(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示に係る医療業務支援装置、医療業務支援システム及び医療業務支援方法の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。本開示は、多チャンネルの電極による脳波計やノイズを下げるペーストによる脳波計を用いることなく、患者の睡眠状態がレム睡眠状態なのかノンレム睡眠状態なのかを簡易に判定し、かつ、患者が所定状態に動いたか等の動作を判定することにより、患者の状態に応じて適切に見守る医療業務支援装置及び医療業務支援方法と、この医療業務支援装置を含む医療業務支援システムである。
【0017】
<第1実施形態>
図1に示すように、本実施形態に係る医療業務支援システム1は、注意するべき患者10を医療従事者11に通知する医療業務支援装置20及び患者10に緊急応対が必要になったことを報知するナースコール33等の緊急報知部30とを含んでいる。
【0018】
注意するべき患者10とは、緊急報知部30による報知のような緊急性は無いが、ベッドからの転落による怪我等を未然に防止するために、医療従事者11が注意を向ける必要がある患者である。注意するべき患者10は、例えば、病室のベッドの上から病室の床に転落する可能性がある患者10等である。
【0019】
医療業務支援システム1は、表示部71,72を有する表示機器70を含んで構成されている。表示部71は、医療業務支援装置20の内容である注意喚起情報を表示するように構成されている。表示部72は、緊急報知部30の内容である緊急応対内容を表示するように構成されている。また、医療業務支援システム1において、各医療従事者11が携帯する端末機器11A、医療業務支援装置20、緊急報知部30、表示機器70は、通信に関する機器の一例であるアクセスポイント80を介して、相互に通信可能に構成されている。
【0020】
<医療業務支援装置20>
医療業務支援装置20は、各患者10に各々設置される装置であり、計測部と解析部と検出部と注意喚起部とを含んでいる。一般に、レム睡眠状態は浅い眠りであり、体は眠っているのに、脳が動いている状態であることが知られている。また、ノンレム睡眠は深い眠りであり、体も脳も休んでいる状態であることが知られている。医療業務支援装置20は、この睡眠状態(レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態)と患者10の動作に基づいて、注意するべき患者10を判定する装置である。
【0021】
図1及び
図2に示す医療業務支援装置20は、心電図センサ40(計測部の一例)、解析部45、加速度センサ50(検出部の一例)、注意喚起部60とを有している。心電図センサ40、解析部45及び加速度センサ50と注意喚起部60とは、
図2に示す汎用プロトコルに従って通信を行う通信網Lにより相互に通信を行うように構成されている。なお、通信網Lは、有線LAN(Local Area Network)等の有線通信回線、Bluetooth(登録商標)、BLE(Bluetooth Low Energy)、無線LAN(Local Area Network)等の無線通信回線のいずれであってもよい。
【0022】
<計測部>
計測部は、患者に装着されて患者の生体情報を計測するセンサである。計測部は、患者10の生体情報の一例である心電図データを計測する心電図センサ40とすることができる。
図1に、心電図センサ40の装着の一例として、患者10の胸部に心電図センサ40を装着した状態を示している。心電図センサ40が計測した心電図データは解析部45に送信される。
【0023】
<解析部45>
解析部45は、計測部が計測した生体情報を解析するように構成されている。解析部45は、心電図センサ40が計測した心電図データを取得して解析し、患者10の睡眠状態がレム睡眠状態とノンレム睡眠状態のいずれなのかを判定する構成とされている。解析部45は、患者10の睡眠状態がレム睡眠状態とノンレム睡眠状態のいずれなのかを判定した判定結果を、注意喚起部60に送信するように構成されている。
【0024】
<検出部>
検出部は、患者10の動きを検出する機器である。一例として、検出部は、X座標、Y座標、Z座標における患者10の位置変化を検出し、XY平面、YZ平面、ZX平面のいずれかにおける患者10に関する角度変化を検出する3軸加速度センサ50で構成することができる。加速度センサ50は、患者10の位置変化及び角度変化を複数回検出し、複数回の検出結果に基づいて患者10に動きがあったかどうかを判定することができる。
