特許第6973769号(P6973769)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973769
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】陶板
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/02 20060101AFI20211118BHJP
   B28B 11/10 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   B28B3/02 J
   B28B11/10
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-34906(P2017-34906)
(22)【出願日】2017年2月27日
(65)【公開番号】特開2018-140515(P2018-140515A)
(43)【公開日】2018年9月13日
【審査請求日】2019年11月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】595120655
【氏名又は名称】株式会社石川時鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 知司
【審査官】 山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭64−065055(JP,A)
【文献】 特開2003−181820(JP,A)
【文献】 特開平02−125059(JP,A)
【文献】 特開平10−212184(JP,A)
【文献】 特開2000−043023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板において、
板面に沿って設けられた空洞が周縁部にて閉塞された構成の中空構造と、
面において前記中空構造の外壁をなす部分に形成された印花と、
を備え、
前記印花は、前記中空構造の外壁が前記中空構造の内部側に向けて陥没した陥没穴である、
陶板。
【請求項2】
請求項1に記載された陶板であって、
前記印花が、当該印花とは別の凹凸模様の上に、当該凹凸模様を押しつぶした状態に形成されている、
陶板。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された陶板であって、
前記印花が形成された側の板面の表層に、当該印花の部分において途切れるように形成された凹凸が施されている、
陶板。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1項に記載された陶板であって、
前記中空構造において、所定の1方向に延びるように設けられた筋状の部分を備え、
前記印花は、当該印花における全ての縁部が前記筋状の部分と非平行となるように形成されている、
陶板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印花を片側の板面に有する粘土の板を焼成した陶板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘土の板を焼成してなる陶板において、任意の固体であるテンプレートを押し付けた跡に残る凹凸(本発明ではこれを「印花」とする。)が板面に形成されたものがあった。このような陶板を生産する技術は、例えば下記の特許文献1に記載がある。この特許文献1には、粘土の成形板を成形し、その板面に任意の印花を形成したものを焼成して陶板とする技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平02−125059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1の従来技術では、成形板にエンボスロールを押し付けて印花を形成するため、この印花を形成する際に成形板の板面部分の粘土が成形板の周縁部に向かってのされる。このため、上記従来技術には、成形板に印花を形成して焼成した陶板の周縁部にゆがみが生じてしまうという課題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記課題に対処するものであって、印花の形成された陶板を生産する際にこの陶板に生じる周縁部のゆがみを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における1つの特徴によると、固体を押し付けた跡である印花を片側の板面に有する粘土の板を焼成して陶板を生産する陶板の生産方法が提供される。