【文献】
[観光バス]抗ウイルス・抗菌コーティングの施工について,[online],2021年02月01日,http://www.ibako.co.jp/contents/newsrelease/2021/02/23090.html ,検索日:2021年 5月27日
【文献】
新型コロナウイルス感染症予防対策について,[online],2021年01月12日,http://www.soyabus.co.jp/coronavirus,検索日:2021年 5月27日
【文献】
店内の抗ウイルス・抗菌コーティング加工の実施について,[online],2021年02月01日,http://www.s-olive.co.jp/kankou-center/pdf/tennai-jyokin.pdf ,検索日:2021年 5月27日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記抗ウイルス剤が、ネコカリシウイルス、マウスノロウイルス、A型インフルエンザウイルス(H3N2型)、ヒトコロナウイルス229E株、又はSARSコロナウイルス、又はアデノウイルス5型の何れかのウイルスに対する抗ウイルス剤である、請求項1〜3の何れかに記載する抗ウイルス剤。
請求項1〜5の何れかに記載する抗ウイルス剤の製造方法であって、リン酸チタニウム系化合物を含有する液に、ケイ酸化合物、銀化合物、及び銅化合物を、この順で混合する事を特徴とする製造方法であって、
該リン酸チタニウム化合物が
Ti(OH)x(PO4)y(HPO4)z(H2PO4)l(OR)m
(Rは、C1−4アルキル基を示す。
xは、0、1、2、又は3の何れかである。
yは、0、1、2、3、又は4の何れかである。
zは、0、1、2、3、又は4の何れかである。
lは、0、1、2、3、又は4の何れかである。
mは、0、1、2、又は3の何れかである。
但し、x+3y+2z+l+m=4及びy+z+l≧1を満たす。)
により表わされる何れかの化合物、及び/又はこれらの化合物の縮合物であり、
該抗ウイルス剤が、前記抗ウイルス剤が、カリシウイルス科に属するウイルス、オルトミクソウイルス科に属するウイルス、コロナウイルス科に属するウイルス、又はアデノウイルス科に属するウイルスの何れかのウイルスに対する抗ウイルス剤である製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1の組成物が抗ウイルス効果を発揮することは、何ら教示されていない。また、引用文献2には、四塩化チタンの加水分解物を含む組成物が抗ウイルス効果を発揮する事が教示されているものの、当該組成物に人体に悪影響を及ぼすことが考えられる硝酸亜鉛が多く含有されているので、これを抗ウイルス剤として使用することには、懸念がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記する課題を解決するべく、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、リン酸チタニウム系化合物、ケイ酸化合物、銀化合物、及び銅化合物を含有する組成物が、抗ウイルス効果を発揮することを見いだした。また、斯かる組成物を透明にする(沈殿物を発生させないようにする)為に、リン酸チタニウム系化合物を含有する液に、ケイ酸化合物、銀化合物、及び銅化合物を、この順で混合する事も見いだした。本発明は、これらの知見に基づいて完成されたものであり、以下に示す態様の発明を広く包含する。
【0007】
項1 リン酸チタニウム系化合物、ケイ酸化合物、銀化合物、及び銅化合物を含有する抗ウイルス剤。
【0008】
項2 前記リン酸チタニウム系化合物が、Ti(OH)
x(PO
4)
y(HPO
4)
z(H
2PO
4)
l(OR)
m
(Rは、C
1−4アルキル基を示す。
xは、0、1、2、又は3の何れかである。
yは、0、1、2、3、又は4の何れかである。
zは、0、1、2、3、又は4の何れかである。
lは、0、1、2、3、又は4の何れかである。
mは、0、1、2、又は3の何れかである。
但しx+3y+2z+l+m=4及びy+z+l≧1を満たす。)
により表される何れかの化合物、及び/又はこれらの化合物の縮合物である、上記する上記項1に記載する抗ウイルス剤。
【0009】
項3 前記ケイ酸化合物が、オルトケイ酸、メタケイ酸、メタ二ケイ酸、これらの多量体、及びこれらの塩からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、上記項1又は項2に記載する抗ウイルス剤。
