特許第6973729号(P6973729)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973729
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】船尾構造
(51)【国際特許分類】
   B63B 3/14 20060101AFI20211118BHJP
   B63H 25/38 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   B63B3/14
   B63H25/38 104C
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-90128(P2017-90128)
(22)【出願日】2017年4月28日
(65)【公開番号】特開2018-187972(P2018-187972A)
(43)【公開日】2018年11月29日
【審査請求日】2020年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】518144045
【氏名又は名称】三井E&S造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】岡野 翔太朗
(72)【発明者】
【氏名】松本 拓久
(72)【発明者】
【氏名】山田 豪
【審査官】 結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−11598(JP,A)
【文献】 特開昭51−39896(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103129700(CN,A)
【文献】 特開昭51−129097(JP,A)
【文献】 特開昭51−42294(JP,A)
【文献】 特開2017−39587(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第101475045(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 3/14,73/20,73/60,
B63H 25/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体に設けられたラダートランクと、
前記ラダートランク内に挿通され、下端部が舵本体に着脱可能に連結されるラダーストックと、
前記ラダートランクの上方に位置し、前記船体の上部構造物の一部を構成する固定部材に設けられ、ラダーストックの上端部に連結された吊り上げ部材を支持するための支持機構とを備え、
前記ラダーストックは舵本体から取外された状態で、前記吊り上げ部材を操作することにより傾斜可能であり、
前記ラダートランクの内壁面の少なくとも一部は、前記ラダーストックを傾けることができるように傾斜していることを特徴とする船尾構造。
【請求項2】
前記支持機構が、鉛直状態にある前記ラダーストックの直上に位置する第1の支持部と、前記第1の支持部に対して船体の幅方向にずれた位置に設けられる第2の支持部とを有することを特徴とする請求項1に記載の船尾構造。
【請求項3】
前記吊り上げ部材が、前記ラダーストックの上端部と前記第1の支持部を連結する第1の吊り上げ部材と、前記ラダーストックの上端部と前記第2の支持部を連結する第2の吊り上げ部材とを有することを特徴とする請求項2に記載の船尾構造。
【請求項4】
前記固定部材が、鉛直状態にある前記ラダーストックの直上の位置を通り、かつ前記船体の幅方向に設けられたビームであり、前記支持機構が、前記固定部材に沿って移動自在に設けられた支持部材を有し、前記ラダーストックの上端部と前記支持部材が単一の吊り上げ部材によって連結されることを特徴とする請求項1に記載の船尾構造。
【請求項5】
前記船体の外表面に、前記ラダーストックの下端部に連結された吊り上げ部材を挿通するためのブラケットが設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の船尾構造。
【請求項6】
前記ラダーストックが、舵取機を載置するためのフロアの高さ位置を回転中心として傾斜可能であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の船尾構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶の舵に関し、特に、舵を着脱自在に取付けるための船尾構造に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、船舶の舵は保守点検のために船体から取外せるように構成されている。特許文献1には、その一例として従来の舵装置が開示され、この舵装置はラダーストックに設けられた舵孔嵌合部の径がラダーストック本体の径よりも大きく成形されている。この舵装置において舵を船体から取外す場合、ラダーストックの上端部を操舵機から外した後、ラダーストックを垂直下方に下降させて舵孔嵌合部を舵孔から引出し、舵孔とラダーストック本体との間に間隙が生じた状態で、舵を斜め下方に引き下げて船体から取外すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平7−3790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の舵装置では、舵孔嵌合部を舵孔から引出す際、舵孔とラダーストック本体との間に、ラダーストックを傾斜させるのに十分な大きさの隙間ができるように、舵孔嵌合部をラダーストック本体よりも大きく成形する必要がある。したがってラダーストックの形状が全体的に複雑になるという問題があった。また舵の取外し作業は、ラダーストックの傾斜状態を維持しつつ下降させることが必要であり、熟練を要するという問題があった。
