(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記底壁用突部は、上記底壁における上記幅方向の一端付近および他端付近において上記送給方向の前方端部から後方端部まで上記底壁が向く方向に凸となるように湾曲して延びる底壁用ソリ形状部を含み、
上記第1側壁用突部は、上記第1側壁の下端付近および上端付近において上記送給方向の前方端部から後方端部まで上記第1側壁が向く方向に凸となるように湾曲して延びる第1側壁用ソリ形状部を含み、
上記第2側壁用突部は、上記第2側壁の下端付近および上端付近において上記送給方向の前方端部から後方端部まで上記第2側壁が向く方向に凸となるように湾曲して延びる第2側壁用ソリ形状部を含む、請求項1に記載のワイヤ送給装置。
上記底壁用突部のうち上記幅方向の一端付近に位置する部分と、上記第1側壁用突部のうち下端付近に位置する部分とは、上記底壁と上記第1側壁とがなす角部において一体とされており、
上記底壁用突部のうち上記幅方向の他端付近に位置する部分と、上記第2側壁用突部のうち下端付近に位置する部分とは、上記底壁と上記第2側壁とがなす角部において一体とされている、請求項1または2に記載のワイヤ送給装置。
上記底壁のうち上記送給方向の前方寄りの部分は、上記送給方向の前方に向かうにつれて上方に変位するように傾斜する、請求項1ないし4のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
上記ケースは、上記筒状周壁よりも上記送給方向における後方側につながり、底部が上記筒状周壁の上記底壁よりも上方に位置するように凹んだ後方側筒部と、当該後方側筒部の上記底部につながる把手と、を有し、
上記把手は、上記底壁用突部の下端により形成される仮想面よりも下方に突出しない、請求項1ないし6のいずれかに記載のワイヤ送給装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、半自動溶接において溶接作業の作業性の向上を図るのに適したワイヤ送給装置を提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0007】
本発明によって提供されるワイヤ送給装置は、ワイヤ送給機構を収容するケースを備え、溶接ワイヤを所定の送給方向に送り出すワイヤ送給装置であって、上記ケースは、上記送給方向に延びる底壁と、当該底壁の幅方向の一端側および他端側から起立する第1側壁および第2側壁と、を含む筒状周壁を有し、上記筒状周壁には、上記底壁の少なくとも上記幅方向の一端付近および他端付近、かつ上記送給方向の前方寄りおよび後方寄りにおいて上記底壁が向く方向に突出する底壁用突部と、上記第1側壁の少なくとも下端付近および上端付近、かつ上記送給方向の前方寄りおよび後方寄りにおいて上記第1側壁が向く方向に突出する第1側壁用突部と、上記第2側壁の少なくとも下端付近および上端付近、かつ上記送給方向の前方寄りおよび後方寄りにおいて上記第2側壁が向く方向に突出する第2側壁用突部と、が設けられている。
【0008】
好ましい実施の形態においては、上記底壁用突部は、上記底壁における上記幅方向の一端付近および他端付近において上記送給方向の前方端部から後方端部まで上記底壁が向く方向に凸となるように湾曲して延びる底壁用ソリ形状部を含み、上記第1側壁用突部は、上記第1側壁の下端付近および上端付近において上記送給方向の前方端部から後方端部まで上記第1側壁が向く方向に凸となるように湾曲して延びる第1側壁用ソリ形状部を含み、上記第2側壁用突部は、上記第2側壁の下端付近および上端付近において上記送給方向の前方端部から後方端部まで上記第2側壁が向く方向に凸となるように湾曲して延びる第2側壁用ソリ形状部を含む。
【0009】
好ましい実施の形態においては、上記底壁用突部のうち上記幅方向の一端付近に位置する部分と、上記第1側壁用突部のうち下端付近に位置する部分とは、上記底壁と上記第1側壁とがなす角部において一体とされており、上記底壁用突部のうち上記幅方向の他端付近に位置する部分と、上記第2側壁用突部のうち下端付近に位置する部分とは、上記底壁と上記第2側壁とがなす角部において一体とされている。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記底壁用突部、上記第1側壁用突部、および上記第2側壁用突部は、着脱可能に設けられている。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記底壁のうち上記送給方向の前方寄りの部分は、上記送給方向の前方に向かうにつれて上方に変位するように傾斜する。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記ケースの内部には、溶接トーチに冷却水を流すための水冷用ホースが上記送給方向における後方端から前方端まで貫通状に配置されており、上記ケースの上記送給方向における前方端部には、上記水冷用ホースを覆う状態でカバーが取り付けられている。
