特許第6973976号(P6973976)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6973976
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】抗腫瘍水溶液製造装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/24 20060101AFI20211118BHJP
   A61K 41/00 20200101ALI20211118BHJP
   A61K 33/00 20060101ALI20211118BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   H05H1/24
   A61K41/00
   A61K33/00
   A61P35/00
【請求項の数】7
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-533404(P2018-533404)
(86)(22)【出願日】2016年8月12日
(86)【国際出願番号】JP2016073794
(87)【国際公開番号】WO2018029862
(87)【国際公開日】20180215
【審査請求日】2019年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】特許業務法人 共立
(72)【発明者】
【氏名】東田 明洋
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
(72)【発明者】
【氏名】池戸 俊之
【審査官】 今村 明子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/128905(WO,A1)
【文献】 特開2016−003184(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/103695(WO,A1)
【文献】 特開2016−054657(JP,A)
【文献】 特開2012−141807(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/035842(WO,A1)
【文献】 特開2008−187062(JP,A)
【文献】 齋藤孝輔 外10名,"低温大気圧プラズマ技術を用いた癌治療方法の開発",日本大学医学部総合医学研究所紀要,日本,2014年12月,Vol.2,p.9-14,ISSN 2188-2231
【文献】 池田和之,"電子カルテ・オーダリングシステム利用時の注意点",月刊薬事,日本,2012年05月,Vol.54,No.5,p.757-760,ISSN 0016-5980
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 41/00−41/17
A61K 33/00−33/44
H05H 1/00− 1/54
A61P 1/00−43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍作用を有する抗腫瘍水溶液を製造する装置であって、
プラズマ発生空間を区画するハウジングと、
前記抗腫瘍水溶液の原料を溶解した原料溶液を静止状態で前記プラズマ発生空間内に保持する保持部と、
前記保持部に備えられる冷却装置と、
前記プラズマ発生空間内の雰囲気ガスの組成を制御する雰囲気ガス制御装置と、
前記プラズマ発生空間内に所定の組成及び流量に制御した処理ガスを噴出する処理ガス供給装置と、
前記処理ガスに電力を供給して前記保持部内の前記原料溶液の水面上からプラズマを照射するプラズマを前記プラズマ発生空間内に発生するプラズマ発生装置と、
前記保持部と前記冷却装置を昇降させることで前記プラズマ発生装置と前記保持部との間の距離を任意に設定する昇降装置と、
前記雰囲気ガス制御装置、前記処理ガス供給装置、前記プラズマ発生装置及び前記昇降装置を制御する制御装置と、
前記制御装置が有する制御データのうちの少なくとも前記昇降装置の制御データを含む一部を、製造される抗腫瘍水溶液の情報に関連づけられた、特定時の又は経時的な製造データに変換して記憶する記憶装置と、
を有する、抗腫瘍水溶液製造装置。
【請求項2】
前記制御装置は、前記雰囲気ガスの温度・組成、前記処理ガスの流量・組成、前記原料溶液の量・pH・過酸化水素濃度・特定成分濃度・温度、発生した前記プラズマの照射時間・温度・ラジカル濃度・発光強度・電力供給量・プラズマ形状・前記原料溶液の水面との距離、並びに、前記ハウジング及び/又は前記保持部と前記プラズマ発生装置との相対位置のうちの1つ以上の情報を前記制御データとして取得する情報取得装置をもつ、請求項1に記載の抗腫瘍水溶液製造装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記製造される抗腫瘍水溶液の種類に応じて適正な製造条件を記憶する製造条件記憶装置をもち、前記制御データと前記製造条件とを比較して制御を行う装置であり、
前記製造条件は、経時的なデータで有り、
前記制御装置は、前記制御データと経時的に比較した差異が許容範囲から外れたかどうかを経時的に判断する判断装置をもつ、請求項1又は2に記載の抗腫瘍水溶液製造装置。
