(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の光学ガラスは、質量%で、B
2O
3成分を6.0%以上24.0%以下、La
2O
3成分を11.0%以上40.0%以下、TiO
2成分を9.0%以上34.0%以下、BaO成分を7.0%以上34.0%以下含有し、SiO
2成分の含有量が14.0%以下、ZnO成分の含有量が21.0%以下であり、1.85以上の屈折率(n
d)を有し、23以上35以下のアッベ数(ν
d)を有する。本発明によれば、B
2O
3成分及びLa
2O
3成分に加えて、TiO
2成分及びBaO成分を併用したときに、所望の高屈折率及び高分散を得られながらも、材料コストが抑えられたガラスを得ることができる。
【0027】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0028】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中において、各成分の含有量は特に断りがない場合は、全て酸化物換算組成のガラス全物質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が溶融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総物質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0029】
<必須成分、任意成分について>
B
2O
3成分は、希土類酸化物を多く含む本発明の光学ガラスにおいて、ガラス形成酸化物として欠かすことの出来ない必須成分である。
特に、B
2O
3成分を6.0%以上含有することで、ガラスの耐失透性を高められ、且つ比重を小さくできる。従って、B
2O
3成分の含有量は、好ましくは6.0%以上、より好ましくは8.5%超、さらに好ましくは10.0%超、さらに好ましくは10.5%超とする。
他方で、B
2O
3成分の含有量を24.0%以下にすることで、屈折率の低下やアッベ数の上昇を抑えられ、且つ化学的耐久性の悪化を抑えられる。従って、B
2O
3成分の含有量は、好ましくは24.0%以下、より好ましくは21.0%以下、さらに好ましくは20.0%未満、さらに好ましくは18.0%未満、さらに好ましくは15.5%未満、さらに好ましくは15.0%未満とする。
B
2O
3成分は、原料としてH
3BO
3、Na
2B
4O
7、Na
2B
4O
7・10H
2O、BPO
4等を用いることができる。
【0030】
La
2O
3成分は、11.0%以上含有することで、屈折率を高められる必須成分である。また、La
2O
3成分を含有することで、比重を大きくする他の希土類元素の含有量が低減されるため、比重の小さいガラスをより得易くできる。従って、La
2O
3成分の含有量は、好ましくは11.0%以上、より好ましくは15.0%超、さらに好ましくは18.0%超、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは23.0%超とする。
他方で、La
2O
3成分の含有量を40.0%以下にすることで、ガラスの安定性を高めて失透を低減でき、且つアッベ数の上昇を抑えられる。従って、La
2O
3成分の含有量は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%未満、さらに好ましくは36.0%未満、さらに好ましくは34.0%未満、さらに好ましくは31.0%未満とする。
La
2O
3成分は、原料としてLa
2O
3、La(NO
3)
3・XH
2O(Xは任意の整数)等を用いることができる。
【0031】
TiO
2成分は、9.0%以上含有することで、屈折率を高められ、アッベ数を低くでき、比重を低減でき、且つ耐失透性を改善できる必須成分である。従って、TiO
2成分の含有量は、好ましくは9.0%以上、より好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは11.0%超、さらに好ましくは13.0%超、さらに好ましくは15.0%超、さらに好ましくは17.0%超、さらに好ましくは19.0%超とする。
他方で、TiO
2成分の含有量を34.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高め、且つ、アッベ数の必要以上の低下を抑えられる。また、TiO
2成分の過剰な含有による失透を抑えられる。従って、TiO
2成分の含有量は、好ましくは34.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは27.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満とする。
TiO
2成分は、原料としてTiO
2等を用いることができる。
【0032】
BaO成分は、7.0%以上含有することで、ガラスの屈折率を高めながらも材料コストを抑えられ、且つ、ガラス原料の熔融性や耐失透性を高められ、またガラス転移点を低くできる必須成分である。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは7.0%以上、より好ましくは10.5%以上、さらに好ましくは12.2%以上、さらに好ましくは14.0%超とする。
他方で、BaO成分の含有量を34.0%以下にすることで、過剰な含有による失透や、比重の上昇を抑えられる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは34.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満、さらに好ましくは22.0%未満、さらに好ましくは19.0%未満とする。
BaO成分は、原料としてBaCO
3、Ba(NO
3)
2、BaF
