特許第6973734号(P6973734)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973734アルミナ質焼結体用組成物及びその製造方法、並びにアルミナ質焼結体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973734
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】アルミナ質焼結体用組成物及びその製造方法、並びにアルミナ質焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/119 20060101AFI20211118BHJP
   C04B 35/63 20060101ALI20211118BHJP
   C04B 35/632 20060101ALI20211118BHJP
   C04B 35/626 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   C04B35/119
   C04B35/63 030
   C04B35/632
   C04B35/626 250
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-229432(P2017-229432)
(22)【出願日】2017年11月29日
(65)【公開番号】特開2019-99401(P2019-99401A)
(43)【公開日】2019年6月24日
【審査請求日】2020年8月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078732
【弁理士】
【氏名又は名称】大谷 保
(74)【代理人】
【識別番号】100131635
【弁理士】
【氏名又は名称】有永 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100113561
【弁理士】
【氏名又は名称】石村 理恵
(72)【発明者】
【氏名】宮石 壮
(72)【発明者】
【氏名】飯生 悟史
【審査官】 小川 武
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−540305(JP,A)
【文献】 特表平05−504541(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0111879(US,A1)
【文献】 国際公開第95/006622(WO,A1)
【文献】 特開昭61−141662(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/117318(WO,A1)
【文献】 特開平04−305052(JP,A)
【文献】 特開2008−019144(JP,A)
【文献】 特開2005−306635(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1424082(KR,B1)
【文献】 RAO.S.P et al.,Dispersion studies of sub-micron zirconia using Dolapix CE 64,Colloids and surfaces A:physicochem.eng.,2007年,aspects 302,p.553-558
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/00−35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナと、ジルコニウム化合物と、アミノポリカルボン酸型キレート剤とを含み、
前記ジルコニウム化合物が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニル、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、及びジルコニウム−tert−ブトキシドのうちから選ばれる1種以上であり、
前記ジルコニウム化合物の含有量が、前記アルミナ100質量部に対して、ジルコニア換算量で1〜20質量部であり、
前記アミノポリカルボン酸型キレート剤の含有量が、前記ジルコニウム化合物中のジルコニウム1モルに対して0.01〜1.1モルである、アルミナ質焼結体用組成物。
【請求項2】
前記アミノポリカルボン酸型キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、L−アスパラギン酸N,N−二酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、及びこれらの塩のうちから選ばれる1種以上である、請求項に記載のアルミナ質焼結体用組成物。
【請求項3】
酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化イットリウムのうちから選ばれる1種以上をさらに含む、請求項1又は2に記載のアルミナ質焼結体用組成物。
【請求項4】
アルミナ粉末と、ジルコニウム化合物と、アミノポリカルボン酸型キレート剤と、溶媒とを混合する混合工程を有し、
前記ジルコニウム化合物が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニル、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、及びジルコニウム−tert−ブトキシドのうちから選ばれる1種以上であり、
