特許第6973820号(P6973820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973820
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】すぐれた官能を有する醤油
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/50 20160101AFI20211118BHJP
   A23L 27/24 20160101ALI20211118BHJP
【FI】
   A23L27/50 E
   A23L27/24
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-88248(P2020-88248)
(22)【出願日】2020年5月20日
(62)【分割の表示】特願2018-176875(P2018-176875)の分割
【原出願日】2018年9月21日
(65)【公開番号】特開2020-120691(P2020-120691A)
(43)【公開日】2020年8月13日
【審査請求日】2020年8月24日
(31)【優先権主張番号】特願2018-7230(P2018-7230)
(32)【優先日】2018年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(72)【発明者】
【氏名】天田 愛梨
(72)【発明者】
【氏名】龍崎 博
(72)【発明者】
【氏名】前田 和彦
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−100260(JP,A)
【文献】 特開2005−245433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生醤油および下記(1)〜(3)のいずれかの製造法により製造される濃厚醤油を、体積比(生醤油:濃厚醤油)2:8〜8:2となるように配合することにより、濃厚醤油に代わって濃口醤油を配合した場合と比較して、醤油の酸味を低減し、かつまろやかさ又は旨味を向上させる方法。
(1)醤油麹を食塩水とともに仕込み、発酵熟成過程中であってかつ乳酸発酵終了後に醤油と醤油麹を添加し、更に熟成させることを特徴とする濃厚醤油の製造法。
(2)醤油麹を食塩水とともに仕込み、発酵熟成過程中であってかつアルコール発酵中に醤油と醤油麹を添加し、更に熟成させることを特徴とする濃厚醤油の製造法。
(3)醤油麹を食塩水とともに仕込み、発酵熟成過程中であってかつアルコール発酵終了後に醤油と醤油麹を添加し、更に熟成させることを特徴とする濃厚醤油の製造法。
【請求項2】
前記配合することによる、醤油が、全窒素1%(w/v)あたりのグルタミン酸ナトリウム含有量が0.70〜0.85%(w/v)であり、乳酸含有量が0.20〜0.45%(w/v)であり、かつ酢酸含有量が0.10%(w/v)以下である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記配合することによる、醤油が、さらに、全窒素1%(w/v)あたりの還元糖含有量が2.1〜2.9%(w/v)である、請求項2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、香りがおだやかで、味のまろやかさ、コク、旨みを強く感じられる新たな醤油に関する。
【背景技術】
【0002】
醤油は日本において古くより用いられている調味料であるが、近年、消費者の志向の多様化などから新たな風味・用途を有する醤油や醤油様調味料が求められるようになっている。
【0003】
たとえば、原料として火入れを行っていない「生醤油」の風味を活かした調味料が知られ、具体的には、生醤油や非加熱のみりんを含む酸性液状調味料(特許文献1)、生醤油と野菜、果実を含む液状調味料(特許文献2、3)などがある。
【0004】
