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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973749
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】パワー半導体素子の駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20211118BHJP
   H03K 17/14 20060101ALI20211118BHJP
   H03K 17/695 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
   H02M1/08 A
   H03K17/14
   !H03K17/695
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-214668(P2017-214668)
(22)【出願日】2017年11月7日
(65)【公開番号】特開2019-88104(P2019-88104A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2020年9月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】特許業務法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊
(72)【発明者】
【氏名】矢野 浩司
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼柳 良平
【審査官】 麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2017−169145(JP,A)
【文献】 特開2013−219874(JP,A)
【文献】 特開2013−207821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H03K 17/14
H03K 17/695
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー半導体素子の閾値電圧を検出する閾値検出部と、
前記閾値検出部によって検出された前記閾値電圧の変動に応じて閾値電圧の変動を抑制するゲート信号を前記パワー半導体素子に印加する閾値変動抑制部と、
を備え、
前記閾値検出部は、前記パワー半導体素子がオン状態にあるときに前記パワー半導体素子の主電極間の電圧を検出する電圧検出部と、前記主電極間の電圧および前記閾値電圧の相関に基づき前記電圧検出部で検出した前記主電極間の電圧から前記閾値電圧を推測する換算部とを有する、
ワー半導体素子の駆動装置。
【請求項2】
前記閾値変動抑制部は、前記換算部によって推測された前記閾値電圧の変動と前記閾値電圧の変動の許容値とを比較する比較部と、前記比較部によって前記閾値電圧の変動が前記許容値の範囲内にあると判断されたときに前記パワー半導体素子のゲートに正の第1の電圧を印加する第1のスイッチング素子と、前記比較部によって前記閾値電圧の変動が前記許容値よりも高いと判断されたときに前記パワー半導体素子のゲートに負の第2の電圧を印加する第2のスイッチング素子と、前記比較部によって前記閾値電圧の変動が前記許容値よりも低いと判断されたときに前記パワー半導体素子のゲートに前記第1の電圧よりも低い正の第3の電圧を印加する第3のスイッチング素子とを有する、請求項記載のパワー半導体素子の駆動装置。
【請求項3】
前記第1のスイッチング素子、前記第2のスイッチング素子および前記第3のスイッチング素子は、前記パワー半導体素子に対して同期整流を行うタイミングでオン動作させる、請求項記載のパワー半導体素子の駆動装置。
【請求項4】
さらに、前記パワー半導体素子をオンさせるゲート信号を受けてオンされる第1のスイッチング素子と、前記第1のスイッチング素子と前記パワー半導体素子のゲートとの間に接続されて前記第1のスイッチング素子がオンされたときに正のゲート電圧を前記パワー半導体素子のゲートに印加するオン時ゲート抵抗と、前記パワー半導体素子をオフさせるゲート信号を受けてオンされる第2のスイッチング素子とを備え、
前記閾値変動抑制部は、前記換算部によって推測された前記閾値電圧の変動と前記閾値電圧の変動の許容値とを比較し、前記閾値電圧の変動が前記許容値の範囲内にあるとき第1の制御信号を出力し、前記閾値電圧の変動が前記許容値の範囲よりも低いとき第2の制御信号を出力する比較部と、前記パワー半導体素子のゲートと前記第2のスイッチング素子との間に接続され、前記第1の制御信号または前記第2の制御信号を受けて抵抗値が切り替えられ、前記第2のスイッチング素子がオンされたときに負のゲート電圧を前記パワー半導体素子のゲートに印加するオフ時ゲート抵抗とを有する、
請求項記載のパワー半導体素子の駆動装置。
