特許第6973826号(P6973826)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973826マイクロウェーブエネルギを搬送するためのインピーダンス変成器を備えた電気外科器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973826
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】マイクロウェーブエネルギを搬送するためのインピーダンス変成器を備えた電気外科器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   A61B18/18 100
【請求項の数】15
【外国語出願】
【全頁数】32
(21)【出願番号】特願2020-213727(P2020-213727)
(22)【出願日】2020年12月23日
(62)【分割の表示】特願2017-565073(P2017-565073)の分割
【原出願日】2016年6月17日
(65)【公開番号】特開2021-58647(P2021-58647A)
(43)【公開日】2021年4月15日
【審査請求日】2021年1月21日
(31)【優先権主張番号】1510787.3
(32)【優先日】2015年6月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト,マルコルム
(72)【発明者】
【氏名】バーン,パトリック
【審査官】 宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0228244(US,A1)
【文献】 特表2010−505570(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科器具であって、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギを、前記器具の遠位端と接触した、所定の特性インピーダンスを有する組織内に搬送するために構成された前記電気外科器具であって、
第1の内側導電体、前記第1の内側導電体と同軸に形成された第1の外側導電体、及び、前記第1の内側導電体と前記第1の外側導電体とを分ける第1の誘電層を備えた、マイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するための近位の同軸伝送線と、
前記第1の内側導電体に接続された第2の内側導電体、前記第2の内側導電体と同軸に形成されるとともに、前記第1の外側導電体に接続された第2の外側導電体、及び、前記第2の内側導電体と前記第2の外側導電体とを分ける第2の誘電層を備えた、マイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するための遠位の同軸伝送線と、を備え、
前記第2の内側導電体の外径に対する前記第2の外側導電体の内径の比は、前記器具の前記遠位端が前記組織と接触している場合に、前記遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスが、前記近位の同軸伝送線の特性インピーダンスと、前記遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間の中間であるようになっており、
前記遠位の同軸伝送線の長さは、前記所定の動作周波数において、器具の前記遠位端が、前記組織と接触している場合、前記遠位の同軸伝送線が、前記近位の同軸伝送線と、前記遠位の同軸伝送線の前記遠位端における前記負荷インピーダンスとの間のインピーダンスのマッチを向上させるインピーダンス変成器であるようになっており、
前記電気外科器具が、前記第2の内側導電体に接続された第3の内側導電体、前記第3の内側導電体と同軸に形成されるとともに、前記第2の外側導電体に接続された第3の外側導電体、及び、前記第3の内側導電体と前記第3の外側導電体とを分ける第3の誘電層を備えたさらなる遠位の同軸伝送線を備えている、電気外科器具。
【請求項2】
前記遠位の同軸伝送線の長さが(2n+1)λ/4にほぼ等しく、ここで、λは、前記所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギの前記遠位の同軸伝送線内の波長であり、nは0以上の整数である、請求項1に記載の電気外科器具。
【請求項3】
前記電気外科器具が、組織を凝固させるためのものである、請求項1または請求項2に記載の電気外科器具。
【請求項4】
前記第2の内側導電体の前記外径に対する前記第2の外側導電体の前記内径の前記比は、前記器具の前記遠位端が前記組織と接触している場合に、前記遠位の同軸伝送線の前記特性インピーダンスが
【数1】
にほぼ等しく、ここで、Zinが前記近位の同軸伝送線の前記特性インピーダンスであり、ZLが前記遠位の同軸伝送線の前記遠位端における負荷インピーダンスであるようになっている、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項5】
前記さらなる遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスが、前記近位の同軸伝送線の特性インピーダンスと同じである、請求項1から4のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項6】
前記さらなる遠位の同軸伝送線の長さは、前記さらなる遠位の同軸伝送線が、前記所定の作動周波数において、前記組織の前記所定の特性インピーダンスの反応性部分をほぼキャンセルするようになっている、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項7】
前記さらなる遠位の同軸伝送線が剛体である、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項8】
前記電気外科器具が、
前記さらなる遠位の同軸伝送線に並列に接続された、開回路または短絡回路のスタブを備えている、請求項1から7のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項9】
前記スタブの特性インピーダンスが、前記さらなる遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスと同じである、請求項8に記載の電気外科器具。
【請求項10】
前記スタブの特性インピーダンスが、前記さらなる遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスとは異なっている、請求項8に記載の電気外科器具。
【請求項11】
前記電気外科器具が、前記さらなる遠位の同軸伝送線に並列に接続された、前記開回路または短絡回路の複数のスタブを備えている、請求項8から10のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項12】
前記第2の内側導電体の前記外径と、前記第2の外側導電体の前記内径との間の間隔が、前記第1の内側導電体の外径と前記第1の外側導電体の内径との間の間隔未満である、請求項1から11のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項13】
前記第2の誘電層が、前記第1の誘電層よりも高い相対誘電率を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項14】
(a)前記遠位の同軸伝送線が剛体であるか、
(b)前記遠位の同軸伝送が、より幅広である、その近位端から、より細い、その遠位端に向かってテーパが付されているか、
(c)前記近位の同軸伝送線が同軸ケーブルであるか、のうちの少なくとも1つが適用される、請求項1から13のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【請求項15】
前記電気外科器具が、前記所定の作動周波数において、前記近位の同軸伝送線と、前記組織との間の前記インピーダンスのマッチを向上させるための、複数の前記遠位の同軸伝送線を備えている、請求項1から14のいずれか一項に記載の電気外科器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具と接触している組織にマイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するための電気外科器具に関する。本発明は、そのような器具の製造方法にも関する。
【0002】
電気外科器具の主要な用途は止血である場合がある。その場合、デバイスは、血管を予め凝固させるか、出血が生じた際に血管を凝固させるのに使用され得る。このデバイスは主に消化管に使用されることが意図される場合があるが、身体の他の部分に同様に、または代替的に使用され得る。このデバイスは、病巣の切除に、同様に、または代替的に使用され得、臓器の表面上の病巣の切除に特に有用である場合がある。
【背景技術】
【0003】
電気外科器具は、組織の切断、凝固、または切除などの目的のために、生体組織にマイクロウェーブ周波数電磁エネルギを搬送するのに使用される器具である。
【0004】
生体組織の凝固は、たとえば、手術中に組織が切断された後など、主に組織からの出血を止めるため(止血)に、手術の間に有用である。組織の切除は、手術中に、たとえば腫瘍または病巣などの組織を除去/破壊するのに有用である。
【0005】
これら目的のために、マイクロウェーブ周波数エネルギを生体組織に搬送するのに使用できる電気外科器具は、既知であり、過去に、手術の工程において使用されてきている。しかし、本発明者は、マイクロウェーブ周波数エネルギを組織内に搬送することができる既存の電気外科器具は、局所的領域の組織内にマイクロウェーブエネルギを制御しつつ搬送するためには容易に使用できないことを理解している。局所的領域の組織にマイクロウェーブエネルギを制御しつつ搬送することは、たとえば、血管を凝固させるか、胃腸の(消化)管における小さい腫瘍または病巣を切除する場合に、多くの手術状況において有用となる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、たとえば、胃腸の(消化)管などの、組織を凝固させるか、組織のわずかなエリアを切除する目的のために、局所的な方式で、器具と接触している組織内にマイクロウェーブ周波数エネルギを制御しつつ搬送するのに使用できる電気外科器具の要請が存在していることを理解している。
【0007】
本発明者は、組織の局所的な領域にマイクロウェーブ周波数エネルギを制御しつつ搬送することを達成するために有利な方法は、同軸伝送線の露出した端部を組織に対して押圧することにより、同軸伝送線(たとえば、同軸ケーブル)の露出した端部からマイクロウェーブ周波数電磁エネルギを組織に直接結合することになることを理解している。本発明者は、この方式で組織に搬送されたエネルギは、同軸伝送線の露出した端部に隣接し、かつ同軸伝送線の中心軸周りに対称になる、組織のあるエリアに局所化されることを理解している。そのような、マイクロウェーブ周波数エネルギの、組織への局所的な搬送により、たとえば、この局所的な領域または局所的な切除における、組織の制御された凝固を引き起こすことができる。
【0008】
しかし、本発明者は、同軸伝送線の露出した端部と接触した生体組織は、同軸伝送線のインピーダンスに比べ、マイクロウェーブ周波数エネルギに低いインピーダンスを生じる
ことになる(たとえば、同軸伝送線のインピーダンスの1/6)こと、及び、このために、同軸伝送線と生体組織との間に、インピーダンスの著しいミスマッチが生じることになることを理解している。そのようなインピーダンスのミスマッチは、同軸伝送線と組織との間の界面における、マイクロウェーブ周波数エネルギのかなりの割合の反射に繋がることになる。このことは、器具の効率を制限することになり、また、十分なマイクロウェーブエネルギの組織への搬送が妨げられる場合がある。
