特許第6973771号(P6973771)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973771
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】地下構造物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E03F 7/00 20060101AFI20211118BHJP
   E02D 29/12 20060101ALI20211118BHJP
   E03F 5/10 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   E03F7/00
   E02D29/12 Z
   E03F5/10 Z
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-45831(P2017-45831)
(22)【出願日】2017年3月10日
(65)【公開番号】特開2018-150684(P2018-150684A)
(43)【公開日】2018年9月27日
【審査請求日】2019年12月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 和家
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】増田 智也
(72)【発明者】
【氏名】梅田 卓佳
【審査官】 柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−010367(JP,A)
【文献】 特開平05−247993(JP,A)
【文献】 特開平06−117014(JP,A)
【文献】 特開2015−007339(JP,A)
【文献】 特開2010−037776(JP,A)
【文献】 特開昭51−006176(JP,A)
【文献】 特開平11−117373(JP,A)
【文献】 特開昭54−004453(JP,A)
【文献】 特開2004−067821(JP,A)
【文献】 特開2004−307801(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0141210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03F 7/00
E02D 29/12
E03F 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、流路を形成する溝を備えた既設底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、熱可塑性樹脂を素材とする熱可塑性樹脂粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記熱可塑性樹脂粉粒体を、前記既設底面の全部又は一部を覆う状態に配置し、該熱可塑性樹脂粉粒体を加熱することで溶融状態とする工程であることを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項2】
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、流路を形成する溝を備えた既設底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、接着剤が付与された粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記接着剤を溶融状態とした前記粉粒体で、前記既設底面の全部又は一部を覆う工程であり、
前記材料硬化工程が、前記接着剤を硬化させる工程であることを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項3】
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、平面状の基礎底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、熱可塑性樹脂を素材とする熱可塑性樹脂粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記熱可塑性樹脂粉粒体を、前記基礎底面を覆う状態に配置し、該熱可塑性樹脂粉粒体を加熱することで溶融状態とする工程であり、
前記材料設置工程によって前記基礎底面に設けた前記底面構成材料に溝を形成する溝形成工程を有することを特徴とする地下構造物の施工方法。
【請求項4】
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、平面状の基礎底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、接着剤が付与された粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記接着剤を溶融状態とした前記粉粒体で、前記基礎底面を覆う工程であり、