【請求項5】
前記オフ時ゲート抵抗は、前記第1の制御信号を受けてオンする第3のスイッチング素子と、前記第3のスイッチング素子がオンしたときに接続されて第1の抵抗値を有する第1の抵抗と、前記第2の制御信号を受けてオンする第4のスイッチング素子と、前記第4のスイッチング素子がオンしたときに接続されて前記第1の抵抗値よりも小さな第2の抵抗値を有する第2の抵抗とを有する、請求項記載のパワー半導体素子の駆動装置。
【請求項6】
前記パワー半導体素子は、ワイドバンドギャップ半導体を用いた半導体装置である、請求項1記載のパワー半導体素子の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパワー半導体素子の駆動装置に関し、特にワイドバンドギャップ半導体を用いたパワー半導体素子を駆動中にパワー半導体素子の閾値電圧が変動するのを抑制するパワー半導体素子の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
次世代パワー半導体素子として炭化珪素(SiC)半導体素子に代表されるワイドバンドギャップ半導体素子が珪素(Si)半導体素子よりも高耐圧、低損失、高速スイッチング、高温動作などが可能になるということで注目されている。しかし、SiC半導体素子は、Si半導体素子と比較してゲート酸化膜の品質が低いことが知られている。このことが、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)での閾値電圧の変動要因になっている。パワー半導体スイッチング素子では、オン状態とオフ状態との境目となる閾値電圧Vthが異常に変動すると、誤オンなどにより回路故障が生じる危険性がある。このような閾値電圧Vthの異常な変動を防止するため、ゲート酸化膜の品質向上に向けたSiC半導体素子の製造方法の提案がなされている(特許文献1,2)。
【0003】
また、閾値電圧Vthの異常な変動を回路の工夫により抑制するようにした技術も知られている(特許文献3)。この特許文献3では、パワー半導体素子のゲート電極に印加するゲート電圧が正のとき、閾値電圧Vthが正の方向に変動する性質があることに対し、パワー半導体素子が非導通期間に負のゲート電圧を印加することで閾値電圧Vthの変動を抑制することにしている。パワー半導体素子の非導通期間に負のゲート電圧を印加した場合、そのパワー半導体素子に還流電流が流れるようなことがあるとその還流電流は、内蔵ダイオードを流れることになる。内蔵ダイオードは、通電性能がよくないので、閾値電圧Vthの変動を抑制するために行うパワー半導体素子のゲート電極への負電圧の印加は、還流電流が内蔵ダイオードを流れない期間に行うことにしている。これにより、還流ダイオードの導通性能の低下を抑制しつつ、トランジスタの閾値電圧の変動を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−213414号公報
【特許文献2】国際公開第2011/074237号
【特許文献3】特開2013−207821号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3による閾値電圧の変動を抑制する方法では、内蔵ダイオードに還流電流が流れないことを検出するために、電力変換回路から負荷に向かって流れる電流を検出する電流検出手段が備えられている。また、閾値電圧の変動は、パワー半導体素子をある時間駆動した場合に生じるものであるため、パワー半導体素子を駆動している間、常に閾値電圧の変動が抑制されているとは限らない。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、パワー半導体素子に閾値電圧の変動が生じたときに、その変動に応じて、閾値電圧の変動を抑制するようにしたパワー半導体素子の駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、上記の課題を解決するために、パワー半導体素子の駆動装置が提供される。このパワー半導体素子の駆動装置は、パワー半導体素子の閾値電圧を検出する閾値検出部と、閾値検出部によって検出された閾値電圧の変動に応じて閾値電圧の変動を抑制するゲート信号をパワー半導体素子に印加する閾値変動抑制部と、を備えている。また、閾値検出部は、パワー半導体素子がオン状態にあるときにパワー半導体素子の主電極間の電圧を検出する電圧検出部と、主電極間の電圧および閾値電圧の相関に基づき電圧検出部で検出した主電極間の電圧から閾値電圧を推測する換算部とを有する。
【0008】
このようなパワー半導体素子の駆動装置によれば、一定時間駆動させたときに閾値電圧が変動したとしても、その変動方向と逆方向に閾値電圧が変動するようにパワー半導体素子を駆動するので、閾値電圧の変動によりパワー半導体素子が誤動作することがなくなる。
【発明の効果】
【0009】