【0005】
本発明は、単純な形状のラダーストックであっても船体から取外すことができ、しかも取り外し作業が容易である船尾構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る船尾構造は、船体に設けられたラダートランクと、ラダートランク内に挿通され、下端部が舵本体に着脱可能に連結されるラダーストックと、ラダートランクの上方に位置する固定部材に設けられ、ラダーストックの上端部に連結された吊り上げ部材を支持するための支持機構とを備え、ラダーストックは舵本体から取外された状態で、吊り上げ部材を操作することにより傾斜可能であり、ラダートランクの内壁面の少なくとも一部は、ラダーストックを傾けることができるように傾斜していることを特徴としている。
【0007】
支持機構は、好ましくは、鉛直状態にあるラダーストックの直上に位置する第1の支持部と、第1の支持部に対して船体の幅方向にずれた位置に設けられる第2の支持部とを有する。この場合、吊り上げ部材は、ラダーストックの上端部と第1の支持部を連結する第1の吊り上げ部材と、ラダーストックの上端部と第2の支持部を連結する第2の吊り上げ部材とを有してもよい。あるいは、固定部材が、鉛直状態にあるラダーストックの直上の位置を通り、かつ船体の幅方向に設けられたビームであり、支持機構が、固定部材に沿って移動自在に設けられた支持部材を有し、ラダーストックの上端部と支持部材が単一の吊り上げ部材によって連結されるように構成されてもよい。
【0008】
好ましくは船体の外表面に、ラダーストックの下端部に連結された吊り上げ部材を挿通するためのブラケットが設けられる。ラダーストックが、舵取機を載置するためのフロアの高さ位置を回転中心として傾斜可能であってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、単純な形状のラダーストックであっても船体から取外すことができ、しかも取り外し作業が容易である船尾構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態である船尾構造を概略的に示す側面図である。
図2図1に示す船尾構造を後方から見た横断面図である。
図3】第1の実施形態を後方から見た横断面図である。
図4】第1の実施形態の要部を拡大図である。
図5】第2の実施形態を後方から見た横断面図である。
図6】第2の実施形態の要部を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示された実施形態を参照して本発明を説明する。
図1は本発明の実施形態である船尾構造を概略的に示す側面図である。船体にはロワーガジョン11とアッパーガジョン12が設けられる。舵本体13はラダーストック14の下端部に着脱自在に連結され、ラダーストック14はアッパーガジョン12に設けられた軸受15に挿通される。すなわち舵本体13は、ロワーガジョン11とアッパーガジョン12により回動自在に軸支される。
【0012】
図2は船尾構造を概略的に示す横断面図である。ラダーストック14は船体に設けられたラダートランク16に挿通され、ステアリングギアフラット17に載置された操舵機(図示せず)に連結される。上甲板18には開口19が形成され、後述するように、ラダーストック14の上端部に連結されるワイヤ等の吊り上げ部材は開口19を通り、上部構造物内の甲板に設けられた固定部材に連結される。ラダートランク16の内壁面20において右舷側の部分は、下方が船側に近くなるように傾斜している。換言すると内壁面20の右舷側の部分は、ラダーストック14がステアリングギアフラット17の高さ位置を回転中心として回動できるように傾斜している。
【0013】
図3図4を参照して、船尾構造の第1の実施形態を説明する。上甲板18の上方に位置する上部構造物の甲板21の下面には、第1および第2の固定部材22、23が設けられる。図示例において第1および第2の固定部材22、23は縦通防撓材であるが、これに限定されず、横方向に延びる部材であってもよい。第1および第2の固定部材22、23には、第1および第2の支持部24、25が設けられる。第1の支持部24は第1の固定部材22に取付けられた支持部材31と、支持部材31に係止するフック32と、フック32に連結された滑車33とを有する。同様に、第2の支持部25は第2の固定部材23に取付けられた支持部材34と、支持部材34に係止するフック35と、フック35に連結された滑車36とを有する。
【0014】
ラダーストック14を船体から取外すとき、図4に示すように、ラダーストック14の上端部に設けられた連結部26に、第1の上部吊り上げ部材37と第2の上部吊り上げ部材38の端部が連結される。この連結動作の終了後、ラダーストック14は舵本体13および操舵機に対する結合状態が解除され、上昇可能な状態となる。そして第1の上部吊り上げ部材37が滑車33を介して第1の巻取り装置(図示せず)に導かれて巻取り軸に巻回され、また第2の吊り上げ部材38が滑車36を介して第2の巻取り装置(図示せず)に導かれて巻取り軸に巻回される。
【0015】
