(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記触媒として有機金属触媒を含有しないか、又は前記原料組成物における有機金属触媒の含有量が前記ポリオール100質量部に対して0.2質量部未満である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の止水材。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本発明において、数値限定を表す「A〜B」の記載は、端点であるA及びBを含む数値範囲を意味し、A以上B以下(A<B)、又はA以下B以上(A>B)を意味する。
また、質量部及び質量%は、重量部及び重量%とそれぞれ同義である。
更に、本発明において、好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0010】
(止水材)
本発明の止水材は、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤、及び架橋剤を含有する原料組成物を反応及び発泡して得られ、前記ポリオールとして、ダイマー酸ポリオールを含有し、前記原料組成物における前記ダイマー酸ポリオールの含有量が前記ポリオール全体の85質量%以上であり、前記ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネートを含有し、前記原料組成物における前記ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量が前記ポリイソシアネート全体の70〜85質量%であり、前記整泡剤として、反応性シリコーンを含有することを特徴とする。
本発明の止水材は、原料組成物を反応及び発泡して得られた、ポリウレタンフォームよりなる止水材である。
【0011】
特許文献1に記載のポリウレタンフォームシーリング材は、耐熱レベルが80℃程度であり、例えば、自動車用途におけるエンジン周りの部材としては、耐熱レベルの観点から使用に適さないという問題があった。また、ウレタンフォームの耐熱性を向上させようとすると、ウレタン自体が剛直になり、柔軟性が低く、引裂強度が低いために、変形により裂け易くなり、耐熱性と柔軟性を両立させることが困難であった。
一方、ゴム発泡体は、耐熱性には優れるものの、耐熱条件下での収縮が強く、界面との密着性が止水性に大きな影響をもたらす止水材には適していない。また、ゴム発泡体は硬度が高く、自動車への組み付けには適していない。
本発明の止水材によれば、耐熱性及び止水性に優れ、更に柔軟性にも優れる止水材が提供され、自動車のエンジン周りの止水材など、耐熱性と止水性の両者が必要とされる場合に特に好適に使用される。
効果の発現の機構は不明であるが、以下のように推定される。ポリオールとして疎水性のダイマー酸ポリオールを、ポリオール全体の85質量%以上含有することで、止水材に撥水性を付与することができると推定される。一方、ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネートを、ポリイソシアネート全体の70質量%以上含有することにより、耐熱性に優れた止水材が得られたと推定される。更に、ジフェニルメタンジイソシアネートをポリイソシアネート全体の85質量%以下含有することにより、柔軟性に優れた止水材が得られたと推定される。
【0012】
<原料組成物>
本発明の止水材は、原料組成物(以下、本発明の原料組成物ともいう。)を反応及び発泡して得られ、原料組成物は、ポリオール、ポリイソシアネート、触媒、発泡剤、整泡剤、及び架橋剤を含有する。
以下、本発明の止水材を得るための原料組成物について説明する。
〔ポリオール〕
本発明において、原料組成物はポリオールを含有し、ポリオールとしてダイマー酸ポリオールを含有する。以下、ダイマー酸ポリオールについて説明する。
なお、本発明において「ポリオール」とは、少なくとも2つの水酸基を有し、数平均分子量が1,000以上の化合物を意味し、低分子量の(分子量が1,000未満である)多価アルコールを含むものではない。また、本発明において「ポリオール」は、シロキサン結合による主骨格を有する化合物を除くものであり、主鎖が炭素及び水素のみからなることが好ましい。
【0013】
−ダイマー酸ポリオール−
本発明において、原料組成物は、ポリオールとしてダイマー酸ポリオールを含有する。ここで、ダイマー酸とは、二塩基酸であって、2つのモノエン酸、ジエン酸、トリエン酸などのエチレン性不飽和結合を有する一塩基酸が、炭素−炭素の共有結合により二分子結合(二量化)して得られる。
ダイマー酸の製造方法は特に限定されないが、モノエン酸、ジエン酸、トリエン酸などをそのまま、又はメチルエステルの形で接触下に加熱することにより、脱水素、共役化を伴う重合反応が生じ、ダイマー酸が得られる。ダイマー酸には、非環型、単環型、多環型、芳香環型が存在するが、単環型であることが好ましい。
ダイマー酸として代表的には、リノール酸、オレイン酸を加熱することにより得られる、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
【0015】
