特許第6973853号(P6973853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973853
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】高安全性・高エネルギー密度電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/052 20100101AFI20211118BHJP
   H01M 4/133 20100101ALI20211118BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20211118BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20211118BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20211118BHJP
   H01M 50/409 20210101ALI20211118BHJP
【FI】
   H01M10/052
   H01M4/133
   H01M4/134
   H01M4/36 E
   H01M10/058
   H01M50/409
【請求項の数】9
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-508434(P2017-508434)
(86)(22)【出願日】2016年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2016059445
(87)【国際公開番号】WO2016152991
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2019年2月6日
【審判番号】不服2020-17912(P2020-17912/J1)
【審判請求日】2020年12月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-61773(P2015-61773)
(32)【優先日】2015年3月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】志村 健一
(72)【発明者】
【氏名】川崎 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 登
【合議体】
【審判長】 平塚 政宏
【審判官】 粟野 正明
【審判官】 市川 篤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−228052(JP,A)
【文献】 特開2007−305574(JP,A)
【文献】 特開2014−240189(JP,A)
【文献】 特開2008−234853(JP,A)
【文献】 特表2010−538172(JP,A)
【文献】 特開2002−231209(JP,A)
【文献】 特開2006−351488(JP,A)
【文献】 特開2002−237330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M2/20-2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、電解液と、正極および負極との間に配置されたセパレータと、を含むリチウムイオン二次電池であって、
正極が、単位面積当たりの充電容量を3mAh/cm以上有し、
負極が、金属および/または金属酸化物ならびに炭素を負極活物質として含み、
負極に含まれる炭素のリチウム受容可能な量が、正極のリチウム放出可能な量より少なく、
前記セパレータの熱収縮率が電解液の沸点において3%未満であり、前記セパレータの孔径が0.01μm以上0.5μm未満である、
リチウムイオン二次電池。
【請求項2】
前記セパレータが微多孔膜から成る、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項3】
前記セパレータが400℃において絶縁層の厚みを5μm以上保持する、請求項1または2に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項4】
前記セパレータが酸素指数25以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項5】
前記セパレータが、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂およびポリフェニレンスルフィド樹脂より選択される1種類以上の材料から成る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項6】
前記セパレータが、アラミド樹脂から成る、請求項5に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項7】
前記アラミド樹脂の芳香環上の水素がハロゲンで一部または全部置換されている、請求項6に記載のリチウムイオン二次電池。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池を搭載したことを特徴とする車両。
【請求項9】
電極素子と電解液と外装体とを有するリチウムイオン二次電池の製造方法であって、
正極と、負極とを、セパレータを介して対向配置して電極素子を作製する工程と、
前記電極素子と、電解液と、を外装体の中に封入する工程と、
を含み、
正極が、単位面積当たりの充電容量を3mAh/cm以上有し、
負極が、金属および/または金属酸化物ならびに炭素を負極活物質として含み、
負極に含まれる炭素のリチウム受容可能な量が、正極のリチウム放出可能な量より少なく、
前記セパレータの熱収縮率が電解液の沸点において3%未満であり、前記セパレータの孔径が0.01μm以上0.5μm未満である、
