(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6973873
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】通話回線の自動制御システム、自動制御方法、及び自動制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04M 3/42 20060101AFI20211118BHJP
H04M 3/22 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
H04M3/42 Z
H04M3/22 C
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-127129(P2020-127129)
(22)【出願日】2020年7月28日
【審査請求日】2020年7月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】増本 里実
【審査官】
山岸 登
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−153141(JP,A)
【文献】
特開平10−022897(JP,A)
【文献】
特開2016−096460(JP,A)
【文献】
特開2008−152439(JP,A)
【文献】
特開2003−158586(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04M3/00
3/08−3/58
7/00−7/16
11/00−11/10
H04Q1/20−1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換する音声認識部と、
前記文字データを記憶する通話データ記憶部と、
前記通話データ記憶部に記憶された前記文字データに基づき、通話回線の優先度を決定する通信状態監視部と、
前記通信状態監視部が決定した優先度に基づいて、前記通話回線の切断処理を実行する交換機部と、を備えた、
通話回線の自動制御システム。
【請求項2】
前記通信状態監視部は、前記通話データ記憶部に記憶された前記文字データに含まれる特定のキーワードに基づき、通話回線の優先度を決定する請求項1に記載の通話回線の自動制御システム。
【請求項3】
特定のキーワードと、前記特定のキーワードの優先度とを、それぞれ関連付けて記憶する条件記憶部をさらに備え、前記通信状態監視部は、前記条件記憶部を参照して、通話回線の優先度を決定する請求項2に記載の通話回線の自動制御システム。
【請求項4】
前記条件記憶部に記憶された特定のキーワードが、防災に関するキーワードを含む請求項3に記載の通話回線の自動制御システム。
【請求項5】
前記条件記憶部は、前記通信状態監視部が通話回線の優先度を決定するために参照する前記文字データの対象範囲を記憶し、前記通信状態監視部は、前記条件記憶部に記憶された対象範囲に基づいて通話回線の優先度を決定する請求項3または請求項4に記載の通話回線の自動制御システム。
【請求項6】
前記通信状態監視部が通話回線の優先度を決定するために参照する前記文字データの対象範囲の一部が、通話の開始時点よりも現時点に近い時間帯である請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の通話回線の自動制御システム。
【請求項7】
前記通信状態監視部は、前記通話回線の使用率を監視し、前記通話回線の使用率が所定の値を超えた場合に、前記通話データ記憶部に記憶された前記文字データに基づき、前記通話回線の優先度を決定する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の通話回線の自動制御システム。
【請求項8】
前記通信状態監視部は、前記通話データ記憶部に記憶された前記文字データに基づき、通話回線の優先順位を決定し、
前記交換機部は、優先順位の低い前記通話回線を自動的に切断する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の通話回線の自動制御システム。
【請求項9】
通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換するステップと、
変換された前記文字データに基づき、通話回線の優先度を決定するステップと、
決定された前記通話回線の優先度に基づいて、前記通話回線の切断処理を実行するステップと、を有する
通話回線の自動制御方法。
【請求項10】
通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換し、
変換された前記文字データに基づき、通話回線の優先度を決定し、
決定された優先度に基づいて、前記通話回線の切断処理を実行する、