この陶板の生産方法は、板面にかかる外力に対して自身が変形することで板面の変形量を少なくするクラッシャブルゾーンを備えた粘土の成形板を用意する成形板用意ステップを有している。また、上記陶板の生産方法は、成形板を、受け台の上に載せられ、成形板の片側の板面が上を向き、かつ、この板面の上に印花を形成するための固体であるテンプレートが載せられた状態とする成形板セットステップを有している。また、上記陶板の生産方法は、成形板の周縁部が枠に囲まれた状態でこの成形板の上側の板面に載せられたテンプレートを押し型の押し下げにより押圧して、成形板の上側の板面に印花を形成し、成形板をプレス成型板に加工する成形板加工ステップを有している。
【0007】
本発明にかかる陶板の生産方法は、印花の形成に際して成形板のクラッシャブルゾーンを変形させることで、成形板の板面部分の粘土が成形板の周縁部に向かってのされることを抑える。また、成形板の周縁部を枠で囲って印花の形成を行うことで、成形板の周縁部に向かって成形板の粘土がのされた場合でも、上記枠によって上記周縁部にゆがみが生じることを抑える。これにより、印花の形成された陶板を生産する際にこの陶板に生じる周縁部のゆがみを抑制することができる。
【0008】
上記陶板の生産方法における好ましい実施形態の1つにおいては、成形板加工ステップにおける押し型の押し下げの最下点を、押し型の下面と成形板の上側の板面とが互いに押圧力を及ぼすことなく接触される位置に設定する。この実施形態によれば、テンプレートの厚さの厚薄によらずこの厚さと同じ深さの印花をプレス成型板の板面に形成することができ、さらに、この板面に板厚方向のゆがみが生じることを押し型の下面で規制して抑えることができる。
【0009】
また、上記陶板の生産方法における好ましい実施形態の1つにおいては、上記テンプレートとして、リフティングマグネットの磁力による吸着が可能とされた磁性材料を使用する。ここで、リフティングマグネットは、磁力発生のオンオフを切り替えられる磁力発生装置である。また、上記実施形態では、成形板の板面の上にテンプレートを載せる際に、オンの状態のリフティングマグネットに磁力により吸着した状態のテンプレートを成形板の板面の上に載せた後でリフティングマグネットをオフにするオフ操作を行う。また、上記実施形態では、成形板加工ステップを行った後に、プレス成型板の上のテンプレートにオフの状態のリフティングマグネットを載せてこのリフティングマグネットをオンにすることでテンプレートをリフティングマグネットに吸着する。そして、吸着したテンプレートをリフティングマグネットと一緒にプレス成型板から引き離す引き離し操作を行う。
【0010】
上記実施形態によれば、成形板の板面に載せられた1つまたは複数のテンプレートを、その配置パターンを保ったまま回収して再使用することができる。これにより、印花の意匠が同一となる陶板を大量生産することが可能となる。
【0011】
また、上記実施形態においては、上記オフ操作を行う前に、テンプレートをリフティングマグネットに吸着する吸着操作を行う。この吸着操作においては、前もって置き台の上に載せられた状態に用意されたテンプレートにオフの状態のリフティングマグネットを載せてこのリフティングマグネットをオンにすることができる。この場合、上記引き離し操作を行った後に、オンの状態のリフティングマグネットに磁力により吸着した状態のテンプレートを置き台の上に戻し、その後にリフティングマグネットをオフにする戻し操作を行うことが好ましい。これらの操作によれば、テンプレートを回収して再使用する際に、置き台の上にてテンプレートの配置パターンにずれが生じているかをチェックして、ずれがある場合にはこのずれを修正する機会を得ることができる。
【0012】
また、上記陶板の生産方法における好ましい実施形態の1つにおいては、上記成形板用意ステップにおいて、上記クラッシャブルゾーンが所定の1方向に延びる筋状の粘土からなる成形板を用意する。そして、上記成形板セットステップにおいて、上記テンプレートにおける全ての縁部が上記筋状の粘土と非平行となるように、成形板の板面上にテンプレートを配置する。
【0013】