【0009】
本発明者は、同軸伝送線のインピーダンスを、凝固している組織のインピーダンスによりよくマッチさせるために、同軸伝送線の遠位端にインピーダンス変成器を設けることにより、このインピーダンスのミスマッチの問題を克服することができ、それにより、マイクロウェーブ周波数エネルギが、エネルギが著しく反射されることなく、組織に効率的に結合/搬送されることを理解している。
【0010】
本発明者は、このことが、実際には、第1の同軸伝送線の遠位端に接続されたさらなる同軸伝送線の形態のインピーダンス変成器を提供することにより、同軸伝送線の露出した端部からエネルギを組織に直接結合することの利点を依然として達成しつつ、達成できることを理解している。ここで、さらなる同軸伝送線は、器具の所望の作動周波数において、第1の同軸伝送線のインピーダンスを、凝固することになる組織のインピーダンスによりよくマッチさせるように構成された長さ及び特性インピーダンスを有している。
【0011】
本発明者は、この構成により、エネルギを、マイクロウェーブ周波数エネルギの組織への局所的搬送を制御可能に達成するように、電気外科器具と接触している組織の局所的エリアに直接結合/搬送することができること、及び、組織に搬送されるエネルギの量を、さらなる同軸伝送線によって提供される、よりよいインピーダンスのマッチングによって増大させられることを理解している。
【0012】
したがって、その最も一般的ものとして、本発明は、器具と接触した組織内に、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数電磁エネルギを搬送するための電気外科器具であって、この器具は、第1の同軸伝送線であって、この第1の同軸伝送線の遠位端に接続された第2の同軸伝送線を有する第1の同軸伝送線と、器具が組織と接触している場合に、作動周波数において、第1の同軸伝送線のインピーダンスを、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスによりよくマッチさせるように構成された長さ及び特性インピーダンスを有する第2の同軸伝送線と、を備えた、電気外科器具に関する。
【0013】
本発明の第1の態様によれば、電気外科器具であって、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギを、器具の遠位端と接触した、所定の特性インピーダンスを有する組織内に搬送するために構成された電気外科器具であって、第1の内側導電体、第1の内側導電体と同軸に形成された第1の外側導電体、及び、第1の内側導電体と第1の外側導電体とを分ける第1の誘電層を備えた、マイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するための近位の同軸伝送線と、第1の内側導電体に接続された第2の内側導電体、第2の内側導電体と同軸に形成されるとともに、第1の外側導電体に接続された第2の外側導電体、及び、第2の内側導電体と第2の外側導電体とを分ける第2の誘電層を備えた、マイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するための遠位の同軸伝送線と、を備え、第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比は、器具の遠位端が組織と接触している場合に、遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスが、近位の同軸伝送線の特性インピーダンスと、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間の中間であるようになっており、遠位の同軸伝送線の長さは、所定の動作周波数において、器具の遠位端が、組織と接触している場合、遠位の同軸伝送線が、近位の同軸伝送線と、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間のインピーダンスのマッチを向上させるインピーダンス変成器であるようになっている、電気外科器具が提供される。
【0014】
本発明の第1の態様に係る器具では、遠位の同軸伝送線は、器具の遠位端が組織と接触している場合に、所定の作動周波数において、近位の同軸伝送線のインピーダンスを、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスに良好にマッチさせるインピーダンス変成器として機能する。したがって、組織からのエネルギの反射が低減されることから、この器具は、電磁エネルギを組織内に、より効率的に結合するのに使用することができる。
【0015】
遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンス(load impedance)という用語は、(組織に向かって見る場合に)遠位の同軸伝送線の遠位端から見たインピーダンスを意味している。
【0016】
電気外科器具は、組織を、遠位の同軸伝送線の遠位端と直接接触させ、近位の同軸伝送線の近位端にマイクロウェーブ周波数電磁エネルギを、所定の周波数で提供することにより、マイクロウェーブ周波数エネルギを組織内に結合するのに使用され得る。この場合、同軸伝送線の遠位端が組織と接触している際の遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスは、組織の所定の特性インピーダンスによって判定されることになる。しかし、負荷インピーダンスは、独立した組織内の平面波のインピーダンスとはならず、代わりに、遠位の同軸伝送線の遠位の先端が存在し、組織と接触している組織内の波のインピーダンスとなる。これらのインピーダンスは異なっている。マッチすることになる正確な負荷インピーダンスは、組織の所定の特性インピーダンス、及び、遠位の同軸伝送線の特性に基づいて、シミュレーション、計算、または実験によって判定され得る。
【0017】
代替的には、以下に論じるように、さらなる遠位の同軸伝送線がいくつかの実施形態で提供される場合がある。この場合、電気外科器具は、組織を、さらなる遠位の同軸伝送線の遠位端と直接接触させ、近位の同軸伝送線の近位端にマイクロウェーブ周波数電磁エネルギを、所定の周波数で提供することにより、マイクロウェーブ周波数エネルギを組織内に結合するのに使用され得る。この場合、さらなる遠位の同軸伝送線の遠位端が組織と接触している際の遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスは、組織の所定の特性インピーダンスと、さらなる遠位の同軸伝送線の特性、たとえば、さらなる遠位の同軸伝送線のインピーダンスとの、両方に依存することになる。
【0018】
いずれの場合でも、エネルギは、組織との接触ポイントに隣接する組織の局所的エリアにおいて、組織に、より効率的に結合/搬送され、それにより、マイクロウェーブ周波数エネルギを組織内に制御しつつ搬送することが、この局所的エリアにおいて達成できるようになっている。
【0019】
器具は、特定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギを、特定の特性インピーダンスを有する特定のタイプの組織に搬送するために最適化されている。当然、実際には、器具は、特定の特性インピーダンスに類似の特性インピーダンスを有する異なるタイプの組織で、及び/または、特定の作動周波数に類似の周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギで、許容可能なレベルの性能で使用され得る。
【0020】
「インピーダンスのマッチを向上させる(improve the impedance match)」というフレーズは、器具の遠位端が組織と接触している場合に、第1の同軸伝送線の特性インピーダンスと、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間のインピーダンスのミスマッチを低減することを意味している。「インピーダンスのマッチを向上させる(improve the impedance match)」というフレーズは、インピーダンスのミスマッチに起因する器具の反射損失を低減すること、すなわち、インピーダンスのミスマッチに起因して、組織から反射される(発
生源に向かって戻される)マイクロウェーブ周波数放射の比率またはパーセンテージを低減することを意味する場合がある。
【0021】
「インピーダンスのマッチを向上させる(improve the impedance match)」というフレーズは、器具の遠位端が組織と接触している場合に、第1の同軸伝送線の特性インピーダンスの実数部分(成分)と、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスの実数部分(成分)との間のインピーダンスのミスマッチを低減することを意味する場合がある。
【0022】
換言すると、遠位の同軸伝送線によるインピーダンスのマッチに言及する場合、マッチされることになるインピーダンスは、問題となっているインピーダンスの実数部分(成分)である場合がある。このため、遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスの実数部分は、器具の遠位端が組織と接触している場合に、近位の同軸伝送線の特性インピーダンスの実数部分と、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスの実数部分との間の中間である場合がある。さらに、遠位の同軸伝送線は、器具の遠位端が組織と接触している場合に、近位の同軸伝送線の特性インピーダンスの実数部分と、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスの実数部分との間のインピーダンスのマッチを向上させるインピーダンス変成器である場合がある。
【0023】
近位端(proximal end)という用語は、この明細書を通して、器具の、マイクロウェーブ周波数電磁エネルギがジェネレータから入力される端部に最も近い端部を意味するために使用される。遠位端(distal end)との用語は、この明細書を通して、器具の、マイクロウェーブ周波数エネルギがジェネレータから入力される端部に最も遠い端部を意味するために使用される。換言すると、器具の、マイクロウェーブ周波数エネルギが組織に搬送される端部に最も近い端部である。
【0024】
実際には、組織は、近位の同軸伝送線よりも低いインピーダンスを有すると考えられる。したがって、実際には、遠位の同軸伝送線のインピーダンスは、近位の同軸伝送線のインピーダンスより低いが、組織のインピーダンスより高いと考えられる。たとえば、遠位の同軸伝送線のインピーダンスは、異なるタイプの組織の範囲に適切である場合がある8オームから30オームの間であるか、8オームから15オームの間である場合がある。組織は、以下にさらに詳細に論じるように、そのインピーダンスの反応性(虚数)部分(要素)をも有する場合がある。一実施形態では、遠位の同軸伝送線のインピーダンスは約10オームである場合がある。8オームから15オームの範囲の、遠位の同軸伝送線のインピーダンスは、対象の多くの組織のタイプに適切であり、30オーム以下のインピーダンスは、脂肪に適切である。
【0025】
本発明の第1の態様に係る電気外科器具は、以下の任意選択的特徴のいずれか1つ、または、それらが互換性のある範囲においては、任意の組合せを有する場合がある。
【0026】
