特許第6973740号(P6973740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤川 聖子の特許一覧

<>
  • 特許6973740-肌美容組成物および肌美容方法 図000003
  • 特許6973740-肌美容組成物および肌美容方法 図000004
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973740
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】肌美容組成物および肌美容方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9794 20170101AFI20211118BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20211118BHJP
   A61K 8/36 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   A61K8/9794
   A61Q19/00
   A61K8/19
   A61K8/36
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-53021(P2021-53021)
(22)【出願日】2021年3月26日
【審査請求日】2021年3月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521129266
【氏名又は名称】藤川 聖子
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(72)【発明者】
【氏名】藤川 聖子
【審査官】 松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−104098(JP,A)
【文献】 特開昭62−179587(JP,A)
【文献】 特開2006−320308(JP,A)
【文献】 特開2017−095369(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2012−0129600(KR,A)
【文献】 中国特許出願公開第105998573(CN,A)
【文献】 特開2005−015389(JP,A)
【文献】 特開2003−095859(JP,A)
【文献】 特開2001−200250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タマネギ鱗茎の酢酸抽出物と重曹とを含有することを特徴とする肌美容組成物。
【請求項2】
前記タマネギ鱗茎の酢酸抽出物が、タマネギ鱗茎の含水酢酸抽出物である請求項1に記載の肌美容組成物。
【請求項3】
前記含水酢酸が、米酢及び/又はリンゴ酢である請求項2に記載の肌美容組成物。
【請求項4】
形態が、化粧水である請求項1からのいずれかに記載の肌美容組成物。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の肌美容組成物を、皮膚に塗布する工程を含むことを特徴とする肌美容方法(但し、医療行為を除く)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タマネギ由来の成分を含有する肌美容組成物およびこれを使用した肌美容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧水は、皮膚に潤いをもたらし、さっぱり感を付与する等の目的で使用され、その組成物中に有用成分を配合することも多い。
【0003】
有用成分を配合した化粧水として、例えば、特許文献1には、シャクヤク抽出物を配合した抗シワ化粧水が報告されている。また、特許文献2には加水分解アルギンと海水とクロレラ抽出物とからなる原料から得られた天然保湿剤が温泉水に添加されてなる化粧水が報告されている。また、特許文献3にはローゼルの葉の水溶性抽出物を含有した化粧水が報告されている。また、特許文献4にはタマネギの表皮に含まれるケルセチンを配合した化粧料組成物が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−200896号公報
【特許文献2】特開2013−155170号公報
【特許文献3】特開2004−346006号公報
