(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表裏地組織とそれらを連結する連結部からなるダブルラッセル編地を編成し、前記ダブルラッセル編地に消臭剤とバインダーを付与する消臭フィルターの製造方法であって、
前記ダブルラッセル編地の編成が次の(1)〜(4)の要件を満たす、消臭フィルターの製造方法。
(1)厚みを2.0〜20.0mmとする。
(2)前記表裏地組織の両方に開口部を設ける。
(3)前記連結部を構成する連結糸の少なくとも一部であるマルチフィラメント糸を、ダブルラッセル編機における相対する編針の2〜7針間にアンダーラップさせて、前記表裏地組織を交互に連結する。
(4)前記表地組織における1つの前記開口部の面積を、前記裏地組織における1つの前記開口部の面積の0.7〜1倍とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1及び
図2に示すように、本発明の消臭フィルターは、表裏地組織12、14とそれらを連結する連結部からなるダブルラッセル編地10に、消臭剤とバインダーを付与してなる消臭フィルターであって、前記ダブルラッセル編地10が以下の要件を満たす消臭フィルターである。なお、本発明において、フィルター使用時における気流の上流側の編地を表地組織12、気流の下流側の編地を裏地組織14と称する。
(1)厚みが2.0〜20.0mmである。
(2)表裏地組織12、14ともに開口部13、15を有している。
(3)連結部を構成する連結糸16の少なくとも一部にマルチフィラメント糸を用い、且つ、該マルチフィラメント糸は表裏の地組織12、14に対して30〜80度で傾斜させて配置されている。なお、マルチフィラメント糸の表裏地組織12、14に対する傾斜角度を
図5に符号θで示している。また図中の矢印は気流の向きを示している。
【0011】
消臭フィルターの基材としてダブルラッセル編地10を用い、該編地10に消臭剤をバインダーで固着させることにより、消臭フィルターを洗浄して繰り返し使用可能なものとすることができる。また、連結部を構成する連結糸16の少なくとも一部にマルチフィラメント糸を用いることにより、所望の量の消臭剤を付与することができる。また、厚みが2.0〜20.0mmであり、表裏地組織12、14ともに開口部13、15を有し、該マルチフィラメント糸を表裏の地組織12、14に対して30〜80度で傾斜させて配置したダブルラッセル編地10を用いることにより、風速の減少率が消臭フィルターに適したものとなり、消臭フィルターに流入したにおい成分が消臭剤と十分に接触してから排出されるため、消臭性能を向上させることができる。さらに、ダブルラッセル編地10の厚みを厚くすることにより連結糸16を長くすることができるため、空気に触れる面積および時間が増え、消臭性能を向上させることができる。
【0012】
本発明の消臭フィルターとして用いられるダブルラッセル編地10は、それぞれ少なくとも1枚の筬に導糸される地糸により形成される表裏地組織12、14、すなわち表地組織12および裏地組織14と、少なくとも1枚の筬に導糸される連結糸16により表裏地組織12、14を連結する連結部とからなるものである。
【0013】
ダブルラッセル編地10のコース密度は、14〜65コース/25.4mmであることが好ましく、より好ましくは16〜45コース/25.4mmであり、さらに好ましくは16〜42コース/25.4mmである。またダブルラッセル編地10のウエル密度は、14〜40ウエル/25.4mmであることが好ましく、より好ましくは16〜36ウエル/25.4mmであり、さらに好ましくは16〜32ウエル/25.4mmである。また、ダブルラッセル編地10のニードルループ数は196〜2600個/25.4mm四方であることが好ましく、より好ましくは256〜1512個/25.4mm四方である。各々が下限値以上であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。上限値以下であることにより、消臭フィルターとして十分な通気性が得られる。ここで、ダブルラッセル編地10のニードルループ数は、下記式から算出することができる。
ダブルラッセル編地10の25.4mm四方あたりのニードルループ数(個)
=コース密度(コース/25.4mm)×ウエル密度(ウエル/25.4mm)
【0014】
表裏地組織12、14を編成する地糸に用いられる糸条(編糸)の繊維素材は特に限定されるものでなく、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等、従来公知の繊維を挙げることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。なかでも物性、例えば耐熱性や耐湿熱性に優れるという理由から、合成繊維が好ましく、特にはポリエステルが好ましい。
【0015】
表裏地組織12、14を編成する地糸に用いられる糸条の形態も特に限定されるものでなく、紡績糸(単繊維糸)、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸(以上、長繊維糸)等、従来公知の形態の糸条を挙げることができる。なかでもダブルラッセル編地10の表面積を大きくし、消臭性能を向上させるという理由から、紡績糸、マルチフィラメント糸が好ましく、編立て性の観点からマルチフィラメント糸がより好ましく、特には捲縮性が付与されたマルチフィラメント糸が好ましい。また、表裏地組織12、14を編成する地糸の断面形状も特に限定されるものではなく、通常の丸型であっても、異型であってもよい。なかでも、表面積が大きく、消臭性能を向上させるという理由から、異型、特には星型や十字型の断面形状であることが好ましい。