特許第6973836号(P6973836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973836
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】クッション材の跳ね上り防止カバー
(51)【国際特許分類】
   E02D 33/00 20060101AFI20211118BHJP
   E02D 1/08 20060101ALI20211118BHJP
   G01N 3/303 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   E02D33/00
   E02D1/08
   G01N3/303 D
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-86821(P2021-86821)
(22)【出願日】2021年5月24日
【審査請求日】2021年7月29日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398021607
【氏名又は名称】株式会社地盤試験所
(74)【代理人】
【識別番号】100087491
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 享
(74)【代理人】
【識別番号】100104271
【弁理士】
【氏名又は名称】久門 保子
(72)【発明者】
【氏名】山本 伊作
(72)【発明者】
【氏名】高野 公作
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
【審査官】 深田 高義
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2019/225023(WO,A1)
【文献】 特開2006−234648(JP,A)
【文献】 特開2003−42865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D33/00
E02D1/08
G01N3/303
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭頭に設置されたクッション材が、前記杭頭に落下する重錘の落下時の衝撃によって跳ね上るのを防止するクッション材の跳ね上り防止カバーであって、前記クッション材の上面の一部または全面と側面の一部または全面を覆うカバー本体と、前記カバー本体と前記杭頭の近傍に配置された反力抵抗部材との間に架設され、前記カバー本体を固定するカバー本体固定部材とを備え、前記カバー本体固定部材は前記重錘落下時の衝撃を吸収するバネ部材を備えていることを特徴とするクッション材の跳ね上り防止カバー。
【請求項2】
請求項1記載のクッション材の跳ね上り防止カバーにおいて、前記カバー本体は、前記クッション材の上面の一部または全面を覆う天板部と、側面の一部または全面を覆う側板部を備え、真下に開口する平面視円形または正方形のキャップ状に構成されていることを特徴とするクッション材の跳ね上り防止カバー。
【請求項3】
請求項1または2記載のクッション材の跳ね上り防止カバーにおいて、前記カバー本体固定部材は、複数の皿ばねを備えていることを特徴とするクッション材の跳ね上り防止カバー。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のクッション材の跳ね上り防止カバーにおいて、前記反力抵抗部材は、前記杭頭の急速載荷試験装置の一部である架台および/または支柱であることを特徴とするクッション材の跳ね上り防止カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤面より突出する杭頭部分(以下「杭頭」)に設置されたクッション材が、前記杭頭に落下する重錘の落下時の衝撃によって跳ね上るのを防止するクッション材の跳ね上り防止カバーに関し、主として重錘を落下させて杭頭に軸方向押込み力を加えることにより、杭の支持力を確認する杭の急速載荷試験特に用いられる。
【背景技術】
【0002】
杭の支持力を確認する方法として、杭頭にクッション材を設置し、その上に重錘を落下させて杭に軸方向押込み力を加えることにより、杭の支持力を確認する杭の急速載荷試験方法が知られている。
【0003】
この試験方法は、反力杭や載荷梁などの反力抵抗部材を必要とせず、また、試験装置の組立てと解体が比較的短時間で済み、しかも試験時間が短く全ての杭種、工法への適用が可能であることから広く利用されている。
【0004】
この種の杭の急速載荷試験の一例として、例えば、特許文献1には杭頭にクッション材として設置されたドーナッツ状のゴムタイヤと、杭頭にゴムタイヤを介在して落下させる重錘とを備え、特にクッション材としてのゴムタイヤは、弾性材料によって中空部を有する外殻状に形成されており、また前記重錘の重さに合わせて複数積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-68802号公報