【0010】
項4 前記銀化合物が、硝酸銀、酸化銀、硫化銀、臭化銀、及びヨウ化銀からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、上記項1〜項3の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0011】
項5 前記銅化合物が、硝酸銅、酸化銅、硫化銅、硫酸銅、及び塩化銀からなる群より選択される少なくとも一種の化合物である、上記項1〜項4の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0012】
項6 前記抗ウイルス剤が、カリシウイルス科に属するウイルス、オルトミクソウイルス科に属するウイルス、コロナウイルス科に属するウイルス、又はアデノウイルス科に属するウイルスの何れかのウイルスに対する抗ウイルス剤である、上記項1〜項5の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0013】
項7 前記カリシウイルス科に属するウイルスが、ベシウイルス属(猫カリシウイルス、豚水疱疹ウイルス)に属するウイルス、ラゴウイルス属(兎出血病ウイルス、ヨーロッパ褐色野兎症候群ウイルス、ノロウイルス属(ノーウォークウイルス)に属するウイルス、サポウイルス属(サッポロウイルス)に属するウイルス、及びネボウイルス属に属するウイルスから選択される少なくとも一種のウイルスである、上記項1〜項6の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0014】
項8 前記オルトミクソウイルス科に属するウイルスが、アルファインフルエンザウイルス属に属するウイルス、ベータインフルエンザウイルス属に属するウイルス、ガンマインフルエンザウイルス属に属するウイルス、デルタインフルエンザウイルス属に属するウイルス、イサウイルス属に属するウイルス、クアランジャウイルス属に属するウイルス、及びトゴトウイルス属に属するウイルスから選択される少なくとも一種のウイルスである、上記項1〜項7の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0015】
項9 前記コロナウイルス科に属するウイルスが、アルファコロナウイルス属に属するウイルス、ベータコロナウイルス属に属するウイルス、ガンマコロナウイルス属に属するウイルス、デルタコロナウイルス属に属するウイルス、メルベコウイルス亜属に属するウイルス、及びサルベコウイルス亜属に属するウイルスから選択される少なくとも一種のウイルスである、上記項1〜項8の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0016】
項10 前記アデノウイルス科に属するウイルスが、アタデノウイルス属に属するウイルス、トリアデノウイルス属に属するウイルス、イクタデノウイルス属に属するウイルス、マストアデノウイルス属に属するウイルス、及びシアデノウイルス属に属するウイルスから選択される少なくとも一種のウイルスである、上記項1〜項9の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0017】
項11 前記抗ウイルス剤が、ネコカリシウイルス、マウスノロウイルス、A型インフルエンザウイルス(H3N2型)、ヒトコロナウイルス229E株、又はSARSコロナウイルス、SARSウイルス(CoV−2)、又はアデノウイルス5型の何れかのウイルスに対する抗ウイルス剤である、上記項1〜項10の何れかに記載する抗ウイルス剤。
【0018】
項12 化粧品、消毒剤、又は洗浄剤である、上記項1〜11の何れか一項に記載する抗ウイルス剤。
【0019】
項13 上記項1〜12の何れかに記載する抗ウイルス剤の製造方法であって、リン酸チタニウム系化合物を含有する液に、ケイ酸化合物、銀化合物、及び銅化合物を、この順で混合する事を特徴とする製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明の抗ウイルス剤は、人体に安全に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、ある成分を「を含む」又は「を含有する」との表現には、当該成分を含み、さらに他の成分を含んでいてもよいとの意味のほか、当該成分のみを含むとの意味の「のみからなる」、及び当該成分を必須として含むとの意味の「から必須としてなる」の概念も包含される。