処理をコンピュータに実行させる通話回線の自動制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通話回線の自動制御システム、自動制御方法、及び自動制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に通信回線は、一時的に多数の利用者からの通信要求が殺到し、通信回線の許容量を超過すると、通信が成立しづらい状態となる。このような通信要求過多により、通信が成立しづらい状態を輻輳状態という。輻輳状態は、災害発生が予想された時や災害が発生した時などの災害時や大規模イベント時などで発生することが多い。特に災害時においては、通信による迅速な災害情報の収集と伝達が人命を救うことに繋がるため、輻輳状態の迅速な解消及び回避が強く求められている。例えば、県庁や防災関係機関などの官公庁・地方自治体あるいは公益企業などの多くは、災害時に警報や災害情報を伝達する防災通信網を備えている。県庁や防災関係機関には、防災通信機能を有する防災交換機などの通信装置が設置されている。これらの通信装置間がネットワーク回線で互いに接続されることによって、防災通信網が構成されている。防災通信網は、災害時に利用されるだけでなく、平常時には一般通信にも利用される。
【0003】
防災交換機は、制御装置(以下、統制台)を介して、発着信の規制、通話時間の制限、回線のモニタや強制切断などの通信統制を実行することにより、通信の輻輳状態を解消あるいは回避し、迅速な災害情報の収集と伝達を可能にしている。
統制台の画面に表示されるGUI(Graphical User Interface)には、通信状態が表示される。表示される通信状態は、例えば発着信の規制状態、通話時間の制限状態、回線の空きや使用中などの使用状況、回線の制御状態のモニタが含まれる。ユーザは、GUIを確認して統制台を操作することにより、通信統制の設定や解除を行うことができる。
【0004】
このように、ユーザは自らの操作により通信統制の設定や解除を行う必要がある。したがって、通信の輻輳が予想される場合において、ユーザは統制台の画面に表示される通信状態を監視し続けなければならないという問題があった。特許文献1では、このような問題を解決するための発明が提案されている。具体的には、特許文献1は通信の優先度に応じた強制切断条件に基づいて回線制御を行う無線通信システムを開示している。この無線通話システムは、優先度の低い通信を強制切断することにより、重要な通信を優先して接続できるように構成されている。また、特許文献2は、帯域の混雑度を測定し、帯域の混雑度が所定の条件を満たすときに、通話時間を制限する通信システムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017−204877号公報
【特許文献2】特開2018−139380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1で示されている無線通信システムでは、新たな通信要求が受信された後に通信の優先度を決定するため、災害等が発生し、通信規制を開始した時点で使用中、つまり継続中の通信に関しては自動的に切断処理を実行することができない。また、特許文献2で示されている通信システムにおいても、新たな通信が受信された後に帯域の混雑度を測定するため、通信規制を開始した時点で使用中の通信に関しては通話時間を制限することができない。したがって、通話が終了するまでは、通話回線の使用率は変わらず、輻輳状態の迅速な解消あるいは回避が困難であるという問題があった。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、輻輳状態の迅速な解消あるいは回避ができる通話回線の自動制御システム、自動制御方法、及び自動制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様にかかる通話回線の自動制御システムは、
通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換する音声認識部と、
前記文字データを記憶する通話データ記憶部と、
前記通話データ記憶部に記憶された前記文字データに基づき、通話回線の優先度を決定する通信状態監視部と、
前記通信状態監視部が決定した優先度に基づいて、前記通話回線の切断処理を実行する交換機部と、を備える自動制御システムである。
【0009】
他方、本発明の一態様にかかる通話回線の自動制御方法は、
通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換するステップと、
変換された前記文字データに基づき、通話回線の優先度を決定するステップと、
決定された前記通話回線の優先度に基づいて、前記通話回線の切断処理を実行するステップと、を有する自動制御方法である。
【0010】
他方、本発明の一態様にかかる通話回線の自動制御プログラムは、
通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換し、
変換された前記文字データに基づき、通話回線の優先度を決定し、
決定された優先度に基づいて、前記通話回線の切断処理を実行する、
処理をコンピュータに実行させる自動制御プログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、輻輳状態の迅速な解消あるいは回避ができる通話回線の自動制御システム、自動制御方法、及び自動制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1の実施形態にかかる通話回線の自動制御システムのブロック図である。
【
図2】第2の実施形態にかかる通話回線の自動制御システムのブロック図である。
【
図3】第2の実施形態にかかる通話回線の自動制御システムの動作フローを示す図である。
【
図4】第2の実施形態にかかるパターン毎の通話回線の目標使用率の一例を示した図である。