【0013】
好ましい実施の形態においては、上記ケースは、上記筒状周壁よりも上記送給方向における後方側につながり、底部が上記筒状周壁の上記底壁よりも上方に位置するように凹んだ後方側筒部と、当該後方側筒部の上記底部につながる把手と、を有し、上記把手は、上記底壁用突部の下端により形成される仮想面よりも下方に突出しない。
【0014】
好ましい実施の形態においては、上記ケースは、上記筒状周壁よりも上記送給方向における後方側につながり、底部が上記筒状周壁の上記底壁よりも上方に位置するように凹んだ後方側筒部を有し、上記後方側筒部の頂部には、溶接条件を設定するための操作部が設けられている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、溶接作業の際、作業場床面に載置されたワイヤ送給装置において作業場床面と接触するのは、底壁用突部だけである。このため、作業者がワイヤ送給装置を引き回す場合において作業場床面との摩擦抵抗が低減し、ワイヤ送給装置を容易に滑らせて移動させることができる。したがって、ワイヤ送給装置を移動させながら溶接作業を行う場合において、溶接作業の作業性の向上を図ることができる。また、ワイヤ送給装置が引っ張られて転倒し、第1側壁あるいは第2側壁が作業場床面を向く姿勢をとる場合でも、ワイヤ送給装置において作業場床面と接触するのは、第1側壁用突部あるいは第2側壁用突部だけである。したがって、ワイヤ送給装置が転倒した場合においても、ワイヤ送給装置を容易に滑らせて移動させることができ、溶接作業の作業性の向上を図ることができる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0019】
図1、
図2は、本発明に係るワイヤ送給装置を備えた溶接システムの一例を示す全体構成図である。
図1に示すように、溶接システムA1は、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、中間ケーブル3、ワイヤ送給装置4、溶接トーチ5、トーチケーブル59、パワーケーブル61,62、電力伝送線63、信号線64、ガスボンベ7およびガス配管65を備えている。
【0020】
溶接電源装置1の一方の出力端子は、パワーケーブル61を介して、溶接トーチ5に接続されている。ワイヤ送給装置2,4は、溶接ワイヤを溶接トーチ5に送り出して、溶接ワイヤの先端を溶接トーチ5の先端から突出させる。溶接トーチ5の先端に配置されているコンタクトチップにおいて、パワーケーブル61と溶接ワイヤとは電気的に接続されている。溶接電源装置1の他方の出力端子は、パワーケーブル62を介して、被加工物Wに接続される。溶接電源装置1は、溶接トーチ5の先端から突出する溶接ワイヤの先端と、被加工物Wとの間にアークを発生させ、アークに電力を供給する。溶接システムA1は、当該アークの熱で被加工物Wの溶接を行う。
【0021】
溶接システムA1においては、溶接時にシールドガスが用いられる。ガスボンベ7内のシールドガスは、溶接電源装置1、ワイヤ送給装置2、中間ケーブル3およびワイヤ送給装置4を通るように設けられているガス配管65によって、溶接トーチ5の先端に供給される。なお、溶接システムA1は、溶接トーチ5に冷却水を循環させるようになっていてもよい。本実施形態においては、溶接トーチ5に冷却水を循環させる場合について説明する。
【0022】
溶接電源装置1は、アーク溶接のための電力を溶接トーチ5に供給するものである。溶接電源装置1は、電力系統(図示略)から入力される三相交流電力を、ワイヤ送給装置2,4の送給モータなどを駆動するための直流電力に変換して、電力伝送線63、中間ケーブル3を介してワイヤ送給装置2,4に出力する。
【0023】
溶接電源装置1は、溶接条件などに応じて電力を出力するように制御されており、溶接条件などは、図示しない操作部の操作に応じて変更される。また、溶接電源装置1は、信号線64を介して溶接トーチ5やワイヤ送給装置4から入力される信号に応じて、溶接条件などを変更する。
【0024】