【請求項4】
前記冷却装置は、前記保持部の前記原料溶液を保持する面方向に沿って、前記保持部の内部を貫通する冷却水路をもつ請求項1〜3の何れか1項に記載の抗腫瘍水溶液製造装置。
【請求項5】
前記冷却水路に冷却水を循環し且つ冷却する循環装置を有する請求項4に記載の抗腫瘍水溶液製造装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の抗腫瘍水溶液製造装置は、
前記ハウジングに前記昇降装置を挿通するための穴が設けられたことを特徴とする抗腫瘍水溶液製造装置。
【請求項7】
請求項6に記載の抗腫瘍水溶液製造装置は、
前記制御装置が、前記ハウジングの内部に前記雰囲気ガス制御装置によってガスを供給した後に、前記ハウジングの内部に向かって前記プラズマ発生装置によってプラズマを噴出させるとともに、プラズマが噴出されている際も、前記ハウジングの内部に前記雰囲気ガス制御装置によってガスを供給するように、前記プラズマ発生装置と前記雰囲気ガス制御装置との作動を制御し、
前記ハウジングが上部カバーと下部カバーとを含んで、
前記下部カバーにはダクト口が形成され、
前記ダクト口の下部カバーの上面側の開口は上部カバーの内壁面に向かって傾斜するテーパ面が形成されたことを特徴とする抗腫瘍水溶液製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腫瘍細胞を死滅させることのできる抗腫瘍水溶液の製造に適した抗腫瘍水溶液製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマは励起された電子の作用により電気、化学、材料、医療の各分野への種々の応用が為されている。プラズマの医療への応用としては、プラズマ照射により製造された水溶液が腫瘍の死滅効果を有するとの技術が報告されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013/128905号
【特許文献2】特開2010−171303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、プラズマ照射により生成できる抗腫瘍性をもつ水溶液(以下「抗腫瘍水溶液」と称する)の効果はプラズマ照射時間などの条件により変化し、腫瘍の種類により適正なプラズマ照射条件が存在することが認められている。
【0005】
従来の抗腫瘍水溶液製造装置ではプラズマ照射条件を制御することはできるものの実際に望んだ適正な条件でプラズマ照射がされたかどうかが判断できる機構をもつものは無かった。ここで抗腫瘍水溶液を医薬品として用いる場合に後に適正な条件でプラズマ照射が為されたかどうかについて保証できる機構をもつことが望まれる。
【0006】
本発明は上記実情に鑑み完成したものであり、適正な抗腫瘍作用を備える抗腫瘍水溶液を製造することを可能とするために実際のプラズマ照射条件を管理可能な抗腫瘍水溶液製造装置を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明の抗腫瘍水溶液製造装置は、抗腫瘍作用を有する抗腫瘍水溶液を製造する装置であって、プラズマ発生空間を区画するハウジングと、前記抗腫瘍水溶液の原料を溶解した原料溶液を前記プラズマ発生空間内に保持する保持部と、前記プラズマ発生空間内の雰囲気ガスの組成を制御する雰囲気ガス制御装置と、前記プラズマ発生空間内に所定の組成及び流量に制御した処理ガスを噴出する処理ガス供給装置と、前記処理ガスに電力を供給して前記保持部内の前記原料溶液に照射するプラズマを前記プラズマ発生空間内に発生するプラズマ発生装置と、前記雰囲気ガス制御装置、前記処理ガス供給装置、及び前記プラズマ発生装置を制御する制御装置と、前記制御装置が有する制御データのうちの少なくとも一部を製造される抗腫瘍水溶液の情報に関連づけられた、特定時の又は経時的な製造データに変換して記憶する記憶装置とを有する。
【0008】
抗腫瘍水溶液が発揮する抗腫瘍作用はプラズマ照射条件により変化する。そのために抗腫瘍水溶液を製造するにあたりプラズマ照射条件を記憶することは重要である。記憶するプラズマ照射条件は本発明の抗腫瘍水溶液製造装置が有する制御装置が利用する制御データから一部乃至全部を選択して変換して作成された製造データを記憶することにより行う。特に製造される抗腫瘍水溶液の作用(効果)との相関性、寄与度が高い制御データを採用して製造データを作成することが望ましい。
【0009】
なお、特許文献2では電子部品の製造にあたってプラズマ照射を採用する装置が開示されている(特許文献2)。特許文献2の装置では電子部品に対してプラズマ照射が適正に適用されたかどうかが判定され記憶されることが開示されているのに対して、本発明の抗腫瘍水溶液製造装置では製造される抗腫瘍水溶液の効果を適正にするためにプラズマ照射条件を記憶する装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラズマ照射条件に関連する製造データを記憶することにより抗腫瘍水溶液が適正に製造されたかどうかを遡って追跡することが可能になる。また、製造された抗腫瘍水溶液の作用効果と、記憶されている製造データと照らし合わせることも可能になって、プラズマ照射条件と抗腫瘍水溶液の効果との新たな知見獲得の実現も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】抗腫瘍水溶液製造装置(大気圧プラズマ照射装置)の斜視図である。