表裏地組織12、14の地糸に断面形状が異型の糸(以下、「異型断面糸」と言うことがある)を用いる場合は、ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合(質量比)が25%以上であることが好ましく、より好ましくは33%以上である。ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合(質量比)が25%以上であることにより、糸の表面積が大きくなり、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。なお、ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合とは、表裏地組織12、14の地糸と後述する連結糸16とに用いられる異型断面糸の質量の合計がダブルラッセル編地全体の質量に占める割合のことである。ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合は下記式から算出することができる。
ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合(%)
={(表裏地組織の地糸に用いられる異型断面糸の質量+連結糸に用いられる異型断面糸の質量)/ダブルラッセル編地全体の質量}×100
【0016】
表裏地組織12、14を編成する地糸に用いられる糸条の繊度(総繊度)は特に限定されるものでなく、56〜550dtexであることが好ましく、より好ましくは84〜330dtexである。総繊度が56dtex以上であることにより、消臭フィルターとして十分な強度が得られる。総繊度が550dtex以下であることにより、消臭フィルターとして十分な通気性が得られる。
また、表裏地組織12、14を編成する繊維(単繊維)の繊度(単糸繊度)も特に限定されるものでなく、0.38〜9.17dtexであることが好ましい。単糸繊度が0.38dtex以上であることにより、繰り返し洗浄後の保型性が良好であるため、消臭性能の耐久性が向上する。単糸繊度が9.17dtex以下であることにより、消臭フィルターとして十分なごみ捕集性能を有することができる。さらに、十分な表面積が得られることにより、消臭剤を所望の量付与することができる。
【0017】
本発明に用いられるダブルラッセル編地10の表裏地組織12、14の編組織については、特に限定されるものでなく、鎖編組織、コード編組織、デンビ編組織、アトラス編組織、挿入組織などの従来公知の編組織を1種または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも通気性の観点から、表裏地組織12、14は開口部13、15を有する組織(網目状組織)であることが肝要である。
【0018】
表裏地組織12、14の開口部13、15の形状は、菱形、丸形、楕円形、四角形など特に限定されず、その大きさも、ゲージや使用する糸の繊度、求められる性能などに応じて適宜設定することができる。また、開口部13、15は、全てが同じ形状、開口面積を有していることには限定されず、異なる形状、開口面積が混在していてもよい。
【0019】
表裏地組織12、14の1つの開口部13、15の面積は、6〜350mm
2であることが好ましく、より好ましくは6〜180mm
2である。1つの開口部13、15の面積が6mm
2以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。1つの開口部13、15の面積が350mm
2以下であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。また、繰り返し洗浄後の保型性が良好であるため、消臭性能の耐久性が向上する。
【0020】
また、表地組織12における1つの開口部13の面積は、裏地組織14における1つの開口部15の面積の0.7〜5倍であることが好ましく、より好ましくは0.8〜3倍であり、におい成分と消臭剤との接触効率の観点から、さらに好ましくは1〜3倍である。表地組織12における1つの開口部13の面積が裏地組織14における1つの開口部15の面積の0.7倍以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。表地組織12における1つの開口部13の面積が裏地組織14における1つの開口部15の面積の5倍以下であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。なお、本発明において各地組織12、14における1つの開口部13、15の面積とは、柄1リピートあたりの開口部13、15の面積の平均値とする。
【0021】
表裏地組織12、14の各々における開口部13、15の個数は、12〜60個/25.4mm四方であることが好ましく、より好ましくは16〜40個/25.4mm四方である。開口部13、15の個数が12個/25.4mm四方以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。開口部13、15の個数が60個/25.4mm四方以下であることにより、開口部13、15の大きさが小さすぎず、風速の減少率を消臭フィルターに適したものとすることができ、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。
【0022】
また、表地組織12における開口部13の個数は、裏地組織14における開口部15の個数の1〜4倍であることが好ましく、より好ましくは1〜2倍である。表地組織12における開口部13の個数が裏地組織14における開口部15の個数の1倍以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。表地組織12における開口部13の個数が裏地組織14における開口部15の個数の4倍以下であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。
