝導性が高い導電性のものとして、この基材に絶縁性皮膜を設けたフィルムは、発熱を伴う電池等のデバイス向けとして要求が高い。絶縁性皮膜を形成する方法としてスパッタリング、蒸着、化学蒸着(CVD:Chemical Vapor Deposition)等の方法が知られている。スパッタリングは相対的に成膜レートが低く、効率的な生産ができないおそれがある。また、基材に由来する欠陥を皮膜で覆う性能に劣り、皮膜の絶縁性の確保が困難な場合がある。蒸着は生産性に優れるが、膜質の制御を容易にできないおそれがある。CVDは生産性に優れ、成膜条件によって膜の密度などの特性を比較的容易に制御することが可能であり、ロールツーロール方式のプラズマCVD装置は、有機ELデバイス等向けに水蒸気を遮蔽する性能を備えたバリアフィルムの製造等に用いられている。
【0003】
ロールツーロール方式のCVD装置としては、ロールコータプラズマCVD装置が知られている。ロールコータプラズマCVD装置では1対の成膜ロール間に、一方の電極と他方の電極とが交互に極性が反転する電源を接続し、この1対の成膜ロール間に原料ガスを供給してプラズマを発生させ、プラズマ中に生成されるイオンを当該バイアスにより成膜ロール方向へ加速し、成膜ロールで送給される絶縁基材に絶縁性皮膜を形成するものが知られている。プラズマ中のイオンが加速されて皮膜表面に衝突することで、当該絶縁性皮膜を高密度化することができる。しかし、この構成では導電性基材を成膜しようとした場合、成膜ロール間に一方の電極と他方の電極とが交互に極性が反転する電源を接続しても、導電性基材により1対の成膜ロール間が同電位となり、プラズマを発生させることができないおそれがある。
【0004】
ロールコータプラズマCVD装置として、プラズマ電極を含む成膜チャンバとメインロールとメインロールカバーとを備え、メインロールカバーを高圧にして上記成膜チャンバに供給される原料ガスが他の成膜チャンバに進入するのを防ぎ、銅等の金属材料の帯状基材上に成膜する薄膜形成装置が発案されている(特開2015−214726号公報)。当該薄膜形成装置によれば、導電性基材を用いても成膜可能であるが、プラズマに対する基材の相対的電位を制御する機構がなく、プラズマ中のイオンを加速して皮膜を高密度化することができないおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−214726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記不都合に鑑みて、本発明は、基材に高密度な皮膜を効率的に形成することができ、導電性を有する基材にも皮膜を形成することができるプラズマCVD装置、及びフィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の一態様は、プラズマCVDにより基材に成膜するプラズマCVD装置であって、内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、上記アンテナに正バイアスを印加する電源とを備え、上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされている。
【0008】
当該プラズマCVD装置は、内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、上記チャンバ内に配設される、上記基材を保持する機構、及びプラズマを生成するアンテナとが備えられる。上記保持機構とチャンバを接地電位として、上記電源によって上記アンテナに正バイアスが印加されることで、上記保持機構とアンテナとの間に電位差を生じさせる。これにより上記プラズマ中のイオンは上記保持機構に向けて加速され、上記保持機構に保持される基材上に高密度な皮膜を形成することができる。また、上記保持機構とチャンバが接地電位とされることにより上記基材全体が接地電位となるため、上記基材が導電性である場合でも、上記プラズマ中のイオンを上記基材に向けて加速させることができる。
【0009】
上記電源が、DC(Direct Current)パルス電源であるとよい。DCパルス電源で上記アンテナに正バイアスを印加することで、プラズマポテンシャルを容易に上昇させることができる。
【0010】
マイクロ波発生部と、上記マイクロ波発生部で発生されたマイクロ波をチャンバ内に導入するための導波管とをさらに備え、上記導波管が上記アンテナに接続されるとよい。マイクロ波発生部と導波管とをさらに備え、上記プラズマをマイクロ波方式で生成することで、電位の制御が容易なプラズマ源とすることができ、効率的に上記皮膜を形成することができる。
