【実施例1】
【0025】
実施例1においては、コイル束分離手段の側面下方にコイル束押込手段としての押込片を固着させたコイル挿入機1を、
図1から
図6を参照して説明する。
図1(A)図は、コイル挿入機をなすコイル束分離手段10とコイル束押込手段20を斜視図で示し、
図1(B)図は、これらを平面図で示している。
図1(A)図においては、理解を容易にするため、コイル束と固着させる前の押込片とを、一か所ずつ示している。同様に、ステータコア100を一点鎖線で示し、一か所のスロット103を破線で示している。
【0026】
図2は、コイル挿入機1をなすブレード軸体30にコイル束700を引っ掛けた状態の斜視図を示し、
図3はコイル挿入機1がコイル束700を挿入している状態の斜視図を示している。
図4はコイル挿入機1と、コイル挿入機のブレード軸体の先端で保持されているステータコア100の平面図を示している。
図4においては、理解を容易にするためコイル束分離手段10とブレード軸体30とステータコア100について斜線を付して示している。
図5は、コイル挿入機1と相間絶縁紙の整形機2の説明図を示している。
図6は、本願発明との比較例として従来装置におけるストリッパ500とコイル束分離手段600の斜視図を示している。
【0027】
本実施例においては、9個の磁極ティース101が等間隔で環状に配列されているステータコア100に、コイル束700を挿入させるコイル挿入機1に適用させる例を説明する(
図2参照)。コイル挿入機1は、コイル束分離手段10と、コイル束押込手段20と、ブレード軸体30と、相間絶縁紙ガイド軸体40とを含んでいる(
図1,
図2参照)。
【0028】
コイル挿入機1は、9本のブレード軸体30が環状に配列され、ブレード軸体には予め巻線されたコイル束700が引掛けられ、隣り合うブレード軸体がなすブレード隙間31から、コイル束が外に引き出されている(
図2参照)。相間絶縁紙ガイド軸体40は、ブレード隙間31に相間絶縁紙ガイド孔41が面するように環状に配列されている(
図2,
図4参照)。
【0029】
環状に配列されたブレード軸体30の内面に沿って、コイル束分離手段10とコイル束押込手段20とが(
図1参照)、ステータコア100の中央空間を下方から上方に向けて摺動され、ブレード軸体30に引掛けられたコイル束700が、ステータコア100の開口隙間102(
図1(A)図,
図4参照)からスロット103内に押し込まれる。また、コイル束700の挿入に伴って、相間絶縁紙ガイド軸体40に案内された相間絶縁紙800が隣り合うコイル束の間に挿入される(
図3参照)。
【0030】
相間絶縁紙とは、一つのスロットの中で隣り合っているコイル束を電気的に絶縁させる部材であり、電気絶縁性を有する板体が折り曲げられて形成されている。ここでは、長尺の樹脂シート体を略T字形状に整形させている。より詳細には、樹脂シート体が中央から二つ折りにされると共に、両端部が磁極ティースのフランジ部104(
図4参照)に沿うように折り曲げられて内径側折曲げ部801が形成され略T字形状とされている。相間絶縁紙の二つ折りにされた部分802において、前記内径側折曲げ部801に繋がる端部とは反対の端部に、両側方に突出するように折り曲げられた外径側折曲げ部803を備えさせると、相関絶縁紙が撓みにくく、より好適である。
【0031】
ブレード軸体30は、ブレード軸体本体32と、相間絶縁紙800が傾かないように前記内径側折曲げ部801を支えるガイド部材33とからなり、ブレード軸体本体32の外面の下部にガイド部材33が付設されている(
図2参照)。ブレード軸体本体32は、内方側が湾曲された略半円形状の断面形状をなす軸体とされている。隣り合うブレード軸体30,30がなすブレード隙間31の幅は(
図2参照)、ステータコア100の開口隙間102と略同一とされている(
図1(A)図,
図4参照)。
【0032】
相間絶縁紙ガイド軸体40には、前記相間絶縁紙800の二つ折りにされた部分802を挟んで案内するように、内方側から中央部に亘って貫通孔が形成されている。この貫通孔は、相間絶縁紙を案内する相間絶縁紙ガイド孔41とされている(
図2,
図4参照)。相間絶縁紙ガイド孔41の中央部には、相間絶縁紙プッシャー軸体42を摺動させる、略矩形をなしたプッシャー軸体通過孔43が形成されている(
図4,
図5参照)。また相間絶縁紙ガイド軸体40は、軸方向の先端部が山型に形成されると共に内方側も先が狭まった形状に形成され、コイル挿入の際にコイル束700と干渉しない形状とされている(
図2参照)。
【0033】
コイル束分離手段10は、その中央基部11から各々のスロットの開口隙間102(
図1(A)図,
図4参照)に向けて、放射状に等間隔で外方に突出された9個の薄板部12を備えている。薄板部12の外端部は、隣り合うブレード軸体30がなす各々のブレード隙間31に挿入され(
図2参照)、ブレード隙間31に引っ掛けられるコイル束700を軸方向に沿って、ブレード隙間31の中央から両側に区画させる。隣り合う薄板部12の間の中央基部11は、ゆるやかに湾曲され(