【0023】
表裏地組織12、14の各々における開口率は、30〜70%であることが好ましく、より好ましくは40〜60%である。開口率が30%以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。開口率が70%以下であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。また、繰り返し洗浄後の保型性が良好であるため、消臭性能の耐久性が向上する。
【0024】
また、表地組織12における開口率は、裏地組織14における開口率の1〜4倍であることが好ましく、より好ましくは1〜2倍である。表地組織12における開口率が裏地組織14における開口率の1倍以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。表地組織12における開口率が裏地組織14における開口率の4倍以下であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。なお、本発明において各地組織12、14における開口率とは、柄1リピートあたりの開口率であり、下記式から算出することができる。
地組織における開口率(%)
=柄1リピートあたりの開口の面積÷柄1リピートあたりの総面積×100
【0025】
表裏地組織12、14の各々における開口部13、15の最長の対角線または長径(以下、まとめて単に直径と称す)は、2〜20mmであることが好ましく、より好ましくは3〜15mmである。直径が2mm以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。直径が20mm以下であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。また、繰り返し洗浄後の保型性が良好であるため、消臭性能の耐久性が向上する。
【0026】
また、開口部13、15がいずれも円形である場合、表地組織12の開口部13の直径は、裏地組織14の開口部15の直径の0.5〜2倍であることが好ましく、より好ましくは0.7〜1.5倍であり、におい成分と消臭剤との接触効率の観点から、さらに好ましくは1〜1.5倍である。表地組織12の開口部13の直径が裏地組織14の開口部15の直径の0.5倍以上であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。表地組織12の開口部13の直径が裏地組織14の開口部15の直径の2倍以下であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。なお、本発明において各地組織12、14における1つの開口部13、15の直径とは、柄1リピートあたりの開口部13、15の直径の平均値とする。
【0027】
図3及び
図4に示すように、開口部13、15には連結糸16が露出している。言い換えれば、ダブルラッセル編地10の開口部13、15をダブルラッセル編地10に垂直な方向から見た場合に、開口部13、15から連結糸16が見える。表裏地組織12、14の開口部13、15における連結糸16の占有率(開口部13又は15の開口面積を100としたときに、その開口部13又は15に露出している連結糸16の面積の割合)は、15〜70%であることが好ましく、より好ましくは20〜65%である。表裏地組織12、14の開口部13、15における連結糸16の占有率が15%以上であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。表裏地組織12、14の開口部13、15における連結糸16の占有率が70%以下であることにより、消臭フィルターとしての通気性が良好なものとなる。ここで、表裏地組織12、14の開口部13、15における連結糸16の占有率は、マイクロスコープVHX−5000(株式会社キーエンス製)を用い、倍率50倍にて、開口部13、15の面積と開口部13、15に露出している連結糸16の面積とを測定し、占有率を算出した。
【0028】
連結糸16に用いられる糸条の繊維素材は特に限定されるものでなく、表裏地組織12、14と同様に従来公知の繊維を挙げることができる。なかでも、物性、例えば耐熱性や耐湿熱性に優れるという理由により合成繊維が好ましく、特にはポリエステルが好ましい。また、連結糸16として融着糸を20〜50%含んでいることが好ましい。融着糸をこの割合で含んでいることにより、融着糸を熱により溶融し硬化させたとき、ダブルラッセル編地10の経緯方向のずれを防いで連結糸16の厚みと連結糸16の角度を一定にすることができる。これにより、繰り返し洗浄後の保型性を向上させることができるため、消臭性能の耐久性が向上する。
【0029】
連結糸16に用いられる糸条の形態も特に限定されるものでなく、紡績糸(単繊維糸)、マルチフィラメント糸、モノフィラメント糸(以上、長繊維糸)等、従来公知の形態の糸条を挙げることができる。なかでも、連結糸16の表面積を大きくし、消臭性能を向上させるという理由から、少なくとも一部にマルチフィラメント糸を用いることが肝要である。特には捲縮性が付与されたマルチフィラメント糸を用いることが好ましい。また、繰り返し洗浄後の保型性の観点から、モノフィラメント糸を併用することが好ましい。連結糸16に占めるモノフィラメント糸の占有率は、繰り返し洗浄後の保型性の観点から、20〜90%であることが好ましく、より好ましくは30〜80%である。