ワイヤ送給装置2は、溶接ワイヤを溶接トーチ5に送り出すものである。溶接ワイヤは、中間ケーブル3、ワイヤ送給装置4、トーチケーブル59および溶接トーチ5の内部に設けられているライナの内部を通って、溶接トーチ5の先端に導かれる。ワイヤ送給装置2は、いわゆるプッシュ側送給装置である。ワイヤ送給装置2は、電力伝送線63を介して溶接電源装置1から供給される電力で、送給モータなどを駆動させる。また、この電力は、ワイヤ送給装置2から中間ケーブル3内部に設けられている電力伝送線(図示せず)を介してワイヤ送給装置4に供給され、トーチケーブル59内部に設けられている電力伝送線(図示せず)を介して溶接トーチ5にも供給される。ワイヤ送給装置2は、信号線64を介して、溶接電源装置1と通信を行う。また、ワイヤ送給装置2は中間ケーブル3内部に設けられている信号線(図示せず)を介して、ワイヤ送給装置4と通信を行い、トーチケーブル59内部に設けられている信号線(図示せず)を介して溶接トーチ5とも通信を行う。
【0025】
中間ケーブル3は、ワイヤ送給装置2とワイヤ送給装置4とを接続するためのケーブルである。中間ケーブル3は、ケーブル本体31と、接続部32,33とを有する。本実施形態においてケーブル本体31の内部には、パワーケーブル、ガス配管、ライナ、電力伝送線および信号線(いずれも図示せず)が配置されている。また、本実施形態において、ケーブル本体31の内部には、冷却水を流すための水冷用ホース(図示せず)が配置されている。
【0026】
接続部32は、ケーブル本体31の一端に設けられている。接続部33は、ケーブル本体31の他端に設けられている。接続部32は、アダプタ8を介してワイヤ送給装置2に接続されている。接続部32は、たとえば凸型の接続用コネクタ(図示せず)を有し、当該接続用コネクタをアダプタ8の端部に備えられた凹型の接続用コネクタ(図示せず)に挿し込むことで中間ケーブル3とアダプタ8とが接続される。この接続部32を介して、ワイヤ送給装置2の内部のパワーケーブル、ガス配管、ライナ、電力伝送線および信号線が、それぞれ、ケーブル本体31の内部のパワーケーブル、ガス配管、ライナ、電力伝送線および信号線に接続される。なお、本実施形態では、アダプタ8の胴部側面から水冷用ホース66が引き込まれている。そして、当該水冷用ホース66は、接続部32を介してケーブル本体31の内部に通じている。なお、
図1ではケーブル本体31の中間部を省略しているが、中間ケーブル3の全長は、たとえば10m〜30m程度である。
【0027】
ワイヤ送給装置4は、溶接ワイヤを溶接トーチ5に送り出すものであり、いわゆるプル側送給装置である。プル側送給装置としてのワイヤ送給装置4は、本発明で言う「ワイヤ送給装置」に相当する。
図2〜
図7に示したワイヤ送給装置4は、ワイヤ送給機構(図示略)を収容するケース40と、把手44と、カバー45と、を備える。上記ワイヤ送給機構は、たとえば溶接ワイヤを挟む送給ローラおよび加圧ローラと、送給ローラを回転駆動させる送給モータとを備えて構成される。
図3において、左方が溶接ワイヤの送給方向Xの前方(以下、適宜「送給方向前方X1」という)であり、右方が溶接ワイヤの送給方向Xの後方(以下、適宜「送給方向後方X2」という)である。なお、
図2〜
図7に示したワイヤ送給装置4の説明において、通常使用する姿勢を基準として上下方向を規定する。上記の送給方向Xは、水平面に略沿う方向である。
【0028】
ケース40は、全体として送給方向Xに延びる筒状とされており、筒状周壁41および後方側筒部42を有する。後方側筒部42は、筒状周壁41よりも送給方向後方X2側につながっている。なお、本実施形態において、後方側筒部42は筒状周壁41の後端に連続しており、ケース40は、上下に分割可能な2つの分割片を組み合わせてビス止め等の適宜手段により連結したものである。ケース40を構成する材料としては、たとえばポリアミド樹脂(ガラス繊維入り)などの合成樹脂材を挙げることができる。
【0029】
筒状周壁41は、底壁411、第1側壁412、第2側壁413および天井壁414を有し、各々が概ね送給方向Xに延びている。筒状周壁41は、ケース40の主要部分で上記ワイヤ送給機構を収容している。底壁411は、筒状周壁41において最も下位に位置する部分である。本実施形態において、底壁411のうち送給方向前方X1寄りの部分は、送給方向前方X1に向かうにつれて上方に変位するように傾斜している。第1側壁412および第2側壁413は、底壁411の幅方向Y(送給方向Xに対して直角である水平方向)の一端側および他端側から起立して上方に延びている。天井壁414は、第1側壁412および第2側壁413の上端を覆う部分である。