2等を用いることができる。
【0033】
SiO
2成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの粘度を高められ、ガラスの着色を低減でき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。従って、SiO
2成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.0%超、さらに好ましくは3.0%超、さらに好ましくは4.5%超、さらに好ましくは6.3%以上、さらに好ましくは6.6%以上としてもよい。
他方で、SiO
2成分の含有量を14.0%以下にすることで、屈折率の低下を抑えられ、ガラス転移点の上昇を抑えられ、且つ比重を小さくできる。従って、SiO
2成分の含有量は、好ましくは14.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは8.0%未満とする。
SiO
2成分は、原料としてSiO
2、K
2SiF
6、Na
2SiF
6等を用いることができる。
【0034】
ZnO成分は、0%超含有する場合に、ガラス転移点を低くでき、比重を小さくでき、且つ化学的耐久性を高められる任意成分である。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.5%超、さらに好ましくは3.0%超、さらに好ましくは5.0%超としてもよい。
他方で、ZnO成分の含有量を21.0%以下にすることで、屈折率の低下や失透を低減できる。また、これにより熔融ガラスの粘性が高められるため、ガラスへの脈理の発生を低減できる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは21.0%以下、より好ましくは16.0%未満、さらに好ましくは13.0%未満、さらに好ましくは11.0%未満、さらに好ましくは10.5%以下、さらに好ましくは9.5%以下とする。
ZnO成分は、原料としてZnO、ZnF
2等を用いることができる。
【0035】
Gd
2O
3成分、Y
2O
3成分及びYb
2O
3成分は、少なくともいずれかを0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、Gd
2O
3成分及びYb
2O
3成分のそれぞれの含有量を10.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による失透を低減でき、且つアッベ数の上昇を抑えられ、ガラスの材料コストを抑えられる。従って、Gd
2O
3成分及びYb
2O
3成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%未満、さらに好ましくは4.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
また、Y
2O
3成分の含有量を20.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による失透を低減でき、且つアッベ数の上昇を抑えられる。従って、Y
2O
3成分の含有量は、好ましくは20.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満とする。
Gd
2O
3成分、Y
2O
3成分及びYb
2O
3成分は、原料としてGd
2O
3、GdF
3、Y
2O
3、YF
3等を用いることができる。
【0036】
Nb
2O
5成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高めてアッベ数を低くでき、耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、Nb
2O
5成分の含有量を15.0%以下にすることで、Nb
2O
5成分の過剰な含有による、耐失透性の低下や、可視光の透過率の低下を抑えられる。また、これによりガラスの比重を小さくでき、且つ材料コストを抑えられる。従って、Nb
2O
5成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
Nb
2O
5成分は、原料としてNb
2O
5等を用いることができる。
【0037】
WO
3成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高めてアッベ数を低くでき、ガラス転移点を低くでき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。従って、WO
3成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.3%超、さらに好ましくは0.5%超としてもよい。
他方で、WO
3成分の含有量を15.0%以下にすることで、ガラスの可視光に対する透過率を低下し難くでき、且つ材料コストを抑えられる。従って、WO
3成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは11.0%未満、さらに好ましくは7.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満とする。
WO
3成分は、原料としてWO
3等を用いることができる。
【0038】
ZrO
2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの高屈折率化に寄与でき、且つ耐失透性を高められる任意成分である。従って、ZrO
2成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%超、さらに好ましくは1.0%超、さらに好ましくは2.0%超、さらに好ましくは5.0%超としてもよい。
他方で、ZrO
2成分を15.0%以下にすることで、ZrO