【0011】
上記アンテナが誘導結合型の電極であり、上記電極に上記電源が接続されるとよい。上記マイクロ波方式に替えて、上記アンテナが誘導結合型の電極として、上記電極が上記電源に接続され、上記プラズマを誘導結合方式で生成することでも、電位の制御が容易なプラズマ源とすることができ、効率的に上記皮膜を形成することができる。
【0012】
上記保持機構が少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを有し、上記成膜ロールが上記アンテナに近接して配置されるとよい。当該プラズマCVD装置が、少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを有して上記基材をロールツーロール方式で送給し、上記成膜ロールが上記アンテナに近接して配置されることで効率的に上記皮膜を形成することができる。
【0013】
上記成膜ロール以外の上記チャンバの構成部材が、絶縁部材で被覆されるとよい。上記成膜ロール以外の上記チャンバの構成部材が、絶縁部材で被覆されることで、上記構成部材の破損を防ぐと共に、より効率的に上記皮膜を形成することができる。
【0014】
上記成膜ロール及び上記アンテナ間の上記プラズマが生成される空間が、絶縁部材で覆われるとよい。プラズマが生成される空間が絶縁層部材で覆われることにより、上記構成部材の破損を防ぐと共に、より効率的に上記皮膜を形成することができる。
【0015】
本発明の他の一態様は、プラズマCVDにより基材に成膜するフィルムの製造方法であって、内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、上記アンテナに正バイアスを印加する電源とを備え、上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされているプラズマCVD装置で、上記アンテナに向けて上記成膜の原料ガスを供給する工程と、上記電源が上記アンテナに正バイアスを印加する工程とを有するフィルム製造方法である。
【0016】
当該フィルムの製造方法は、上述したプラズマCVD装置を用いて基材上に皮膜を有するフィルムを製造する。上記保持機構とチャンバとを接地電位として、上記アンテナ向けて上記皮膜の原料ガスを供給し、上記電源が上記アンテナに正バイアスを印加することで、生成されたプラズマ中のイオンが上記保持機構に向けて加速され、上記保持機構に保持される基材上に高密度な皮膜を形成することができる。
【0017】
上記基材が鉄、銅、アルミニウム、又は炭素を含むとよい。鉄、銅、アルミニウム、又は炭素を含む導電性の基材でも、上記プラズマ中のイオンが上記保持機構に向けて加速され、上記保持機構に保持される基材上に高密度な皮膜を形成することができる。
【0018】
上記基材が、樹脂又はガラスを含む少なくとも1つの絶縁層と、少なくとも1つの導電層とを有するとよい。当該フィルムの製造方法によれば、このような基材であっても、その表面上に皮膜を形成することができる。
【0019】
上記皮膜が絶縁性皮膜であるとよい。当該フィルムの製造方法は、導電性の基材に皮膜を形成することができるため、基材が導電性で皮膜を絶縁性とすることができ、発熱を伴うデバイス等で用いられる熱伝導性の高いフィルム等を効率的に生産することができる。
【0020】
上記原料ガスがヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含み、ケイ素、酸素及び炭素を含む上記皮膜が上記基材上に形成されるとよい。上記原料ガスがヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含むことで、上記基材上に形成される上記皮膜がケイ素、酸素及び炭素を含む絶縁性皮膜とすることが容易にできる。
【0021】
上記原料ガスがアセチレン又はメタンを含み、炭素及び水素を含む上記皮膜が上記基材上に形成されるとよい。上記原料ガスがアセチレン又はメタンを含むことで、上記基材上に形成される上記皮膜が炭素及び水素を含む絶縁性皮膜とすることが容易にできる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本願発明に係るプラズマCVD装置及びフィルムの製造方法は、基材に高密度な皮膜を効率的に形成することができ、導電性を有する基材にも皮膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態であるプラズマCVD装置の構成を示す模式図である。