上記構成のパワー半導体素子の駆動装置は、パワー半導体素子の閾値電圧の変動に応じて閾値電圧の変動を抑制するような動作をするので、パワー半導体素子が誤オンなどの誤動作をすることがなくなるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置を適用したスイッチングレギュレータの出力部を示す図である。
図2】第2の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置を示す図である。
図3】パワー半導体素子がオン状態でのドレイン・ソース間電圧と閾値電圧との関係を示す図である。
図4】SiC素子をある一定時間駆動させたときに逆導通試験を行ったときの閾値電圧の変動を示す図である。
図5】第2の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置の動作の流れを示すフローチャートである。
図6】パワー半導体素子のゲート電圧の波形例を示す図であって、(A)は同期整流を行わない場合を示し、(B)は同期整流を行う場合を示している。
図7】閾値電圧変動抑制制御時におけるパワー半導体素子のゲート電圧の波形例を示す図である。
図8】第3の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置を示す図である。
図9】パワー半導体素子のオフ時のゲート抵抗回路を示す図である。
図10】パワー半導体素子をある一定時間駆動させたときのオフ時のゲート電圧の波形を示す図である。
図11】パワー半導体素子をある一定時間駆動させたときの閾値変動の変化の傾向を示す図である。
図12】第3の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、ワイドバンドギャップ半導体のパワー半導体素子を2個用いた同期整流式のスイッチングレギュレータに適用した場合を例に図面を参照して詳細に説明する。なお、図中、同一の符号で示される部分は、同一の構成要素を示している。また、各実施の形態は、矛盾のない範囲で複数の実施の形態を部分的に組み合わせて実施することができる。
【0012】
[第1の実施の形態]
図1は第1の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置を適用したスイッチングレギュレータの出力部を示す図である。
【0013】
スイッチングレギュレータの出力部は、電源とグランドとの間に上アーム用のパワー半導体素子SW1と下アーム用のパワー半導体素子SW2が直列に接続されている。ここで、パワー半導体素子SW1,SW2は、炭化珪素MOSFET(SiC−MOSFET)であり、それぞれ内蔵ダイオードを有している。パワー半導体素子SW1のソースとパワー半導体素子SW2のドレインとの接続点は、インダクタLの一方の端子に接続され、インダクタLの他方の端子は、コンデンサCの一方の端子に接続されている。コンデンサCの他方の端子は、パワー半導体素子SW2のソースに接続されている。
【0014】
パワー半導体素子SW1のゲートは、上アーム用駆動装置1Uに接続されている。上アーム用駆動装置1Uは、パワー半導体素子SW1の閾値電圧Vthを検出する閾値検出部2Uと、パワー半導体素子SW1の閾値電圧Vthの変動を抑制する閾値変動抑制部3Uとを有している。パワー半導体素子SW2のゲートは、下アーム用駆動装置1Dに接続されている。下アーム用駆動装置1Dは、パワー半導体素子SW2の閾値電圧Vthを検出する閾値検出部2Dと、パワー半導体素子SW2の閾値電圧Vthの変動を抑制する閾値変動抑制部3Dとを有している。
【0015】
以上の構成のスイッチングレギュレータにおいて、パワー半導体素子SW1,SW2が交互にスイッチング動作をすることによって、入力された電圧Vinは、電圧Voutに変換され、図示しない負荷に供給される。すなわち、パワー半導体素子SW1がオンするように駆動されると、電流は、インダクタLを通って負荷に流れる。次に、パワー半導体素子SW1がオフすると、インダクタLに流れていた電流は、流れを維持しようとする。このとき、パワー半導体素子SW1のオフ動作に同期してパワー半導体素子SW2をオンすると、パワー半導体素子SW2による逆導通の電流パスが形成され、パワー半導体素子SW2のソースからドレインに逆方向の還流電流が流れる。これにより、負荷には、同一方向の電流が継続して流れることになる。
【0016】
このとき、上アーム用駆動装置1Uでは、閾値検出部2Uがパワー半導体素子SW1の閾値電圧Vthを監視している。ここで、閾値検出部2Uが閾値電圧Vthの異常な変動を検出すると、閾値変動抑制部3Uがパワー半導体素子SW1の閾値電圧Vthの変動を抑制するようにパワー半導体素子SW1のゲートを駆動する。同様に、下アーム用駆動装置1Dでは、閾値検出部2Dがパワー半導体素子SW2の閾値電圧Vthを監視している。ここで、閾値検出部2Dが閾値電圧Vthの異常な変動を検出すると、閾値変動抑制部3Dがパワー半導体素子SW2の閾値電圧Vthの変動を抑制するようにパワー半導体素子SW2のゲートを駆動する。
