特許第6973725号(P6973725)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社TAMAXの特許一覧 ▶ 鷲巣 誠の特許一覧 ▶ コウテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000003
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000004
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000005
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000006
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000007
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000008
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000009
  • 特許6973725-表示装置及び表示方法 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973725
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】表示装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
   G10G 1/00 20060101AFI20211118BHJP
   G09B 15/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   G10G1/00
   G09B15/00 B
【請求項の数】13
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2021-140840(P2021-140840)
(22)【出願日】2021年8月31日
【審査請求日】2021年9月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】313008250
【氏名又は名称】株式会社TAMAX
(73)【特許権者】
【識別番号】517244157
【氏名又は名称】鷲巣 誠
(73)【特許権者】
【識別番号】521384522
【氏名又は名称】コウテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】鷲巣 誠
(72)【発明者】
【氏名】余合 陽一
(72)【発明者】
【氏名】冨田 仁
【審査官】 渡部 幸和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−160986(JP,A)
【文献】 特表2010−504539(JP,A)
【文献】 特開2001−155517(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202761880(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 1/00−7/02
G09B 15/00−15/08
F21Y 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
音を取得する音取得部と、
前記音取得部が取得した音である取得音を周波数解析する解析部と、
前記解析部の解析結果に応じた表示を前記表示部に行わせる表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、中心を同一にして配置された、前記中心に対する回転対称の形状の複数の渦巻状からなる渦巻状表示領域における前記渦巻状に沿った位置のうち前記取得音の周波数に応じた位置を前記周波数に応じた色で発光させ、前記周波数に応じて発光させる位置及び色を変化させるとともに、複数の前記渦巻状の間で発光位置、発光色、及び発光強度を同一に制御する、
表示装置。
【請求項2】
前記渦巻状は対数螺旋である請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記渦巻状は黄金比又はフィボナッチ数列に基づく螺旋である請求項1又は2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示部は、前記中心の回りの円周を分割するように複数の部分に分割されており、
前記部分の個数は前記渦巻状の個数と同じであり、
複数の前記部分は、互いに同一形状であり、かつ、互いに同一の前記渦巻状表示領域の分割パターンが設定される請求項1〜3のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記渦巻状に沿った各位置には音階の並び順に各音階の周波数が対応付けられており、
前記表示制御部は、前記渦巻状に沿った位置のうち前記取得音に含まれる音階の周波数に応じた位置を発光させるとともに、1オクターブ中の各音階に対応付けられた各位置は互いに異なる色で発光させ、オクターブの周波数差を有する音階に対応付けられた位置同士は同一の色で発光させる請求項1〜4のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記表示制御部は、前記取得音の強度が大きいほど発光強度を大きくする請求項1〜5のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記解析部は、音階の周波数ごとに前記取得音のスペクトル強度を求め、音階の周波数が低いほど前記取得音の観測時間を大きくする請求項1〜6のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記渦巻状に沿った各位置には音階の並び順に各音階の周波数が対応付けられており、
前記表示制御部は、前記取得音が音階の間の音を含む場合には、該音の両隣りの音階に対応付けられた2つの位置の双方を発光させる請求項1〜7のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示部の前面を覆う透光性のカバーと、
前記カバーを脱着可能に支持するカバー支持部とを備える請求項1〜8のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項10】
前記表示部は、前記渦巻状に沿って配置される複数の光源を備え、
前記表示制御部は、前記渦巻状に沿った複数の前記光源のうち前記取得音の周波数に応じた前記光源を前記周波数に応じた色で発光させる請求項1〜9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項11】