リチウムイオン二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池、その製造方法、リチウムイオン二次電池を用いた車両および蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は小型で大容量であるという特徴を有しており、携帯電話、ノート型パソコン等の電子機器の電源として広く用いられ、携帯用IT機器の利便性向上に貢献してきた。近年では、二輪や自動車などの駆動用電源や、スマートグリッドのための蓄電池といった、大型化した用途での利用も注目を集めている。リチウムイオン二次電池の需要が高まり、様々な分野で使用されるにつれて、電池の更なる高エネルギー密度化や、長期使用に耐え得る寿命特性、広範囲な温度条件での使用が可能であること、などの特性が求められている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の負極には炭素系材料を使用するのが一般的であるが、電池の高エネルギー密度化のために、単位体積当たりのリチウムイオンの吸蔵放出量が大きい、ケイ素やスズなどの金属材料を負極に使用することが検討されている。しかしながら、金属材料はリチウムの充放電を繰り返すことで膨張収縮し、これにより劣化する電池のサイクル特性に課題があった。
【0004】
金属材料を負極に用いたリチウムイオン二次電池のサイクル特性の改善のため、種々の提案がされている。特許文献1には、単体ケイ素にケイ素酸化物を混合し、さらにその周辺をアモルファスカーボンで被覆することにより、電極活物質自体の膨脹収縮を緩和し、非水電解質二次電池の充放電サイクル寿命を改善できることが記載されている。特許文献2には、ケイ素酸化物と黒鉛からなる負極において、ケイ素酸化物粒子と黒鉛粒子の大きさの比を特定することにより、黒鉛粒子が形成する空隙にケイ素酸化物を配置でき、ケイ素酸化物が膨張する場合においても負極全体の体積変化が抑制されるためにサイクル特性の劣化を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−153117号公報
【特許文献2】特開2013−101921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した先行技術文献に記載されるリチウムイオン二次電池は、炭素材料と金属材料とを含有する負極全体の膨張収縮を抑制することによりサイクル特性の改善を達成している。しかしながら、金属材料自体は充放電により膨張収縮を繰り返すことで劣化していくという問題があった。金属材料は劣化することによりリチウムを受け入れる能力を失い、サイクル特性の悪化だけでなく、負極にリチウムが析出し、これが成長して正極に達することで短絡してリチウムイオン二次電池の安全性を損なう恐れがある。特に金属材料が劣化することで正極のリチウム放出可能な量より負極のリチウム受容可能な量が少なくなった場合にリチウム析出が生じやすく、さらに正極が高容量であるほどリチウムの析出量が多くなるため安全性への懸念が増加する。このため、高容量のリチウムイオン二次電池においては、負極の金属材料の劣化に備えて、負極の炭素材料のリチウム受容可能な量を正極活物質のリチウム放出可能な量より多くなるように設計する必要があり、高容量の金属材料の使用が制限されるという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上述した課題である、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池において、負極の炭素材料のリチウム受容可能な量を正極活物質のリチウム放出可能な量より少なくしたときの安全性への懸念を解決する、高安全性・高エネルギー密度電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のリチウムイオン二次電池は、正極と、負極と、電解液と、正極および負極との間に配置されたセパレータと、を含むリチウムイオン二次電池であって、
正極が、単位面積当たりの充電容量を3mAh/cm以上有し、
負極が、金属および/または金属酸化物ならびに炭素を負極活物質として含み、
負極に含まれる炭素のリチウム受容可能な量が、正極のリチウム放出可能な量より少なく、
セパレータが、電解液中で、その沸点における熱収縮率が3%未満である、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、負極の炭素材料のリチウム受容可能な量が正極活物質のリチウム放出可能な量より少なくても、安全性が高く、高エネルギー密度のリチウムイオン二次電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係るラミネート型リチウムイオン二次電池の概略構成図である。
図2】フィルム外装電池の基本的構造を示す分解斜視図である。
図3図2の電池の断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を、リチウムイオン二次電池の各部材ごとに説明する。
【0012】
[セパレータ]
本発明においてセパレータには、電解液中で、その沸点における熱収縮率が3%未満のものを用いる。電解液中での沸点におけるセパレータの収縮率は、熱機械分析(TMA)で測定することができるが、セパレータにかける荷重により、特に融点付近での収縮率が正確に測定できないため、1mmの間隔をもつ2枚のガラス板(150mm×150mm×5mm)の間に、正極(120mm×120mm)、セパレータ(100mm×100mm)、負極(120mm×120mm)の順に重ねたものを設置し、これを電解液の沸点に合わせたオーブン中で1時間放置することにより測定することが出来る。すなわち、熱収縮率(S)は,縦方向または横方向についての寸法変化(L−L)の初期値(L)に対する百分率であり、以下式の通りに計算される値である。

S=(L−L)/L×100

さらにこれを400℃に加熱したものを用いて、セパレータの厚みを測定することにより、高温下での絶縁性能の指標とした。即ち、400℃での絶縁層厚み(Ts)は、正極の厚み(Tc)と負極の厚み(Ta)と総厚み(T)を用いて算出できる。

Ts=T−Ta−Tc
【0013】
負極が劣化し、正極のリチウム放出可能な量より負極のリチウム受容可能な量が少なくなった場合、リチウムの析出が生じることでセパレータの絶縁性が低下し、微小な短絡が生じる可能性が高まる。微小な短絡によっても電池内部は発熱するが、その場合であってもセパレータの融点が電解液の沸点よりも高く、電解液中、その沸点における熱収縮率が3%未満であることでセパレータが溶融変形せずに、正極と負極との接触を防止する機能を維持できるため、完全な短絡を防止することができる。仮に正極と負極がセパレータが熱収縮することで接触して完全な短絡が生じれば、電池の熱暴走により発煙、発火または破裂などの重大な危険性を生じる可能性がある。特に、正極が、単位面積当たりの充電容量を3mAh/cm以上有するエネルギー密度の高い電池においては、リチウム析出が生じやすくなるため微小短絡による発熱の危険性が増大する。この熱により電解液が完全に揮発し、電池外部に排出されれば電池はその機能を失うが、セパレータの熱収縮率を電解液中で、その沸点において3%未満とすることで、電極間が直接接触する危険を回避することが出来るため、安全性を確保することができる。