【0030】
なお、本実施形態において、筒状周壁41には、開閉扉415が設けられている。開閉扉415は、第1側壁412、天井壁414および第2側壁413に跨がって設けられており、ケース40の内部に配置された上記ワイヤ送給機構をメンテナンスする際に開かれる。開閉扉415の天井壁部分には開口が形成されるとともに、当該開口を塞ぐ透明窓416が配置されている。この透明窓416を通じてケース40の内部を外から見ることが可能である。
【0031】
本実施形態において、筒状周壁41には、ソリ形状突部431〜434が設けられている。ソリ形状突部431は、底壁411と第1側壁412とがなす角部に設けられている。ソリ形状突部431は、底壁411ないし第1側壁412の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びている。ソリ形状突部432は、底壁411と第2側壁413とがなす角部に設けられている。ソリ形状突部432は、底壁411ないし第2側壁413の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びている。ソリ形状突部433は、第1側壁412と天井壁414とがなす角部に設けられている。ソリ形状突部433は、第1側壁412ないし天井壁414の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びている。ソリ形状突部434は、第2側壁413と天井壁414とがなす角部に設けられている。ソリ形状突部434は、第2側壁413ないし天井壁414の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びている。
【0032】
図3、
図4、
図7に示すように、ソリ形状突部431およびソリ形状突部432は、底壁411よりも当該底壁411が向く方向(下方)に突出し、底壁411が向く方向に凸となるように湾曲して送給方向Xに延びている。また、
図5〜
図7に示すように、ソリ形状突部431およびソリ形状突部433は、第1側壁412よりも当該第1側壁412が向く方向(幅方向Yの一方)に突出し、第1側壁412が向く方向に凸となるように湾曲して送給方向Xに延びている。
図5〜
図7に示すように、ソリ形状突部432およびソリ形状突部434は、第2側壁413よりも当該第2側壁413が向く方向(幅方向Yの他方)に突出し、第2側壁413が向く方向に凸となるように湾曲して送給方向Xに延びている。
【0033】
上記構成のソリ形状突部431は、本発明で言う底壁用ソリ形状部と底壁用突部に相当する。また、ソリ形状突部431は、本発明で言う第1側壁用ソリ形状部と第1側壁用突部にも相当する。また、ソリ形状突部432は、本発明で言う底壁用ソリ形状部と底壁用突部に相当し、本発明で言う第2側壁用ソリ形状部と第2側壁用突部にも相当する。ソリ形状突部433は、本発明で言う第1側壁用ソリ形状部と第1側壁用突部に相当する。ソリ形状突部434は、本発明で言う第2側壁用ソリ形状部と第2側壁用突部に相当する。
【0034】
本実施形態において、ソリ形状突部431〜434は、各々が筒状周壁41ないし後方側筒部42に対してビス止め等の適宜手段によって着脱可能に設けられている。ソリ形状突部431〜434を構成する材料としては、たとえばポリアミド樹脂(ガラス繊維入り)などの合成樹脂材を挙げることができる。
【0035】
後方側筒部42は、底部421、第1側部422、第2側部423および頂部424を有する。第1側部422、第2側部423および頂部424は、それぞれ、筒状周壁41の第1側壁412、第2側壁413および天井壁414から送給方向後方X2に向けて一連に延びている。底部421は、筒状周壁41の底壁411よりも上方に位置している。これにより、後方側筒部42は、ケース40全体から見て底部421が凹んだ形状とされている。後方側筒部42の送給方向後方X2における端部は、概略円筒状とされている。
【0036】
上記後方側筒部42の頂部424には、操作部425が設けられている。操作部425は、たとえば溶接電流、溶接電圧や溶接ワイヤの送給速度などの溶接条件を設定するためのものである。操作部425は、たとえば複数の操作ボタンを含んで構成される。上記操作部425の操作に基づき、各種溶接条件が制御される。また、後方側筒部42の頂部424ないし筒状周壁41の天井壁414には、表示部426が設けられている。表示部426は、溶接条件等を表示するものであり、たとえば有機ELや液晶などのディスプレイを含んで構成される。なお、本実施形態において、ソリ形状突部433,434は、筒状周壁41から後方側筒部42の後方寄りに至る範囲に設けられている。
