特許第6973929号(P6973929)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6973929脱墨剤、脱墨方法、及び再生紙の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973929
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】脱墨剤、脱墨方法、及び再生紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 5/02 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   D21C5/02
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-237893(P2017-237893)
(22)【出願日】2017年12月12日
(65)【公開番号】特開2019-105000(P2019-105000A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2020年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100098408
【弁理士】
【氏名又は名称】義経 和昌
(72)【発明者】
【氏名】池田 康司
(72)【発明者】
【氏名】濱田 義人
【審査官】 川口 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−121138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21C 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分Aとして下記式(1)に示す化合物及び成分Bとして下記式(2)に示す化合物を含有し、成分Aと成分Bの質量比(成分A/成分B)が1.5以上以下である、脱墨剤。
−O−[(PO)(EO)]−H (1)
[式(1)において、Rは、炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基、POはプロピレンオキシ基、mはPO基の平均付加モル数であって20以上50以下の数、EOはエチレンオキシ基、nはEO基の平均付加モル数であって20以上55以下の数、mとnの比(m/n)が0.5以上2以下である。なお、POとEOはブロックでもランダムでもよく、付加する順番に限定はない。]
−O−(EO)−H (2)
[式(2)において、Rは、炭素数7以上9以下の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、pはEO基の平均付加モル数であって3以上10以下の数である。]
【請求項2】
前記質量比(成分A/成分B)が1.5以上4以下である、請求項1記載の脱墨剤。
【請求項3】
請求項1又は2記載の脱墨剤を用いる、脱墨方法。
【請求項4】
請求項記載の脱墨方法を製造工程に含む、再生紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱墨剤、脱墨方法、及び再生紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報媒体や包装容器など、様々な用途に古くから紙は利用されている。一度利用しただけでゴミとして処分してしまっては資源の無駄遣いであり、古紙を資源ゴミとして回収することはゴミ量の削減にもなり、環境意識の高まりとともに回収され、再生利用される古紙の量も増えている。しかし、紙の色が比較的白い印刷用紙や新聞用紙用途で古紙パルプを利用するには、紙に印刷されているインキを取り除いて、古紙を再生する必要がある。このインキを取り除くために行われる工程を脱墨と呼び、脱墨工程で使用される薬剤として多くの脱墨剤が開発されており、工業的には主としてフローテーション法と呼ばれる方法でインキを取り除いている。この方法は、インキをあらかじめ細かな粒子状にして分散させ、気泡の表面に吸着させてパルプとインキを分離することで、効率的に脱墨する方法であり、洗浄、必要に応じて漂白し、脱墨パルプとする。そして、脱墨パルプは木材パルプなどと一緒に、抄紙されることでさまざまな紙として再生される。このフローテーション法では、発泡量と泡へのインキの吸着のバランスを取ることで、脱墨パルプの歩留まりと白色度等の性能をバランスさせてきた。
【0003】