前記光源を実装する第1基板と、
前記解析部を実装する第2基板とを備え、
前記第1基板は、前記第2基板の表側において前記第2基板と平行に前記第2基板に連結される請求項10に記載の表示装置。
【請求項12】
前記表示部は、前記渦巻状表示領域を包含する画像表示面を有したディスプレイである請求項1〜9のいずれか1項に記載の表示装置。
【請求項13】
音を取得する音取得ステップと、
前記音取得ステップで取得した音である取得音を周波数解析する解析ステップと、
前記解析ステップの解析結果に応じた表示を行う表示ステップとを備え、
前記表示ステップでは、中心を同一にして配置された、前記中心に対する回転対称の形状の複数の渦巻状からなる渦巻状表示領域における前記渦巻状に沿った位置のうち前記取得音の周波数に応じた位置を前記周波数に応じた色で発光させ、前記周波数に応じて発光させる位置及び色を変化させるとともに、複数の前記渦巻状の間で発光位置、発光色、及び発光強度を同一に制御する、
表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は音を視覚的に表示する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として音を視覚的に表示する装置又は方法がある(例えば特許文献1〜3参照)。例えば特許文献1、2には、音を取得して、取得した音の周波数解析を行い、その解析結果に応じた色の表示を行うことが記載されている。特許文献1には、音に含まれる各周波数に対応する色をバー表示又は円盤による表示を行う例が記載されている。特許文献2には、音を円状の色模様又は帯状の色模様で表示する例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−134696号公報
【特許文献2】特開平10−320570号公報
【特許文献3】特開2002−207479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の表示装置又は方法においては視覚的に心地よさを感じさせる効果が小さい。そこで、本開示では、音を視覚的に表示する装置又は方法において心地よさを感じさせることができる表示装置又は方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の表示装置は、
表示部と、
音を取得する音取得部と、
前記音取得部が取得した音である取得音を周波数解析する解析部と、
前記解析部の解析結果に応じた表示を前記表示部に行わせる表示制御部とを備え、
前記表示制御部は、中心を同一にして配置された、前記中心に対する回転対称の形状の複数の渦巻状からなる渦巻状表示領域における前記渦巻状に沿った位置のうち前記取得音の周波数に応じた位置を前記周波数に応じた色で発光させ、前記周波数に応じて発光させる位置及び色を変化させるとともに、複数の前記渦巻状の間で発光位置、発光色、及び発光強度を同一に制御する。
【0006】
本開示の表示方法は、
音を取得する音取得ステップと、
前記音取得ステップで取得した音である取得音を周波数解析する解析ステップと、
前記解析ステップの解析結果に応じた表示を行う表示ステップとを備え、
前記表示ステップでは、中心を同一にして配置された、前記中心に対する回転対称の形状の複数の渦巻状からなる渦巻状表示領域における前記渦巻状に沿った位置のうち前記取得音の周波数に応じた位置を前記周波数に応じた色で発光させ、前記周波数に応じて発光させる位置及び色を変化させるとともに、複数の前記渦巻状の間で発光位置、発光色、及び発光強度を同一に制御する。
【0007】
本開示の表示装置及び表示方法によれば、取得音の周波数に応じて、中心を同一にして配置された複数の渦巻状における発光位置及び色を変化させる。取得音の周波数が時間経過に伴い変化する場合には、発光位置が渦巻状に沿って変化することで、渦を巻いているように見せることができる。また、複数の渦巻状は回転対称の形状であり、なおかつ、複数の渦巻状の間で発光位置、発光色、及び発光強度が同一に制御されるので、整然とした美しい表示が可能となる。これにより、視覚的に心地よさを感じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の表示装置の構成図である。
図2】第1実施形態の表示装置の断面図である。
図3】複数のLEDが中心を同一にした5つの黄金螺旋に沿って配列された図である。
図4】フィボナッチ数列に基づく螺旋を示す図である。
図5】LEDの配置順と、音階の周波数及び発光色との対応関係を示す図である。
図6】周波数解析により得られるスペクトルを模式的に示した図である。
図7】LEDを実装する基板の平面図である。
図8】第2実施形態の表示装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、本開示の第1実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態の表示装置の構成を示している。図1の表示装置1は、マイク2と増幅器3と増幅度設定部4とADコンバータ5と周波数解析部6と記憶部7と点灯制御部8と表示部9とを備えている。さらに、表示装置1は、図2に示すように、第1基板10と第2基板11と前面カバー12と筐体13とを備えている。先ず表示部9から説明する。
【0010】
表示部9は、図3に示すように、点光源としての複数のLED16を備えている。複数のLED16が所定の模様を形成するよう配列されている。具体的には、表示部9は、同一の平面において中心Oを同一にして配置された5本の渦巻部15を備えている。各渦巻部15は、渦巻状に形成され、具体的には渦巻状に配列された複数のLED16から構成されている。5本の渦巻部15は、互いに同一個数かつ同一の配置間隔のLED16の配列により構成される。
【0011】
また、5本の渦巻部15は、中心Oに対する回転対称の形状に形成されている。詳しくは、5本の渦巻部15は、互いに同一の渦巻状(渦巻方向が同一であり、かつ渦巻の曲率が同じ)に形成されており、中心Oの回りの回転方向に位相(角度)をずらして配置されている。その位相(角度)は、360度を5本の渦巻部15で等分する値であり、具体的には72度である。すなわち、第1の渦巻部15aと第2の渦巻部15bとは回転方向に72度の位相差がある。第2の渦巻部15bと第3の渦巻部15cとは回転方向に72度の位相差がある。第3の渦巻部15cと第4の渦巻部15dとは回転方向に72度の位相差がある。第4の渦巻部15dと第5の渦巻部15eとは回転方向に72度の位相差がある。第5の渦巻部15eと第1の渦巻部15aとは回転方向に72度の位相差がある。別の言い方をすれば、渦巻部15を構成するLED16のうち最も中心O側のLED16aを中心LEDとしたとき、5本の渦巻部15の各中心LED16aは、中心Oから等距離となる仮想円100上に配置され、かつ、仮想円100を5等分する位置に配置されている。