【0022】
本明細書において挙げた文献及びウェブページに記載の内容は、参照により本明細書に組む事ができる。
【0023】
また、上述した本発明の各実施形態について説明した性質、構造、機能等の各種の特性は、本発明に包含される主題を特定するにあたり、どのように組み合わせることができる。すなわち、本発明には、本明細書で開示する、組み合わせることができる各特性からなる主題の全て、を包含することができる。
【0024】
本明細書における用語「抗ウイルス効果」とは、当業者に使用されている「抗ウイルス効果」との意味を大きく逸脱する意味として解釈されることはない。例えば、人体への該ウイルスの感染を防止する効果、該ウイルスの細胞内への侵入を防止する効果、細胞内に侵入した該ウイルスの自己複製の阻害する効果、該ウイルスが細胞内に侵入した後に引き起こされる悪影響を防止する効果、該ウイルスそのものの構造を破壊する効果等の意味を包含することができる。
【0025】
抗ウイルス剤
本発明の抗ウイルス剤は、リン酸チタニウム系化合物、ケイ酸化合物、銀化合物、及び銅化合物を含有する。
【0026】
上記するリン酸チタニウム系化合物とは、本発明の効果を奏する範囲において、特に限定されない。具体的には、Ti(OH)
x(PO
4)
y(HPO
4)
z(H
2PO
4)
l(OR)
mにより表される化合物とする事ができる。上記するRとは、C
1−4アルキル基を示す。上記するxとは、0、1、2、又は3の何れかである。上記するyとは、0、1、2、3、又は4の何れかである。上記するzとは、0、1、2、3、又は4の何れかである。上記するlとは、0、1、2、3、又は4の何れかである。上記するmとは、0、1、2、又は3の何れかである。但し、x+3y+2z+l+m=4及びy+z+l≧1を満たすものとする。このように表される化合物の一種又は二種以上を、上記するリン酸チタニウム系化合物とすることができる。
【0027】
なお、上記リン酸チタニウム系化合物には、その縮合体も包含することができる。具体的な縮合体は、本発明の効果を奏する範囲において特に限定はされない。例えば、上記するリン酸チタニウム系化合物が2〜10分子程度縮合した化合物とすることができる。
【0028】
その縮合形式は、本発明の効果を奏する範囲において特に限定はされない。例えば、上記するリン酸チタニウム系化合物から、水分子が脱離して得られる縮合形式とすることができる。なお、上記縮合体は、上記リン酸チタニウム系化合物が単一の種類で縮合していてもよく、異なる二種以上が重合していてもよい。
【0029】
このような具体的なリン酸チタニウム系化合物の製造方法は、特許文献1に記載された製造方法を採用することができる。具体的には、四塩化チタンの加水分解物とリン酸とを反応させる事によって、上記リン酸チタニウム系化合物を得ることができる。
【0030】
すなわち、上記リン酸チタニウム系化合物とは、四塩化チタン加水分解物のリン酸化物(Phosphorylation of titanium tetrachloride hydrolyzate)と言うこともできる。
【0031】
本発明の抗ウイルス剤に含有される上記するリン酸チタニウム系化合物の含有量は、本発明の効果を奏する範囲において特に限定されない。例えば、本発明の抗ウイルス剤の総量を100質量%として、通常1〜70重量%程度、好ましくは5〜60重量%程度とすることができる。
【0032】
上記するケイ酸化合物とは、[SiO
x(OH)
4-2x]
nで表される化合物又はその塩であり、本発明の効果を奏する範囲において、特に限定されない。上記式におけるx及びnは、任意の数である。具体的には、オルトケイ酸、メタケイ酸、若しくはメタ二ケイ酸、若しくはこれらの多量体を挙げることができる。これらのケイ酸化合物は、その塩とする事もできる。上記するケイ酸化合物の中でも、水への溶解度が高いであることに鑑みて、メタケイ酸ナトリウムであることが好ましい。なお、これらの化合物の一種又は二種以上を組み合わせて、上記するケイ酸化合物とすることもできる。
【0033】
本発明の抗ウイルス剤に含有される上記するケイ酸化合物の含有量は、本発明の効果を奏する範囲において、特に限定はされない。例えば、上記する抗ウイルス剤の総量を100重量%として、通常0.001〜40重量%程度、好ましくは0.01〜20重量%程度とすることができる。