【
図5】第2の実施形態にかかる緊急レベルと緊急時キーワードの対応例を示した図である。
【
図6】第2の実施形態にかかるパターン毎の通話データの対象範囲の一例を示した図である。
【
図7】第2の実施形態にかかる通話データと通話内容の一例を示した図である。
【
図8】第2の実施形態にかかる緊急度の算出方法の一例を示した図である。
【
図9】第2の実施形態にかかる通話内容から算出した緊急度とそれに対応する優先順位の一例を示した図である。
【
図10】第2の実施形態にかかる緊急度を算出するための計算式の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0014】
図1に示すように、第1の実施形態にかかる通話回線の自動制御システム10は、音声認識部1、通話データ記憶部2、通信状態監視部3、及び交換機部4を備える。音声認識部1は、通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換する。通話データ記憶部2は、文字データを記憶する。通信状態監視部3は、通話データ記憶部2に記憶された文字データに基づき、通話回線の優先度を決定する。交換機部4は、通信状態監視部3が決定した優先度に基づいて、通話回線の切断処理を実行する。
第1の実施形態にかかる通話回線の自動制御システム10は、使用中の通話回線の優先度を決定し、優先度に基づいて通話回線の切断処理を実行することで、輻輳状態を迅速に解消あるいは回避することができる。
【0015】
(第2の実施形態)
図2に示すように、通話回線の自動制御システム100は、通話データ記憶部101、条件記憶部102、音声認識部103、通信状態監視部104、呼制御部105、及び交換機部106を備える。通信状態監視部104は通話データ記憶部101、条件記憶部102、及び呼制御部105と通信可能に構成されている。交換機部106は音声認識部103、呼制御部105と通信可能に構成されている。さらに、音声認識部103は通話データ記憶部101と通信可能に構成されている。自動制御システムは、例えば、サーバシステム、クラウドシステム等を用いて構成することができる。
【0016】
通話データ記憶部101は、音声認識部103が通話データから変換した文字データを記憶する。条件記憶部102は、通信状態監視部104が通話回線の優先度を決定するために必要な条件を記憶している。さらに、条件記憶部102は、通信状態監視部104が通話回線の輻輳状態を判断する条件を記憶している。これらの条件については詳細を後述する。音声認識部103は、通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換する。通信状態監視部104は、通話データ記憶部101に記憶された文字データに基づき、条件記憶部102の条件を参照し、通話回線の優先度を決定する。呼制御部105は、発信や応答などの制御を行う。交換機部106は、通話回線の接続や切断の処理を実行する。
【0017】
次に、
図3を参照し、本実施形態にかかる通話回線の自動制御システム100の動作フロー、すなわち、自動制御方法をB01〜B11のステップ毎に説明する。本実施形態においては、災害時における通話回線の自動制御システム100の動作フローを想定する。当然のことながら、本発明は災害時以外、例えばイベント時や通常時などにおける輻輳状態の迅速な解消あるいは回避のために利用することもできる。
【0018】
まず、条件記憶部102には、事前に輻輳状態の条件となる、輻輳状態が発生しない最大の回線使用率(以下、目標使用率)が格納されている(B01)。ユーザは、図示しない入力手段により、目標使用率を入力すると、目標使用率が条件記憶部102に格納される。目標使用率の例は、
図4を用いて後述する。さらに条件記憶部102には、通信状態監視部104が通話回線の優先度を決定するために必要な条件が格納されている(B01)。優先度を決定するために必要な条件は、
図5、
図6を用いて後述する。
【0019】
通話が発生すると、交換機部106は通話が発生していることを音声認識部103に通知する(通話音声通知、B02)。交換機部106は、通話音声通知を、通話終了まで継続して音声認識部103に対して出力する。通話音声通知を受信した音声認識部103は、少なくとも通話中に音声の通話データを文字データに変換する。音声認識部103は、変換された文字データを通話データ記憶部101に格納する(B03)。このようにして格納された文字データは一時的に通話終了まで通話データ記憶部101に記憶される。
【0020】
さらに、交換機部106は、通話の発生と同時に、呼制御部105に対しても通信状態を通知する(通信状態通知、B04)。通信状態通知を受信した呼制御部105は、通信状態監視部104に通信状態通知を送信する(B05)。通信状態監視部104は、呼制御部105からの通信状態通知を受信すると、条件記憶部102に記憶されている輻輳状態の判断条件を取得する(B06)。
【0021】