連結糸16に占めるマルチフィラメント糸の占有率は、10〜80%であることが好ましく、より好ましくは30〜70%である。マルチフィラメント糸の占有率が10%以上であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。マルチフィラメント糸の占有率が80%以下であることにより、繰り返し洗浄後の保型性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。
同様の理由により、ダブルラッセル編地10に占めるマルチフィラメント糸の占有率は、30〜95%であることが好ましく、より好ましくは40〜95%である。
また、連結糸16の断面形状も特に限定されるものではなく、通常の丸型であっても、異型であってもよい。なかでも、表面積が大きく、消臭性能を向上させるという理由から、異型、特には星型や十字型の断面形状であることが好ましい。
連結糸16に断面形状が異型の糸を用いる場合は、ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合(質量比)が25%以上であることが好ましく、より好ましくは33%以上である。ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合(質量比)が25%以上であることにより、糸の表面積が大きくなり、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。なお、ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合とは、前述した表裏地組織12、14の地糸と連結糸16とに用いられる異型断面糸の質量の合計がダブルラッセル編地全体の質量に占める割合のことである。ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合は下記式から算出することができる。
ダブルラッセル編地全体に占める異型断面糸の割合(%)
={(表裏地組織の地糸に用いられる異型断面糸の質量+連結糸に用いられる異型断面糸の質量)/ダブルラッセル編地全体の質量}×100
【0030】
連結糸16に用いられる糸条の繊度(総繊度)は特に限定されるものでなく、33〜550dtexであることが好ましく、より好ましくは56〜440dtexである。総繊度が33dtex以上であることにより、繰り返し洗浄後の保型性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。総繊度が550dtex以下であることにより、消臭フィルターとして十分な通気性が得られる。
また、連結糸16がマルチフィラメント糸である場合は、その単繊維の繊度(単糸繊度)は、0.38〜9.17dtexであることが好ましい。単糸繊度が0.38dtex以上であることにより、繰り返し洗浄後の保型性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。単糸繊度が9.17dtex以下であることにより、連結糸16の表面積が大きくなり、消臭性能が向上する。
【0031】
連結糸16のフィラメント数は、2,744〜75,400本/25.4mm四方であることが好ましい。連結糸16のフィラメント数が2,744本/25.4mm四方以上であることにより、連結糸16の表面積が大きくなり、消臭性能が向上する。連結糸16のフィラメント数が75,400本/25.4mm四方以下であることにより、消臭フィルターとして十分な通気性が得られる。
【0032】
図5に示すように、連結糸16の少なくとも一部に用いられるマルチフィラメント糸は、表裏地組織12、14に対してθ=30〜80度の角度で傾斜して配置されていることが肝要である。30度以上の角度であることにより、繰り返し洗浄後の保型性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。80度以下の角度であることにより、連結糸16の表面積が大きくなり、また、表裏地組織12、14の開口部13、15に連結糸16が露出することになり、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。なお、80度より大きな角度で配置されている連結糸16の角度は、最大で90度である。
【0033】
連結糸16の表裏地組織12、14に対する傾斜角度にはばらつきがある。前記表裏地組織12、14に対して30〜80度の角度で傾斜して配置されている連結糸16は、連結糸全体の20〜85%であることが好ましく、より好ましくは30〜85%であり、さらに好ましくは30〜80%である。80度より大きな角度で配置されている連結糸16は、連結糸全体の15〜80%であることが好ましい。30〜80度の角度で傾斜して配置されている連結糸16が20%以上であることにより、連結糸16の表面積が大きくなり、また、表裏地組織12、14の開口部13、15に連結糸16が露出することになり、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。また、編地自体の厚みを厚くすることができるため、厚みを保持することにより変形を抑制することができる。85%以下であることにより、繰り返し洗浄後の保型性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。また、30〜80度の角度で傾斜して配置されている連結糸16が85%を超えると、
図6に示すように連結糸16が同じように湾曲し接触面が大きくなってしまうが、これが85%以下であることにより、連結糸16が同じように湾曲し接触面が大きくなることを防ぐことができるため保型性に優れる。
【0034】