【0037】
上記後方側筒部42の底部421には、把手44が設けられている。把手44は、底部421との間で環状をなすように設けられている。
図3、
図7に示すように、把手44は、ソリ形状突部431,432(底壁用突部)の下端により形成される仮想面S1よりも下方に突出しない。また、
図7に示すように、把手44は、ケース40の幅方向Yにおいて、ソリ形状突部431,433(第1側壁用突部)の先端により形成される仮想面S2とソリ形状突部432,434(第2側壁用突部)の先端により形成される仮想面S3との間に位置する。
【0038】
ケース40の内部には、パワーケーブル、ガス配管、ライナ、電力伝送線および信号線(いずれも図示せず)が配置されている。また、
図8に示すように、本実施形態において、ケース40の内部には、水冷用ホース66(仮想線で表す)が配置されている。水冷用ホース66は2本配置され、1本は溶接トーチ5へ冷却水を送る送水用流路であり、他の1本は溶接トーチ5から戻る水を通す復水用流路である。
【0039】
図7に示すように、ケース40の送給方向後方X2の端部には、接続用コネクタ46が配置されている。接続用コネクタ46は、凸型コネクタであり、上記の接続部33(中間ケーブル3)に備えられた凹型の接続用コネクタに挿し込むことでワイヤ送給装置4と中間ケーブル3とが接続される。また、接続用コネクタ46は、水冷用ホース66につながるジョイント部461を有する。この接続用コネクタ46を介して、中間ケーブル3の内部のパワーケーブル、ガス配管、ライナ、電力伝送線、信号線および水冷用ホースが、それぞれ、ケース40(ワイヤ送給装置4)の内部のパワーケーブル、ガス配管、ライナ、電力伝送線、信号線および水冷用ホース66に接続される。
【0040】
図9に示すように、ケース40の送給方向前方X1の端部には、接続用コネクタ47が配置されている。接続用コネクタ47は、凹型コネクタであり、トーチケーブル59(
図1参照)の一端に備えられた凸型のトーチプラグ(図示せず)が挿し込まれることで溶接トーチ5とワイヤ送給装置4とが接続される。接続用コネクタ47の下方には、ケース40の内部に配置された水冷用ホース66につながるジョイント部48が配置されている。このようにして、ケース40の内部には、水冷用ホース66が送給方向後方X2端から送給方向前方X1端まで貫通状に配置される。
【0041】
上記ジョイント部48には、ワイヤ送給装置4と溶接トーチ5との間をつなぐ水冷用ホース66(
図1参照)の一端が接続される。当該水冷用ホース66の他端は、溶接トーチ5の基端部から当該溶接トーチ5の内部に引き込まれている。
【0042】
図2、
図3等に示したカバー45は、ケース40の送給方向前方X1の端部に着脱可能に取り付けられている。カバー45は、中空状とされており、トーチケーブル59の端部および水冷用ホース66の端部を覆っている。トーチケーブル59および水冷用ホース66は、カバー45の先端に形成された開口45aを通じてカバー45の外部に引き出されている。
【0043】
カバー45は、たとえば上下に分割可能な2つの分割片を組み合わせてビス止め等の適宜手段により連結されており、カバー45の基端において内側に折り曲げられた係止片(図示せず)がケース40の先端に設けられ溝49(
図9参照)に嵌入させられる。本実施形態において、カバー45の底面部451は、送給方向前方X1に向かうにつれて上方に変位するように傾斜している。また、この傾斜する底面部451には、下方に突出する突起452が設けられている。
【0044】
図1に示した溶接トーチ5とワイヤ送給装置4とは、トーチケーブル59によって接続されている。トーチケーブル59は、溶接トーチ5の基端に接続されたケーブルであり、ケーブル内部にパワーケーブル61、ガス配管65、ライナ、電力伝送線および信号線が配置されている。
【0045】
溶接トーチ5は、作業者の操作により被加工物Wの溶接を行うものである。溶接トーチ5は、トーチボディ51およびハンドル52を備えている。トーチボディ51は、金属製の筒状の部材であり、内部に、溶接ワイヤが挿通されたライナ、パワーケーブル、ガス配管、および水冷用ホースが配置されている。ハンドル52は、作業者が把持するための部位であり、トーチボディ51の基端部を保持するように設けられている。ハンドル52には、トーチスイッチ53が設けられている。トーチスイッチ53は、ハンドル52を把持した作業者が、人差し指で押動操作しやすい位置に配置されている。トーチスイッチ53のオン操作(押下)により、操作信号が溶接電源装置1に入力され、溶接電源装置1は溶接電力の出力を行う。オン操作が解除されることで、溶接電源装置1は、溶接電力の出力を停止する。すなわち、トーチスイッチ53を押下している間だけ溶接が行われる。
