【実施例】
【0045】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<使用原料>
・単官能性オキセタン化合物
下記式(6)で表される単官能性オキセタン化合物を用いた。
【0046】
【化6】
【0047】
この単官能性オキセタン化合物は、先ず、下記の反応式に従って式(iii)で表される化合物を合成した後、この化合物を原料として用い、式(6)で表される単官能性オキセタン化合物を合成した。
【0048】
【化7】
【0049】
すなわち、式(i)で表される3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン51.8g、パラトルエンスルホニルクロリド(p−TsCl)119.2g、水酸化ナトリウム100g、テトラヒドロフラン(THF)400mL及びイオン交換水400mLを添加して0℃で4時間混合攪拌した後、得られた溶液を飽和食塩水で3回洗浄した。この溶液に1,4−ブタノール120.8g、水酸化カリウム43.8g及びジメチルスルホキシド(DMSO)116mLを添加して30℃で15時間混合攪拌した後、トルエン及び食塩水を加えて洗浄し、式(ii)で表される化合物を得た。このようにして得られた式(ii)で表される化合物(全量)に、メタンスルホニルクロリド(MsCl)65.3g、トルエン65.3g及びトリエチルアミン(TEA)78.0gを添加して0℃で2時間混合攪拌した後、得られた溶液を飽和食塩水で洗浄した。この溶液にパラヒドロキシ安息香酸エチル55.7g、炭酸カリウム60.7g及びN,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)420gを添加して100℃で5時間混合攪拌した後、水で洗浄し、溶媒を減圧除去して116gの固体を得た。この固体に水酸化ナトリウム36g及びイオン交換水324gを加えて100℃で2時間反応させた。得られた溶液を水450mLで希釈した後、塩酸(濃度10質量%)をpH3になるまでゆっくりと添加した。得られたスラリー溶液を0℃で1時間攪拌した後、水で洗浄して式(iii)で表される化合物121gを得た。
【0050】
次に、式(iii)で表される化合物に、メタンスルホニルクロリド(MsCl)47.2g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)52.0g及びトラヒドロフラン(THF)400mlを添加して0℃で1時間混合攪拌した後、BOC Sciences社製4−(トランス−4−ノルマルプロピルシクロヘキシル)フェノール270g、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)11.2g及びトリエチルアミン(TEA)53.2gをさらに添加して0℃で1時間混合攪拌した。その後、混合物をさらに3時間還流攪拌して式(6)で表される単官能性オキセタン化合物を得た。
【0051】
・2官能性オキセタン化合物
下記式(7)で表される2官能性オキセタン化合物を用いた。
【0052】
【化8】
【0053】
この2官能性オキセタン化合物は、上記と同様の方法で合成した式(iii)で表される化合物を原料として用い、式(7)で表される2官能性オキセタン化合物を合成した。
すなわち、式(iii)で表される化合物に、メタンスルホニルクロリド(MsCl)47.2g、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)52.0g及びトラヒドロフラン(THF)400mLを添加して0℃で1時間混合攪拌し、ヒドロキノン68g、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)11g及びトリエチルアミン(TEA)53gをさらに添加して0℃で1時間混合攪拌した。その後、混合物をさらに3時間還流攪拌して式(7)で表される化合物を得た。
【0054】
・界面活性剤
フッ素系界面活性剤(DIC株式会社製メガファックR40)を用いた。
・光重合開始剤
光カチオン重合開始剤(サンアプロ株式会社製CPI−100P)、及びアルキルフェノン系光重合開始剤(BASF社製イルガキュア651)を用いた。
【0055】
・単官能性アクリレート(比較例用)
4−(6−アクリロイルオキシヘキシロキシ)−4’−シアノビフェニル(A6CB)を用いた。この化合物は、特許文献1(国際公開第2014/038260号)に記載の方法に従って合成した。
・2官能性メタクリレート(比較例用)
エチレングリコールジメタクリレート(EGDMA、東京化成工業株式会社製)、及び1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA、東京化成工業株式会社製)を用いた。
【0056】
(実施例1)
単官能性オキセタン化合物と、界面活性剤と、光カチオン重合開始剤とを混合することによって光重合性組成物を調製した。この光重合性組成物において、界面活性剤の配合量を単官能性オキセタン化合物100質量部に対して0.1質量部とし、光カチオン重合開始剤の配合量を単官能性オキセタン化合物100質量部に対して15質量部とした。
次に、光重合性組成物をスピンコーティング(500rpmで4秒、1200rpmで30秒)によってガラス基板(10cm×10cm)に塗布し、120℃で5分間乾燥させることで2.0μmの塗膜を形成した後、フォトマスクを用いた動的光重合法を行った。この動的光重合法では、光照射に用いる光源としてメタルハライドランプ(UVL−7000M−N)を用い、光照射時の照射強度を294mW/cm
2に設定し、大気雰囲気中、80℃の加熱条件下で光照射を行った。また、フォトマスクには、略長方形状のスリット(スリット幅0.25mm)を有するフォトマスクを用い、フォトマスクの移動速度を0.9mm/sに設定した。そして、その後、全面に対して動的光重合法と同じ光照射条件で1分間、光照射を行うことにより、高分子膜を作製した。
【0057】
(実施例2)
光カチオン重合開始剤の配合量を単官能性オキセタン化合物100質量部に対して2.5質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を281mW/cm
2に変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0058】
(実施例3)
実施例1と同じ光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を281mW/cm
2、フォトマスクの移動速度を1.8mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0059】
(実施例4)
光カチオン重合開始剤の配合量を単官能性オキセタン化合物100質量部に対して10質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、塗膜の厚さを2.5μm、光照射時の照射強度を281mW/cm
2に変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0060】
(実施例5)
界面活性剤の配合量を単官能性オキセタン化合物100質量部に対して0.05質量部に変更したこと以外は実施例1と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を101mW/cm
2、フォトマスクの移動速度を0.3mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0061】