第1の内側導電体及び/または第2の内側導電体は中実である場合がある。換言すると、第1の内側導電体及び/または第2の内側導電体は中空ではない。第1の内側導電体及び/または第2の内側導電体は、中実円柱、たとえば、中実ワイヤである場合がある。
【0027】
遠位の同軸伝送線の近位端は、近位の伝送線の遠位端に直接接続されている場合がある。
【0028】
遠位の同軸伝送線は、その中心軸周りに対称である場合がある。このため、器具の作動中の、結果として得られる、遠位の同軸伝送線の遠位端と接触している組織の出力吸収パターンも、遠位の同軸伝送線の中心軸周りに対称である場合がある。
【0029】
近位の同軸伝送線は、その中心軸周りに対称である場合がある。
近位の同軸伝送線及び遠位の同軸伝送線は、それらの中心軸が同一線上に整列された状態で配置され得る。
【0030】
第1の内側導電体及び/または第2の内側導電体(複数可)は、円柱状である場合がある。第1の内側導電体及び/または第2の内側導電体は、単一の金属を含む場合があるか、2つ以上の金属、たとえば、銅及び/または銀でメッキされたスチールワイヤを含む場合がある。
【0031】
第1の外側導電体及び/または第2の外側導電体(複数可)は、筒状である場合がある。第1の外側導電体及び/または第2の外側導電体は、ワイヤブライドから形成される場合がある。ワイヤブライドは、スズでメッキされた銅線から形成される場合がある。
【0032】
遠位の同軸伝送線の長さは、(2n+1)λ/4にほぼ等しい場合がある。ここで、λは、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギの遠位の同軸伝送線内の波長であり、nは0以上の整数である。
【0033】
このため、遠位の同軸伝送線は、器具の遠位端が組織と接触している場合に、近位の同軸伝送線のインピーダンスを、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスに良好にマッチさせる、4分の1波長波インピーダンス変成器として機能する場合がある。
【0034】
遠位の同軸伝送線の長さが(2n+1)λ/4にほぼ等しい場合、長さが長くなると出力の損失が増大することになることから、遠位の同軸伝送線の好ましい長さはλ/4である。しかし、許容可能な性能は、より長い長さで達成することができる。本質的には、遠位の同軸伝送線の実用的(有用な)長さを得ることと、遠位の同軸伝送線の出力の許容可能な損失を得ることとの間のバランスを取ることができる。
【0035】
遠位の同軸伝送線の、(2n+1)λ/4の長さは、所定の動作周波数において、器具の遠位端が、組織と接触している場合、近位の同軸伝送線と、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間の最適なインピーダンスのマッチを提供する場合がある。しかし、許容可能な(最適ではない)インピーダンスのマッチの性能は、正確には(2n+1)λ/4に等しくない長さ、たとえば、(2n+1)λ/4よりも10%以下だけ長いか短い長さ、または、(2n+1)λ/4よりも20%以下だけ長いか短い長さで達成され得る。より長いか短い長さでは、反射され、したがって、組織に搬送されないマイクロウェーブ周波数エネルギの割合は、より大きくなることになり、そのため、電気外科器具の効率はより低くなる。しかし、許容可能な(準最適な)効率が依然として達成され得る。
【0036】
さらに、遠位の同軸伝送線の幾何学形状または組織の負荷の他の態様は、インピーダンスのマッチのために、遠位の同軸伝送線の最適な長さに影響する場合がある。たとえば、遠位の同軸伝送線が急に終端するなどの端部の影響、組織の負荷の性質、ならびに、遠位の同軸伝送線の内側導電体及び外側導電体の直径のステップ状の変化は、インダクタまたはコンデンサなどの集中素子に対する同等の影響を有する場合があり、したがって、伝達線が短くなるか長くなることに類似の影響を有する、わずかな位相の変化をもたらす場合がある。これらの影響は、実際には、(2n+1)λ/4の長さに比べ、遠位の同軸伝送線の長さをわずかに変化させることによって有効にキャンセルされ得る。このため、実際には、インピーダンスのマッチのための、遠位の同軸伝送線の最適な長さは、正確には(2n+1)λ/4に等しくない場合がある。特定の構成に関する遠位の同軸伝送線の最適な長さは、計算、シミュレーション、または実験によって判定され得る。
【0037】
上述のように、遠位の同軸伝送線の最適な長さを判定するための、関連するλは、遠位の同軸伝送線におけるマイクロウェーブ周波数放射の波長である。(2n+1)λ/4に等しくなる長さに関する第2の同軸伝送線の必要な長さは、遠位の同軸伝送線の幾何学形状に少なくとも部分的に依存する。たとえば、遠位の同軸伝送線が(以下に記載する例示的実施形態の1つのような)円錐形状を有する場合、波長は、円錐形状の先端からの距離とともに変化する。この変化は、Bessel関数を使用して数学的に記載することができる。円錐形状の先端に近いと、先端から数波長よりも、波長は著しく長くなる。この変化が考慮されない場合、円錐形状の2つのポイント間で計算された波長の数は、波長の顕著な部分だけ外に出る場合がある。そのような円錐形状では、(2n+1)λ/4の長さに等しい遠位の同軸伝送線の長さは、遠位の同軸伝送線の一様な円筒形状に関する等しい長さよりも大である。
【0038】
電気外科器具は、組織を凝固させるためのものである場合がある。組織を凝固させる(coagulating tissue)という用語は、組織内の血液を凝固させること、たとえば、組織内の血管または管腔内の血液を凝固させることを意味する場合がある。組織の凝固は、マイクロウェーブエネルギを組織内に搬送することによる、組織の加熱を通して達成される。
【0039】
代替的には、電気外科器具は、別の目的のためのものである場合がある。たとえば、電気外科器具は、組織を切除するためのものである場合がある。このため、電気外科器具は、組織を加熱することによってその組織を切除する(組織を破壊するか除去する)ために、遠位の同軸伝送線の遠位端と接触している組織の局所的エリア内にマイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するために構成されている場合がある。このことは、たとえば、生体組織の表面の小さい腫瘍または病巣を除去する場合に有用である場合がある。
【0040】
第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比は、器具の遠位端が組織と接触している場合に、遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスが
【0041】
【数1】
【0042】
にほぼ等しく、ここで、Zinが近位の同軸伝送線の特性インピーダンスであり、Zが遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスであるようになっている場合がある。たとえば、遠位の同軸伝送線の遠位端が、組織に直接接触するために使用される場合、Zは、組織の所定の特性インピーダンスに基づく(具体的には、遠位の同軸伝送線の遠位の先端が存在し、組織に接触している、組織内の波のインピーダンスである)。
【0043】
遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスが
【0044】
【数2】
【0045】
に等しい場合、器具の遠位端が組織と接触しており(遠位の同軸伝送線の最適な長さを仮定する)、マイクロウェーブ周波数エネルギの最大量が組織に搬送される際に、近位の同軸伝送線のインピーダンスは、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスに正確にマッチする場合がある。したがって、この比の値は、特に有利な値である。当然、器具の許容可能な性能は、この値とは異なる、遠位の同軸伝送線のインピーダンスで達成
可能である場合がる。たとえば、電気外科器具の許容可能な(最適ではない)性能は、最適な値より10%以下だけ高いか低い、または最適な値の20%以下だけ高いか低い遠位の同軸伝送線のインピーダンスで達成され得る。
【0046】
第2の内側導電体、第2の外側導電体、及び第2の誘電層は、組織に接触するために、遠位の同軸伝送線の遠位端面において露出している場合がある。このため、マイクロウェーブエネルギは、組織を、遠位の同軸伝送線の露出した端面と接触させることによって組織に結合/搬送され得る。上述のように、この場合、器具の遠位端が組織と接触している場合の遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスは、組織の所定の特性インピーダンスに基づいている(具体的には、負荷インピーダンスは、遠位の同軸伝送線の遠位の先端が存在し、組織に接触している、組織内の波のインピーダンスである)。
【0047】
遠位の同軸伝送線の露出した端面は、遠位の同軸伝送線の中心軸にほぼ垂直である場合がある。
【0048】
遠位の同軸伝送線の露出した端面は、ほぼ平坦である場合がある。
電気外科器具は、第2の内側導電体に接続された第3の内側導電体、第3の内側導電体と同軸に形成されるとともに、第2の外側導電体に接続された第3の外側導電体、及び、第3の内側導電体と第3の外側導電体とを分ける第3の誘電層を備えたさらなる遠位の同軸伝送線を備えている場合がある。
【0049】
第3の内側導電体、第3の外側導電体、及び第3の誘電層は、組織に接触するために、さらなる遠位の同軸伝送線の遠位端面において露出している場合がある。このため、マイクロウェーブ周波数エネルギは、組織を、遠位の同軸伝送線の露出した端面と接触させることによって組織に結合/搬送され得る。上述のように、この場合、さらなる遠位の同軸伝送線の遠位端が組織と接触している際の遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスは、さらなる遠位の同軸伝送線のインピーダンスを含め、組織の所定の特性インピーダンスと、さらなる遠位の同軸伝送線の特性との、両方に依存する。
【0050】
さらなる遠位の同軸伝送線は、同軸ケーブルの長さである場合がある。さらなる遠位の同軸伝送線は、近位の同軸伝送線と同じタイプの同軸ケーブルを備える場合がある。
【0051】
さらなる遠位の同軸伝送線の断面は、近位の同軸伝送線の断面と同じである場合がある。たとえば、第1の内側導電体の直径と第3の内側導電体の直径とは同じである場合があり、第1の外側導電体の直径と第3の外側導電体の直径とは同じである場合がある。
【0052】
さらなる遠位の同軸伝送線は、近位の同軸伝送線と同じ材料で形成される場合がある。
さらなる遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスは、近位の同軸伝送線の特性インピーダンスと同じである場合がある。たとえば、近位の同軸伝送線と、さらなる遠位の同軸伝送線とは、両方とも50オームのインピーダンスを有する場合がある。
【0053】
さらなる遠位の同軸伝送線の長さは、さらなる遠位の同軸伝送線が、所定の作動周波数において、組織の所定の特性インピーダンスの反応性部分をほぼキャンセルするようになっている場合がある。このため、さらなる遠位の同軸伝送線は、所定の特性インピーダンスの反応性部分をキャンセルし、遠位の同軸伝送線は、その後の純粋な実数のインピーダンスと、近位の同軸伝送線の特性インピーダンスの実数部分とをマッチさせる(または、それらの間のマッチを向上させる)。このため、インピーダンスの実数部分と反応性部分との両方は、遠位の同軸伝送線と、さらなる遠位の同軸伝送線との組合せによって説明される。
【0054】
上述のように、近位の同軸伝送の特性インピーダンスの実数部分にマッチする、後の純粋な実数のインピーダンスは、さらなる遠位の同軸伝送線のインピーダンスを含め、組織の所定の特性インピーダンスと、さらなる遠位の同軸伝送線の特性との、両方に依存する。