前記材料硬化工程が、前記接着剤を硬化させる工程であり、
前記材料設置工程によって前記基礎底面に設けた前記底面構成材料に溝を形成する溝形成工程を有することを特徴とする地下構造物の施工方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
個別住居からの汚水や下水を地中の本管に排出する際、地中に埋設した地下構造物を通過させることがある。この地下構造物は、汚水桝、下水桝、排水桝、接続桝等、様々な呼ばれ方をしているが、その底面には、流路を形成する溝(インバート)が設けられている。
【0003】
こういった地下構造物では、長年の使用や地震等により、内部に亀裂、破損等の損傷を生じることがある。内部に亀裂、破損等の損傷が生じた地下構造物では、その地下構造物の既設の底面や既設の縦壁をライニング部材で覆うことで補修される。以下、補修される地下構造物における、補修前の既設の底面を既設底面と称し、また、補修前の既設の縦壁を既設縦壁と称して、補修後の底面および補修後の縦壁と区別する場合がある。また、新規に設置する地下構造物では、地下構造物の基礎底面に溝を設けることで底面が施工される。
【0004】
従来、地下構造物の既設底面等を補修する技術として、未硬化の樹脂が含浸された未硬化被覆部材を既設底面等に敷設した後、地下構造物の既設底面等の形状に合わせて加圧用膨脹体を膨らませることで、その加圧用膨脹体によって未硬化被覆部材を地下構造物の既設底面等に押圧させながら未硬化の樹脂を硬化させる技術が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。特許文献1に記載された技術では、加圧用膨脹体を取り付けるガイド治具が用いられており、このガイド治具の平面形状を溝の形状に合わせて変えることで、溝の形状がストレートタイプでない場合にも対応しようとする点が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015−7339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、底面の溝は、地下構造物が設置される現場の配管等の状況に合わせて施工されるため、その形状や大きさ等は地下構造物毎に異なり、複数に分岐する場合もある等、溝の形態は様々となる。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、溝の形態によっては加圧膨張体が溝に対応した形状に膨張せず、底面の溝を所望の形態に施工することが難しい場合がある。
【0007】
本発明は上記事情に鑑み、底面の溝を所望の形態に施工しやすくする工夫がなされた地下構造物の施工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決する本発明の地下構造物の施工方法は、
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、流路を形成する溝を備えた既設底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、熱可塑性樹脂を素材とする熱可塑性樹脂粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記熱可塑性樹脂粉粒体を、前記既設底面の全部又は一部を覆う状態に配置し、該熱可塑性樹脂粉粒体を加熱することで溶融状態とする工程であることを特徴とする。
【0015】
ここで、前記熱可塑性樹脂粉粒体には、ペレットやチップ等の粒体、ビーズやグラニュール等の顆粒および各種粉体を含み、その粒度は限定されるものではない。
【0016】
前記底面構成材料に前記熱可塑性樹脂粉粒体を用いれば、該熱可塑性樹脂粉粒体を、前記既設底面の全部又は一部を覆う状態に配置すればよいため、様々な形態の溝への対応がより容易になる。
【0017】
また、上記目的を解決する本発明の地下構造物の施工方法は、
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、流路を形成する溝を備えた既設底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、接着剤が付与された粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記接着剤を溶融状態とした前記粉粒体で、前記既設底面の全部又は一部を覆う工程であり、
記材料硬化工程が、前記接着剤を硬化させる工程であることを特徴とする
【0018】
ここで、前記接着剤は、熱硬化型、光硬化型又は水硬化型の接着剤であってもよい。また、前記接着剤は、前記粉粒体を前記既設底面の全部又は一部を覆う状態に配置する前に該粉粒体にコーティングしてもよいし、該既設底面の全部又は一部を覆った状態で該粉粒体に付与してもよい。さらに、前記底面構成材料は、水硬化型の接着剤が付与された粉粒体からなり、前記材料設置工程では、該粉粒体を前記既設底面の全部又は一部に配置する前に、該既設底面の全部又は一部に水を塗布又は散布しておいてもよい。また、前記粉粒体には、ペレットやチップ等の粒体、ビーズやグラニュール等の顆粒および各種粉体を含み、その粒度は限定されるものではない。