2成分の過剰な含有による、アッベ数の上昇や耐失透性の低下を抑えられる。従って、ZrO
2成分の含有量は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは7.0%未満とする。
ZrO
2成分は、原料としてZrO
2、ZrF
4等を用いることができる。
【0039】
Ta
2O
5成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、耐失透性を高め、且つ熔融ガラスの粘性を高められる任意成分である。
他方で、Ta
2O
5成分の含有量を10.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa
2O
5成分の使用量が減るため、ガラスの材料コストを低減できる。また、これにより比重を小さくできる。従って、Ta
2O
5成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とし、最も好ましくは含有しない。
Ta
2O
5成分は、原料としてTa
2O
5等を用いることができる。
【0040】
MgO成分、CaO成分及びSrO成分は、少なくともいずれかを0%超含有する場合に、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる任意成分である。特にMgO成分及びCaO成分は、含有することで比重を小さくできる成分でもある。
他方で、MgO成分の含有量を5.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や失透を低減できる。また、CaO成分及びSrO成分のそれぞれの含有量を10.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による、屈折率の低下や失透を低減できる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。また、CaO成分及びSrO成分のそれぞれの含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
MgO成分、CaO成分及びSrO成分は、原料としてMgCO
3、MgF
2、CaCO
3、CaF
2、Sr(NO
3)
2、SrF
2等を用いることができる。
【0041】
Li
2O成分は、0%超含有する場合に、ガラスの熔融性を改善し、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、Li
2O成分の含有量を5.0%以下にすることで、屈折率の低下や失透を低減でき、且つ化学的耐久性を高めることができる。また、これにより熔融ガラスの粘性が高められるため、ガラスへの脈理の発生を低減できる。従って、Li
2O成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
Li
2O成分は、原料としてLi
2CO
3、LiNO
3、LiF等を用いることができる。
【0042】
Na
2O成分及びK
2O成分は、少なくともいずれかを0%超含有する場合に、ガラス原料の熔融性を改善でき、耐失透性を高められ、且つガラス転移点を低くできる任意成分である。
他方で、Na
2O成分及びK
2O成分のそれぞれの含有量を10.0%以下にすることで、屈折率を低下し難くでき、且つ過剰な含有による失透を低減できる。従って、Na
2O成分及びK
2O成分のそれぞれの含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
Na
2O成分及びK
2O成分は、原料としてNa
2CO
3、NaNO
3、NaF、Na
2SiF
6、K
2CO
3、KNO
3、KF、KHF
2、K
2SiF
6等を用いることができる。
【0043】
P
2O
5成分は、0%超含有する場合に、耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、P
2O
5成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの化学的耐久性、特に耐水性の低下を抑えられる。従って、P
2O
5成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
P
2O
5成分は、原料としてAl(PO
3)
3、Ca(PO
3)
2、Ba(PO
3)
2、BPO
4、H
3PO
4等を用いることができる。
【0044】
GeO
2成分は、0%超含有する場合に、ガラスの屈折率を高められ、且つ耐失透性を高められる任意成分である。
しかしながら、GeO
2は原料価格が高いため、その量が多いと材料コストが高くなることで、TiO
2成分やZnO成分、BaO成分の含有等によるコスト低減の効果が減殺される。従って、GeO
2成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とし、最も好ましくは含有しない。
GeO
2成分は、原料としてGeO
2等を用いることができる。
【0045】
Al
2O
3成分、Ga
2O
3成分は、少なくともいずれかを0%超含有する場合に、化学的耐久性及び耐失透性を高められる任意成分である。
他方で、Al
2O
3成分、Ga
2O
3成分の含有量をそれぞれ10.0%以下にすることで、過剰な含有による失透を低減できる。従って、Al
2O
3成分、Ga
2O
3成分の含有量は、それぞれ好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
Al
2O
3成分は、原料としてAl
2O
3、Al(OH)
3、AlF
3等を用いることができる。
【0046】
Bi
2O
3成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高めてアッベ数を低くでき、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、Bi
