(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
掘削・仮固化工程、固化材注入工程及び芯材建込み・固化工程の3工程を、それぞれ別異の施工機械を用いて並行作業として行うソイルセメント地中連続壁施工法であって、少なくとも以下の工程<1><2><3>を含むことを特徴とするソイルセメント地中連続壁施工法。
<1>多軸柱列式施工機械又は等厚式施工機械の掘削・仮固化用施工機械により、気泡とセメント系固化材スラリー、又は気泡と石膏系固化材スラリーを含有する軽度に固化させるための掘削注入材を掘削土と混合・混練し、この混合体を軽度に固化させた仮固化体からなる壁体を造成する掘削・仮固化工程;
<2>工程<1>の掘削・仮固化工程に続いて、クレーンやケリーバーによる吊下げ式、あるいはリーダーにより保持する形式の多軸オーガー方式施工機械の固化材注入用施工機械により、前記仮固化体に、セメント系固化材スラリー又は粉体状の固化材を注入又は圧送・混練し、ソイルセメント壁を造成する固化材注入工程;
<3>次いで、工程<2>の固化材注入工程の完了したソイルセメントに芯材を建込み、前記仮固化体を完全に固化させる芯材建込み・固化工程。
【背景技術】
【0002】
ソイルセメント地中連続壁施工法は、地盤中に土留壁や汚染物質拡散防止用止水壁等を構築するために一般的に使用される工法である。
【0003】
例えば、柱列式施工機械を用いてソイルセメント地中連続壁を施工する場合には、まず、掘削工程として、施工機械の先端部より掘削注入材を添加しながら地盤の掘削を行い、掘削土と掘削注入材の混合土を造成し、該混合土により孔壁の安定性と施工に必要な流動性を持たせ掘削底まで掘削を行う。ここで掘削注入材としては、セメントスラリーが一般的に使用される。この掘削工程に引き続き、固化工程として、施工機械の先端部から適量のセメントスラリーを混合土に添加・混合・撹拌しつつ、施工機械を引上げ、H鋼等の芯材の挿入性に適した軟らかさを持たせたソイルセメント壁を造成する。次に、芯材挿入工程として、固化工程の終了から間をあけずに、前記ソイルセメント壁中にH鋼等の芯材をクレーンを用いて挿入する。
【0004】
このような従来のソイルセメント地中連続壁施工法の特徴は、掘削工程、固化工程及び芯材挿入工程の3工程を1組として、各工程間で時間をおかずに繰り返し施工することにより連続した壁体を構築するところにある。
【0005】
上記の3工程を一連の作業として各工程間の間をおかずに施工する理由としては、掘削工程において掘削注入材としてセメントスラリーを使用するがために、掘削開始からセメントの水和反応が始まり、セメントが硬化するまでに芯材挿入を終了させる必要があることが挙げられる。言い換えれば、従来のソイルセメント地中連続壁施工法では、セメントの水和反応という時間的な制約があるために、3工程を1組として連続的に完了させなければならなかった。さらに、従来のソイルセメント地中連続壁施工法では、掘削工程と固化工程において同一の施工機械を使用するため、経済性の観点から、施工機械の稼働率を向上させる必要があることもその理由として挙げられる。
【0006】
本発明者らは、上記従来の施工方法よりも施工機械の稼働率を向上させ、工期の短縮と工費低減を図るために、これまでに特許第5513182号(特許文献1)及び特開2015-63888号公報(特許文献2)に記載された工法を提案している。
【0007】
特許文献1、2の工法においては、掘削工程(掘削・仮固化工程)、固化工程及び芯材工程を並行作業とならしめるために、掘削工程、固化工程及び芯材工程の各工程において各々別異の施工機械を使用し、かつ掘削工程では掘削注入材として固化材スラリーを含有しない気泡を掘削孔に注入して、該掘削孔中に非硬化性混合体である混合土を造成することを特徴としている。
【0008】
通常、このように掘削工程(掘削・仮固化工程)において、固化材スラリーを含有しない掘削注入材を用いた場合、掘削・仮固化工程により造成した混合土壁は非硬化性混合体となり、自立性に乏しいため、続く固化工程において非硬化性混合体の所定の範囲(固化領域)にセメントスラリー等の固化材スラリーを添加・混練すると、該固化材スラリーが固化領域外に流出し、固化壁の強度が低下することがあった。また、固化領域外に流出した固化材スラリーは、固化領域外の非硬化性混合体と混じり合い、予期せぬ地盤を硬化させる場合があった。
【0009】
そこで、特許文献1の工法では、固化作業を行う時は固化領域と隣接部の非硬化性領域を分けることを目的として、これらの領域の境界に移動可能な隔壁を設けることにより、固化領域のみに固化材スラリーを注入・混合・混練し、固化体(ソイルセメント壁)の品質を良好なものとすることができる。