図2】プラズマ発生装置の分解図である。
図3】プラズマ発生装置の分解図である。
図4】プラズマ発生装置の断面図である。
図5】抗腫瘍水溶液製造装置の斜視図である。
図6】抗腫瘍水溶液製造装置の側面図である。
図7】抗腫瘍水溶液製造装置の側面図である。
図8】抗腫瘍水溶液製造装置の斜視図である。
図9】冷却装置の概略図である。
図10】制御装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の抗腫瘍水溶液製造装置について図面を例に挙げて以下詳細に説明を行う。本実施形態の抗腫瘍水溶液製造装置は原料溶液にプラズマ照射を行うことにより原料溶液中に抗腫瘍成分を生成して抗腫瘍水溶液を製造する装置である。本実施形態の抗腫瘍水溶液製造装置は大気圧下でプラズマ照射を行う以下に記載の大気圧プラズマ照射装置10にて実現される。
【0013】
大気圧プラズマ照射装置10は制御装置(図10参照)38により制御されている。制御装置38は情報取得装置(図10参照)176により取得される種々の制御データに基づいて制御を行っており、そこで利用した制御データのうちの全部乃至一部を製造データに変換して記憶装置(図10参照)175に記憶する。制御データとしては抗腫瘍水溶液を製造する際に取得可能なものであれば特に限定しない。例えば原料溶液に関するもの、照射するプラズマに関するものが挙げられる。具体的な例としては、プラズマ照射時における雰囲気ガスの温度・組成、実際にプラズマ化させる処理ガスの流量・組成、原料溶液の量・pH・過酸化水素濃度・特定成分濃度・温度、発生したプラズマの照射時間・温度・ラジカル濃度・発光強度・電力供給量・プラズマ形状・原料溶液の水面との距離、並びに、ハウジングとプラズマ発生装置との相対位置、保持部とプラズマ発生装置との相対位置が挙げられる。
【0014】
原料溶液へのプラズマ照射条件の変動により製造される抗腫瘍水溶液の作用効果も変動する。そのために必要な作用効果が発現できる抗腫瘍水溶液が得られたかどうかを検証するためにはプラズマ照射条件に関する製造データを記憶しておくことが有用である。得られた製造データは製造される抗腫瘍水溶液に関連づけられている。関連づける方法としては特に限定しないが、製造される抗腫瘍水溶液に予め識別符号などを付しておき、その識別符号と共に製造データを記憶しておく方法、抗腫瘍水溶液を製造後に識別符号などをその抗腫瘍水溶液の容器などに印字する方法などが挙げられる。
【0015】
また、抗腫瘍水溶液の製造が進行しているときに、得られる制御データを利用してフィードバック制御を行っても良い。例えば望みの作用効果をもつ抗腫瘍水溶液を製造する際に必要な制御データを経時的な製造条件(ずっと同じ条件であるものも含む)として用意しておいて実際の製造の際に得られる制御データと比較して差異が許容範囲から外れないように制御を行うことが望ましい。そして許容範囲から外れたかどうか判断する判断装置(図10参照)177をもつことができる。判断装置177が許容範囲から外れたと判断した場合には製造された抗腫瘍水溶液は適正なものではないとして使用しないようにすることができる。
【0016】
更に、本実施形態の抗腫瘍水溶液製造装置を病院などで管理するカルテのデータと連携させることも可能である。特にカルテのデータを電子的に管理している電子カルテ装置Aを利用している病院などで製造される抗腫瘍水溶液を利用する場合には通信装置(図10参照)179により電子カルテ装置Aに接続して製造データのやり取りを行うことができる。
【0017】
製造した抗腫瘍水溶液はそのまま生体に投与して生体中に存在する腫瘍に作用させることができる。生体への投与は外科的手法により腫瘍を露出させた状態で接触させる方法が採用できる。例えば外科的に腫瘍を除去した際の洗浄などで接触させることで完全に除去しきれなかった腫瘍を死滅させることができる。
【0018】
原料溶液は抗腫瘍水溶液の原料を溶解させた水溶液である。例えばリン酸水素二ナトリウム(NaHPO)と、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)と、L−グルタミン(L−Glutamine)と、L−ヒスチジン(L−Histidine)と、L−チロシン二ナトリウム(L−Tyrosine・2Na)とのうちの少なくとも1種類を含む溶質を原料として水に添加して溶解させた水溶液であることが好ましい。この水溶液を用いた原料溶液に対してプラズマ照射を行うことで高い効果をもつ抗腫瘍水溶液を得ることができる。そして原料溶液は生体体液又は生体細胞の培養液であることが好ましい。
【0019】
<大気圧プラズマ発生装置の構成>
図1に、本発明の実施例の大気圧プラズマ照射装置10を示す。大気圧プラズマ照射装置10は、大気圧下でプラズマを原料溶液としての培養液に照射するための装置である。培養液はシャーレ110内に静止状態で保持される。
【0020】