前記アミノポリカルボン酸型キレート剤の配合量が、前記ジルコニウム化合物中のジルコニウム1モルに対して0.01〜1.1モルである、アルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
【請求項5】
前記混合工程で得られた混合物を乾燥及び解砕して、混合粉を得る工程を有する、請求項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ジルコニウム化合物の配合量が、前記アルミナ粉末100質量部に対してジルコニア換算量で1〜20質量部である、請求項又はに記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
【請求項7】
前記アミノポリカルボン酸型キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、L−アスパラギン酸N,N−二酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、及びこれらの塩のうちから選ばれる1種以上である、請求項4〜6のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
【請求項8】
前記溶媒が、水、ギ酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、及びテトラヒドロフランのうちから選ばれる1種以上である、請求項4〜7のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
【請求項9】
前記混合工程において、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化イットリウムのうちから選ばれる1種以上がさらに配合される、請求項4〜8のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物を用いたアルミナ質焼結体の製造方法であって、
前記組成物が粉末であり、前記粉末を加圧成形して成形体を得る工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る工程とを有する、アルミナ質焼結体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニア(ZrO2)を含むアルミナ質焼結体の原料として用いられる組成物及びその製造方法、並びに前記組成物を用いたアルミナ質焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ焼結体は、耐摩耗性や耐熱性、耐薬品性等に優れ、また、比較的高い熱伝導率を有し、高硬度で、高い機械的強度を有していることから、産業機械における種々のセラミックス部品や砥粒等の用途に幅広く用いられている。
このアルミナ焼結体は、ジルコニアを含有させると、より高い機械的強度が得られることが知られている。
【0003】
しかしながら、ジルコニアは、アルミナに比べて高価であり、機械的強度の向上のためにジルコニアの配合量を増加させると、ジルコニアを含有するアルミナ質焼結体を安価な材料として提供することは難しい。
【0004】
これに対しては、例えば、特許文献1に、微細なアルミナ粉体の表面にZr−Al系水酸化物が被着された準原料粉体を得た後、これを仮焼してアルミナ質焼結体の原料粉体を用いるアルミナ質焼結体の製造方法が提案されている。上記の微細なアルミナ粉体は、Zrイオンと、Mg、Ca、Y及び希土類元素のうちの1種以上のイオン、並びにAlイオンを原子レベルで均一に混合した溶液に、アルミナ粉末を添加し、さらにアンモニアを添加して中和反応させると同時に、アルミナの凝集体をボールやビーズ等のメディアで解砕して得られるものである。
このような方法によれば、ジルコニア原料の添加量を抑制しても、高硬度かつ高強度のアルミナ質焼結体が得られるとしている。
【0005】
また、アルミナ・ジルコニア複合粉末を、アルミナ成分とジルコニア成分との共沈法により得る場合、ジルコニアとアルミナとで最適仮焼条件が異なることから、凝集の少ない易焼結性の粉末として得ることは困難であるという課題があった。
これに対しては、例えば、特許文献2に、ジルコニウム塩、又はジルコニウム塩と安定化剤とを溶解した液に、アルミナ粉末を分散した分散液から得られたアルミナとジルコニウム化合物との複合沈殿を仮焼して製造した複合粉末を用いることにより、常圧焼成で高強度のアルミナ・ジルコニア複合焼結体が得られることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−344569号公報
【特許文献2】特開昭62−91419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたような方法では、メディアを用いた湿式での解砕工程を要し、同時に中和反応も行うため、操作が煩雑となり、また、アルミナ質焼結体の原料粉(組成物)の製造コストが高くなると言う課題を有していた。
また、上記特許文献2に記載されたような方法で得られた原料粉末を用いても、ジルコニアの含有量が少ない場合には、必ずしも、十分に高い強度を有するアルミナ・ジルコニア複合焼結体が得られるとは言えなかった。
【0008】
このため、ジルコニアを含有するアルミナ質焼結体において、ジルコニアの含有量が少なくても、機械的強度が高い焼結体を製造することが求められていた。
このような課題に対して、本発明者らは、アルミナ質焼結体の原料粉である焼結体製造用の組成物の調製に着目して検討を重ねた結果、所定のキレート剤を用いることが有効であることを見出した。
【0009】