【0010】
また、特許文献2の工法では、掘削・仮固化工程において掘削土と非硬化性注入材の非硬化性混合体を造成し、次いで、固化工程として非硬化性混合体に消泡剤を含む固化材スラリーを注入・混合・混練し、掘削・仮固化工程において形成された気泡安定液を含有する層に芯材を挿入し、この芯材を隔壁として利用することにより、固化材スラリーと固化領域外の非硬化性混合体部分との混合を防ぐことができる。
【0011】
このように特許文献1、2の工法では、掘削工程(掘削・仮固化工程)において、固化材スラリーを含有しない掘削注入材を用いることにより、セメントの水和反応を考慮する必要がなくなり、固化工程の作業のタイミングを掘削工程に制限されることなく実施することができ、しかも各施工機械の稼働率が向上し、工期の短縮と工事費の低減を可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1の隔壁を移動させながら順次固化工程を行う施工方法では、隔壁を移動させるために大型のクレーン等を導入する必要が有り、各施工機械の稼働効率、施工効率の面からコスト改善の余地が残されていた。
【0014】
また、特許文献2の工法では、固化工程において注入された消泡剤により、掘削・仮固化工程において形成された気泡安定液を含有する層中の気泡が消失し、芯材の挿入前に固化領域の非硬化性混合体の流動性が低下する等、改善の余地が残されていた。
【0015】
このような背景から、本発明者らは、上記の工法の改良について鋭意検討を重ねた結果、掘削・仮固化工程における掘削注入材として気泡と固化材スラリーを使用し、掘削土と掘削注入材の混合土を低強度に固化させる(以下において、掘削土と掘削注入材の混合土の圧縮強度を低強度に固化させた固化土を、「仮固化土」と称す)ことにより、固化領域における固化材注入工程の作業中に、該固化領域に隣接する仮固化土への影響を抑制し、しかも固化体の品質および各施工機械の稼働率を向上させ、工期の短縮と工事費を低減させることを見出し、本発明の完成に至った。
【0016】
本発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、掘削・仮固化工程、固化材注入工程、芯材建込み・固化工程の3工程を並行作業で実施するソイルセメント地中連続壁の施工法において、ソイルセメント壁の品質を保つために掘削・仮固化工程において仮固化土の圧縮強度を低強度に固化させることにより品質の良好なソイルセメント壁を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法は、上記のとおりの課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0018】
第1に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法は、掘削・仮固化工程、固化材注入工程及び芯材建込み・固化工程の3工程を、それぞれ別異の施工機械を用いて並行作業として行うソイルセメント地中連続壁施工法であって、少なくとも以下の工程<1><2><3>を含むことを特徴とする。
<1>掘削・仮固化用施工機械により掘削注入材を掘削土と混合・混練し、この混合体を軽度に固化させた仮固化体からなる壁体を造成する掘削・仮固化工程;
<2>工程<1>の掘削・仮固化工程に続いて、固化材注入施工機械により前記仮固化体に固化材を注入・混練し、ソイルセメント壁を造成する固化材注入工程;
<3>次いで、工程<2>の固化材注入工程の完了したソイルセメントに芯材を建込み、前記仮固化体を完全に固化させる芯材建込み・固化工程。
【0019】
第2に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<1>において、前記掘削注入材が気泡とセメント系固化材スラリーを含有することが好ましく考慮される。
【0020】
第3に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<1>において、前記掘削注入材が気泡と石膏系固化材スラリーを含有することが好ましく考慮される。
【0021】
第4に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<2>において、前記固化材がセメント系固化材スラリーであることが好ましく考慮される。
【0022】
第5に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<2>において、前記固化材として、粉体状の固化材を圧縮空気により固化材注入用施工機械の掘削・混合装置に圧送し、仮固化体と混合・撹拌することが好ましく考慮される。