前記連結糸16は、相対する編針の1〜7針間にアンダーラップして表裏地組織12、14を交互に連結していることが好ましく、より好ましくは1〜6針間であり、さらに好ましくは2〜4針間である。ここで、1針間にアンダーラップして連結するとは、連結糸16が相対する編針に編成されることであり、2針間にアンダーラップするとは、相対する編針の隣の編針に編成されることである。つまり、1針間にアンダーラップすると、連結糸16は表裏地組織12、14に対してほぼ90度で連結することになる。7針を超えてアンダーラップすると、編地に対して30度より小さい角度で連結することがあり、上述の理由により好ましくない。
【0035】
連結糸16が表裏地組織12、14を交互に連結している様子を
図5に示す。
図5の(A)〜(D)は連結糸16が1枚の筬で導糸されて編成された場合の図で、(A)は連結糸16が1針アンダーラップした場合、(B)は連結糸16が2針アンダーラップした場合、(C)は連結糸16が3針アンダーラップした場合、(D)は連結糸16が4針アンダーラップした場合の様子を表している。また、
図5の(E)〜(F)は連結糸16が2枚の筬で導糸されて編成された場合の図で、(E)は連結糸16が2針アンダーラップした場合、(F)は連結糸16が3針アンダーラップした場合の様子を表している。ここで、
図5の(B)〜(F)に描かれているように、連結糸16が2針間以上でアンダーラップすると、表裏地組織12、14の開口部13、15に連結糸16が露出することになる。なお、
図5において、表地組織12及び裏地組織14内に描かれている円は、表裏地組織12、14におけるニードルループを表している。また、
図5の(E)〜(F)において、実線で描かれている連結糸16aはある1枚の筬から導糸された連結糸であり、破線で描かれている連結糸16bは別の1枚の筬から導糸された連結糸である。
【0036】
前記連結糸16の少なくとも一部に用いられるマルチフィラメント糸は、相対する編針の2〜7針間にアンダーラップして表裏地組織12、14を交互に連結している。より好ましくは2〜4針間である。2針間以上でアンダーラップすることで、マルチフィラメント糸が表裏地組織12、14に対して傾斜して配置されることで、マルチフィラメント糸はダブルラッセル編地10の厚みよりも長くなり、表面積が大きくなるため、消臭剤の付着量を十分なものとすることができる。また、表裏地組織12、14の開口部13、15にマルチフィラメント糸が露出することになる。これらにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。7針間以下でアンダーラップすることにより、繰り返し洗浄後の保型性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。
【0037】
また、前記連結糸16にモノフィラメント糸を用いる場合は、ダブルラッセル編地10の保型性の観点から、モノフィラメント糸は、相対する編針の1〜7針間にアンダーラップして連結されることが好ましく、さらには1〜5針間にアンダーラップして連結されることが好ましい。7針間以下でアンダーラップして連結することにより、編地の柔軟性を保ち、かつ消臭フィルターとして十分な通気性が得られる。
【0038】
また、連結糸16にモノフィラメント糸を用いる場合は、モノフィラメント糸のアンダーラップ数:マルチフィラメント糸のアンダーラップ数は、1:1〜1:7であることが好ましく、より好ましくは1:1〜1:5であり、さらに好ましくは1:1〜1:4である。上記範囲を満たすことにより、モノフィラメント糸によりダブルラッセル編地10の厚みが保持されるため、マルチフィラメント糸に付着した消臭剤とにおい成分との接触効率が上がり消臭性能が向上する。
【0039】
開口部13、15に露出している連結糸16のフィラメント数は、24〜69,120本であることが好ましく、より好ましくは192〜17,280本である。開口部13、15に露出している連結糸16のフィラメント数が24本以上であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。開口部13、15に露出している連結糸16のフィラメント数が69,120本以下であることにより、消臭フィルターとしての通気性を良好なものとすることができる。ここで、開口部13、15に露出している連結糸16のフィラメント数は、下記式から各筬毎に算出し、これらの和によって算出することができる。なお、表裏地組織12、14で開口部13、15の大きさが異なる場合は、上流側の開口部13に露出している連結糸16のフィラメント数を採用することとする。
各筬の開口に露出している連結糸のフィラメント数(本)
= (連結糸のアンダーラップ数−1)×連結糸のフィラメント数
×開口のコース数×2
【0040】
ダブルラッセル編地10の厚みは、2.0〜20.0mmであることが肝要である。厚みが2.0mm以上であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。厚みが20.0mm以下であることにより、消臭フィルターとして良好な通気性を得ることができる。なお、ダブルラッセル編地10の厚みは、より好ましくは3.0〜15.0mmであり、さらに好ましくは4.0〜15.0mmである。
【0041】
このような立体経編地は、例えば、
図7に示すような6枚筬L1〜L6を有するダブルラッセル編機を用いて編成することができる。
図7において、N1、N2はそれぞれ編機幅方向に並列する前後2列のニードル、T1、T2は前後の針釜(トリックプレート)を示し、Y1〜Y6は各筬L1〜L6のガイド部G1〜G6に通糸される編糸を示している。B1〜B6は各編糸のビームを示す。
【0042】
そして、
図7のダブルラッセル編機による編成において、例えば、2枚の筬L1、L2に導糸される編糸Y1、Y2を地糸としてニードルN1により裏地組織14が編成され、2枚の筬L5、L6に導糸される編糸Y5、Y6を地糸としてニードルN2により表地組織12が編成され、筬L3、L4に導糸される編糸Y3、Y4を連結糸16として前記ニードルN1、N2により前記表裏地組織12、14に交互に編み込まれ、該連結糸16により前記表裏地組織12、14が連結される。