【0034】
上記する銀化合物とは、本発明の効果を奏する範囲において、特に限定されない。具体的には、硝酸銀、酸化銀、硫化銀、臭化銀、又はヨウ化銀等の化合物を挙げることができる。水への溶解度が高いことに鑑みて、硝酸銀であることが好ましい。なお、これらの化合物の一種又は二種以上を組み合わせて、上記する銀化合物とすることができる。
【0035】
本発明の抗ウイルス剤に含有される上記する銀化合物の含有量は、本発明の効果を奏する範囲において。特に限定はされない。例えば、上記する抗ウイルス剤の総量を100重量%として、通常0.001〜40重量%程度、好ましくは0.01〜20重量%程度とすることができる。
【0036】
上記する銅化合物とは、本発明の効果を奏する範囲において、特に限定されない。具体的には、硝酸銅、酸化銅、硫化銅、硫酸銅、又は塩化銅等の化合物を挙げることができる。水への溶解度が高いことに鑑みて、硝酸銅であることが好ましい。なお、これらの化合物の一種又は二種以上を組み合わせて、上記する銅化合物とすることができる。
【0037】
本発明の抗ウイルス剤に含有される上記する銅化合物の含有量は、本発明の効果を奏する範囲において特に限定はされない。例えば、上記する抗ウイルス剤の総量を100重量%として、通常0.001〜80重量%程度、好ましくは0.01〜50重量%程度とすることができる。
【0038】
本発明の抗ウイルス剤は、人体に悪影響を及ぼすことが考えられる硝酸亜鉛等の亜鉛化合物を使用しない又は少量とした場合にも、抗ウイルス効果を発揮することができる。このため、亜鉛化合物の含有量は、抗ウイルス剤の総量を100質量%として、通常0〜4重量%程度、好ましくは0〜3重量%程度とすることができる。
【0039】
上記するカリシウイルス科とは、プラス一本鎖RNAをゲノムとするウイルスの総称であり、ニドウイルス目に属する科の1つである。
【0040】
このようなコロナウイルス科に属するウイルスは、特に限定されない。例えば、ベシウイルス属に属するウイルス、ラゴウイルス属、ノロウイルス属に属するウイルス、サポウイルス属に属するウイルス、及びネボウイルス属に属するウイルスから選択される少なくとも一種のウイルスを挙げることができる。
【0041】
これらのウイルスの中でも、ノロウイルス属に属するマウスノロウイルス又はベシウイルス属に属するネコカリシウイルスを挙げる事ができる。
【0042】
上記するオルトミクソウイルス科とは、マイナス一本鎖RNAをゲノムとするエンベローブを有するウイルスの総称である。
【0043】
このようなコロナウイルス科に属するウイルスは、特に限定されない。例えば、アルファインフルエンザウイルス属に属するウイルス、ベータインフルエンザウイルス属に属するウイルス、ガンマインフルエンザウイルス属に属するウイルス、デルタインフルエンザウイルス属に属するウイルス、イサウイルス属に属するウイルス、クアランジャウイルス属に属するウイルス、及びトゴトウイルス属に属するウイルスを挙げることができる。
【0044】
これらのウイルスの中でも、アルファインフルエンザウイルス属に属するウイルスが好ましい。より好ましいオルトミクソウイルス科ウイルス科に属するウイルスとして、アルファインフルエンザウイルス属に属するA型インフルエンザウイルス(H3N2型)を挙げる事ができる。
【0045】
上記するコロナウイルス科とは、オルトコロナウイルス亜科とも呼ばれることがあり、ニドウイルス目に属する科の中の1つであり、プラス一本鎖RNAをゲノムとする、エンベローブを有するウイルスの総称である。
【0046】
このようなコロナウイルス科に属するウイルスは、特に限定されない。例えば、アルファコロナウイルス属に属するウイルス、ベータコロナウイルス属に属するウイルス、ガンマコロナウイルス属に属するウイルス、デルタコロナウイルス属に属するウイルス、メルベコウイルス亜属に属するウイルス、及びサルベコウイルス亜属に属するウイルスを挙げることができる。
【0047】
これらのウイルスの中でも、アルファコロナウイルスに属するウイルス、メルベコウイルス亜属に属するウイルス、及びサルベコウイルス亜属に属するウイルスが好ましい。より好ましいコロナウイルス科に属するウイルスとして、アルファコロナウイルス属に属するコロナウイルス229E及びサルベコウイルス亜属に属するCovid−19を挙げる事ができる。
【0048】