従来、脱墨剤としてポリオキシエチレンアルキルエーテルが広く使用されている。ポリオキシエチレンアルキルエーテルの脱墨性能を向上させたり、或いは各脱墨工程に必要とされる機能を数種類付与させて脱墨剤で対応させたりするために、付加させるアルキレンオキサイドの種類、付加順序、付加モル数などを調整することが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1及び2には、オキシアルキレン基を除く平均炭素数が15以下の化合物である特定構造の非イオン界面活性剤(1)と、オキシアルキレン基を除く平均炭素数が15超であり曇点が20〜90℃の特定構造の脱インキ剤(2)とを含むパルプスラリーを調製して、中性新聞を含む古紙の脱インキを行う脱インキパルプの製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献3には、炭素数1〜8のアルコール又は脂肪酸にアルキレンオキサイドを特定範囲で付加して得られ、且つ溶解度パラメーターが特定の範囲にある化合物を必須成分として含有する脱墨剤が記載されている。
【0006】
特許文献4には、一般式R−O−(AO)−Xで表わされる、オフィス古紙を、OA用紙等として使用することができる高白色度の再生紙を得ることができるオフィス古紙処理剤が記載されている。
【0007】
特許文献5には、短鎖アルコールのアルキレンオキシド付加物と長鎖アルコールに特定の構造を有するプロピレンオキサイド−エチレンオキサイドブロック付加物とを併用することで、離解工程で印刷古紙からインキを効率よく剥離させ、フローテーション処理において、適度に泡立ち、優れた剥離インキ捕集力を発揮し、高白色度で残インキの少ない再生パルプを得ることが出来る古紙再生用脱墨剤が記載されている。
【0008】
特許文献6には、従来の界面活性剤とセカンダリーアルコールのCO付加物である界面活性剤とを併用する脱墨剤が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−121138号公報
【特許文献2】特開2009−270222号公報
【特許文献3】特開平4−308291号公報
【特許文献4】特開2003−166186号公報
【特許文献5】特開平7−119060号公報
【特許文献6】特開昭61−41386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、古紙の回収量及び再生量の増加並びに回収される古紙品質の変化に伴い、より生産効率の高い脱墨剤が求められ、また、脱墨パルプの白色度向上といった脱墨性能の向上に加え、安定操業や工程の簡略化といった作業性を向上できる脱墨剤及び脱墨方法が求められている。しかしながら、特許文献1〜6に記載の脱墨方法では、これらの課題をすべて解決することは困難であった。
本発明は、高い発泡性と優れた脱墨性を有する脱墨剤、脱墨方法及び再生紙の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、成分Aとして下記式(1)に示す化合物及び成分Bとして下記式(2)に示す化合物を含有し、成分Aと成分Bの質量比(成分A/成分B)が1.5以上20以下である、脱墨剤に関する。
−O−[(PO)(EO)]−H (1)
[式(1)において、Rは、炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基、POはプロピレンオキシ基、mはPO基の平均付加モル数であって20以上50以下の数、EOはエチレンオキシ基、nはEO基の平均付加モル数であって20以上55以下の数、mとnの比(m/n)が0.5以上2以下である。なお、POとEOはブロックでもランダムでもよく、付加する順番に限定はない。]
−O−(EO)−H (2)
[式(2)において、Rは、炭素数7以上9以下の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、pはEO基の平均付加モル数であって3以上10以下の数である。]
【0012】
また、本発明は、前記本発明の脱墨剤を用いる、脱墨方法に関する。
【0013】
また、本発明は、前記本発明の脱墨方法を製造工程に含む、再生紙の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い発泡性能と優れた脱墨性能を両立し、古紙から高い生産効率で高品質の脱墨パルプを得ることができる脱墨剤、並びにこれを用いた脱墨方法及び再生紙の製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の脱墨剤は、高い発泡性能と優れた脱墨性能を両立できることから、低添加量でフローテーション時の発泡量が多く、インク除去効率が高いため、白色度が高い脱墨パルプを得ることができ、古紙から高い生産効率で高品質の脱墨パルプを得ることができる。
本発明に係る脱墨剤における効果の作用メカニズムの詳細は定かではないが、以下のように考えられる。
フローテーション法による脱墨のメカニズムは、紙を繊維状に解してパルプとし、パルプ表面及びパルプ間に吸着するインキを脱墨剤によってパルプから分離させ、脱墨剤と共にインキを泡に吸着させることで、インキを泡と共に系外に排出し、除去するものである。脱墨剤に求められる主性能はインキをパルプから分離することであり、さらに泡界面へインキと共に吸着する性能が高いものがより良い脱墨剤となる。発泡しやすい条件であれば、発泡性能が低くても脱墨剤として有効に機能するが、古紙の対象が雑誌古紙である、脱墨装置の構造の関係上発泡しにくい、といった発泡しにくい条件においては、インク分離性能に加えて強い発泡性が必要となる。本発明では、式(1)の化合物の分子構造がインク吸着性に好適な構造であるため、脱墨剤として上記式(1)の化合物を含有させることにより、優れた脱墨性能を発揮する脱墨剤が得られると推定される。特に、上記式(1)の化合物は、分子構造中の全体のEOとPOのバランスにより、フローテーション時の泡が安定化し、効率よくインクを吸着でき、効率よく脱墨処理ができるものと推定される。