【0025】
加速度センサ50は、検出した患者の位置変化または角度変化に基づいて、患者10が所定状態に動いたか否かを判定するように構成されている。所定状態に動いたとは、患者10がベッドから転落等のような危険が迫っているときに検出される動きが有る状態であり、緊急応対が必要な容態急変とは異なるが、患者10の状態を確認する等の注意が必要な動きである。一例として、患者10について、ベッドの大きさである幅及び長さと、患者10の身長や身幅とから、患者10がベッドから転落する可能性がある動きの変化量を算出し、この変化量を越える動きが加速度センサ50により検出されることを所定状態に動いたとすることができる。加速度センサ50は、患者10が所定状態に動いたか否かの検出結果を、注意喚起部60に送信するように構成されている。
【0026】
<注意喚起部60>
注意喚起部60は、患者の睡眠状態(レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態)と、患者が所定状態に動いたか等の動作とに基づいて、各患者が注意するべき患者かどうかを判定し、判定した結果を外部に向けて発信するように構成されている。
図2に示す注意喚起部60は、注意するべき患者10かどうかを判定する判定部61と、注意するべき患者10の注意喚起情報等の情報を医療業務支援装置20の外部に向けて発信して医療従事者11に報知する通信部62と、を含んでいる。
【0027】
判定部61は、解析部45から、患者10の睡眠状態(レム睡眠状態、ノンレム睡眠状態)の解析結果を逐次取得するように構成されている。また、判定部61は、加速度センサ50から、患者10が所定状態動いたかどうかの検出結果を逐次取得するように構成されている。判定部61は、解析部45から取得した解析結果及び加速度センサ50から取得した検出結果に基づいて、計測対象である患者10が注意するべき患者かどうかの判定を行うように構成されている。
【0028】
計測対象の患者10が注意するべき患者であるかどうかは、少なくとも二段階の判定により決定される。すなわち、判定部61は、第一段階の判定として患者10がレム睡眠状態であるかノンレム睡眠状態であるかの睡眠状態を判定し、第二段階の判定として患者10が所定状態に動いたかどうかの動作の判定を行う。
【0029】
判定部61による注意するべき患者10かどうかの判定結果は、次の4態様となる。
(1) 注意喚起(アラート)が必要
レム睡眠状態で所定状態に動いた患者10は、ベッドから転落等の可能性がある。このため、判定部61は、レム睡眠状態で所定状態に動いた患者10を注意喚起(アラート)が必要な注意するべき患者であって、医療従事者11に通知するべきと判定する。
(2) 注意が必要
レム睡眠状態であるが、動きが無い患者10は、すぐにベッドから転落等の動きが発生しない可能性があるため、判定部61はこの状態を注意するが医療従事者11に通知は不要な状態と判定する。患者10に動きも姿勢変動も無いとしても、レム睡眠状態である場合は無意識に体を動かすことが知られており、このレム睡眠状態の患者10が所定状態に動く可能性はあるため、注意喚起に準ずる注意が必要と判定するものである。
(3) 軽度の注意が必要
患者10がノンレム睡眠状態であり、かつ、所定状態の動きより小さくても患者10に動きがある場合、判定部61は軽度の注意が必要と判定する。所定状態の動きより小さくても患者10に動きがあるかどうかは、注意喚起が必要な患者10よりも注意するべき程度は低いが、ベッドからの転落等の可能性がある動きの変化量かどうかで判定することができ、患者10の病状や環境等に基づいて定めることができる。
(4) 注意喚起、注意、軽度の注意のいずれも不要
ノンレム睡眠状態であり、動きが無い患者10は、無意識に体を動かすことは少なく、ベッドから転落等の可能性は無いため、判定部61はこの状態を注意喚起、注意、軽度の注意のいずれも不要な状態と判定する。
【0030】
さらに、判定部61は、レム睡眠状態で所定状態に動いた患者10について注意喚起(アラート)が必要と判定した場合、この患者10は注意するべき患者であるとの注意喚起情報を作成する構成とされている。
【0031】