【0017】
このように、上アーム用駆動装置1Uおよび下アーム用駆動装置1Dは、閾値電圧Vthの異常な変動を検出していないときは、通常通りの制御によりパワー半導体素子SW1,SW2を駆動する。上アーム用駆動装置1Uおよび下アーム用駆動装置1Dは、閾値電圧Vthの異常な変動を検出したときだけ、パワー半導体素子SW1,SW2の駆動方法を閾値電圧Vthの変動が抑制される方向に動的に切り替えている。
【0018】
なお、この実施の形態では、パワー半導体素子SW1,SW2をSiC−MOSFETで構成したが、SiC素子のIGBTとFWD(Free Wheeling Diode)との組み合わせで構成してもよい。
【0019】
[第2の実施の形態]
図2は第2の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置を示す図、図3はパワー半導体素子がオン状態でのドレイン・ソース間電圧と閾値電圧との関係を示す図、図4はSiC素子をある一定時間駆動させたときに逆導通試験を行ったときの閾値電圧の変動を示す図である。図5は第2の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置の動作の流れを示すフローチャートである。なお、第1の実施の形態で示した上アーム用駆動装置1Uおよび下アーム用駆動装置1Dは、同じ構成を有しているので、この第2の実施の形態では、そのうちの一方の構成だけを示し、他方の構成を省略している。したがって、以下では、特に、上アームおよび下アームの要素を区別しないで説明する場合、要素を示す符号は簡単にしている。すなわち、パワー半導体素子SW1,SW2は、パワー半導体素子SWとし、上アーム用駆動装置1Uおよび下アーム用駆動装置1Dは、駆動装置1としている。また、閾値検出部2Uおよび閾値検出部2Dは、閾値検出部2とし、閾値変動抑制部3Uおよび閾値変動抑制部3Dは、閾値変動抑制部3としている。
【0020】
パワー半導体素子SWの駆動装置1は、電圧検出部11、換算部12、比較部13、ゲートドライバ14およびスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3を備えている。ここで、電圧検出部11および換算部12は、閾値検出部2を構成し、比較部13、ゲートドライバ14およびスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3は、閾値変動抑制部3を構成している。
【0021】
閾値検出部2の電圧検出部11の入力は、パワー半導体素子SWのドレインおよびソースに接続され、出力は、換算部12の入力に接続されている。換算部12の出力は、閾値変動抑制部3の比較部13の入力に接続され、比較部13の出力は、ゲートドライバ14の入力に接続されている。ゲートドライバ14の出力は、スイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3のゲートに接続されている。スイッチング素子Tr1のドレインは、電圧VHの電源に接続され、スイッチング素子Tr2のドレインは、電圧VLの電源に接続され、スイッチング素子Tr3のドレインは、電圧VMの電源に接続されている。電圧VH,VL,VMは、VH>VM>VLの関係を有している。スイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3のソースは、パワー半導体素子SWのゲートに接続されている。
【0022】
パワー半導体素子SWのドレインおよびソースに接続された電圧検出部11は、パワー半導体素子SWがオン状態でのドレイン・ソース(主電極)間の電圧Vonを検出する。この電圧Vonの検出は、動作中のパワー半導体素子SWの閾値電圧Vthを直接検出することが難しいので、電圧Vonから閾値電圧Vthを間接的に検出するためのものである。すなわち、図3に示したように、パワー半導体素子SWがオンしているときのドレイン・ソース間の電圧Vonの変動は、閾値電圧Vthの変動と相関がある。つまり、電圧Vonおよび閾値電圧Vthは、電圧Vonが上がると閾値電圧Vthも上がり、電圧Vonが下がると閾値電圧Vthも下がるという比例関係を有している。閾値検出部2は、この関係を用いて、電圧Vonを検出することにより電圧Vonと相関のある閾値電圧Vthを求め、閾値電圧Vthの変動を推測している。
【0023】
電圧Vonの検出は、スイッチングレギュレータの動作を停止させてからパワー半導体素子SWをオンして検出してもよいが、好ましくは、リアルタイム検出を行うのがよい。検出のタイミングは、スイッチングごとに実施してもよいし、一定時間ごとに実施してもよい。ただし、検出間隔が長時間になりすぎるとその間に電圧Vonが大きく変動する可能性があるため、100時間を超えない一定時間ごとに検出を実施するのが望ましい。
【0024】
その後、換算部12において、検出した電圧Vonの変動から閾値電圧Vthの変動が推測される。この推測された閾値電圧Vthは、閾値変動抑制部3の比較部13に送られる。