【0014】
短絡による発熱が、電解液と負極または正極との化学反応を引き起こした場合などでは発熱量が大きくなり、電池内部の温度が局所的には電解液の沸点を超える場合がある。このため、セパレータは空気中200℃において3%未満の熱収縮率を有することがより好ましく、空気中250℃において3%未満の熱収縮率を有することがさらに好ましく、空気中300℃において3%未満の熱収縮率を有することが最も好ましい。
【0015】
樹脂を原料とするセパレータの場合、フィルムを製造する際に延伸を行うことが多い。したがって、樹脂自体は加熱して膨張するとしても、ガラス転移点以上、特に融点付近では延伸によるひずみが緩和され収縮が生じる。セパレータは電極間で絶縁を保持する働きをするが、これが収縮すると絶縁が維持出来なくなり、電池内で短絡を引き越こし危険な状態となる。捲回式の電池と比べて、積層式電池の場合は電極間のセパレータを挟み込む力が弱いので、熱収縮が比較的容易に生じ短絡に至る。セパレータは多少のズレや収縮に備えて、電極よりも大きく設計されているが、大きすぎると電池のエネルギー密度が下がることとなるので、数パーセントの余裕にとどめることが好ましい。したがって、セパレータの熱収縮が3%を超えるとセパレータが電極よりも小さくなる可能性が高くなる。電池を構成する電解液の沸点は、使用する溶媒に依存し、100℃〜200℃である。沸点においても3%未満の収縮であれば、電解液が揮発して電池の系外に排出され電極間のイオン伝導が遮断されて電池の機能が失われるため、例えば、過充電において発熱が生じても発火に至る危険性は低くなる。これに対して、セパレータの収縮率が3%以上の場合は、電解液が系外に完全に排出される前に、セパレータが収縮し電極間が短絡してしまうため急激な放電が生じる。特に電池容量が大きいと、短絡による放電に伴う発熱量が大きくなるため発火に至る危険性が高くなる。
【0016】
熱収縮率は、延伸条件などセパレータを作製する工程における条件によっても異なるが、電解液の沸点など高温下でも熱収縮率が低いセパレータの材料としては、電解液沸点よりも高い融点を有する耐熱性樹脂が挙げられ、具体的には、ポリイミド、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、セルロース、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンナフタレートなどが挙げられる。セパレータの絶縁性を高めるためにセラミックスなど絶縁体で被覆してもよく、また異なる素材から成る層を積層したセパレータを用いてもよいが、セパレータ全体にわたって、電解液中で、その沸点における熱収縮率が3%未満であることが必要とされる。
【0017】
この中でも、特にポリフェニレンスルフィド、ポリイミドおよびポリアミドより選択される1種類以上の樹脂からなるセパレータが、高温時においても溶融せず、また熱収縮率が低いため好ましい。これらのセパレータは、融点の高い樹脂を用いたものであり熱収縮率が低く、例えば、ポリフェニレンスルフィド樹脂(融点280℃)で作製したセパレータの200℃における収縮率は0%であり、アラミド樹脂(融点はなく400℃で熱分解)で作製したセパレータの200℃における収縮率は0%、300℃においてようやく3%に到達する程度である。また、ポリイミド樹脂(融点はなく、500℃以上で熱分解)のセパレータでは、200℃での収縮率は0%であり、300℃においても僅か0.4%程度にとどまることから本願におけるセパレータとして好ましい例である。セルロースは、融点は持たず200℃での熱収縮は約1%程度である。ただし、長時間加熱した場合には熱分解による劣化が進行し、絶縁性が低下するため注意が必要である。これらに対して、ポリプロピレンやポリエチレンなど融点が200℃以下のものは、無機粒子などによる耐熱処理を行っても200℃での熱収縮率は10%を超える。
【0018】
特に好ましい材料としては、芳香族ポリアミド、いわゆるアラミド樹脂が挙げられる。アラミドは、1種または2種以上の芳香族基がアミド結合により直接連結されている芳香族ポリアミドである。芳香族基としては、例えばフェニレン基が挙げられ、また、2個の芳香環が酸素、硫黄またはアルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等)で結合されたものであってもよい。これらの芳香族基は置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、ハロゲン(クロル基等)等が挙げられる。特に、芳香環上の水素原子の一部または全部が、フッ素や臭素、塩素などのハロゲン基で置換されているものが、耐酸化性が高く、正極での酸化劣化が生じないことから好ましい。本発明において使用するアラミドは、パラ型およびメタ型のいずれであってもよい。本発明においてセパレータにアラミド樹脂からなるものを使用することが、高エネルギー密度下においても劣化せず、リチウム析出に対しても絶縁性を保持し完全な短絡を防止できることから、特に好ましい。
【0019】
本実施形態において好ましく使用できるアラミドとしては、例えば、ポリメタフェニレンイソフタルアミド、ポリパラフェニレンテレフタルアミド、コポリパラフェニレン3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドおよびこれらのフェニレン基上の水素を置換したもの等が挙げられる。
【0020】
一方で、従来からリチウムイオン電池のセパレータとして用いられてきたポリエチレンやポリプロピレンは高温条件下で収縮し、例えば、ポリプロピレンの融点は160℃近辺であり、例えば150℃では約5%、200℃では溶融して90%以上収縮することがある。融点の低いポリエチレン(130℃)では更に収縮することとなる。エネルギー密度の小さい電池では、冷却効果が高く、それほど温度上昇しない場合や温度上昇速度が遅い場合には、ポリオレフィン系のセパレータでも問題が生じることはなかったが、高エネルギー密度の電池への適用では安全性に対して不十分である。