【0019】
接着剤が付与された粉粒体を前記底面構成材料に用いれば、該接着剤を硬化させることで前記材料硬化工程が完了し、作業効率を向上させることができる。
【0023】
さらに、上記目的を解決する本発明の地下構造物の施工方法は、
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、平面状の基礎底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、熱可塑性樹脂を素材とする熱可塑性樹脂粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記熱可塑性樹脂粉粒体を、前記基礎底面を覆う状態に配置し、該熱可塑性樹脂粉粒体を加熱することで溶融状態とする工程であり、
前記材料設置工程によって前記基礎底面に設けた前記底面構成材料に溝を形成する溝形成工程を有することを特徴とする
【0024】
ここで、前記材料設置工程と前記溝形成工程は、その全部又は一部を並行して実施してもよい。また、前記溝形成工程と前記材料硬化工程は、その全部又は一部を並行して実施してもよい。
【0025】
この施工方法は、主として、溝を備えた底面を有する地下構造物を新規に設置する場合に用いられる。
【0026】
また、上記目的を解決する本発明の地下構造物の施工方法は、
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有し、
前記底部が、平面状の基礎底面を有するものであり、
前記底面構成材料が、接着剤が付与された粉粒体からなり、
前記材料設置工程が、前記接着剤を溶融状態とした前記粉粒体で、前記基礎底面を覆う工程であり、
前記材料硬化工程が、前記接着剤を硬化させる工程であり、
前記材料設置工程によって前記基礎底面に設けた前記底面構成材料に溝を形成する溝形成工程を有することを特徴とする
【0027】
ここで、前記溝形成工程と前記材料硬化工程は、その全部又は一部を並行して実施してもよいし、該溝形成工程を実施した後に該材料硬化工程を実施してもよい。また、前記接着剤は、熱硬化型、光硬化型又は水硬化型の接着剤であってもよい。さらに、前記接着剤は、前記基礎底面を覆う状態に配置する前に前記粉粒体にコーティングしてもよいし、該基礎底面を覆った状態で該粉粒体に付与してもよい。
【0028】
この施工方法も、主として、溝を備えた底面を有する地下構造物を新規に設置する場合に用いられる。
【0029】
上記目的を解決する本発明の地下構造物は、
流路を形成する溝を備えた底面を有する地下構造物であって、
前記底面が、請求項1〜のうちいずれか1項記載の地下構造物の施工方法によって施工されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、底面の溝を所望の形態に施工しやすくする工夫がなされた地下構造物の施工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の施工方法を実施する前の汚水桝の一例を示す図である。
図2図1に示す汚水桝の既設底面を底面構成材料で被覆する様子を段階的に示す模式図である。
図3図1に示す汚水桝の内周面を被覆部材で被覆する様子を段階的に示す模式図である。
図4】第1変形例における、材料設置工程と材料硬化工程の様子を段階的に示す模式図である。
図5】第2変形例における、材料設置工程と材料硬化工程の様子を段階的に示す模式図である。
図6】第3変形例における、材料設置工程と材料硬化工程の様子を段階的に示す模式図である。
図7】第2実施形態における、汚水桝の底面を施工する様子を段階的に示す模式図である。
図8図7に示す第2実施形態の変形例における、汚水桝の底面を施工する様子を段階的に示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0033】
まず、本発明の地下構造物の施工方法の対象になる地下構造物について説明する。ここにいう地下構造物とは、底面に、流路を形成する溝(インバート)が設けられたものであり、汚水桝、下水桝、排水桝、接続桝等、様々な呼ばれ方をしているが、以下では、汚水桝を例に挙げて説明する。
【0034】
図1は、本発明の施工方法を実施する前の汚水桝の一例を示す図であり、図の左側が上流になり、右側が下流になる。
【0035】