本発明は、ジルコニアを含有するアルミナ質焼結体の機械的強度を向上させることができるアルミナ質焼結体用組成物及びその製造方法、並びにアルミナ質焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ジルコニアを含有するアルミナ質焼結体の原料粉の調製において、所定のキレート剤を用いることにより、焼結体の機械的強度を向上させることができることを見出したことに基づくものである。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[14]を提供するものである。
[1]アルミナと、ジルコニウム化合物と、アミノポリカルボン酸型キレート剤とを含み、前記ジルコニウム化合物の含有量が、前記アルミナ100質量部に対して、ジルコニア換算量で1〜20質量部である、アルミナ質焼結体用組成物。
[2]前記アミノポリカルボン酸型キレート剤の含有量が、前記ジルコニウム化合物中のジルコニウム1モルに対して0.01〜1.1モルである、上記[1]に記載のアルミナ質焼結体用組成物。
[3]前記アミノポリカルボン酸型キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、L−アスパラギン酸N,N−二酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、及びこれらの塩のうちから選ばれる1種以上である、上記[1]又は[2]に記載のアルミナ質焼結体用組成物。
[4]前記ジルコニウム化合物が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニル、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、及びジルコニウム−tert−ブトキシドのうちから選ばれる1種以上である、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物。
[5]酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化イットリウムのうちから選ばれる1種以上をさらに含む、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物。
【0012】
[6]アルミナ粉末と、ジルコニウム化合物と、アミノポリカルボン酸型キレート剤と、溶媒とを混合する混合工程を有することを特徴とする、アルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
[7]前記混合工程で得られた混合物を乾燥及び解砕して、混合粉を得る工程を有する、上記[6]に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
[8]前記ジルコニウム化合物の配合量が、前記アルミナ粉末100質量部に対してジルコニア換算量で1〜20質量部である、上記[6]又は[7]に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
[9]前記アミノポリカルボン酸型キレート剤の配合量が、前記ジルコニウム化合物中のジルコニウム1モルに対して0.01〜1.1モルである、上記[6]〜[8]のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
[10]前記アミノポリカルボン酸型キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、L−アスパラギン酸N,N−二酢酸、L−グルタミン酸二酢酸、及びこれらの塩のうちから選ばれる1種以上である、上記[6]〜[9]のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
[11]前記ジルコニウム化合物が、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニル、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、及びジルコニウム−tert−ブトキシドのうちから選ばれる1種以上である、上記[6]〜[10]のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
[12]前記溶媒が、水、ギ酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、及びテトラヒドロフランのうちから選ばれる1種以上である、上記[6]〜[11]のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
[13]前記混合工程において、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、及び酸化イットリウムのうちから選ばれる1種以上がさらに配合される、上記[6]〜[12]のいずれか1項に記載のアルミナ質焼結体用組成物の製造方法。
【0013】
[14]上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の組成物を用いたアルミナ質焼結体の製造方法であって、前記組成物が粉末であり、前記粉末を加圧成形して成形体を得る工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る工程とを有する、アルミナ質焼結体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ジルコニアを含有するアルミナ質焼結体の機械的強度を向上させることができるアルミナ質焼結体用組成物及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明のアルミナ質焼結体の製造方法によれば、ジルコニアの含有量が少なくても、高い機械的強度を有するアルミナ質焼結体が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のアルミナ質焼結体用組成物及びその製造方法、並びに前記組成物を用いたアルミナ質焼結体の製造方法を詳細に説明する。