2O
3成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの耐失透性を高められ、且つ、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。従って、Bi
2O
3成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
Bi
2O
3成分は、原料としてBi
2O
3等を用いることができる。
【0047】
TeO
2成分は、0%超含有する場合に、屈折率を高め、且つガラス転移点を下げられる任意成分である。
他方で、TeO
2成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの着色を低減して可視光透過率を高められる。また、TeO
2は白金製の坩堝や、熔融ガラスと接する部分が白金で形成されている熔融槽でガラス原料を熔融する際、白金と合金化しうる問題がある。従って、TeO
2成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
TeO
2成分は、原料としてTeO
2等を用いることができる。
【0048】
SnO
2成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスの酸化を低減して清澄しながらも、ガラスの可視光透過率を高められる任意成分である。
他方で、SnO
2成分の含有量を3.0%以下にすることで、熔融ガラスの還元によるガラスの着色や、ガラスの失透を低減できる。また、SnO
2成分と熔解設備(特にPt等の貴金属)の合金化が低減されるため、熔解設備の長寿命化を図れる。従って、SnO
2成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%未満、さらに好ましくは0.5%未満とする。
SnO
2成分は、原料としてSnO、SnO
2、SnF
2、SnF
4等を用いることができる。
【0049】
Sb
2O
3成分は、0%超含有する場合に、熔融ガラスを脱泡できる任意成分である。
一方で、Sb
2O
3量が多すぎると、可視光領域の短波長領域における透過率が悪くなる。従って、Sb
2O
3成分の含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%未満、さらに好ましくは0.1%未満とする。
Sb
2O
3成分は、原料としてSb
2O
3、Sb
2O
5、Na
2H
2Sb
2O
7・5H
2O等を用いることができる。
【0050】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分としては、上記のSb
2O
3成分に限定されず、ガラス製造の分野における公知の清澄剤や脱泡剤、或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0051】
F成分は、0%超含有する場合に、ガラスのアッベ数を高め、ガラス転移点を低くし、且つ耐失透性を向上できる任意成分である。
しかし、F成分の含有量、すなわち上述した元素の1種又は2種以上の酸化物の一部又は全部と置換した弗化物のFとしての合計量が10.0%を超えると、F成分の揮発量が多くなるため、安定した光学恒数が得られ難くなり、均質なガラスが得られ難くなる。また、アッベ数が必要以上に上昇する。
従って、F成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
F成分は、原料として例えばZrF
4、AlF
3、NaF、CaF
2等を用いることで、ガラス内に含有することができる。
【0052】
B
2O
3成分及びSiO
2成分の含有量の和(質量和)は、10.0%以上28.0%以下が好ましい。
特に、この和を10.0%以上にすることで、B
2O
3成分やSiO
2成分の欠乏による失透を抑えられる。従って、質量和(B
2O
3+SiO
2)は、好ましくは10.0%以上、より好ましくは12.0%超、さらに好ましくは15.0%超、さらに好ましくは17.0%超、さらに好ましくは18.0%超、さらに好ましくは18.3%以上、さらに好ましくは18.5%以上とする。
他方で、この和を28.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による屈折率の低下を抑えられる。従って、質量和(B
2O
3+SiO
2)は、好ましくは28.0%以下、より好ましくは25.0%未満、さらに好ましくは22.0%未満、さらに好ましくは20.0%未満とする。
【0053】
B
2O
3成分の含有量に対するSiO
2成分の含有量の比率(質量比)は、1.00未満が好ましい。これにより、ガラス転移点の上昇を抑えられるため、より低温で成形し易くできる。従って、質量比SiO
2/B
2O
3は、好ましくは1.00未満、より好ましくは0.80未満、さらに好ましくは0.65未満とする。
他方で、この質量比SiO
2/B
2O
3は、0超としてもよい。これにより、ガラスの安定性が高められる。従って、質量比SiO
2/B
2O
3は、好ましくは0超、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.17以上、さらに好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.50超にしてもよい。
【0054】
B
2O
3成分の含有量に対するLa
2O
3成分の含有量の比率(質量比)は、0.60超が好ましい。これにより、ガラスの屈折率を高められる。従って、質量比La
2O
3/B
2O
3は、好ましくは0.60超、より好ましくは0.80超、さらに好ましくは1.00超、さらに好ましくは1.10超、さらに好ましくは1.50超、さらに好ましくは1.80超とする。