【0021】
電池の熱暴走による発火を防止するために、本発明において使用されるセパレータは、酸素指数が25以上であることが好ましい。酸素指数は、室温における窒素と酸素との混合ガス中で、垂直に支持された小試験片が燃焼を維持する最小酸素濃度を意味し、値が高いほど難燃性の材料を表す。酸素指数の測定は、JIS K 7201に準じて実施することができる。酸素指数が25以上のセパレータに用いられる材料としては、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキサイド、ポリイミド、アラミドなどの樹脂が挙げられる。
【0022】
セパレータの形態としては、織布や不織布といった繊維集合体、および微多孔膜など、任意の形態を採用することができる。この中でも微多孔膜のセパレータは、リチウムが析出しにくく短絡を抑制することができるため特に好ましい。セパレータは、負極側の表面の孔径が小さい方がリチウムの析出を抑制できる。好ましい微多孔膜の孔径としては、1μm以下であり、より好ましくは0.5μm以下、更に好ましくは0.1μm以下である。また荷電体の透過のため、微多孔膜の負極側の表面の孔径は0.005μm以上であることが好ましく、より好ましくは0.01μm以上である。
【0023】
セパレータの厚みは大きい方が、絶縁性や強度を維持する点において好ましい。一方で電池のエネルギー密度を高めるためには、セパレータは薄い方がよい。本発明において短絡防止や耐熱性を与えるために3μm以上、好ましくは5μm以上、更に好ましくは8μm以上の厚みを有することが好ましく、通常要求されるエネルギー密度など電池の仕様に対応するため厚みは40μm以下、好ましくは30μm以下、更に好ましくは25μm以下である。
【0024】
高温での絶縁性を示す指標として、Tsを用いる。セパレータには空隙があり、電極合剤層にも空隙がある。電極およびセパレータは、過充電等で局部的に400℃になる。したがって、400℃での絶縁性が重要である。400℃以下で溶融する樹脂は、セパレータの空隙を失うことにより、絶縁性能が低下する。また、セパレータが電極合剤層の空隙に入り込むことにより、電極間の間隔が狭まり絶縁性能が低下する。400℃での絶縁層の厚み(Ts)は、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上である。
【0025】
[負極]
負極は、負極活物質が、負極結着剤により一体化された負極活物質層として集電体上に積層された構造を有する。負極活物質は、充放電に伴いリチウムイオンを可逆的に受容、放出可能な材料である。
【0026】
本発明において負極は、金属および/または金属酸化物ならびに炭素を負極活物質として含む。金属としては、例えば、Li、Al、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La、またはこれらの2種以上の合金等が挙げられる。また、これらの金属又は合金は2種以上混合して用いてもよい。また、これらの金属又は合金は1種以上の非金属元素を含んでもよい。
【0027】
金属酸化物としては、例えば、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化リチウム、またはこれらの複合物等が挙げられる。本実施形態では、負極活物質として酸化スズもしくは酸化シリコンを含むことが好ましく、酸化シリコンを含むことがより好ましい。これは、酸化シリコンが、比較的安定で他の化合物との反応を引き起こしにくいからである。また、金属酸化物に、窒素、ホウ素および硫黄の中から選ばれる一種または二種以上の元素を、例えば0.1〜5質量%添加することもできる。こうすることで、金属酸化物の電気伝導性を向上させることができる。
【0028】
炭素としては、例えば、黒鉛、非晶質炭素、ダイヤモンド状炭素、カーボンナノチューブ、またはこれらの複合物等が挙げられる。ここで、結晶性の高い黒鉛は、電気伝導性が高く、銅などの金属からなる負極集電体との接着性および電圧平坦性が優れている。一方、結晶性の低い非晶質炭素は、体積膨張が比較的小さいため、負極全体の体積膨張を緩和する効果が高く、かつ結晶粒界や欠陥といった不均一性に起因する劣化が起きにくい。
【0029】
金属および金属酸化物は、リチウムの受容能力が炭素に比べて遥かに大きいことが特徴である。従って、負極活物質として金属および金属酸化物を多く使用することで電池のエネルギー密度を改善することができる。本発明では高エネルギー密度を達成するため負極活物質中の金属および/または金属酸化物の含有比率が高い方が好ましく、負極に含まれる炭素のリチウム受容可能な量が、正極のリチウム放出可能な量より少なくなるように、金属および/または金属酸化物を負極中に配合する。本明細書において正極のリチウム放出可能な量、負極に含まれる炭素のリチウム受容可能な量は、それぞれの理論容量を意味する。正極のリチウム放出可能な量に対する負極に含まれる炭素のリチウム受容可能な量の比率は、0.95以下が好ましく、0.9以下がより好ましく、0.8以下がさらに好ましい。金属および/または金属酸化物は、多いほど負極全体としての容量が増加するので好ましい。金属および/または金属酸化物は、負極活物質の0.01質量%以上の量で負極に含まれることが好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましい。しかしながら、金属および/または金属酸化物は、炭素にくらべてリチウムを吸蔵・放出した際の体積変化が大きくなり、電気的な接合が失われる場合があることから、99質量%以下、好ましくは90質量%以下、更に好ましくは80質量%以下である。上述した通り、負極活物質は、負極中の充放電に伴いリチウムイオンを可逆的に受容、放出可能な材料であり、それ以外の結着剤などは含まない。
【0030】
負極用結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフルオライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリル、ポリイミド、ポリアミドイミド等を用いることができる。前記のもの以外にも、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。SBR系エマルジョンのような水系の結着剤を用いる場合、カルボキシメチルセルロース(CMC)等の増粘剤を用いることもできる。使用する負極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある十分な結着力と高エネルギー化の観点から、負極活物質100質量部に対して、0.5〜20質量部が好ましい。上記の負極用結着剤は、混合して用いることもできる。