図1参照)、中央基部11と薄板部12とブレード軸体30との間に、コイル束700の湾曲されたコイルエンド部を引っ掛ける引っ掛け隙間34をなす(
図2参照)。
【0034】
ブレード隙間31よりも内方側のコイル束は、引っ掛け隙間34の上方の開口部から挿入され、薄板部12に沿って、区画されたブレード隙間35に滑り込ませるように引っ掛けられる(
図2参照)。ブレード隙間31よりも外方側のコイル束700は、隣り合う相間絶縁紙ガイド軸体40,40の内側となるように引っ掛けられている。
【0035】
各々の薄板部12の厚さは限定されず、ステータコアの大きさ、開口隙間の幅に応じた厚さとされればよい。例えば、薄板部の厚さを約0.2mmと薄くさせると、開口隙間の幅が短い小型の電動機の製造に適用でき好適である。コイル束をなすコイル線の線径は、薄板部により中央から区画されたブレード隙間に、積み重ねられる太さであればよく限定されない(
図2参照)。
【0036】
薄板部12がブレード軸体30に沿って延びる長さは、コイル束700を引っ掛ける状態においては、薄板部12の先方がブレード軸体の先端30と揃う長さとされている(
図2参照)。各々の中央基部11の下方側には、ブレード軸体30(
図2参照)の軸方向に沿って三段に配列された螺合手段をなす雌ネジ穴13が備えられる(
図1(A)図参照)。
【0037】
コイル押込手段20は、コイル束分離手段の前記中央基部11の外面下方に固着手段により固着されるコイルの9か所の押込片21,21・・・からなる。各々の押込片21は、一つの薄板部12を2か所の押込片21,21で両側から挟むように、中央基部11の外面下方に接した押込片基部22から隣り合った薄板部12,12に沿って放射状に突出され、薄板部の外端部まで延びている。押込片21の内側面23は、隣り合う薄板部12,12の間に隙間なく接する形状とされ(
図1(B)図参照)、外側面24はブレード軸体30(
図2参照)の内面とブレード隙間31とに沿って摺動される形状とされている。
【0038】
コイル束700は、外方に斜めに切り下がった形状とされた押込片の天部25に乗った状態でブレード軸体に沿って押し上げられ、ステータコアのスロットに押込まれる(
図1(A)図,
図3参照)。そのため、押込片の天部25よりも上方の部分、すなわち薄板部の中間部14だけがコイル束700に接しているにすぎず、コイル束を挿入させるときに、薄板部を側方に変形等させる力(
図1(A)図白抜き矢印参照)がコイル束700から伝達されても、変形等されにくい薄板部の中間部14に力が加わるにすぎない。
【0039】
薄板部12の押込片に近い部分15には(
図1(A)図参照)、コイル線701が順に上方からステータコアのスロットに挿入され、コイル線の挿入が完了する際に、側方からの押圧力が作用しやすい。しかし、薄板部12の押込片に近い部分15は、2か所の押込片21,21の外端部26,26で挟まれた位置16に近接されているため、側方に撓みにくく、薄板部12が歪むように変形等されることもない。
【0040】
薄板部12,12・・・と押込片21,21・・・とがなす水平外縁形状は、従来のストリッパ500(
図6参照)の水平外縁形状と同一形状をなしている(
図1(B)図参照)。これにより、従来のコイル挿入機のストリッパを、本発明のコイル束分離手段10とコイル束押込手段20とに交換することによっても、耐久性の高いコイル挿入機とすることができる。
【0041】
押込片の天部25は、外方に斜めに切り下がった形状とされている。押込片の天部25に乗ったコイル束700をステータコア100のスロットの中に押し込む際に、押込片の天部25がコイル束分離手段10の軸心側に向けて斜め下方に押し付けられる。これにより、押込片基部22がコイル束分離手段の中央基部11から離間されず、線径の小さいコイル線からなるコイル束を挿入させる場合であっても、コイル線701が中央基部11と押込片基部22との間に挟まることがない。
【0042】
下方に押込片21を添着させた薄板部12の長さが、コイル束700をステータコア100のスロットに押し込んだ状態において、押込片の天部25をブレード軸体30の先端から突出させる長さとされている(
図5(C)図参照)。押込片21の長さは、ステータコア100の積層厚さよりも長く、押し込んだコイル束700の一部が開口隙間102からステータコア100の内方空間側に戻らないように、コイル束を押し込んだスロット103を塞ぐ長さとされている(
図1(A)図参照)。押込片基部22には、前記螺合手段をなすネジ軸体17を挿通させる段孔27が三段に配列されている。段孔27をなす窪部28の深さは、ネジ軸体17の頭部を押込片の外面側24に突出させない深さとされる。
【0043】
押込片基部支持板50は略円盤形状をなす板体とされる(
図1(A)図参照)。押込片基部支持板50は、ブレード軸体の内径側においてコイル束分離手段の中央基部11の底部に、コイル束分離手段10と押込片基部支持板50の軸芯を一致させて複数のネジ軸体51,51により螺着固定されている。押込片基部支持板50の径は、押込片基部支持板とブレード軸体の内面とが接触されないように押込片基部22から外方に突出されない長さとされる(