生醤油以外にも、発酵熟成過程の諸味に醤油と醤油麹を添加し、さらに熟成させることで得られる、濃厚な味わいと濃口醤油並の香りを有する醤油(特許文献4)や、特定の疎水性アミノ酸の含有量を抑えることで、高温加熱による劣化臭の生成を抑えた醤油(特許文献5)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−118855
【特許文献2】特開2013−99306
【特許文献3】特開2013−31403
【特許文献4】特許第4222487号
【特許文献5】特開2011−45295
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願発明の課題は、上記のような従来の醤油とは異なった特性を持つ、新たな醤油調味料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題を解決すべく本願発明者らは鋭意検討を行った結果、生醤油と濃厚醤油をブレンドして得られる醤油が、まろやかで繊細な味わいを有し、コク、旨みが強く、一方で先に立つ香りが抑えられておだやかであるなど、従来の醤油とは異なる官能特性を有するものであることを見出し、本願発明を完成させた。
【発明の効果】
【0008】
本願発明の醤油は、従来知られてきた醤油と比べて、先に立つ味や香りが柔らかく、味においては甘みや旨み、コク、まろやかさをバランス良く感じられるだけでなく、旨みが余韻として持続して感じられるといった、従来ない官能上の特徴を有する。また、本願発明の醤油におけるすぐれた官能上の特徴は、醤油単体で評価した場合のみならず、加熱せず食材に醤油を和えて喫食する食品や、醤油を使用した調味料で加熱調理する食品に用いた場合にも、大いに発揮されるものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明の醤油は、原料として生醤油および濃厚醤油を含有する。
本願発明で用いる生醤油は、通常の醤油の醸造法によって発酵熟成を行った醤油諸味を圧搾・濾過して得られる清澄な液体であって、そのまま使用してもよいが、必要によりフィルター等で酵母等の微生物を除き、火入れによる殺菌を施していないものをいう。
【0010】
本願発明で用いる濃厚醤油は、全窒素濃度が1.9%(w/v)以上、好ましくは1.95%(w/v)以上、より好ましくは2.0%(w/v)以上の醤油を指す。具体的には、特許文献4に示される醤油や、たまり醤油、再仕込醤油等を用いることができる。より具体的には、本願発明の濃厚醤油とは、下記(1)〜(3)のいずれかの製造法によって得られた醤油であってもよい。
【0011】
(1)醤油麹を食塩水とともに仕込み、発酵熟成過程中であってかつ乳酸発酵終了後に醤油と醤油麹を添加し、更に熟成させることを特徴とする濃厚醤油の製造法。
(2)醤油麹を食塩水とともに仕込み、発酵熟成過程中であってかつアルコール発酵中に醤油と醤油麹を添加し、更に熟成させることを特徴とする濃厚醤油の製造法。
(3)醤油麹を食塩水とともに仕込み、発酵熟成過程中であってかつアルコール発酵終了後に醤油と醤油麹を添加し、更に熟成させることを特徴とする濃厚醤油の製造法。
【0012】
本願発明の濃厚醤油は、上記に挙げたもののうち1種だけを使用してもよく、これらのうち2種以上を混合したものを用いてもよい。
【0013】
本願発明の醤油は、全窒素濃度1.50%(w/v)以上、好ましくは1.65%(w/v)以上、より好ましくは1.80%(w/v)以上であることを特徴とする。全窒素濃度をこれらの範囲に設定することにより、コクや旨みの強い本願発明の醤油の風味が得られる。なお、全窒素濃度は3.0%(w/v)以下とすることが好ましい。また本願発明の醤油は、食塩濃度8〜18%(w/v)とすることが好ましく、当該濃度については、目的とする醤油の風味等に合わせて適宜調整すればよい。
【0014】
本願発明の醤油は、上記生醤油と濃厚醤油を体積比において9:1〜1:9、より好ましくは8;2〜2:8、さらに好ましくは7:3〜3:7の比率で混合することで得られる。なお、混合した醤油を、必要に応じて水や塩水等で適宜希釈してもよい。
【0015】