【0055】
さらなる遠位の同軸伝送線の適切な長さは、所望の実施態様のパラメータ、たとえば、組織の負荷の特性と、マイクロウェーブ放射の特性に基づく計算によって判定され得る。適切な長さは、コンピュータシミュレーション/モデリング、または実験によっても判定され得る。
【0056】
さらなる遠位の同軸伝送線は、剛体である場合がある。換言すると、さらなる遠位の同軸伝送線は、可撓性ではない場合がある。これにより、さらなる遠位の同軸伝送線が、圧力下で器具の先端が変形することなく、組織に対して押圧することができる、剛性の器具の先端を形成することから、電気外科器具の動作の間、助けになる場合がある。
【0057】
電気外科器具は、さらなる遠位の同軸伝送線に並列に接続された、開回路または短絡回路のスタブ(stub)を備えている場合がある。スタブは、遠位の同軸伝送線の遠位端に接続されている場合がある。スタブの特性(たとえば、スタブの長さ及び特性インピーダンス)は、組織の所定の特性インピーダンスの反応性部分をキャンセルするように選択される場合がある。スミスチャート(Smith Chart)に関しては、さらなる遠位の同軸伝送線は、インピーダンスの反応性部分を、一定のコンダクタンス円上に移動するように考慮され、遠位の同軸伝送線に接続された開回路または短絡回路のスタブは、遠位の同軸伝送線の近位端において見られる反応性インピーダンス(+/−jB)を無効にするかキャンセルする。
【0058】
スタブの特性インピーダンスは、さらなる遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスと同じである場合がある。代替的には、スタブの特性インピーダンスは、さらなる遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスと同じではない場合がある。
【0059】
電気外科器具は、さらなる遠位の同軸伝送線に並列に接続された、複数の開回路スタブまたは短絡回路スタブを備えている場合がある。
【0060】
遠位の同軸伝送線は、剛体である場合がある。換言すると、遠位の同軸伝送線は、可撓性ではない場合がある。これにより、遠位の同軸伝送線が、圧力下で器具の先端が変形することなく、凝固されることになる組織に対して押圧することができる、剛性の器具の先端を形成することから、電気外科器具の動作の間、助けになる場合がある。
【0061】
所定の作動周波数は、5.8GHzである場合がある。
換言すると、遠位の同軸伝送線の長さは、5.8GHzの所定の動作周波数において、器具の遠位端が組織と接触している場合、遠位の同軸伝送線が、近位の同軸伝送線と、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間のインピーダンスのマッチを向上させるインピーダンス変成器であるようになっている場合がある。たとえば、遠位の同軸伝送線の長さは、(2n+1)λ/4にほぼ等しい場合がある。ここで、λは、5.8GHzの所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギの遠位の同軸伝送線内の波長である。
【0062】
5.8GHzは、たとえば、組織の凝固を達成するように、局所的エリアにおける組織内にマイクロウェーブ周波数エネルギを制御可能に搬送することを達成するための、適切な周波数である。
【0063】
第2の内側導電体の外径と、第2の外側導電体の内径との間の間隔は、第1の内側導電体の外径と第1の外側導電体の内径との間の間隔未満である場合がある。換言すると、第2の誘電層の厚みは、第1の誘電層の厚みよりも小である場合がある。遠位の同軸伝送線の内側導電体と外側導電体との間の間隔を低減することの利点は、遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスがより小さくされることである。
【0064】
しかし、代替的実施形態では、第2の内側導電体の外径と、第2の外側導電体の内径との間の間隔は、代わりに、特に、二酸化チタンなどの高絶縁定数の材料が第2の誘電層内に使用されている場合に、第1の内側導電体の外径と、第1の外側導電体の内径との間の間隔より大である場合がある。
【0065】
第2の内側導電体の外径は、第1の内側導電体の外径より大である場合がある。換言すると、第2の内側導電体は第1の内側導電体より幅広である場合がある。代替的には、第2の内側導電体の外径は、第1の内側導電体の外径より小である場合がある。換言すると、第2の内側導電体は第1の内側導電体より細い場合がある。
【0066】
第2の外側導電体の外径は、第1の外側導電体の外径より大である場合がある。換言すると、第2の外側導電体は第1の外側導電体より幅広である場合がある。代替的には、第2の外側導電体の外径は、第1の外側導電体の外径より小である場合がある。換言すると、第2の外側導電体は第1の外側導電体より細い場合がある。
【0067】
第1の内側導電体と第2の内側導電体との間、または、第1の外側導電体と第2の外側導電体との間に、直径の差が存在する場合、遠位の同軸伝送線の長さをわずかに調整して、直径の段差または複数の段差の影響を補償する場合がある。調整の適切なサイズは、実験的に、またはシミュレーションにより、計算されるか、検索されるか、判定され得る。
【0068】
第1の内側導電体と第2の内側導電体との間、及び、第1の外側導電体と第2の外側導電体との間に、直径の差が存在する場合、各内側導電体間の直径の段差の軸方向の位置は、直径の各段差の影響を補償するために、外側導電体間の直径の段差の軸方向の位置とは異なる場合がある。
【0069】
遠位の同軸伝送線は、近位の同軸伝送線よりも大である外径を有する場合がある。換言すると、遠位の同軸伝送線は、近位の同軸伝送線よりも幅広である場合がある。
【0070】
第2の誘電層は、第1の誘電層とは異なる誘電材料で形成される場合がある。第2の誘電層は、第1の誘電層よりも高い相対誘電率を有する場合がある。たとえば、第2の誘電層は、MACORなどの、ガラスセラミック誘電材料で形成される場合がある。第1の誘電材料は、PTFEである場合がある。第2の誘電層に、より高い相対誘電率の誘電体を使用することにより、同じ厚みの第2の誘電層に関する、第2の誘電層のインピーダンスがより低くなる結果となる。
【0071】
近位の同軸伝送線の特性インピーダンスは、50オームである場合がある。
近位の同軸伝送線は、同軸ケーブルである場合がある。たとえば、同軸ケーブルは、Sucoform 86の同軸ケーブル、または、Sucoform 47の同軸ケーブルである場合がある。
【0072】
遠位の同軸伝送線は、同軸ケーブルである場合がある。
遠位の同軸伝送線は、そのより広い近位端から、そのより細い遠位端に向かってテーパが付されている場合がある。換言すると、遠位の同軸伝送線は、その近位端からその遠位端に向かって、線形的に細くなり、それにより、遠位端が近位端よりも細くなっている場
合がある。このことは、遠位の同軸伝送線が円錐台形状を有する結果となる場合がある。遠位の同軸伝送線の遠位端は、近位端の直径の半分の直径を有する場合がある。遠位の同軸伝送線のこの構成により、遠位の同軸伝送線の遠位端において、組織のより小さいエリアにマイクロウェーブエネルギが搬送される結果となる。マイクロウェーブ周波数エネルギの組織内への搬送の、このさらなる局所化は、いくつかの外科上の工程において、たとえば、小さい管を凝固させることを試みる場合、または、わずかな表面の腫瘍または病巣を切除することを試みる場合に、特に有用である場合がある。
【0073】
代替的実施形態では、遠位の同軸伝送線は、代わりに、そのより広い遠位端から、そのより細い近位端に向かってテーパが付されている場合がある。換言すると、遠位の同軸伝送線のテーパは、すぐ上に記載したものとは逆方向である場合がある。
【0074】
当然、遠位の同軸伝送線の他の形状も可能である。
遠位の同軸伝送線がテーパ状である場合、第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比は、遠位の同軸伝送線に沿ってほぼ一定であり、それにより、遠位の同軸伝送線のインピーダンスは、その長さに沿ってほぼ一様になっている場合がある。
【0075】
器具が、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギを、45オームから180オームの範囲、または45オームから60オームの範囲の、所定の特性インピーダンスを有する組織に搬送するために構成されている場合がある。たとえば、対象となっている多くの組織は、約45オームから約60オームの間のインピーダンスを有する場合がある。爪は、約120オームのインピーダンスを有する場合があり、脂肪及び骨は、約180オームのインピーダンスを有する場合がある。上述のように、組織は、そのインピーダンスに対する反応性(虚数)成分をも有する場合がある。
【0076】
電気外科器具は、所定の作動周波数において、近位の同軸伝送線と、組織との間のインピーダンスのマッチを向上させるための、複数の遠位の同軸伝送線を備えている場合がある。換言すると、直列に接続された、複数の遠位の同軸伝送線が存在する場合があり、それらの各々は、所定の作動周波数において、近位の同軸伝送線と、組織との間の、インピーダンスのマッチを向上させるように(内径と外径との比、及び、長さに関して)構成されている。この構成は、近位の同軸伝送線の特性インピーダンスが、組織のインピーダンスと著しく異なっている場合に特に有利である場合があり、この理由は、インピーダンスのマッチが、複数の遠位の同軸伝送線にわたって次第に/徐々に行われ得るためである。
【0077】
本発明の第2の態様によれば、
任意選択的に、上述の1つまたは複数の任意の特徴を有する、本発明の第1の態様に係る電気外科器具と、
近位の同軸伝送線の近位端に接続された電気外科ジェネレータと、を備え、
電気外科ジェネレータが、近位の同軸伝送線に、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数電磁エネルギを供給するように構成されている、電気外科システムが提供され得る。
【0078】
たとえば、コントローラは、近位の同軸伝送線に、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギを供給するように、予め設定されているか、プログラムされている場合がある。
【0079】
電気外科システムは、組織を凝固させるため、または組織を切除するためのものである場合がある。
【0080】
電気外科システムは、電気外科ジェネレータを制御するためのコントローラを備える場
合があり、このコントローラは、組織に搬送されるマイクロウェーブ周波数エネルギの量を所定の量未満に制限するために、ジェネレータによって供給されるマイクロウェーブ周波数エネルギの出力及び/または持続時間を制御するように構成されている場合がある。
【0081】
たとえば、このコントローラは、マイクロウェーブ周波数エネルギの出力及び/または継続時間を制御して、組織に搬送されるマイクロウェーブ周波数エネルギの量を、組織の穿孔、またはいくつかの他の望ましくない影響が生じ始めると知られている量より下、または、この量の下の安全な許容範囲の量より下に維持するように構成され得る。このため、コントローラは、たとえば、このリミットに達した場合にジェネレータがマイクロウェーブエネルギを供給することを停止することにより、ジェネレータがこれよりも多くのエネルギを供給することを防止するように作動する。
【0082】