【0046】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0047】
溶接システムA1においては、長尺の中間ケーブル3を備えるため、溶接作業を行う際、作業者はワイヤ送給装置4や中間ケーブル3を取り回しながら比較的広い作業領域にわたって作業を行うことが可能である。溶接作業の際、ワイヤ送給装置4や中間ケーブル3は、作業場床面に載置される。
【0048】
本実施形態において、ワイヤ送給装置4のケース40は、底壁411、第1側壁412および第2側壁413を含む筒状周壁41を有する。筒状周壁41には、底壁411の幅方向Yの両端においてソリ形状突出部431,432が設けられている。ソリ形状突部431,432は、底壁411よりも当該底壁411が向く方向(下方)に突出しており、底壁411の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びている。このような構成によれば、作業場床面に載置されたワイヤ送給装置4において作業場床面と接触するのは、ソリ形状突部431,432だけである。このため、作業者がワイヤ送給装置4を引き回す場合において作業場床面との摩擦抵抗が低減し、トーチケーブル59を引っ張ることでワイヤ送給装置4を容易に滑らせて移動させることができる。したがって、ワイヤ送給装置4を移動させながら溶接作業を行う場合において、溶接作業の作業性の向上を図ることができる。
【0049】
筒状周壁41には、第1側壁412の下端および上端においてソリ形状突部431,433が設けられている。ソリ形状突部431,433は、第1側壁412よりも当該第1側壁412が向く方向(幅方向Yの一方)に突出しており、第1側壁412の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びている。また、筒状周壁41には、第2側壁413の下端および上端においてソリ形状突部432,434が設けられている。ソリ形状突部432,434は、第2側壁413よりも当該第2側壁413が向く方向(幅方向Yの他方)に突出しており、第2側壁413の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びている。このような構成によれば、たとえばワイヤ送給装置4が引っ張られて転倒し、第1側壁412あるいは第2側壁413が作業場床面を向く姿勢をとる場合でも、ワイヤ送給装置4において作業場床面と接触するのは、ソリ形状突部431,433あるいはソリ形状突部432,434だけである。したがって、ワイヤ送給装置4が転倒した場合においても、トーチケーブル59を引っ張ることでワイヤ送給装置4を容易に滑らせて移動させることができ、溶接作業の作業性の向上を図ることができる。
【0050】
ソリ形状突部431,432は、底壁411が向く方向に凸となるように湾曲して送給方向Xに延びている。このような構成によれば、作業場床面に載置されたワイヤ送給装置4と作業場床面との摩擦抵抗がより低減し、ワイヤ送給装置4をより容易に移動させることができる。また、ソリ形状突部431,433は、第1側壁412が向く方向に凸となるように湾曲して送給方向Xに延びており、ソリ形状突部432,434は、第2側壁413が向く方向に凸となるように湾曲して送給方向Xに延びている。このような構成によれば、ワイヤ送給装置4が転倒した場合においても、作業場床面との摩擦抵抗がより低減し、ワイヤ送給装置4をより容易に移動させることができる。
【0051】
ソリ形状突部431〜434は、筒状周壁41がなす略矩形状断面の角部にそれぞれ設けられている。このような構成によれば、ケース40(筒状周壁41)に設けられるソリ形状突部431〜434(底壁用突部、第1側壁用突部または第2側壁用突部)について、その設置数を減らして効率よく配置することが可能である。
【0052】
ソリ形状突部431〜434は、ケース40に対して着脱可能に設けられている。このような構成によれば、ソリ形状突部431〜434が損傷しても容易に交換することができ、ケース40自体の損傷を適切に回避することができる。
【0053】
底壁411のうち送給方向前方X1寄りの部分は、送給方向前方X1に向かうにつれて上方に変位するように傾斜している。このような構成によれば、ワイヤ送給装置4が引っ張られて送給方向前方X1に移動するとき、引っ掛かりが防止されてスムーズに移動させられる。