図1(a)は、汚水桝の断面図である。図1(a)に示す汚水桝5は、底塊51の上に3つの側塊521〜523が積み上げられている。以下、3つの側塊のうちの、一番下の側塊を下側塊521、一番上の側塊を上側塊523、真ん中の側塊を中側塊522と区別して称する場合がある。また、上側塊523の上には、異形塊53が載置されている。さらに、異形塊53の上には縁塊54が載せられ、この縁塊54は、汚水桝5の蓋体55を支持する枠体として機能している。底塊51、3つの側塊521〜523、異形塊53、および縁塊54はいずれもコンクリート製であり、それぞれは連結されている。また、蓋体55は鋳鉄製又はコンクリート製である。さらに、3つの側塊521〜523、異形塊53、および縁塊54はいずれも筒状(円筒)であり、内周面501が形成されている。この内周面501が既設縦壁の一例に相当する。なお、3つの側塊521〜523、異形塊53、および縁塊54は、いずれも角桝を構成するもの(角筒)であってもよい。すなわち、縦壁は、曲面に限らず平面であってもよい。
【0036】
図1(b)は、同図(a)に示す底塊を真上から見た図(平面図)である。
【0037】
この底塊51が底部の一例に相当するものであり、図1(b)に示された、底塊51の上面が既設底面の一例に相当する。この既設底面511には、流路を形成する既設の溝(以下、既設インバート511aと称する)が設けられている。図1(b)では、断面形状が円弧状で、上流から下流に向けて直線状に延在した既設インバート511aを実線で示している。インバートの断面形状はU字状であったり、また、図1(b)において一点鎖線で示す既設インバート511a’のように、平面視において湾曲又は屈曲する部分を有する場合もあり、さらには二点鎖線で示す既設インバート511a’’のように分岐部を有する態様など様々である。なお、既設インバート511aの上流側には排水管6が接続され、既設インバート511aの下流側には取付管7が取り付けられている。また、分岐部を有する既設インバート511a’’では、分岐部の下流側にも取付管7が取り付けられる。上述したようにインバートの形態は様々であるが、以下では、説明および図面を単純化するために、図1(b)において実線で示す、断面形状が円弧状で、平面視直線状に延在した既設インバート511aが既設底面511に設けられた態様を例に挙げて説明する。なお、底塊51には、図1(a)に示す下側塊521の下端521bから、既設インバート511aの開口縁に向かって下方に漸次傾斜した既設傾斜面511bが設けられている。
【0038】
図2は、図1に示す汚水桝の既設底面を底面構成材料で被覆する様子を段階的に示す模式図である。図2に示す実施形態が、既設底面を補修する第1実施形態になる。
【0039】
図2(a)および同図(b)は材料設置工程の一例を示している。材料設置工程では、初めにプラグ等を設置して上流側の排水管6(図1参照)を止水した後、図2(a)に示すように、底面構成材料1を、底塊51の既設底面511を覆う状態に敷き詰める。本実施形態では、底面構成材料1として熱可塑性樹脂粉粒体B1を用い、この熱可塑性樹脂粉粒体B1を、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置までにも配置している。
【0040】
本実施形態の熱可塑性樹脂粉粒体B1は、粒径が1mm〜数mm程度、或いは数十mm程度の球状のビーズであり、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂を成形することで製造される。なお、熱可塑性樹脂粉粒体B1は、ビーズに限らず、ペレット、チップ又はグラニュール等でもよく、平均粒径が数十μm〜数百μm程度の粉体であってもよい。
【0041】
次いで、図2(b)に示すように、熱風ファンFから熱風を吹き付けることによって熱可塑性樹脂粉粒体B1を加熱し、熱可塑性樹脂粉粒体B1を溶融状態とする。これにより、底面構成材料1を、溶融状態で既設底面511に設ける材料設置工程が完了する。なお、ビーズ等の粉粒体を底塊51の既設底面511等に敷き詰めた後、図2(a)の一点鎖線で示すように、敷き詰めた粉粒体にホットメルト系の接着剤を上方からかけてもよい。
【0042】
そのまま放置し、或いはファン等から送風して冷却し、図2(c)に示すように底面構成材料1を硬化させる(材料硬化工程)。これにより、既設底面511と、内周面501における、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置までの部分が、硬化底面構成材料1’によって被覆される。また、硬化底面構成材料1’の表面には、既設底面511に対応した形状の底面11と、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置までの部分に対応した立上面12が形成されている。底面11は、既設底面511の既設インバート511aに対応したインバート11aと、既設底面511の既設傾斜面511bに対応した傾斜面11bとを有している。なお、立上面12は必ずしも必要ではなく、底面11のみで構成することもできる。
【0043】
第1実施形態の施工方法によれば、底面構成材料1として熱可塑性樹脂粉粒体B1を採用したため、既設底面511の既設インバート511aの形態にかかわらず、所望の形態のインバート11aを備えた底面11を容易に施工することができる。
【0044】
図3は、図1に示す汚水桝の内周面を被覆部材で被覆する様子を段階的に示す模式図である。この工程は、既設縦壁を補修する工程の一例に相当する。
【0045】