図7の符号10は編成されたダブルラッセル編地を示す。
【0043】
連結部を形成する筬L3、L4に導糸される編糸Y3、Y4の配列は、特に限定されることはないが、モノフィラメント糸とマルチフィラメント糸を別々の筬で配列することが好ましい。このような配列にすることにより、モノフィラメント糸は厚み保持に適したアンダーラップ数で、マルチフィラメント糸は消臭効率に適したアンダーラップ数で、各々編成することができる。
【0044】
本発明の消臭フィルターは、上述のダブルラッセル編地10に消臭剤とバインダーを付与してなるものである。消臭剤とバインダーを水に分散させてなる処理液をダブルラッセル編地10に付与することにより、編糸をコーティングするようにバインダー皮膜が形成され、バインダー皮膜中に消臭剤が分散して存在することができる。バインダー皮膜としてダブルラッセル編地10に付与されているため、繰り返し洗浄によるバインダーの脱落を抑制することができる。これにより、消臭剤の脱落防止性を良好にすることができる。さらに、消臭性能の耐久性を向上させることができる。
【0045】
本発明に用いられる消臭剤としては、特に限定されるものでなく、従来公知の消臭剤を用いることができるが、消臭成分を不活性な無機多孔質体からなる担体に担持させたものを使用することが好ましい。不活性な無機多孔質体からなる担体に担持させることにより、消臭剤成分同士が相互に直接作用することにより消臭性能が阻害されることを防ぐことができる。さらに、悪臭成分が不活性な無機多孔質体に物理吸着されることにより、より高い消臭性能を得ることができる。
【0046】
消臭成分としては、金属化合物、アミン系化合物を用いることが好ましい。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
金属化合物としては、におい成分を分解することができる消臭性の各種金属化合物を用いることができる。前記金属化合物としては、例えば、亜鉛、銅、アルミニウム、チタン、鉛、鉄などの金属の酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、ケイ酸塩などが挙げられ、これらはいずれか1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。これらの金属化合物の消臭メカニズムは、第一段階で化学吸着作用、第二段階で金属化合物の酸化力による分解作用である。
【0048】
好ましい金属化合物の具体例としては、酸化亜鉛、酸化銅、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化鉄、水酸化銅、水酸化鉄、塩化亜鉛、塩化銅、ケイ酸亜鉛などが挙げられる。これらの中でも、金属酸化物が好ましく用いられる。また、ペット臭に含まれる酸性臭気(例えば、酢酸や酪酸、イソ吉草酸など)に対する消臭性能の観点から、亜鉛または銅を含む金属化合物、例えば、亜鉛または銅の酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩が好ましく、特には酸化亜鉛が好ましい。酸化亜鉛を用いることで、アンモニア、トリメチルアミン(以上、生活臭)、酢酸(生活臭、たばこ臭、ペット臭)、硫化水素(生活臭、たばこ臭)、イソ吉草酸(ペット臭)などの悪臭成分に対する消臭性能が発揮される。
【0049】
アミン系化合物としては、ポリヒドラジド化合物を用いることが好ましい。ここで、ポリヒドラジド化合物とは、1分子中に2個以上のヒドラジド基(−NH−NH
2)を有する化合物をいう。ポリヒドラジド化合物を用いることで、ホルムアルデヒド、プロパナール、ブタナール(以上、たばこ臭)、アセトアルデヒド、イソバレルアルデヒド(以上、ペット臭)などの悪臭成分が、ポリヒドラジド化合物との脱水縮合反応により化学吸着され、消臭効果が発揮される。具体的には、ポリヒドラジド化合物のヒドラジド基と、アルデヒド類のアルデヒド基との間で、脱水縮合反応がおこる。前述の通り、酸化亜鉛(金属化合物として用いられる)では、アルデヒド類を悪臭成分とするにおいに対する消臭効果が期待できないが、ポリヒドラジド化合物を併用することにより、前記弱点を補い、生活臭、たばこ臭、ペット臭などの様々な悪臭成分に対して、広く効果を発揮することができる。
【0050】
ポリヒドラジド化合物として具体的には、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イミノジ酢酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド、ドデカンジヒドラジド、ヘキサデカンジヒドラジド、ナフトエジヒドラジド、ベンゼンジヒドラジド、ピリジンジヒドラジド、シクロヘキサンジヒドラジド、ピロメリット酸ジヒドラジド(以上、1分子中に2個のヒドラジド基を有するジヒドラジド化合物)、クエン酸トリヒドラジド、トリニトロ酢酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド、ナフトエ酸テトラヒドラジド、ポリアクリル酸ヒドラジド(以上、1分子中に3個以上のヒドラジド基を有するポリヒドラジド化合物)などを挙げることができる。これらは1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
前記ポリヒドラジド化合物のなかでも、単位質量あたりの反応するヒドラジド基の量が多く、高い消臭性能が得られるという観点から、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、クエン酸トリヒドラジド、トリニトロ酢酸トリヒドラジド、およびナフトエ酸テトラヒドラジドからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0052】