【特許文献4】特開2017−57163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、従来より植物抽出物を配合した化粧水が開発されている。しかしながら、植物由来成分の中には未だその効果が知られていないものも数多く存在し、シワ改善作用を有し、かつ、透明若しくは半透明の外観を有する化粧水に配合でき、かつ化粧水を塗布した後に、皮膚に十分なしっとり感を付与する成分が望まれていた。
【0006】
かかる状況下、本発明は、シワを改善し、使用感に優れた肌美容組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、タマネギ鱗茎の酢酸抽出物が、シワ改善作用を有し、使用感に優れるため、化粧水原料として有用であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> タマネギ鱗茎の酢酸抽出物を含有する肌美容組成物。
<2> 前記タマネギ鱗茎の酢酸抽出物が、タマネギ鱗茎の含水酢酸抽出物である<1>に記載の肌美容組成物。
<3> 前記含水酢酸が、米酢及び/又はリンゴ酢である<2>に記載の肌美容組成物。
<4> 形態が、化粧水である<1>から<4>のいずれかに記載の肌美容組成物。
<5> <1>から<5>のいずれかに記載の肌美容組成物を、皮膚に塗布する工程を含むことを特徴とする肌美容方法(但し、医療行為を除く)。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シワを改善し、使用感に優れた肌美容組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】モニター試験(3週間目)のアンケートまとめである。
図2】モニター試験(5週間目)のアンケートまとめである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施できる。なお、本明細書において、「〜」とはその前後の数値又は物理量を含む表現として用いるものとする。また、本明細書において、「A及び/又はB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「A及びBの双方」が含まれる。
【0012】
本発明は、タマネギ鱗茎の酢酸抽出物を含有する肌美容組成物に関する。
【0013】
本明細書における「肌美容組成物」とは、使用者の肌の状態を保持又は改善し、肌の美的外観を保持又は高めるための組成物を意味する。具体的には、シワの改善、皮膚の老化の予防及び改善、皮膚のハリやキメの改善、透明感の付与等が挙げられる。本発明の肌美容組成物は、実施例で示すようシワの改善に特に優れた効果を奏する。
【0014】
以下、本発明の肌美容組成物をより詳細に説明する。
【0015】
本発明の肌美容組成物に配合されるタマネギ鱗茎酢酸抽出物は、タマネギ(学名:Allium cepa)の鱗茎(球根)の酢酸抽出物である。
タマネギはユリ科ネギ属の多年草であり、その鱗茎は、食用として広く用いられている。タマネギ鱗茎は、伝統的に利尿作用、抗菌作用等の薬効があるとされ、さらには抗酸化作用、抗老化作用、抗アレルギー作用があるともされている。
【0016】
原料となるタマネギの種類としては特に制限はなく、黄タマネギ、白タマネギ、紫タマネギのいずれも使用することができる。
【0017】
本発明において、「抽出物」とは、抽出対象となるタマネギ鱗茎、又はこれを必要に応じて細切したものを溶媒抽出して、有効成分の含有率を高めた形態のものを総括した概念である。具体的にはタマネギ鱗茎を抽出原料として得られる抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。なお、抽出液を乾燥して得られる乾燥物も、抽出物に該当するものとする。
【0018】
実施例に示す通り、タマネギ鱗茎に含有される肌美容に寄与する有効成分は酢酸に可溶の成分である。
抽出溶媒としては、酢酸のみでもよいが、入手しやすい酢酸と水の混合物である含水酢酸を使用してもよい。なお、抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、イオン交換水、生理食塩水等も含まれる。
【0019】
含水酢酸の場合、酢酸と水の混合比は、本発明の効果(シワ改善等の肌美容効果)を損なわない限り、適宜調整することができるが、通常、酢酸濃度1〜50重量%である。
含水酢酸としては合成酢であってもよく、醸造酢であってもよいが、醸造酢が好ましい。合成酢及び醸造酢は、所定の酢酸濃度になるように適宜濃縮、あるいは水で希釈して使用することができる。
醸造酢は、いわゆる食酢として市販されている穀物酢(米酢、玄米酢、米黒酢、大麦黒酢など)や果実酢(リンゴ酢、ブドウ酢など)の酢酸発酵により製造された食用酢酸水溶液である。この中でも、米酢、リンゴ酢は酢酸以外の他の有機酸やポリフェノール等の有用成分を含むため、本発明のタマネギ鱗茎酢酸抽出物の抽出溶媒として好適である。