穿孔、または、マイクロウェーブ周波数エネルギのいくつかの他の望ましくない影響が生じ始めるマイクロウェーブ周波数エネルギの量は、たとえば計算または実験から、予め知られている場合がある。したがって、コントローラは、器具を使用して処置されることになる組織のタイプ、及び、たとえば凝固または切除など、必要とされる処置のタイプに関する関連情報で、予めプログラムされている場合がある。たとえば、コントローラは、組織に供給することができるマイクロウェーブエネルギの上限に関する特定の値で、予めプログラムされ得る。代替的には、コントローラは、その組織に関するジェネレータによって供給され得る、出力と持続時間との特定の組合せでプログラムされ得る。
【0083】
このため、組織の穿孔またはいくつかの他の望ましくない影響が生じないことの確信を伴って器具を使用することが可能である場合がある。このことは、臨床上の設定においては、重要な考慮事項である。
【0084】
電気外科システムは、組織に搬送されたマイクロウェーブ周波数エネルギの量を示す情報を検知するためのセンサを備えている場合がある。たとえば、センサは、組織に向かって伝達されるマイクロウェーブ周波数エネルギの振幅、及び、組織から反射されるマイクロウェーブ周波数エネルギの振幅を検知する場合があり、また、この情報を使用して、組織に搬送されるエネルギ量を判定する場合がある。当然、この機能は、単一のセンサの代わりに、複数のセンサによって実施され得る。
【0085】
コントローラは、ジェネレータを、4秒までの期間、15Wの出力を提供するように制御するように構成されている場合がある。本発明者は、このことが、組織の穿孔、または他の望ましくない影響を安全に避けつつ、組織の凝固を達成するために、組織に十分なエネルギが搬送される結果となることを理解している。
【0086】
本発明の第3の態様によれば、任意選択的に、上述のいずれか1つまたは複数の任意の特徴を有する、本発明の第1の態様に係る電気外科器具の製造方法が提供され得る。本方法は、
器具の遠位端が組織と接触している場合に、近位の同軸伝送線の特性インピーダンスと、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間の中間である、遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスの結果となる、第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比を判定することと、
第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比を、判定された比になるように設定することと、
器具の遠位端が、組織と接触している場合に、遠位の同軸伝送線が、近位の同軸伝送線と、遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスとの間のインピーダンスのマッチを向上させるインピーダンス変成器である結果となる、遠位の同軸伝送線の長さを判定することと、
遠位の同軸伝送線の長さを、判定された長さに設定することと、を含んでいる。
【0087】
本発明の第3の態様に係る方法は、特定の作動周波数において、特定のタイプの組織を凝固させるために使用されるのに最適化された電気外科器具を製造するために使用され得る。
【0088】
本方法によれば、特定の作動周波数において器具の遠位端が組織と接触している場合の、遠位の同軸伝送線の内側導電体の直径と外側導電体の直径との比、及び、遠位の同軸伝送線の遠位端における、特定の負荷インピーダンスに対する良好なインピーダンスのマッチに必要な、遠位の同軸伝送線の長さが判定される。このため、遠位の同軸伝送線の計算された特性を有する電気外科器具が製造される。結果として得られる電気外科器具は、特定の作動周波数における特定の特性インピーダンスを有する特定の組織を凝固させる際に使用するのに最適化される。
【0089】
本発明の第3の態様に係る方法は、以下の任意選択的特徴のいずれか1つ、または、それらが互換性のある範囲においては、2つ以上を有する場合がある。
【0090】
本方法は、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギの遠位の同軸伝送線における波長λを判定することと、判定された波長λに基づき、遠位の同軸伝送線を、(2n+1)λ/4にほぼ等しくなるように設定することであって、nが0以上の整数である、設定することと、を含む場合がある。上述のように、このことは、近位の同軸伝送線と組織との間の最適なインピーダンスのマッチを達成することに関し、遠位の同軸伝送線の(概ね)最適な長さになり得る。
【0091】
本方法は、
【0092】
【数3】
【0093】
にほぼ等しい、遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスをもたらす、第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比を判定することであって、器具の遠位端が組織と接触している場合に、Zinが近位の同軸伝送線の特性インピーダンスであり、Zが遠位の同軸伝送線の遠位端における負荷インピーダンスである、判定することと、第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比を、判定された比になるように設定することと、を含む場合がある。上述のように、遠位の同軸伝送線のこのインピーダンスは、最適なインピーダンスのマッチを提供し得る。
【0094】
波長を判定すること、及び/または比を判定することには、波長及び/または比を計算することが含まれる場合がある。代替的には、波長を判定すること、及び/または比を判定することは、表、データベース、または他のプログラムもしくはドキュメント内の関連する情報を見つける/検索することを含み得る。
【0095】
本方法は、
【0096】
【数4】
【0097】
を計算することと、遠位の同軸伝送線の特性インピーダンスが
【0098】
【数5】
【0099】
に等しくなる、第2の内側導電体の外径に対する第2の外側導電体の内径の比を計算することと、を含む場合がある。近位の同軸伝送線の特性インピーダンスは、計算されるか、測定されるか、たとえば、表、データベース、またはデータシートが検索される場合がある。ターゲットの組織の特性インピーダンスは、同様に、計算されるか、測定されるか、たとえば、表、データベース、またはデータシートが検索される場合がある。
【0100】
本方法は、第2の誘電層の相対誘電率に基づき、所定の作動周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギの、遠位の同軸伝送線における波長を計算することを含む場合がある。このため、波長は、第2の誘電層内の誘電材料の相対誘電率の情報、及び、既知の物理的定数に基づいて計算され得る。
【0101】
電気外科器具がさらなる遠位の同軸伝送線を備えている場合、本方法は、組織の所定の特性インピーダンスの反応性部分がキャンセルされる結果となる、さらなる遠位の同軸伝送線の長さを判定することと、さらなる遠位の同軸伝送線の長さを、判定された長さにほぼ等しくなるように設定することと、を含む場合がある。
【0102】
上述の態様のいずれかにおける、第1、第2、または第3の誘電材料のいずれかは、空気などの気体であるか、固体、または液体である場合がある。
【0103】
本発明の各実施形態をここで、例としてのみの目的で、添付図面を参照して論じる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
図1】肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明の一実施形態に係る電気外科器具のコンピュータシミュレーションを示す図である。
図2図1に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。
図3】肝臓組織の表面に垂直な角度に対するある角度の器具での、肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明の一実施形態に係る電気外科器具のさらなるコンピュータシミュレーションを示す図である。
図4図3に示すさらなるコンピュータシミュレーションに関する、3つの異なる角度の器具の、マイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。
図5】肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明のさらなる実施形態に係る電気外科器具のコンピュータシミュレーションを示す図である。
図6図5に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。
図7】肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明のさらなる実施形態に係る電気外科器具のコンピュータシミュレーションを示す図であり、第1の同軸伝送線と第2の同軸伝送線とは、図1の実施形態よりも細い。
図8図7に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図。
図9】肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明のさらなる実施形態に係る電気外科器具のコンピュータシミュレーションを示す図であり、第2の同軸伝送線は、図1の実施形態よりも細い。
図10図9に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。
図11】本発明のさらなる実施形態に係る、電気外科器具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
上述のように、本発明者は、局所的な領域における組織に、マイクロウェーブ周波数放射を制御しつつ搬送することを達成するために有利な方法は、同軸伝送線の露出した端部を組織に対して押圧することにより、同軸伝送線(たとえば、同軸ケーブル)の露出した端部からマイクロウェーブ周波数エネルギを組織に直接結合することであることを理解している。
【0106】
しかし、本発明者は、同軸伝送線の露出した端部と接触した生体組織は、同軸伝送線のインピーダンスに比べ、マイクロウェーブ周波数エネルギに対して低いインピーダンスを生じること、及び、このために、同軸伝送線と生体組織との間に、インピーダンスの著しいミスマッチが生じることを理解している。
【0107】
本発明者は、この問題が、同軸伝送線のインピーダンスを、組織のインピーダンスによりよくマッチさせるために、同軸伝送線の遠位端にインピーダンス変成器を設け、それにより、マイクロウェーブ周波数エネルギが、エネルギの著しい反射を少なくしつつ、組織に、より効率的に結合/搬送されることによって克服することができることを理解している。
【0108】
本発明者は、このことは、実際には、第1の同軸伝送線の遠位端に接続されたさらなる同軸伝送線の形態のインピーダンス変成器を提供することにより、同軸伝送線の露出した端部からのエネルギを組織に直接結合することの利点を依然として達成しつつ達成できることを理解している。ここで、さらなる同軸伝送線は、さらなる同軸伝送線の遠位端において、第1の同軸伝送線のインピーダンスを、負荷インピーダンスによりよくマッチさせるように構成された長さ及び特性インピーダンスを有している。
【0109】
したがって、図1に示す本発明の第1の実施形態では、その近位の(後部側)端部から、その遠位の(前部側)端部にマイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するための第1の(近位の)同軸伝送線3を備えた電気外科器具1が提供されている。さらに、その近位の(後部側)端部から、その遠位の(前部側)端部にマイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するための第2の(遠位の)同軸伝送線5が提供されている。第2の同軸伝送線5は、その近位端において第1の同軸伝送線3の遠位端に接続され、それにより、マイクロウェーブ周波数エネルギが第1の同軸伝送線3から第2の同軸伝送線5に直接搬送できるようになっている。