【0016】
[アルミナ質焼結体用組成物]
本発明のアルミナ質焼結体用組成物は、アルミナと、ジルコニウム化合物と、アミノポリカルボン酸型キレート剤とを含むものであり、前記ジルコニウム化合物の含有量が、前記アルミナ100質量部に対して、ジルコニア換算量で1〜20質量部である。
このようなジルコニアを含有するアルミナ質焼結体用組成物を用いることにより、ジルコニアの含有量が少なくても、高い機械的強度を有する、特に、破壊靱性値が高いアルミナ質焼結体を得ることができる。
したがって、本発明のアルミナ質焼結体用組成物から製造されたアルミナ質焼結体は、例えば、産業機械における種々のセラミックス部品や、研削材、切削材、研磨材等の加工工具、鉄鋼業で用いられる研磨布の砥粒等として好適に用いることができる。
【0017】
本発明で言う「アルミナ質焼結体」とは、焼結体中に最も多く含まれる成分がアルミナであり、アルミナが主成分である焼結体であることを意味する。前記アルミナ質焼結体中のアルミナの含有量は、50質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは60〜99質量%、さらに好ましくは70〜98質量%である。
【0018】
以下、本発明のアルミナ質焼結体用組成物(以下、単に「組成物」とも言う。)を構成する各成分について説明する。
【0019】
(アルミナ)
本発明の組成物中のアルミナは、機械的強度が高いアルミナ質焼結体を得る観点から、コランダム(α−アルミナ)であることが好ましい。また、均質な組成物とする観点から、アルミナは粉体であること好ましく、体積分布50%累積値での粒子径(D50)が、3μm以下であることが好ましく、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。D50の下限値は、特に限定されないが、好ましくは0.01μm以上である。
D50は、レーザー回折散乱法によって測定することができる。本発明においては、下記実施例に記載のマイクロトラック粒度分布測定装置で測定した値とする。
【0020】
前記組成物中のアルミナの含有量は、アルミナを主成分とするアルミナ質焼結体を得る観点から、アルミナ、ジルコニウム化合物(ジルコニア換算量)及びアミノポリカルボン酸型キレート剤の合計100質量部に対して、50質量部以上100質量部未満であることが好ましく、より好ましくは60〜99質量部、さらに好ましくは70〜98質量部である。
【0021】
(ジルコニウム化合物)
ジルコニウム化合物は、前記組成物から得られるアルミナ質焼結体中に含まれるジルコニアの前駆体である。キレート化されやすい化合物であることが好ましく、また、均質な組成物を得る観点から、例えば、炭酸ジルコニウムアンモニウム、酢酸酸化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニル、硝酸酸化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム等の無機化合物、また、ジルコニウムアセチルアセトナート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウム−n−プロポキシド、ジルコニウム−n−ブトキシド、ジルコニウム−tert−ブトキシド等の有機化合物が挙げられる。これらは1種単独であっても、2種以上含まれていてもよい。ジルコニウム化合物がジルコニウム塩である場合には、無水和物であっても、水和物であってもよい。これらの中でも、入手容易性や組成物の均質性の観点から、炭酸ジルコニウムアンモニウムが好ましい。
【0022】
前記組成物中のジルコニウム化合物の含有量は、前記アルミナ100質量部に対して、ジルコニア(ZrO2)換算量で1〜20質量部であり、好ましくは1〜18質量部、より好ましくは2〜15質量部である。
ジルコニウム化合物の含有量が、アルミナ100質量部に対して、ジルコニア(ZrO2)換算量で20質量部以下と少なくても、本発明の組成物を用いて製造したアルミナ質焼結体は、高い機械的強度を有し、特に、破壊靱性値が高いという特徴を有している。
すなわち、本発明の組成物によれば、ジルコニウム化合物の含有量を抑制しても、得られるアルミナ質焼結体の機械的強度を従来よりも向上させることができる。さらに、アルミナ質焼結体の原料コストの観点からも、アルミナよりも高価なジルコニア原料であるジルコニウム化合物の含有量が少ないことが好ましい。
また、アルミナの熱伝導率は25〜35W/(m・K)であるのに対して、ジルコニアの熱伝導率は3〜4W/(m・K)と低く、組成物中のジルコニア原料であるジルコニウム化合物の含有量が少ないほど、放熱性に優れたアルミナ質焼結体が得られるため、例えば、砥粒等の研磨材用途で、過熱による研磨対象物の品質低下等の悪影響を抑制することができる。
また、アルミナの密度が3.9g/cm3であるのに対して、ジルコニアの密度は6.0g/cm3と高く、組成物中のジルコニア原料であるジルコニウム化合物の含有量が少ないほど、真密度が低いアルミナ焼結体が得られるため、例えば、砥粒等の研磨材用途で、研磨時の作業効率の向上を図ることができるという利点も有している。