また、粘土の成形板をプレス機にかけた後に焼成してなる陶板の発明も提供される。この陶板は、所定の1方向に延びるように設けられた筋状の部分と、板面にテンプレートを押し付けた跡である印花とを備えている。この印花は、この印花における全ての縁部が上記筋状の部分と非平行となるように形成されている。
【0014】
成形板のクラッシャブルゾーンを所定の1方向に延びる筋状の粘土とする構成には、粘土の押出成形により成形板を連続的に生産できるというメリットと、上記所定の1方向にひび割れが入りやすくなるというデメリットとがある。また、成形板において、テンプレートの押し付けにより形成された印花は、その縁部に沿う方向にひび割れが入りやすい部分である。ここで、成形板の筋状の粘土が伸びる方向とテンプレートおよび印花の縁部とを非平行とする構成によれば、成形板にひび割れが入る可能性を低減させることができる。
【0015】
また、上記陶板の生産方法における好ましい実施形態の1つにおいては、上記成形板用意ステップにおいて、周縁部の端面に開口した中空構造を備えた成形板を用意する。さらに、成形板加工ステップにおいて、成形板の周縁部を押し型の押し下げにより押圧して整形することで、上記中空構造の開口を全て閉塞する操作を行う。この場合、上記成形板加工ステップにおいて、上記中空構造の開口が閉塞されるタイミングが、成形板の上側の板面に印花が形成されるタイミングよりも後になるように設定されることが好ましい。この設定によれば、印花を成形板に形成する際に、この成形板の中空構造内の空気の逃げ道を確保して、この空気が成形板のプレス成型板への整形を阻害することをさけることができる。
【0016】
なお、上記実施形態において生産される陶板は、粘土の成形板をプレス機にかけた後に焼成してなる陶板となる。この陶板は、板面に沿って設けられた空洞が周縁部にて閉塞された構成の中空構造を備える。また、上記陶板は、成形板の板面において上記中空構造の外壁をなす部分にテンプレートを押し付けた跡である印花を備える。この印花は、中空構造の外壁が中空構造の内部側に向けて陥没した陥没穴である。
【0017】
また、上記実施形態においては、上記成形板セットステップにおいて、片側の板面に前もって凹凸模様が形成された成形板を、上記凹凸模様の上にテンプレートが載せられた状態にセットすることが好ましい。この場合、生産される陶板は、印花が、この印花とは別の凹凸模様の上に、この凹凸模様を押しつぶした状態に形成されているものとなる。これにより、生産される陶板の意匠のバリエーションを増やすことができる。
【0018】
また、上記実施形態においては、上記成形板加工ステップを行った後に、プレス成型板において印花が形成された側の板面の表層に凹凸を施す操作を行うことが好ましい。この場合、生産される陶板は、印花が形成された側の板面の表層に、印花の部分において途切れるように形成された凹凸が施されているものとなる。これにより、生産される陶板の意匠のバリエーションを増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態にかかる陶板10を表した平面図である。
図2】一実施形態にかかる陶板10の生産方法を示すフローチャートである。
図3図2のステップS10およびステップS20を説明する説明図である。
図4図2のステップS40を説明する説明図である。
図5図2のステップS60を説明する説明図である。
図6図2のステップS60を説明する説明図である。
図7図2のステップS60を説明する説明図である。
図8図5の受け台92Dを表した右側面図である。
図9図5の受け台92Dを表した平面図である。
図10図5の押し型92Aを表した右側面図である。
図11図5の押し型92Aを表した平面図である。
図12図2のステップS80を説明する説明図である。
図13図1の陶板10の変形例を表した平面図である。
図14図1の陶板10の変形例を表した斜視図である。
図15図1の陶板10の変形例を表した斜視図である。
図16図1の陶板10の変形例を表した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
始めに、一実施形態にかかる陶板10の構成について説明する。この陶板10(図1参照)は、粘土をプレス成型した板材であるプレス成型板20(図12参照)を焼成してなる陶板である。ここで、プレス成型板20は、粘土の成形板30をプレス機92にかける(図7参照)ことによって生産される。
【0022】