本願発明の醤油には、上記生醤油および濃厚醤油の他に、生醤油、濃厚醤油以外の濃口醤油、淡口醤油、しろ醤油等の醤油類、食塩、塩化カリウム等の塩味調味料、グルコース、フルクトース、ラクトース、マルトース等に例示される還元糖や液糖、水飴、砂糖等の糖類、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム、グアニル酸ナトリウム等の旨み調味料、アルコール、各種動植物に由来するエキス類などを適宜加えてもよい。
【0016】
本願発明の醤油は、好ましくは、全窒素1%(w/v)あたりのグルタミン酸ナトリウム含有量が0.70〜0.85%(w/v)であり、乳酸含有量が0.20〜0.45%(w/v)であり、かつ酢酸含有量が0.10%(w/v)以下である。より好ましくは、全窒素1%(w/v)あたりのグルタミン酸ナトリウム含有量が0.73〜0.83%(w/v)であり、かつ乳酸含有量が0.3〜0.4%(w/v)である。各成分の定量法については、「しょうゆ試験法」(日本醤油研究所,1985)等に従えばよい。
【0017】
本願発明の醤油は、さらに好ましくは、前記グルタミン酸ナトリウム、乳酸および酢酸の含有量が記載した範囲であることに加え、全窒素1%(w/v)あたりの還元糖含有量が2.1〜2.9%(w/v)であり、より好ましくは2.2〜2.7%(w/v)である。定量法については「しょうゆ試験法」(日本醤油研究所,1985)等に従えばよい。
【0018】
全窒素1%(w/v)あたりの各成分含有量が上記範囲に含まれる醤油は、コクや旨みだけでなく、味のまろやかさが強調される一方、先に立つ香りの強さや酸味のある香りが抑えられ、全体に穏やかでバランスのとれた官能となる。
【実施例】
【0019】
以下、本願発明を実施例等により説明するが、本願発明はこれらによって何ら制限されるものではない。
【0020】
(実施例1:本願発明醤油の評価)
市販の生醤油と濃厚醤油を体積比6:4の割合で混合することにより、本願発明の醤油を得た。濃厚醤油としては、特許文献4の記載に従って得た醤油を用いた。当該醤油調味料と、市販の生醤油および特許文献4の醤油それぞれに関する成分分析を実施した。なお、それぞれの試験区の醤油は、水を添加するなどして全窒素濃度1.85%(w/v)となるよう調整した。分析法は、「しょうゆ試験法」(日本醤油研究所,1985)に従った。
測定結果を、全窒素1%(w/v)あたりに換算した結果を下記表に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
上記各種の醤油調味料について、いずれも全窒素量1.85%(w/v)となるように濃度を調整したうえで、官能評価を実施した。
【0023】
官能評価では、それぞれの味や香りの要素について、市販生醤油を対照(評点3)として、対照よりやや弱い場合には2点、非常に弱い場合には1点、やや強い場合には4点、非常に強い場合には5点として、それぞれ評点をつけた。評価は、十分な訓練を受けた社内パネラー15名によって実施し、全パネラーによる評点の平均を求めた。
結果を下記表に示す。
【0024】
【表2】
【0025】
上記表にあるように、本願発明の醤油は、対照である生醤油と比べて冷涼感のある香り、酸味のある香りとも抑えられていた。また、全体的な香りの強さについては、原料である市販生醤油および濃厚醤油と比べても、本願発明醤油のほうが弱く感じられ、とくに香りを評価したときに先に立って感じられる香りが穏やかであるとの評価であり、全体的に香りはマイルドであった。
【0026】
また、味について検討すると、生醤油と比べて還元糖含有量の多い本願発明の醤油や濃厚醤油では甘みが強く感じられ、本願評価で最も評点が高かった。
さらに、全窒素濃度はいずれの試験区でも同じであるにもかかわらず、まろやかさやコクの評点に差がみられ、いずれも本願発明における評点が最も高くなっていた。本願発明の醤油において、旨みが余韻として持続的に感じられる、まろやかで繊細な味わいを有し、先に立つ味や香りが柔らかい、などの評価もあった。
【0027】
(実施例2:醤油の種別の検討)
本願発明の醤油は、原料として生醤油および濃厚醤油が配合されていることを特徴とする。しかるに、各種の濃厚醤油を用いたときに、好ましい成分値および官能評価が得られるかどうか検討を行った。
【0028】