注意喚起情報は、医療従事者11に注意を喚起する各種の表示及び態様とすることができる。一例として、注意喚起情報は、患者に関する情報であってもよく、「ベッド転落注意」等の注意するべき状態の文字情報であってもよく、「大きな動きを検出」等の検出結果の文字情報であってもよい。また、注意喚起情報は、医療従事者11に対する指示内容であってもよく、例えば「念のため見回りにきてください」等の文字情報であってもよい。また、注意喚起情報は、文字情報に加えて、医療従事者11の携帯端末を振動させてもよく、携帯端末の発光部を点滅させて報知してもよい。
【0032】
また、判定部61は、注意喚起情報を作成した患者について、この患者を特定する患者識別情報を取得するように構成されている。患者識別情報は、一例として、患者10に個別に設定された患者IDや、患者10が使用する入院ベッドの識別番号等である。患者識別情報は、注意喚起部60が取得できる機器に保持される。患者識別情報は、心電図センサ40、患者の端末機器10A、患者10のベッドに設置されたベッドサイドモニタ12、緊急報知部30のいずれかに保持されてもよく、注意喚起部60の内部に保持されて判定部61により取得されてもよい。
【0033】
注意喚起情報(アラート)及び患者識別情報は、注意喚起部60から医療従事者11に通知される。注意喚起部60と医療従事者11との間の通知は、
図2に示す通信部62から汎用プロトコルに従って通信が行われる通信網L等のネットワークを用いて行われてもよく、
図2に示すアクセスポイント80等の機器を介して行われてもよい。
【0034】
医療従事者11が確認可能な機器に送信された注意喚起情報及び患者識別番号は、
図1に示す表示機器70の表示部71に表示されてもよく、医療従事者11が携帯する端末機器11Aに表示されてもよい。
【0035】
<緊急報知部30>
医療業務支援システム1の緊急報知部30は、
図1に示すように、患者10に緊急応対が必要になったことを検知する検知部31と、検知部31の検知結果を緊急報知部30の外部に向けて発信する通信部32とを有している。
【0036】
検知部31は、一例として、患者10の容態が急変したことを検知する心電図計とすることができる。心電図計31は、付き添い者が患者10の容態の急変を知らせるナースコール33を含んで構成することができる。
【0037】
通信部32は、一例として、患者10のベッドに設置され、Bluetooth(登録商標)を内蔵したナースコール33を用いて通信することができる。緊急報知部30の心電図計31から発せられる緊急応対内容は、表示部72や医療従事者11の端末機器11A等の医療従事者11が確認可能な機器に受信されるようになっている。この表示部72の報知は、例えば、表示部72に「病状が急変」等の文字を表示しても良く、表示部72のスピーカー(不図示)から報知音を発してもよく、表示機器70のランプ(不図示)を点灯させてもよい。
【0038】
なお、緊急報知部30は、患者10に緊急応対が必要になったことを検知して緊急応対内容を表示機器に通知するシステムであればよく、従来使用されているナースコール33等の各種のシステムを用いることができる。
【0039】
次に、上記構成の医療業務支援方法の動作例1〜動作例2について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0040】
<動作例1>
動作例1として、医療業務支援装置20を用いた医療業務支援方法の動作例を説明する。
複数の患者10に各1台、心電図センサ40、解析部45、加速度センサ50を一体化した機器を装着する。注意喚起部60は
図1に示す心電図センサ40の近傍の患者10の胸部に装着する(S1、見守りの開始)。
【0041】
心電図センサ40は患者10の心電図を計測し(S2、計測ステップ)、計測した心電図データを解析部45に送信する。
【0042】
解析部45は、受信した心電図データを解析して、患者10の睡眠状態を解析する(S3、解析ステップ)。また、解析部45は、この心電図データの解析結果により、計測対象の患者10の睡眠状態がレム睡眠であるのかノンレム睡眠であるのかの判定を行う(S4、睡眠状態判定ステップ)。本例で、解析部45は、患者10がレム睡眠状態であると判定し(S4でYES)、この判定結果を注意喚起部60に送信する。注意喚起部60の判定部61は、解析部45から、患者10がレム睡眠状態であるとの判定結果を取得する。