上記するアデノウイルス科とは、二重鎖直鎖状DNAをゲノムとする、エンベローブを有さないウイルスの総称である。
【0049】
このようなコロナウイルス科に属するウイルスは、特に限定されない。例えば、アタデノウイルス属に属するウイルス、トリアデノウイルス属に属するウイルス、イクタデノウイルス属に属するウイルス、マストアデノウイルス属に属するウイルス、及びシアデノウイルス属に属するウイルスを挙げることができる。
【0050】
これらのウイルスの中でも、マストアデノウイルスが好ましい。より好ましいアデノウイルス科に属するウイルスとして、マストアデノウイルス属に属するアデノウイルス5型を挙げる事ができる
本発明の抗ウイルス剤のpHは、その適用対象に適用可能なpHにより、適宜設定することができ、抗ウイルス効果を奏する範囲において、特に限定されない。例えば、pH1.5〜10とすることができる。適用対象の損傷の程度や本発明の抗ウイルス剤が沈殿しないようにすることに等に鑑みて、pH2〜6とすることが好ましい。
【0051】
なお、本発明の抗ウイルス剤を、水等によって希釈することによって、そのpHが上昇する傾向となる。このように希釈する範囲は、抗ウイルス効果を奏する範囲において、特に限定されない。例えば、10〜50倍に希釈することができる。
【0052】
本発明の抗ウイルス剤は、抗ウイルス効果を必要とする、あらゆる分野に広く使用されることができる。このような分野として、例えば、化粧品、消毒剤、洗浄剤等の分野を挙げることできる。
【0053】
本発明の抗ウイルス剤には、リン酸チタニウム系化合物、ケイ酸化合物、銀化合物、及び銅化合物と共に、他の成分を含有させることができる。このような他の成分は、本発明の効果を奏する範囲において、特に限定されない。例えば、任意の担体、基剤、溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、キレート剤、安定化剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、増粘剤、保湿剤、着色料、香料、媒体等を挙げることができる。
【0054】
本発明の抗ウイルス剤の形態又は態様は、使用される分野に従って、適宜決定することができる。
【0055】
本発明の抗ウイルス剤を化粧料として使用する場合、例えば、ファンデーション、頬紅、若しくは白粉等のメイクアップ化粧料;化粧水、乳液、スキンクリーム、ローション、オイル、若しくはパック等の基礎化粧料;洗顔料、クレンジング、若しくはボディソープ等の皮膚洗浄料;シャンプー、リンス、コンディショナー、整髪剤、若しくは育毛剤等の毛髪化粧料;バスソルト、バスタブレット、若しくはバスリキッド等の入浴剤、マッサージ剤、又は清拭剤等の態様を挙げることができる。
【0056】
本発明の抗ウイルス剤を消毒剤又は洗浄剤として使用する場合、例えば、液状、懸濁状、スプレー状、ジェル状、ローション状、乳液状、軟膏状、スティック状等の形態を挙げることができる。
【0057】
本発明の抗ウイルス剤を化粧料として使用する場合の適用対象は、ヒトである。より具体的には、ヒトの肌又は頭皮である。
【0058】
本発明の抗ウイルス剤を消毒剤又は洗浄剤として使用する場合の適用対象は、ヒト及び動物の他、抗ウイルス効果を所望する、あらゆる対象に適用することができる。
【0059】
具体的には、OA機器、家電、空調機器、掃除機、机、椅子、ソファー、ベンチ、窓、壁、床、天井、つり革、ハンドル、シート、自動改札機、自動券売機、自動販売機、扉、柵、手摺、食器、調理用具、包装フィルム、包装袋、瓶、ボトル、包装パック、シンク、便器、文房具、書籍、棚、歯ブラシ、鏡、空調フィルター、マスク、コート、ジャケット、ズボン、スカート、病衣、白衣、手術衣、ワイシャツ、ニットシャツ、ブラウス、セーター、カーディガン、ナイトウエア、肌着、下着、オムツ、サポーター、靴下、タイツ、ストッキング、帽子、スカーフ、マフラー、襟巻き、ストール、手袋、服の裏地、服の芯地、服の中綿、作業着、ユニフォーム、学童用制服等の衣料、カーテン、アミ戸、布団地、布団綿、布団カバー、枕カバー、シーツ、マット、カーペット、タオル、ハンカチ、壁布、バンドエイド、包帯等を挙げることができる。
【0060】
本発明の抗ウイルス剤の使用量は、使用対象、使用目的、及び使用環境等によって区々ではあるが、例えば、壁に対して使用するのであれば、15〜20cc/m
2程度とすることができる。
【0061】