ダイマー酸ポリオールは、上記のダイマー酸と、ポリオールとのエステル化反応生成物であり、ダイマー酸と短鎖のジオール、トリオール又は4官能以上のポリオールとの反応生成物であるダイマー酸ポリエステルポリオール;ダイマー酸とポリアルキレングリコール、ポリアルキレントリオール、又は長鎖のポリオールとの反応生成物;ダイマー酸にその他のポリカルボン酸、例えば、アジピン酸を混合したものに、上記各種のポリオールを反応させた反応生成物;ダイマー酸とアルキレンオキサイドとの反応生成物;又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0016】
ダイマー酸ポリオールの数平均分子量は、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは1,500〜5,000、更に好ましくは2,000〜4,000である。数平均分子量が上記範囲内であると、より安定した発泡性が得られ、ウレタンフォームとして目的とする特性が得られやすい。
なお、本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)法によって測定され、標準ポリスチレン換算にて求められる。
【0017】
ダイマー酸ポリオールの水酸基価は、好ましくは11.2〜180mgKOH/g、より好ましくは30〜150mgKOH/g、更に好ましくは60〜100mgKOH/gである。水酸基価が上記範囲内であると、他の原料組成物の構成成分とバランスよく配合でき、より安定した発泡性が得られやすい。
ダイマー酸の水酸基価は、JIS K 1557−1:2007に準拠して測定される。
【0018】
ダイマー酸ポリオールは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明において、ダイマー酸ポリオールの含有量は、ポリオール全体の85質量%以上である。ダイマー酸ポリオールの含有量が85質量%未満であると、十分な耐熱性及び止水性が得られない。
ダイマー酸ポリオールの含有量の上限は特に限定されず、ポリオールの全てがダイマー酸ポリオールであってもよい。
ダイマー酸ポリオールの含有量は、ポリオール全体の90〜100質量%であることが好ましく、95〜100質量%であることがより好ましく、98〜100質量%であることが更に好ましく、ポリオールの全量がダイマー酸ポリオールであることが特に好ましい。
【0019】
−その他のポリオール−
本発明において、ポリオールとして、ダイマー酸ポリオール以外のその他のポリオールを含有してもよい。
その他のポリオールとしては、一分子内に2つ以上の水酸基を有するダイマー酸ポリオールを除く化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリマーポリオール等が挙げられる。これらのポリオールは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ポリエステルポリオールとしては、例えばアジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ブラシル酸等の炭素数4〜20の脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などを酸成分とし、エチレングリコール等の炭素数1〜6の脂肪族ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のエーテルグリコールなどをポリオール成分(アルコール成分)とするポリエステルポリオールを挙げることができる。
【0020】
上記ポリエーテルポリオールとしては、特に限定されるものではないが、反応性の観点からアルキレンオキシドの開環重合により得られるポリエーテルポリオールが好適である。このようなアルキレンオキシドとしてはプロピレンオキシド(PO)、エチレンオキシド(EO)等が挙げられ、これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、上記ポリエーテルポリオールとしては、上記POの単独重合体、上記EOの単独重合体、及びPOとEOとを共重合して得られたポリエーテルポリオールを用いてもよい。
【0021】
〔ポリイソシアネート〕
本発明において、原料組成物はポリイソシアネートを含有する。ポリイソシアネートは、一分子内にイソシアナト基(イソシアネート基ともいう。)を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。
具体的にはトリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)が挙げられる。
【0022】
本発明の原料組成物において、ポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネートを、ポリイソシアネート全体の70〜85質量%含有する。ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量がポリイソシアネート全体の70質量%未満であると、微細なセルが得られにくくなり、十分な耐熱性が得られない。また、85質量%を超えると、ウレタンフォームが本来有する柔軟性が低下するため、変形に対する追随性が悪化し、ウレタンフォームが裂けるという現象に至ってしまう場合がある。
なお、ジフェニルメタンジイソシアネートは特に限定されるものではなく、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートのいずれであってもよく、また、これらの任意の混合物であってもよい。また、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(ポリメリックMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)であってもよい。