【0110】
第1の同軸伝送線3と第2の同軸伝送線5とは、両方とも、それぞれの伝送線の中心軸周りに対称になっている。さらに、第1の同軸伝送線3と第2の同軸伝送線5とは、端部と端部とが互いに整列され、それにより、それらの中心軸が同じ線上にあるようになっている。
【0111】
第1の同軸伝送線3は、円柱状の第1の内側導電体7、筒状の第1の外側導電体9、及び、第1の内側導電体7と第1の外側導電体9とを分ける筒状の第1の誘電層11を備えている。第1の誘電層11は、第1の内側導電体7の外側表面上に直接設けられており、第1の外側導電体9は、第1の誘電層11の外側表面上に直接設けられている。
【0112】
この実施形態では、第1の同軸伝送線は、50オームのSucoform 86の同軸ケーブルである。第1の内側導電体7は、0.53mmの直径を有し、第1の外側導電体9は、1.65mmの内径を有し(したがって、第1の誘電層11は1.65mmの外径
を有している)、第1の外側導電体9は、2.1mmの外径を有している。当然、他の実施形態では、異なる寸法及び性質を有する異なるタイプの同軸ケーブル、または、異なるタイプの同軸伝送線が代わりに使用され得る。
【0113】
この実施形態では、第1の誘電層11は、2.1の相対誘電率を有するPTFEから形成されている。当然、他の実施形態では、異なる誘電材料が使用され得る。
【0114】
この実施形態では、第1の内側導電体7は、金属ワイヤである。具体的には、第1の内側導電体7は、銅及び銀でメッキされたスチールワイヤである。第1の外側導電体9は、金属のブライドである。具体的には、第1の外側導電体9は、スズでメッキされた銅線から形成されたブライドである。当然、他の実施形態では、異なる材料が、第1の内側導電体7及び第1の外側導電体9に使用され得る。
【0115】
第1の同軸伝送線3の長さは、以下に記載する器具1の動作には重要ではなく、器具1が使用されることが意図されている特定の環境に基づいて選択され得る。
【0116】
第2の同軸伝送線5は、円柱状の第2の内側導電体13、筒状の第2の外側導電体15、及び、第2の内側導電体13と第2の外側導電体15とを分ける筒状の第2の誘電層17を備えている。第2の誘電層17は、第2の内側導電体13の外側表面上に直接設けられており、第2の外側導電体15は、第2の誘電層17の外側表面上に直接設けられている。
【0117】
この実施形態では、第2の内側導電体13は、1.2mmの直径を有しており、このことは、第2の内側導電体13が第1の内側導電体7より幅広であることを意味している。また、第2の外側導電体15は、1.8mmの内径を有している(したがって、第2の誘電層17は1.8mmの外径を有している)。第2の外側導電体15の外径は、第1の外側導電体9の外径より幅広である。当然、他の実施形態では、第2の内側導電体13及び第2の外側導電体15は、異なる寸法を有する場合がある。この実施形態では、第2の外側導電体15の外径は2.5mmである。
【0118】
この実施形態では、第2の誘電層17は、ガラスセラミックの誘電体である。具体的には、第2の誘電層17は、MACOR(登録商標)であり、5.67の相対誘電率を有している(この値は、周波数に依存している場合があり、このため、電気外科器具が使用されるマイクロウェーブ放射の特定の周波数に依存する場合がある)。当然、他の実施形態では、異なる誘電材料が代わりに使用され得る。
【0119】
第2の内側導電体13は、ステンレス鋼の中実円柱を含み得る。第2の内側導電体13の外側表面は、銀でコーティング、たとえばメッキされ得る。当然、他の材料が第2の内側導電体13に使用され得る。
【0120】
第2の外側導電体15は、ステンレス鋼の中空の筒を含み得る。第2の外側導電体15の内側表面は、銀でコーティング、たとえばメッキされ得る。当然、他の材料が第2の外側導電体15に使用され得る。
【0121】
第2の内側導電体13は、第1の内側導電体7の遠位端に、それらの中心軸が整列した状態で接続されている。第2の外側導電体15も、第1の外側導電体9の遠位端に、それらの中心軸が整列した状態で接続されている。このため、マイクロウェーブ周波数エネルギが第1の同軸伝送線3から第2の同軸伝送線5に搬送できるようになっている。したがって、第1の同軸伝送線3と第2の同軸伝送線5とは、中心軸が重なっている場合がある。
【0122】
この実施形態では、第2の誘電層は、第1の誘電層よりも薄い。
第2の内側導電体13、第2の外側導電体13、及び第2の誘電層17は、第2の同軸伝送線5の平坦な遠位端面において露出している。第2の同軸伝送線5の平坦な遠位端面は、以下にさらに記載するように、組織内にマイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するために、組織に対して押圧することができる。
【0123】
図1に示す電気外科器具1は、特定の周波数を有するマイクロウェーブエネルギを使用して、特定のインピーダンスを有する特定のタイプの組織を凝固させるように構成することができる。このことは、第2の同軸伝送線5の長さと、第2の内側導電体13の直径に対する第2の外側導電体15の内径の比を、第2の同軸伝送線5が、第1の同軸伝送線3の特性インピーダンスを組織の特性インピーダンスに、特定の周波数においてよりよくマッチさせるインピーダンス変成器として機能するように構成することによって達成される。
【0124】
インピーダンス変成器の理論は、よく知られているとともに、本技術分野で理解されており、したがって、本明細書においては、詳細な説明は繰り返さない。
【0125】
好ましくは、第2の同軸伝送線5は、第1の同軸伝送線3のインピーダンスを組織のインピーダンスに正確にマッチさせ、それにより、マイクロウェーブエネルギの最大量が組織に搬送されるように構成される。当然、電気外科器具1の許容可能な性能は、インピーダンスを正確にマッチさせることなく達成され得る。この理由は、わずかなインピーダンスのミスマッチ(たとえば、10%以下、または20%以下)が、わずかな量のマイクロウェーブエネルギのみが反射して、組織から離れることに繋がり得るためである。
【0126】
第2の同軸伝送線5が、第1の同軸伝送線3の特性インピーダンスを肝臓組織の特性インピーダンスに、所定の作動周波数においてよりよくマッチさせるインピーダンス変成器として機能するための、2つの要件が存在する。第1に、第2の同軸伝送線5の長さは、第2の同軸伝送線5が、所定の作動周波数において、第1の同軸伝送線3と組織との間のインピーダンスのマッチを向上させるインピーダンス変成器であるようにしなければならない。たとえば、第2の同軸伝送線は、(2n+1)λ/4にほぼ等しい長さを有し得る。第2に、第2の同軸伝送線5のインピーダンスは、第1の同軸伝送線3のインピーダンスと、凝固される組織のインピーダンスとの間の中間でなければならない。最適なインピーダンスのマッチのためには、第2の同軸伝送線5のインピーダンスが
【0127】
【数6】
【0128】
にほぼ等しくなければならない。ここで、Zinは、第1の同軸伝送線3の特性インピーダンスであり、Zは、組織の所定の特性インピーダンスである。
【0129】
第2の誘電層17の誘電材料では、マイクロウェーブ周波数エネルギは、速度vで伝達する。ここでは以下のようになる。
【0130】
【数7】
【0131】
ここで、Cは光速であり、μは誘電材料の相対透過率であり、εは誘電材料の相対誘
電率(絶縁定数)である。
【0132】
誘電材料を、非磁性であり、したがって、1の相対透過率を有すると推定すると、マイクロウェーブ周波数エネルギは、第2の誘電層17内において、ある速度で伝達する。
【0133】
【数8】
【0134】
したがって、第2の誘電層17内におけるマイクロウェーブ周波数エネルギの波長λは、以下によって与えられる。
【0135】
【数9】
【0136】
ここで、fはマイクロウェーブ周波数エネルギの周波数である。
このため、方程式(3)を使用することで、所望の作動周波数を有するマイクロウェーブエネルギの第2の同軸伝送線5内における波長が、誘電材料の相対誘電率(絶縁定数)に基づいて判定され得る。誘電材料の相対誘電率は、検索されるか、計算されるか、実験によって見出され得る。このため、(2n+1)λ/4に等しい第2の同軸伝送線5の長さは、容易に判定することができる。また、電気外科器具1内の第2の同軸伝送線5の長さは、計算された長さにほぼ等しく設定することができる。
【0137】
代替的には、上述のように、第2の同軸伝送線5の最適な長さは、この値とは異なる場合がある。この理由は、この長さが、やはり、第2の同軸伝送線5の特定の幾何学形状によって影響を受ける場合があるためである。このため、最適な長さは、場合によっては、上述のように計算された第2の同軸伝送線5における波長を使用することに加え、第2の同軸伝送線5の幾何学形状に基づいて計算され得る。代替的には、最適な長さは、シミュレーションまたは実験に基づいて判定され得る。最適な長さは、反射損失を最小にする、すなわち、反射されたマイクロウェーブ周波数エネルギの量または比率を最小にする長さである。このことは、第1の同軸伝送線3と組織との間のインピーダンスのマッチを最大にすることに対応している。当然、第2の同軸伝送線の実際の長さは、正確な最適長さである必要はなく、この理由は、他の類似の長さによっても、許容可能な(最適ではない)性能が与えられ得るためである。
【0138】
同軸ケーブルのインピーダンスは、方程式(4)によって与えられる。
【0139】
【数10】
【0140】
ここで、μは誘電材料の相対透過率であり、εは、誘電材料の相対誘電率(絶縁定数)であり、Dは外側導電体の内径であり、dは内側誘電体の外径である。誘電材料を、非磁性であり、したがって、1の相対透過率を有すると推定すると、同軸伝送線のインピーダンスは、方程式(5)によって与えられる。
【0141】
【数11】
【0142】
方程式(5)によれば、同軸ケーブルのインピーダンスは、特定の相対誘電率を有する特定の誘電材料に関し、もっぱら、内側導電体の外径に対する外側導電体の内径の比によって判定される。このため、方程式(5)を使用して、特定のインピーダンスを有する同軸ケーブルを提供するための、内側導電体の外径に対する外側導電体の内径の必要な比を計算することができる。
【0143】
このため、方程式(5)は、第2の内側導電体13の外径に対する第2の外側導電体15の内径の比を計算するために使用することができる。このことは、第2の同軸伝送線5の特性インピーダンスが、第1の同軸伝送線3の特性インピーダンスと組織との間の中間になる結果となり、また、電気外科器具の比は、計算された値に設定することができる。
【0144】
好ましくは、比が計算され、このことが、第2の同軸伝送線5の特性インピーダンスが
【0145】
【数12】
【0146】
にほぼ等しくなる結果となる。ここで、Zinは、第1の同軸伝送線の特性インピーダンスであり、Zは、組織の所定の特性インピーダンスである。この理由は、このことが、第1の同軸伝送線と組織との間で正確にインピーダンスをマッチさせ、したがって、組織に搬送されるマイクロウェーブエネルギの量を最大にするためである。
【0147】
第2の内側導電体及び第2の外側導電体の適切な特定の直径は、変数の数に基づいて判定され得る。この変数には、第1の同軸伝送線1の対応する直径、マイクロウェーブ周波数エネルギが搬送される組織の幾何学形状、及び、マイクロウェーブ周波数エネルギの周波数が含まれる。
【0148】