また、通信状態監視部104は、自動制御システム100が稼働している間、呼制御部105からの通信状態通知の情報を基に、継続して通信状態、すなわち回線使用率を監視している(B07)。通信状態監視部104は、条件記憶部102から輻輳状態の判断条件となる目標使用率を取得する(B06)。通信状態監視部104は、監視している回線使用率が目標使用率を超えた場合、すなわち、輻輳状態と判断した場合、条件記憶部102から通話回線の優先度の決定条件を取得する(B08)。通信状態監視部104が輻輳状態と判断した場合、B08〜B11のステップが実行される。ここで、通信状態監視部104は、優先度の決定条件を適用する対象である通話データを取得する必要がある。通信状態監視部104は、通話データ記憶部101に記憶された文字データを取得し(B09)、文字データと通話回線の優先度の決定条件を用いて、通話回線の優先度を決定する。
【0022】
通信状態監視部104は、回線使用率を目標使用率以下にするため、優先度に基づいて切断処理を実行する対象の通話回線を決定し、該当の通話回線を強制的に切断する要求を呼制御部105へ送信する(B10)。通信状態監視部104からの通話回線の強制切断要求を受信した呼制御部105は、例えば、切断が要求された回線に対してアナウンスを再生してもよい。例えば、アナウンスとして、「○○のため、△△秒後に通話を切断します。」といったメッセージを再生する。また、通信状態監視部104からの通話回線の強制切断要求を受信した呼制御部105は、交換機部106へ強制切断要求を送信する(B11)。交換機部106は、指定時間経過後に該当の通話回線を切断する。
【0023】
このような自動制御システム100により、通話回線の輻輳状態の迅速な解消あるいは回避ができる。迅速に輻輳状態を解消あるいは回避できることにより、災害時などにおいては、迅速に災害情報を収集・伝達することができる。
【0024】
ここから、通話回線の優先度の決定方法について説明する。
図4では、条件記憶部102に事前に登録した目標使用率の例を示している。
図4に示すように、所定の値を有する目標使用率として、複数のパターンを登録してもよい。
図4の例では、パターン1は、目標使用率を60%とし、パターン2は目標使用率を70%、パターン3は目標使用率を80%としている。例えば、県庁や防災関係機関の防災通信網の区分けや時間帯などに合わせた複数パターンを条件記憶部102へ登録してもよい。なお、パターン数や目標使用率の数値はこれ以外の数であってもよい。また、パターンについても防災通信網の区分けや時間帯以外の条件を設定してもよい。
【0025】
図5は、通信状態監視部104が通話回線の優先度を決定するために必要な条件の例を示している。この条件は、条件記憶部102に登録されている。条件には、通話データに含まれる特定のキーワードが登録される。例えば災害時においては、特定のキーワードは防災に関するキーワードとすることができる。これにより、防災に関するキーワードに基づいて、通話回線の優先度を決定することができる。
図5の例では特定のキーワードを緊急時キーワードと称すこととする。通信状態監視部104が通話回線の優先度を決定するために必要な条件として、緊急時キーワードと、緊急レベルを設定する。緊急時キーワードは、緊急レベルと関連付けられている。例えば、
図5では、「警戒レベル2、警戒レベル1、避難勧告、大雨注意報、洪水注意報」は緊急レベル1とし、「災害、地震、震度、津波、台風」を緊急レベル2、「警戒レベル5、警戒レベル4、警戒レベル3、大規模災害、大規模震災」を緊急レベル3と登録している。なお、緊急時キーワード及び緊急レベルは、状況に応じ、任意のキーワード及びレベルに設定してもよい。
【0026】
図6に示すように、条件記憶部102に通信状態監視部104が通話回線の優先度を決定するために参照する文字データの対象範囲を設定してもよい。例えば、パターン1のように、通話データである通話データ記憶部101に記憶されている文字データの全文を対象にしてもよい。また、通話データの一部として、通話の開始時点よりも現時点に近い時間帯を対象にする場合、パターン2に示すような通話データのうち直近200文字や、パターン3に示すような通話データのうち直近100文字を対象にしてもよい。通話データ全体よりも、通話データの一部、すなわち通話の開始時点よりも現時点に近い時間帯を対象にすることで、災害が発生した時点に近い時間帯の通話回線の優先度を効率的に決定することができる。
【0027】
通話回線の優先度を算出するために、まず対象とする通話データの例を示す。
図7は具体的な通話内容を示している。
例えば、通話データAは、「はい、〇〇支部です。こちらは防災本部です。10時25分に△△付近で震度4の地震が発生しました。■■地域、□□地域では震度4、●●地域では震度3、▲▲地域には震度2、□□地域では津波の危険性があり、避難勧告が発令されました。警戒レベル3、災害に*」という通話内容とする。
また、通話データBは、「はい、〇〇支部です。こちらは△△部です。明日の□□会議は、10時より△△支部の501会議室で行いますので、***************************」といった通話内容である。
通話データCは、「はい、〇〇支部です。こちらは防災本部です。台風1号の影響で、■■地域、□□地域に大雨注意報、●●地域、▲▲地域に洪水注意報が発令されました。警戒レベル1のため、十分に注意してください。今後の予報として、*******」といった通話内容とする。なお、*は上述の通話内容が継続した際の、任意の通話内容を示している。また、最後の*が現時点に最も近い時点を示している。
【0028】
図8では、
図7に示した通話データAを例とし、通話回線の優先度の決定方法を説明する。