【0023】
第6に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、上記第4または第5の発明において、前記セメント系固化材スラリーまたは前記粉体状の固化材に加えて、さらに消泡剤を添加することが好ましく考慮される。
【0024】
第7に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<1>において、前記掘削・仮固化用施工機械が多軸柱列式施工機械または等厚式施工機械であることが好ましく考慮される。
【0025】
第8に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<2>において、前記固化材注入用施工機械がクレーンやケリーバーによる吊下げ式、あるいはリーダーにより保持する形式の多軸オーガ方式施工機械であることが好ましく考慮される。
【0026】
第9に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<1>において、前記掘削・仮固化用施工機械による施工時の杭間隔を一定に保つことが好ましく考慮される。
【0027】
第10に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<2>において、前記固化材注入用施工機械による施工時の杭間隔を一定に保つことが好ましく考慮される。
【0028】
第11に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<1>において、前記掘削注入材の注入量を施工対象の地盤の土壌特性に応じて変化させることが好ましく考慮される。
【0029】
第12に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記工程<2>において、前記固化材の注入量を前記仮固化体の土壌特性に応じて変化させることがこのましく考慮される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、掘削・仮固化工程、固化材注入工程、芯材建込み・固化工程の3工程を並行作業で実施するソイルセメント地中連続壁の施工法において、ソイルセメント壁の品質を保つために掘削・仮固化工程において仮固化土の圧縮強度を低強度に固化させることにより品質の良好なソイルセメント壁を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法について図面に沿って詳細に説明する。
【0033】
図1は、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法を模式的に示した概略工程断面図である。
【0034】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法は、掘削・仮固化工程、固化材注入工程及び芯材建込み・固化工程の3工程を、それぞれ別異の施工機械を用いて並行作業として行うことを特徴とするソイルセメント地中連続壁施工法であって、少なくとも以下の工程<1><2><3>を含むことを特徴とする。
【0035】
すなわち、<1>掘削・仮固化用施工機械により掘削注入材を掘削土と混合・混練し、この混合体を軽度に固化させた仮固化体からなる壁体を造成する掘削・仮固化工程;<2>工程<1>の掘削・仮固化工程に続いて、固化材注入施工機械により前記仮固化体に固化材を添加・混練し、ソイルセメント壁を造成する固化材注入工程;<3>次いで、工程<2>の固化材注入工程の完了したソイルセメントに芯材を建込み、前記仮固化体を完全に固化させる芯材建込み・固化工程を含んでいる。なお、
図1では、掘削・仮固化工程、固化材注入工程及び芯材建込み・固化工程の3工程を、それぞれ別異の施工機械を用いて並行作業として行っているので、図中左側に示した芯材建込み・固化工程では、掘削・仮固化工程と固化材注入工程が完了した後に芯材建込み・固化工程を行っており、図中右側に示した掘削・仮固化工程では、未処理の地盤を掘削していることを示している。
【0036】
図1に示したように、ソイルセメント地中連続壁施工法の工程<1>では、掘削・仮固化用施工機械の先端部の取り付けられた掘削・混合装置で地盤を掘削しつつ、掘削孔に掘削注入材を注入し、掘削土と前記掘削注入材を混合した仮固化土を造成する。仮固化土は、時間の経過とともに低強度に固化する。なお、ここでいう「低強度に固化」の用語は、後述の工程<2>固化材注入工程における固化材の注入・混練やエアブロー圧程度では崩壊しない圧縮強度50kN/m
2以上程度に固化している状態を意味している。
【0037】