【0043】
加速度センサ50は、患者10の位置変化及び角度変化を複数回検出する(S5、検出ステップ)。加速度センサ50は、患者10の位置変化及び角度変化の検出結果から、患者10が所定状態に動いたかどうかを判定する(S6、動き判定ステップ)。加速度センサ50は、この判定結果を注意喚起部60に送信する。
【0044】
患者10が所定状態に動いた場合(S6でYES)、判定部61は、患者10が注意するべき患者であり注意喚起が必要であると判定する。判定部61は、患者10の注意喚起情報を作成し、注意喚起情報を作成した患者10を特定する患者識別情報を取得する。判定部61は、注意喚起情報及び患者識別番号を、表示部71等の医療従事者11が確認可能な機器に送信する(S7、注意喚起情報通知ステップ)。医療従事者11は、表示部71に表示される注意喚起情報及び患者識別番号を確認することにより、判定部61の通知内容に応じた応対を採ることが出来、患者10に適切な処置をすることができる。見守りの終了の操作が行われない場合、患者10の見守りが継続され(S12でYES)、見守りを終了するための操作が行われると(S12でNO)、見守りを終了する(S13)。
【0045】
上記構成によれば、レム睡眠状態で、かつ、所定状態に動いている患者10を注意するべき患者であって注意喚起が必要であると判定し、この患者10の注意喚起情報及び患者識別番号を外部に発信するので、医療従事者11は、多数の患者10の中から、ベッドから転落の可能性がある等の注意するべき患者10を特定することができる。
【0046】
また、S6において、患者10が所定状態に動いていない場合(S6でNO)、判定部61は、患者10には注意喚起(アラート)は不要であるが、注意喚起に準ずる注意が必要であると判定する(S8)。
【0047】
上記構成によれば、注意喚起(アラート)は不要であるが、動きが生じる可能性があるレム睡眠状態の患者10を特定し、この患者10の睡眠状態及び動きの有無を継続して判定することができ、患者10を適切に見守ることができる。
【0048】
また、S4において、患者10の睡眠状態がノンレム睡眠であると判定された場合(S4でNO)、加速度センサ50は患者10の動きを検出する(S9、検出ステップ)。
【0049】
判定部61は、加速度センサ50から、所定状態の動きより小さくても患者10に動きがあるかどうかの判定結果を取得する。
【0050】
判定部61は、所定状態の動きより小さくても患者10に動きがある場合(S10でYES)、患者10に軽度の注意喚起が必要と判定する(S11)。
【0051】
上記構成によれば、一般的には無意識に体が動かないとされるノンレム睡眠状態の患者10の中から、動きが大きい患者10を特定して、ベッドからの落下等が起こらないように適切に見守ることができる。
【0052】
また、S10において患者10の動きが無い場合、判定部61は、計測対象の患者10に対する注意喚起は不要であると判定し(S10でNO)、睡眠状態の判定(S4)に戻る。
【0053】
上記構成によれば、一般的には無意識に体が動かないとされるノンレム睡眠状態で動きの検出が無い場合にも見守りを継続することにより、多数の患者10の適切な見守りを行うことができる。
【0054】
以上説明したように、本開示の構成によれば、患者10がレム睡眠状態であることを簡易な手法で判定することができる。かつ、患者10の睡眠状態の判定と、患者10が所定状態に動いているとの動きの判定とを組み合わせて、注意するべき患者を簡易に判定して、注意喚起部60が注意喚起情報を発信するので、医療従事者11は、多数の患者10の中から、ベッドから転落の可能性がある等の注意するべき患者10を特定することができる。そのため、注意をするべき患者10に対して適切な応対を行うことができる。また、多数の患者を少数の医療従事者11で受け持つ夜間において、医療従事者11の業務負担を減らすことができる。特に、医療従事者11のサーカディアンリズム(体内時計)が崩れやすくなる明け方は、注意力が低下しやすく、疲れも出やすく、すべての患者10に目が行き届きにくくなりやすい。上記構成によれば、このような明け方等においてもすべての患者10に対して適切な応対ができる。更に、注意喚起情報の通知が無い時間においては、医療従事者11は、注意や緊張の度合いを軽くしながら確実に見守ることができるので、医療従事者11の業務負担を軽くすることができる。