米酢及びリンゴ酢は市販品を好適に使用することができ、単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。米酢及びリンゴ酢を混合する場合の混合比(体積比)は、米酢:リンゴ酢=10:90〜90:10であることが好ましい。
【0020】
また、抽出溶媒は、本発明の効果を損なわない範囲で、酢酸、水以外の溶媒を含んでいてもよい。具体例としては、水、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;ギ酸、酪酸、シュウ酸、リンゴ酸、乳酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸等の有機酸;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられる。また、抽出溶媒は、添加剤を含んでいてもよい。例えば、粘度調整剤などが挙げられる。
【0021】
本発明の肌美容組成物は、タマネギ鱗茎酢酸抽出物と共に、重曹を含有していることが好ましい。重曹(炭酸水素ナトリウム)は、水に溶解させるとアルカリ性を示す、化学式 NaHCO3で表されるナトリウムの炭酸水素塩である。
【0022】
実施例で示すとおり、タマネギ鱗茎酢酸抽出物のみでも、シワ改善、保湿効果、美肌効果(キメの改善)が認められるが、重曹を併せて含有することによって、より短期間でより優れた肌美容効果(特にシワ改善)が認められる。タマネギ鱗茎酢酸抽出物と重曹とを組み合わせることで肌美容効果が向上することについての詳細は不明であるが、実施例で示す通り、タマネギ鱗茎の水抽出物では、むしろ肌美容効果が劣化することから、タマネギ鱗茎に含まれる酢酸可溶性の成分と重曹の相乗作用が生じていると推測される。
【0023】
本発明の肌美容組成物におけるタマネギ鱗茎酢酸抽出物及び重曹の含有量としては、その効果の奏する範囲で適宜含有させればよい。抽出溶媒として米酢及びリンゴ酢の混合物を使用した場合、タマネギ鱗茎抽出物100mLに対して、重曹が0.1〜1gである。
【0024】
<その他の成分>
本発明の肌美容組成物は、タマネギ鱗茎酢酸抽出物及び重曹以外にも本発明の目的を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、薬学的又は化粧学的に許容される成分であれば、特に制限はない。
【0025】
例えば、美白効果を促進する成分として、ビサボロール、ビタミンC又はビタミンC誘導体、米糠エキス、プルーン酵母分解エキスを含有していてもよい。
【0026】
また、皮膚のターンオーバーを促進する成分とされるヒメフウロエキス、酵母多糖体、赤ワイン酵母、カモミラエキス等を含有していてもよい。
【0027】
また、保湿成分として、ヒト型セラミド、ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸、加水分解ヒアルロン酸等)等を含有していてもよい。
【0028】
<肌美容組成物の形態、使用方法>
本発明の肌美容組成物の形態は、ヒトの皮膚に適用可能である限り、制限はなく、使用する方法に応じて適宜決定され、化粧水、ローション剤、ゲル剤、乳液剤、クリーム剤などの種々の形態に用いることができる。この中でも、顔を含む皮膚への塗布性から化粧水として使用されることが好ましい。
【0029】
本発明の肌美容組成物が化粧水(水系液剤)として使用される場合、溶媒は水(好適には精製水)であり、これに従来公知の化粧水に使用される成分を配合していてもよい。例えば、エタノール、グリセリン、酸化防止剤、美白剤、紫外線吸収剤、可溶化剤、保湿剤、色素、pH調整剤、乳化剤、増粘剤、香料等の任意の成分を、本発明の効果を損なわない範囲で任意の配合割合で含有することができる。
【0030】
本発明の肌美容組成物は、その形態に応じて、一般に知られている方法により製造すればよい。例えば、形態が、化粧水の場合、目的とする割合のタマネギ鱗茎酢酸抽出物、重曹、及び水(並びに必要に応じてグリセリン等の他の成分)を混合することで製造することができる。
【0031】
本発明の肌美容組成物は、典型的には、本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物(WEBページ含む)のいずれかに肌美容効果の機能がある旨を表示して使用する。
【0032】