【0031】
負極活物質は、導電補助材と共に用いることができる。導電補助材としては、正極において具体的に例示するものと同様のものを挙げることができ、その使用量も同様とすることができる。
【0032】
負極集電体としては、電気化学的な安定性から、アルミニウム、ニッケル、銅、銀、およびそれらの合金が好ましい。その形状としては、箔、平板状、メッシュ状が挙げられる。
【0033】
負極活物質層の形成方法としては、ドクターブレード法、ダイコーター法、CVD法、スパッタリング法等が挙げられる。予め負極活物質層を形成した後に、蒸着、スパッタ等の方法でアルミニウム、ニッケルまたはそれらの合金の薄膜を形成して、負極集電体としてもよい。
【0034】
[正極]
正極は、充放電に伴いリチウムイオンを可逆的に受容、放出可能な正極活物質を含み、正極活物質が正極結着剤により一体化された正極活物質層として集電体上に積層された構造を有する。本発明において、正極は、単位面積当たりの充電容量を3mAh/cm以上有し、好ましくは3.5mAh/cm以上有する。また、安全性の観点などから単位面積当たりの正極の充電容量が、15mAh/cm以下であることが好ましい。ここで、単位面積当たり充電容量とは、活物質の理論容量から計算される。即ち、単位面積当たりの正極の充電容量は、(正極に用いられる正極活物質の理論容量)/(正極の面積)によって計算される。なお、正極の面積とは、正極両面ではなく片面の面積についてを言う。
【0035】
したがって正極の高エネルギー密度化のため、正極に使用される正極活物質は、リチウムを受容放出するもので、より高容量の化合物であることが好ましい。高容量の化合物としては、ニッケル酸リチウム(LiNiO)のNiの一部を他の金属元素で置換したリチウムニッケル複合酸化物が挙げられ、下式(A)で表される層状リチウムニッケル複合酸化物が好ましい。
【0036】
LiNi(1−x) (A)
(但し、0≦x<1、0<y≦1.2、MはCo、Al、Mn、Fe、Ti及びBからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。)
【0037】
式(A)で表される化合物としては、Niの含有量が高いこと、即ち式(A)において、xが0.5未満が好ましく、さらに0.4以下が好ましい。このような化合物としては、例えば、LiαNiβCoγMnδ(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)、LiαNiβCoγAlδ(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、β≧0.7、γ≦0.2)などが挙げられ、特に、LiNiβCoγMnδ(0.75≦β≦0.85、0.05≦γ≦0.15、0.10≦δ≦0.20)が挙げられる。より具体的には、例えば、LiNi0.8Co0.05Mn0.15、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.8Co0.15Al0.05、LiNi0.8Co0.1Al0.1等を好ましく用いることができる。
【0038】
また、熱安定性の観点では、Niの含有量が0.5を超えないこと、即ち、式(A)において、xが0.5以上であることも好ましい。また特定の遷移金属が半数を超えないことも好ましい。このような化合物としては、LiαNiβCoγMnδ(1≦α≦1.2、β+γ+δ=1、0.2≦β≦0.5、0.1≦γ≦0.4、0.1≦δ≦0.4)が挙げられる。より具体的には、LiNi0.4Co0.3Mn0.3(NCM433と略記)、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNi0.5Co0.2Mn0.3(NCM523と略記)、LiNi0.5Co0.3Mn0.2(NCM532と略記)など(但し、これらの化合物においてそれぞれの遷移金属の含有量が10%程度変動したものも含む)を挙げることができる。
【0039】
また、式(A)で表される化合物を2種以上混合して使用してもよく、例えば、NCM532またはNCM523とNCM433とを9:1〜1:9の範囲(典型的な例として、2:1)で混合して使用することも好ましい。さらに、式(A)においてNiの含有量が高い材料(xが0.4以下)と、Niの含有量が0.5を超えない材料(xが0.5以上、例えばNCM433)とを混合することで、高容量で熱安定性の高い電池を構成することもできる。
【0040】
上記以外にも正極活物質として、例えば、LiMnO、LiMn(0<x<2)、LiMnO、LiMn1.5Ni0.5(0<x<2)等の層状構造またはスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;LiCoOまたはこれらの遷移金属の一部を他の金属で置き換えたもの;これらのリチウム遷移金属酸化物において化学量論組成よりもLiを過剰にしたもの;およびLiFePOなどのオリビン構造を有するもの等が挙げられる。さらに、これらの金属酸化物をAl、Fe、P、Ti、Si、Pb、Sn、In、Bi、Ag、Ba、Ca、Hg、Pd、Pt、Te、Zn、La等により一部置換した材料も使用することができる。上記に記載した正極活物質はいずれも、1種を単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。
【0041】
正極用結着剤としては、負極用結着剤と同様のものを用いることができる。中でも、汎用性や低コストの観点から、ポリフッ化ビニリデンまたはポリテトラフルオロエチレンが好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。使用する正極用結着剤の量は、トレードオフの関係にある「十分な結着力」と「高エネルギー化」の観点から、正極活物質100質量部に対して、2〜10質量部が好ましい。
【0042】
正極活物質を含む塗工層には、インピーダンスを低下させる目的で、導電補助材を添加してもよい。導電補助材としては、鱗片状、煤状、線維状の炭素質微粒子等、例えば、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、気相法炭素繊維(例えば、昭和電工製VGCF)等が挙げられる。