【0012】
このように、5本の渦巻部15は、中心Oに対して72度の回転対称形状に形成される。したがって、5本の渦巻部15を中心Oの回りに72度回転させると、回転前の形状に一致する。
【0013】
各渦巻部15は渦巻状として対数螺旋を描き、より具体的には黄金螺旋又はフィボナッチ数列に基づく螺旋を描くように設けられる。なお、対数螺旋は、r=ae bθで示される螺旋である。ここで、rは原点(中心)からの距離である。eはネイピア数である。θは原点回りの回転角度である。aは正の定数(実数)である。bは正又は負の定数(実数)である。bが正の値の場合には中心から離れるに伴い左曲がりに変位する螺旋となり、負の値の場合には右曲がりに変位する螺旋となる。5本の渦巻部15は、上記定数aが互いに同じ値に設定され、上記定数bが互いに同じ値に設定され、θが隣り合う渦巻部15間で72度の位相差に設定される。
【0014】
黄金螺旋は、4分の1周で半径が黄金比倍になる螺旋である。具体的には、黄金螺旋は、上記定数bが黄金比φに基づく値に設定された対数螺旋である。より具体的には、黄金螺旋では、定数bの絶対値が、logφ/(π/2)=0.30634・・・で示される。黄金比φは1.618・・・である。
【0015】
フィボナッチ数列は、初項と第2項を1とし、第3項以降は前2項の和をとって得られる数列である。フィボナッチ数列の隣接する2項の商は黄金比φに集束する。フィボナッチ数列に基づく螺旋とは、フィボナッチ数列の隣接する2項の商が収束する値(つまり黄金比φ)に基づく値を上記定数bとした対数螺旋である。また、図4に示すように、1辺の長さが「1、1、2、3、5、8、13、21、・・・(フィボナッチ数列)」の正方形を渦巻状に並べて、正方形の辺を半径とした円を描くと螺旋となる。このように形成された螺旋もフィボナッチ数列に基づく螺旋である。
【0016】
全てのLED16は例えば互いに同一構造のフルカラーLEDである。すなわち、各LED16は同一のパッケージ内にR(赤)、G(緑)、B(青)の光源を含み、R、G、Bの各光量を制御することで任意の色(フルカラー)の光を出射可能に構成される。
【0017】
また、渦巻部15を構成する各LED16は、図5に示すように、音階の周波数及び発光色が対応付けられている。なお、図5では、各LED16を、アルファベットの「L」及びその下付き文字として中心O(図3参照)側からの配置順を示す数字で示している。例えば、「L」は中心Oに最も近い(配置順が1番目)LED16(中心LED16a)を示し、「L」は中心Oからの配置順が2番目のLED16を示している。なお、図5においては、「L」、「L」、「L」、「L」、「L13」、「L25」、「L37」、「L49」以外のLED16を示す記号の図示を省略している。また、図5では、発光色を小文字のアルファベット(「a」、「b」、「c」、「d」、「e」、「f」、「g」、「h」、「i」、「j」、「k」、「l」)で示している。
【0018】
図5に示すように、各LED16には、中心Oからの配置順に、半音階毎の12音階にて構成される1オクターブ中の各音階及びその周波数が対応付けられている。そして、中心O側から外側へと向かうLED16の配置順と、低音(低周波数)から高音(高周波数)へと変化する音階の並び順とが対応付けられている(割り当てられている)。図5に示す音階は、オクターブを12等分した平均律である。なお、オクターブは周波数比が2:1の音程である。平均律では、音階は対数で等間隔であり、言い換えれば、各音階の周波数を並べた数列は等比数列となっている。したがって、隣りの音階同士の周波数差は高音になるほど(音階の周波数が大きくなるほど)大きくなる。
【0019】
配置順が1番目(L)のLED16は、英語表記で「C1」で示されるドが割り当てられ、LED16の配置順が大きくなるにしたがってLED16に割り当てられる音階も1段階ずつ大きくなる。また、1つの渦巻部15当たりに、複数のオクターブ(図5では5オクターブ)分の個数のLED16が設けられる。
【0020】
また、1オクターブを構成する12音階は互いに異なる色に割り当てられている。12音階の各音階に対応付けられた各LED16も互いに異なる色に割り当てられている。また、オクターブの周波数差(つまり2倍の周波数差)を有する音階同士は同一の色に割り当てられている。例えば、音階の「ド」は、いずれの周波数においても、同一の色aが割り当てられている。
【0021】
色は、例えばLED16の配置順(換言すれば音階の並び順)にしたがって徐々に色相が変化するように定められる。例えば、色aは赤、色bは橙、色cは黄、色dは黄緑、色eは緑、色fは青緑、色gは緑みの青、色hは青、色iは青紫、色jは紫、色kは赤紫、色lは紅色に設定される。
【0022】
また、中心Oからの配置順Lが同一のLED16同士は互いに同一の音階(周波数)に割り当てられ、互いに同一の色に割り当てられている。例えば、1番目LのLED16aは渦巻部15の本数分(つまり5個)設けられるが、5個のLED16aは互いに同一の音階「ド」の周波数「65.40639Hz」が割り当てられ、互いに同一の色aが割り当てられる。
【0023】
図1に戻って、マイク2は周囲の音を取得して、取得した音(取得音)をアナログの電気信号に変換する。なお、マイク2が音取得部に相当する。また、マイク2が行う処理が音取得ステップに相当する。増幅器3はマイク2に入力された音である入力音を増幅する。増幅器3は入力音の増幅度を変更可能に構成され、増幅度設定部4にて設定された増幅度で入力音を増幅する。
【0024】
増幅度設定部4は、予め定められた複数の増幅度候補の中から増幅器3の増幅度を設定する部分である。増幅度設定部4は、例えばユーザによって操作が行われる操作部(例えば回転操作部)として構成される。操作部4は複数の操作位置の間で可動に構成される。操作部4の操作位置に応じた増幅度が増幅器3の増幅度として設定される。増幅度設定部4(操作部)は、筐体13(図2参照)の外側に露出するように設けられる。
【0025】
ADコンバータ5は増幅器3から入力される増幅後の入力音(アナログ信号)をデジタル値に変換(AD変換)する。
【0026】
周波数解析部6は、ADコンバータ5によってAD変換された入力音の周波数解析を行う。すなわち、周波数解析部6は、時間領域の入力音のデータを周波数領域に変換するフーリエ変換を行う。周波数解析部6は、具体的には、下記数1の式(以下、式1という)に基づいて、各LED16に割り当てられた音階の周波数ごとにフーリエ係数a、bを求める。式1において、f(t)は時間tでの入力音の大きさである。fはLED16に割り当てられた音階の周波数である。Tは入力音の観測時間(別の言い方をすれば積分時間)である。なお、周波数解析部6は、観測時間端の不連続効果を緩和するために、入力音f(t)に窓関数を乗じて、式1の計算を行う。周波数解析部6は、音階の周波数以外の周波数領域に対しては周波数解析(式1の計算)を行わない。