【0023】
本発明において、原料組成物は、ポリイソシアネートとして、上記ジフェニルメタンジイソシアネートに加え、トリレンジイソシアネートを含有することが好ましい。
なお、トリレンジイソシアネートは、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、又はこれらの混合物であることが好ましい。
トリレンジイソシアネートの含有量は、ポリイソシアネート全体の15〜30質量%であることが好ましい。
すなわち、本発明において、ポリイソシアネートとして、ジフェニルメタンジイソシアネートと、トリレンジイソシアネートとを併用することが好ましく、ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート及びトリレンジイソシアネートのみからなることが特に好ましい。
【0024】
ポリイソシアネートのイソシアネート指数(イソシアネートインデックス)は100以下又は100を超えてもよいが、好ましくは80〜120、より好ましくは95〜115である。イソシアネート指数が80以上であると、得られる発泡体の硬さが適切であり、圧縮残留ひずみ等の機械的物性に優れる。一方、120以下であると、発泡体の製造時の発熱が抑制され、発泡体の着色が抑制されるので好ましい。
ここで、イソシアネート指数は、ポリオール、発泡剤としての水等のもつ活性水素基に対するポリイソシアネートのイソシアネート基の当量比を百分率で表したものである。従って、イソシアネート指数が100を超えるということは、ポリイソシアネートがポリオール等より過剰であることを意味する。
【0025】
〔触媒〕
本発明の原料組成物は、触媒を含有する。触媒はポリオールとポリイソシアネートとのウレタン化反応、発泡剤としての水とポリイソシアネートとの泡化反応などを促進するためのものであり、従来公知の化合物から、適宜選択すればよい。
具体的にはトリエチレンジアミン、ジメチルエタノールアミン、N,N’,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン等の第3級アミン、オクチル酸スズ(スズオクトエート)、ジブチルスズジラウレート等の有機金属化合物(有機金属触媒)、酢酸塩、アルカリ金属アルコラート等が挙げられる。
【0026】
本発明において、原料組成物が触媒として有機金属触媒を含有しないか、又は有機金属触媒の含有量がポリオール100質量部に対して0.2質量部未満であること(以下、「有機金属触媒を含有しないか、又は有機金属触媒の含有量がポリオール100質量部に対して0.2質量部未満である」を、「有機金属触媒をポリオール100質量部に対して、0質量部以上0.2質量部未満含有する」ともいう。)が好ましい。有機金属触媒の含有量がポリオール100質量部に対して0質量部以上0.2質量部未満であると、安定した発泡性を有し、所望のセル数の止水材が得られる。
本発明において、有機金属触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0〜0.15質量部であることがより好ましく、0〜0.05質量部であることが更に好ましく、0〜0.01質量部であることがより更に好ましく、0質量部である、すなわち、含有しないことが特に好ましい。
【0027】
本発明において、原料組成物が触媒としてアミン触媒を含有することが好ましい。アミン触媒は1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
アミン触媒は、イソシアネート基と反応性を有する官能基を有する反応性アミン触媒と、該反応性を有する官能基を有しない非反応性アミン触媒とに大別される。
反応性アミン触媒としては、少なくとも一つの水酸基を有するアミン化合物が好ましく、例えば、N,N−ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N−ジメチルアミノヘキサノール、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、N,N,N'−トリメチルアミノエチルエタノールアミン、N−メチル−N'−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル、及びN−(2−ヒドロキシエチル)モルホリンが挙げられる。
また、非反応性アミン触媒としては、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ヘキサデシルジメチルアミン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、N−オクタデシルモルホリン、ジエチルトリアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、N,N,N’,N”,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N’,N’−トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、及びトリエチレンジアミンが挙げられる。