図1に示すコンピュータシミュレーションでは、電気外科器具1は、5.8GHzの特性周波数を有するマイクロウェーブ周波数エネルギを使用して、肝臓組織を凝固させるために構成されている。当然、他の実施形態では、所望の作動周波数は異なる場合があり、及び/または、凝固される所望の組織(及び対応する特性インピーダンス)は異なる場合があり、及び/または、器具は、切除などの、凝固とは異なる効果を得るためのものである場合がある。
【0149】
このコンピュータシミュレーションでは、50オームのSucoform 86ケーブルを、簡略化のために、10mmの長さのものとしてモデル化した。
【0150】
シミュレーションは、3.3GHzから8.3GHzのバンド幅で、5.8GHzの中心周波数のCST Microwave Studioを使用して行った。肝臓の負荷は、遠位の同軸伝送線の開回路端部に対して直接付してモデル化した。肝臓の負荷のインピーダンスは、58+j10.6オームとしてモデル化した。このことは、第2の同軸伝送線5内のMACOR誘電体に関する5.67の絶縁定数に比べ、およそ38の絶縁定数を有するものとして肝臓の負荷をモデル化することに対応している。
【0151】
最初は、2.5mmの外径を有する第2の同軸伝送線5に関し、直径1mmの第2の内側導電体13と、1.65mmの外径の第2の誘電層17を選択した。これらパラメータ
を使用して、様々なシミュレーションを実施することにより、肝臓組織に搬送されるマイクロウェーブエネルギの量を最大にするための第2の同軸伝送線5の理想的な長さが、9mmに近いことがわかった。
【0152】
第2の同軸伝送線5の長さを9mmに設定すると、第2の内側導電体13の外径と第2の誘電層17の外径が変化した。また、1.2mmの外径の第2の内側導電体13と、1.8mmの外径の第2の誘電層17とが、合理的なバンド幅の5.8GHzの作動周波数において、肝臓組織に良好にマッチすることがわかった。
【0153】
電気外科器具の性能は、組織内の吸収パターンと、望ましくない方向における放射のレベルを判定するために、シミュレーションにおいてチェックした。そして、性能が許容可能なものだとわかった。
【0154】
図1は、器具1の遠位端と接触している肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明の一実施形態に係る電気外科器具1のコンピュータシミュレーションを示す図である。第2の同軸伝送線5の長さ及び直径のパラメータは、上で判定された最適なパラメータに設定した。
【0155】
シミュレーションにおける、肝臓組織21内の出力吸収パターン19は、遠位の同軸伝送線5の遠位端に直接接触している肝臓組織21のエリアに局所化しており、第1の同軸伝送線と第2の同軸伝送線とで共有されている中心軸周りに円形に対称になっていることが、図1から見ることができる。
【0156】
この結果は、本発明により、組織のそのエリア内において、制御しつつ局所的に凝固させるために、電気外科器具と接触している組織内に出力を、制御しつつ局所的に搬送することを達成することが可能であることを証明している。
【0157】
図2は、図1に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。本技術分野でよく知られているように、S−パラメータは、インピーダンスのミスマッチに起因するマイクロウェーブエネルギの反射損失の測定値であり、それとして、S−パラメータは、インピーダンスのミスマッチの度合いを示している。S−パラメータは、方程式(6)によって規定することができる。
【0158】
=SP (6)
ここで、Pは、組織に向かって出て行く、器具内の出力であり、Pは、組織から外に反射された出力であり、SはS−パラメータである。
【0159】
図2に示すように、シミュレーションの結果では、5.8GHzの所望の作動周波数に関し、インピーダンスが非常に良好にマッチしている。このことは、シミュレーションにおける、このマイクロウェーブエネルギの周波数において、肝臓組織から外に反射されたマイクロウェーブエネルギがほとんどないことを意味している。このことは、電気外科器具の遠位の同軸伝送線の長さ及び直径のパラメータを上述のように構成することにより、遠位の同軸伝送線の遠位端と接触している組織の所望の局所的なエリア内に、電気外科器具によって搬送されるマイクロウェーブエネルギの量を最大にすることができることを証明している。
【0160】
そのように良好にマッチさせることは、実際には達成が困難である場合があるが、これらの結果は、インピーダンスの許容可能なマッチが、異なる(しかし類似の)相対誘電率の異なる組織の領域にわたって達成可能である場合があることをも示している。たとえば
、より低いが依然として許容可能な、−15dBのS−パラメータは、肝臓組織よりもわずかに高いか低いインピーダンスを有する、異なるタイプの組織で達成され得る。
【0161】
遠位の同軸伝送線の遠位端の角のみが組織と接触するように器具を傾けることの影響を判定するために、さらなるシミュレーションを行った。遠位の同軸伝送線の遠位端と、組織の表面との間の角度が1度より大である角度に関し、マッチが低減されることがわかった。5度の傾きに関してシミュレーションされた吸収パターンが図3に示されており、1度、2度、及び5度の傾きに関するS−パラメータ(反射損失)が図4に示されている。
【0162】
図3に示すように、電気外科器具の一部のみが組織と接触するように電気外科器具を傾ける場合、マイクロウェーブの出力は、接触している、組織のより小さい局所的なエリアに搬送される。図3に示すように、出力搬送パターン22は、図1の出力搬送パターン19よりもより小さく、より局所的である。
【0163】
5度の傾きに関しては、出力が放射された。すなわち、この傾きでは、電気外科器具を出るが、意図した組織には入らず、入力出力に比べて−23.18dB、すなわち、約0.5%だった。反射損失は−0.84dBだった。すなわち、出力の約17.5%のみが、電気外科器具の適用された端部を出た。この出力の約97%は、意図された組織に吸収された。
【0164】
図4に示すように、器具の中心軸と、組織表面に垂直な方向との間の角度/傾きの量が増大すると、反射損失が著しく増大する。このことは、より多くのマイクロウェーブの出力が反射され、組織に搬送されるマイクロウェーブの出力がより少なくなることを意味している。したがって、電気外科器具は、これら傾きの角度がより高いと、効率が低下することになるが、マイクロウェーブエネルギは、より小さいエリアに集中することになる。
【0165】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電気外科器具23のコンピュータシミュレーションの結果を示す図である。この第2の実施形態に係る電気外科器具23は、第2の実施形態においては、第2の同軸伝送線25が、より幅広な近位端27からより細い遠位端29に向かってテーパが付いていることから、第1の実施形態に係る電気外科器具1とは異なっている。この実施形態では、遠位端29は、近位端27の約半分の直径を有している。
【0166】
具体的には、この実施形態では、第2の同軸伝送線の遠位端29において、第2の内側導電体の直径は0.6mmであり、第2の誘電層の直径は0.9mmであり、第2の外側導電体の外径は1.25mmである。
【0167】
この実施形態では、内側導電体の外径に対する外側導電体の内径の比は、遠位の同軸伝送線の長さに沿って一定に維持されており、それにより、遠位の同軸伝送線のインピーダンスは、その長さに沿って一定になるようになっている。さらに、組織と接触している遠位の同軸伝送線の露出した遠位端の比率は、図1の実施形態と同じである。
【0168】
図5に示すように、この方式でテーパが付けられている第2の同軸伝送線25の利点は、第2の同軸伝送線25の遠位端において、組織のより小さいエリアにマイクロウェーブエネルギが搬送されることである。このことは、図1における出力吸収パターン19と、図5における出力吸収パターン31とを比較することによって見ることができる。このため、マイクロウェーブエネルギの搬送は、第2の実施形態において、より局所化される。このことは、たとえば、エネルギの搬送を、特定のエリアまたはタイプの組織、たとえば血管または管腔に集中させることが所望である場合、特に有用である場合がある。
【0169】
図6は、図5に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。このシミュレーションでは、第2の同軸伝送線25の長さを第1の実施形態の9mmから10mmに延ばし、それにより、5.8GHzの所望の作動周波数において、反射損失を最小にするようにした。第2の同軸伝送線の長さの変化は、マイクロウェーブ周波数エネルギの波長が、第2の同軸伝送線のこのテーパが付けられた幾何学形状では、より長くなることから、必要であった(このことは、第2の同軸伝送線の最適な長さが、λ/4の奇数倍ではない例である)。
【0170】
図6から、反射損失が、図1に示す実施形態よりもより顕著であることが明らかである(図6図2とを比較されたい)。このことは、第2の同軸伝送線の幾何学形状(たとえば、長さ、及び直径の比)が、肝臓の負荷組織には完全に最適化されていなかったことが原因である場合がある。したがって、第2の同軸伝送線の幾何学形状をより最適化することにより、第2の同軸伝送線のこの幾何学形状で、より低い反射損失を達成することが可能である場合がある。
【0171】
しかし、器具25の性能は、この反射損失で依然として良好であり、このため、器具25を、組織を凝固させるために、首尾良く使用することができる。また、上述したように、この実施形態には、出力が組織の、より少ない体積に搬送される利点がある。
【0172】
この実施形態における第2の同軸伝送線25の、テーパが付けられた性質のさらなる利点は、この実施形態において、遠位の先端がより細いことから、同軸伝送線25の遠位端を、第1の実施形態よりも組織内にさらに押圧することが可能である点である。
【0173】
第2の実施形態の他の特徴は、第1の実施形態と同じであり、その記載は、簡潔化のため、ここでは繰り返さない。
【0174】
マイクロウェーブ周波数エネルギの、組織のより局所的領域への搬送は、図1に示す第2の同軸伝送線の円柱形状を維持することによっても達成され得るが、より細い同軸伝送線を使用する。この類似性は、マイクロウェーブ周波数エネルギを、組織のより局所的エリアに搬送するために、第2の同軸伝送線の遠位端がより細くなる結果となる。
【0175】
図7は、肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明のさらなる実施形態に係る電気外科器具のコンピュータシミュレーションを示す図であり、第1の同軸伝送線と第2の同軸伝送線とは、図1の実施形態よりも細い。図7に示す器具の構成は、第1の同軸伝送線及び第2の同軸伝送線の寸法は別にして、図1に示した器具の構成に類似している。図1に示す実施形態からの差異のみをここで論じる。
【0176】
図7の実施形態では、第1の同軸伝送線は、Sucoform 47の同軸ケーブルである。Sucoform 47の同軸ケーブルは、上述のSucoform 86の同軸ケーブルと同じ材料を含むが、寸法が異なっている。具体的には、Sucoform 47のケーブルでは、内側導電体が0.31mmの外径を有し、PTFE誘電層が0.94mmの外径を有し、また、外側導電体が1.20mmの外径を有している。Sucoform 47のケーブルは、50オームの特性インピーダンスを有している。
【0177】
より幅広のSucoform 86のケーブルに比べ、Sucoform 47を第1の同軸伝送線として使用することの潜在的な欠点は、Sucoform 47のケーブルの損失がより大きく、このため、器具の効率が低くなることである。しかし、Sucoform 47を使用することの利点は、第1の同軸伝送線と第2の同軸伝送線との間の結合部における第1の同軸伝送線と第2の同軸伝送線との相対的割合が、第2の同軸伝送線