従来のソイルセメント地中連続壁施工法では、前記のとおり、掘削注入材としてセメントスラリーを用いており、均一な固化を促すために、掘削工程(掘削・仮固化工程)において掘削土とセメントスラリーを十分攪拌混合することが求められていた。そのため、施工機械の貫入時よりも引上時の速度を低速化して掘削土と掘削注入材であるセメントスラリーとを十分攪拌混合する必要があった。しかしながら、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、掘削・仮固化工程及び固化材注入工程の二工程において、土とセメントスラリーの混合・混練が行われるので、掘削・仮固化工程用施工機械及び固化材注入工程用施工機械の貫入時の速度及び引き上げ時の速度は、従来のソイルセメント地中連続壁施工法に比べておおよそ2倍程度に高速化することが可能である。したがって、施工時間の短縮によるコストダウンが可能となる。
【0038】
掘削孔の孔径としては、例えば、φ600mm程度が例示されるが、掘削・仮固化工程用施工機械の先端部に取り付けられた掘削・混合装置のシャフトの直径等に応じて適宜変更することが可能である。
【0039】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<1>において、掘削・仮固化用施工機械が多軸柱列式施工機械または等厚式施工機械であることが好ましく考慮される。
図1においては、掘削・仮固化用施工機械として多軸柱列式施工機械を例示したが、等厚式施工機械も好適に使用できる。これらの掘削・仮固化用施工機械は、機械器具損料が高額であるが、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<1>のみに用いることから、機械器具損料の総額を低下させて施工費を抑えることができる。
【0040】
掘削・混合装置は、例えば、その先端部等に貫通孔を有するとともに側面に攪拌羽等を有し、回転自在な構造であることが例示される。このような掘削・混合装置を用いると、地盤の掘削と、掘削・混合装置の先端部等の貫通孔から、掘削孔内に掘削注入材を注入しつつ、この掘削注入材と掘削土との混合攪拌とを同時に行うことができ、均一な仮固化土を効率よく造成することができる。
【0041】
このような掘削・混合装置の材質としては、例えば、耐食性を備えるステンレス鋼等が好適に用いられる。
【0042】
掘削注入材は、地盤の掘削に必要であることから、掘削・混合装置が掘削底に到達するまでに注入量の100%を地盤に注入することが好ましく考慮される。
【0043】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、掘削注入材が気泡とセメント系固化材スラリーを含有すること好ましく考慮される。ここでいうセメント系固化材スラリーは、従来のソイルセメント地中連続壁施工法の掘削工程で用いる掘削注入材中のセメントスラリーと比較するとセメント量が少なく、掘削土と攪拌混合しても混合土を強固に固化させることはできない組成である。このようなセメント系固化材スラリーと気泡を含有する掘削注入材を用いることにより、前記のとおり、掘削土と前記掘削注入材を混合して造成した仮固化土は、時間の経過とともに低強度に固化する。仮固化土は、完全に固化したソイルセメントや、未掘削の地盤と比較すると低強度であり、本発明の工程<1>や従来のソイルセメント地中連続壁施工法の掘削工程および固化工程で用いられる多軸柱列式施工機械などの大型の施工機械より、小型かつ軽装備な施工機械であっても容易に貫入させることが可能である。
【0044】
仮固化土の圧縮強度については、1)固化体中の気泡量が多いほど仮固化土の圧縮強度が低いこと、2)セメント量が少なくなるほど仮固化土の圧縮強度が低いこと、3)養生日数が少ないほど仮固化土の圧縮強度が低いこと、が一般的に把握される。
【0045】
例えば、表1に示したように、仮固化土がセメントにより凝結・固化し、流動性がなくなり気泡の分離が生じない状態は、セメントの添加から1日以内に生じており、固化材注入工程施工時の撹拌エネルギーによる影響を考慮し、養生期間1日で圧縮強度50kN/m
2の仮固化土を得るには、セメント量を100kg/m
3、気泡量を50L/m
3とすることが好ましく例示される。また、例えば、セメント量を200kg/m
3とすると、気泡量を400L/m
3とすることが好ましく考慮されるが、経済性の観点からは、セメント量および気泡量がともに少ないほうが、掘削注入材の使用量を抑制することができるため、セメント量を100kg/m
3、気泡量を50L/m
3とすることが好ましい。なお、上記の実施形態においては、水セメント比(W/C)は80% と一定値にした。
【0047】