図2】成膜ロール及びアンテナ間のプラズマが生成される空間を絶縁部材で覆う状態を示す模式的拡大図である。
図3図1と異なるプラズマCVD装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、適宜図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を詳説する。
【0025】
[第一実施形態]
<プラズマCVD装置>
本発明の一実施形態であるプラズマCVD装置は、プラズマCVDにより基材に成膜するプラズマCVD装置であって、内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、上記アンテナに正バイアスを印加する電源とを備え、上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされている。
【0026】
当該プラズマCVD装置は、上記アンテナ上でプラズマを生成して、このプラズマ中のイオンを上記保持機構に向かって加速させるため、上記保持機構が保持する基材上に高密度な皮膜を形成することができる。また、上記チャンバ及び保持機構を接地電位とし、プラズマを生成するアンテナに正バイアスを印加することにより、プラズマポテンシャルを正に大きく上昇させることができる。よって、上記イオンを大きく加速することができると共に、基材が導電性である場合でもチャンバ内に収容される基材全体が接地電位となるため、導電性基材上に皮膜を形成することができる。
【0027】
<基材>
当該プラズマCVD装置で皮膜を形成される基材は、導電性又は絶縁性のいずれでもよく、可撓性を有し、フレキシブル基材であることが好ましい。導電性基材の材質としては、鉄、銅、アルミニウム、炭素を含むものを用いることが好ましい。絶縁性基材の材質としては、例えば合成樹脂、フレキシブルガラス等を用いることが好ましい。
【0028】
導電性基材としては、基材そのものが導電性の材質で形成されているものの他、樹脂又はガラスを含む少なくとも1つの絶縁層と、少なくとも1つの導電層とを有する基材とすることができる。例えば、絶縁層に導電性の材質がコーティングされた基材、或いは2つの絶縁層の間に導電層を含む基材とすることができる。このように、導電層が基材表面に露出していない場合であっても、高周波電圧を印加することで導電層に電流を流すことができる。
【0029】
フレキシブル基材を形成する合成樹脂の主成分としては、ポリエステル及びポリオレフィンが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンサルファイド(PES)、ポリカーボネイト(PC)、ポリイミド(PI)、ポリオレフィン等を挙げることができる。中でも、強度、可撓性及び透明性に優れた、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートが特に好ましい。
【0030】
フレキシブル基材の平均厚さとしては、特に限定されないが、ロールコータプラズマCVD装置で搬送可能とする場合では、例えば5μm以上500μm以下とすることができる。
【0031】
(保持機構)
保持機構は、チャンバに内蔵され、基材を保持する。また、チャンバと共に接地電位とされる。保持機構としては、チャンバ内で基材を保持することができるものであれば特に限定されないが、上記保持機構が少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを含むことが好ましい。少なくとも1つの成膜ロールと複数の搬送ロールとを含むことで、上記搬送ロールによってロールツーロール方式で上記基材を搬送しつつ、上記成膜ロールで基材上に皮膜を形成することができるため、連続的な皮膜形成が可能となり、フィルムの生産効率を向上させることができる。
【0032】
また、上記成膜ロールが上記アンテナに近接して配置されるのが好ましい。このようにすることで、成膜ロール上の基材をプラズマに近づけることができ、プラズマ中で加速されたイオンを基材表面に効率的に衝突させるができる。
【0033】
本実施形態では、図1に示すように、チャンバ1、一対の成膜ロール2、プラズマ生成アンテナ3、バイアス印加電源4、原料ガス供給口5、搬送ロール6、基材供給ロール7、製品巻き取りロール8、及び真空ポンプPを主に備え、長手方向に搬送される長尺状の基材Wの表面近傍にプラズマを発生させ、連続的なプロセスによって基材W表面上に皮膜を形成して製品フィルムFを得ることができるプラズマCVD装置を用いて、以下説明する。