図3(d)に示すように、汚水桝5内には、加圧膨脹体であるパッカー4が設置される。このパッカー4は、フレーム42と、そのフレーム42を外側から覆うゴムスリーブ43と、上側プレート44と、下側プレート45を有する。ゴムスリーブ43は、フレーム42の両端それぞれで周方向に固定されており、フレーム42とゴムスリーブ43の間に圧縮エアが供給されると、ゴムスリーブ43は、このパッカー4の径方向に膨脹する。フレーム42内には、圧縮エアを供給する圧縮エア供給管46が通っており、その圧縮エア供給管46の一端側は上側プレート44になり、他端側はフレーム42とゴムスリーブ43の間に接続している。また、フレーム42内の空間Sには、地上側から加熱エアが供給される。上側プレート44には中央開口441が設けられており、この中央開口441は、空間Sにつながる開口である。なお、図3(d)では、パッカー4が底面11に直接載置されているが、パッカー4の下側プレート45の下方にクッション材を設け、このクッション材を介してパッカー4が底面11に載置される態様としてもよい。
【0046】
図3(d)では、既にパッカー4が汚水桝5内に設置されているが、パッカー4を汚水桝5に設置する前に、地上で、パッカー4のゴムスリーブ43に未硬化被覆部材2を巻き付ける。本実施形態の未硬化被覆部材2は、ガラスマットに熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂を含浸させたものである。未硬化被覆部材2を巻き付ける際には、未硬化被覆部材2の端部どうしが重なり合うようにし、未硬化被覆部材2の下端部分が、パッカー4の下側プレート45辺りまで達するように位置を調整する。
【0047】
パッカー4を汚水桝5内に設置したら、圧縮エア供給管46への圧縮エアの供給を開始する。これによりパッカー4のゴムスリーブ43は径方向に膨脹を始める。ゴムスリーブ43に巻き付けられていた未硬化被覆部材2は、ゴムスリーブ43の膨脹に伴い、端部どうしの重なり量が減り拡径していく。
【0048】
次いで、上側プレート44の中央開口441から空間Sへの加熱エアの供給を開始する。加熱エアは、ジェットヒータ等によって地上側で加熱されたエアであって、空間Sに到達する際には40℃〜70℃程度である。供給された加熱エアによって、フレーム42が加熱される。
【0049】
図3(e)では、パッカー4のゴムスリーブ43が十分に膨脹し、未硬化被覆部材2は、所定の圧力で、汚水桝5の下側塊521から上側塊523にかけての内周面501に押し付けられている。また、未硬化被覆部材2の下端部分が、硬化底面構成材料1’の立上面12に被さっている。
【0050】
このように、パッカー4に圧縮エアを供給し、フレーム42とゴムスリーブ43の間の空間の圧力を所定圧力に所定時間保つとともに、パッカー4の空間Sに加熱エアを所定時間供給し続ける。この結果、未硬化被覆部材2が汚水桝5の内周面501に押し付けられた状態でパッカー4内部から所定時間加熱される。所定時間経過後、パッカー4への圧縮エアおよび加熱エアの供給を停止し、フレーム42とゴムスリーブ43の間の空間の圧力を解放することでゴムスリーブ43を縮める。そして、パッカー4を地上まで引き上げる。
【0051】
図3(f)は、既設底面と内周面(既設縦壁)の補修が完了した汚水桝の断面を示す図である。
【0052】
図3(f)には、硬化底面構成材料1’と、未硬化被覆部材2に含浸されていた未硬化の樹脂が硬化した硬化被覆部材2’とが示されている。また、図3(f)中の細い一点鎖線で丸く囲った箇所は、硬化被覆部材2’と硬化底面構成材料1’の繋ぎ目であり、硬化被覆部材2’の下端部分が硬化底面構成材料1’の立上面12に被さっている。このため、繋ぎ目であっても汚水桝5の内周面501が露出してしまうことがない。
【0053】
次に、図2に示す材料設置工程と材料硬化工程の変形例について説明する。以下に説明する変形例、後述する第2実施形態およびその変形例においては、図2に示す第1実施形態との相違点を中心に説明し、図2に示す第1実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0054】
図4は、第1変形例における、材料設置工程と材料硬化工程の様子を段階的に示す模式図である。
【0055】
第1変形例においては、底面構成材料1として、粉粒体に、エポキシ樹脂系やアクリル樹脂系の熱硬化性接着剤をコーティングした熱硬化性粉粒体B2を採用している。
【0056】
図4(a)に示すように、既設底面511と、内周面501における、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置までの部分を覆うように熱硬化性粉粒体B2を敷き詰める(材料設置工程)。なお、既設底面511等に敷き詰めた粉粒体に対して、図4(a)の一点鎖線で示すように、溶融状態の熱硬化性接着剤を上方からかけてもよい。
【0057】