【0027】
【数1】
【0028】
さらに、周波数解析部6は、式1により求めたフーリエ係数a、bの二乗和を計算して(下記式2参照)、各音階の周波数に対する入力音の感度P(以下、スペクトル強度という場合もある)を求める。
(式2)P=a+b
【0029】
また、周波数解析部6は、式1で示されるフーリエ変換を行う際に、観測時間Tを音階ごとに設定し、具体的には、音階の周波数が高いほど観測時間Tを小さくし、逆にいえば、音階の周波数が低いほど観測時間Tを大きくする。式1の計算を行う際の入力音のサンプル数をN、サンプリング周期をΔtとしたとき、観測時間Tは以下の式3で示される。サンプル数Nは音階の周波数に関わらず固定値(一定)とし、サンプリング周期Δtを、音階の周波数が低いほど大きくする(つまりデシメーションする)ことで、観測時間Tを音階の周波数が低いほど大きくする。周波数解析部6は、例えば、音階の周波数fと、観測時間Tとの積(=f×T)が一定となるように、観測時間Tを設定する。すなわち、例えば、2つの音階の周波数f10、f20に着目し、周波数f20は周波数f10の2倍の周波数とすると、周波数f20での観測時間T20は、周波数f10での観測時間T10の0.5倍に設定する。
(式3)T=N×Δt
【0030】
周波数解析部6の処理を図6を参照してさらに説明する。図6において、f、f、f、f、fは、LED16に割り当てられた音階の周波数であるとする。周波数f、f、f、f、fの大小は、f<f<f<f<fの関係となっている。周波数解析部6は、式1に基づいて、周波数f、f、f、f、fごとにフーリエ係数を求める。この際、周波数fでのフーリエ係数を求める場合には、式1においてfにfを代入するとともに、観測時間Tを、周波数fに対して個別に設定された値Tとする。周波数fでの観測時間Tは、他の周波数f、f、f、fでの観測時間T、T、T、Tよりも大きい。また、周波数fでのフーリエ係数を求める場合には、式1においてfにfを代入するとともに、観測時間Tを、周波数fに対して個別に設定された値Tとする。周波数fでの観測時間T5は、他の周波数f、f、f、fでの観測時間T、T、T、Tよりも小さい。
【0031】
観測時間Tが大きいほど周波数分解能が高くなり、反対に、観測時間Tが小さいほど周波数分解能が低くなる。周波数分解能が十分高ければ(観測時間が無限に大きければ)、入力波の周波数の位置のみにスペクトル強度が出力され、他の周波数の位置でのスペクトル強度はゼロとなる。これに対して、周波数分解能が低いと、入力波の周波数の位置だけでなく、その周波数の周辺の周波数領域にもスペクトル強度が出力される。この場合、周波数分解能が低いほど、入力周波数の周辺領域へのスペクトル強度の広がりが大きくなる。
【0032】
例えば、入力波(入力音)が周波数fの成分のみで構成され、他の周波数成分を含んでいないとして、この入力波に対してフーリエ変換を行うと、図6のスペクトル200が得られるとする。また、入力波(入力音)が周波数fの成分のみで構成され、他の周波数成分を含んでいないとして、この入力波に対してフーリエ変換を行うと、図6のスペクトル201が得られるとする。また、スペクトル200を求める際の観測時間Tよりも、スペクトル201を求める際の観測時間Tのほうが小さいとする。この場合、図6に示すように、スペクトル200の広がりよりも、スペクトル201の広がりのほうが大きくなる。これは、スペクトル200のほうがスペクトル201よりも周波数分解能が高いことを意味し、逆にいえば、スペクトル201のほうがスペクトル200よりも周波数分解能が低いことを意味する。なお、図6においては、説明の便宜上、スペクトル200が、音階の周波数fの周辺の周波数領域まで広がっていることを示し、同様に、スペクトル201が、音階の周波数fの周辺の周波数領域まで広がっていることを示しているが、実際は、周波数解析部6は音階の周波数以外の周波数領域のスペクトル(フーリエ係数)は求めていない。
【0033】
なお、同じ強度の音であっても、観測時間が大きいほど(周波数分解能が高いほど)、スペクトル強度が大きくなる。例えば、図6において、スペクトル201を求める際の観測時間よりも大きい観測時間で、周波数fでのスペクトルを求めると点線202のようになる。スペクトル202は、スペクトル201よりもピーク値が大きい。また、スペクトル202の広がりは、スペクトル201よりも小さい。
【0034】
周波数解析部6は、入力音が、仮に隣り合う2つの音階の周波数成分を含んでいたとしても、それら2つの周波数成分を区別(言い換えれば分解)できるように、音階ごとの観測時間を設定する。別の言い方をすれば、周波数解析部6は、入力音がいずれかの音階Xの周波数成分を含んでいる場合に、その音階Xの周波数fの位置にスペクトルのピークが位置し、かつ、その隣りの音階Xn+1、Xn−1の周波数fn+1、fn−1の位置でのスペクトル強度が、LED16の点灯と非点灯とを分ける閾値未満の値(LED16が非点灯となる値)になるように、各観測時間を設定する。例えば、図6において、入力音が周波数fの成分を含む場合に、スペクトル200が周波数fの位置にピークを有し、かつ、隣りの周波数fの位置でのスペクトル強度が上記閾値未満の値となるように、周波数fのスペクトル200を求める際の観測時間Tを設定する。同様に、入力音が周波数fの成分を含む場合に、スペクトル201が周波数fの位置にピークを有し、かつ、隣りの周波数fの位置でのスペクトル強度が上記閾値未満の値となるように、周波数fのスペクトル201を求める際の観測時間Tを設定する。
【0035】
さらに、周波数解析部6は、入力音が、LED16に割り当てられた音階の間の音(音階からズレた音)を含む場合には、該音の両隣りの音階に割り当てられた2つのLED16の双方が発光するように上記観測時間T(換言すれば周波数分解能)を設定する。具体的には、入力音が隣り合う音階X、Xn+1の中間の周波数fzの音であるとする。周波数fzは、音階Xの周波数fと音階n+1の周波数fn+1とを平均した値、つまりf=(f+fn+1)/2であるとする。この場合、中間周波数fzの入力音のスペクトル強度が、その周波数fzの高音側の隣りに位置する音階Xn+1の周波数fn+1の位置にて検出されるように、音階Xn+1のスペクトル強度を求める際の観測時間Tn+1(換言すれば周波数分解能)を設定する。つまり、入力音の周波数(入力周波数)が、音階の周波数fn+1に対して、隣り合う音階X、音階Xn+1の周波数差(fn+1−f)の半分の値(=(fn+1−f)/2)だけズレていたとしても、周波数fn+1のスペクトル強度が上記閾値以上となるように(LED16が点灯する値となるように)、上記観測時間Tn+1を設定する。