【0034】
(バイアス印加電源)
アンテナ3に正バイアスを印加するバイアス印加電源4は、DC(Direct Current)パルス電源であることが好ましい。アンテナ3に正バイアスを印加するバイアス印加電源4がDCパルス電源であることで、アンテナ3上に生成されるプラズマのプラズマポテンシャルを容易に上昇させることができる。一方で、パルス正バイアス印加では、基材W表面のチャージアップを中和しないと、アーキング等によって、基材W表面上にダストが発生するおそれがある。従って、正バイアスと弱い負のバイアスを印加できるDCパルス電源を用いるのがさらに好ましい。
【0035】
また、バイアス印加電源4の周波数の下限としては、1kHzとすることが好ましい。一方、バイアス印加電源4の周波数の上限としては、プラズマ生成電源の周波数の1/100、又は100MHzであることが好ましい。
【0036】
バイアス印加電源4の周波数が上記下限に満たないと、バイアス高周波の交流電場の周期が長くなり、この状態で基材Wに絶縁体皮膜を形成すると、試料に一定の正電荷(イオン)が入射して試料電位が上昇し、正電荷(イオン)が十分に流入しなくなってしまうおそれがある。すなわち、周波数が低すぎる場合、試料に正電荷(イオン)が有効に入射できなくなる時間が長くなり、バイアス高周波の負電位による絶縁体皮膜への電荷蓄積の打ち消し効果が低下するおそれがある。
【0037】
一方、バイアス印加電源4の周波数が、プラズマ生成電源の周波数の1/100を超えると、キャパシタに対するインピーダンスの差からプラズマ生成用高周波とバイアス印加用高周波の電気的な切り離しが難しくなり、双方の高周波が相互に電源回路に影響を与えるため、電源回路を構成することが困難となるおそれがある。
【0038】
さらに、プラズマでは電子とイオンの質量差、及び電場により移動する電子とイオンの速度差から、電気的にダイオード特性を示すことが知られている。このため、100MHzを超える高い周波数の交流電場をプラズマに印可した場合、プラズマ中の電子の移動方向の反転周期が早くなり、電子の距離が短くなることから電子がプラズマ中に閉じ込められる。この状態は、巨視的に観るとプラズマが示すダイオード特性の効果が小さくなることであり、バイアス印加を有効にできなくなるおそれがある。
【0039】
アンテナ3によりプラズマを生成する方式は、マイクロ波又は誘導結合による方式が好ましい。マイクロ波方式は、例えば、マイクロ波発生部でマイクロ波を生成し、このマイクロ波をアンテナ3に導入するマイクロ波伝送経路に矩形あるいは円形導波管を用い、この導波管の途中に反射電力を吸収するためのアイソレータ、電力計測のための方向性結合器、マッチング調整のためのチューナを備える構成とすることができる。
【0040】
マイクロ波方式では、マイクロ波発生部が、マグネトロン電源、マイクロ波を発振するマグネトロン、及びマイクロ波を導波管に導くランチャー導波管を備える。マイクロ波の周波数の下限としては、2.45GHzが好ましい。一方、マイクロ波の周波数の下限としては、100GHzが好ましく、10GHzがより好ましい。
【0041】
さらに、上記チューナとアンテナ3の間に、絶縁導波管を設け、チャンバ1への挿入部では、上記マイクロ波伝送経路とチャンバ1を絶縁させる。このような構成とすることにより、アンテナ3をプラズマ発生部及びチャンバ1から電気的に独立させることができ、アンテナ3に接続したバイアス印加電源4により、電位を制御することが可能になる。
【0042】
アンテナ3の材料としては、金属系材料であれば特に限定されないが、耐久性の面ではステンレスが好ましく、コストや重量の面ではアルミニウムが好ましい。アンテナ3の形状としては、プラズマCVD装置の構成により特に限定されるものではないが、中空の角柱形状、円柱形状等とすることができる。アンテナ3はマイクロ波放射面にマイクロ波の透過性に優れた石英板を備え、石英板の内側または外側にはスロット孔の形成された金属板を備える。スロット孔から石英板を通過して放出されるマイクロ波の電界によってジュール加熱が生じ、電子にエネルギーが与えられてプラズマが生成される。
【0043】
導波管は、マイクロ波の伝送方向に長尺をなすとともに、マイクロ波の伝送方向に直交する方向の断面が、矩形又は円形をした中空状をなしている。導波管は銅、アルミニウム、ステンレス等の金属、又はこれらの合金によって形成することができる。