他方で、この質量比La
2O
3/B
2O
3は、好ましくは10.00未満、より好ましくは7.00未満、さらに好ましくは5.00未満、さらに好ましくは3.50未満、さらに好ましくは3.00未満としてもよい。
【0055】
TiO
2成分の含有量に対するLa
2O
3成分の含有量の比率(質量比)は、3.00未満が好ましい。これにより、可視光の透過率の低下を抑えられる。従って、質量比La
2O
3/TiO
2は、好ましくは3.00未満、より好ましくは2.50未満、さらに好ましくは2.00未満、さらに好ましくは1.60未満としてもよい。
他方で、この質量比La
2O
3/TiO
2は、0.50以上としてもよい。これにより、ガラスのアッベ数を小さくできる。従って、質量比La
2O
3/TiO
2は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは1.00超としてもよい。
【0056】
TiO
2成分及びZnO成分の含有量の和(質量和)は、8.0%以上40.0%以下が好ましい。
特に、この和を15.0%以上にすることで、ガラスの安定性を高められ、また屈折率を高められる。従って、質量和(TiO
2+ZnO)は、好ましくは8.0%以上、より好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%超、さらに好ましくは17.0%超、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは23.0%超、さらに好ましくは25.0%超とする。
他方で、この質量和(TiO
2+ZnO)は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%未満、さらに好ましくは35.0%未満、さらに好ましくは32.0%未満にしてもよい。
【0057】
BaO成分及びZnO成分の含有量の和(質量和)は、15.0%以上35.0%以下が好ましい。
特に、この和を15.0%以上にすることで、ガラスの安定性を高められ、また屈折率を高められる。従って、質量和(BaO+ZnO)は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは16.0%超、さらに好ましくは18.0%超、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは22.0%超、さらに好ましくは24.1%以上とする。
他方で、この質量和(BaO+ZnO)は、これらの過剰な含有による失透を低減させる観点から、好ましくは35.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは28.0%未満、さらに好ましくは25.6%以下にしてもよい。
【0058】
SiO
2成分及びB
2O
3成分の含有量の和に対する、BaO成分及びZnO成分の含有量の和の比率(質量比)は、0.50以上2.00以下が好ましい。
特に、この質量比を0.50以上にすることで、ガラスの屈折率を高められる。従って、質量比(BaO+ZnO)/(SiO
2+B
2O
3)は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.70以上、さらに好ましくは0.85以上、さらに好ましくは1.05以上、さらに好ましくは1.29以上とする。
他方で、この質量比を2.00以下にすることで、ガラスの安定性を高められる。従って、質量比(BaO+ZnO)/(SiO
2+B
2O
3)は、好ましくは2.00以下、より好ましくは1.80以下、さらに好ましくは1.50以下、さらに好ましくは1.33以下とする。
【0059】
SiO
2成分の含有量に対するTiO
2成分の含有量の比率(質量比)は、2.00以上が好ましい。
特に、この質量比を2.00以上にすることで、ガラスの屈折率を高められる。従って、質量比TiO
2/SiO
2は、好ましくは2.00以上、より好ましくは2.20以上、さらに好ましくは2.50以上、さらに好ましくは2.70以上とする。
他方で、この質量比は無限大(すなわちSiO
2成分の含有量が0%)であってもよいが、特にこの質量比を5.00以下にすることで、ガラスの安定性を高められる。従って、質量比TiO
2/SiO
2は、好ましくは5.00以下、より好ましくは4.00以下、さらに好ましくは3.70以下、さらに好ましくは3.50以下としてもよい。
【0060】
La
2O
3成分の含有量に対する、TiO
2成分、ZnO成分及びBaO成分の含有量の和の比率(質量比)は、0.50以上3.00以下が好ましい。
特に、この質量比を0.50以上にすることで、ガラスの屈折率を高められる。従って、質量比(TiO
2+ZnO+BaO)/La
2O
3は、好ましくは0.50以上、より好ましくは0.80以上、さらに好ましくは1.00以上、さらに好ましくは1.14以上、さらに好ましくは1.30以上、さらに好ましくは1.40以上とする。
他方で、この質量比を3.00以下にすることで、ガラスの高分散化を抑えられる。従って、質量比(TiO
2+ZnO+BaO)/La
2O
3は、好ましくは3.00以下、より好ましくは2.50以下、さらに好ましくは2.10以下としてもよい。
【0061】
TiO
2成分、Nb
2O
5成分及びWO
3成分の含有量の和(質量和)は、10.0%以上40.0%以下が好ましい。
特に、この和を10.0%以上にすることで、屈折率が高まり、アッベ数が低くなり、且つガラスの安定性が高まるため、高屈折率高分散の光学ガラスを得易くできる。従って、質量和(TiO
2+Nb
2O
5+WO
3)は、好ましくは10.0%以上、より好ましくは12.0%以上、さらに好ましくは15.0%超、さらに好ましくは19.6%以上、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは22.0%超とする。