【0043】
正極集電体としては、負極集電体と同様のものを用いることができる。特に正極としては、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄・ニッケル・クロム・モリブデン系のステンレスを用いた集電体が好ましい。
【0044】
正極は、負極と同様に、正極集電体上に、正極活物質と正極用結着剤を含む正極活物質層を形成することで作製することができる。
【0045】
[電解液]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池の電解液としては特に限定されないが、電池の動作電位において安定な非水溶媒と支持塩を含む非水電解液が好ましい。
【0046】
非水溶媒の例としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート類;ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の鎖状カーボネート類;プロピレンカーボネート誘導体、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸エチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル等のエーテル類、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリオクチル、リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類等の非プロトン性有機溶媒、及び、これらの化合物の水素原子の少なくとも一部をフッ素原子で置換したフッ素化非プロトン性有機溶媒等が挙げられる。
【0047】
金属または金属酸化物を負極に含む二次電池において、それらが劣化して崩壊することで、表面積が増大し電解液の分解を促進する場合がある。電解液の分解により生じるガスは負極のリチウムイオンの受容を阻害する要因の1つである。このため、本発明のように金属および/または金属酸化物の負極中の含有比率が多いリチウムイオン二次電池においては、耐酸化性が高く、分解しにくい溶媒が好ましい。耐酸化性の強い溶媒として、例えば、フッ素化エーテルやフッ素化リン酸エステルなどのフッ素化非プロトン性有機溶媒が挙げられる。
【0048】
その他にもエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)等の環状または鎖状カーボネート類も特に好ましい溶媒として挙げられる。
【0049】
非水溶媒は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0050】
支持塩としては、LiPF、LiAsF、LiAlCl、LiClO、LiBF、LiSbF、LiCFSO、LiCSO、LiC(CFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩が挙げられる。支持塩は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。低コスト化の観点からはLiPFが好ましい。
【0051】
電解液は、さらに添加剤を含むことができる。添加剤としては特に限定されるものではないが、ハロゲン化環状カーボネート、不飽和環状カーボネート、及び、環状または鎖状ジスルホン酸エステル等が挙げられる。これらの化合物を添加することにより、サイクル特性等の電池特性を改善することができる。これは、これらの添加剤がリチウムイオン二次電池の充放電時に分解して電極活物質の表面に皮膜を形成し、電解液や支持塩の分解を抑制するためと推定される。
【0052】
[リチウムイオン二次電池の製造方法]
本実施形態によるリチウムイオン二次電池は、通常の方法に従って作製することができる。積層ラミネート型のリチウムイオン二次電池を例に、リチウムイオン二次電池の製造方法の一例を説明する。まず、乾燥空気または不活性雰囲気において、正極および負極をセパレータを介して対向配置して、前述の電極素子を形成する。次に、この電極素子を外装体(容器)に収容し、電解液を注入して電極に電解液を含浸させる。その後、外装体の開口部を封止してリチウムイオン二次電池を完成する。ここで、積層構造の電池は、基材の熱収縮によるセパレータの変形が顕著であり、本発明により大きな作用効果が得られる、好ましい形態の1つである。
【0053】
図1は、積層ラミネート型のリチウムイオン二次電池が有する電極素子の構造を示す模式的断面図である。この電極素子は、1つ又は複数の正極cおよび1つ又は複数の負極aが、セパレータbを挟みつつ交互に積み重ねられて形成されている。各正極cが有する正極集電体eは、正極活物質層に覆われていない端部で互いに溶接されて電気的に接続され、さらにその溶接箇所に正極端子fが溶接されている。各負極aが有する負極集電体dは、負極活物質層に覆われていない端部で互いに溶接され電気的に接続され、さらのその溶接箇所に負極端子gが溶接されている。
【0054】
さらに別の態様としては、図2および図3のような構造の二次電池としてもよい。この二次電池は、電池要素20と、それを電解質と一緒に収容するフィルム外装体10と、正極タブ51および負極タブ52(以下、これらを単に「電極タブ」ともいう)とを備えている。
【0055】
電池要素20は、図3に示すように、複数の正極30と複数の負極40とがセパレータ25を間に挟んで交互に積層されたものである。正極30は、金属箔31の両面に電極材料32が塗布されており、負極40も、同様に、金属箔41の両面に電極材料42が塗布されている。
【0056】
図1の二次電池は電極タブが外装体の両側に引き出されたものであったが、本発明の二次電池は図2のように電極タブが外装体の片側に引き出された構成であってもよい。詳細な図示は省略するが、正極および負極の金属箔は、それぞれ、外周の一部に延長部を有している。負極金属箔の延長部は一つに集められて負極タブ52と接続され、正極金属箔の延長部は一つに集められて正極タブ51と接続される(図3参照)。このように延長部どうし積層方向に1つに集めた部分は「集電部」などとも呼ばれる。
【0057】
フィルム外装体10は、この例では、2枚のフィルム10−1、10−2で構成されている。フィルム10−1、10−2どうしは電池要素20の周辺部で互いに熱融着されて密閉される。図3では、このように密閉されたフィルム外装体10の1つの短辺から、正極タブ51および負極タブ52が同じ方向に引き出されている。