【0044】
或いは、マイクロ波方式に換えて、当該プラズマCVD装置が、プラズマ生成を誘導結合方式とする場合では、高周波電源(例えば周波数13.56MHz)からの出力が、同軸ケーブルにより電力計測のための方向性結合器を経てマッチング回路でインピーダンスマッチングがとられた後、アンテナ3に供給される。アンテナ3は、金属製コイル又は金属棒であることが好ましい。アンテナ3に皮膜が形成されるのを防止するため、アンテナ3をプラズマから隔離し、アンテナ3が石英管等で保護されていることが好ましい。
【0045】
アンテナ3はその長さに比例してインダクタンスが大きくなり、プラズマ発生のための高周波を導入する際の高周波電圧が高くなる傾向があるため、できるだけ直線的な構造とすることが好ましい。また、アンテナ3を2本として、この2本のアンテナを近接させる場合は、お互いの交流電場が形成する交流磁場を打ち消さない様に、適度な間隔をあけることが好ましい。例えば、特開平7−122397号公報に示されるように、2本以上の直線状アンテナが相互に幾何学的に構成する角度に相応した位相差を有する高周波電流を、各々2本以上のアンテナに印可した場合は、上記交番電場同士の打ち消し合いが無くなり、合成された交流磁場ベクトルがプラズマ中で回転するため、大面積で均一なプラズマを形成できる。
【0046】
一般的に、キャパシタンスによるインピーダンスは、その周波数の関数であり、ω=2πfとすると、インピーダンスZはZ=1/(ω・C)の関係がある。なお、ωは角周波数[rd/sec]、πは円周率、fは周波数[Hz]、Cは静電容量[F]である。したがって、バイアス印加用周波数ωをプラズマ発生用周波数ωの1/100以下とすることにより、相互のインピーダンスZ≧100Zの関係が生じて、電気的に容易に分離できる。このようにしてアンテナ3をバイアス印加電源4及びチャンバ1から電気的に独立させ、アンテナ3に接続したバイアス印加電源4によって、電位を制御することが可能になる。
【0047】
(チャンバ)
チャンバ1は、基材の保持機構である成膜ロール2及び搬送ロール6とアンテナ3とを内蔵する。また、チャンバ1は、原料ガス供給口5、成膜ロール2及び搬送ロール6を回転駆動するための図示されないモータ等、その他チャンバ1を構成する複数のチャンバ構成部材を内蔵する。チャンバ1は、接地電位とされる。
【0048】
原料ガス供給口5は、皮膜の原料となるガスをチャンバ1内に供給する。原料ガス供給口5は、一方の成膜ロール2から複数の搬送ロール6を介して他方の成膜ロール2に至る基材Wに囲まれる位置に配置され、この基材Wに囲まれる空間内に上記原料ガスを供給することが好ましい。また、真空チャンバ1内を減圧する真空ポンプPは、一対の成膜ロール2の間の空間を挟んでガス供給口5と対向する位置からチャンバ1内のガスを排気するよう配設されることが好ましい。このようにすることで、プラズマが生成される空間に原料ガスを効果的に供給することができ、効率よくプラズマを生成することができる。
【0049】
成膜ロール2以外の上記チャンバ構成部材が、絶縁部材で被覆されるのが好ましい。当該プラズマCVD装置では、接地電位とされるチャンバ1及び成膜ロール2に対してプラズマの電位が高いため、イオンが上記チャンバ構成部材に衝突して電子を叩き出すγ作用と、発生した電子が電場によって加速され、中性気体に衝突して電離するα作用とによって異常放電が発生しやすい。その異常放電によって上記チャンバ構成部材が破損され、また、プラズマが不安定となってプラズマが維持されなくなる、或いはプラズマ電位を高く保てなくなるおそれがある。上記チャンバ構成部材を絶縁部材で被覆することにより、このような異常放電を効果的に抑制することができる。
【0050】
或いは、絶縁部材に代えて、接地電位とされるチャンバとチャンバ構成部材との間に絶縁部材を設ける等した、いわゆるフローティング状態とした金属板を用いることもできる。このようにすると、プラズマ電位と上記金属との電位差が小さくなり、上記異常放電を抑制することができる。これは、プラズマにより絶縁された金属の電位がプラズマに合わせて変化することにより、相対的な電位差が小さくなるためである。従って、樹脂等からなる絶縁部材に代えて、チャンバ構成部材と電気的に絶縁された金属を用いることにより、プラズマからの入熱による損傷を抑えることができる。
【0051】