通話発生後、通信状態監視部104が輻輳状態であると判断し、通話回線の優先度を決定する状況に至ったとする。また、条件記憶部102の優先度の決定条件として、通信状態監視部104の参照する通話データの対象範囲が、直近の100文字であるとする。また、緊急時キーワードは
図5に示した例を使用する。
【0029】
まず、通話データA全体から、通話データAの現時点からみて直近の100文字を抽出する(G01)。抽出結果は、「10時25分に△△付近で震度4の地震が発生しました。■■地域、□□地域では震度4、●●地域では震度3、▲▲地域には震度2、□□地域では津波の危険性があり、避難勧告が発令されました。警戒レベル3、災害に*」となる。
図8の例では、直近100文字に*は含まないこととする。
抽出結果から、緊急時キーワードを抽出し、直近の100字に含まれる緊急時キーワードの出現回数を測定する(G02)。条件記憶部102の優先度の決定条件を参照し、緊急時キーワードに対応する緊急レベルを判断する。緊急時キーワードの出現回数と緊急時キーワードに対応する緊急レベルから、緊急度を
図10に示す式1に基づいて算出する(G03)。
【0030】
緊急度は、
図10に示す式1の通り、緊急時キーワードの出現回数と緊急レベルの積を、該当する緊急時キーワード毎に足し合わせ、その和を対象通話データの長さ、つまり文字データの対象範囲の文字数で割った式で計算される。例えば、
図8では、抽出された文字データのうち、緊急時キーワード「震度」が出現回数4回、緊急レベル2である。同様に、緊急時キーワード「地震」が出現回数1回、緊急レベル2、「津波」が出現回数1回、緊急レベル2、「避難勧告」が出現回数1回、緊急レベル1、「警戒レベル3」が出現回数1回、緊急レベル3、となる。また、対象通話データの長さは100字である。これらの数字を式1にあてはめ、計算すると、緊急度は16%と算出される。
【0031】
図9には、通話データAの他に、
図7で示した通話データB及び通話データCの緊急度をそれぞれ示している。
図8は、
図8と同じく文字データとして直近の100文字を抽出している。なお、通話データBは文字データが100字以内であるため、文字データ全体を対象範囲とする。このような場合において、対象通話データの長さを他の対象通話データの長さと同様の100字として計算してもよく、また、対象通話データの長さの文字数が100字未満であった場合、実際の対象通話データの文字数として設定してもよい。今回は、対象通話データの長さを100字とする。
【0032】
通話データBには、緊急時キーワードは1つも含まれておらず、式1より緊急度は0%と算出される。また、通話データCでは、抽出された文字データのうち、緊急時キーワード「台風」が出現回数1回、緊急レベル2である。また、「大雨注意報」が出現回数1回、緊急レベル1、「洪水注意報」が出現回数1回、緊急レベル1、「警戒レベル1」が出現回数1回、緊急レベル1となる。これらの数字を式1にあてはめ、計算すると、緊急度は5%と算出される。
【0033】
通話データAの緊急度は16%であり、通話データBの緊急度は0%、通話データCの緊急度は5%である。これより、優先度を緊急度の値が大きいものから並べる優先順位とした場合、優先順位1位が通話データA、優先順位2位が通話データC、優先順位3位が通話データBとなる。上述の例では、通話データが3つのみであるが、例えば、通話回線を目標使用率以下にするために、このうち1つの通話回線を切断する場合は、優先順位の低い回線である通話データBの通話回線が切断される。通信状態監視部104は、優先度に基づいて、通話回線の使用率が目標使用率以下になるように通話回線の切断を呼制御部105に要求する。切断要求を受けた呼制御部105は、交換機部106へ切断要求を伝達する。切断要求を受けた交換機部106が自動的に通話回線を切断する。
【0034】
このような通話回線の自動制御システム100により、使用中の通話回線の優先度を決定し、優先度に基づいて通話回線の切断処理を実行することができる。したがって、通話回線の輻輳状態の迅速な解消あるいは回避が可能となり、災害時などにおいては、迅速に災害情報を収集・伝達することができる。
【0035】
本実施形態にかかる各処理は、通話回線の自動制御プログラムをコンピュータに実行させることで実施してもよい。
【0036】
上述の例において、各種制御プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM)を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0037】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 音声認識部
2 通話データ記憶部
3 通信状態監視部
4 交換機部
10 自動制御システム
100 自動制御システム
101 通話データ記憶部
102 条件記憶部
103 音声認識部
104 通信状態監視部
105 呼制御部
106 交換機部
【要約】 (修正有)
【課題】輻輳状態の迅速な解消あるいは回避ができる通話回線の自動制御システム、自動制御方法及び自動制御プログラムを提供する。
【解決手段】通話回線の自動制御システム10は、通話中の通話データを少なくとも通話中に文字データに変換する音声認識部1と、文字データを記憶する通話データ記憶部2と、通話データ記憶部2に記憶された文字データに基づき、通話回線の優先度を決定する通信状態監視部3と、通信状態監視部3が決定した優先度に基づいて、通話回線の切断処理を実行する交換機部4と、を備える。
【選択図】
図1