【0058】
当然ながら、異なる2辺から電極タブがそれぞれ引き出されていてもよい。また、フィルムの構成に関し、図2図3では、一方のフィルム10−1にカップ部が形成されるとともに他方のフィルム10−2にはカップ部が形成されていない例が示されているが、この他にも、両方のフィルムにカップ部を形成する構成(不図示)や、両方ともカップ部を形成しない構成(不図示)なども採用しうる。
【0059】
[組電池]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池を複数組み合わせて組電池とすることができる。組電池は、例えば、本実施形態に係るリチウムイオン二次電池を2つ以上用い、直列、並列又はその両方で接続した構成とすることができる。直列および/または並列接続することで容量および電圧を自由に調節することが可能になる。組電池が備えるリチウムイオン二次電池の個数については、電池容量や出力に応じて適宜設定することができる。
【0060】
[車両]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池またはその組電池は、車両に用いることができる。本実施形態に係る車両としては、ハイブリッド車、燃料電池車、電気自動車(いずれも四輪車(乗用車、トラック、バス等の商用車、軽自動車等)のほか、二輪車(バイク)や三輪車を含む)が挙げられる。なお、本実施形態に係る車両は自動車に限定されるわけではなく、他の車両、例えば電車等の移動体の各種電源として用いることもできる。
【0061】
[蓄電装置]
本実施形態に係るリチウムイオン二次電池またはその組電池は、蓄電装置に用いることができる。本実施形態に係る蓄電装置としては、例えば、一般家庭に供給される商用電源と家電製品等の負荷との間に接続され、停電時等のバックアップ電源や補助電力として使用されるものや、太陽光発電等の、再生可能エネルギーによる時間変動の大きい電力出力を安定化するための、大規模電力貯蔵用としても使用されるものが挙げられる。
【実施例】
【0062】
<実施例1>
本実施例の電池の作製について説明する。
(正極)
正極活物質としてのリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.80Mn0.15Co0.05)理論容量200mAh/g、導電補助材としてのカーボンブラック、結着剤としてのポリフッ化ビニリデンを、90:5:5の質量比で計量し、それらをN−メチルピロリドンを用いて混練し、正極スラリーとした。調製した正極スラリーを、集電体としての厚み20μmのアルミニウム箔に塗布し乾燥し、さらにプレスすることで正極を得た。この正極の単位面積あたりの充電容量は、3mAh/cmであった。
【0063】
(負極)
炭素材としての人造黒鉛粒子(平均粒径8μm)理論容量370mAh/gと、酸化シリコン(SiO)粒子(平均粒径5μm)理論容量2676mAh/g(Siの理論容量を4200mAh/gで計算)を99.99:0.01の質量比で計量、混合して負極活物質を調製した。調製した活物質、導電補助材としてのカーボンブラック、および結着剤としてのスチレン−ブタジエン共重合ゴム:カルボキシメチルセルロースの質量比1対1の混合物を、96:1:3の質量比で計量し、それらを蒸留水を用いて混練し、負極スラリーとした。調製した負極スラリーを、集電体としての厚み15μmの銅箔に塗布し乾燥し、さらにプレスすることで負極を得た。この負極のうち炭素材の単位面積当たりの充電容量は、2.85mAh/cmであった。
【0064】
(セパレータ)
セパレータとして、20μmの厚みを有するアラミド微多孔フィルム(孔径0.5μm)を用いた。このセパレータのTsを表1にしめす。
【0065】
(電極素子)
作製した正極電極板を、電流取り出し部を除いた寸法として230mm×300mmに切断し、負極電極板を、電流取り出し部を除いた寸法として238mm×308mmに切断して、セパレータを介して積層した。正極活物質に覆われていない正極集電体および負極活物質に覆われていない負極集電体の端部をそれぞれ溶接し、さらにその溶接箇所に、アルミニウム製の正極端子およびニッケル製の負極端子をそれぞれ溶接して、平面的な積層構造を有する電極素子を得た。電池の正極充電容量は20Ahとした。
【0066】
(電解液)
非水溶媒としてのEC(沸点:248℃)とDEC(沸点:126℃)の混合溶媒(体積比:EC/DEC=30/70)に、支持塩としてのLiPFを電解液中1Mとなるように溶解して電解液を調製した。
【0067】
(電池の作製)
上記電極素子を外装体としてのアルミニウムラミネートフィルムで包み、内部に電解液を注液後、0.1気圧まで減圧しつつ封止することで、二次電池を作製した。
【0068】
[二次電池の評価]
(電池温度と過充電試験)
作製した二次電池を、0.2Cで4.2Vまで充電後、0.2Cで3Vまで放電した。この時の最高到達温度を表1に示す。続いて、過充電試験は、1Cで10Vまで昇圧を行った。電池の電圧約5.5Vで電池の表面温度が95℃に到達し、その後急激に電圧が10V以上にまで上昇したが、電池の破裂や、発煙は無かった。この場合の判定は◎、発煙に至っても発火しない場合は○、発火した場合は×と判定する。
【0069】
(セパレータの劣化)
作製した二次電池を、0.1Cで4.3Vまで充電後、0.1Cで3Vまで放電する操作を100回繰り返した。作製した電池を解体し、走査型電子顕微鏡を用いてセパレータ表面の拡大観察を行ったところ、部分的にかすかに褐色となる劣化が見られ、○と判定した。なお、全く変色が見られない場合は◎と記載し、部分的に褐色となった場合は△、全面が褐色または黒くなった場合は×と判定する。
【0070】
<実施例2>
セパレータを微多孔ポリイミドのセパレータ(厚み20μm、孔径0.5μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0071】
<実施例3>
セパレータを微多孔ポリフェニレンスルフィド(厚み20μm、孔径0.5μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0072】
<実施例4>
セパレータを微多孔塩化アラミドのセパレータ(厚み20μm、孔径0.5μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0073】
<実施例5>