陶板10は、長尺の空洞を複数並べてなる中空構造12を備えている。この中空構造12は、陶板10の板面11に沿って設けられた空洞が陶板10の周縁部10Aにて閉塞された構成となっている。ここで、中空構造12は、成形板30において周縁部10Aの端面10Bに開口した貫通孔状の空洞(図4参照)として設けられ、この成形板30がプレス成型板20に加工される際に開口が閉塞されて、この状態で焼成される。また、中空構造12には、プレス成型板20において所定の1方向(図12では紙面手前側から紙面奥側)に延びるように設けられた筋状の粘土20Aが焼成された筋状の部分12Aが設けられている。この筋状の部分12Aは、陶板10において、中空構造12の空洞の長手方向(図1では左右方向)に延びるように設けられている。
【0023】
また、陶板10の板面11には、中空構造12の外壁が中空構造12の内部側に向けて陥没した陥没穴である印花11Aが形成されている。この印花11Aは、成形板30の板面において中空構造12の外壁をなす部分に1つまたは複数のテンプレート91(図4参照)を押し付けた跡が、プレス成型板20の焼成後まで残ったものである。なお、本実施形態では、テンプレート91としてひし形の鉄製エキスパンドメタルを使用するため、印花11Aはひし形の網形状を呈する。
【0024】
続いて、生産者(図示せず)が上述した陶板10を生産する際に実行される一連の各工程について、図2に示すフローチャートに従って説明する。
【0025】
陶板10を生産するに際しては、生産者は、まず、図2に示すステップS10を実行する。
【0026】
このステップS10においては、生産者は、図3に示す押し出し機90を駆動させ、この押し出し機90に粘土を供給する。この際、押し出し機90は、供給された粘土を練り混ぜて口金90Aから板状の粘土30Aとして押し出しながら、この粘土30Aをローラーコンベア90Bで搬送する。なお、押し出し機90は、供給された粘土を練り混ぜる際にこの粘土の水分を調整することで、口金90Aから押し出される粘土30Aを外力により容易に変形あるいは切断ができる状態とする。
【0027】
また、生産者は、図2に示すステップS20を実行する。
【0028】
このステップS20においては、生産者は、ローラーコンベア90B上にて粘土30Aが所定の長さまで押し出されたタイミングで、ローラーコンベア90Bに前もって取り付けられた切断装置90Cを動かす。これにより、生産者は、あらじとなる粘土の成形板30をローラーコンベア90B上の粘土30Aから切り分けて用意する。
【0029】
ところで、押し出し機90は、粘土30Aが押し出される流れにおいて口金90Aよりも上流側となる部分にくし状の中玉(図示せず)を備えている。この中玉は、そのくしの歯を口金90Aに向けることで、押し出される粘土30Aに、その押し出し方向と平行な方向に延びる貫通孔を設ける。また、切断装置90Cは、ローラーコンベア90B上の粘土30Aをこの粘土30Aの押し出し方向と垂直な方向に切断することで、得られる成形板30を、その周縁部10Aの端面10Bに開口した中空構造12(図4参照)を備えた、所定の板厚の板とする。ここで、上述したステップS10およびステップS20は、本発明における「成形板用意ステップ」に相当する。
【0030】
ステップS20に続いて、生産者は、図2に示すステップS30を実行する。
【0031】
このステップS30においては、生産者は、ステップS20にて切り分けた成形板30を図4に示す平台91Cまで搬送し、この平台91Cの上に成形板30を載置する。この際、生産者は、成形板30における片側の板面11が上側(図4では上側)を向いた状態とする。
【0032】
ステップS30に続いて、生産者は、図2に示すステップS40を実行する。
【0033】
このステップS40においては、生産者は、まず、磁力発生のオンオフを切り替えられる磁力発生装置であるリフティングマグネット91Aを用意する。本実施形態においては、リフティングマグネット91Aは、回動可能なスイッチレバー91Bを備えて、このスイッチレバー91Bの回動位置によって磁力発生のオンオフが切り替えられるようになっている。
【0034】