上記チャンバ構成部材を個別に被覆するのに替えて、成膜ロール2及びアンテナ3間のプラズマが生成される空間が、絶縁部材で覆われることも好ましい。プラズマは空間的に広がりやすい性質があるので、プラズマが存在しうる空間を絶縁部材で制限することにより、上述のような異常放電をより効果的に抑制することができる。
【0052】
絶縁部材は、特に限定されるものではないが、絶縁性を有する樹脂板、フィルム、テープ等を用いることができる。絶縁部材はプラズマに晒されるため、絶縁性と共に、耐熱性に優れることが好ましく、素材としては、例えば、テフロン(登録商標)、ポリイミド、MCナイロン等を含むことが好ましい。
【0053】
<利点>
当該プラズマCVD装置は、チャンバ1及び基材保持機構を接地電位とし、プラズマを生成するアンテナ3に正バイアスを印加することにより、プラズマポテンシャルを正に大きく上昇させることができる。よって、上記イオンを加速することができ、高密度な皮膜が形成できると共に、基材が導電性である場合でもチャンバ内に収容される基材全体が接地電位とされるため、導電性基材上に皮膜を形成することができる。
【0054】
[第二実施形態]
本発明の他の一実施形態であるプラズマCVD装置は、チャンバがサブチャンバを有し、このサブチャンバ内にアンテナが備えられる。上記サブチャンバは、内壁に絶縁部材を含む。以下、本実施形態の説明では、上述した第一実施形態と同一の構成については、同一の符号を用いて、説明を省略する。
【0055】
本実施形態のプラズマCVD装置は、図3に示すように、サブチャンバ10を有するチャンバ11、1つの成膜ロール12、プラズマ生成アンテナ3、バイアス印加電源4、原料ガス供給口5、搬送ロール6、基材供給ロール7、製品巻き取りロール8、及び真空ポンプPを主に備え、長手方向に搬送される長尺状の基材Wの表面近傍にプラズマを発生させ、連続的なプロセスによって基材W表面上に皮膜を形成して製品フィルムFを得ることができる。
【0056】
(保持機構)
チャンバ11に内蔵され、基材Wを保持する保持機構は、1つの成膜ロール12と複数の搬送ロール6とを含む。成膜ロール12と複数の搬送ロール6とによって、ロールツーロール方式で基材Wを搬送しつつ、基材W上に皮膜を形成することができるため、連続的に皮膜形成をすることができる。成膜ロール12は、チャンバ11と共に接地電位とされる。
【0057】
(チャンバ)
チャンバ11は、基材Wの保持機構である成膜ロール12及び搬送ロール6を含み、原料ガス供給口5、成膜ロール12及び搬送ロール6を回転駆動するための図示されないモータ等、その他チャンバ11を構成する複数のチャンバ構成部材を備える。チャンバ11は、成膜ロール12と共に接地電位とされる。
【0058】
チャンバ11は、サブチャンバ10を有する。具体的には、サブチャンバ10は、チャンバ11の側面に付設された小型のチャンバである。サブチャンバ10は、内壁に絶縁部材9が備えられ、その内部にプラズマ生成アンテナ3が配置される。サブチャンバ10は、成膜ロール12とプラズマ生成アンテナ3とが近接されるように付設されるのが好ましい。このようにすることで、成膜ロール12上の基材Wをプラズマに近づけることができ、プラズマ中で加速されたイオンを基材W表面に効率的に衝突させることができる。
【0059】
原料ガス供給口5は、サブチャンバ10の上に配置されることが好ましい。このようにすることで、プラズマ生成アンテナ3と成膜ロール12との間の空間に原料ガスを効果的に供給することができる。また、チャンバ11内を減圧する真空ポンプPは、プラズマ生成アンテナ3と成膜ロール12との間の空間を挟んでガス供給口5と対向する位置からチャンバ11内のガスを排気するよう配設されることが好ましい。このようにすることで、プラズマが生成される空間に原料ガスをより効果的に供給することができ、効率よくプラズマを生成することができる。
【0060】
成膜ロール12以外の上記チャンバ構成部材が、絶縁部材で被覆されるのが好ましい。或いは、絶縁部材に代えて、接地電位とされるチャンバ構成部材と電気的に絶縁された金属を設けてもよい。又は、上記チャンバ構成部材を個別に被覆するのに替えて、成膜ロール2及びアンテナ3間のプラズマが生成される空間が、絶縁部材で覆われてもよい。このようにすることで、異常放電を効果的に抑制し、上記チャンバ構成部材の損傷等を低減することができる。
【0061】
<利点>