【0023】
組成物中のジルコニウム化合物の含有量が、アルミナ100質量部に対して、ジルコニア(ZrO2)換算量で1質量部以上であれば、得られるアルミナ質焼結体の機械的強度を十分に向上させることができる。また、20質量部以下であれば、アルミナ質焼結体の原料コストを抑えることができる。
【0024】
(アミノポリカルボン酸型キレート剤)
前記組成物は、アミノポリカルボン酸型キレート剤を含む。このキレート剤は、組成物中のジルコニウム化合物の均一分散性を向上させる役割を有している。
前記アミノポリカルボン酸型キレート剤により、実際にキレート錯体が形成されていることを確認することは困難であり、前記キレート剤の作用機構の詳細は明らかではないが、組成物中で、ジルコニウム化合物由来のジルコニウムのイオン(Zr4+)をキレート化することにより、主成分のアルミナに対して、ジルコニウムイオンが均一に存在することが促進され、これにより、該組成物から得られるアルミナ質焼結体の機械的強度が向上するものと推測される。
【0025】
前記アミノポリカルボン酸型キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(以下、「EDTA」と称する。)、ニトリロ三酢酸(略称:NTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(略称:DTPA)、L−アスパラギン酸N,N−二酢酸(略称:ASDA)、L−グルタミン酸二酢酸(略称:GLDA)、及びこれらの塩のうちから選ばれる1種以上が挙げられる。これらのうち、1種単独であっても、2種以上を含んでいてもよい。前記塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩、カルシウム塩等の金属塩;アミン塩等が挙げられる。
これらの中でも、入手容易性やコスト等の観点から、EDTA及びその塩が好ましい。EDTAの塩としては、例えば、二ナトリウム塩、三ナトリウム塩、四ナトリウム塩、二カリウム塩、三カリウム塩、四カリウム塩、カルシウム塩、カルシウム二ナトリウム塩等が挙げられる。
【0026】
前記組成物中のアミノポリカルボン酸型キレート剤の含有量は、該キレート剤の作用により、該組成物から得られるアルミナ質焼結体の機械的強度を向上させる観点から、前記ジルコニウム化合物中のジルコニウム1モルに対して0.01〜1.1モルであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1.0モルである。さらに、得られるアルミナ質焼結体の機械的強度のみならず、高硬度の観点から、0.04〜0.4モルであることが好ましい。
【0027】
(その他の成分)
前記組成物中には、焼結の促進や安定化を目的とした焼結助剤等の添加成分が、得られるアルミナ質焼結体における本発明の効果を妨げない範囲内で含まれていてもよい。前記添加成分には、アルミニウム及びジルコニウム以外の金属化合物が含まれていてもよい。なお、アルミナ原料等にアルミニウム以外の不純物金属成分が含まれる場合があるが、これらも本発明の効果を妨げない範囲内であれば、差し支えない。
前記金属化合物が含まれる場合、その含有量は、アルミナ100質量部に対して、金属の酸化物換算量で3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
前記金属化合物における金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、希土類金属元素等が挙げられる。前記希土類金属元素としては、例えば、イットリウム、セリウム等が挙げられる。
【0028】
前記金属化合物としては、具体的には、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、又は酸化イットリウムが挙げられる。これらは、1種単独でも、2種以上含まれていてもよい。
これらは、組成物の焼成時に生成するジルコニアの安定化剤として作用するものである。また、酸化マグネシウムは、組成物の焼成時に、アルミナの結晶粒成長を抑制する作用も有している。
【0029】
また、前記組成物は、該組成物中の各成分の均一分散性の観点から、下記の組成物の製造方法において詳述するような溶媒を含んでいてもよい。ただし、組成物中の溶媒が多すぎると、アルミナ質焼結体を得るために溶媒を除去する時間及びコストを多く要することとなるため、溶媒の含有量は、ジルコニウム化合物とアミノポリカルボン酸型キレート剤とが均一に混合される程度で十分であり、必要以上に多くないことが好ましい。
組成物中の溶媒の含有量は、溶媒の種類にもよるが、アルミナ、ジルコニウム化合物(ジルコニア換算量)及びアミノポリカルボン酸型キレート剤の合計100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは7〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部である。
【0030】
[アルミナ質焼結体用組成物の製造方法]
上記のような本発明のアルミナ質焼結体用組成物を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、本発明に係る製造方法により得ることができる。具体的には、アルミナ粉末と、ジルコニウム化合物と、アミノポリカルボン酸型キレート剤と、溶媒とを混合する混合工程を有する製造方法により、アルミナ質焼結体用組成物を製造することができる。