【特許文献2】特開2002-303570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ゴムタイヤ等からなるクッション材は、ごく簡単な囲い材と共に杭頭に設置されているだけであり、また、杭頭に落下した重錘はクッション材の弾性力によって繰り返し跳ね上るため、重錘と共にクッション材も大きく跳ね上って当初の位置からずれてしまうことがあり、重錘の落下ごとにクッションを元の位置に直す必要があった。
【0007】
また、重錘の落下荷重はクッション材の上に均等に作用するわけではないので、クッション材が重錘落下時の衝撃によって思わぬ方向に跳ね上ったり、或いは破断して飛散することがあるため、きわめて危険なだけでなく、消耗が激しくきわめて不経済であった。
【0008】
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、杭頭に設置されたクッション材の、重錘落下時の衝撃による跳ね上りを防止し、かつ重錘落下時の衝撃によるクッション材の破損を最小限に抑えることにより、特に杭の急速載荷試験の安全性と経済性の向上を可能にしたクッション材の跳ね上り防止カバーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、杭頭に設置されたクッション材が、前記杭頭に落下する重錘の落下時の衝撃によって跳ね上るのを防止するクッション材の跳ね上り防止カバーの発明であり、前記クッション材の上面の一部または全面と側面の一部または全面を覆うカバー本体と、前記カバー本体と前記杭頭の近傍に配置された反力抵抗部材との間に架設され、前記カバー本体を固定するカバー本体固定部材とを備え、前記カバー本体固定部材は前記重錘落下時の衝撃を吸収するバネ部材を備えていることを特徴とするものである。
【0010】
前記カバー本体としては、重錘の落下荷重を前記クッション材に均等に伝達させることができ、かつ前記クッション材が落下した重錘と共に跳ね上るのを確実に防止できる構造と強度を有すればよく、鋼板、形鋼または金属金網などからクッション材の上面と側面を覆う形状であって、上面と側面が格子状または網目状をなして平面視円形または矩形のキャップ状に構成されたもの等を用いることができる。また、カバー本体の内径は、杭頭に設置されたクッション材がカバー本体内で動かないようにクッション材に外接する大きさに形成されている。
【0011】
カバー本体固定部材は、前記カバー本体と反力抵抗部材との間に放射状に複数架設してあれば、重錘落下時の衝撃を周囲の反力抵抗部材に均等に分散させることができて望ましい。
【0012】
また、カバー本体固定部材としては、複数の皿ばねを備えたバネ部材が望ましい(例えば、図3のバネ部材)。皿ばねは、中心に穴の開いた円盤状の板を円錐形状にすることにより底のない皿状に形成されている。当該皿ばねを複数、面外方向に積層しその中心部分と周縁部分をそれぞれ貫通する大径ロッドと複数の小径ロッドによって保持することによりコイルバネと同じようなバネ部材とすることができる(図3参照)。さらに、カバー本体固定部材の端部を固定する反力抵抗部材としては、杭の急速載荷試験装置の一部である架台や支柱などを利用することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、杭頭に設置されたクッション材の、重錘落下時の衝撃による跳ね上りと破損に伴う飛散を確実に防止することができ、杭の急速載荷試験を安全に実施することができる。
【0014】
また、重錘落下時の衝撃によるクッション材の破損を最小限に抑えて、クッション材の試験後の歩留まり率を向上させることができるため、きわめて経済てきである。
【0015】
特に、従来のクッション材を用いた杭の急速載荷試験では、クッション材の離散防止処置として複数のクッション材の接合に多大な労力を要していたが、本発明のクッション材を使用することで、試験後のクッション材の処理(クッション材の入れ替え、接合等の補修)に要した時間と労力を短縮でき、これによりクッション材の入り変え作業、セッテング等に要する時間を大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態を図示したものであり、杭頭、杭頭の上部に設置されたクッション材の跳ね上り防止カバーおよび急速載荷試験装置の一部を示す正面図である。
図2図1における要部拡大図である。
図3図2におけるイ−イ線断面図である。
図4】ばね部材であり、図(a)は平面図、図(b)は正面図、図(c)は大径ロッドと小径ロッドが相反する方向に引っ張られたときの皿ばねの挙動を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1−4は、地盤面より突出する杭頭aの直上に塔状に構築された杭の急速載荷試験装置の一部、杭頭aの上端部に設置されたクッション材および重錘落下時の衝撃によるクッション材の跳ね上りを防止するクッション材の跳ね上り防止カバーを図示したものである。
【0018】
杭の急速載荷試験装置1は、杭頭aの上端部にクッション材を介して落下させる重錘2を備え、杭頭aの上端部にクッション材3が設置され、さらにクッション材3の上にクッション材3の側面および上面を覆うように跳ね上り防止カバー4が設置されている。
【0019】
杭の急速載荷試験装置1は、杭頭aの周囲に間隔を置いて配置された複数のジャッキ付き束材5と、当該ジャッキ付き束5,5間に架設された架台6と、当該架台6の上に間隔をおいて建て付けられた複数の支柱7を備え、鉛直方向に自立可能な搭状に構築されている。