続いて、生産者は、図4に実線で示すように、前もって置き台91Dの上に載せられた状態に用意された複数のテンプレート91の上にオフの状態のリフティングマグネット91Aを載せる。そして、生産者は、スイッチレバー91Bを回動させてリフティングマグネット91Aをオンの状態とする操作を行う。この時、テンプレート91は磁性材料(具体的には鉄)によりリフティングマグネット91Aの磁束を集中して通すことが可能なサイズに形成されているため、置き台91Dの上で移動することなくリフティングマグネット91Aに吸着される。このため、上記操作は、以下においては「吸着操作」とも称する。
【0035】
続いて、生産者は、図4に仮想線で示すように、リフティングマグネット91Aをテンプレート91が吸着した状態のまま動かして、これらのテンプレート91を成形板30の板面11の上に載せる。そして、生産者は、スイッチレバー91Bを回動させてリフティングマグネット91Aをオフの状態とする操作を行うことで、リフティングマグネット91Aからテンプレート91を分離させる。この操作は、以下においては「オフ操作」とも称する。
【0036】
なお、成形板30は筋状の粘土20Aを有するため、この筋状の粘土20Aが伸びる方向にひび割れが入りやすくなる。また、成形板30において、印花11Aは、その縁部に沿う方向に応力が集中しやすい部分である。このため、成形板30の板面11上にテンプレート91を載せる際には、これらのテンプレート91における全ての縁部が筋状の粘土20Aと非平行となるように、テンプレート91を配置することが好ましい。これにより、印花11Aにおける全ての縁部が筋状の粘土20Aと非平行となるように印花11Aを形成して、成形板30にひび割れが入る可能性を低減させることができる。なお、上記の手法を採用した場合、生産される陶板10の印花11Aは、図1に示すように、この印花11Aにおける全ての縁部が筋状の部分12Aと非平行となるように形成されたものとなる。
【0037】
ステップS40に続いて、生産者は、図2に示すステップS50を実行する。
【0038】
このステップS50においては、生産者は、成形板30を、板面11の上にテンプレート91が載った状態のまま図5に示すプレス機92にセットする。このプレス機92は、押し下げと引き上げとが可能な押し型92Aと、この押し型92Aの下に位置される平板状の受け台92Dとを備えている。このため、生産者は、プレス機92の押し型92Aを引き上げられた状態(図5参照)としてから受け台92Dの上に成形板30を載せてセットする。この際、生産者は、テンプレート91が載せられた成形板30をバキュームリフト(図示せず)により吊り上げて動かすことで、成形板30をプレス機92にセットすることができる。ここで、上述したステップS30からステップS50に至る各ステップは、本発明における「成形板セットステップ」に相当する。
【0039】
ステップS50に続いて、生産者は、図2に示すステップS60を実行する。
【0040】
このステップS60においては、生産者は、図5に示すように、プレス機92を駆動させて、プレス機92の押し型92Aを押し下げる。ここで、押し型92Aには、図10および図11に示すように、下側に向けて突出された枠92Cが取り付けられている。また、受け台92Dには、図8および図9に示すように、上側に向けて突出された枠92Fが取り付けられている。そして、これらの枠92Fおよび枠92Cは、押し型92Aが押し下げられた状態(図7参照)において成形板30の周縁部10Aを囲むようになっている。
【0041】
また、押し型92Aの押し下げの最下点は、この押し型92Aの下面と成形板30の上側の板面11とが互いに押圧力を及ぼすことなく接触される位置(図6参照)に設定される。このため、成形板30の上に載せられたテンプレート91は、図6に示すように、その厚さの厚薄によらず押し型92Aに押圧されて板面11にめり込み、この板面11にテンプレート91の厚さと同じ深さの印花11Aを形成する。
【0042】
この際、成形板30において印花11Aに下側(図6では下側)に位置される筋状の粘土20Aは、上下方向(図6では上下方向)に押しつぶされて印花11Aの下側の粘土を中空構造12の内部側に移動させることで、板面11の変形を抑える。すなわち、筋状の粘土20Aは、板面11にかかる外力に対して自身が変形することで板面11の変形量を少なくするクラッシャブルゾーンとして機能する。また、成形板30において印花11A周辺の粘土が周縁部10Aに向かってのされた場合には、この周縁部10Aを囲む枠92Cおよび枠92F(図7参照)が、周縁部10Aにゆがみが生じることを抑える。また、成形板30において粘土が板厚方向にのされた場合には、押し型92Aの下面および受け台92Dの上面が、板面11に板厚方向のゆがみが生じることを規制して抑える。