ポリヒドラジド化合物は、金属と配位結合して錯体を形成していてもよい。金属錯体とすることにより、広範囲の悪臭成分に対し消臭性能を発揮させることができる。金属錯体を形成する金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属などを挙げることができ、目的とする悪臭成分に応じて適宜選択すればよい。なかでも、消臭性能の観点から、銀、銅、亜鉛、鉛、鉄、アルミニウム、インジウム、スズ、チタン、マンガン、ニッケル、コバルト、白金、およびパラジウムからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0053】
ポリヒドラジド化合物の金属錯体は、公知の方法、例えば、溶液法などにより製造することができる。具体的には、例えば所望の金属の塩化物などとポリヒドラジド化合物とを溶媒に溶解、撹拌することにより、所望の金属とポリヒドラジド化合物との錯体を得ることができる。
【0054】
上記の消臭成分の担体である不活性な無機多孔質体としては、例えば、シリカゲル、エアロゾル、コロイダルシリカ等のシリカ系無機多孔質体;活性アルミナ等のアルミナ系無機多孔質体;アルミノシリケートゼオライト、メタロシリケートゼオライト、アルミノリン酸塩ゼオライト等のゼオライト系無機多孔質体;カオリナイト、モンモリロナイト、雲母等のケイ酸塩化合物系無機多孔質体;メソポーラスシリカ等のメソポーラス系無機多孔質体;ヒドロキシアパタイト、層状リン酸ジルコニウム、ヘテロポリ酸塩、多孔性酸化マンガンをはじめとする金属酸化物や水酸化物等の無機多孔質体などを挙げることができる。これらは1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。なかでも、消臭性能、安全性の観点から、シリカ系無機多孔質体、ゼオライト系無機多孔質体が好ましい。
【0055】
本発明における消臭成分を不活性な無機多孔質体に担持させる方法としては、公知の方法、例えば、溶液含浸法などを挙げることができる。
【0056】
本発明において、前記消臭剤成分は、バインダーとともに、ダブルラッセル編地10に付与される。
【0057】
バインダーとしては、特に限定されるものでなく、通常の繊維加工用のバインダー樹脂を用いることができる。具体的には、例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。なかでも、消臭フィルターの保型性および消臭剤の脱落防止性を良好にすることができるという理由により、ポリエステル樹脂およびウレタン樹脂が好ましい。
【0058】
ダブルラッセル編地10に対する消臭剤の付与量(乾燥質量)は、5〜150g/m
2であることが好ましく、5〜120g/m
2であることがより好ましい。付与量が5g/m
2以上であることにより、消臭フィルターとして十分な消臭性能が得られる。付与量が150g/m
2以下であることにより、消臭フィルターの通気性を確保することができる。
【0059】
ダブルラッセル編地10に対するバインダーの付与量(乾燥質量)は、5〜50g/m
2であることが好ましく、より好ましくは5〜30g/m
2である。付与量が5g/m
2以上であることにより、繰り返し洗浄後の保型性および消臭剤の脱落防止性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。付与量が50g/m
2以下であることにより、消臭フィルターの通気性および消臭性能を確保することができる。
【0060】
また、ダブルラッセル編地10に付与される消臭剤に対するバインダーの割合が、5〜50%であることが好ましく、より好ましくは10〜20%である。バインダーの割合が5%以上であることにより、消臭剤の脱落防止性が良好で、消臭性能の耐久性が向上する。50%以下であることにより、消臭剤の消臭性能を十分に発揮することができる。
【0061】
本発明の消臭フィルターは、以上に説明した消臭剤とバインダーを水に分散させてなる処理液を、ダブルラッセル編地10に付与し、次いで、乾燥およびキュアすることにより製造することができる。
【0062】
処理液をダブルラッセル編地10に付与する方法としては、特に限定されるものでなく、浸漬法、マングルパッド法、スプレー法、グラビア法、コーティング法などを挙げることができる。なかでも、ダブルラッセル編地10全体に均等に処理液が付与できるという観点から、マングルパッド法が好ましい。なお、処理液には、本発明の効果を損なわない範囲内で、難燃剤、柔軟剤など、他の機能性成分を添加してもよい。
【0063】
本発明の消臭フィルターを通った後の風速の減少率は、20〜80%であることが好ましく、より好ましくは30〜65%である。20%以上であることにより、におい成分と消臭剤との接触効率が上がり消臭性能が向上する。80%以下であることにより、消臭フィルターとしての通気性が良好なものとなる。
【0064】
本発明の消臭フィルターは、ダブルラッセル編地10をそのままの状態で用いてもよいし、フィルターの表面積、通気抵抗性を向上させることにより消臭性能を高めるためにプリーツ形状に折りたたんだ状態で用いてもよい。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中における各評価は、以下の方法に従った。
【0066】
[消臭性能:初期]
アンモニア(生活臭)、アセトアルデヒド(ペット臭)、酢酸(生活臭、たばこ臭、ペット臭)に対する消臭性を評価した。
【0067】
JEM1467(脱臭性能試験)に準拠して評価した。
なお、測定ボックスとして1m