本発明のウイルス剤は、リン酸チタニウム系化合物を含有する液に、ケイ酸化合物、銅化合物、及び銀化合物を、この順で混合することにより、製造する事ができる。これにより、沈殿物が殆ど生じない、透明な抗ウイルス剤を製造することができるので、例えば、これを使用する際に使用する噴霧器の目詰まりを防止できる等のメリットがある。
【0062】
上記する製造方法におけるリン酸チタニウム系化合物は、上記するに説明した通りとすることができる。
【0063】
リン酸チタニウム系化合物を含有する液(溶媒)とは、本発明の効果を奏する範囲において特に限定されない。具体的には、リン酸チタニウム系化合物の希釈に使用する水を挙げることができ、これに更にアルコールが含有されたものとすることもできる。
【0064】
上記アルコールとは、本発明の効果を奏する範囲において特に限定されない。具体的には、C
1−4アルコール(エタノール、メタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール)等を挙げることができる。このようなアルコールの中でも、臭気の観点からエタノールであることが好ましい。
【0065】
上記する製造方法におけるケイ酸化合物、亜鉛化合物、銅化合物及び銀化合物も、上記するに説明した通りとすることができ、これらもリン酸チタニウム系化合物と同様の溶媒に分散させて使用してもよい。
【0066】
上記する製造方法におけるリン酸チタニウム系化合物、ケイ酸化合物、亜鉛化合物、銅化合物及び銀化合物の配合量は、上述の通りとすることができる。
【0067】
上記する製造方法における製造時の温度は、本発明の効果を奏する範囲において特に限定されない。具体的には、0〜40℃程度の室温とすることができる。上記する混合工程の後に、任意的に撹拌工程を含有することもできる。また、得られた抗ウイルス剤に沈殿物が存在する場合には、公知の固液分離工程に供して、斯かる沈殿物の除去する工程を含有することもできる。
【実施例】
【0068】
以下に、本発明の抗ウイルス剤をより詳細に説明するための実施例を示す。本発明が下記に示す実施例に限定されないのは言うまでもない。
【0069】
製造例
以下の実施例にて使用する抗ウイルス剤は、100重量%の四塩化チタン水溶液が33重量%になるよう、水が50重量%である水及びエタノールの混合溶液で希釈して得られた四塩化チタン加水分解物を含む溶液を、さらに水で11倍希釈し、これに10重量%のリン酸を加え、リン酸チタニウム系化合物を含む溶液を得た。これに、2gのケイ酸ナトリウム、5gの硝酸銀、及び5gの硝酸銅をこの順で添加し、室温にて混合することによって製造した。このようにして得られた抗ウイルス剤はやや青みがかった透明な溶液であり、そのpHは、1.5程度であった。以下、このようにして製造した抗ウイルス剤を、製造例1の抗ウイルス剤又は製造例1と呼ぶことがある。
【0070】
次いで、当該抗ウイルス剤を30倍に希釈した。希釈後の抗ウイルス剤は透明であり、そのpHは、2.8程度であった。以下、この希釈後の抗ウイルス剤を、製造例2の抗ウイルス剤又は製造例2と記載することがある。
【0071】
実施例1
抗ウイルス剤によるヒトコロナウイルス229E(コロナウイルス科)、アデノウルス5型(アデノウルス科)、及びマウスノロウイルス(カリシウイルス科)に対する抗ウイルス効果を確認する実験を、UNI EN 14476+A2:2019(http://store.uni.com/catalogo/en-14476-2013-a2-2019/)に準じて行った。本実施例にて使用した抗ウイルス剤は、実施例1の抗ウイルス剤を50、60、及び97%の濃度にて(50%及び60%の希釈は硬水で、そして97%の希釈は、蒸留水である)である。当該試験は、具体的に以下に示すサンプルの組み合わせにて行った。また、コントロールとして、未処理の実験を行った。
【0072】
1:MRC−5細胞(ATCC CCL−171)に対するヒトコロナウイルス229E(ATCC VRー740)
2:Hela細胞(ATCC CCL−2)に対するアデノウルス5型(ATCC VRー5)
3:Raw264.7細胞(ATCC TIB−71)に対するマウスノロウイルス(Strain599 Berlin Friedrich Loeffler Institute RVB−0651)
その他の条件は以下の通りである。
・細胞増殖培地:各細胞共に、10%FCS含有MEM培地
・細胞維持培地:各細胞共に、2%FCS含有MEM培地
・干渉物質:ウシアルブミン(0.3g/l)
