(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973919
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/67 20060101AFI20211118BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20211118BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20211118BHJP
A61K 8/63 20060101ALI20211118BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
A61K8/67
A61K8/9789
A61K8/34
A61K8/63
A61Q19/00
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-170902(P2017-170902)
(22)【出願日】2017年9月6日
(65)【公開番号】特開2019-43914(P2019-43914A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135324
【氏名又は名称】株式会社ノエビア
(72)【発明者】
【氏名】新間 優子
(72)【発明者】
【氏名】丹後 弘隆
【審査官】
片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−002281(JP,A)
【文献】
特開2010−189363(JP,A)
【文献】
特開2013−136544(JP,A)
【文献】
特開2017−114845(JP,A)
【文献】
特開2007−204399(JP,A)
【文献】
特開2013−209320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(C)を含有する皮膚外用剤。
(A)パルミチン酸アスコルビルリン酸3Naを0.05〜5質量%
(B)クインスシードエキスを0.005〜0.1質量%
(C)ジグリセリンを1〜20質量%
【請求項2】
さらに
( D ) 高級脂肪酸フィトステリルを0.3〜10質量%
含有する請求項1 に記載の皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスコルビン酸誘導体及びその塩から選択される1種又は2種以上を含有する、皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
小じわ改善、美白などを目的とした有効成分を含有する様々な化粧料が開発され、有効成分の効果に加え、使い心地の良さを考えた様々な感触の製品が発売されている。
例えば、特許文献1には、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アスコルビン酸硫酸エステル二ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロースを含有する乳化物が記載され、特許文献2には、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、アスコルビン酸パルミチン酸エステルを含有する乳化物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−35785号公報
【特許文献2】特開2013−241406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの化粧料では、塗布しやすいようにとろみをだすため、水溶性ポリマーを配合しており、塗布時に化粧料のべたつきが生じ、いつまでも肌の上に残ったような膜感を感じ、保湿感にも改善の余地があることが分かった。
そこで本発明は、使用時のべたつきや膜感がなく、保湿感に優れた皮膚外用剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)
下記の(A)〜(C)を含有する皮膚外用剤。
(A)アスコルビン酸誘導体及びその塩から選択される1種又は2種以上
(B)クインスシードエキス
(C)ジグリセリン
【0006】
(2) さらに
(D)高級脂肪酸フィトステリル
を含有する請求項1に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の皮膚外用剤は、使用時のべたつきや膜感がなく、かつ高い保湿効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下本発明を実施するための形態を説明する。
【0009】
本発明の皮膚外用剤は、下記の(A)〜(C)を必須成分として含有する。
(A)アスコルビン酸誘導体及びその塩から選択される1種又は2種以上
(B)クインスシードエキス
(C)ジグリセリン
【0010】
本発明の皮膚外用剤に配合する(A)アスコルビン酸誘導体及びその塩から選択される1種又は2種以上は、通常化粧料、医薬部外品に配合し得るものであれば特に限定されない。アスコルビン酸誘導体として具体的には、ビタミンC誘導体としてパルミチン酸アスコルビルリン酸3Na、テトラヘキシルデカン酸アスコルビル、(アスコルビル/トコヘリル)リン酸K、アスコルビン酸−2リン酸−6パルミチン酸、L‐アスコルビン酸2‐グルコシド、アスコルビルリン酸Na、アスコルビルリン酸Mg等が例示される。
本発明においては、その効果の点からパルミチン酸アスコルビルリン酸3Naを用いることが最も好ましい。
【0011】