濃厚醤油としては、(A)たまり醤油(全窒素濃度2.04%(w/v))、(B)再仕込醤油(全窒素濃度2.21%%(w/v))および(C)特許文献4に示される醤油(全窒素濃度2.06%(w/v))を使用した。生醤油と、前記(A)〜(C)の濃厚醤油、さらに対照として濃口醤油(全窒素濃度1.85%(w/v))をいずれも6:4の割合で混合することにより、4種の醤油調味料を調製した。
【0029】
得られた(A)〜(C)の4種の醤油調味料および対照品についての成分分析を実施した。なお、それぞれの試験区の醤油は、水を添加するなどして全窒素濃度1.85%(w/v)、食塩濃度16.4%(w/v)となるよう調整した。分析法は、「しょうゆ試験法」(日本醤油研究所,1985)に従った。
測定結果を、全窒素1%(w/v)あたりに換算した結果を下記表に示す。
【0030】
【表3】
【0031】
上記表に示すように、今回調製した(A)〜(C)の醤油調味料は、全窒素1%(w/v)あたりのグルタミン酸ナトリウム含有量が0.70〜0.85%(w/v)であり、乳酸含有量が0.20〜0.45%(w/v)であり、かつ酢酸含有量が0.10%(w/v)以下の範囲内であるのに対し、対照醤油はいずれの成分の含有値においても範囲外となった。
【0032】
(官能評価)
上記4種の醤油について官能評価を実施した。評価では、それぞれの味や香りの要素について、対象である生醤油+濃口醤油を評点3とし、対照よりやや弱い場合には2点、非常に弱い場合には1点、やや強い場合には4点、非常に強い場合には5点として、それぞれ評点をつけた。評価は、十分な訓練を受けた社内パネラー13名によって実施し、全パネラーによる評点の平均を求めた。官能評価結果を下記表に示す。
【0033】
【表4】
【0034】
上記表に示す通り、(A)、(B)、(C)いずれの場合であっても、生醤油と濃厚醤油を混合して用いると、コクや旨味、甘味が、対照と比べて大きく向上し、酸味は低減されていた。中でもコクは(B)と(C)、旨味は(A)と(C)、甘味は(C)で特に高い傾向がみられた。さらに、(C)については、まろやかさの評点が非常に高かった。
【0035】
香りについては、(B)および(C)では、醤油特有のムレた臭いが抑制されている一方で、醤油の好ましい香り(醤油香)については、対照と比べて高い評価であった。
【0036】
このように、生醤油と各種醤油が配合されている醤油調味料を比較した結果、塩分濃度や、旨味の強さの指標とされる全窒素濃度が同一である場合であっても、濃厚醤油を配合することによって醤油らしい味や香り、コク、旨味、甘味などが向上した。また、その一方で、酸味やムレた臭いが抑えられるなど、全体として好ましい香味を有する醤油を得られることが明らかになった。
【0037】
中でも、(B)再仕込み醤油や、(C)特許文献4に記載されている醤油を用いた場合にはその効果が著しいものとなった。最も好ましい評価となったのは(C)の配合によるものであり、ムレた臭いや酸味は大きく抑えられる一方で、コク、まろやかさ、旨味、甘味がきわめてよく向上しているなど、きわめてすぐれた食味を有する醤油調味料を得ることができた。
【0038】
(実施例3:醤油の配合比率の検討)
生醤油と濃厚醤油の配合比について検討した。具体的には、生醤油と特許文献4記載の醤油を重量比(D)100:0、(E)80:20、(F)65:35、(G)20:80、(H)0:100の配合比でそれぞれ混合し、その後、全窒素1.83%(w/v)、食塩濃度16.3%(w/v)となるよう調整した。各配合例の成分分析値は下記のようになった。
【0039】
【表5】
【0040】
上記(D)〜(H)の醤油調味液について、官能評価を実施した。各種の官能評価では、市販生醤油を対照(評点3)として、対照よりやや弱い場合には2点、非常に弱い場合には1点、やや強い場合には4点、非常に強い場合には5点として、それぞれ評点をつけた。
また、味の順位については、評価した(D)〜(H)の5つの醤油調味液について1位〜5位の順位をつけ、その数値を平均した。評価は、十分な訓練を受けた社内パネラー7名によって実施し、全パネラーにおける平均を求めた。結果を下記表に示す。
【0041】
【表6】