一方、上記式(2)の化合物は、化合物(1)と比較して分子量が小さい。そのように分子の大きさが違うこと及び親水性と疎水性のバランスが化合物(1)と近いことから、化合物(1)の分子が配向することで形成された泡膜に化合物(2)が浸透し、泡膜の強度を上げるように配向した化合物(1)分子間に留まり、泡が安定化することで発泡量が増加すると推定される。また、一般に、発泡性の高い界面活性剤は乳化性も高く、泡とともに排出すべきインキを水中に分散あるいは乳化させてしまい、古紙から剥離したインキを効率よく排出できなくさせてしまうが、化合物(2)は上記の機構により、インキを分散・乳化することなく、発泡量を増加させることができ、泡とともに剥離したインキも排出できると推定される。
【0016】
<成分A>
成分Aは、下記式(1)に示す化合物である。
−O−[(PO)(EO)]−H (1)
[式(1)において、Rは、炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基、POはプロピレンオキシ基、mはPO基の平均付加モル数であって20以上50以下の数、EOはエチレンオキシ基、nはEO基の平均付加モル数であって20以上55以下の数、mとnの比(m/n)が0.5以上2以下である。なお、POとEOはブロックでもランダムでもよく、付加する順番に限定はない。]
【0017】
式(1)中、Rは、炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基であって、脱墨性向上の観点から、好ましくはアルキル基である。また、Rは、直鎖でも分岐鎖でもよいが、同様の観点から、好ましくは直鎖である。Rの炭素数は、同様の観点から、12以上であり、好ましくは14以上、より好ましくは16以上であり、そして、22以下であり、好ましくは20以下、より好ましくは18以下である。Rの炭素数は、好ましくは14以上22以下、より好ましくは16以上20以下、更に好ましくは16以上18以下、より更に好ましくは18である。
【0018】
式(1)中、mは、プロピレンオキシ基POの平均付加モル数であって、20以上50以下の数である。脱墨性向上の観点から、mは、20以上であり、好ましくは22以上、より好ましくは24以上、更に好ましくは25以上であり、そして、50以下であり、好ましくは48以下、より好ましくは45以下、更に好ましくは42以下である。mは、好ましくは22以上48以下、より好ましくは24以上45以下、更に好ましくは25以上42以下である。
式(1)中、nは、エチレンオキシ基EOの平均付加モル数であって、20以上55以下の数である。脱墨性向上の観点から、nは、20以上であり、好ましくは25以上、より好ましくは30以上、更に好ましくは40以上であり、そして、55以下であり、好ましくは53以下、より好ましくは51以下、更に好ましくは49以下である。好ましくは25以上53以下、より好ましくは30以上51以下、更に好ましくは40以上49以下である。
mとnの比(m/n)は、0.5以上2以下である。脱墨性向上の観点から、m/nは、0.5以上であり、好ましくは0.51以上、より好ましくは0.53以上、更に好ましくは0.55以上であり、そして、2以下であり、好ましくは1.7以下、より好ましくは1.5以下、更に好ましくは1.0以下である。m/nは、好ましくは0.51以上1.7以下、より好ましくは0.53以上1.5以下、更に好ましくは0.55以上1.0以下である。
【0019】
POとEOはブロックでもランダムでもよく、付加する順番に限定はない。成分Aは、脱墨性向上の観点から、末端にPO付加したもの、すなわち式(1)中のHにPOが結合した構造を有するものが好ましい。成分Aは、R−OHで表されるアルコールに、POを付加させた後に、EOを付加又はPOとEOとをランダムに付加させたものがより好ましく、R−OHで表されるアルコールに、POを付加させた後にPOとEOとをランダムに付加させ、更にPOを付加させたものが更に好ましい。
すなわち、成分Aは、下記式(1−1)に示す化合物がより好ましい。
−O−(PO)m1−[(PO)m2/(EO)]−(PO)m3−H (1−1)
[式(1−1)において、Rは、炭素数12以上22以下のアルキル基又はアルケニル基、POはプロピレンオキシ基、m1、m2、m3は、それぞれ、PO基の平均付加モル数であって、m1、m2、m3の合計が20以上50以下となる数、EOはエチレンオキシ基、nはEO基の平均付加モル数であって20以上55以下の数、m1、m2、m3の合計とnの比〔(m1+m2+m3)/n〕が0.5以上2以下である。「/」はEOとPOとがランダムに結合していることを意味する記号である。]