また、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、掘削注入材が気泡と石膏系固化材スラリーを含有することが好ましく考慮される。石膏は、無水石膏にアルカリ性物質を混合したものや半水石膏等を使用することができるが、半水石膏を好適に用いることができる。
【0048】
掘削注入材として半水石膏を使用した場合、半水石膏の添加から1日以内に仮固化土が凝結・硬化し、流動性がなくなり気泡の分離が生じない状態となる。また、掘削注入材として半水石膏を使用した場合、養生期間1日で圧縮強度50kN/m
2以上の仮固化土を得るには、例えば、半水石膏量を100kg/m
3、気泡量を50L/m
3とすることが例示される。なお、上記の実施形態では、水/半水石膏の比率は50%とした。また、半水石膏スラリーは分単位で水和反応するので、1時間程度で所望の圧縮強度に達し、1日以上の養生をしても強度増加はほとんど認められない。
【0049】
掘削注入材には、所望の気泡を発生させるために起泡剤を使用することが好ましく考慮される。起泡剤としては、例えば、通常公知の界面活性剤を用いることができるが、中でも気泡そのもの、さらに、掘削土と混合した場合であっても消泡し難く、しかも酸やアルカリ等に対する化学的安定性に優れ、かつ起泡能力に優れる起泡剤であることが望まれる。このような起泡剤としては、例えば、アルキルサルフェート系界面活性剤を好適に用いることができる。
【0050】
アルキルサルフェート系界面活性剤として、市販のWTM起泡剤(フローリック社製WTM起泡剤原液を清浄な水で20倍に希釈したもの)を25倍に起泡し、比重0.04、最頻値が200μm程度の気泡を含有するものを使用した場合、セメントの凝結により仮固化土が硬化した後では、仮固化土中の気泡は掘削土と混合した状態で固定化されるので、固化材注入工程において固化材スラリーとの混練が始まるまで、その形状を保持することができる。
【0051】
このような掘削注入材と掘削土の混合土は、時間の経過とともに低強度に固化し、仮固化土となる。
【0052】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、上記工程<1>の掘削・仮固化工程に続いて、工程<2>として固化材注入工程を行う。すなわち、固化材注入用施工機械の先端部の掘削・混合装置で仮固化土を掘削しつつ、固化材を添加し混合・混練を行い、ソイルセメント壁体を造成することができる。仮固化土は、通常の地盤や完全に硬化したソイルセメント壁体と比較すると低強度に固化しているので、掘削・仮固化施工機械よりも軽装備な施工機械であっても、容易に掘削攪拌することが可能である。そのため、レンタル料が高額な軸柱列式施工機械などの重装備の施工機械を確保する必要がなく、施工機械のレンタル料等の観点から施工費を低減させることができる。
【0053】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<2>において、固化材注入用施工機械がクレーンやケリーバーによる吊下げ式、あるいはリーダーにより保持する形式の多軸オーガ方式施工機械であることが好ましく考慮される。固化材注入用施工機械の先端部の材質としては、例えば、耐食性を備えるステンレス鋼等が好適に用いられる。
【0054】
固化材注入工程の施工時期は、仮固化土中のセメントあるいは石膏が水和反応により凝結・固化し仮固化土の流動性がなくなり、気泡が固定化される状態を目安にして行うことが好ましく考慮される。また、固化材注入工程施工時の撹拌エネルギーによる影響を考慮すると、圧縮強度がおおよそ50kN/m
2以上であれば、固化掘削作業を開始することができる。
【0055】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<2>において、セメント系固化材スラリーを用いることが好ましく考慮される。
【0056】
また、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<2>において、固化材として、粉体状の固化材を圧縮空気により固化材注入施工機械の掘削・混合装置に圧送し、仮固化体と混合・撹拌することが好ましく考慮される。
【0057】
さらにまた、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、セメント系固化材スラリーまたは粉体状の固化材に加えて、さらに消泡剤を添加することが好ましく考慮される。すなわち、固化材注入工程において仮固化土中の気泡を消泡させると、ソイルセメントの強度が増加するので、通常は固化材中に消泡剤を添加し、仮固化土との混合・混練時に消泡させることが好ましい。このような消泡剤としては、用いる気泡剤に応じて適切なものを選ぶことができる。