これらのアスコルビン酸誘導体及びその塩から選択される1種又は2種以上は、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらのアスコルビン酸及びその誘導体の中でも、安定性や美白効果等の観点から、好ましくはアスコルビン酸の誘導体、更に好ましくはアスコルビン酸2−グルコシドが挙げられる。アスコルビン酸誘導体及びその塩から選択される1種又は2種以上の配合量は、皮膚外用剤全量に対し0.05〜5質量%が好ましい。0.05質量%未満の配合ではアスコルビン酸及びその塩の皮膚への有効性が発揮されない場合がある。5質量%を超えて配合すると、使用感がべたつく原因となり得る。
【0012】
本発明の皮膚外用剤に配合する(B)クインスシードエキスは、マルメロの木の種子より得られる抽出物であり、市販されているものを用いることができる。クインスシードエキスを得る際の抽出溶媒としては、水を用いることが好ましい。
【0013】
本発明の皮膚外用剤におけるクインスシードエキスの配合量は、エキス純分として皮膚外用剤全量に対して0.005〜0.1質量%が好ましく、特に同0.005〜0.05質量%が好ましい。皮膚外用剤全量に対して0.005質量%未満の配合量であるとアスコルビン酸誘導体による膜感を十分に抑制することができず、また同0.1質量%を超えて配合すると肌に高分子特有の皮膜が形成され、使用感触が損なわれることになり好ましくなく、かつ保管中などにゲル状に変化するなど安定性に問題がある。
【0014】
本発明の皮膚外用剤に配合する(C)ジグリセリンは、通常化粧料、医薬部外品に用いられ得るものであれば特に限定されず、市販されているものを用いることができる。
【0015】
本発明におけるジグリセリンの配合量は、皮膚外用剤全量に対して1〜20質量%が好ましく、特に同1〜10質量%が好ましい。
【0016】
本発明においては、ジグリセリンと合わせて、他の多価アルコールを併用して用いることが好ましい。かかる多価アルコールとしては、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。本発明の皮膚外用剤においては、これらの保湿剤の配合量を調整することにより、使用感を調整することが可能となる。
【0017】
本発明の皮膚外用剤は、さらに高級脂肪酸フィトステリルを配合することにより、より高い保湿効果を発揮する。高級脂肪酸フィトステリルとしては、イソステアリン酸フィトステリル、コメヌカ油脂肪酸フィトステリル、ヒマワリ種子油脂肪酸フィトステリル、マカデミアナッツ脂肪酸フィトステリル等が例示される。本発明においては、その効果の点からマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルを用いることが好ましい。
【0018】
高級脂肪酸フィトステリルの配合量は、皮膚外用剤の剤型、求められる使用感によって変化するが0.3〜10質量%の配合が好ましい。
【0019】
本発明の皮膚外用剤は、上述の成分の他に、通常の化粧料、医薬部外品に用いられる任意成分を、本発明の効果を阻害しない程度に配合することができる。具体的には、油剤、界面活性剤、増粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、抗酸化剤、抗炎症剤、抗菌剤等を挙げることができる。
【0020】
本発明の皮膚外用剤の剤型は、乳化型であることが好ましく、さらに水中油乳化型化粧料であることが好ましい。
【0021】
本発明の皮膚外用剤は定法により調製することができる。
【0022】
本発明の皮膚外用剤は、例えば、ローション剤、乳剤、軟膏の剤型で用いることができる。
【実施例】
【0023】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されるものではない。なお、配合量は特に断りのない限り質量%である。
【0024】
まず、本発明の実施例及び比較例の評価方法を示す。
【0025】
<べたつき評価>
本発明の皮膚外用剤を定法により塗布した後、3名の専門パネルを用いて官能的に評価した。実施例及び比較例の各試料を塗布後のべたつきについて合議により下記の3段階で評価した。なお、官能評価は実施例、比較例を区別がつかない状態で使用し、絶対評価で評価を行った。以下の官能試験も同様である。
○:あまりべたつかない
△:少しべたつく
×:非常にべたつく
【0026】
<膜感評価>
本発明の皮膚外用剤を定法により塗布した後、3名の専門パネルを用いて官能的に評価した。実施例及び比較例の各試料を塗布後の膜感について合議により下記の3段階で評価した。
○:ちょうどいい膜感がある
△:少し膜感が気になる
×:かなり膜感が気になる
【0027】
<保湿効果感評価>
本発明の皮膚外用剤を定法により塗布した後、3名の専門パネルを用いて官能的に評価した。実施例及び比較例の各試料を塗布後の保湿効果感について合議により下記の4段階で評価した。
◎:保湿効果感が非常に良い
○:保湿効果感がよい
△:保湿効果感があまり良くない
×:保湿効果感が悪い
【0028】
表1に示す処方を用い、実施例1、2及び比較例1〜3を定法により調製した。
【0029】
【表1】
【0030】
表1に示した通り、本発明の皮膚外用剤である実施例1は、アスコルビン酸誘導体塩を配合しているにもかかわらず、使用時のべたつきや膜感がなく、保湿効果を発揮する使用感であった。またさらにバチルアルコールの一部を高級脂肪酸フィトステリルであるマカデミアナッツ脂肪酸フィトステリルに代替した実施例2は実施例1の使用感に加え、高い保湿効果を発揮する使用感であった。これに対し、ジグリセリンをBGに代替した比較例1は、非常にべたつきが、少し膜感が気になる使用感であった。また、クインスシードエキスをグリセリンに代替した比較例2は、少しべたつきが、かなり膜感が気になる使用感であった。