【0020】
成分Aは、上記式(1)に示す化合物の1種又は2種以上であってよい。
【0021】
<成分B>
成分Bは、下記式(2)に示す化合物である。
−O−(EO)−H (2)
[式(2)において、Rは、炭素数7以上9以下の炭化水素基、EOはエチレンオキシ基、pはEO基の平均付加モル数であって3以上10以下の数である。]
【0022】
式(2)中、Rは、炭素数7以上9以下の炭化水素基であって、脱墨性及び発泡性向上の観点から、炭化水素基は好ましくはアルキル基である。また、炭化水素基は、直鎖でも分岐鎖でもよいが、同様の観点から、好ましくは分岐鎖である。Rの炭素数は、同様の観点から、7以上であり、そして、9以下であり、好ましくは8である。
【0023】
式(2)中、pは、EO基の平均付加モル数であって3以上10以下の数である。脱墨性及び発泡性向上の観点から、pは、3以上であり、好ましくは4以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは6以上であり、そして、10以下であり、好ましくは9以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7以下である。すなわち、pは、好ましくは4以上9以下、より好ましくは5以上8以下、更に好ましくは6以上7以下である。
【0024】
本発明の脱墨剤中、成分Aの含有量は、脱墨性向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは64質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、そして、発泡性向上の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは92質量%以下、より更に好ましくは90質量%以下である。
【0025】
本発明の脱墨剤中、成分Bの含有量は、発泡性向上の観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは7質量%以上、更に好ましくは8質量%以上、より更に好ましくは10質量%以上であり、そして、脱墨性向上の観点から、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、より更に好ましくは20質量%以下である。
【0026】
本発明の脱墨剤中、成分Aと成分Bの合計含有量は、輸送効率及び貯蔵効率向上の観点から、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、より更に好ましくは70質量%以上であり、そして、作業性向上の観点から、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは92質量%以下、より更に好ましくは90質量%以下である。
【0027】
本発明の脱墨剤は、成分Aと成分Bの質量比(成分A/成分B)が1.5以上20以下である。成分Aと成分Bの質量比(成分A/成分B)は、脱墨性及び発泡性向上の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは2.1以上、更に好ましくは2.3以上、より更に好ましくは2.5以上であり、そして、好ましくは19以下、より好ましくは15以下、更に好ましくは10以下、より更に好ましくは5以下である。
【0028】
本発明の脱墨剤は、成分A及び成分Bからなるものであってもよい。また、本発明の脱墨剤は、成分A及び成分Bと、成分A及び成分B以外の成分とを含有するものであってもよい。本発明の脱墨剤として、例えば、成分A及び成分Bからなる脱墨剤が挙げられる。また、本発明の脱墨剤として、例えば、成分A、成分B及び水を含有する脱墨剤が挙げられる。
【0029】
本発明の脱墨剤は、作業性向上及び脱墨剤の引火性を低下させる観点から、成分A及び成分B以外の成分として、水を含有することが好ましい。同様の観点から、水の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上であって、輸送効率及び貯蔵効率向上の観点から、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
【0030】
本発明の脱墨剤は、必要に応じて、従来から脱墨工程に用いられている成分(成分A及び成分Bを除く)を、本発明の性能に影響しない範囲内で含有することができる。例えば、成分A、B以外の非イオン性界面活性剤、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級脂肪酸及びその塩等の脱インキ剤;苛性ソーダや珪酸ソーダ等のアルカリ薬剤;過酸化水素、次亜塩素酸塩、次亜硫酸塩等の漂白剤;スケール防止剤;ピッチコントロール剤;消泡剤;スライムコントロール剤等である。
【0031】