・感染条件:20℃、24時間
【0073】
スピアマン・ケルバー法を用いて測定したウイルス力価から、抗ウイルス活性値を算出した結果を下記表4に示す。この数値が2以上であれば抗ウイルス活性があると評価し、この数値が高ければ高いほど、抗ウイルス活性が強いことを示す。なお、「−」は、抗ウイルス活性がない事を示す。
【0074】
【表1】
【0075】
上記表1に記載するように、製造例2の抗ウイルス剤は、コロナウイルス科に属するヒトコロナウイルス229E、アデノウイルス科に属するアデノウイルス5型、カリシウイルス科及びに属するマウスノロウイルスに対して、抗ウイルス効果を発揮することが明らかとなった。
【0076】
実施例2
製造例2の抗ウイルス剤によるカリシウイルス科に属するネコカリシウイルスに対する効果を確認する実験を、プラスチック製品向けの抗菌試験方法であるISO22196(JIS Z 2801)をウイルス向けに改良した、ISO21702(https://www.iso.org/standard/71365.html)に準じて行った。当該試験は、具体的に以下に示すサンプル等によって行った。
【0077】
・試験ウイルス:ネコカリシウイルス(F−9;ATCC VR−782)
・宿主細胞:CRFK細胞(ATCC CCL−94)
・感染条件:25℃、24時間
・洗浄液:10%FBS含有SCDLP培地
なお、本実施例では、事前処理として抗菌製品技術協議会持続性基準による耐光処理を行った。コントロールとして、未処理の実験を行った。これらの結果を下記表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】
表2に示す結果から、製造例2の抗ウイルス剤は、事前処理の有無にかかわらず、カリシウイルス科に属するネコカリシウイルスに対して抗ウイルス効果を発揮する事が明らかとなった。
【0080】
実施例3
製造例2の抗ウイルス剤によるオルトミクソウイルス科に属するA型インフルエンザウイルスに対する効果を確認する実験を、上記ISO21702に準じて行った。当該試験は、具体的に以下に示すサンプル等によって行った。
【0081】
・試験ウイルス:A型インフルエンザウイルス(H3N2型;ATCC VR−1679)
・宿主細胞:MDCK細胞(ATCC CCL−34)
・感染条件:25℃、24時間
・洗浄液:SCDLP培地
なお、本実施例では、事前処理として抗菌製品技術協議会持続性基準による耐光処理を行った。コントロールとして、未処理の実験を行った。これらの結果を下記表2に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
表3に示す結果から、製造例2の抗ウイルス剤は、事前処理の有無にかかわらず、オルトミクソウイルス科に属するA型インフルエンザウイルス(H3N2型)に対して抗ウイルス効果を発揮する事が明らかとなった。
【0084】
実施例4
製造例2の抗ウイルス剤によるコロナウイルス科に属するSARSコロナウイルスに対する効果を確認する実験を、上記ISO21702に準じて行った。当該試験は、具体的に以下に示すサンプル等によって行った。
【0085】
・試験ウイルス:SARS−CoV−2(Covid−19、JPN/TY/WK−521;国立感染症研究所)
・宿主細胞:VeroE6/TMPRSS2(JVRB1819)
・細胞培養液:DMEM培地又はMEM培地
・感染条件:25℃、24時間
・洗浄液:SCDLPを2%FBS含有MEMで10倍に希釈した液
【0086】
この結果を下記表4に示す。
【0087】
【表4】
【0088】
表4に示す結果から、製造例2の抗ウイルス剤は、コロナウイルス科に属するCovid−19に対して抗ウイルス効果を発揮する事が明らかとなった。
【0089】
実施例5
上記抗ウイルス剤の安全性試験(急性吸入毒性試験)を行った。6.5gの製造例2の抗ウイルス剤を4週齢のICRマウス(雌雄5匹ずつ)に噴霧により吸入させ、その後の体重等の観察を行った。各マウスは、その雌雄に関係なく、吸入後14日間生存し、その14日後の雄の体重は、平均で6.48gの増加、そして雌の体重は4.70gの増加を確認する事ができた。
【0090】
吸入から14日後のマウスの体表、関口部、頭蓋腔内、胸腔内、腹腔内臓器、及びリンパ節の外観を肉眼的に確認したところ、雌雄共に異常は見られなかった。
【0091】
これらの結果から、製造例1の抗ウイルス剤は、生体に安全であることが明らかとなった。