本発明において、原料組成物は、アミン触媒として非反応性アミン触媒を含有することが好ましく、反応性アミン触媒の含有量が、非反応性アミン触媒の含有量の0〜50質量%であることが好ましく、0〜30質量%であることがより好ましく、0〜10質量%であることが更に好ましく、反応性アミン触媒を含有しないことが特に好ましい。反応性アミン触媒の含有量が上記範囲内であると、発泡の制御が容易であり、所望のセル数が得られ易い。
【0028】
触媒の含有量は、ポリオール100質量部に対して、0.1〜3.0質量部であることが好ましく、0.3〜2.0質量部であることがより好ましく、0.5〜1.5質量部であることが更に好ましい。
アミン触媒の含有量が上記範囲内であると、ウレタン化反応及び泡化反応を十分にかつバランスよく促進させることができる。
【0029】
〔発泡剤〕
本発明の原料組成物は、発泡剤を含有する。発泡剤は、ポリウレタン樹脂を発泡させて、ポリウレタンフォームとするためのものである。
本発明において、発泡剤として水を含有することが好ましく、水の含有量が、ポリオール100質量部に対して、2.0〜3.2質量部であることが好ましい。水の含有量は、ポリオール100質量部に対して、2.0〜2.8質量部であることがより好ましく、2.4〜2.8質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であると、泡化反応による発泡が適度に生じ、密度の低い止水材が得られる。また、反応熱が適当な範囲に抑制され、発泡体内部のやけ(スコーチ)の発生が抑制される。
本発明の原料組成物は、水以外の発泡剤を含有していてもよいが、発泡剤として水のみを含有することが好ましい。水以外の発泡剤としては、液化窒素、液化炭酸ガス等;モノフルオロトリクロロメタン、ジクロロメタン等のハロゲン化アルカン;ブタンやペンタン等の低沸点アルカン;分解窒素ガス等を発生するアゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。
【0030】
〔整泡剤〕
本発明の原料組成物は、整泡剤を含有する。整泡剤は、発泡剤によって行われる発泡を円滑に進行させるために必要に応じて用いられる。そのような整泡剤としては、軟質ポリウレタン発泡体を製造する際に通常使用されるものを用いることができる。整泡剤として具体的には、シリコーン化合物、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリエーテルシロキサン、フェノール系化合物等が用いられる。
原料組成物における整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して0.5〜10.0質量部であることが好ましい。この含有量が0.5質量部以上であると、発泡時における整泡作用が十分に発現され、良好な発泡体を得ることできる。一方、10.0質量部以下であると、整泡作用が適当であり、セルの連通性が適切な範囲に保持される。整泡剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して、1.5〜8.0質量部であることがより好ましく、3.0〜6.0質量部であることが更に好ましい。
【0031】
本発明において、原料組成物は、整泡剤として、反応性シリコーンを含有する。反応性シリコーンを含有することにより、優れた発泡性と止水性とが得られる。ここで、反応性シリコーンとは、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1つの反応性基を、主鎖末端又は側鎖に有するシリコーン化合物(ポリシロキサン化合物)をいう。
反応性シリコーンは、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、又はメチルハイドロジェンシリコーン等のシリコーン化合物の側鎖又は主鎖末端に、アミノ基、エポキシ基、水酸基、メルカプト基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される反応性基、又は前記反応性基を有する基を導入した化合物である。これらの中で、反応性基として水酸基を有する反応性シリコーンがより好ましい。なお、反応性基として水酸基を有する反応性シリコーンは、シロキサン結合による主骨格を有するものであり、上述したように、本発明においてポリオールに該当するものではない。
反応性シリコーンとしては、市販されている製品を使用してもよく、信越シリコーン(株)、東レダウコーニング社、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社などの各社製の各種反応性シリコーンが例示され、具体的には、水酸基を有する反応性シリコーンとしては、X−22−4039、X−22−4015(以上、信越シリコーン(株)製)が例示される。また、カルボキシ基を有する反応性シリコーンとしては、CF1218(東レダウコーニング社製、反応型カルボキシ変性オルガノシリコーン)が例示される。
本発明において、原料組成物は、上記反応性シリコーンに加え、非反応性シリコーンを含有してもよい。非反応性シリコーンは、反応性基を有していない限り特に限定はなく、ポリエーテル変性、アラルキル変性、長鎖アルキル変性等の変性非反応性シリコーンであってもよい。非反応性シリコーンとしては、市販されている製品を使用してもよく、信越シリコーン(株)、東レダウコーニング社、モメンティブパフォーマンスマテリアルズ社などから市販されている各種製品から適宜選択すればよい。