【0043】
また、プレス機92の押し型92Aおよび受け台92Dには、それぞれ、図7に示すように、押し型92Aとは独立して上下動をする押さえ部92B、92Eが設けられている。これらの押さえ部92B、92Eは、成形板30の周縁部10Aを押圧して整形することで成形板30をプレス成型板20に加工する。このため、以下においては、ステップS60のことを「成形板加工ステップ」とも称する。
【0044】
ここで、成形板加工ステップにおいて、押さえ部92B、92Eは、押し型92Aが最下点まで押し下げられて印花11Aの形成が終わった後のタイミングで駆動され、成形板30における中空構造12の開口を全て閉塞する。この設定によれば、印花11Aを成形板30に形成する際に、この成形板30の中空構造12内の空気をこの中空構造12の開口から逃がして、中空構造12内の空気が成形板30のプレス成型板20への整形を阻害することをさけることができる。
【0045】
上述した成形板加工ステップに続いて、生産者は、図2に示すステップS70を実行する。
【0046】
このステップS70においては、生産者は、プレス機92の押し型92Aを引き上げられた状態(図5参照)として、板面11にテンプレート91がめり込んだ状態のプレス成型板20を、テンプレート91を上にした状態でプレス機92の受け台92Dから図12に示す平台91Eまで搬送する。この際、生産者は、プレス成型板20をバキュームリフト(図示せず)により吊り上げて動かすことで、プレス成型板20を平台91Eまで搬送することができる。なお、ステップS70にてプレス成型板20が搬送される平台91EとステップS30にて成形板30が搬送される平台91Cとは別のものであっても同じものであってもよい。
【0047】
ステップS70に続いて、生産者は、図2に示すステップS80を実行する。
【0048】
このステップS80においては、生産者は、図12に実線で示すように、ステップS40で使用したリフティングマグネット91Aをオフの状態で用意し、このリフティングマグネット91Aを平台91Eに置かれたプレス成型板20上のテンプレート91に載せる。そして、生産者は、スイッチレバー91Bを回動させてリフティングマグネット91Aをオンの状態とすることで、このリフティングマグネット91Aにテンプレート91を吸着する。
【0049】
続いて、生産者は、図12に仮想線で示すように、リフティングマグネット91Aをテンプレート91が吸着した状態のまま動かして、これらのテンプレート91をプレス成型板20から引き離して取り除く。この操作は、以下においては「引き離し操作」とも称する。
【0050】
ここで、上記引き離し操作を行った生産者は、テンプレート91が吸着したリフティングマグネット91Aを置き台91Dの上に戻す。そして、生産者は、リフティングマグネット91Aをオフにする操作を行うことで、このリフティングマグネット91Aからテンプレート91を分離させる。この操作は、本発明における「戻し操作」に相当する。
【0051】
上述した各操作によれば、オフ操作にて成形板30の板面11に載せられたテンプレート91を、その配置パターンを保ったまま引き離し操作にて回収して再使用することができる。これにより、印花11Aの意匠が同一となる陶板10を大量生産することが可能となる。さらに、テンプレート91を回収して再使用する際に、置き台91Dの上にてテンプレート91の配置パターンにずれが生じているかをチェックして、ずれがある場合にはこのずれを修正する機会を得ることができる。なお、複数の成形板30に対して印花11Aの形成を連続して行う場合には、成形板30の上面にテンプレート91による印花11Aを形成しているとき、次の成形板30上にテンプレート91を載せ、また、印花11Aが形成されたプレス成型板20からテンプレート91を取り除く作業を同時に行うよう、テンプレート91およびリフティングマグネット91Aを複数組用意することが好ましい。
【0052】
ステップS80に続いて、生産者は、図2に示すステップS90を実行する。
【0053】
このステップS90においては、生産者は、テンプレート91が引き離されたプレス成型板20を乾燥炉(図示せず)に運び入れて乾燥させる。これにより、プレス成型板20は、陶板10(図1参照)へと焼成することが可能な状態に変質される。
【0054】