【0036】
同様に、中間周波数fzの入力音のスペクトル強度が、その周波数fzの低音側の隣りに位置する音階Xの周波数fの位置にて検出されるように、音階Xのスペクトル強度を求める際の観測時間T(換言すれば周波数分解能)を設定する。つまり、入力音の周波数(入力周波数)が、周波数fに対して、隣り合う音階X、音階Xn+1の周波数差の半分の値(=(fn+1−f)/2)だけズレていたとしても、周波数fのスペクトル強度が上記閾値以上となるように(LED16が点灯する値となるように)、上記観測時間Tを設定する。
【0037】
また、周波数解析部6は、入力音が音階からズレた音の場合には、入力音が音階に一致する音の場合に比べて、音階の位置でのスペクトル強度が小さくなるように(言い換えれば、LED16の発光強度が小さくなるように)、上記観測時間(換言すれば周波数分解能)を設定する。例えば、入力音が隣り合う音階X、Xn+1の中間の周波数fzの音の場合には、入力音が音階X又は音階Xn+1に一致する音の場合に比べて、音階X、Xn+1でのスペクトル強度が小さくなるように、音階X、Xn+1での観測時間T、Tn+1を設定する。
【0038】
さらに、周波数解析部6は、例えば、入力音が、隣り合う音階X、Xn+1の中間の周波数fzの音の場合には、音階Xに割り当てられたLED16の発光強度と、音階Xn+1に割り当てられた発光強度とが同強度となるように、音階X、Xn+1での観測時間T、Tn+1を設定する。
【0039】
なお、入力音の周波数finput(入力周波数)が、隣り合う音階X、Xn+1の周波数f、fn+1からズレているが、音階X、Xn+1の中間の周波数fz(=(fn+1+f)/2)ではない場合には、音階の周波数f、fn+1のうち入力周波数finputに近い方に割り当てられたLED16の発光強度が、入力周波数finputに遠い方に割り当てられたLED16の発光強度よりも大きくなるように、音階X、Xn+1での観測時間T、Tn+1が設定されてよい。または、音階の周波数f、fn+1のうち入力周波数finputに近い方に割り当てられたLED16の発光強度と、入力周波数finputに遠い方に割り当てられたLED16の発光強度とが同強度となるように、音階X、Xn+1での観測時間T、Tn+1が設定されてもよい。
【0040】
なお、周波数解析部6が解析部に相当する。周波数解析部6が行う処理が解析ステップに相当する。
【0041】
図1に戻って、記憶部7は、周波数解析部6及び点灯制御部8が実行する処理に関する各種データを記憶する。具体的には、記憶部7には、例えば、上記式1で用いる、音階ごとの観測時間T、及び各音階の周波数fのデータが記憶されている。また、記憶部7には、例えば、図5に示す、LED16と音階の周波数との対応関係、及びLED16と発光色との対応関係を示すデータが記憶されている。例えば、図5においてLで示されるLED16には、音階の周波数65.40639Hzと、発光色aとが対応付けられており、この対応付けを示すデータが記憶部7に記憶されている。LED16がフルカラーLEDの場合には、発光色を示すデータとしてR(赤)、G(緑)、B(青)の各光量を示すデータが記憶部7に記憶される。
【0042】
また、記憶部7には、例えば、LED16の発光強度を判定するための複数の閾値Pth0、Pth1、Pth2、Pth3・・・が記憶されている。複数の閾値のうち最も小さい閾値Pth0は、LED16を点灯させるか否かを区分けするスペクトル強度の閾値である。すなわち、スペクトル強度が閾値Pth0未満の場合にはLED16は点灯されず、スペクトル強度が閾値Pth0以上の場合にはLED16は点灯される。閾値Pth0以外の閾値th1、Pth2、Pth3・・・は、閾値Pth0より大きい値に設定され、LED16が点灯される場合に、LED16の発光強度を、予め定められた複数段階のうちのどの段階の強度にするかを判定するための閾値である。なお、発光強度の段階数は何段階であってもよく、1段階であってもよいし、2段階以上(例えば8段階)であってもよい。
【0043】
なお、記憶部7として、周波数解析部6の処理に関するデータを記憶する記憶部と、点灯制御部8の処理に関するデータを記憶する記憶部とが別々に設けられてもよい。
【0044】
点灯制御部8は、周波数解析部6の解析結果に基づいてLED16の点灯を制御する。具体的には、点灯制御部8は、周波数解析部6の処理(上記式1及び式2)により得られた音階ごとのスペクトル強度Pを取得して、そのスペクトル強度Pに基づいて各LED16を点灯させるか否かを判定し、点灯させる場合には予め定められた複数の段階のうちどの段階の強度で発光させるのか及び発光色を判定する。例えば、点灯制御部8は、図6に示す周波数f、fに割り当てられたLED16が図3に示す複数のLED16のうちのどれに該当するのかを記憶部7に記憶された対応関係を参照して判定するとともに、周波数f、fでのスペクトル強度Pが、上記閾値Pth0未満の場合には、周波数fに割り当てられたLED16及び周波数fに割り当てられたLED16を非点灯とする。この場合、周波数f3、に割り当てられたLED16は渦巻部15ごとに設けられるので、周波数fに割り当てられた合計5つのLED16、及び周波数fに割り当てられた合計5つのLED16のいずれも非点灯とする。
【0045】
また、点灯制御部8は、例えば、図6に示す周波数fに割り当てられたLED16が図3に示す複数のLED16のうちのどれに該当するのかを記憶部7に記憶された対応関係を参照して判定するとともに、周波数fでのスペクトル強度Pが上記Pth0以上閾値Pth1未満の場合には、予め定められた複数段階のうち第1段階(最小の段階)の発光強度で、周波数fに割り当てられたLED16を点灯させる。この場合、周波数fに割り当てられたLED16は渦巻部15ごとに設けられるので、周波数fに割り当てられた合計5つのLED16を互いに同じ発光強度(第1段階の発光強度)で点灯させる。また、点灯制御部8は、記憶部7に記憶された対応関係を参照して、周波数fに割り当てられたLED16の発光色を判定し、周波数fに割り当てられた合計5つのLED16を互いに同じ発光色で点灯させる。
【0046】
また、点灯制御部8は、例えば、図6に示す周波数fでのスペクトル強度Pが上記Pth1以上、閾値Pth2未満の場合には、予め定められた複数段階のうち第2段階の発光強度で、周波数fに割り当てられたLED16を点灯させる。この場合、周波数fに割り当てられたLED16は渦巻部15ごとに設けられるので、周波数fに割り当てられた合計5つのLED16を互いに同じ発光強度(第2段階の発光強度)で点灯させる。また、点灯制御部8は、記憶部7に記憶された対応関係を参照して、周波数fに割り当てられたLED16の発光色を判定し、周波数fに割り当てられた合計5つのLED16を互いに同じ発光色で点灯させる。