大気圧プラズマ照射装置10は、プラズマ発生装置20、カバーハウジング22、開閉機構24、シャーレ110内の原料溶液を保持する保持部としてのステージ26、昇降装置28、冷却装置(図9参照)30、パージガス供給機構(図5参照)32、酸素濃度検出機構34、過酸化水素濃度検出機構(図10参照)35、雰囲気ガスの温度・組成検出機構(図10参照)37、処理ガスの流量・組成検出機構(図10参照)39、原料溶液の量検出機構(図10参照)41、原料溶液のpH・特定成分濃度・温度検出機構(図10参照)42、プラズマの温度検出機構(図10参照)43、プラズマのラジカル濃度検出機構(図10参照)44、発生するプラズマの外観を撮影する撮像装置(図10参照)45、排気機構36、制御装置(図10参照)38を備えている。なお、大気圧プラズマ照射装置10の幅方向をX方向と、大気圧プラズマ照射装置10の奥行方向をY方向と、X方向とY方向とに直行する方向、つまり、上下方向をZ方向とする。
【0021】
プラズマ発生装置20は、図2乃至図4に示すように、カバー50と、上部ブロック52と、下部ブロック54と、1対の電極56と、ノズルブロック58とを含む。カバー50は、概して、有蓋四角筒形状をなし、カバー50の内部に、上部ブロック52が配設されている。上部ブロック52は、概して直方体形状をなし、セラミックにより成形されている。上部ブロック52の下面には、1対の円柱状の円柱凹部60が形成されている。
【0022】
また、下部ブロック54も、概して直方体形状をなし、セラミックにより成形されている。下部ブロック54の上面には、凹部62が形成されており、凹部62は、1対の円柱状の円柱凹部66と、それら1対の円柱凹部66を連結する連結凹部68とによって構成されている。そして、下部ブロック54が、カバー50の下端から突出した状態で、上部ブロック52の下面に固定されており、上部ブロック52の円柱凹部60と、下部ブロック54の円柱凹部66とが連通している。なお、円柱凹部60と円柱凹部66とは、略同径とされている。また、凹部62の底面には、下部ブロック54の下面に貫通するスリット70が形成されている。
【0023】
1対の電極56の各々は、上部ブロック52の円柱凹部60と、下部ブロック54の円柱凹部66とによって区画される円柱状の空間に配設されている。なお、電極56の外径は、円柱凹部60,66の内径より小さい。また、ノズルブロック58は、概して平板状をなし、下部ブロック54の下面に固定されている。ノズルブロック58には、下部ブロック54のスリット70と連通する噴出口72が形成されており、その噴出口72は、ノズルブロック58を上下方向に貫通している。
【0024】
プラズマ発生装置20は、さらに、処理ガス供給装置(図10参照)74を有している。処理ガス供給装置74は、酸素・水素等の活性ガスとアルゴン・窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合させた所定の組成をもつ処理ガスを任意の流量である所定の流量で供給する装置であり、円柱凹部60,66によって区画される円柱状の空間および、連結凹部68の上部に、配管(図示省略)を介して、連結されている。これにより、電極56と円柱凹部66との隙間、および、連結凹部68の上部から、処理ガスが、凹部62の内部に供給される。
【0025】
このような構造により、プラズマ発生装置20は、ノズルブロック58の噴出口72からプラズマを噴出する。詳しくは、凹部62の内部に、処理ガス供給装置74によって処理ガスが供給される。この際、凹部62では、1対の電極56に電圧が印加されており、1対の電極56間に電流が流れる。これにより、1対の電極56間に放電が生じ、その放電により、処理ガスがプラズマ化される。そして、プラズマが、スリット70を介して、噴出口72から噴出される。
【0026】
また、カバーハウジング22は、図5に示すように、上部カバー76と、下部カバー78とを含み、プラズマ発生空間を内部に区画する。上部カバー76は、概して有蓋円筒状をなし、上部カバー76の蓋部には、プラズマ発生装置20の下部ブロック54に応じた形状の貫通穴(図示省略)が形成されている。そして、その貫通穴を覆うように、プラズマ発生装置20のカバー50が、上部カバー76の蓋部に立設された状態で固定されている。このため、プラズマ発生装置20の下部ブロック54および、ノズルブロック58が、上部カバー76の内部に向かって、Z方向に延びるように、突出している。これにより、プラズマ発生装置20によって発生されたプラズマが、ノズルブロック58の噴出口72から、上部カバー76の内部に向かって、Z方向に噴出される。
【0027】
また、上部カバー76の側面には、3等配の位置に、概して矩形の貫通穴(図示省略)が形成されており、その貫通穴を塞ぐように、透明なガラス板80が配設されている。これにより、ガラス板80を介して、上部カバー76の内部を視認することが可能とされている。
【0028】
カバーハウジング22の下部カバー78は、概して、円板形状とされており、大気圧プラズマ照射装置10が載置される載置部の筐体(図示省略)に固定されている。下部カバー78の外径は、上部カバー76の外径より大きくされており、下部カバー78の上面には、上部カバー76と同径の円環状のパッキン82が配設されている。そして、上部カバー76が、開閉機構24によって下方にスライドされることで、上部カバー76がパッキン82に密着し、カバーハウジング22の内部が密閉された状態となる。