の直径がより細いにもかかわらず、前に記載した各実施形態に類似していることである。
【0178】
第2の同軸伝送線は、図1よりも細い円柱状伝達線である。具体的には、第2の内側導電体は0.702mmの外径を有し、第2の誘電層は1.053mmの外径を有し、第2の外側導電体は1.462mmの外径を有している。
【0179】
図7に示すように、この実施形態における第2の同軸伝送線5の、より細い性質は、マイクロウェーブ周波数エネルギの、肝臓組織内へのより局所的な搬送に繋がる(異なる縮尺を考慮しつつ、図1図7とを比較されたい)。
【0180】
図8は、図7に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。図6図8とを比較することによって見ることができるように、この実施形態に関する反射損失は、図5に示す、テーパが付けられた実施形態の反射損失に匹敵する。
【0181】
図9は、肝臓組織を凝固させるのに使用される、本発明のさらなる実施形態に係る電気外科器具のコンピュータシミュレーションを示す図であり、第2の同軸伝送線は、図1の実施形態よりも細い。図10は、図9に示すコンピュータシミュレーションに関するマイクロウェーブ放射の周波数に対する、S−パラメータ(反射損失)の大きさのプロットを示す図である。
【0182】
図9に示す器具の構成は、第2の同軸伝送線の寸法は別にして、図1に示す器具の構成に類似している。図1に示す実施形態からの差異のみをここで論じる。
【0183】
図9に示す実施形態における第1の同軸伝送線は、図1の実施形態におけるように、Sucoform 86の同軸ケーブルである。しかし、第2の同軸伝送線はより細く、また、図7の実施形態と同じ寸法を有している。換言すると、第2の内側導電体は0.702mmの外径を有し、第2の誘電層は1.053mmの外径を有し、第2の外側導電体は1.462mmの外径を有している。図9に示すように、マイクロウェーブ周波数エネルギの、組織内へのより局所的な搬送は、図9において第2の同軸伝送線の遠位の先端がより細いことから、図1の実施形態よりも、図9の実施形態で達成することができる。
【0184】
図10は、より細いSucoform 47のケーブルの代わりに、より幅広のSucoform 86のケーブルを使用して第2の同軸伝送線に給電する場合、反射損失が許容可能であることを示している。
【0185】
より幅広のSucoform 86の同軸ケーブルを第1の同軸伝送線として使用することの利点は、このケーブルにおいて、出力損失がより低いことである。したがって、器具の効率は、Sucoform 86のケーブルを第1の同軸伝送線として使用する場合、より高くなる。
【0186】
図1図5図7、及び図9の第2の同軸給電ケーブルの遠位の先端の寸法は、参照を容易にするために、以下の表1に並べている。
【0187】
【表1】
【0188】
当然、代替実施形態では、各寸法は表1に与えられた寸法とは異なっている場合がある。
【0189】
まとめると、本発明のすべての実施形態により、電気外科器具と直接接触している組織の局所的領域に、マイクロウェーブエネルギを効率的に結合する電気外科器具が提供される。
【0190】
マイクロウェーブエネルギの組織への搬送は、電気外科器具の遠位端(たとえば、第2の同軸伝送線の遠位端)と組織との間の接触が良好である場合、著しく向上する。電気外科器具がある角度にあり、それにより、電気外科器具の遠位端の少なくとも一部と組織との間に空隙が存在するようになっている場合、反射損失は、特に1度より大である角度に関して、低減され得る。
【0191】
すべての実施形態では、非常に少ない出力が、反射損失に関わらず、望ましくない方向(換言すると、プローブと接触している組織のエリア内とは異なる任意の方向)に放射される。
【0192】
すべての実施形態では、電気外科器具が、第2の同軸伝送線の遠位端の縁部に近い、非常に小さい組織片を凝固させるように、ある角度において組織と接触するために使用され得る。
【0193】
さらに、組織の加熱がより集中した領域は、第2の同軸伝送線の遠位端において、組織のより小さいエリアにマイクロウェーブエネルギを搬送するために、テーパが付けられた第2の同軸伝送線を使用することによっても獲得され得る。
【0194】
組織内への、マイクロウェーブ周波数エネルギのより集中した搬送は、より細い円柱状の第2の同軸伝送線を使用することによっても達成することができる。出力の損失を低減するために、より細い第2の同軸伝送線には、より幅広の第1の同軸伝送線によって給電される場合がある。
【0195】
図11は、本発明のさらなる実施形態の概略図である。前に記載した各実施形態のように、この実施形態では、電気外科器具は、第1の同軸伝送線3及び第2の同軸伝送線5を備えている。図11に示す第1の同軸伝送線3及び第2の同軸伝送線5は、例示的構成に過ぎず、代わりに、第1の同軸伝送線及び第2の同軸伝送線は、別の構成(形状、サイズなど)、たとえば、上述し、図1から図10に示した他の実施形態の他の例示的構成の1つを有していてもよい。
【0196】
この実施形態では、電気外科器具は、第3の同軸伝送線33を備えている。第3の同軸伝送線33は、第2の内側導電体に接続された第3の内側導電体、第3の内側導電体と同軸であるとともに、第2の外側導電体に接続された第3の外側導電体、及び、第3の内側
導電体と第3の外側導電体とを分ける第3の誘電材料層を備えている。
【0197】
第3の同軸伝送線33は、第1の同軸伝送線3及び第2の同軸伝送線5と軸方向に整列している(同軸である)。
【0198】
第3の内側導電体、第3の外側導電体、及び第3の誘電材料層は、第3の同軸伝送線33の平坦な遠位端面において露出している。使用時には、図11に示すように、第3の同軸伝送線33の遠位端面は、以下により詳細に記載するように、組織内にマイクロウェーブ周波数エネルギを搬送するために、組織に対して押圧することができる。このため、この実施形態では、前に記載した実施形態におけるような第2の同軸伝送線5の遠位端ではなく、第3の同軸伝送線33の遠位端が、器具の遠位端を形成している。
【0199】
第3の同軸伝送線33は、組織35のインピーダンスの反応性部分(虚数成分)を除去するように構成されている。組織35のインピーダンスの反応性部分が除去されると、第2の同軸伝送線5は、後のほぼ純粋に実数のインピーダンスを、第1の同軸伝送線3のインピーダンスにマッチさせる。このため、組織35のインピーダンスの実数部分と反応性(虚数)部分との両方のインピーダンスのミスマッチの影響は、考慮されるとともに、この実施形態で対処される。
【0200】
この実施形態では、第3の同軸伝送線33は、第1の同軸伝送線3と同じインピーダンス(たとえば、50オーム)を有している。事実、この実施形態では、第3の同軸伝送線33は、第1の同軸伝送線3と同じタイプの同軸ケーブルである。
【0201】
組織35のインピーダンスの反応性部分をキャンセル/除去するための、第3の同軸伝送線33の適切な長さは、たとえばスミスチャート(Smith Chart)を使用して、組織及び第1の同軸伝送線のインピーダンス、ならびに、マイクロウェーブ周波数放射の周波数などの変数に基づき、数学的に判定することができる。第3の同軸伝送線の計算された長さが、実用には短すぎる場合、λ/2の倍数を計算された長さに加算して、実用的により適切な長さを判定することができる。第3の同軸伝送線の適切な長さは、代替的に、コンピュータシミュレーション/モデリング、または実験によって判定され得る。
【0202】
実施例として、第3の同軸伝送線の適切な長さは、組織のインピーダンス(負荷)を(10−j10)Ω、第1の同軸伝送線のインピーダンスを50Ωと仮定して、以下のステップを使用して判定され得る。
【0203】
(1)組織のインピーダンスを第1の同軸伝送線のインピーダンスに対して正規化する。
【0204】
【数13】
【0205】
(2)正規化されたインピーダンスをスミスチャート上にプロットし、VSWRの円を記述する。
【0206】
(3)正規化された負荷を実数rの軸に対して回転させ、負荷から発生源に向かって波長の動きを記す。これにより、負荷のインピーダンスの反応性(虚数)成分が除去される。
【0207】
(4)Δλが実用上で実現するには短すぎる場合、実用的な長さが達成されるまで、nλ/2をこの長さに加算する。
【0208】
組織のインピーダンスの反応性部分がキャンセルされると、後のほぼ純粋な実数のインピーダンスが、適切に構成された第2の同軸伝送線により、第1の同軸伝送線のインピーダンスにマッチされ得る。具体的には、スミスチャートは、実数rの軸から値を見つけるのに使用することができる。ここで、負荷は、純粋な実数値のみを有し(このことは、中心の左または右に向かうものである場合がある)、また、この値は次いで、第1の同軸伝送線のインピーダンスで乗算することによって正規化して、第1の同軸伝送線のインピーダンスにマッチされる実数のインピーダンスを見つけることができる。
【0209】
以下は、組織のインピーダンス(負荷)を(10−j10)Ω、第1の同軸伝送線のインピーダンスを50Ωと仮定しての、図11の実施形態に関するシンプルな数字の実施例である。
【0210】
スミスチャートを使用して上述の各ステップを実施することにより、第3の同軸伝送線の所望の長さが0.033λと判定され、負荷が純粋な実数値のみを有する場合、実数r軸からの値はrnew=0.19となる結果となる。第2の同軸伝送線5により、第1の同軸伝送線3のインピーダンスにマッチする、正規化された負荷は、このため、Znew=0.19×50Ω=9.5Ωと判定される。第2の同軸伝送線5の最適なインピーダンスは、このため、以下のように判定され得る。
【0211】
【数14】
【0212】
第2の内側導電体及び第2の外側導電体に適切な直径は、次いで、この値及び方程式(6)に基づいて判定され得る。
【0213】
マイクロウェーブの周波数を5.8GHz、第2の誘電材料を、相対誘電率1.5のPTFEと仮定すると、第2の同軸伝送線5の最適な長さ、すなわちλ/4は、方程式(3)を使用して、10.56mmと判定され得る。この長さが実用には短すぎる場合、λ/2の倍数をこの長さに加算することによって増大させることができ、31.68mmの長さになる。
【0214】
上述のように、この実施例における第3の同軸伝送線33の所望の長さは0.033λであり、このことは、1.39mmの長さに対応する。やはり、この長さが実用には短すぎる場合、λ/2の倍数をこの長さに加算することによって増大させることができ、22.51mmの長さになる。
【0215】
以下は、本発明の各実施形態におけるインピーダンスのマッチに関する要請を示す、シンプルな数字の実施例である。この実施例は、組織のインピーダンスが(12−j15)Ωであり、50Ωのインピーダンスの単一の同軸伝送線が組織に対して押圧されると仮定している。
【0216】
インピーダンスがマッチしていないと、反射されることになる出力量は、以下のようになる。
【0217】
【数15】
【0218】
組織の負荷に搬送される出力の割合は、このため、以下によって与えられる。
P=(1−0.731)=0.466
このため、インピーダンスのマッチが存在しないと、出力の47%のみが負荷に搬送されることになり、このことは、電気外科器具が比較的非効率であることを意味している。搬送された出力は、上述の本発明の各実施形態のようなインピーダンスのマッチを実施することによって著しく向上させることができる。
【0219】
1つの実用的な実施形態では、第2の同軸伝送線及び/または第3の同軸伝送線の誘電材料は、空気、または別の気体である場合がある。この場合、材料片、たとえば、Keptonのテープまたは雲母窓の一片が、同軸伝送線の端部を覆って配置され得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11