【0025】
閾値変動抑制部3において、比較部13は、推測された閾値電圧Vthの変動に対応するパワー半導体素子SWの電気特性を把握し、ゲートドライバ14が推測された閾値電圧Vthの変動に応じてその変動を抑えるようにパワー半導体素子SWを駆動する。また、比較部13では、閾値電圧Vthの許容値を設定する必要がある。
【0026】
パワー半導体素子SWの電気特性および閾値電圧Vthの許容値は、半導体素材、ゲート構造、素子構造、素子作製プロセスなどにより変動する可能性があるため、あらかじめ典型的な素子において検出しておくのが望ましい。
【0027】
ここで、図4は、あるSiC素子に逆導通試験を行った際の閾値電圧Vthの変動を示している。この図4において、閾値電圧Vthは、このSiC素子においては、ドレイン電流Ids=18mA、ドレイン・ソース間電圧Vds=20Vとなるときのゲート・ソース間電圧Vgsとして定義され、このSiC素子では、約2Vである。閾値電圧Vthの基準となる電流は、任意であるが、定格電流の1/1000程度にするのが望ましい。図4によれば、ゲート・ソース間電圧Vgsを負の値にして内蔵ダイオードに逆導通電流を流すと、閾値電圧Vthが低下する方向に変動する。また、ゲート・ソース間電圧Vgsを+2.5V〜+5Vとしたときに逆導通電流が流れると、閾値電圧Vthは上昇している。この電圧領域を反転領域と呼ぶ。さらに、ゲート・ソース間電圧VgsをVgs>+7.5Vとしたときには、チャネルが完全に強反転領域となり、このとき閾値電圧Vthの変動は、ほぼなくなる。この強反転領域は、通常逆導通と呼ばれ、同期整流で逆導通させるときに最も使われる領域である。そして、閾値電圧Vthの許容値は、初期値に対して、回路上、誤オンの発生や損失の増大がないような範囲に決められ、たとえば、初期値±0.1V程度に設定される。
【0028】
比較部13では、以上のようなSiC素子の電気特性に基づいて、閾値電圧Vthの変動に対する対処の方法を判断している。すなわち、比較部13は、閾値電圧Vthの変動がその許容値の範囲内にあるかどうか、閾値電圧Vthの変動がその許容値より高いかどうか、そして、閾値電圧Vthの変動がその許容値より低いかどうかを比較判断する。ここで、図4の電気特性から閾値電圧Vthが低下する方向に変動している場合には、ゲート・ソース間電圧Vgsを閾値電圧Vthが上昇する方向に変動する動作条件にすればよいことが分かる。逆に、閾値電圧Vthが上昇する方向に変動している場合には、ゲート・ソース間電圧Vgsを閾値電圧Vthが低下する方向に変動する動作条件にすればよいことが分かる。すなわち、閾値電圧Vthが許容値より低い方向に変動していれば、反転領域を逆導通させ、閾値電圧Vthが許容値より高い方向に変動していれば、内蔵ダイオードを逆導通させる。
【0029】
ゲートドライバ14は、比較部13での判断結果を基にしてパワー半導体素子SWのゲート電圧Vgを可変する。すなわち、閾値電圧Vthが許容値より低い方向に変動していれば、ゲートドライバ14は、スイッチング素子Tr3をオンさせ、パワー半導体素子SWのゲート電圧Vgを、たとえば電圧VMの5Vにする。これにより、パワー半導体素子SWは、反転領域が逆導通となり、閾値電圧Vthが上昇する動作条件となる。逆に、閾値電圧Vthが許容値より高い方向に変動していれば、ゲートドライバ14は、スイッチング素子Tr2をオンさせ、パワー半導体素子SWのゲート電圧Vgを、たとえば電圧VLの−10Vにする。これにより、パワー半導体素子SWは、内蔵ダイオードが逆導通となり、閾値電圧Vthが低下する動作条件となる。また、閾値電圧Vthが許容値の範囲内にあってほとんど変動していなければ、ゲートドライバ14は、スイッチング素子Tr1をオンさせ、パワー半導体素子SWのゲート電圧Vgを、たとえば電圧VHの15Vにする。これにより、パワー半導体素子SWは、通常逆導通となり、閾値電圧Vthが変化しない動作条件となる。
【0030】
なお、ゲートドライバ14は、ここでは、閾値電圧Vthの変動を抑制することに絞って説明したが、パワー半導体素子SWをオン・オフさせる通常の制御でも使用されている。すなわち、ゲートドライバ14は、パワー半導体素子SWをオンするとき、スイッチング素子Tr1をオンさせ、パワー半導体素子SWをオフするときには、スイッチング素子Tr2をオンさせており、閾値電圧Vthの変動抑制制御と兼用している。
【0031】
次に、以上のパワー半導体素子SWの駆動装置の全体の動作について説明する。パワー半導体素子SWの駆動装置では、図5に示したように、まず、パワー半導体素子SWがオン状態でのドレイン・ソース間の電圧Vonを電圧検出部11が検出する(ステップS1)。次に、電圧Vonと閾値電圧Vthとの関係を用いて、換算部12が、検出した電圧Vonに対応する閾値電圧Vthを求め、閾値電圧Vthの変動を推測する(ステップS2)。比較部13では、推測された閾値電圧Vthとあらかじめ設定された許容値とを比較し(ステップS3)、推測された閾値電圧Vthが許容値より低いかどうかが判断される(ステップS4)。ステップS4において、閾値電圧Vthが許容値より低いと判断されると、ゲートドライバ14がスイッチング素子Tr3をオンしてパワー半導体素子SWを反転領域逆導通の状態にする(ステップS5)。