【0029】
詳しくは、開閉機構24は、図6および図7に示すように、1対のスライド機構86とエアシリンダ88とを含む。各スライド機構86は、支持軸90とスライダ92とを含む。支持軸90は、上記載置部の筐体に、Z方向に延びるように立設されている。また、スライダ92は、概して円筒形状をなし、支持軸90の軸方向にスライド可能に、支持軸90に外嵌されている。
【0030】
そして、上部カバー76が、上部ブラケット96と下部ブラケット98とによって、スライダ92に保持されている。これにより、上部カバー76は、Z方向、つまり、上下方向にスライド可能とされている。
【0031】
エアシリンダ88は、ロッド100とピストン(図示省略)とシリンダ102とを含む。ロッド100は、Z方向に延びるように配設され、上端部において上部カバー76に固定されている。また、ロッド100の下端部に、ピストンが固定されている。ピストンは、シリンダ102の上端から内部に嵌合されており、シリンダ102の内部において摺動可能に移動する。また、シリンダ102は、下端部において、上記載置部の筐体に固定されており、シリンダ102内部には、所定量のエアが封入されている。
【0032】
これにより、エアシリンダ88は、ダンパとして機能し、上部カバー76の急激な下降が防止される。なお、シリンダ102内部のエア圧は、上部カバー76と共にスライドする一体物、つまり、上部カバー76,プラズマ発生装置20,スライダ92等の重量により圧縮可能な圧力とされている。つまり、作業者が、上部カバー76を上昇させた状態で、上部カバー76を離すと、上部カバー76等の自重によって上部カバー76が下降する。そして、上部カバー76が、下部カバー78のパッキン82に密着し、図8に示すように、上部カバー76と下部カバー78とによって、カバーハウジング22の内部が密閉された状態となる。
【0033】
また、作業者が、上部カバー76を上昇させることで、カバーハウジング22の内部が開放される。なお、上部カバー76の上面には、磁石(図1参照)106が固定されており、上部カバー76が上昇されることで、磁石106が、上記載置部の筐体に引っ付く。このように、磁石106を上記載置部の筐体に引っ付けることで、上部カバー76を上昇させた状態、つまり、カバーハウジング22が開放された状態が維持される。
【0034】
ステージ26は、概して、円板形状とされており、ステージ26の上面に、シャーレ110が載置される。そして、過酸化水素濃度検出機構35に接続された1又は2の過酸化水素検出センサ(図10参照:その他の図面では記載を省略)147がシャーレ110内に挿入できるように配設されている。また、ステージ26の外径は、下部カバー78の外径より小さくされている。そして、ステージ26は、下部カバー78の上面に配設されている。
【0035】
昇降装置28は、図7に示すように、支持ロッド112と、ラック114と、ピニオン116と、電磁モータ(図10参照)117とを含む。下部カバー78には、上下方向に貫通する貫通穴(図示省略)が形成されており、その貫通穴に、支持ロッド112が挿通されている。支持ロッド112の外径は、貫通穴の内径より小さくされており、支持ロッド112は、上下方向、つまり、Z方向に移動可能とされている。その支持ロッド112の上端に、ステージ26の下面が固定されている。
【0036】
また、ラック114は、支持ロッド112の軸方向に延びるように、支持ロッド112の下部カバー78から下方に延び出す部分の外周面に固定されている。ピニオン116は、ラック114に噛合されており、電磁モータ117の駆動により回転する。なお、ピニオン116は、上記載置部の筐体により回転可能に保持されている。このような構造によって、電磁モータ117の駆動によりピニオン116が回転することで、支持ロッド112がZ方向に移動し、ステージ26が昇降する。なお、下部カバー78の上面には、ステージ26の隣に、計測ロッド118が立設されている。計測ロッド118の外周面には、目盛りが記されており、その目盛りによって、ステージ26のZ方向の高さ、つまり、ステージ26の昇降量を目視によって確認することが可能となっている。
【0037】
冷却装置30は、図9に示すように、冷却水路120と、循環装置122と、配管124とを含む。冷却水路120は、ステージ26の面方向に沿って、内部を「コ」の字型に貫通しており、ステージ26の外周面の2箇所において開口している。また、循環装置122は、水を冷却するとともに、冷却した水を循環させる装置である。そして、循環装置122が、配管124を介して、冷却水路120に接続されている。これにより、ステージ26の内部を冷却水が流れることで、ステージ26が冷却される。
【0038】
パージガス供給機構(雰囲気ガス制御装置)32は、図5に示すように、4個のエアジョイント(図では、3個図示されている)130と、パージガス供給装置(図10参照)132とを含む。4個のエアジョイント130は、上部カバー76の側面の上端部において、4等配の位置に設けられており、各エアジョイント130は、上部カバー76の内部に開口している。パージガス供給装置132は、窒素等の不活性ガスを供給する装置であり、配管(図示省略)を介して、各エアジョイント130に接続されている。このような構造により、パージガス供給機構32は、上部カバー76の内部に、アルゴンなどの不活性ガスを供給することによりプラズマ発生空間内の雰囲気ガスの組成を制御する。