【0047】
また、点灯制御部8は、入力音が同時に複数の音階の周波数成分を含む場合には、該複数の音階に割り当てられたLED16の全てを同時に点灯させる。すなわち、例えば、入力音が、「ド」(英語で「C1」の音階)の音と、「ミ」(英語で「E1」の音階)の音と、「ソ」(英語で「G1」の音階)の音とを同時に含んでいる場合には、点灯制御部8は、「ド」(「C1」)に割り当てられたLED16と、「ミ」(「E1」)に割り当てられたLED16と、「ソ」(「G1」)に割り当てられたLED16の全てを同時に点灯させる。このとき、「ド」の音のスペクトル強度と、「ミ」の音のスペクトル強度と、「ソ」の音のスペクトル強度とが互いに異なる場合には、点灯制御部8は、「ド」に割り当てられたLED16と、「ミ」に割り当てられたLED16と、「ソ」に割り当てられたLED16とを互いに異なる強度で発光させる。
【0048】
このように、点灯制御部8は、渦巻部15のうち入力音の周波数に応じたLED16を該周波数に応じた色で発光させる。そして、点灯制御部8は、入力音の周波数の時間的な変化及び入力音の強度の時間的な変化に伴い発光させるLED16、発光色及び発光強度を変化させる。また、点灯制御部8は、5つの渦巻部15間で発光位置、発光色、及び発光強度を同一に制御する。なお、点灯制御部8が表示制御部に相当する。また、点灯制御部8が行う処理が表示ステップに相当する。
【0049】
図2に示す第1基板10は、図3に示す5つの渦巻部15を構成する各LED16を実装する基板である。第1基板10は、図7に示すように、渦巻部15の中心Oの回りの円周を分割する複数の扇形の小基板17から構成される。小基板17の枚数は、渦巻部15の個数と同じであり、すなわち5枚である。5枚の小基板17は互いに同一形状(同一の半径及び同一の中心角)である。各小基板17の中心角は、360°/(小基板17の枚数=5)=72°である。また、各小基板17には、互いに同一の、LED16の配列パターン(言い換えれば渦巻部15の分割パターン)を形成するようにLED16が実装されている。
【0050】
第1基板10は、5枚の小基板17が組み合わさることで円盤形状に形成される。また、5枚の小基板17が円盤状に組み合わさることで、5つの渦巻部15が形成される。なお、LED16は例えばロボット(実装装置)により自動で各小基板17に実装される。
【0051】
また、第1基板10は、図2に示すように、筐体13内において、第2基板11の上に積層される形(第2基板11の表面を覆うように)で設けられる。言い換えれば、第1基板10は、第2基板11の表側において第2基板11と平行に第2基板11に連結されている。第1基板10と第2基板11とを連結する連結部18が設けられており、その連結部18により、第1基板10と第2基板11との間には隙間が形成されている。この隙間により、第2基板11に実装される部品(周波数解析部6など)が第1基板10に干渉するのを回避している。
【0052】
第2基板11は周波数解析部6(図1参照)を実装する基板である。第2基板1は、筐体13内において、第1基板10の下(裏側)に積層される形で設けられる。言い換えれば、第2基板11は、第1基板10の裏側において第1基板10と平行に第1基板10に連結されている。さらに、第2基板11は、筐体13に接続された支持部19により支持されている。つまり、第2基板11は、支持部19を介して筐体13に支持されている。
【0053】
なお、図1に示すADコンバータ5は第2基板11に実装されてもよいし、第1基板10及び第2基板11以外の基板に実装されてもよい。また、記憶部7及び点灯制御部8は、第2基板11に実装されてもよいし、第1基板10に実装されてもよい。また、マイク2、増幅器3及び増幅度設定部4は第1基板10及び第2基板11以外の基板(図示外)に実装されている。
【0054】
前面カバー12は、表示装置1の表面を構成するカバーである。前面カバー12は、第1基板10に実装された表示部9(5つの渦巻部15)の前面を覆うように設けられる。前面カバー12は透光性を有する素材により板状に形成されている。すなわち、前面カバー12は、LED16の光が前面カバー12を透過可能に構成される。前面カバー12は、例えば、LED16からの光は透過するが、非点灯時のLED16が前面カバー12の外側から視認されない程度の光透過度を有した素材にて形成される。前面カバー12の色は例えばスモーク調としてもよいし、乳白色としてもよいし、他の色であってもよい。
【0055】
また、前面カバー12は、脱着可能に筐体13に支持されてよい。この場合、光透過度又は色などが異なる複数の前面カバー12が備えられ、表示装置1を使用する場面又は使用者の好みに応じた前面カバー12を筐体13に装着するように用いられてもよい。
【0056】
筐体13は、表示装置1を構成する各部品(基板10、11等)を収容する。また、筐体13は前面カバー12を脱着可能に支持するカバー支持部14を有する(図2参照)。カバー支持部14は、例えば、前面カバー12の表面に平行な水平方向のうちの特定の方向(例えば図2の紙面に直角な方向)に対してはスライド移動を可能とし、それ以外の方向に対して移動を規制するよう、前面カバー12を支持する。この場合、前面カバー12をカバー支持部14に対してスライド移動させることで、前面カバー12は筐体13から取り外される。そして、別の前面カバー12をカバー支持部14に対してスライド移動させることで、筐体13に装着させる。
【0057】
以下、本実施形態の作用効果を説明する。本実施形態の表示装置1によれば、例えば表示装置1の周囲で音楽を流すと、その音楽がマイク2に入力されて、周波数解析部6により、入力された音楽の周波数解析がリアルタイムで行われ、その周波数解析の結果に応じた位置及び色のLED16が点灯制御部8により点灯される。これにより、音楽(音の周波数)の時間的変化に応じて発光位置及び色が変化する表示を行うことができる。
【0058】
表示部9は中心Oを同一にして配置された複数(5つ)の渦巻部15(渦巻状)から構成された渦巻状表示領域を有し、複数の渦巻部15は回転対称の形状であり、なおかつ、複数の渦巻部15の間で発光位置、発光色、及び発光強度が同一に制御されるので、整然とした美しい表示を行うことができる。これにより、視覚的に心地よさを感じさせることができる。特に、渦巻部15は黄金比(フィボナッチ数列)に基づく螺旋を描くので、より一層、視覚的に心地よさを感じさせることができる。すなわち、黄金比は古来より人間が最も美しいと感じる比率であり、美術作品、建築物、自然界などあらゆるところに取り入れられている。黄金比に基づく螺旋の表示を見せることで、黄金比による心地よさ(美しさ)を感じさせることができる。例えば、対象者にとって心地よい音楽を流しながら、その音楽を表示装置1に入力させることで、対象者に、聴覚的な心地よさに加えて、視覚的な心地よさも感じさせることができる。