【0020】
なお、図1図3は、杭の急速載荷試験装置1の一部であって、杭頭aの近傍に配置されたジャッキ付き束材5、架台6および支柱7を図示している。
【0021】
跳ね上り防止カバー4は、クッション材3の上端面および側面を覆うカバー本位8と、当該カバー本体8と反力抵抗部材としての架台6間に架設された複数のカバー本体固定部材9を備えている。
【0022】
カバー本体8は、クッション材3の上端面を覆う天板部8aと側面全体を覆う側板部8bを備え、真下に開口する平面視円形または正方形のキャップ状(箱形状)に構成されている。
【0023】
また、天板部8aおよび側板部8bは、重錘落下時の衝撃や、当該衝撃によって跳ね上るクッション材3の衝突にも充分に耐えられる強度を有し、かつカバー本体8内の可視化が可能な格子枠状または網目状に構成されている。
【0024】
また、カバー本体8は、杭頭に設置されたクッション材3がカバー本体8内で動かないようにクッション材3に外接する大きさに形成されている。
【0025】
なお、天板部8aと側板部8bは、クッション材3の大きさに応じて内径と内法高を自由に調整できるようなっていてもよい。
【0026】
カバー本体固定部材9は、チェーンまたはワイヤー等からなる緊張材10と当該緊張材10の一端側部と他端側部にそれぞれ接続されたバネ部材11とレバー付き締付け具12を備えている。
【0027】
また、カバー本体固定部材9は、カバー本体8の天板部8aの周縁部と架台6間に天板部8aの周縁部から架台6に向かって下り勾配の放射状に張設され、かつその架台6側の端部(バネ部材11)は架台6に脱着可能に連結され、天板部8a側の端部(レバー付き締付け具12)は天板部8aの縁端部に脱着可能に連結されている。
【0028】
バネ部材11は複数の皿ばね11aを備え、当該皿ばね11aは中心に穴の開いた円盤状の板を円錐形状に加工することにより底のない皿状に形成されている。また、当該複数の皿ばね11aは面外方向に積層され、その中心部分と周縁部分をそれぞれ貫通する大径ロッド11bと複数の小径ロッド11cによって保持されている。
【0029】
そして、大径ロッド11bと複数の小径ロッド11cを相反する方向(矢印方向)に引っ張ることにより大径ロッド11bおよび小径ロッド11cの軸方向に圧縮可能とされ、特に圧縮による蓄積エネルギーはコイルスプリングと比較するとかなり大きく、小さなスペースでしかも少ないストロークで大きな負荷能力を具備している。さらに、皿ばね枚数の増減によってバネ特性を変えることができ、特に緩衝効率に優れている。
【0030】
レバー付き締付け具12は、一般には荷物を吊り上げたり締め付けたりするための道具であり、この場合はレバー12aを手で回して緊張材10に張力を導入することによりカバー本体8をクッイション材3の上に固定されている。
【0031】
このような構成において、杭頭aに設置されたクッション材3の上に重錘2が落下した際の衝撃は、カバー本体8の天板部8aの周縁部と架台6間に放射状に張設された複数のカバー本体固定部材9の、特に各ばね部材4によって吸収される。
【0032】
また、クッション材3は、跳ね上り防止カバー4によって杭頭aに保持されていることにより、重錘2落下時の衝撃によって重錘3と共に跳ね上ることはなく、またクッション材3の一部が破損しても周囲に飛散することはない。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、杭頭に設置されたクッション材が、重錘落下時の衝撃によって跳ね上るのを防止することができ、また、重錘落下時の衝撃によってクッション材が破損して飛散するのを防止することができ、特に杭の支持力を確認する杭の急速載荷試験での使用が期待できる。
【符号の説明】
【0034】
a 杭頭(杭の地盤より突出する部分)
1 杭の急速載荷試験装置
2 重錘
3 クッション材
4 クッション材の跳ね上り防止カバー
5 ジャッキ付き束材
6 架台(反力抵抗部材)
7 支柱
8 カバー本体
8a 天板部
8b 側板部
9 カバー本体固定部材
10 緊張材
11 バネ部材
11a 皿ばね
11b 大径ロッド
11c 小径ロッド
12 レバー付き締め付け具
12a レバー
【要約】
【課題】重錘落下時の衝撃による、杭頭に設置されたクッション材の跳ね上りと破損にともなう飛散を防止することのできるクッション材の跳ね上り防止カバーを提供する。
【解決手段】杭頭aにクッション材3を設置する。クッション材3にカバー本体4を被せる。カバー本体4はクッション材3の上面および側面を覆う天板部4aと側板部4bとからキャップ状に構成する。天板部4aの周縁部と架台6との間にカバー本体固定部材9を設置してカバー本体4を固定する。カバー本体固定部材9はチェーン等からなる緊張材10とその一端側部と他端側部にそれぞれ接続されたバネ部材11とレバー付き締付け部材12とから構成する。バネ部材11は杭頭aの周囲に配置された架台6に連結し、レバー付き締付け部材12は天板部4aの縁端部に連結する。レバー付き締付け部材12のレバー12aを回して緊張材10に張力を導入する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4