本発明の脱墨剤は、成分Aと成分Bを混合することで得られる。成分A及び成分Bの混合方法には特に制限はなく、通常の混合方法を用いて混合すればよい。脱墨性及び発泡性向上の観点から、成分A及び成分Bが均一に混合されていることが好ましく、均一かつ透明であることがより好ましい。すなわち、本発明の脱墨剤は、均一な混合物であることが好ましく、均一かつ透明な混合物であることがより好ましい。本発明の脱墨剤の調製の際には、性能を損なわない範囲で、成分A及び成分B以外の成分も同時に混合してもよく、乳化剤、分散剤及び可溶化剤等を均一化するために混合してもよい。なお、本発明の脱墨剤が均一であるとは、目視にて当該脱墨剤が一様であり、混合物中に境界が観察されない状態であることをいう。また、本発明の脱墨剤が透明であるとは、目視にて当該脱墨剤を通して反対側が透けて確認できる状態であることをいう。本発明の脱墨剤は、液体であることも好ましい。
【0032】
<脱墨方法>
本発明は、本発明の脱墨剤を用いる脱墨方法を提供する。本発明の脱墨方法では、脱墨性及び発泡性向上の観点から、古紙に対する成分Aと成分Bの合計添加量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.07質量%以上、より更に好ましくは0.10質量%以上であり、そして、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.45質量%以下、更に好ましくは0.40質量%以下、より更に好ましくは0.35質量%以下である。
【0033】
本発明の脱墨方法では、本発明の脱墨剤を用いるが、質量比(成分A/成分B)が1.5以上20以下であれば、成分Aと成分Bは別々に用いてもよい。すなわち、本発明の脱墨方法は、成分Aと成分Bとを、質量比(成分A/成分B)が1.5以上20以下で古紙に適用する脱墨方法であってよい。本発明の脱墨方法では、例えば、前記質量比を満たすように、成分Aと成分Bを含有する脱墨剤と成分A及び/又は成分Bとを組み合わせて用いてもよい。この場合、成分Aと成分Bとを含有する脱墨剤は、本発明の脱墨剤であってもなくてもいずれでもよい。これらの方法においても、古紙に対する成分Aと成分Bの合計添加量が前記範囲となるように、成分Aと成分Bとを用いることが好ましい。
【0034】
本発明の脱墨方法は、フローテーション工程を含むことが好ましい。本発明の脱墨方法は、フローテーション工程を含む公知の方法に準じて行うことができる。本発明の脱墨方法は、例えば、フローテーション工程の他に、離解工程、漂白工程、ニーディング工程、洗浄工程、脱水工程、乾燥工程などを含むことができる。
【0035】
本発明において、本発明の脱墨剤を添加する工程は、フローテーション工程の前であることが好ましい。この場合、本発明の脱墨剤を添加する工程は、フローテーション工程の前であればいずれの工程であってもよく、脱墨性向上及び発泡性向上の観点から、好ましくは離解工程、漂白工程、及びニーディング工程から選ばれる1つ以上の工程で、より好ましくは少なくとも離解工程で添加することである。
ここで、フローテーション工程の前とは、フローテーション工程を行うための気泡をパルプスラリー中で発生させる前をいう。一般に、フローテーション工程は、フローテーターを用いて、パルプスラリーに空気を吹き込んで行われる。この場合、最初にパルプスラリー中に空気を吹き込む時点よりも前の時点がフローテーション工程の前である。
【0036】
<再生紙の製造方法>
本発明は、上記本発明の脱墨方法を製造工程に含む、再生紙の製造方法を提供する。すなわち、本発明の脱墨方法により得られた脱墨パルプから再生紙を製造することができる。再生紙の製造は、公知の方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0037】
以下の合成例、実施例、比較例において、特記しない限り「%」は「質量%」を意味する。
<合成例1〜9>
合成例1(成分A:化合物A1)
ステアリルアルコール(1モル、ナカライテスク株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、プロピレンオキシド(5モル)を125℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、PO付加体を得た。引き続きエチレンオキシド/プロピレンオキシド混合物(47モル/22モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、PO−(EO/PO)付加体を得た。更にプロピレンオキシド(1モル)を125℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、化合物A1(PO−(EO/PO)−PO付加体)を得た。得られた化合物A1は、式(1)で表現すると、R:ステアリル基、m:28、n:47である。
【0038】
合成例2(成分A’:比較化合物A1)