負極の炭素材の単位面積当たりの充電容量を、2.7mAh/cmとした以外は、実施例1と同じ電池を作成し、評価を行った。結果を表1にしめす。
【0074】
<実施例6>
負極の炭素材の単位面積当たりの充電容量を、2.4mAh/cmとした以外は、実施例1と同じ電池を作成し、評価を行った。結果を表1にしめす。
【0075】
<実施例7>
正極活物質をリチウムニッケル複合酸化物(LiNi0.80Co0.15Al0.05)理論容量200mAh/gを用いた以外実施例1と同じ電池を作成し、評価を行った。結果を表1にしめす。
【0076】
<比較例1>
セパレータを微多孔ポリプロピレンのセパレータ(厚み20μm、孔径0.01μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0077】
<比較例2>
セパレータを3μmのセラミック層を塗布した微多孔ポリプロピレンのセパレータ(厚み20μm、孔径0.01μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0078】
<参考例3>
セパレータをセルロース不織布のセパレータ(厚み20μm、孔径1μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0079】
<参考例4>
セパレータをアラミド不織布のセパレータ(厚み20μm、孔径1μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0080】
<参考例5>
セパレータをポリフェニレンスルフィド不織布のセパレータ(厚み20μm、孔径1μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0081】
<比較例6>
正極の単位面積当たりの放電容量を、2.5mA/cm、負極の炭素材の単位面積当たりの充電容量を2.38mAh/cmとし、セパレータを3μmのセラミック層を塗布した微多孔ポリプロピレンのセパレータ(厚み20μm、孔径0.01μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0082】
<比較例7>
正極の単位面積当たりの放電容量を、2.5mA/cm、負極の炭素材の単位面積当たりの充電容量を2.38mAh/cmとし、セパレータをセルロース不織布のセパレータ(厚み20μm、孔径1μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0083】
<比較例8>
負極の炭素材の単位面積当たりの充電容量を3.3mAh/cmとし、セパレータを3μmのセラミック層を塗布した微多孔ポリプロピレンのセパレータ(厚み20μm、孔径0.01μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0084】
<比較例9>
正極、負極など電池のサイズを小さくして電池の正極充電容量を17Ahとし、セパレータを3μmのセラミック層を塗布した微多孔ポリプロピレンのセパレータ(厚み20μm、孔径0.01μm)とした以外は、実施例1と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0085】
<比較例10>
セパレータを微多孔ポリプロピレンのセパレータ(厚み20μm、孔径0.01μm)とした以外は、実施例7と同じ条件で電池を作成し、評価をおこなった。結果を表1にしめす。
【0086】
参考例3、4、5の結果から、不織布タイプのセパレータを用いた場合、充電時の電池温度が30を超える程高くなることから、微小短絡が生じやすく電池の安定性が悪くなることがわかる。ただし、正極の単位面積当たりの充電容量を2.5mAh/cmに下げると比較例7に示すように、不織布を用いても電池の温度上昇はなくなるが、エネルギー密度が低下するため、高エネルギー密度の電池を作成することができない。参考例4、5は酸素指数の高いアラミド樹脂やポリフェニレンスルフィド樹脂を用いているため、発煙のみで発火には至っていない。比較例1〜2のように微多孔タイプのセパレータを用いた場合、充電時の温度上昇はなくなるが、著しい過充電が生じると融点が低く収縮が生じる耐熱性の低い材料では、内部短絡が生じるため発火に至る。これに対して、比較例6〜9では、正極の単位面積当たりの充電容量を2.5mAh/cmに下げる、負極の炭素による単位面積当たりの充電容量比を大きくする、あるいは電池の容量を下げるなどを行うことにより、過充電時の発火を防ぐことが可能であるがエネルギー密度の向上には好ましくない。実施例1〜4は、微多孔構造をもつ、融点の高い樹脂からなる熱収縮率が低いセパレータを用いた例であるが、何れも充電時の温度上昇は見られず、過充電時には発煙、発火が起こらなかった。また、実施例5〜6では、負極の炭素材の単位面積当たりの充電可能容量の比率を下げているが、電池の温度上昇はほとんど起こらなかった。実施例に用いたセパレータの絶縁性能(Ts)は5μm以上であり、全て発火には至っていない。3μmのセラミック層を塗布した比較例6、8および9も発火していないが、比較例2の場合は、収縮により短絡が先におこり発火したものと推定している。活物質をLiNi0.80Mn0.15Co0.05から、LiNi0.80Co0.15Al0.05に代えた例として、実施例7(アラミドセパレータ)および比較例10(セラミック層を塗布した微多孔ポリプロピレンのセパレータ)を比較しても同じ結果であり、高温での収縮性の低いセパレータが過充電耐性に優れていた。
【0087】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明によるリチウムイオン二次電池は、例えば、電源を必要とするあらゆる産業分野、ならびに電気的エネルギーの輸送、貯蔵および供給に関する産業分野において利用することができる。具体的には、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器の電源;電気自動車、ハイブリッドカー、電動バイク、電動アシスト自転車等を含む電動車両、電車、衛星、潜水艦等の移動・輸送用媒体の電源;UPS等のバックアップ電源;太陽光発電、風力発電等で発電した電力を貯める蓄電設備;等に、利用することができる。
【符号の説明】
【0089】
a 負極
b セパレータ
c 正極
d 負極集電体
e 正極集電体
f 正極端子
g 負極端子
10 フィルム外装体
20 電池要素
25 セパレータ
30 正極
40 負極
図1
図2
図3