【0039】
酸素濃度検出機構34は、エアジョイント140と、配管142と、酸素検出センサ(図10参照)144とを含む。下部カバー78には、下部カバー78の上面と側面とを連通する貫通穴(図示省略)が形成されている。その貫通穴の下部カバー78の上面側の開口146は、パッキン82の内側に位置している。一方、貫通穴の下部カバー78の側面側の開口に、エアジョイント140が接続されている。また、酸素検出センサ144は、酸素濃度を検出するセンサであり、配管142を介して、エアジョイント140に接続されている。このような構造により、酸素濃度検出機構34は、カバーハウジング22が密閉された際に、カバーハウジング22の内部の酸素濃度を検出する。
【0040】
排気機構36は、図1に示すように、L型配管150と、連結配管152と、メイン配管154とを含む。下部カバー78には、図7に示すように、上面と下面とに開口するダクト口160が形成されている。ダクト口160の下部カバー78の上面側の開口は、上方に向かうほど内径が大きくなるテーパ面162とされている。つまり、カバーハウジング22が密閉された際に、テーパ面162は、上部カバー76の内壁面に向かって傾斜した状態となる。一方、ダクト口160の下部カバー78の下面側の開口に、L型配管150が接続されている。そして、そのL型配管150に、連結配管152を介して、メイン配管154が接続されている。なお、連結配管152のL型配管150側の部分の図示は、省略されている。また、メイン配管154の内部には、オゾンフィルタ166が配設されている。オゾンフィルタ166は、活性炭により形成されており、オゾンを吸着する。
【0041】
雰囲気ガスの温度・組成検出機構37は温度センサと雰囲気ガスに含まれるガスの種類に応じて採用される雰囲気ガスセンサとから構成される。雰囲気ガスとしてアルゴンなどの不活性ガスを採用する場合には使用するアルゴンガスの純度が充分に高ければ不純物として混入するガスは空気である。そのため空気中に含まれるガスのうちで検出が容易な酸素の濃度を測定する酸素検出センサを採用して酸素濃度を測定し得られた酸素濃度に応じた空気が混入しているものとして雰囲気ガスの組成を算出する。本実施形態では雰囲気ガスの組成する具体的な検出機構としては前述した酸素濃度検出機構34にて検出することで代用できる。
【0042】
処理ガスの流量・組成検出機構39は処理ガス供給装置74から供給される処理ガスの流量や組成を例えばプラズマ発生装置20に至るまでの間で検出する機構である。例えば流量は流量計、処理ガスの組成は処理ガス中に含まれるガスを検出できるセンサ(例えば酸素検出センサ)を用いて検出する。
【0043】
原料溶液の量検出機構41は、原料溶液の量を検出する機構であり、質量を測定することで量を検出したり、原料溶液の液面を検出することで検出したりできる。
【0044】
原料溶液のpH・特定成分濃度・温度検出機構42は、原料溶液のpH、特定成分濃度、温度を検出する機構である。特定成分としては特に限定しないが、抗腫瘍水溶液の作用効果に関連する成分(抗腫瘍水溶液の種類によって種々の化合物が該当するものと推測できる)が例示できる。特定成分としては過酸化水素が例示できる。
【0045】
プラズマの温度検出機構43は、発生したプラズマの温度を検出する機構である。プラズマのラジカル濃度検出機構44は、発生したプラズマ中のラジカル濃度を検出する機構である。プラズマの温度・ラジカル濃度は場所によって変化するので特定の場所を設定して検出する。
【0046】
発生するプラズマの外観を撮影する撮像装置45は、発生しているプラズマの外観を撮像する。少なくともプラズマ照射が開始されてから終了するまでの経時的な変化が分かるように複数枚撮像することが好ましい。プラズマの外観と共にプラズマ照射される原料溶液の様子も撮像することが好ましい。
【0047】
制御装置38は、図10に示すように、コントローラ170、複数の駆動回路172、選択装置173、設定装置174、記憶装置175、情報取得装置176、判断装置177、製造条件記憶装置178を備えている。記憶装置175及び製造条件記憶装置178はコントローラ170のRAM・ROMにより実現されている。
【0048】
複数の駆動回路172は、電極56、処理ガス供給装置74、電磁モータ117、循環装置122、パージガス供給装置132に接続されている。コントローラ170は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路172に接続されている。これにより、プラズマ発生装置20、昇降装置28、冷却装置30、パージガス供給機構32の作動が、コントローラ170によって制御される。コントローラ170は、電子カルテ装置Aに接続されて情報のやり取りを行う通信装置179をもつ。
【0049】