一方で、この和を40.0%以下にすることで、これら成分の過剰な含有によるガラスの着色や失透を低減できる。従って、質量和(TiO
2+Nb
2O
5+WO
3)は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは35.0%未満、さらに好ましくは31.0%未満、さらに好ましくは27.0%未満とする。
【0062】
TiO
2成分、Nb
2O
5成分及びWO
3成分の含有量の和に対する、TiO
2成分の含有量の比率(質量比)は、0.400以上が好ましい。これにより、高い屈折率及び低いアッベ数を得ながらも、ガラスの材料コストを低減できる。従って、質量比TiO
2/(TiO
2+Nb
2O
5+WO
3)は、好ましくは0.400以上、より好ましくは0.600以上、さらに好ましくは0.720以上、さらに好ましくは0.800以上とする。
他方で、この質量比の上限は、1.000であってもよい。
【0063】
Ta
2O
5成分、Gd
2O
3成分及びNb
2O
5の含有量の和(質量和)は、15.0%以下が好ましい。これにより、コストの高い材料が低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、質量和(Ta
2O
5+Gd
2O
3+Nb
2O
5)は、好ましくは15.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは7.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
なお、材料コストへの要求があまり高くない場合には、これらの3成分のうち、Ta
2O
5成分、Gd
2O
3成分の質量和を上記範囲内に抑えてもよい。
【0064】
TiO
2成分及びZnO成分の含有量の和に対する、Ta
2O
5成分、Gd
2O
3成分及びNb
2O
5成分の含有量の和の比率(質量比)は、0.500以下が好ましい。これにより、屈折率を高める成分の中でも、材料コストの高い成分が、材料コストの低廉なTiO
2成分及びBaO成分の含有量に相対して低減されるため、ガラスの材料コストを低減できる。従って、質量比(Ta
2O
5+Gd
2O
3+Nb
2O
5)/(TiO
2+ZnO)は、好ましくは0.500以下、より好ましくは0.400以下、さらに好ましくは0.290以下、さらに好ましくは0.230以下、さらに好ましくは0.190以下、さらに好ましくは0.100未満とする。
【0065】
CaO成分及びSrO成分の含有量の和(質量和)は、10.0%以下が好ましい。これにより、屈折率の低下を抑えられる。従って、質量和(CaO+SrO)は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.5%未満とする。
【0066】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Ba、Znからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、15.0%以上35.0%以下が好ましい。
特に、この和を15.0%以上にすることで、ガラス原料の熔融性やガラスの耐失透性を高められる。従って、RO成分の合計含有量は、好ましくは15.0%以上、より好ましくは18.0%超、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは22.0%超とする。
他方で、この和を40.0%以下にすることで、これらの成分の過剰な含有による失透を低減でき、且つ屈折率の低下を抑えられる。従って、RO成分の合計含有量は、好ましくは35.0%以下、より好ましくは30.0%未満、さらに好ましくは27.0%未満、さらに好ましくは25.0%未満とする。
【0067】
Rn
2O成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、10.0%以下が好ましい。これにより、ガラスの屈折率の低下を抑えられ、且つ失透を低減できる。従って、Rn
2O成分の含有量の質量和は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは3.0%未満、さらに好ましくは1.0%未満とする。
【0068】
Ln
2O
3成分(式中、LnはLa、Gd、Y、Ybからなる群より選択される1種以上)の含有量の和(質量和)は、11.0%以上40.0%以下が好ましい。
特に、この質量和を11.0%以上にすることで、ガラスの屈折率を高められるため、高屈折率ガラスを得易くできる。従って、Ln
2O
3成分の含有量の質量和は、好ましくは11.0%以上、より好ましくは15.0%超、さらに好ましくは17.0%超、さらに好ましくは20.0%超、さらに好ましくは23.0%超とする。
他方で、この質量和を40.0%以下にすることで、ガラスの液相温度が低くなるため、耐失透性を高められる。また、これによりアッベ数の上昇を抑えられ、且つガラスの材料コストを抑えられる。従って、Ln
2O
3成分の含有量の質量和は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%未満、さらに好ましくは36.0%未満、さらに好ましくは34.0%未満、さらに好ましくは31.0%未満とする。
【0069】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
【0070】
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0071】
また、PbO等の鉛化合物及びAs
2O
3等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
【0072】
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物資として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