ステアリルアルコール(1モル、ナカライテスク株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(10モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体を得た。引き続きプロピレンオキシド(30モル)を125℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、比較化合物A1(EO−PO付加体)を得た。得られた比較化合物A1は、式(1)で表現すると、R:ステアリル基、m:30、n:10である。
【0039】
合成例3(成分A’:比較化合物A2)
ステアリルアルコール(1モル、ナカライテスク株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(22モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体を得た。引き続きプロピレンオキシド(66モル)を125℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、比較化合物A2(EO−PO付加体)を得た。得られた比較化合物A2は、式(1)で表現すると、R:ステアリル基、m:66、n:22である。
【0040】
合成例4(成分A’:比較化合物A3)
ステアリルアルコール(1モル、ナカライテスク株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(15モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体を得た。引き続きプロピレンオキシド(15モル)を125℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、比較化合物A3(EO−PO付加体)を得た。得られた比較化合物A3は、式(1)で表現すると、R:ステアリル基、m:15、n:15である。
【0041】
合成例5(成分B:化合物B3)
ヘキサエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエ−テル(1モル、「ブラウノン EH−6」青木油脂工業株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(2モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体(化合物B3)を得た。得られた化合物B3は、式(2)で表現すると、R:2−エチルヘキシル基、p:8である。
【0042】
合成例6(成分B’:比較化合物B3)
ラウリルアルコール(1モル、「カルコール 2098」花王株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(5モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体(比較化合物B3)を得た。得られた比較化合物B3は、式(2)で表現すると、R:ラウリル基、p:5である。
【0043】
合成例7(成分B’:比較化合物B4)
ラウリルアルコール(1モル、「カルコール 2098」花王株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(6モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体(比較化合物B4)を得た。得られた化合物B4は、式(2)で表現すると、R:ラウリル基、p:6である。
【0044】
合成例8(成分B’:比較化合物B5)
ラウリルアルコール(1モル、「カルコール 2098」花王株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(12モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体(比較化合物B5)を得た。得られた化合物B5は、式(2)で表現すると、R:ラウリル基、p:12である。
【0045】
合成例9(成分B’:比較化合物B9)
ヘキサエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエ−テル(1モル、「ブラウノン EH−6」青木油脂工業株式会社製)と触媒量の水酸化カリウム(ナカライテスク株式会社製)をオートクレーブに仕込み、窒素置換後、減圧下で脱水を行い系内の水分を0.2%以下とし、エチレンオキシド(14モル)を160℃、0.3MPa以下で付加、熟成し、EO付加体(比較化合物B9)を得た。得られた化合物B9は、式(2)で表現すると、R:2−エチルヘキシル基、p:20である。
【0046】
実施例、比較例で用いた成分を示す。
<成分A>
・化合物A1:合成例1で得られた化合物A1
<成分A’(成分Aの比較成分)>
・比較化合物A1:合成例2で得られた比較化合物A1
・比較化合物A2:合成例3で得られた比較化合物A2
・比較化合物A3:合成例4で得られた比較化合物A3
<成分B>