このように、アルミナ質焼結体用組成物の主成分であるアルミナ粉末、ジルコニアを生成するジルコニア化合物、及びアミノポリカルボン酸型キレート剤を、溶媒を用いて混合することにより、組成物中の各成分が均一に混合されやすく、該キレート剤の作用により、該組成物から得られるアルミナ質焼結体の機械的強度を向上させることができる。
【0031】
前記混合工程においては、すべての成分が均一に混合することができればよく、各成分の混合順序は、特に限定されるものではない。すべての成分を同時に添加して混合してもよく、あるいはまた、任意に順次添加して混合してもよい。アミノポリカルボン酸型キレート剤の作用を効果的に発揮させる観点から、ジルコニウム化合物と該キレート剤とを溶媒存在下で混合しておくことが好ましい。例えば、ジルコニウム化合物を溶媒に添加した溶液を調製し、これにアミノポリカルボン酸型キレート剤を添加して混合し、この混合物を、別途、アルミナ粉末及び任意成分の焼結助剤等を混合したものと混合することにより、組成物のすべての成分の混合物を得ることができる。
混合手段としては、公知の混合方式を用いて行うことができ、例えば、容器回転式、機械撹拌式、流動撹拌式、無撹拌式、高速せん断・衝撃式等の方式で混合することができる。具体的には、ニーダー、ブレンダー等が好適に用いられる。
【0032】
(アルミナ粉末)
混合されるアルミナ粉末は、上述した組成物における粉体のアルミナと同様である。また、機械的強度が高いアルミナ質焼結体を得る観点から、高純度であることが好ましく、例えば、バイヤー法で製造されたもの等が好適に用いられる。
アルミナ粉末中のアルミナ純度は、97質量%以上であることが好ましく、より好ましくは98質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。一般的なアルミナ粉末中の不純物金属成分の金属としては、例えば、ナトリウム、ケイ素、カルシウム等が挙げられる。
【0033】
アルミナ粉末中のナトリウムの含有量は、酸化物(Na2O)換算量で、1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下である。
アルミナ粉末中には、ナトリウム以外に、原料に由来する成分として、ケイ素やカルシウム等の元素も含まれる場合があるが、これらの各元素成分の含有量は、酸化物(SiO2やCaO)換算量で、0.05質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以下、さらに好ましくは0.01質量%以下である。
アルミナ粉末中のこれらの微量の不純物金属成分の含有量は、JIS R 1649:2002に準じた方法で、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定することができる。
【0034】
アルミナ粉末の配合量は、アルミナを主成分とするアルミナ質焼結体を得る観点から、アルミナ粉末、ジルコニウム化合物(ジルコニア換算量)及びアミノポリカルボン酸型キレート剤の合計100質量部に対して、50質量部以上100質量部未満であることが好ましく、より好ましくは60〜99質量部、さらに好ましくは70〜98質量部である。
【0035】
(ジルコニウム化合物)
混合されるジルコニウム化合物は、上述した組成物におけるジルコニウム化合物と同様である。
【0036】
ジルコニウム化合物の配合量は、製造した組成物から得られるアルミナ質焼結体が十分な機械的強度を有するものとする観点から、アルミナ粉末100質量部に対して、ジルコニア(ZrO2)換算量で1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜18質量部、さらに好ましくは2〜15質量部である。
ジルコニウム化合物の配合量が、アルミナ100質量部に対して、ジルコニア(ZrO2)換算量で20質量部以下と少なくても、高い機械的強度を有し、特に、破壊靱性値が高いアルミナ質焼結体を生成することができる組成物が得られる。
【0037】
すなわち、本発明の組成物の製造方法によれば、ジルコニウム化合物の含有量を抑制しても、機械的強度が従来よりも向上したアルミナ質焼結体の製造用の組成物を得ることができる。
また、上記の組成物の説明で述べたように、アルミナ質焼結体の原料コスト、放熱性、及び真密度等の観点からも、組成物の製造におけるジルコニウム化合物の配合量は少ない方が好ましい。
【0038】
(アミノポリカルボン酸型キレート剤)
混合されるアミノポリカルボン酸型キレート剤は、上述した組成物におけるものと同様である。
アミノポリカルボン酸型キレート剤の配合量は、該キレート剤の作用により、製造した組成物から得られるアルミナ質焼結体の機械的強度を向上させる観点から、前記ジルコニウム化合物中のジルコニウム1モルに対して0.01〜1.1モルであることが好ましく、より好ましくは0.02〜1.0モルである。さらに、得られるアルミナ質焼結体の機械的強度のみならず、高硬度の観点から、0.04〜0.4モルであることが好ましい。
【0039】
(溶媒)
前記混合工程においては、製造される組成物中の各成分の均一分散性の観点から、溶媒を配合する。溶媒を用いることにより、ジルコニウム化合物との混合によるアミノポリカルボン酸型キレート剤の作用が効果的に発揮され、製造される組成物から得られるアルミナ質焼結体の機械的強度を向上させることができる。
溶媒の配合量は、ジルコニウム化合物及びその他の成分の配合量に応じて適宜調整することができるが、溶媒が多すぎると、アルミナ質焼結体を得るために溶媒を除去する時間及びコストを多く要することとなるため、必要以上に多くないことが好ましい。ジルコニウム化合物とアミノポリカルボン酸型キレート剤とが均一に混合される程度の量であることが好ましい。