次いで、図4(b)に示すように、熱風ファンFから熱風を吹き付けることによって熱硬化性粉粒体B2を加熱し、熱硬化性粉粒体B2をコーティングしている熱硬化性接着剤を硬化させる(材料硬化工程)。こうすることで、図4(c)に示すように、既設底面511と、内周面501における、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置までの部分が、硬化底面構成材料1’によって被覆される。
【0058】
本変形例では、熱硬化性粉粒体B2に代えて、エポキシ樹脂系やアクリル樹脂系の光硬化性接着剤がコーティングされた光硬化性粉粒体B3を用いてもよい。さらに、既設底面511等に敷き詰めた粉粒体に対して、図4(a)の一点鎖線で示すように溶融状態の光硬化性接着剤を上方からかけてもよい。光硬化性粉粒体B3を底面構成材料1に用いる場合には、図4(b)に示すように、ライトRから紫外線等を光硬化性粉粒体B3に照射し、光硬化性粉粒体B3をコーティングしている光硬化性接着剤を硬化させることで材料硬化工程を実施する。
【0059】
また、熱硬化性粉粒体B2に代えて、水硬化性ポリウレタン樹脂等の水硬化性接着剤がコーティングされた水硬化性粉粒体B4を用いてもよい。水硬化性粉粒体B4を底面構成材料1に用いる場合には、図4(b)に示すように、ホースHから水硬化性粉粒体B4に対して水を供給し、水硬化性粉粒体B4をコーティングしている水硬化性接着剤を硬化させることで材料硬化工程を実施する。なお、既設底面511等に水を散布又は塗布した後に、粉粒体を既設底面511等に敷き詰め、敷き詰めた粉粒体に対して、図4(a)の一点鎖線で示すように溶融状態の水硬化性接着剤を上方からかけてもよい。この態様の場合には、材料設置工程と材料硬化工程とが並行して実施される。
【0060】
図5は、第2変形例における、材料設置工程と材料硬化工程の様子を段階的に示す模式図である。
【0061】
第2変形例においては、底面構成材料1として、ポリ塩化ビニル等の熱可塑性樹脂を素材とする熱可塑性樹脂シートSH1を採用している。
【0062】
初めに、図5(a)に示すように、既設底面511に熱可塑性樹脂シートSH1を配置する。ここで、熱可塑性樹脂シートSH1は、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置までを覆うことができるような大きさのものを用いる。
【0063】
そして、図5(a)に示すように、熱風ファンFから熱風を吹き付けて熱可塑性樹脂シートSH1を軟化状態とすることで、図5(b)に示すように、熱可塑性樹脂シートSH1が、既設底面511の既設インバート511aや既設傾斜面511b、および下側塊521の下端521b側部分に密着する(材料設置工程)。なお、熱可塑性樹脂シートSH1が既設底面511等に十分に密着しない場合には、図5(b)に示すように、押付棒81等を用いて熱可塑性樹脂シートSH1を既設底面511等に押し付けてもよい。
【0064】
そのまま放置し、或いはファン等から送風することで冷却し、熱可塑性樹脂シートSH1を硬化させる(材料硬化工程)。こうすることで、図5(c)に示すように、既設底面511と、内周面501における、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置までの部分が、硬化底面構成材料1’によって被覆される。
【0065】
図6は、第3変形例における、材料設置工程と材料硬化工程の様子を段階的に示す模式図である。
【0066】
第3変形例においては、底面構成材料1として、炭素、アラミド又はビニロン等からなる連続繊維シートに、水硬性ポリウレタン樹脂等の水硬性樹脂を含浸させた水硬性繊維シートSH2を採用している。
【0067】
図5に示す第2変形例と同様にして、図6(a)に示すように、既設底面511に柔軟な状態の水硬性繊維シートSH2を配置する。そして、図6(b)に示すように、押付棒81等を用いて水硬性繊維シートSH2を、既設底面511の既設インバート511aや既設傾斜面511b、および下側塊521の下端521b側部分に押し付ける(材料設置工程)。
【0068】
次いで、図6(c)に示すように、ホースHから水硬性繊維シートSH2に水を供給し水硬性繊維シートSH2に含浸させた水硬性樹脂を硬化させて材料硬化工程を実施する。
【0069】
なお、既設底面511等に水を噴霧した後に、水硬性繊維シートSH2を配置してもよい。この態様によれば、図6(b)に示す、押付棒81等を用いて水硬性繊維シートSH2を既設底面511等に押し付けることによって、予め噴霧された水と、水硬性繊維シートSH2に含浸させた水硬性樹脂が反応し硬化が進行する。
【0070】
図7は、第2実施形態における、汚水桝の底面を施工する様子を段階的に示す模式図である。この第2実施形態は、新規に設置する汚水桝の底面を施工する方法である。
【0071】
図7(a)に示すように、第2実施形態における汚水桝5の底塊51は、平面状の基礎底面512を有している。また、第2実施形態では、インバートや傾斜面等を備えた所望の底面を形成する型部材9を用意する。この型部材9は、所望の底面の形態に対応した型面911を有する型本体91と、この型本体91に取り付けられた操作ロッド92とを備えている。本実施形態の型本体91は、少なくともその型面911が、例えば金属等の熱伝導率の高い素材で構成されている。