【0059】
また、一般的に音楽は複数の周波数(音階)の音から構成されるので、渦巻部15を構成する複数のLED16が同時に発光する。また、音楽を構成する複数の音(周波数)の組み合わせは時間経過に伴い変化するので、時間経過に伴い渦が外側から内側へ、又は内側から外側へ巻くように見せることができる。
【0060】
また、渦巻部15を構成する複数のLED16は、内側(中心O側)から外側に向かうにしたがって低音から高音へと変化する音階が割り当てられているので、渦巻部15における発光位置により、音の高低を視覚的かつ直観的に把握できる。また、1オクターブ中の各音階に割り当てられたLED16同士は互いに異なる色に発光させるので、音の周波数の時間的な変化に伴い発光色の変化を見せることができ、表示が単調になるのを抑制できる。また、オクターブの周波数差を有する各音階に割り当てられたLED16同士は同一の色を発光させるので、発光色が多くなりすぎるのを抑制でき、LED16の制御を簡素化できる。
【0061】
また、入力音が大きい程、つまり周波数解析によるスペクトル強度が大きい程、LED16が強く発光するので、音の強さを視覚的かつ直観的に感じさせることができる。LED16の発光強度の制御は音階ごとに個別に行われるので、音階ごとの音の強さを視覚的に感じさせることができる。また、音の強弱の時間的な変化に伴い、発光強度の変化を見せることができる。
【0062】
また、周波数解析部6は、LED16に割り当てられた音階の周波数における入力音のスペクトル強度を求め、音階以外の周波数領域に対してはスペクトル強度を求めていないので、周波数解析部6の処理負担を軽減でき、周波数解析部6の処理速度を高くできる。
【0063】
また、周波数解析部6は、音階の周波数が低いほど入力音の観測時間(サンプリング周期)を大きくする(デシメーションする)ので、サンプル数を抑えつつ、低周波域の周波数分解能を高くでき、入力音を低周波域の音階の成分に正確に分解できる。また、周波数解析部6は、音階の周波数が高いほど入力音の観測時間(サンプリング周期)を小さくする(周波数分解能を低くする)ので、サンプル数を抑えつつ、入力音を高周波域の音階の成分に正確に分解できる。このような制御を可能とするのは、平均律における音階においては、高音になるほど隣り合う音階同士の周波数差が大きくなるためである。つまり、低周波域では、隣り合う音階同士の周波数差が小さいので、隣り合う音階同士を分解するためには高い周波数分解能が必要となる。高周波域では、隣り合う音階同士の周波数差が大きいので、低周波域に比べて周波数分解能が低くても、隣り合う音階同士を分解できるが、高周波の波形を捉えるためにはサンプリング周期を小さくする必要がある。このように、音階ごとに観測時間(周波数分解能)を設定することで、サンプル数を抑えつつ、入力音を各音階の成分に正確に分解できる。サンプル数を抑えることで、周波数解析部6の処理負担を軽減でき、周波数解析部6の処理速度を高くできる。
【0064】
また、入力音が、LED16に割り当てられた音階の間の音(音階からズレた音)を含む場合には、該音の両隣りの音階に割り当てられた2つのLED16の双方が発光するので、音階からズレた音も表現でき、入力音を聞いたときの感覚と、入力音をLED16の発光により表現したときの感覚とのズレを小さくできる。
【0065】
また、周波数解析部6は、音階からズレた音が、音階のスペクトル強度に反映されるように観測時間を設定するので、音階以外の周波数領域のスペクトル強度を計算しなくても、音階からズレた音もLED16の発光により表現できる。また、音階以外の周波数領域のスペクトル強度を計算しなくてもよいので、周波数解析部6の処理負担を軽減でき、周波数解析部6の処理速度を高くできる。
【0066】
また、LED16を実装する第1基板10は、互いに同一の形状かつ同一のパターンでLED16が実装された複数の小基板17から構成されるので、LED16を実装しやすくできる。例えば、ロボットによりLED16を実装する場合に、大きな基板に一括で実装する場合よりも、小さい基板に分割して実装する場合のほうが、ロボットの移動範囲を小さくできるので、ロボットが大型化するのを抑制できる。また、小基板17に分割したほうが、LED16を実装する基板のロット数をかせぐことができ、結果としてイニシャルコストを抑えることができる。
【0067】
また、LED16を実装する第1基板10と、周波数解析部6を実装する第2基板11とは別個に設けられるので、LED16の実装スペースを容易に確保でき、5つの渦巻部15から構成された渦巻状表示領域を容易に確保できる。また、第1基板10と第2基板11とは積層されているので、第1基板10と第2基板との間の配線を短くできる。また、水平方向(基板10、11に平行な方向)における表示装置1のサイズを小さくできる。
【0068】
また、前面カバー12は脱着可能なので、前面カバー12を、別の前面カバー12に容易に取り換えることができる。
【0069】
また、増幅度設定部4により増幅器3の増幅度が変更可能なので、入力音の強さに対するLED16の発光感度を容易に調整できる。例えば、雑音が多い場所で音楽を流す場合に、増幅器3の増幅度を下げることで、雑音でLED16が発光してしまうのを抑制できる。また、増幅器3の増幅度を上げることで、小さい音に対してもLED16を発光させることができ、小さい音も視覚的な表現が可能となる。
【0070】
また、各LED16は互い同一構造のフルカラーLEDなので、LED16の実装や管理が容易となる。また、音階に割り当てられたLED16の発光色を事後的に変更することができる。
【0071】
(第2実施形態)
次に、本開示の第2実施形態を第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。図8は本実施形態の表示装置の構成を示している。図8の表示装置20は、マイク21と増幅器22とADコンバータ23と表示制御部24とディスプレイ25とを備えている。表示装置20は、音を視覚的に表示する専用の装置であってもよいし、音を視覚的に表示する機能以外の機能を有した装置(例えば、スマートフォン、タブレット端末、パソコンなど)であってもよい。
【0072】
マイク21は第1実施形態のマイク2(図1参照)と同様の機能を有する。増幅器22は第1実施形態の増幅器3(図1参照)と同様の機能を有し、マイク21に入力された入力音を増幅する。ADコンバータ23は第1実施形態のADコンバータ5(図1参照)と同様の機能を有し、増幅器22で増幅された入力音をAD変換する。なお、マイク21が音取得部に相当する。また、マイク21が行う処理が音取得ステップに相当する。