【0032】
ステップS4において、閾値電圧Vthが許容値より低くないと判断されると、比較部13は、閾値電圧Vthが許容値以内かどうかを判断する(ステップS6)。ステップS6において、閾値電圧Vthが許容値以内と判断されると、ゲートドライバ14がスイッチング素子Tr1をオンしてパワー半導体素子SWを通常逆導通の状態にする(ステップS7)。ステップS6において、閾値電圧Vthが許容値より高いと判断されると、ゲートドライバ14がスイッチング素子Tr2をオンしてパワー半導体素子SWを内蔵ダイオード逆導通の状態にする(ステップS8)。
【0033】
ゲートドライバ14およびスイッチング素子Tr1,Tr2,Tr3によるパワー半導体素子SWの駆動が終わると、パワー半導体素子SWの駆動装置は、一定時間動作を継続させる(ステップS9)。すなわち、パワー半導体素子SWの駆動装置は、比較部13による判断結果を保持し、その判断結果を使って変動抑制制御を一定時間継続させる。一定時間経過すると、パワー半導体素子SWの駆動装置は、ステップS1に戻り、ドレイン・ソース間の電圧Vonの検出を再開する。
【0034】
次に、パワー半導体素子SWの駆動装置を図1に示したスイッチングレギュレータの出力部に適用したときの2つのパワー半導体素子SW1,SW2の相互の動作について説明する。
【0035】
図6はパワー半導体素子のゲート電圧の波形例を示す図であって、(A)は同期整流を行わない場合を示し、(B)は同期整流を行う場合を示している。図7は閾値電圧変動抑制制御時におけるパワー半導体素子のゲート電圧の波形例を示す図である。
【0036】
パワー半導体素子SW1,SW2は、PWM(Pulse Width Modulation)制御のゲート信号によって駆動される。ここで、同期整流を行わない場合、図6(A)に示したように、パワー半導体素子SW1,SW2の一方のゲートにPWM制御のゲート信号が印加されている期間、他方のゲートには、一定の電圧VLのゲート電圧Vgが印加されている。このとき、たとえば、上アームのパワー半導体素子SW1のゲートにPWM制御のゲート信号が印加されている期間であって、ゲート電圧Vgが電圧VHから電圧VLに遷移した後に流れる還流電流は、パワー半導体素子SW2に逆並列接続された内蔵ダイオードだけを流れることになる。
【0037】
一方、同期整流を行う場合、図6(B)に示したように、パワー半導体素子SW1,SW2の一方のゲートにPWM制御のゲート信号が印加されている期間、他方のゲートには、同期整流のためのPWM制御のゲート信号が印加されている。ここで、パワー半導体素子SW1,SW2の他方は、同期整流のためのPWM制御のゲート信号が印加されている間、通常逆導通の状態になる。
【0038】
次に、図7に示した閾値電圧変動抑制制御をパワー半導体素子SW1またはSW2に対して行う場合について説明する。図7に図示した例では、パワー半導体素子SW2のみ閾値電圧変動抑制制御を行い、パワー半導体素子SW1には閾値電圧変動抑制制御を行っていない。
【0039】
パワー半導体素子SW2において、その閾値電圧Vthがその許容値より高いとき、パワー半導体素子SW1がPWM制御している期間、ゲートドライバ14がスイッチング素子Tr2をオンのままにしてゲート電圧を電圧VLのままにし、同期整流はしていない。パワー半導体素子SW2は、閾値電圧Vthが低下する方向に変化するゲート電圧Vgがゲートに印加されることになる。また、パワー半導体素子SW2がPWM制御している期間、パワー半導体素子SW1のゲートには、同期整流のためのPWM制御のゲート信号が印加されている。
【0040】
パワー半導体素子SW2の閾値電圧Vthがその許容値以内のとき、パワー半導体素子SW1がPWM制御している期間、ゲートドライバ14は、スイッチング素子Tr1,Tr2を使ってパワー半導体素子SW2を同期整流のためのPWM制御をしている。すなわち、ゲートドライバ14は、パワー半導体素子SW2をオンにするタイミングでスイッチング素子Tr1をオンにし、パワー半導体素子SW2をオフにするタイミングでスイッチング素子Tr2をオンにする。これにより、パワー半導体素子SW2は、オンのときにゲート電圧が電圧VHとなり、オフのときにゲート電圧が電圧VLとなる。つまり、このときのパワー半導体素子SW2のゲートには、閾値電圧変動抑制制御の必要のない通常の値の電圧VH,VLが印加される。また、パワー半導体素子SW2がPWM制御している期間、パワー半導体素子SW1のゲートには、同期整流のためのPWM制御のゲート信号が印加されている。
【0041】