本発明の肌美容方法は、上記本発明の肌美容組成物を、皮膚に塗布する工程を含むことを特徴とする(但し、医療行為を除く)。本発明の肌美容組成物の形態に応じて直接塗布したり、スプレー塗布を行えばよい。典型的には、医療行為を行わないエステティックサロン等における施術として、本発明の肌美容組成物を、対象者の皮膚に塗布する方法を挙げることができる。
【0033】
以上、本発明について述べたが、上記記載において、明示的に開示されていない事項は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能なものを採用することができ、制限的なものではない。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
<実験例1>
黄マネギ2玉(約600g)の表皮を除去した後に鱗茎をスライスした。スライスされたタマネギ鱗茎を、抽出溶媒としての食酢の混合液450mL(米酢(商品名:ミツカン 純米酢金封)225mL及びリンゴ酢(商品名:ミツカン 純リンゴ酢)225mLからなる混合液)に浸して室温(約20℃)で12時間静置した後に固形分を取り除き、実験例1のタマネギ鱗茎酢酸抽出物(原液)を得た。
【0036】
<実験例2>
実施例1と同様の方法でタマネギ鱗茎酢酸抽出物を製造し、得られたタマネギ鱗茎酢酸抽出物400mLに対し、重曹2gを入れて完全に溶解するまで撹拌することによって、実験例2の組成物(原液)を得た。
【0037】
<実験例3>(比較例)
水400mLに対し、重曹2gを入れて完全に溶解するまで撹拌することによって、実験例3の組成物(原液)を得た。
【0038】
<実験例4>(比較例)
抽出溶媒として、食酢の混合液400mLに代えて、水400mLを使用した以外は、実施例1と同様にしてタマネギ鱗茎の水抽出物を得た。
得られたタマネギ鱗茎の水抽出物400mLに対し、重曹2gを入れて完全に溶解するまで撹拌することによって、実験例4の組成物(原液)を得た。
【0039】
(化粧水の調整)
上記の実験例1〜4の組成物(原液)40mLと、精製水50mL、グリセリン10mLを混合して、実験例1〜4の化粧水を得た。
【0040】
(モニター試験)
モニター8名(20代2名(男女)、30代2名(男女)、50代1名(女)、60代2名(男女)、70代1名(女))に、実験例1〜4の化粧水を5週間、1日1回の条件で顔に使用してもらい、使用後の肌の状態を評価した。
表1に3週間目、5週間目の評価結果を示す。また、表1の元となったモニター試験のアンケートまとめを図1(3週目)、図2(5週目)をそれぞれ示す。
【0041】
評価基準は以下の通りである。
<シワ改善>
2点 :大部分効果確認できた
1点 :一部効果確認できた
0点 :効果が確認できない
−1点:しわ・たるみが増えた
−2点:肌に異常が出た等
<保湿効果>
2点 :しっとり感確認
1点 :ややしっとり感確認
0点 :効果が確認できない
−1点:乾燥・つっぱり感あり
−2点:肌に異常が出た等
<美肌効果(肌のきめ)>
2点 :大部分効果確認できた
1点 :一部効果確認できた
0点 :効果が確認できない
−1点:きめが荒くなった
−2点:肌に異常が出た等
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示される通り、タマネギ鱗茎酢酸抽出物を含有する実験例1,2ではシワ改善、保湿効果、美肌効果のいずれも認められた。実験例2(タマネギ鱗茎酢酸抽出物及び重曹)では、実施例1(タマネギ鱗茎酢酸抽出物のみ)と比較して、3週目からシワ改善、保湿効果、美肌効果により優れることが認められた(特にシワ改善)。一方、比較例である実験例3(重曹水溶液)ではシワ改善、保湿効果、美肌効果のいずれも認められなかった。また、抽出溶媒に酢酸を使用していない実験例4(タマネギ鱗茎水抽出物及び重曹)では、シワ改善、保湿効果、美肌効果のいずれも認められず、3週間目時点で肌に異常が生じるモニターが複数でたため、その時点で評価を中止した。
【0044】
以上の結果から、実験例1のタマネギ鱗茎酢酸抽出物のみでも、シワ改善、保湿効果、美肌効果(キメの改善)が認められるが、実験例2のように重曹を併せて含有することによって、より短期間でより優れた肌美容効果(特にシワ改善)が認められることが分かった。また、実験例4の通り、タマネギ鱗茎の水抽出物(及び重曹)では、むしろ肌美容効果が低下し、肌へ悪影響が認められることから、タマネギ鱗茎に含まれる酢酸可溶性の成分と重曹の相乗作用が生じ、より優れた肌美容効果を奏すものと考えられる。
【要約】
【課題】シワを改善し、使用感に優れた肌美容組成物を提要する。
【解決手段】タマネギ鱗茎の酢酸抽出物を含有する肌美容組成物。肌美容組成物の形態は化粧水であることが好ましい。当該肌美容組成物は、タマネギの酢酸抽出物と共に重曹を含むことが好ましい。
【選択図】なし
図1
図2