【0073】
表示制御部24より先にディスプレイ25を説明する。ディスプレイ25は、例えば矩形状の画像表示面を有し、その画像表示面に各種画像を表示可能な表示部である。ディスプレイ25の表示方式は液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイなど、どのような方式でもよい。ディスプレイ25の画像表示面は、図3に示す5つの渦巻部15からなる渦巻状表示領域と同様の渦巻状表示領域を包含するように設けられる。画像表示面の、渦巻状表示領域以外の表示領域にも、画像が表示可能である。また、ディスプレイ25の画像表示面を構成する各画素ごとに、半音階毎の12音階にて構成される1オクターブ中の各音階に割り当てられる12色を少なくとも表示可能である。
【0074】
表示制御部24はディスプレイ25の表示を制御する。具体的には、表示制御部24は、第1実施形態の周波数解析部6の処理及び点灯制御部8の処理と同様の処理を行う。すなわち、表示制御部24は、ADコンバータ23によってAD変換された入力音の周波数解析を行う。そして、表示制御部24は、ディスプレイ25の画面表示面において、図3に示す5つの渦巻部15からなる渦巻状表示領域と同様の形状の表示領域、すなわち、中心を同一にして配置された、前記中心に対する回転対称の形状の複数の渦巻状からなる表示領域(渦巻状表示領域)を設定する。そして、表示制御部24は、入力音の周波数解析結果に基づいて、上記渦巻状表示領域における各渦巻状に沿った位置のうち入力音の周波数に応じた位置を該周波数に応じた色で発光させるようディスプレイ25を制御する。また、表示制御部24は、入力音の周波数の時間的変化及び入力音の強度の時間的変化に応じて、発光させる位置、色及び強度を変化させるとともに、5つの渦巻状の間で発光位置、発光色及び発光強度を同一に制御する。渦巻状表示領域における各渦巻状は、第1実施形態と同様に、黄金螺旋又はフィボナッチ数列に基づく螺旋形状に設定される。なお、表示制御部24は、渦巻状における各位置を点状に発光させる。
【0075】
表示制御部24は不揮発性のメモリ26を備えている。そのメモリ26には表示制御部24が実行する処理のプログラム(ソフトウェハ)27が記憶されている。表示制御部24は、このプログラム27にしたがって、第1実施形態の周波数解析部6の処理及び点灯制御部8の処理と同様の処理を行う。なお、表示制御部24が解析部及び表示制御部に相当する。表示制御部24が行う処理が解析ステップ及び表示ステップに相当する。
【0076】
また、メモリ26には、図5の対応関係と同様の対応関係が記憶されている。すなわち、渦巻状表示領域の渦巻状に沿った各位置には、半音階毎の12音階にて構成される1オクターブ中の各音階の周波数が割り当てられている。渦巻状の中心側から外側に向かうにしたがって、低音から高音へと変化する音階周波数が割り当てられている。また、渦巻状に沿った各位置には12色のうちのいずれかの色が割り当てられている。なお、図5において、記号(L、L・・・・)は第1実施形態においては各LED16を示していたが、本実施形態では渦巻状表示領域内の各位置を示している。表示制御部24は、メモリ26に記憶された上記対応関係に基づいて、発光させる位置及び色を制御する。
【0077】
このように、本実施形態においても第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
なお、本開示は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、渦巻状表示領域を構成する渦巻状の個数が5個の例を示したが、複数であれば何個であってもよい。渦巻状の大きさ(広がり)はどのような大きさでもよい。
【0079】
また、第1実施形態では、LED16がフルカラーLEDである例を示したが、単一の色のみを発光するLEDであってもよい。この場合、12色の各色ごとに単一色のLEDが設けられる。
【0080】
また、上記実施形態では、入力音の周波数解析により得られた音階毎のスペクトル強度に応じてLED16(第1実施形態)又はディスプレイ25上の各位置(第2実施形態)を予め定められた複数段階のうちのいずれかの段階の強度で発光させていたが、発光強度の段階数や、スペクトル強度の閾値を変更可能に構成してもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、音階以外の周波数領域における入力音のスペクトル強度は計算しない例を示したが、音階以外の周波数領域のスペクトル強度も計算して、そのスペクトル強度に基づいて、入力音が音階以外の音を含んでいるかを判定してもよい。そして、入力音が音階以外の音を含んでいる場合には、上記実施形態と同様に、該音の両隣りの音階に対応付けられた位置を発光させてもよい。
【0082】
また、上記実施形態では、渦巻状の中心側から外側に向かって音階が低音から高音に変化するように、渦巻状に沿った各位置(LED)と各音階とが割り当てられた例を示した。しかし、これに限定されず、渦巻状の中心側から外側に向かって音階が高音から低音に変化するように、渦巻状に沿った各位置(LED)と各音階とが割り当てられてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、マイクから入力された音を周波数解析する例を示したが、音楽等の音を記憶した記憶媒体(CDなど)から直接に音データを取得し、取得した音データを周波数解析してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1、20 表示装置
2、21 マイク
6 周波数解析部
8 点灯制御部
9 表示部
15 渦巻部
16 LED
24 表示制御部
25 ディスプレイ
【要約】
【課題】音を視覚的に表示する装置又は方法において心地よさを感じさせることができる表示装置又は方法を提供する。
【解決手段】表示装置は、中心を同一にして配置された、前記中心に対する回転対称の形状の複数の渦巻部15からなる表示領域を有する。渦巻部15は複数のLED16の配列により構成される。渦巻部15は黄金螺旋又はフィボナッチ数列に基づく螺旋を描く。各LED16は、半音階毎の12音階にて構成される1オクターブ中のいずれかの音階の周波数に割り当てられる。1オクターブ中の各音階に割り当てられたLED16同士は互いに異なる発光色に割り当てられ、オクターブの周波数差を有する音階に割り当たられたLED16同士は互いに同一の発光色に割り当てられる。表示装置は、マイクに入力された音を周波数解析し、その解析結果に応じたLED16を発光させる。複数の渦巻部15の間で発光位置、発光色、及び発光強度を同一に制御する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8