コントローラ170には、酸素検出センサ144、過酸化水素検出センサ147、雰囲気ガスの温度・組成検出機構37、処理ガスの流量・組成検出機構39、原料溶液の量検出機構41、原料溶液のpH・特定成分濃度・温度検出機構42、プラズマの温度検出機構43、プラズマのラジカル濃度検出機構44、撮像装置45が接続されており、コントローラ170がもつ情報取得装置176がそれぞれから出力される信号、撮像データなどの制御データを取得する。なお、撮像データはそのまま取得しても良いし、撮像データから、プラズマの発光強度、プラズマ形状、原料溶液の水面との距離、ハウジング又は保持部とプラズマ発生装置との相対位置を算出した後に取得することもできる。
【0050】
更にプラズマ発生装置20の電極56への電力供給量、電力供給時間に基づいて、電力供給量及びプラズマ照射時間からなる制御データを得ることができ、昇降装置28の制御に用いた制御信号から原料溶液の水面がプラズマ発生装置20からどの程度の距離にあるか、更にはケーシング内での相対位置を制御データの1つとして算出することもできる。
【0051】
取得された制御データから選択された1以上の必要な制御データが製造データに変換されてコントローラ170がもつ記憶装置175に記憶される。「必要な制御データ」かどうかは製造される抗腫瘍水溶液の種類毎に判断される。製造される抗腫瘍水溶液の作用効果に所定以上の影響を与える制御データを製造データとして記憶することが好ましい。制御データを製造データに含めるか否かは、それぞれの制御データについて抗腫瘍水溶液を製造する過程中で製造される抗腫瘍水溶液の作用効果に影響を与えるかどうかで決定する。プラズマ照射を行うある特定時における制御データの値が製造された抗腫瘍水溶液の作用効果に大きな影響を与える場合には、その特定時における制御データをそのまま制御データに採用したり、経時的な変化が作用効果に影響を与える場合にはその経時的な変化も含める目的で経時的な制御データを製造データとして採用したりする。経時的な制御データとしては時間経過と共に変動する制御データの集合である制御データ列を採用したり、所定時間範囲内において制御データの偏差が必要な変動範囲内に収まっていたか否かについてを製造データの値として採用したりできる。
【0052】
記憶装置175に記憶される製造データは製造される抗腫瘍水溶液に関連づけられている。抗腫瘍水溶液の特定は先述した識別符号に基づき行われる。この識別符号は通信装置179を介して接続されている電子カルテ装置Aに保存されている抗腫瘍水溶液を適用する患者と関連づけられることで患者の情報と製造される抗腫瘍水溶液の情報とが関連づけられることになる。
【0053】
記憶装置175は、判断装置177が判断を行う際に用いる比較用のデータが格納してある。比較用のデータは実験などにより予め設定することができる。製造条件は製造する抗腫瘍水溶液の種類毎に適正なものが存在する。比較用のデータとしては情報取得装置により取得される種々の制御データのうち所定の範囲を外れると製造された抗腫瘍水溶液の作用効果について保証できなくなる制御データについて特定時における値、又は、必要な制御データの経時変化の変動の許容範囲(所定範囲)を示すデータが例示できる。
【0054】
設定装置174はコントローラ170のロジックとして実現されており、製造条件記憶装置178に記憶された製造条件に従って大気圧プラズマ照射装置10などを制御する。例えば製造される抗腫瘍水溶液に応じて選択される製造条件に規定された目標制御データ(又は目標制御データ列)に対応する制御データが近づくようにプラズマ発生装置20などを制御する。製造条件としては制御データのうちその値が変動すると製造する抗腫瘍水溶液の作用効果に大きな影響を与える制御データについて適正な範囲を製造条件として採用することができる。制御データの適正な範囲が経時的に変化するときにはその経時的な変化を含めて製造条件とする。
【0055】
製造条件・比較用のデータは、製造すべき抗腫瘍水溶液を選択装置173で選択することで決定できる。選択装置173を用いて製造される抗腫瘍水溶液がどの腫瘍に適用されるかを選択することでその腫瘍に応じて適正なデータ(製造条件、比較用のデータ)が決定される。選択装置173はその他にも製造される抗腫瘍水溶液が適用される生体(患者など)の情報を選択することもできる。患者を選択することにより適正な性状をもつ抗腫瘍水溶液を製造するために利用できる比較用のデータを得ることができる。選択装置173としては特に限定しないがコンピュータに汎用されるキーボード、マウス、タッチパネル、その他何らかのスイッチが例示される。
【0056】
以上のように、使用者は選択装置173により適用対象である腫瘍の種類や患者を選択するだけで適正なプラズマ照射条件を個別に入力・設定しなくても適正な製造条件を設定し、適正な条件によりプラズマ照射されて製造された抗腫瘍水溶液を製造することができる。
【0057】
<大気圧プラズマ照射装置によるプラズマ照射>
原料溶液にプラズマを照射することで、原料溶液が活性化して抗腫瘍水溶液が得られる。プラズマ照射は製造条件記憶装置178に記憶された製造条件に従い制御されることで適正にプラズマ照射が為された抗腫瘍水溶液を製造することができる。また、記憶装置175に記憶された製造データを必要なときに利用することができる。
【0058】
大気圧プラズマ照射装置10では、上述した構成により、培養液が貯留されたシャーレ110をステージ26の上に載置し、カバーハウジング22を密閉することで、所定の条件下で培養液にプラズマを照射することが可能である。以下に、所定の条件下で、培養液にプラズマを照射する手法について、詳しく説明する。