【0073】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝、石英坩堝又はアルミナ坩堝に投入して粗溶融した後、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて1100〜1400℃の温度範囲で1〜5時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1000〜1300℃の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより作製される。
【0074】
<物性>
本発明の光学ガラスは、高屈折率及び高アッベ数(低分散)を有する。
特に、本発明の光学ガラスの屈折率(n
d)の下限は、好ましくは1.85以上、より好ましくは1.88以上、さらに好ましくは1.90超、さらに好ましくは1.92超とする。この屈折率の上限は、好ましくは2.20以下、より好ましくは2.10未満、さらに好ましくは2.00未満、さらに好ましくは1.97未満であってもよい。また、本発明の光学ガラスのアッベ数(ν
d)の下限は、好ましくは23以上、より好ましくは24以上、さらに好ましくは25以上とする。このアッベ数の上限は、好ましくは35以下、より好ましくは32未満、さらに好ましくは29未満とする。
本発明の光学ガラスは、このような屈折率及びアッベ数を有するため、光学設計上有用であり、特に高い結像特性等を図りながらも、光学系の小型化を図ることができ、光学設計の自由度を広げることができる。
【0075】
ここで、本発明の光学ガラスは、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)が、(−0.01ν
d+2.15)≦n
d≦(−0.01ν
d+2.25)の関係を満たすことが好ましい。本発明で特定される組成のガラスでは、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)がこの関係を満たすことで、より安定なガラスを得られる。
従って、本発明の光学ガラスでは、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)が、n
d≧(−0.01ν
d+2.15)の関係を満たすことが好ましく、n
d≧(−0.01ν
d+2.17)の関係を満たすことがより好ましく、n
d≧(−0.01ν
d+2.19)の関係を満たすことがさらに好ましい。
一方で、本発明の光学ガラスでは、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)が、n
d≦(−0.01ν
d+2.25)の関係を満たすことが好ましく、n
d≦(−0.01ν
d+2.24)の関係を満たすことがより好ましく、n
d≦(−0.01ν
d+2.23)の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0076】
本発明の光学ガラスは、可視光透過率、特に可視光のうち短波長側の光の透過率が高く、それにより着色が少ないことが好ましい。
特に、本発明の光学ガラスは、ガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長(λ
70)は、好ましくは550nm、より好ましくは520nm、さらに好ましくは500nmを上限とする。
また、本発明の光学ガラスにおける、厚み10mmのサンプルで分光透過率5%を示す最も短い波長(λ
5)は、好ましくは400nm、より好ましくは390nm、さらに好ましくは380nmを上限とする。
これらにより、ガラスの吸収端が紫外領域の近傍になり、可視光に対するガラスの透明性が高められるため、この光学ガラスを、レンズ等の光を透過させる光学素子に好ましく用いることができる。
【0077】
本発明の光学ガラスは、耐失透性が高いこと、より具体的には、低い液相温度を有することが好ましい。すなわち、本発明の光学ガラスの液相温度は、好ましくは1200℃、より好ましくは1180℃、さらに好ましくは1150℃を上限としてもよい。これにより、熔解後のガラスをより低い温度で流出しても、作製されたガラスの結晶化が低減されるため、熔融状態からガラスを形成したときの失透を低減でき、ガラスを用いた光学素子の光学特性への影響を低減できる。また、ガラスの熔解温度を低くしてもガラスを成形できるため、ガラスの成形時に消費するエネルギーを抑えることで、ガラスの製造コストを低減できる。一方、本発明の光学ガラスの液相温度の下限は特に限定しないが、本発明によって得られるガラスの液相温度は、概ね800℃以上、具体的には850℃以上、さらに具体的には900℃以上であることが多い。なお、本明細書中における「液相温度」とは、50mlの容量の白金製坩堝に30ccのカレット状のガラス試料を白金坩堝に入れて1250℃で完全に熔融状態にし、所定の温度まで降温して1時間保持し、炉外に取り出して冷却した後直ちにガラス表面及びガラス中の結晶の有無を観察したときに、結晶が認められない一番低い温度を表す。ここで降温する際の所定の温度は、1200℃〜800℃の間の10℃刻みの温度である。
【0078】
[ガラス成形体及び光学素子]
作製された光学ガラスから、例えば研磨加工の手段、又は、リヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製したり、光学ガラスから作製したプリフォームに対してリヒートプレス成形を行った後で研磨加工を行ってガラス成形体を作製したり、研磨加工を行って作製したプリフォームや、公知の浮上成形等により成形されたプリフォームに対して精密プレス成形を行ってガラス成形体を作製したりすることができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0079】