パワー半導体素子SW2の閾値電圧Vthがその許容値より低いとき、パワー半導体素子SW1がPWM制御している期間、ゲートドライバ14は、スイッチング素子Tr2,Tr3を使ってパワー半導体素子SW2を同期整流のためのPWM制御をしている。すなわち、ゲートドライバ14は、パワー半導体素子SW2をオンにするタイミングでスイッチング素子Tr3をオンにし、パワー半導体素子SW2をオフにするタイミングでスイッチング素子Tr2をオンにする。これにより、パワー半導体素子SW2は、オンのときにゲート電圧が電圧VMとなり、オフのときにゲート電圧が電圧VLとなる。この結果、パワー半導体素子SW2は、閾値電圧Vthが上昇する方向に変化するゲート電圧Vgがゲートに印加されることになる。また、パワー半導体素子SW2がPWM制御している期間、パワー半導体素子SW1のゲートには、同期整流のためのPWM制御のゲート信号が印加されている。
【0042】
以上の図7の例では、閾値電圧変動抑制制御を下アームのパワー半導体素子SW2に適用した場合を示したが、上アームのパワー半導体素子SW1にも同様に適用することができる。この場合、上アームのパワー半導体素子SW1の閾値電圧変動抑制制御は、下アームのパワー半導体素子SW2の閾値電圧変動抑制制御と異なる時間帯に実施される。
【0043】
[第3の実施の形態]
図8は第3の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置を示す図、図9はパワー半導体素子のオフ時のゲート抵抗回路を示す図である。図10はパワー半導体素子をある一定時間駆動させたときのオフ時のゲート電圧の波形を示す図、図11はパワー半導体素子をある一定時間駆動させたときの閾値変動の変化の傾向を示す図である。図12は第3の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置の動作の流れを示すフローチャートである。なお、図8において、図2に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0044】
この第3の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置は、第2の実施の形態に係るパワー半導体素子の駆動装置がゲート電圧を変更して閾値電圧変動を抑制しているのに対し、ゲート抵抗を変更して閾値電圧変動を抑制している。
【0045】
パワー半導体素子SWの駆動装置1は、電圧検出部11、換算部12、比較部13、スイッチング素子Tr11,Tr12、ゲート抵抗Rg、オン時ゲート抵抗Rg(on)およびオフ時ゲート抵抗Rg(off)を備えている。ここで、電圧検出部11および換算部12は、閾値検出部2を構成し、比較部13およびオフ時ゲート抵抗Rg(off)は、閾値変動抑制部3を構成している。
【0046】
この駆動装置1では、スイッチング素子Tr11,Tr12のゲートは、ゲート抵抗Rgを介してゲート信号が入力される入力端子21に接続されている。スイッチング素子Tr11のドレインは、正極ゲート電圧Vg(+)に接続され、スイッチング素子Tr11のソースは、オン時ゲート抵抗Rg(on)の一方の端子に接続されている。オン時ゲート抵抗Rg(on)の他方の端子は、パワー半導体素子SWのゲートおよびオフ時ゲート抵抗Rg(off)の一方の端子に接続されている。オフ時ゲート抵抗Rg(off)の他方の端子は、スイッチング素子Tr12のソースに接続され、スイッチング素子Tr12のドレインは、負極ゲート電圧Vg(−)に接続されている。ここで、オフ時ゲート抵抗Rg(off)は、その制御端子が比較部13の出力に接続されており、比較部13が出力する制御信号によって抵抗値が変化する可変抵抗である。
【0047】
オフ時ゲート抵抗Rg(off)は、図9に例示したように、スイッチング素子Tr13,Tr14と抵抗Rg1,Rg2とを備えている。抵抗Rg1,Rg2の一方の端子は、オン時ゲート抵抗Rg(on)の他方の端子に接続されている。抵抗Rg1の他方の端子は、スイッチング素子Tr13のソースに接続され、抵抗Rg2の他方の端子は、スイッチング素子Tr14のソースに接続されている。スイッチング素子Tr13,Tr14のドレインは、スイッチング素子Tr12のソースに接続され、スイッチング素子Tr13,Tr14のゲートは、比較部13の出力に接続されている。なお、このオフ時ゲート抵抗Rg(off)では、抵抗Rg1,Rg2の値をRg1>Rg2の関係にしている。
【0048】
以上の構成のパワー半導体素子SWの駆動装置において、電圧検出部11は、パワー半導体素子SWがオン状態でのドレイン・ソース間の電圧Vonを検出し、換算部12では、検出された電圧Vonの変動から閾値電圧Vthの変動が推測される。比較部13では、推測された閾値電圧Vthの変動と閾値電圧Vthの許容値とを比較し、閾値電圧Vthの変動が閾値電圧Vthの許容値より低いか、閾値電圧Vthの変動が閾値電圧Vthの許容値以内かを判断する。なお、閾値電圧Vthの許容値は、初期値に対して、誤オンの発生などの問題が出ないような範囲に決められる。
【0049】