本発明において、原料組成物は、反応性シリコーンを整泡剤の全量に対して50質量%以上含有することが好ましく、75質量%以上含有することがより好ましく、90質量%以上含有することが更に好ましく、整泡剤の全量が反応性シリコーンであることが特に好ましい。
【0032】
〔架橋剤〕
本発明において、原料組成物は、架橋剤を含有する。架橋剤としては、イソシアネート基と反応可能な活性水素含有基を1分子中に2以上有する低分子化合物等が挙げられる。これらの中でも、1分子中に水酸基を2以上有する低分子化合物(分子量1,000未満)が好ましい。なお、本発明において、架橋剤は活性水素含有基としてアミノ基を有する化合物を除くものである。
架橋剤の具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリエタノールアミン、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等の多価アルコールが挙げられる。
【0033】
本発明では、原料組成物が、架橋剤としてトリメチロールプロパン骨格を有する3官能架橋剤を含有することが好ましい。トリメチロール骨格を有する3官能架橋剤を使用することにより、止水性及び耐熱性に優れる止水材が得られる。
前記トリメチロールプロパン骨格を有する3官能架橋剤が有する官能基としては、例えばヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、エポキシ基、カルボキシ基、ホルミル基等が挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシ基が好ましい。
トリメチロールプロパン骨格を有する3官能架橋剤としては、「アクトコール(登録商標)T880」(三井化学(株)製)等の市販品を用いることができる。
【0034】
原料組成物における架橋剤の含有量は、ポリオール100質量部に対して0.5〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは1.0〜5.0質量部であり、更に好ましくは1.5〜3.0質量部である。該架橋剤を配合することによって、ポリウレタンフォームの架橋密度が高まり、一層、止水性及び耐熱性が向上するものと推測される。
【0035】
〔その他の原料成分〕
原料組成物にはその他必要に応じて、難燃剤、充填剤、安定剤、着色剤、可塑剤等を常法に従って配合してもよい。難燃剤としては、トリス−ジクロロプロピルホスフェート、トリス−クロロエチルホスフェート、ジブロモネオペンチルアルコール、トリブロモネオペンチルアルコール等が挙げられる。
【0036】
<ポリウレタンフォームの製造>
本発明の止水材は、原料組成物を反応及び発泡して得られた、ポリウレタンフォームよりなる止水材である。
前記原料組成物の各成分(原料)を常法に従って反応及び発泡させることによりポリウレタンフォーム(ポリウレタン発泡体)が製造される。ポリウレタンフォームを製造する場合には、ポリオールとポリイソシアネートと、その他の成分を直接反応させるワンショット法、又はポリオールとポリイソシアネートとを事前に反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得、それにポリオールと、その他の成分を反応させるプレポリマー法のいずれも採用される。また、常温大気圧下に反応及び発泡させるスラブ発泡法及び成形型内にポリウレタン発泡体の原料組成物(反応混合液)を注入、型締めして型内で反応及び発泡させるモールド発泡法のいずれの方法であってもよい。
本発明において、これらの中でも、スラブ発泡法が好ましく、例えば、ワンショット法により混合撹拌された原料組成物をベルトコンベアに吐出し、該ベルトコンベアが移動する間に原料組成物が常温及び大気圧下で自然発泡して硬化する方法が挙げられる。
【0037】
ポリウレタンフォームの原料の反応は複雑であり、主体としては、ポリオールとポリイソシアネートとの付加重合によるウレタン化反応、その反応生成物等とポリイソシアネート類との架橋反応及びポリイソシアネート類と発泡剤としての水との泡化反応である。
【0038】
<ポリウレタンフォーム>
本発明の止水材としてのポリウレタンフォームは、JIS K 6400−1:2004に準拠して測定される密度(見掛け密度)が25〜50kg/m
3であることが好ましい。この密度が25kg/m
3以上であると、ポリウレタンフォームの機械的強度に優れる。その一方、密度が50kg/m
3以下であると、軽量であり、車両分野に好適である。
ポリウレタンフォームの密度は、28〜45kg/m
3であることがより好ましく、30〜40kg/m
3であることが更に好ましい。
【0039】
また、JIS K 6400−7:2012に準拠し、フラジール型により、フォーム厚み10mmにて測定した通気性が5.0cc/cm
2/sec以下であることが好ましく、1.0cc/cm
2/sec以下であることがより好ましい。通気性が上記範囲内であると、止水性が向上する。
【0040】
更に、JIS K 6400−1:2004に準拠して測定されるセル数は、50個/25mm以上であることが好ましい。セル数が上記範囲内であると、そのセルの細かさから止水性が向上する。
セル数は、60個/25mm以上であることがより好ましく、70個/25mm以上であることが更に好ましい。