【0072】
まず、基礎底面512上に底面構成材料1を配置する。第2実施形態では、底面構成材料1として、図2に示す第1実施形態と同じ熱可塑性樹脂粉粒体B1を用いており、所望の底面を構成するに十分な量の熱可塑性樹脂粉粒体B1を、汚水桝5の底側に充填する。具体的には、施工する底面の高さ位置を考慮し、下側塊521の下端521bよりも所定高さ上方の位置まで、汚水桝5の底側に熱可塑性樹脂粉粒体B1を充填する。換言すれば、第2実施形態では、底面を所望の形態に施工するにとどまらず、充填する熱可塑性樹脂粉粒体B1の量によって施工する底面の高さ位置を調整することもできる。
【0073】
そして、熱風ファンFから熱風を吹き付けて熱可塑性樹脂粉粒体B1を加熱し、熱可塑性樹脂粉粒体B1を溶融させる。これにより、溶融状態とした熱可塑性樹脂粉粒体B1で基礎底面512を覆う材料設置工程が完了する。なお、ビーズ等の粉粒体を汚水桝5の底側に充填した後、図7(a)の一点鎖線で示すように、充填した粉粒体に対してホットメルト系の接着剤を上方からかけてもよい。
【0074】
次いで、操作ロッド92を操作して型部材9の型面911を底面構成材料1(溶融した熱可塑性樹脂粉粒体B1)に押し付ける。図7(b)は、型部材9の型面911を底面構成材料1に押し付けた様子を示している。これにより、底面構成材料1の表面側部分が型面911に倣い、さらに型面911への接触等によって冷やされて底面構成材料1が硬化する(溝形成工程および材料硬化工程)。
【0075】
所定の養生時間が経過した後、操作ロッド92を操作して、図7(c)の矢印で示すように型部材9を汚水桝5から取り出す。本実施形態によれば、新規に汚水桝5を設置する場合に、インバート11aおよび傾斜面11b等を備えた所望の形態の底面11を容易に施工することができる。
【0076】
なお、硬化底面構成材料1’に微細な孔等が生じてしまう場合があるが、流れてきた下水中の砂や微小なごみが詰まるため通常は問題が生じない。ただし、必要に応じて、硬化底面構成材料1’によって構成された底面11をフィルムやシート等で被覆してもよい。
【0077】
図8は、図7に示す第2実施形態の変形例における、汚水桝の底面を施工する様子を段階的に示す模式図である。
【0078】
図8(a)に示すように、本変形例の型部材9は、型本体91が所定の肉厚で形成された中空のものであり、所望の底面の形態に対応した型面911の裏側に裏面912を有している。また、本変形例では、底面構成材料1として、図4に示す第1実施形態の第1変形例と同じ熱硬化性粉粒体B2を用いており、所望の底面を構成するに十分な量の熱硬化性粉粒体B2を汚水桝5の底側に充填する。なお、ビーズ等の粉粒体を汚水桝5の底側に充填した後、図8(a)の一点鎖線で示すように、充填した粉粒体に対して熱硬化性の接着剤を上方からかけてもよい。これにより、溶融状態の熱硬化性粉粒体B2で基礎底面512を覆う材料設置工程が完了する。
【0079】
次いで、操作ロッド92を操作し、図8(b)に示すように型部材9の型面911を熱硬化性粉粒体B2に押し付け、この状態で、型部材9の裏面912側から熱風ファンFで熱風を吹き付けることで型本体91を加熱する。これにより、熱硬化性粉粒体B2の表面側部分が型面911に倣った状態で加熱され、熱硬化性粉粒体B2をコーテイングしている熱硬化性接着剤が硬化する(溝形成工程および材料硬化工程)。なお、型面911を熱硬化性粉粒体B2に押し付けた状態で型本体91内に熱水を供給することで熱硬化性粉粒体B2を加熱してもよいし、地上で型面911を加熱し、この加熱した型面911を熱硬化性粉粒体B2に押し付けてもよい。また、型本体91に型面911を加熱する加熱手段を設けてもよい。そして、所定の養生時間が経過した後、操作ロッド92を操作して、図7(c)の矢印で示すように型部材9を汚水桝5から取り出す。
【0080】
本変形例では、熱硬化性粉粒体B2に代えて、図4を用いて説明した光硬化性粉粒体B3を底面構成材料1に用いてもよい。光硬化性粉粒体B3を底面構成材料1に用いる場合には、型本体91を光透過性が高い素材で構成する。光透過性が高い素材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、メタアクリル樹脂、エポキシ樹脂、脂環式ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール樹脂など(照射する紫外線を吸収するような紫外線吸収剤や可塑剤等の添加剤を含まないもの)が挙げられる。そして、図8(b)に示すように型部材9の型面911を光硬化性粉粒体B3に押し付けた状態で、型部材9の裏面912側からライトRで紫外線等を照射し、粉粒体をコーティングしている光硬化性接着剤を硬化させることで溝形成工程および材料硬化工程を実施する。
【0081】