【0042】
上記表に示すように、濃厚醤油の比率が高くなるほど甘味やコク、まろやかさの評点は概ね高くなる傾向がみられた。一方旨味については、生醤油と濃厚醤油の両方を配合しており、かつ生醤油の比率が高い(E)(F)において、評点が高くなる傾向がみられた。また、味の総合順位でみると、(F)で最も数値が低い、すなわち順位が高く、味のバランスにすぐれ、嗜好性が高いことを示す結果となった。
【0043】
このように、生醤油と濃厚醤油を2:8〜8:2の比率で混合して得られた醤油は、甘味やコク、まろやかさと旨味を兼ね備え、一方で酸味が抑制され、ムレた臭いも比較的おだやかであるなど、すぐれた官能的特徴を有する醤油であることが明らかになった。中でも、生醤油と濃厚醤油の比率65:35付近の醤油が、とくに旨味やまろやかさ、コク、甘味と酸味や醤油感のバランスに優れ、その旨味が余韻として持続的に感じられるなど、総合的な味の官能評価における評点も高いものとなっていた。
【0044】
(実施例4:調理適性の検討)
本願発明の醤油の調理適性を調べるため、納豆、豚肉の生姜焼き、大根の煮物を調理し、それぞれの官能を比較した。試料醤油としては、本願醤油(実施例1で用いたものと同一)、市販生醤油および特許文献4の醤油単独を用いた。
【0045】
(1)納豆
市販の納豆(50g)に対し各種の試料醤油4.5mlを加え、よく混ぜた後に官能評価に供した。評点の付け方は実施例2に準じて行い、評価は十分な訓練を受けた社内パネラー12名によって行った。
結果を下記表に示す。
【0046】
【表7】
【0047】
上記表に示すように、本願発明の醤油は、納豆に混ぜて用いると、甘みやコク、まろやかさが強調され、味のバランスも好適に感じられるなど、きわめて良好であった。
【0048】
(2)豚肉の生姜焼き
原料として、各種の試料醤油(45%(w/v))、生姜汁(10%(w/v))、みりん(45%(w/v))を配合した生姜焼きのたれを得た。上記生姜焼きのたれ135mlと和えた豚肉300gをフライパンで焼くことで生姜焼きを調理し、官能評価に供した。評価は十分な訓練を受けた社内パネラー15名によって行った。
官能評価結果を下記表に示す。
【0049】
【表8】
【0050】
上記表に示すように、本願発明の醤油は、豚肉の生姜焼きの調理に用いると、生姜の香りや味の生姜感を強く増強するだけでなく、甘みやまろやかさ、コクが強調され、味のバランスも好適に感じられるなど、大変すぐれたものであった。
【0051】
(3)大根の煮物
原料として、各種の試料醤油(40%(w/v))、みりん(20%(w/v))、だし汁(30%(w/v))、砂糖10%(w/v)を配合した煮物のつゆを得た。大根140g、つゆ90ml、水270mlを加熱することで大根の煮物を調理し、官能評価に供した。評価は十分な訓練を受けた社内パネラー16名によって行った。
官能評価結果を下記表に示す。
【0052】
【表9】
【0053】
上記表に示すように、本願発明の醤油は、大根の煮物の調理に用いると、大根の臭みや苦みを軽減する一方でだしの香りや味が増強されていた。また、甘みや旨み、コクが強調され、味のバランスも好適に感じられた。さらに、大根のやわらかさ、味の染み込みも良好に感じられるなど、きわめてすぐれた官能評価となった。
【0054】
以上実施例に示す通り、生醤油と濃厚醤油が配合されて成り、全窒素1%(w/v)あたりのグルタミン酸ナトリウム含有量が0.70〜0.85%(w/v)であり、乳酸含有量が0.20〜0.45%(w/v)であり、かつ酢酸含有量が0.10%(w/v)以下である本願発明の醤油調味料は、醤油単独で評価すると、甘み、旨み、コクとも生醤油に比べて強く感じられるだけでなく、旨みが持続して感じられ、味のまろやかさやバランスの良さにおいても極めてすぐれていた。それだけでなく、本願発明の醤油は、納豆のような、加熱せずそのまま醤油と和えて食するような食品や、豚の生姜焼き・大根の煮物など醤油と共に加熱して調理に用いるような食品の調理に使用した場合でも、きわめてすぐれた香味を呈するものとなるなど、従来の生醤油や濃厚醤油と異なる、すぐれた官能調理適性を有する新規の醤油調味料であることが判明した。