(実施例6)
実施例1と同じ光重合性組成物を調製した。
次に、塗膜の厚さを1.5μm、光照射時の照射強度を101mW/cm
2、フォトマスクの移動速度を0.1mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0062】
(実施例7)
実施例1と同じ光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を31mW/cm
2、フォトマスクの移動速度を0.05mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0063】
(実施例8)
実施例1と同じ光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を31mW/cm
2、フォトマスクの移動速度を0.1mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0064】
(実施例9)
実施例1と同じ光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を31mW/cm
2、フォトマスクの移動速度を0.3mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0065】
(実施例10)
実施例1と同じ光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を31mW/cm
2、フォトマスクの移動速度を0.5mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0066】
(実施例1
1)
単官能性オキセタン化合物と、2官能性オキセタン化合物と、光カチオン重合開始剤とを混合することによって光重合性組成物を調製した。この光重合性組成物において、単官能性オキセタン化合物と2官能性オキセタン化合物との質量比を85:15とし、光カチオン重合開始剤の配合量を単官能性オキセタン化合物
及び2官能性オキセタン化合物の合計100質量部に対して15.5質量部とした。
次に、塗膜の厚さを3.0μm、光照射時の照射強度を9mW/cm
2、光照射時の加熱温度を90℃、フォトマスクのスリット幅を0.5mm、フォトマスクの移動速度を0.02mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0067】
(比較例1)
EGDMAと、A6CBと、アルキルフェノン系光重合開始剤とを混合することによって光重合性組成物を調製した。この光重合性組成物において、EGDMAとA6CBとのモル比を2:98とし、アルキルフェノン系光重合開始剤の配合量をEGDMA及びA6CBの合計に対して外割で1モル%とした。
次に、スリットのないフォトマスクを用い、光照射時の照射強度を0.016mW/cm
2、光照射時の加熱温度を85℃、フォトマスクの移動速度を0.025mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0068】
(比較例2)
比較例1と同じ光重合性組成物を調製した。
次に、スリットのないフォトマスクを用い、塗膜の厚さを3.0μm、光照射時の照射強度を0.05mW/cm
2、光照射時の加熱温度を85℃、フォトマスクの移動速度を0.0025mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0069】
(比較例3)
EGDMAとA6CBとのモル比を4:96に変更したこと以外は比較例1と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、スリットのないフォトマスクを用い、塗膜の厚さを1.8μm、光照射時の照射強度を0.001mW/cm
2、光照射時の加熱温度を120℃、フォトマスクの移動速度を0.02mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0070】
(比較例4)
比較例3と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、光照射時の照射強度を0.001mW/cm
2、光照射時の加熱温度を120℃、フォトマスクのスリット幅を0.1mm、フォトマスクの移動速度を2mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0071】
(比較例5)
比較例3と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、塗膜の厚さを1.7μm、光照射時の照射強度を0.001mW/cm
2、光照射時の加熱温度を120℃、フォトマスクのスリット幅を0.1mm、フォトマスクの移動速度を0.002mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0072】
(比較例6)
比較例3と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、塗膜の厚さを1.9μm、光照射時の照射強度を0.001mW/cm
2、光照射時の加熱温度を120℃、フォトマスクのスリット幅を0.1mm、フォトマスクの移動速度を0.002mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0073】
(比較例7)
比較例3と同様にして光重合性組成物を調製した。
次に、スリットのないフォトマスクを用い、光照射時の照射強度を0.001mW/cm
2、光照射時の加熱温度を120℃、フォトマスクの移動速度を0.002mm/sに変更したこと以外は実施例1と同様にして高分子膜を作製した。
【0074】
上記の実施例及び比較例で調製した光重合性組成物の組成を表1にまとめる。
【0075】
【表1】
【0076】
上記の実施例で得られた高分子膜について、400〜700nmの透過率、ヘーズ値及びリタデーション(Δnd)を評価した。なお、上記の比較例で得られた高分子膜は、白濁が酷かったため、これらの評価を行うことができなかった。
400〜700nmの透過率及びヘーズ値は、JIS K7361−1及びJIS K7136に準拠し、ヘーズメーター(日本電色工業株式会社製NDH4000)を使用して測定した。
屈折率差(Δn)と高分子膜の厚さ(d)との積であるリタデーション(Δnd)の計測は、入射光用及び透過光用の偏光子を透過軸が垂直になるように配置し、その間に高分子膜を配置して行った。
また、上記の実施例及び比較例で得られた高分子膜についてタック性(粘着性)の有無を指触にて評価した。
上記の各評価結果を表2に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
表2に示されているように、実施例で得られた高分子膜は、タック性が無く、光学異方性を示すと共に透明性が高かった。
これに対して比較例で得られた高分子膜は、白濁化し、タック性もあった。これは、比較例で用いた光重合性組成物に含まれるA6CBが、周囲雰囲気中の酸素によって影響を受け、光重合反応が十分に進行しなかったためであると考えられる。
【0079】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、周囲雰囲気に影響されることなく空気中でも光重合反応を行うことができ、しかも未硬化及び白濁化が起こり難い光学異方性高分子膜の製造方法、並びに当該特性を有する光学異方性高分子膜を用いた有機EL表示装置及び液晶表示装置の製造方法を提供することができる。