【0055】
また、患者識別情報は、計測部または注意喚起部60の少なくともいずれか一方に保持されるので、注意喚起情報の対象である患者10を確実に特定することができる。
【0056】
<動作例2>
動作例2として、医療業務支援システム1を用いた医療業務支援方法の動作例を説明する。動作例2において、動作例1と重複する動作は、同一符号を付して説明を省略する。
【0057】
動作例2において、S1からS13は動作例1と同様に行われる。このとき、緊急報知部30は、注意喚起部60の判定から独立して、患者10の状態を計測し判定する。心電図計31は、患者10に急激な心電図の変化等の緊急応対が必要な変化が生じた場合、この変化を検出して緊急応対が必要であることを判定する。心電図計31は、緊急応対を要すると判定した判定結果を、通信部32を介して表示部72に報知する。医療従事者11は、表示部72により心電図計31から報知された緊急応対が必要であるとの情報を確認して、緊急応対が必要な患者10の所に直ちに駆けつけることができる。
【0058】
上記構成によれば、医療業務支援システム1は医療業務支援装置20及び緊急報知部30とを含み、患者がレム睡眠状態でかつ所定状態に動いていることに基づいて、注意するべき患者を簡易に判定して、注意喚起情報を発信するので、医療従事者11は、多数の患者の中から注意するべき患者を特定することができる。この注意するべき患者の特定とは別に、患者に緊急応対が必要なときは緊急報知部30の報知に応じて患者10を確実に特定して看護することができる。すなわち、患者10の状態に応じて適切な応対を行うことができる。このため、少数の医療従事者11が多数の患者10を確実かつ適切に見守ることができ、医療従事者11の業務負担が軽減される。特に、緊急報知部による報知も注意喚起情報の通知も無い時間において、医療従事者11は注意や緊張の度合いを軽くしながら確実に見守ることができるので、医療従事者11の業務負担を軽くすることができる。
【0059】
<第2実施形態>
次に、注意喚起情報を発信する時刻、時間帯等の時間を設定可能なタイマー90を有する医療業務支援装置及び医療業務支援方法について、
図1〜
図3を用いて説明する。第1実施形態と重複する構成及び動作は、同一符号を付して説明を省略する。
【0060】
医療業務支援システム1は、少なくとも注意喚起情報を発信する開始時刻を設定可能なタイマー90を含んで構成されている。注意喚起情報を発信する開始時刻は、例えば、夜勤開始時刻とすることができる。タイマー90で設定する時刻は注意喚起情報を発信する時刻に限らない。例えば、注意喚起情報の発信を終了する終了時刻を設定可能に構成してもよく、発信開始時刻から5時間等の時間を設定可能に構成してもよく、発信開始時刻及び発信終了時刻を設定可能に構成してもよい。
【0061】
タイマー90は注意喚起部60と通信可能に構成され、タイマー90の設定内容を注意喚起部60に送信する構成とされている。タイマー90と注意喚起部60との通信は、注意喚起部60と心電図センサ40、解析部45、加速度センサ50との間と同様に、
図2に示す通信網L等の汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを用いることができる。
【0062】
タイマー90は、一例として、
図1に示す表示機器70に内蔵され、注意喚起情報を発信する開始時刻及び終了時刻の設定が可能な構成とされている。表示機器70には、タイマー90の設定内容を表示する表示部73が設けられている。
【0063】
<動作例3>
次に、第2実施形態に対応する動作例として、タイマー90を含む医療業務支援システム1を用いた医療業務支援方法の動作例3を、
図1〜
図3を用いて説明する。第1実施形態と重複する構成及び動作は、同一符号を付して説明を省略する。
【0064】
タイマー90には、注意喚起情報を発信する開始時刻として夜勤開始時刻が設定され、注意喚起情報の発信を終了する終了時刻として日勤開始時刻が設定されている。
【0065】