溶媒の配合量は、用いる溶媒の種類にもよるが、アルミナ、ジルコニウム化合物(ジルコニア換算量)及びアミノポリカルボン酸型キレート剤の合計100質量部に対して、5〜50質量部であることが好ましく、より好ましくは7〜40質量部、さらに好ましくは10〜30質量部である。
【0040】
溶媒としては、ジルコニウム化合物及びアミノポリカルボン酸型キレート剤を溶解させることができるものを用いることが好ましい。このような溶媒としては、極性溶媒が好適に用いられ、また、アルミナ質焼結体を得るためには、揮発しやすい、沸点が比較的低い溶媒が好適である。具体的には、水、ギ酸、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、酢酸、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、入手及び取り扱い容易性、並びにコスト等の観点から、水が好適に用いられる。
【0041】
(その他の成分)
前記混合工程においては、組成物の焼結の促進や安定化を目的とした焼結助剤等の添加成分を、該組成物から得られるアルミナ質焼結体における本発明の効果を妨げない範囲内で配合してもよい。前記添加成分には、アルミニウム及びジルコニウム以外の金属化合物が含まれていてもよい。なお、アルミナ粉末原料等にアルミニウム以外の不純物金属成分が含まれる場合があるが、これらも本発明の効果を妨げない範囲内であれば、差し支えない。
前記金属化合物の配合量は、アルミナ粉末100質量部に対して、金属の酸化物換算量で3質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜2質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。
前記金属化合物における金属としては、例えば、マグネシウム、カルシウム、希土類金属元素等が挙げられる。前記希土類金属元素としては、例えば、イットリウム、セリウム等が挙げられる。
前記金属化合物の具体例としては、上述した組成物における金属化合物と同様であり、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、又は酸化イットリウムが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0042】
(混合工程後の工程)
アルミナ質焼結体を製造するための製造原料の形態としては、取り扱い性や成形加工性等の観点から、前記組成物の混合粉であることが好ましい。このため、本発明の組成物の製造方法においては、前記混合工程で得られた混合物を乾燥及び解砕して、混合粉を得る工程を有していることが好ましい。
乾燥は、公知の方法で行うことができ、用いる溶媒に応じて温度や圧力等の設定条件は適宜設定される。例えば、溶媒として水が用いられる場合、定温乾燥機にて、大気雰囲気下、常圧で、90〜110℃で0.5〜10時間で乾燥させることができる。
解砕も、公知の方法で行うことができ、例えば、ボールミル、ロッドミル、振動ミル、高圧粉砕ロール、ブレンダー等の解砕装置を用いて、所望の粒子径サイズの粉末とすることができる。必要に応じて、粒子径サイズを揃えるために、ふるい等で分級してもよい。
取り扱い性や成形加工性等の観点から、一般的には、粒子径0.1〜50μmの範囲内に分級された粉末が好適に用いられる。なお、ここで言う粒子径の範囲は、体積分布1%累積値(D1)の粒子径から99%累積値(D99)の粒子径までを指す。この粒子径も、前記アルミナの粒子径と同様に、レーザー回折散乱法によって測定することができる。
【0043】
[アルミナ質焼結体の製造方法]
上記の本発明の組成物からアルミナ質焼結体を製造する方法は、特に限定されるものではなく、焼結体原料から焼結体を得るための公知の製造方法を用いることができる。
前記組成物を用いるアルミナ質焼結体の製造方法としては、粉末の組成物を加圧成形して成形体を得る工程と、前記成形体を焼成して焼結体を得る工程とを有する製造方法が好ましい。このような製造方法によれば、高い機械的強度を有するアルミナ質焼結体を好適に得ることができる。
成形体を得るための加圧成形は、公知の方法を用いることができ、例えば、金型による一軸加圧成形、冷間静水圧加圧(CIP)成形、押出し成形等により行うことができる。
焼結体を得るための焼成は、公知の方法を用いることができ、例えば、常圧焼成法、ホットプレス法、ガス加圧焼成法、マイクロ波加熱焼成法、放電プラズマ焼結法等により行うことができる。常圧焼成法の場合には、1400〜1800℃で、0.5〜5時間焼成することにより、焼結体を得ることができる。
【0044】
上記のようにして成形体から得られた焼結体は、砥粒等の粒子として用いられる場合には、該焼結体を解砕して、必要に応じて分級し、所望の粒子サイズとして適用することができる。解砕及び分級は、公知の方法を用いて行うことができる。
【実施例】
【0045】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0046】
[アルミナ質焼結体用組成物の製造]
下記実施例及び比較例において、組成物の製造に用いた各種原料成分の詳細は下記のとおりである。
<アルミナ>
・アルミナ粉末:アルミナ純度95.56質量%、ナトリウム(酸化物(Na2O)換算)含有量0.23質量%、ケイ素(酸化物(SiO2)換算)含有量0.01質量%、カルシウム(酸化物(CaO)換算)含有量0.01質量%;粒子径(D50)0.620μm(測定装置:マイクロトラック粒度分布測定装置「マイクロトラック(登録商標)HRA」、日機装株式会社製)
<ジルコニウム化合物>
・炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液:「ジルコゾール(登録商標)AC−20」、第一稀元素化学工業株式会社製;ジルコニウム(ジルコニア換算)濃度20.1質量%、含水分54.1質量%
<アミノポリカルボン酸型キレート剤>
・エチレンジアミン四酢酸(EDTA):関東化学株式会社製
<その他(焼結助剤)>
・酸化マグネシウム粉末:「キョーワマグ(登録商標)30」、協和化学工業株式会社製
【0047】
(実施例1)
アルミナ粉末898.00g、及び酸化マグネシウム粉末2.00gを、卓上型ニーダー(「PNV−1」、株式会社入江商会製)にて混合した。
この混合粉末に、炭酸ジルコニウムアンモニウム水溶液497.51g(ジルコニウム含有量(ジルコニア換算)100.0g)にEDTA11.86gを添加混合したものを添加し、さらに混合した。
得られた混合物を定温乾燥機にて、100℃で10時間乾燥させた後、ワーリングブレンダー(「7012S」、ワーリング社製)にて解砕し、目開き150μmのステンレスふるいにて分級し、粒子径0.2〜10.1μmのアルミナ質焼結用組成物の粉末を得た。
【0048】
(実施例2〜10及び比較例1〜6)
下記表1に示す配合組成とし、それ以外は実施例1と同様にして、アルミナ質焼結用組成物の粉末を得た。
なお、前記混合物を得る際の混合時に、均一な混合のため、実施例7及び比較例2においては、水100.00gを添加し、また、実施例8,9及び比較例3〜6においては、水200.00gを添加した。
【0049】
[アルミナ質焼結体の製造]
上記において製造した各アルミナ質焼結用組成物の粉末1.50gを用いて、幅4.5mm、長さ35.0mm、深さ30.0mmの金型を用いて成形圧力400MPaで一軸加圧成形し、成形体を得た。
得られた成形体を、電気炉にて、大気雰囲気下、1650℃で1時間焼成し、各実施例及び各比較例の組成物からアルミナ質焼結体を製造した。
【0050】
得られたアルミナ質焼結体について、下記の項目について測定評価を行った。破壊靭性値及びビッカース強度の評価結果を表1に示す。
【0051】
<破壊靭性値>
アルミナ質焼結体の機械的強度の一指標として、破壊靭性値を測定した。
JIS R 1607:2015「ファインセラミックスの室温破壊じん(靱)性試験方法 6.IF法」に準じて求めた。
ビッカース硬度計「DVK−1」(松沢精機株式会社製)にて、試験片厚さ2.5〜3.5mm、最大荷重(押込荷重)49N、圧子打ち込み速度50μm/秒、圧子打ち込み時間(保持時間)15秒間の試験条件で、測定点10点で試験を行い、圧痕及び亀裂(クラック)長さを測定し、下記式により算出した各破壊靭性Kcの平均値を破壊靱性値とした。なお、下記式において、ヤング率Eは、アルミナのヤング率(3.9×1011Pa)、及びジルコニアのヤング率(2.2×1011Pa)を用いて、フォークト(Voigt)則により算出した。
Kc=0.026E1/21/2a/C3/2
ここで、Kc:破壊靱性[Pa・m1/2
E :弾性率(ヤング率)[Pa]
P :押込荷重[N]
a :圧痕の対角線長さの平均の半分[m]
C :亀裂長さの平均の半分[m]
【0052】
<ビッカース硬さ>
アルミナ質焼結体の硬度の一指標として、ビッカース硬さを測定した。
マイクロビッカース硬さ試験機「MVK−VL」(株式会社アカシ製)にて、荷重0.98N(0.1kgf)、圧子打ち込み時間10秒間の試験条件で、測定点15点で試験を行い、これらの測定値の平均値をビッカース硬さ(HV0.1)とした。
【0053】
<ジルコニアの結晶粒子径>
ジルコニアの結晶粒子の異常成長の有無等の状態確認のため、結晶粒子径を測定した。
焼結体試験片の表面を鏡面研磨した後、走査型電子顕微鏡「JSM−6510V」(日本電子株式会社製)にて観察した。
観察画像について、画像解析ソフト「Mac−View ver.4」(株式会社マウンテック製)にて、選択した約500個のジルコニアの結晶粒子の円相当径の平均値をジルコニアの結晶粒子径とした。
【0054】
【表1】
【0055】
実施例及び比較例で製造したアルミナ質焼結体におけるジルコニアの結晶粒子径は、いずれも、0.59〜0.75μmの範囲内で、ほぼ同等であり、結晶粒子が満遍なく分布していることが確認された。
表1に示した評価結果から分かるように、アルミナ、ジルコニウム化合物、及びアミノポリカルボン酸型キレート剤を含む組成物から製造したアルミナ質焼結体(実施例1〜10)は、アミノポリカルボン酸型キレート剤を含まない組成物、又はジルコニウム化合物を含まない組成物から製造したアルミナ質焼結体(比較例1〜6)と比較して、高い機械的強度(破壊靭性値)を有するものであることが認められた。
また、実施例2と比較例1、実施例7と比較例2、実施例8と比較例3、及び実施例9と比較例4のそれぞれの比較から、組成物中のジルコニウム化合物が同じ配合量の場合、アミノポリカルボン酸型キレート剤を添加することにより、アルミナ質焼結体の機械的強度が向上すると言える。
また、実施例7〜9と比較例1との比較から、アミノポリカルボン酸型キレート剤を添加することにより、ジルコニウム化合物の配合量を少なくしても、高い機械的強度を有するアルミナ質焼結体を得られることが分かる。
また、組成物中のアミノポリカルボン酸型キレート剤の含有量をジルコニウム化合物中のジルコニウム1モルに対して、0.5モル以上とした場合(実施例5及び6)、アミノポリカルボン酸型キレート剤を添加しない場合(比較例1)よりも、硬度(ビッカース硬さ)が低かったが、0.4モル以下とした場合、硬度が高くなることが認められた。このことから、組成物に所定量のアミノポリカルボン酸型キレート剤を添加することにより、アルミナ質焼結体の機械的強度の向上のみならず、硬度も向上させることができると言える。