ステップS90に続いて、生産者は、図2に示すステップS100を実行する。
【0055】
このステップS100においては、生産者は、乾燥により変質されたプレス成型板20を乾燥炉(図示せず)から焼成炉(図示せず)に移動させ、この焼成炉にてプレス成型板20を陶板10(図1参照)へと焼成させる。なお、本実施形態において、焼成炉は、その焼成の過程において燻化を行うことで、陶板10の色を黒色にする。
【0056】
本発明は、上述した一実施形態で説明した外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。例えば、以下のような各種の変形例を実施することができる。
【0057】
(1)陶板の印花は、ひし形のエキスパンドメタルをテンプレートとした、ひし形の網形状を呈するものに限定されず、例えば図13ないし図16に示すような種々の印花に変更することができる。ここで、図16に示す陶板10の印花11Aは、各タイルの厚さが異なるモザイクタイルシート(図示せず)をテンプレートとして使用することで形成することができる。また、図15に示す陶板10の印花11Aは、自然環境から採取した種々の枝葉をテンプレートとして使用することで形成することができる。この場合、プレス成型板にめり込んだ枝葉は、プレス成型板の乾燥の際に自然に剥落したりプレス成型板の焼成の際に焼失したりするため、プレス成型板にめり込んだ枝葉をプレス成型板から取り除く作業を省略することができる。
【0058】
(2)図1に示す陶板10は、平面状の板面11を有する成形板30(図3参照)に形成される印花11Aのみを模様として有するものである。しかしながら、陶板は、片側の板面に前もって凹凸模様が形成された成形板に印花を形成したものであってもよい。この場合、陶板10は、図15に示すように、印花11Aが、この印花11Aとは別の凹凸模様11Bの上に、この凹凸模様11Bを押しつぶした状態に形成されているものとなる。ここで、図15に示す陶板10において、凹凸模様11Bは、成形板の押出成形の際に形成されるスクラッチラインであるが、凹凸模様11Bは成形板の成形後に施される画花であってもよい。また、陶板は、成形板加工ステップを行った後に、プレス成型板において印花が形成された側の板面の表層に凹凸を施したものであってもよい。この場合、陶板10は、図13および図14に示すように、印花11Aが形成された側の板面11の表層に、印花11Aの部分において途切れるように形成された凹凸11Cが施されたものとなる。ここで、図13および図14に示す陶板10において、凹凸11Cは全ねじまたは全ねじと類似の形状のものにより種々の方向に刻まれたローレットであり、見る角度により見かけ上の明暗が種々に変化するものである。上述した各変形例によれば、陶板10の意匠のバリエーションを増やすことができる。
【0059】
(3)陶板において、中空構造は必須の構成ではない。すなわち、陶板10は、図15に示すように、例えば筋状の部分12Aを印花11Aとは反対側(図15では下側)の外部に突出させたリブとしたものであってもよい。この場合、陶板10の生産のために用意される成形板を、粘土の塊であるたたら板から切り出して生産することが可能となる。
【0060】
(4)成形板加工ステップに際し、プレス機の押し型を、この押し型が成形板の上側の板面に押圧力を及ぼすように押し下げることができる。この手法によれば、陶板の板面に印花とは別にプレス痕を形成して、このプレス痕により陶板の意匠のバリエーションを増やすことができる。この場合、押し型において上記プレス痕を形成する部分に凹凸意匠を備えさせることで、この凹凸意匠に対応する意匠を上記プレス痕として形成することもできる。
【符号の説明】
【0061】
10 陶板
10A 周縁部
10B 端面
11 板面
11A 印花
11B 凹凸模様
11C 凹凸
12 中空構造
12A 筋状の部分
20 プレス成型板
20A 筋状の粘土(クラッシャブルゾーン)
30 成形板
30A 粘土
90 押し出し機
90A 口金
90B ローラーコンベア
90C 切断装置
91 テンプレート
91A リフティングマグネット
91B スイッチレバー
91C 平台
91D 置き台
91E 平台
92 プレス機
92A 押し型
92B 押さえ部
92C 枠
92D 受け台
92E 押さえ部
92F 枠
図1
図2
図3
図4
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