タイマー90は、注意喚起部60に、タイマー90の設定内容である注意喚起情報を発信する開始時刻及び終了時刻を送信する。タイマー90の設定内容を受信した注意喚起部60は、注意喚起情報を発信する開始時刻の前は、解析部45及び加速度センサ50から情報を受信するが、注意喚起(S7)、注意(S8)、軽度の注意喚起(S11)の判定を行わず、注意喚起情報の発信(S7)も行わない。この注意喚起情報を発信する開始時刻の前は、緊急報知部30による緊急応対の通知のみが行われる。なお、タイマー90注意喚起情報を発信する開始時刻の前は、S7の注意喚起情報の発信のみを行なわず、注意喚起(S7)、注意(S8)、軽度の注意喚起(S11)の判定を行って、これらの判定結果を注意喚起部60に保持させる構成としてもよい。また、タイマー90の注意喚起情報を発信する開始時刻の前は、心電図センサ40による計測及び加速度センサ50による検出を行わない構成としてもよい。
【0066】
注意喚起情報の発信を開始する開始時刻になると、注意喚起部60は、解析部45から受信する判定結果及び加速度センサ50から受信する判定結果に基づいて、計測対象の患者10を注意して見守るべきかどうかの判定を開始し(
図3のS4〜S11)、S7の注意喚起情報の発信を開始する。注意喚起部60の具体的な動作については、第1実施形態の動作例1〜動作例2と同様であるので、説明を省略する。
【0067】
注意喚起情報の発信を終了する終了時刻になると、注意喚起部60は、解析部45及び加速度センサ50から情報を受信するが、注意喚起(S7)、注意(S8)、軽度の注意喚起(S11)の判定を終了し、注意喚起情報の発信(S7)を終了する。タイマー90で設定した注意喚起情報を発信する終了時刻以降は、緊急報知部30による緊急応対の通知のみが行われる。
【0068】
上記構成によれば、注意喚起情報を発信する開始時刻を設定可能なタイマー90を有するので、夜勤開始時刻等の注意喚起が必要な時刻に合わせて注意喚起情報の発信を開始することができる。このため、医療従事者11の人数が少ない時間帯であっても、多数の患者10に対して、患者の状態に応じて確実で適切な応対を行うことができる。また、上記構成によれば、注意喚起情報を発信する終了時刻を設定可能なタイマー90を有するので、夜勤が終了し日勤が開始して医療従事者11の人数が増える時間帯に合わせて注意喚起情報の発信を終了することができる。
【0069】
なお、上記実施形態において、心電図センサ40、解析部45、加速度センサ50を一つの機器に集約して患者10の胸部に装着し、この機器の近傍の胸部に注意喚起部60を装着する例示を
図1を用いて説明したが、心電図センサ40、解析部45、加速度センサ50、注意喚起部60の構成は
図1に示す構成に限らない。例えば、心電図センサ40、解析部45、加速度センサ50及び注意喚起部60を個別の機器で構成してもよく、心電図センサ40、解析部45、加速度センサ50及び注意喚起部60を一つの機器に集約する構成としてもよい。また、心電図センサ40及び加速度センサ50を患者10に装着する構成とし、解析部45を通信網Lを介して接続可能な外部機器に内蔵させ、注意喚起部60を
図1に示すベッドサイドモニタ12に内蔵させる構成としてもよい。また、心電図センサ40及び加速度センサ50を患者10に装着する構成とし、解析部45及び注意喚起部60を
図1に示す患者10の端末機器10Aに内蔵させる構成としてもよい。また、解析部45、注意喚起部60の少なくとも一つを、
図1に示すアクセスポイント80等の機器に設ける構成としてもよい。
【0070】
また、計測部は心電図センサに限らない。計測部は、多数の患者10の中から注意するべき患者10かどうかを特定するために有用な生体情報を計測可能な各種のセンサとすることができる。計測部として、
図2に示す心電図センサ40に代えて、呼吸数を計測する呼吸センサ、経皮的動脈血酸素飽和度の値を計測する経皮的動脈血酸素飽和度センサ(以下「SpO
2センサ」という)、皮膚温(体温)を計測する体温センサ等を用いることができる。また、計測部を構成するセンサの数は
図2に示した一つに限らず、複数のセンサとすることができる。計測部に含まれる複数のセンサは、上記した心電図センサ40、呼吸センサ、SpO
2センサ、体温センサの少なくとも一つ以上とすることができる。
【0071】
上記構成によれば、患者10の睡眠状態に関して、心電図センサ、SpO
2センサ、呼吸センサ、体温センサの少なくとも一つ以上を用いて患者の生体情報を計測するので、多チャンネルの電極を用いる脳波計やノイズを下げるペーストを用いる脳波計測による睡眠状態の判定に比べて、大掛かりな装置を用いずに、簡易な手法で睡眠状態を計測することができ、睡眠状態の判定に関する患者10の負担を少なくすることができる。さらに、二つ以上のセンサを用いて患者の生体情報を計測する場合は、一つのセンサを用いる場合に比して、より精度よく睡眠状態の判定を行うことができ、注意喚起(アラート)が必要か否かの判定の精度をより向上させることができる。