図1(B)図参照)。
【0044】
押込片基部支持板50が各々の押込片基部22を均等に支えていることにより、小型の電動機用のコイル挿入機のように、細径のネジ軸体17により押圧片21を固定させている場合であっても、ネジ軸体17が折れにくく押圧片21がコイル束分離手段10から脱落されにくい。これにより、押圧片21の大きさが小さくなる小型の電動機用のコイル挿入機であっても、コイル束押込手段20の耐久性を高くすることができる。
【0045】
次に、コイル挿入機1と相間絶縁紙の整形機2の機構について、
図5を参照して簡単に説明する。
図5(A)図はコイル挿入機1と相間絶縁紙の整形機2とを備えるターンテーブル3の平面図を示している。
図5(B)図と
図5(C)図は、
図5(A)図のA−A位置断面図を示している(コイル挿入機については
図4のA−A位置断面図に相当)。
図5(B)図は、コイル束をブレード軸体に引っ掛けた状態を示し、
図5(C)図はコイル束をステータコアのスロットに押込んだ状態を示している。
【0046】
相間絶縁紙の整形機2は、長尺の樹脂シート体を略U字形状に仮整形させる格納器60と、仮整形された樹脂シート体を略T字形状に絞り整形させる絞り器70と、相間絶縁紙格納部を有するウェッジマガジン80とを備えている(
図5参照)。格納器60は、一方の側面が開放されると共に上下に貫通された雌型61と、雌型に樹脂シート体810を押込む雄型62とからなっている(
図5(B)図参照)。ウェッジマガジン80は、中央に貫通部81を有し、周縁部に9つの相間絶縁紙格納部82が等間隔で環状に配されると共に、ウェッジマガジンの周方向に回転可能とされている(
図5(A)図矢印A参照)。雌型61と、絞り器70と、一つの相間絶縁紙格納部82とが連通されるように、水平位置が揃えられている。
【0047】
樹脂シート体810は、予め折り癖がつけられており、雄型62により雌型61に押込まれることにより、両端部が外方に折り曲げられると共に中央部が二つ折りにされた略U字形状に仮整形される(
図5(B)図矢印B参照)。次に、雌型61の下方からプッシャー軸体71を延伸させ、仮整形された樹脂シート体を格納器60から絞り器70に押込む(
図5(B)図矢印C参照)。樹脂シート体は絞り器を通って相間絶縁紙格納部82に至るまでに、前記の略T字形状に整形される。
【0048】
一つの相間絶縁紙格納部82に相間絶縁紙800が格納されると、ウェッジマガジン80が周方向に回転される(
図5(A)図矢印A参照)。これが繰り返されて、全ての相間絶縁紙格納部82に相間絶縁紙が格納されると、ターンテーブル3全体が中心軸周りに回転されて、ウェッジマガジン80がコイル挿入機1の下方に位置される(
図5(A)図矢印D参照)。
【0049】
次に、コイル束分離手段10及びコイル束押圧手段20を押し上げる延伸軸90と、相間絶縁紙プッシャー軸体42とが一体に延伸される(
図5(B)図矢印E参照)。コイル束700がブレード軸30の先端を乗り越える位置まで押し上げられると、全てのコイル束700が同時にステータコア100の開口隙間102からスロット103に押込まれる(
図3,
図5(C)図参照)。
【0050】
押込片21の外端部がコイル線を押し込んだ後、開口隙間102からコイル線が外に漏出しないように、開口隙間102を押込片21の側部で塞ぎながら、押込片の天部25をブレード軸体30の先端から突出させるまで、延伸軸90を延伸させる。コイル束700の挿入に追従されて、コイル束を区画させるように、各々のスロットの中に相間絶縁紙800が挿入される(
図3参照)。相関絶縁紙の二つ折りにされた部分802が隣り合うコイル束を電気的に絶縁させ、内径側折曲げ部801がコイル線をスロットから漏出させないように開口隙間を閉鎖させる(
図3,
図5(C)図参照)。
【0051】
コイル挿入機1により、コイル束を挿入させた直後には、コイル束700のコイルエンド部がステータコア100の端面から上下方向に伸びた状態となっている(図示を省略している)。これをステータコアの軸方向の両側から加力して、上下のコイルエンド部を押し潰すように端部処理して、長さの小さな電動機の筐体に格納できるようにする。
【0052】
(その他)
・本実施例においては、押込片を固着させる固着手段を、ブレード軸方向に沿って複数段に配列された螺合手段とさせる例を説明したが、押込片を樹脂系接着剤だけで薄板部に固着させてもよく、機械的な固着手段と接着剤とが併用されてもよい。押込片基部支持板を備えさせた方が耐久性を高く好適であるが、押込片基部支持板を備えなくてもよいことは勿論のことである。
・今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の技術的範囲は、上記した説明に限られず特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。