【0059】
具体的には、まず、培養液が貯留されたシャーレ110をステージ26の上に載置する。シャーレ110内には過酸化水素検出センサ147などの原料溶液からの制御データを取得するセンサを挿入する。次に、昇降装置28によってステージ26を任意の高さに昇降させる。これにより、プラズマの噴出口72と、プラズマの被照射体としての培養液との間の距離を任意に設定することが可能となる。なお、ステージ26の昇降高さは、計測ロッド118の目盛りにより確認することが可能である。
【0060】
次に、上部カバー76を下降させ、カバーハウジング22を密閉させる。そして、パージガス供給機構32によって、カバーハウジング22の内部に不活性ガスが供給される。この際、酸素濃度検出機構34によって、カバーハウジング22内の酸素濃度が検出される。そして、検出された酸素濃度が予め設定された閾値以下となった後に、プラズマ発生装置20によってプラズマが、カバーハウジング22の内部に噴出される。
【0061】
プラズマ照射を開始する前に製造する抗腫瘍水溶液を適用する対象、使用条件を選択装置173を操作して選択する。選択された用途に基づいてコントローラ170の設定装置174は、製造条件記憶装置178内の製造条件を参照して、情報取得装置により取得される制御データがその製造条件の範囲内になるようにプラズマ発生装置20などを制御する。
【0062】
なお、プラズマが照射されている際も、カバーハウジング22の内部への不活性ガスの供給は、継続して行われる。このように、カバーハウジング22の内部に不活性ガスが供給されることで、カバーハウジング22内の空気は、カバーハウジング22の外部に排気される。この際、カバーハウジング22内の酸素濃度が調整されることで、プラズマ照射に影響を及ぼす条件が管理される。詳しくは、プラズマは、活性ラジカルを含んでいるため、酸素と反応すると、オゾンとなり、プラズマ照射の効果が低下する。このため、カバーハウジング22内の酸素濃度を調整することで、プラズマ照射された培養液の効果に対する酸素濃度の影響を制御できる。また、同一条件下で培養液にプラズマを照射することが可能となる。これにより、一定の抗腫瘍作用をもつ抗腫瘍水溶液を効率的に製造できる。
【0063】
また、大気圧プラズマ照射装置10では、上述したように、プラズマの噴出口72と培養液との間の距離が必要であれば任意に制御される。これにより、プラズマ照射条件としての照射距離を適正化することが可能となり、一定の抗腫瘍作用をもつ抗腫瘍水溶液を効率的に製造できる。
【0064】
そして、プラズマ発生装置はシャーレ110内の培養液の水面上からプラズマを照射する。そのためにプラズマ照射が広い範囲に行われるため処理速度が向上する。
【0065】
なお、プラズマ照射時において、冷却装置30によりステージ26の内部に冷却水を循環させる。これにより、ステージ26が冷却されることで、プラズマ照射によるシャーレ110内の培養液の温度上昇を抑制し、培養液の蒸発を防止することが可能となる。また、冷却水の温度を管理することで、プラズマ照射時の原料溶液の温度を調整することが可能となる。
【0066】
また、下部カバー78には、ダクト口160が形成されている。このため、カバーハウジング22内への不活性ガスの供給により、カバーハウジング22内が正圧となり、カバーハウジング22内から自然排気される。また、下部カバー78のダクト口160には、下部カバー78の上面に向かうほど内径の大きいテーパ面162が形成されている。これにより、カバーハウジング22の内部からの気体の排気を促進することが可能となる。さらに、排気機構36には、オゾンフィルタ166が設けられている。これにより、プラズマと酸素とが反応し、オゾンが発生した場合であっても、オゾンの外部への排気を防止することが可能となる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、原料溶液を保持するためにシャーレ110を用いたが、それ以外の容器を用いても良い。また、その容器内の原料溶液を何らかの手法により循環させても良い。循環させる場合にはプラズマ照射を行う間、循環を行うことができる。循環を行うことにより培養液へのプラズマ照射を均一に行うことが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の抗腫瘍水溶液製造装置は適用される腫瘍毎に適正な効果を有する抗腫瘍水溶液を製造することができる。
【符号の説明】
【0069】
10:大気圧プラズマ照射装置
20:プラズマ発生装置
22:カバーハウジング(ハウジング)
26:ステージ(保持部)
28:昇降装置
30:冷却装置
32:パージガス供給機構(雰囲気ガス制御装置)
35:過酸化水素濃度検出機構
38:制御装置
72:噴出口
74:処理ガス供給装置
132:パージガス供給装置
144:酸素検出センサ
147:過酸化水素検出センサ
175:記憶装置
176:情報取得装置
177:判断装置
178:製造条件記憶装置
179:通信装置
A:電子カルテ装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10