また、熱硬化性粉粒体B2に代えて、図4を用いて説明した水硬化性粉粒体B4を底面構成材料1に用いてもよい。水硬化性粉粒体B4を底面構成材料1に用いる場合には、例えば、多孔質のセラミックスや多数の小孔を有する金属板等で構成された、透水性の型本体91を備えた型部材9を用意する。そして、図8(b)に示すように型部材9の型面911を水硬化性粉粒体B4に押し付けた状態で、型部材9の裏面912側からホースHで水を供給し、粉粒体をコーティングしている水硬化性接着剤を硬化させることで溝形成工程および材料硬化工程を実施する。
【0082】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されるものでなく、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、以上説明した実施の形態では、施工対象が汚水桝であったが、流路を形成する溝を底面に備えた地下構造物であれば本発明を広く適用することができる。また、上記第1実施形態では、硬化底面構成材料1’によって、底面11と立上面12とを一体に形成したが、底面11と立上面12とを分割して形成してもよいし、底面11をインバート11aと傾斜面11bとに分割して形成してもよい。さらには、インバート11aのみを第1実施形態の施工方法で施工し、傾斜面11bは、従来の施工方法で施工してもよい。また、上記第2実施形態でも、インバート11aに対応する型部材と、傾斜面11bに対応する型部材をそれぞれ用意し、インバート11aと傾斜面11bを、それぞれの型部材で施工してもよいし、インバート11aのみを本発明の施工方法で施工し、傾斜面11bは、従来の施工方法で施工してもよい。
【0083】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。
以上説明した地下構造物の施工方法は、
地下構造物の底部に、流路を形成する溝を備えた底面を施工する地下構造物の施工方法であって、
前記底面を構成する底面構成材料を、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に設ける材料設置工程と、
前記底面構成材料を硬化させる材料硬化工程とを有することを特徴としてもよい。
ここで、前記底面構成材料は、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底部に配置してもよいし、前記底部に配置した後、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態に状態変化させてもよい。また、前記材料設置工程と前記材料硬化工程は、その全部又は一部を並行して実施してもよい。さらに、前記底面は、平面視円形であってもよいし矩形であってもよい。
この地下構造物の施工方法によれば、前記材料設置工程において、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態で前記底面構成材料を前記底部に設け、前記材料硬化工程において該底面構成材料を硬化させることで、所望の形態の前記溝を備えた前記底面を施工することが可能になる。
また、この地下構造物の施工方法において、
前記底部が、流路を形成する溝を備えた既設底面を有するものであり、
前記材料設置工程が、溶融状態、軟化状態又は柔軟な状態の前記底面構成材料で、前記既設底面の全部又は一部を覆う工程であってもよい。
ここで、前記材料設置工程では、前記既設底面から立設した縦壁の下端よりも上方の位置まで前記底面構成材料を配置してもよい。
この施工方法は、主として、前記既設底面を補修する方法になる。
さらに、この地下構造物の施工方法において、
前記底面構成材料が、熱可塑性樹脂を素材とする熱可塑性樹脂シートからなり、
前記材料設置工程が、前記既設底面に配置した前記熱可塑性樹脂シートを加熱して軟化状態とすることで該熱可塑性樹脂シートを該既設底面の全部又は一部の形状に倣うように設ける工程であってもよい。
また、この地下構造物の施工方法において、
前記底面構成材料が、繊維シートに水硬性樹脂が含浸された水硬性シート材からなり、
前記材料設置工程が、柔軟な状態の前記水硬性シート材を前記既設底面の全部又は一部の形状に倣うように該既設底面に設置する工程であり、
前記材料硬化工程が、前記水硬性シート材に水を付与することで前記水硬性樹脂を硬化させる工程であってもよい。
ここで、前記水硬性樹脂は、水硬性ポリウレタン樹脂であってもよい。また、前記材料設置工程の前に、前記既設底面の全部又は一部に水を塗布又は散布しておくことで、前記材料設置工程と前記材料硬化工程が並行して実施される態様を採用してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 底面構成材料
1’ 硬化底面構成材料
11 底面
11a インバート
11b 傾斜面
12 立上面
51 底塊
511 既設底面
511a 既設インバート
511b 既設傾斜面
521 下側塊
521b 下端
9 型部材
911 型面
91 型面
B1 熱可塑性樹脂粉粒体
B2 熱硬化性粉粒体
B3 光硬化性粉粒体
B4 水硬化性粉粒体
SH1 熱可塑性樹脂シート
SH2 水硬性繊維シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8