このように、本発明の光学ガラスから形成したガラス成形体は、様々な光学素子及び光学設計に有用であるが、その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子に用いることが好ましい。これにより、径の大きなガラス成形体の形成が可能になるため、光学素子の大型化を図りながらも、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。
【実施例】
【0080】
本発明の実施例(No.1〜No.16)の組成、並びに、屈折率(n
d)、アッベ数(ν
d)、並びに、分光透過率が5%及び70%を示す波長(λ
5、λ
70)を表1〜表3に示す。
なお、以下の実施例はあくまで例示の目的であり、これらの実施例のみ限定されるものではない。
【0081】
実施例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、弗化物、水酸化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度の原料を選定し、表に示した各実施例及び比較例の組成の割合になるように秤量して均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス組成の熔融難易度に応じて電気炉で1100〜1400℃の温度範囲で1〜5時間溶解し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、1000〜1300℃に温度を下げて攪拌均質化してから金型に鋳込み、徐冷してガラスを作製した。
【0082】
実施例のガラスの屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν
d)は、上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n
F)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n
C)の値を用いて、アッベ数(ν
d)=[(n
d−1)/(n
F−n
C)]の式から算出した。そして、求められた屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)の値から、関係式n
d=−a×ν
d+bにおける、傾きaが0.01のときの切片bを求めた。
なお、本測定に用いたガラスは、徐冷降温速度を−25℃/hrとして、徐冷炉にて処理を行ったものを用いた。
【0083】
実施例のガラスの透過率は、日本光学硝子工業会規格JOGIS02−2003に準じて測定した。なお、本発明においては、ガラスの透過率を測定することで、ガラスの着色の有無と程度を求めた。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200〜800nmの分光透過率を測定し、λ
5(透過率5%時の波長)及びλ
70(透過率70%時の波長)を求めた。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
これらの表のとおり、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれも屈折率(n
d)が1.85以上、より詳細には1.91以上であるとともに、この屈折率(n
d)は2.20以下、より詳細には1.96以下であり、所望の範囲内であった。他方で、参考例の光学ガラスは、屈折率(n
d)が1.814であり、所望とする範囲よりも小さな値であった。
【0088】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、いずれもアッベ数(ν
d)が23以上、より詳細には25以上であるとともに、このアッベ数(ν
d)は35以下、より詳細には29以下であり、所望の範囲内であった。他方で、参考例の光学ガラスは、アッベ数(ν
d)が36.4であり、所望とする範囲よりも大きな値であった。
【0089】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)が、(−0.01ν
d+2.15)≦n
d≦(−0.01ν
d+2.25)の関係を満たしており、より詳細には(−0.02ν
d+2.19)≦n
d≦(−0.02ν
d+2.22)の関係を満たしていた。そして、本願の実施例のガラスについての屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)の関係は、
図1に示されるようになった。
【0090】
このため、本発明の実施例の光学ガラスは、高屈折率に寄与する成分の中でも材料コストの安いTiO
2成分やBaO成分を含有させたときに、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)が所望の範囲内にある光学ガラスを得られることが明らかになった。
【0091】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ
70(透過率70%時の波長)がいずれも550nm以下、より詳細には500nm以下であった。また、本発明の実施例の光学ガラスは、λ
5(透過率5%時の波長)がいずれも400nm以下、より詳細には380nm以下であった。このため、本発明の実施例の光学ガラスは、可視光に対する透過率が高く着色し難いことが明らかになった。
【0092】
また、本発明の実施例の光学ガラスは、失透していない安定なガラスであった。
【0093】
従って、本発明の実施例の光学ガラスは、屈折率(n
d)及びアッベ数(ν
d)が所望の範囲内にあり、且つ可視光についての透過率が高い光学ガラスを、より安価に得ることができることが明らかになった。
【0094】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。