・化合物B1:テトラエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(「ブラウノン EH−4」青木油脂工業株式会社製)
・化合物B2:ヘキサエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(「ブラウノン EH−6」青木油脂工業株式会社製)
・化合物B3:合成例5で得られた化合物B3
【0047】
<成分B’(成分Bの比較成分)>
・比較化合物B1:ポリエチレングリコール400(平均分子量360〜440、和光純薬工業株式会社製)
・比較化合物B2:トリエチレングリコールモノブチルエーテル(「ブチルトリグリコール」日本乳化剤株式会社製)
・比較化合物B3:合成例6で得られた比較化合物B3
・比較化合物B4:合成例7で得られた比較化合物B4
・比較化合物B5:合成例8で得られた比較化合物B5
・比較化合物B6:2−エチルヘキサノール(「2−エチル−1−ヘキサノール」東京化成工業株式会社製)
・比較化合物B7:エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(「2エチルヘキシルグリコール」日本乳化剤株式会社製)
・比較化合物B8:ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(「2エチルヘキシルジグリコール」日本乳化剤株式会社製)
・比較化合物B9:合成例9で得られた比較化合物B9
<その他の成分>
・オレイン酸(ナカライテスク株式会社製)
【0048】
<脱墨性能評価>
〔原料古紙〕
原料古紙としては質量比で新聞紙/チラシ=6/4で配合した混合古紙を用いた。この古紙を、夏場の劣化を想定し、80℃で5時間加熱し、熱劣化させて使用した。
【0049】
〔脱墨処理方法〕
脱墨処理は、下記に示す、離解工程、希釈工程、フローテーション工程、抄紙工程を、この順番で行った。
【0050】
〔離解工程〕
3L円筒容器(内径150mm、ステンレス製)に、5cm角に裁断した原料古紙を100g(絶乾質量)に対して、表1の脱墨剤0.15g(対パルプ0.15質量%)、水酸化ナトリウム(ナカライテスク株式会社製、JIS試薬特級)0.5g及び水2399.35gを添加(パルプ濃度4質量%)し、50℃に加温し、攪拌機(軸径15mm、羽根長35mm、羽根巾20mm、3枚ピッチドパドル、邪魔板あり)を用いて3000rpmの回転数で撹拌しながら、10分間、離解を行い、パルプスラリーを得た。水は、オルガノ株式会社製の純水装置G−10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水を用いた。表1では、成分A’を便宜的に成分Aの欄に、成分B’を便宜的に成分Bの欄に示し、成分A’を成分Aとして、成分B’を成分Bとして成分A/成分Bの質量比を算出した。また、表2に、各成分の構造を示した。A’成分は、便宜的に式(1)の構造にあてはめ、B’成分は、便宜的に式(2)の構造にあてはめて表2に示した。
【0051】
〔希釈工程〕
離解工程で得られたパルプスラリーに、パルプ濃度が1質量%になるように50℃の水を添加し、撹拌棒で1分間、攪拌した。水は、オルガノ株式会社製の純水装置G−10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水を用いた。
【0052】
〔フローテーション工程〕
前記希釈液4300gを、デンバー型フローテーター(5L、極東振興株式会社製)に投入し、希釈したパルプスラリー1L当たり毎分2.5Lの送気量で空気を吹き込み、離解工程での温度、すなわち50℃を維持しながら3分間フローテーションを行った。フローテーション中、1分毎にフローテーションセル上に蓄積したインキを含んだ泡沫を除去した。フローテーション工程で除去した泡沫の総質量を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
〔抄紙工程〕
フローテーション後のパルプスラリーを用いて、硫酸アルミニウム(南海化学株式会社製、硫酸ばんど)をパルプ100質量部に対して有効分10質量部添加して混合し、ステンレス製金網(150メッシュ、直径160mm)で抄紙後のシートのパルプ坪量が100g/mになるようにJISP8209−1994に従い手すきシートを作製した。抄紙後のシートは、340kPaで2分間プレス機にてプレスし、2時間風乾した。乾燥したシートを23℃、湿度50%の条件で1日間調湿してから紙の白色度を以下の方法で測定した。
【0054】
・白色度
分光光度計型測色計Color Touch PC(Technidyne Corporation製)を用いて、紙のISO白色度を測定した。白色度の数値が大きいほど白いパルプであることを表す。原料の古紙の種類やロット、脱墨パルプ製造時の目標パルプ歩留まり等により、得られる脱墨パルプの白色度の絶対値が異なるが、同じ抄紙条件での比較で白色度が0.1%(0.1ポイント)異なることは大きな差異である。結果を表1に示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】