【0058】
次いで、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<3>として、工程<2>の固化材注入工程の完了したソイルセメントに芯材を建込み、前記仮固化体を完全に固化させる芯材建込み・固化工程を行う。
【0059】
芯材建込み・固化工程では、固化材注入工程において供給した固化材または固化材含有スラリーによって仮固化土が完全に固化する前に、H鋼、鋼材などの芯材、鉄筋かご、側壁部材、プレキャスト製のコンクリート材等の芯材をソイルセメント中に建て込むことができる。
【0060】
このような芯材を建て込む際には、固化材注入用施工機械の引上時に形成された孔から固化材を含む排泥土が発生しないように、固化工程における固化材または固化材含有スラリーの注入量を調整しておくことが好ましく考慮される。
【0061】
以下に、掘削・仮固化工程および固化材注入工程において施工時の杭間隔を一定に保つことの優位性を図に沿って説明する。
図3は、従来の3軸柱列施工機械による施工方法を模式的に示した概略平面図である。従来の施工方法では、3軸柱列施工機械を用いて3本の改良杭を杭間隔dで施工を行い、改良杭3本を1エレメントとして順次施工を行う。まず3軸柱列式施工機械でエレメント1、2、3の順序で施工する場合、施工時の垂直精度を考慮してエレメント間の離れが生じないようにエレメントの端部は杭1本分を重複させた施工を行う。このため、杭3本分を1エレメントとして施工を行っても1エレメントによる施工延長は2dとなる。すなわち、エレメント1、2、3の合計3回の施工を行っても、地盤には、9つの掘削孔が掘削されるのではなく、合計7つの掘削孔が掘削されるに留まる。
【0062】
一方、本発明のソイルセメント地中壁連続施工法では、工程<1>において、掘削・仮固化用施工機械による施工時の杭間隔を一定に保つことが好ましく考慮される。また、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<2>において、固化材注入用施工機械による施工時の杭間隔を一定に保つことが好ましく考慮される。すなわち、
図2(A)(B)に示したように、施工時の杭間隔を常に一定のdに保つ施工を行うので、
図3に示した従来の施工法に比較して掘削孔の重複部は小さくなり、その結果として、1エレメント当たりの施工長は3dとなる。このように、掘削・仮固化工程と固化材注入工程を個別の施工機械で施工することにより1エレメント当たりの施工延長は1.5倍(=3d/2d)となる。
【0063】
なお、掘削底の深度が深くなり、しかもエレメントの施工精度が良好でない場合には、各エレメントの重複部の面積が小さくなり、隣接したエレメント同士が地下において離間してしまう可能性があるので、掘削・仮固化工程における重複部の位置を固化材注入工程の杭の中心部とすることにより隣接したエレメントの離れを防止することができる。
【0064】
本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<1>において、掘削注入材の注入量を施工対象の地盤の土壌特性に応じて変化させることが好ましく考慮される。
【0065】
また、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法では、工程<2>において、固化材の注入量を仮固化体の土壌特性に応じて変化させることが好ましく考慮される。
【0066】
すなわち、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法の対象地盤は、常に均質ではなく、性状の異なる地層より成り立つので、地層性状、土壌特性に応じて、掘削注入材の注入量や固化材の注入量を変化させ、施工品質、施工速度や排泥土量を好適な範囲に調整する対応をとることが望ましい。
【0067】
地層性状、土壌特性としては、例えば、土壌組成、透水性等が例示される。
【0068】
以上の説明のとおり、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法によれば、これまで連続的に施工する必要があり、切り離すことができなかった、掘削工程(掘削・仮固化工程)、固化材注入工程及び芯材建込み・固化工程の各工程を独立させることができる。さらに、本発明のソイルセメント地中連続壁施工法によれば、上記の各工程における施工機械の編成を見直すことにより、各工程を並行作業で進めることができるようにし、施工機械の稼働率を向上させ、それにより施工費用の低減と工期短縮を可能とし、しかもソイルセメント地中連続壁の品質を向上させることができる。