【0054】
本実施形態において、ケース40の内部には、水冷用ホース66が送給方向後方X2端から送給方向前方X1端まで貫通状に配置されている。また、ケース40の送給方向前方X1の端部にはカバー45が取り付けられており、このカバー45は、水冷用ホース66の端部を覆っている。このように水冷用ホース66がワイヤ送給装置4に内蔵された構成によれば、作業者によりワイヤ送給装置4が引っ張られる際に水冷用ホース66が引っ掛かることはなく、水冷用ホース66の破損を防止することができる。
【0055】
カバー45の底面部451は、送給方向前方X1に向かうにつれて上方に変位するように傾斜しており、この底面部451は、底壁411の送給方向前方X1寄りの傾斜部分から延長するように延びている。このような構成によれば、作業者によりワイヤ送給装置4が引っ張られる際、多少の段差などがあっても底面部451によってガイドされて乗り越えることができる。
【0056】
本実施形態において、ケース40は、筒状周壁41よりも送給方向後方X2側につながる後方側筒部42を有する。後方側筒部42は、底部421が筒状周壁41の底壁411よりも上方に位置するように凹んだ形状とされている。この底部421には把手44が設けられており、当該把手44は、ソリ形状突部431,432(底壁用突部)の下端により形成される仮想面S1よりも下方に突出しない。このような構成によれば、作業者によりワイヤ送給装置4が引っ張られる際、把手44が引っ掛かって移動の妨げになることはなく、ワイヤ送給装置4をスムーズに滑らせることができる。
【0057】
本実施形態において、底部421が凹んだ後方側筒部42の頂部424には、溶接条件を設定するための操作部425が設けられている。このような構成によれば、作業者は、底部421側の凹み部分に手を入れて後方側筒部42を握りながら、親指により操作部425を操作することができる。したがって、操作部425を操作しやすく使い勝手が良い。
【0058】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0059】
上記実施形態において、ソリ形状突部431は、底壁411と第1側壁412とがなす角部に設けられており、ソリ形状突部431が底壁用突部と第1側壁用突部を兼用している。また、ソリ形状突部432は、底壁411と第2側壁413とがなす角部に設けられており、ソリ形状突部431が底壁用突部と第2側壁用突部を兼用している。本発明はこのような構成に限定されない。
図10は、底壁用突部、第1側壁用突部および第2側壁用突部の配置の他の例を簡略化して表した図である。同図に示すように、上記ソリ形状突部431が担う役割を底壁用突部431Aと第1側壁用突部431Bとに分離し、上記ソリ形状突部432が担う役割を底壁用突部432Aと第2側壁用突部432Bとに分離するように構成してもよい。
図10において、底壁用突部431Aは底壁411の幅方向Yの一端付近に設けられ、底壁用突部432Aは底壁411の幅方向Yの他端付近に設けられる。底壁用突部431A(432A)が底壁411の幅方向Yの内側に向かうほどワイヤ送給装置4は転倒しやすくなるので好ましくない。底壁411の幅方向Yの寸法L2に対し、底壁411の端縁から底壁用突部431A(432A)の先端までの幅方向Yにおける寸法L1の割合は、たとえば1/6以下程度である。また、
図10に示すように、第1側壁用突部431Bは第1側壁412の下端付近に設けられ、第1側壁用突部433Aは第1側壁412の上端付近に設けられる。これと同様に、第2側壁用突部432Bは第2側壁413の下端付近に設けられ、第2側壁用突部434Aは第2側壁413の上端付近に設けられる。
【0060】
上記実施形態では、筒状周壁41は略矩形状断面を有し、第1側壁412および第2側壁413が略直立するように構成されていたが、これに限定されない。たとえば上方に向かうにつれて第1側壁412および第2側壁413が互いに近づくように、筒状周壁41が略台形状断面を有する構成としてもよい。
【0061】
さらに、上記実施形態においては、ソリ形状突部431〜434(底壁用突部、第1側壁用突部および第2側壁用突部)がそれぞれ筒状周壁41の送給方向前方X1端部から送給方向後方X2端部まで延びるように設けられる場合について説明したが、これに限定されない。底壁用突部、第1側壁用突部および第2側壁用突部については、送給方向前方X1寄りと送給方向後方X2寄りとに分離して設けてもよい。