ここで、比較部13は、閾値電圧Vthの変動が閾値電圧Vthの許容値以内の場合、スイッチング素子Tr13をオンにする制御信号を出力し、オフ時ゲート抵抗Rg(off)を抵抗Rg1に設定する。閾値電圧Vthの変動が閾値電圧Vthの許容値より低い場合、比較部13は、スイッチング素子Tr14をオンにする制御信号を出力し、オフ時ゲート抵抗Rg(off)を抵抗Rg1よりも値の小さな抵抗Rg2に設定する。
【0050】
この閾値変動抑制制御は、パワー半導体素子SWの以下の電気特性に基づいている。すなわち、パワー半導体素子SWをある一定時間駆動させると、オフ時のゲート電圧Vgは、図10に示したように、オフ時ゲート抵抗Rg(off)の値によってアンダーシュート電圧UVの大きさが変化する。なお、オフ時ゲート抵抗Rg(off)は、AからDの順に小さくした場合を示している。ここで、アンダーシュート電圧UVは、図中の矢印部の大きさで定義される(図では、オフ時ゲート抵抗Rg(off)をDにしたときの跳ね上がり電圧を示している)。一方、図11に示したように、パワー半導体素子SWがターンオフするときのアンダーシュート電圧UVを大きくすると、閾値電圧Vthの上昇幅が大きくなる傾向がある。このことから、閾値電圧Vthの変動が許容値の範囲内であれば、オフ時ゲート抵抗Rg(off)の値を大きく(通常の値に)しておくことで、オフ時のゲート電圧Vgは、過剰なアンダーシュート電圧UVの発生が抑制されることが分かる。また、閾値電圧Vthが許容値より低下した場合には、閾値電圧Vthが上昇する方向に制御すればよい。このためには、オフ時ゲート抵抗Rg(off)の値を通常の値より小さくすることで、オフ時のゲート電圧Vgは、アンダーシュート電圧UVが大きくなる方向に変化する。これにより、閾値電圧Vthの上昇幅が大きくなることから、閾値電圧Vthが許容値から大きく外れることが抑制され、パワー半導体素子SWの閾値電圧Vthの変動を抑制することができる。
【0051】
なお、この閾値変動抑制制御において、閾値電圧Vthの検出は、パワー半導体素子SWの動作中にリアルタイムに実施することができるが、定期的に装置を停止し個別に検出してもよい。このときの閾値電圧Vthが許容値の範囲内であったときは、オフ時ゲート抵抗Rg(off)の通常の値、すなわち、抵抗Rg1の値は、スイッチング損失などを考慮して決めるのが望ましい。また、閾値電圧Vthの検出およびオフ時ゲート抵抗Rg(off)の切り替えは、一定時間ごとに行うのがよい。
【0052】
次に、以上のパワー半導体素子SWの駆動装置の全体の動作について説明する。パワー半導体素子SWの駆動装置では、図12に示したように、まず、パワー半導体素子SWがオン状態でのドレイン・ソース間の電圧Vonを電圧検出部11が検出する(ステップS11)。次に、電圧Vonと閾値電圧Vthとの関係を用いて、換算部12が、検出した電圧Vonに対応する閾値電圧Vthを求め、閾値電圧Vthの変動を推測する(ステップS12)。
【0053】
比較部13では、推測された閾値電圧Vthとあらかじめ設定された許容値とを比較し(ステップS13)、推測された閾値電圧Vthが許容値以内かどうかを判断する(ステップS14)。ステップS14において、閾値電圧Vthが許容値以内と判断されると、比較部13は、スイッチング素子Tr13をオンする制御信号を出力し、オフ時ゲート抵抗Rg(off)を通常の値の抵抗Rg1に切り替える(ステップS15)。ステップS14において、閾値電圧Vthが許容値より低いと判断されると、比較部13は、スイッチング素子Tr14をオンする制御信号を出力し、オフ時ゲート抵抗Rg(off)を通常の値より小さな抵抗Rg2に切り替える(ステップS16)。
【0054】
オフ時ゲート抵抗Rg(off)の切り替えが終わると、パワー半導体素子SWの駆動装置は、一定時間動作を継続させる(ステップS17)。一定時間経過すると、パワー半導体素子SWの駆動装置は、ステップS11に戻り、ドレイン・ソース間の電圧Vonの検出を再開する。
【0055】
この第3の実施の形態では、検出した閾値電圧Vthに基づいてオフ時ゲート抵抗Rg(off)を2段階に切り替えているが、必要に応じて3以上の複数段階に切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 駆動装置
1D 下アーム用駆動装置
1U 上アーム用駆動装置
2 閾値検出部
2D 閾値検出部
2U 閾値検出部
3 閾値変動抑制部
3D 閾値変動抑制部
3U 閾値変動抑制部
11 電圧検出部
12 換算部
13 比較部
14 ゲートドライバ
21 入力端子
C コンデンサ
L インダクタ
Rg(off) オフ時ゲート抵抗
Rg(on) オン時ゲート抵抗
Rg ゲート抵抗
Rg1,Rg2 抵抗
SW,SW1,SW2 パワー半導体素子
Tr1,Tr2,Tr3,Tr11,Tr12,Tr13,Tr14 スイッチング素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12