このような低通気性かつ微細セル構造とすることにより、優れたシール性能が得られる。
【0041】
<用途>
本発明の止水材は、自動車、住宅、建築、土木等の幅広い分野にて、止水材として有用である。特に、耐熱性に優れていることから、自動車(車両)用途において、エンジン周りの止水材として有用である。
【実施例】
【0042】
次に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、部及び%は、特に断りのない限り、それぞれ質量部及び質量%を意味する。
【0043】
各実施例及び比較例で使用した成分は、以下のとおりである。
・ポリオール−1:ダイマー酸ポリエステルポリオール(「テスラック2458」、日立化成工業(株)製、水酸基価=75mgKOH/g、数平均分子量=2,500)
・ポリオール−2:ポリエーテルポリオール(PPG系ポリエーテルポリオール)、「サンニックスGP−4000V」(三洋化成工業(株)製)、数平均分子量:4,000。
・TDI:トリレンジイソシアネート(2,4−トリレンジイソシアネート:2,6−トリレンジイソシアネート=80:20、「コスモネートT−80」、三井化学(株)製)
・MDI:コスモネートM−200(ポリメリックMDI(ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、三井化学(株)製)
・アミン触媒−1:TOYOCAT ET33B(ビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテル(3級アミン)/ジプロピレングリコール=33/67質量%溶液、東ソー(株)製)
・アミン触媒−2:TEDA L33(トリエチレンジアミン/ジプロピレングリコール=33/67質量%溶液、東ソー(株)製)
・架橋剤:アクトコールT880(トリメチロールプロパン骨格を有する3官能架橋剤、水酸基価:875mgKOH/g、東洋ケミカルズ(株)製)
・有機錫触媒:ニッカオクチックス スズ(オクチル酸スズ、日本化学産業(株)製)
・整泡剤−1:CF1218(反応性シリコーン(カルボキシ変性オルガノシリコーン)、東レダウコーニング社製)
・整泡剤−2:NIAX SILICONE L−580(非反応性シリコーン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)
【0044】
(実施例1)
下記の表中に示すポリウレタンフォーム原料を、ワンショット法により混合、発泡させて、ポリウレタンフォームを得た。得られたポリウレタンフォームにつき、下記に従い評価を行った結果を、下記の表中に併せて示す。
【0045】
(実施例2〜9、比較例1〜6)
原料組成物の組成を表1に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9、比較例1〜6の止水材を作製した。
【0046】
得られたポリウレタンフォームについて、以下の評価を行った。
(密度(見掛け密度))
JIS K 6400−1:2004に準拠して測定した。
(通気性)
JIS K 6400−7:2012に準拠し、フラジール型により、フォーム厚み10mmにて測定した。
(セル数)
JIS K 6400−1:2004に準拠して測定した。
【0047】
(止水性)
図1に示すように、20mm厚みのフォームサンプルをU字型に打ち抜いたもの1を2枚の鉄板3間にスペーサー2を用いて、40%の圧縮状態で挟んだ。室温下(25℃下)で100時間耐久後、又は132℃条件下で100時間耐久後、このU字体内に水4を所定高さH(70mmaq)で入れ、水圧による漏水時間を測定することにより評価した。評価基準は、以下の通りである。A及びBが合格であり、C及びDは不合格である。
A:24時間後、水が漏れておらず、かつ止水材(シール材)に浸み込みがない
B:24時間後、水が漏れていないが、止水材(シール材)に浸み込みがある
C:24時間後、水が少し漏れる
D:24時間後、水が漏れて完全になくなる。
【0048】
(引裂強度)
JIS K 6400−5:2004の引裂試験B法に準拠して測定した。なお、引裂強度が2.0N/cm未満であると、止水材が引裂かれ易く、不合格である。
【0049】
【表1】
【0050】
表1から明らかなように、実施例1〜9の止水材は、加熱試験後においても、高い止水性を維持していた。また、いずれの止水材も高い引裂強度を有し、柔軟性に優れるものであった。一方、ダイマー酸ポリオールの含有量がポリオール全体の50質量%である比較例3では、常態であっても十分な止水性が得られなかった。また、ダイマー酸ポリオールの含有量がポリオール全体の70質量%である比較例2では、常態では十分な止水性が得られたが、耐熱性が低く、加熱試験後の止水性に劣るものであった。
ジフェニルメタンジイソシアネート化合物の含有量がポリイソシアネート全体の70質量%未満である比較例1では、常態では十分な止水性が得られたが、耐熱性が低く、加熱試験後の止水性に劣るものであった。また、ジフェニルメタンジイソシアネートの含有量がポリイソシアネート全体の85質量%を超える比較例4では、引裂強度が低く、柔軟性に劣る止水材であった。
整泡剤として、反応性シリコーンではなく、非反応性シリコーンを使用した比較例5では、常態においても十分な止水性が得られなかった。また、架橋剤を含有しない比較例6では、微細なセル構造を形成することが困難であり、大小のセルが混在したセルの荒れた状態となってしまい、止水性も著しく低下した。