当該プラズマCVD装置は、チャンバ11の側面に、プラズマ生成アンテナ3を含むサブチャンバ10を付設するため、プラズマ生成アンテナ3を成膜ロール12に近接して配置することが容易にできる。また、プラズマ生成アンテナ3は、サブチャンバ10内壁に備えられる絶縁部材に囲まれているため、上記チャンバ構成部材への異常放電を抑制することができる。従って、簡易な構成で、導電性基材上に高密度な皮膜を形成することができるプラズマCVD装置とすることができる。さらに、プラズマ生成アンテナ3の配置が困難な既存の装置であっても、チャンバにサブチャンバを付設することにより、プラズマ生成アンテナを容易に配置することができる。従って、既存の装置の簡易な改変により、導電性基材上に高密度な皮膜を形成することができるプラズマCVD装置とすることができる。
【0062】
<フィルムの製造方法>
本発明の他の一実施形態は、プラズマCVDにより基材に成膜するフィルムの製造方法であって、内部で上記プラズマCVD反応を起こさせるチャンバと、上記チャンバ内に配設され、上記基材を保持する機構と、上記チャンバ内に配設され、プラズマを生成するアンテナと、上記アンテナに正バイアスを印加する電源とを備え、上記チャンバ及び保持機構が接地電位とされているプラズマCVD装置で、上記アンテナに向けて上記成膜の原料ガスを供給する工程と、上記電源が上記アンテナに正バイアスを印加する工程とを有する。
【0063】
当該フィルムの製造方法は、上述したプラズマCVD装置を用いて、アンテナ3に向けて原料ガス供給口5から皮膜の原料ガスを供給し、電源4がアンテナ3に正バイアスを印加してプラズマが生成され、上記基材上に成膜される。チャンバ1及び保持機構を接地電位とし、アンテナ3に正バイアスを印加することにより、プラズマポテンシャルを正に大きく上昇させることができ、上記イオン加速が可能となると共に、チャンバ1内に収容される基材W全体も接地電位となるため、基材Wが導電性である場合でも基材W表面上に成膜することができる。
【0064】
上記皮膜を絶縁性皮膜とすることができる。基材が導電性で皮膜を絶縁性とすることで、発熱を伴うデバイス向けの熱伝導性が高いフィルムを効率的に生産することができる。
【0065】
絶縁性皮膜の形成に用いられる原料ガスとしては、特に限定されないが、例えば、ヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含む原料ガス、アセチレン又はメタンを含む原料ガスを用いることが好ましい。このような原料を用いることで、基材Wに対するイオンの衝撃効果を向上することができ、密度が高く、バリア性、絶縁性、耐摩耗性に優れた絶縁性皮膜を形成することができる。
【0066】
ヘキサメチルジシロキサン及び酸素を含む原料ガスを用いた場合、ケイ素、酸素及び炭素が含まれる皮膜とすることができ、容易に絶縁性皮膜を基材上に形成することができる。アセチレン又はメタンを含む原料ガスを用いた場合、炭素、水素が含まれる皮膜とすることができ、容易に絶縁性皮膜を基材上に形成することができる。
【0067】
<利点>
当該フィルムの製造方法は、チャンバ1及び基材保持機構を接地電位とし、プラズマを生成するアンテナ3に正バイアスを印加することにより、プラズマポテンシャルを正に大きく上昇させることができる。よって、上記イオンを加速することができ、高密度な皮膜が形成できると共に、基材Wが導電性である場合でもチャンバ内に収容される基材W全体が接地電位とされるため、導電性基材上に皮膜を形成することができる。また、導電性基材上に絶縁性皮膜を形成することができるため、発熱を伴うデバイス等で用いられる熱伝導性の高いフィルム等を効率的に生産することができる。
【0068】
[その他の実施形態]
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではない。
【0069】
上記実施形態は、主に導電性基材に絶縁性皮膜を形成するものについて説明したが、本発明に係るプラズマCVD装置及びフィルムの製造方法を用いて、絶縁性基材に絶縁性皮膜を形成することも、本発明の範疇である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のプラズマCVD装置及びフィルムの製造方法は、導電性基材に高密度な皮膜を効率的に形成することができるので、フレキシブルデバイスや軽量デバイスの生産に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1,11 チャンバ
2,12 成膜ロール
3 プラズマ生成アンテナ
4 バイアス印加電源
5 原料ガス供給口
6 搬送ロール
7 基材供給ロール
8 製品巻き取りロール
9 絶縁部材
10 サブチャンバ
F 製品フィルム
P 真空ポンプP
W 基材
図1
図2
図3