【0072】
また、解析部は、上記した心電図データの解析に限らない。解析部は、多数の患者10の中から注意するべき患者10かどうかを判定するために、計測部による計測結果に基づいて、患者10がレム睡眠状態であるかノンレム睡眠状態であるかを解析可能な各種の構成とすることができる。例えば、計測部として皮膚温(体温)センサを備える医療業務支援装置20において、解析部は、体温センサから取得する計測結果(体温のデータ)に基づいて、体温が下がっているかどうか等の体温の変化を解析して、患者10がレム睡眠状態、ノンレム睡眠のいずれなのかを判定する構成としてもよい。
【0073】
<変形例 医療業務支援装置20A>
計測部として心電図センサ40に代えて、呼吸センサ41を備える医療業務支援装置20Aの例を、
図4を用いて説明する。なお、
図1〜3に示す医療業務支援装置20と同様の構成については、
図4において同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
医療業務支援装置20Aは、
図4に示すように、呼吸センサ41、解析部45、加速度センサ50、注意喚起部60を有している。呼吸センサ41は、一例として、患者10の鼻孔の一方に装着されて、患者10の呼吸数を計測するセンサである。呼吸センサ41は、患者10の呼吸数の計測結果を解析部45に送信するように構成されている。解析部45は、呼吸センサ41から取得する計測結果(呼吸数のデータ等)に基づいて、呼吸が規則的かどうか、呼吸回数が少ないかどうか等の呼吸の変化を解析して、患者10がレム睡眠状態、ノンレム睡眠のいずれなのかを判定するように構成されている。
【0075】
なお、医療業務支援装置20Aを用いた医療業務支援方法の動作例は、
図3において、心電図センサ40による計測を呼吸センサ41による計測に変更し、心電図データを呼吸数等の呼吸センサ41の計測結果に変更する点を除いて、医療業務支援装置20を用いた医療業務支援方法の動作例1〜動作例3と共通であるので、説明を省略する。
【0076】
以上説明したように、呼吸センサ41を備える医療業務支援装置20A及びこの医療業務支援装置20Aを用いる医療業務支援方法によれば、患者10がレム睡眠状態であることを簡易な手法で判定することができる。かつ、患者10の睡眠状態と患者が所定状態に動いているとの動きの判定とを組み合わせて、注意するべき患者を簡易に判定して、注意喚起部60が注意喚起情報を発信することができるので、医療従事者11は、多数の患者10の中から、ベッドから転落の可能性がある等の注意するべき患者10を特定することができる。そのため、注意をするべき患者10に対して適切な応対を行うことができる。また、多数の患者を少数の医療従事者11で受け持つ夜間において、医療従事者11の業務負担を減らすことができる。
【0077】
なお、上記実施形態では、患者がレム睡眠状態でかつ所定状態に動いたと判定された
図3のS7の場合に、注意喚起情報を医療業務支援装置20,20Aの外部に向けて発信する例示を説明したが、外部への発信は上記例示に限らない。例えば、
図3のS8(注意)またはS11(軽度の注意喚起)においても、判定結果である注意(S8)、軽度の注意喚起(S11)に応じた情報を注意喚起部にて作成して外部に発信してもよい。
【0078】
また、上記実施形態では、表示部71に注意喚起情報を表示する例を説明したが、表示部71の表示は上記に限らない。例えば、表示部71は、軽度の注意喚起が必要であるとの情報及びこの軽度の注意喚起が必要な患者10の患者識別番号を表示してもよく、注意が必要であるとの情報及びこの注意が必要な患者10の患者識別番号を表示してもよい。医療従事者11は、表示部71に表示された軽度の注意喚起、注意及び患者識別番号を確認することができ、患者10がベッドから転落等しないように適切に見守ることができる。
【0079】
本開示は上述した実施形態や動作例に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、形態、数、配置場所等は、本開示を達成できるものであれば任意であり、限定されない。