ラダーストック14の下端部が舵本体13から解放される前の状態では、ラダーストック14は鉛直状態にある。したがって第1の上部吊り上げ部材37も鉛直方向に延び、第2の上部吊り上げ部材38は傾斜している。この状態において巻取り装置が駆動され、第1および第2の上部吊り上げ部材37、38が同時に巻き取られてラダーストック14は上方(1の方向)に変位する。ラダーストック14の下端部が舵本体13から抜き取られると、ラダーストック14の下端部に設けられた連結部27に下部吊り上げ部材39の端部が連結され、下部吊り上げ部材39は船体の外表面に設けられたブラケット28に挿通されて巻取り装置(図示せず)に導かれ、巻取り軸に巻回される。そして、下部吊り上げ部材39が巻き取られ、ラダーストック14は上端部が左舷側、下端部が右舷側に近づくように傾斜し(2の状態)、ラダートランク16の傾斜した内壁面20に略平行になる。この状態において、第2の吊り上げ部材38は略鉛直状態になる。
【0016】
次いで、ラダーストック14がラダートランク16の傾斜面に沿って下方(3の方向)へ変位するように、第1および第2の上部吊り上げ部材37、38が緩められる。これによりラダートランク16から抜き取られ、必要に応じて舵本体13も船体から取外される。
【0017】
以上のように第1の実施形態では、鉛直状態にあるラダーストック14の直上に第1の支持部24を設けるとともに、第1の支持部24に対して船体の幅方向にずれた位置の第2の支持部25を設けている。すなわち、ラダートランク16の上方に位置する固定部材22、23に第1および第2の支持部24、25から成る支持機構を設け、舵本体13からラダーストック14を取外した状態で、吊り上げ部材37、38、39を操作することによりラダーストック14を傾けて船体から取外している。このように吊り上げ部材37、38、39を利用することにより、ラダーストック14を傾けて船体から取外す作業が簡単になり、ラダーストック14の形状を複雑にする必要がない。つまりラダーストック14は、従来のようにステアリングギアフラット17に対応した部分に大径部を設ける必要はなく、形状を単純化することができる。
【0018】
図5図6を参照して第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、ラダーストック14の上端部に連結される上部吊り上げ部材として、第1の支持部24に連結される第1の上部吊り上げ部材37と、第2の支持部25に連結される第2の上部吊り上げ部材38とを用いていた。これに対して第2の実施形態は、ラダーストック14の上端部と支持機構とを、単一の上部吊り上げ部材40によって連結し、上部吊り上げ部材40とラダーストック14の下端部に連結される下部吊り上げ部材39によってラダーストック14を取外すように構成されている。
【0019】
第2の実施形態の支持機構は、第1の実施形態で例示した第1の支持部24と第2の支持部25に代えて、これらの位置の間を移動自在に設けられた支持部材41を有する。支持部材41は、上部構造物の甲板21の下面に設けられた第3の固定部材(I型、コ型、L型、T型、逆T型等のビーム)42に摺動自在に取付けられ、支持部材41には、フック43が係止する。フック43には滑車44が設けられる。ラダーストック14を船体から取外すとき、図6に示すように、ラダーストック14の上端部に設けられた連結部26に上部吊り上げ部材40の端部が連結される。上部吊り上げ部材40は滑車44を介して巻取り装置(図示せず)に導かれ、巻取り軸に巻回される。
【0020】
ラダーストック14を船体から取外すとき、図5に示すように、ラダーストック14の上端部に設けられた連結部26に上部吊り上げ部材40の端部が連結される。上部吊り上げ部材40は滑車44を介して巻取り装置(図示せず)に導かれ、巻取り軸に巻回される。ラダーストック14の下端部が舵本体13から抜き取られると、ラダーストック14の下端部に設けられた連結部27に下部吊り上げ部材39の端部が連結され、下部吊り上げ部材39は船体の外表面に設けられたブラケット28に挿通されて巻取り装置(図示せず)に導かれ、巻取り軸に巻回される。そして、下部吊り上げ部材39が巻き取られ、ラダーストック14は上端部が左舷側、下端部が右舷側に近づくように傾斜し、ラダートランク16の傾斜した内壁面20に略平行になる。
【0021】
次いで、ラダーストック14がラダートランク16の傾斜面に沿って下方(3の方向)へ変位するように、上部吊り上げ部材40が緩められる。これによりラダートランク16から抜き取られ、必要に応じて舵本体13も船体から取外される。
【0022】
このように第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、ラダーストック14を傾けて船体から取外す作業が簡単になり、ラダーストック14の形状を複雑にする必要がない。また上部吊り上げ部材を支持する支持部材の数を減らすことができ、第1の実施形態よりも部品点数を減らすことができる。
【0023】
なお第1および第2の実施形態では、ラダートランク16の内壁面20において右舷側の部分のみが傾斜していたが、本発明はこの構成に限定されない。すなわち、ラダートランク16の内壁面の左舷側が傾斜していてもよく、あるいは両舷側がともに傾斜していてもよい。さらに船首側が傾斜する構成も可能である。
【0024】
また第1の実施形態では上甲板18に開口19が形成されていたが、ラダーストック14の長さ、あるいは操舵機が載置されるステアリングギアフラットの高さ等によっては開口19を設ける必要はなく、上甲板18の下面に設けられた防撓材を利用することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
13 舵本体
14 ラダーストック
16 ラダートランク
22、23、42 固定部材
24 第1の支持部
25 第2の支持部
図1
図2
図3
図4
図5
図6