3(1m×1m×1m)のアクリル樹脂製の密閉容器を用い、空気清浄機としてファン(商品名「SUN Ace」、山洋電機株式会社製)に大きさ120mm×120mmの試験片を取り付けたものを用いた。たばこ吸煙機としてファン(商品名「SUN Ace」、山洋電機株式会社製)に、たばこホルダを取り付け穴、粘着テープによって空気が漏れないように固定した。たばこは、メビウス(登録商標)(10mg)を使用した。撹拌機としてファン(商品名「SUN Ace」、山洋電機株式会社製)を用いた。また、残存ガス濃度測定は、空気清浄機の運転開始30分後に運転を中止して、測定した。
下記式により消臭率を算出した。消臭率50%以上、繰り返し洗浄後の消臭率40%以上で十分な消臭性能を有するといえる。
消臭率(%)=(初期濃度−消臭後の濃度)÷初期濃度×100
【0068】
[消臭性能:繰返し洗浄後]
3L容器に液温25℃の水2Lを入れ、これに標準使用量となる割合で洗濯用合成洗剤(JIS K3371に規定する第1種(弱アルカリ性))を添加して溶解し、洗濯液とした。この洗濯液に、浴比1:300になるように試験片および負荷布を投入した。30分浸漬後、試験片および負荷布を取り出し、流水下で約1分すすいだ後、脱水し、直接日光の影響を受けない状態で平干しした。洗浄を5回実施した後、上述の方法に従い、消臭性能試験を実施した。
【0069】
[風速の減少率]
ファン(商品名「SUN Ace」、山洋電気株式会社製)の上部・中部・下部で風速を測定し、その平均値を初期風速(フィルターなし時の風速)とした。ファン(商品名「SUN Ace」、山洋電機株式会社製)に大きさ120mm×120mmの試験片を取り付けた状態で上部・中部・下部の風速を測定し、その平均値をフィルター取り付け時の風速とした。なお、風速測定は風速測定器(商品名「Air Velocity Meter TM412」、TENMARS社製)を用いた。
下記式により風速の減少率を算出した。
風速減少率(%)=(初期風速−フィルター取り付け時風速)÷初期風速×100
【0070】
[実施例1]
(A)成分の調製
下記組成の水溶液a〜dを調製した。
(水溶液a)
硫酸亜鉛・7水和物(純度:81質量%)19.8g(0.056mol)を水50mLに溶解させた。
(水溶液b)
ケイ酸ナトリウム(モル比Na
2O/SiO
2=1/3.2、Na
2O含有量:7.0質量%、SiO
2含有量:22質量%)50g(Na
2O:0.056mol、SiO
2:0.18mol)を水170mLに溶解させた。
(水溶液c)
硫酸亜鉛水溶液(0.67mmol/L)1Lを準備した。
(水溶液d)
ケイ酸ナトリウム(モル比Na
2O/SiO
2=1/3.2、Na
2O含有量:7.0質量%、SiO
2含有量:22質量%)0.18g(Na
2O:0.20mmol、SiO
2:0.66mmol)を水に溶解させて全量を1Lとした。
【0071】
水溶液aと水溶液bとを室温で混合し、90分間撹拌して反応させた。反応により得られたゲルのスラリー200mLを3Lの容器に採取し、液温40℃で撹拌しながら、水溶液cおよび水溶液dをそれぞれ5.5mL/分の速さで同時に滴下した後、40℃で60分間撹拌して反応させた。反応により得られたスラリーをフィルターで濾過し、フィルター上の残留物を回収した。回収した残留物を水で洗浄した後、110℃で乾燥させ、さらに粉砕して、(A)成分を得た。
【0072】
(B)成分の調製
平均粒径10μmの酸化ケイ素180質量部と、ポリアミン化合物20質量部と、水200質量部を加え、よく攪拌してから120℃×30分乾燥しポリアミン化合物を坦持した無機ケイ素化合物((B)成分)を得た。
【0073】
処理液の調製
前記で得られた(A)成分および(B)成分とともに、(C)バインダー樹脂としてウレタン樹脂(第一工業製薬株式会社製、スーパーフレックスE2000、固形分:50質量%)、および水を、処方1に示すように以下の組成で混合して、分散液を調製した。
[処方1]
(A)成分:A 25質量部
(B)成分:B 4.5質量部
(C)バインダー樹脂 9質量部
水 61.5質量部
【0074】
消臭フィルターの調製
ダブルラッセル編機RD−6DPLM(カールマイヤー製)を使用して、
図8に示すように、筬L−1、筬L−2に導糸した地糸により裏地組織14を編成し、筬L−5、筬L−6に導糸した地糸により表地組織12を編成し、筬L−3、筬L−4に導糸した連結糸16により表裏地組織12、14を連結してダブルラッセル編地10を編成した。得られたダブルラッセル編地10をヒートセッターにて150℃で2分間プレセットして、消臭フィルターの基材であるダブルラッセル編地10を得た。得られたダブルラッセル編地10に、前記で得られた処理液をマングルパッド法にて付与した。次いで、ヒートセッターにて150℃で3分間熱処理することにより乾燥およびキュアして、本発明の消臭フィルターを得た。ダブルラッセル編地10の厚みは5mm、表裏地組織12、14に対するマルチフィラメントの角度は60度であった。このとき、(A)〜(C)成分の付与量(乾燥質量)は、それぞれ、120g/m
2、21.6g/m
2、21.6g/m
2であり、その合計量は163.2g/m
2であった。また、初期の消臭率はアンモニア85%、アセトアルデヒド55%、酢酸100%であり、繰り返し洗浄後の消臭率はアンモニア80%、アセトアルデヒド50%、酢酸90%であり、風速の減少率は58%であった。
【0075】
[実施例2〜
9、参考例1、比較例1〜4]
表1〜4および
図8〜17に従い、実施例1と同様の手順でダブルラッセル編地を得たこと、および表3、4に従い処理液を調製したこと以外は全て実施例1と同様にして、消臭フィルターを得た。
評価結果は表5、6の通りであった。
【0076】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】