特許第6974036号(P6974036)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974036
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】自転車用発電装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 21/22 20060101AFI20211118BHJP
   H02K 1/14 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   H02K21/22 G
   H02K1/14 C
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-105705(P2017-105705)
(22)【出願日】2017年5月29日
(65)【公開番号】特開2018-201314(P2018-201314A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年7月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】500073951
【氏名又は名称】シマノ(シンガポール)プライベートリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】タン チュン シン
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−039769(JP,A)
【文献】 特開2012−044737(JP,A)
【文献】 特開2014−209832(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第10240704(DE,A1)
【文献】 特開2013−046538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 21/22
H02K 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、
前記軸部材と同軸を有し、前記軸部材と相対回転可能な回転体と、
複数の第1ヨーク片を含む第1ヨーク、複数の第2ヨーク片を含む第2ヨーク、および、コイルを有し、前記軸部材および前記回転体の一方に設けられる電機子と、
前記電機子と相対回転可能に前記軸部材および前記回転体の他方に設けられ、極が周方向に並ぶ磁石と、を備え、
前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、開口部が対向し、前記軸部材の周方向にそれぞれが重複しないように前記軸部材の中心軸と平行な方向に並べられ、
前記磁石は、前記軸部材の径方向において前記第1ヨーク片と対向可能な第1磁石、および、前記軸部材の径方向において前記第2ヨーク片と対向可能な第2磁石を有する、自転車用発電装置。
【請求項2】
軸部材と、
前記軸部材と同軸を有し、前記軸部材と相対回転可能な回転体と、
少なくとも1つの第1ヨーク片を含む第1ヨーク、少なくとも1つの第2ヨーク片を含む第2ヨーク、および、コイルを有し、前記軸部材および前記回転体の一方に設けられる電機子と、
前記電機子と相対回転可能に前記軸部材および前記回転体の他方に設けられ、極が周方向に並ぶ磁石と、を備え、
前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、開口部が対向し、前記軸部材の周方向にそれぞれが重複しないように前記軸部材の中心軸と平行な方向に並べられ、
前記磁石は、前記軸部材の径方向において前記第1ヨーク片と対向可能な第1磁石、および、前記軸部材の径方向において前記第2ヨーク片と対向可能な第2磁石を有し、
前記第1ヨーク片のそれぞれの少なくとも一部は、前記軸部材の径方向において前記第1磁石と前記コイルとの間に設けられ、
前記第2ヨーク片のそれぞれの少なくとも一部は、前記軸部材の径方向において前記第2磁石と前記コイルとの間に設けられる、自転車用発電装置。
【請求項3】
軸部材と、
前記軸部材と同軸を有し、前記軸部材と相対回転可能な回転体と、
1または複数の第1ヨーク片を含む第1ヨーク、1または複数の第2ヨーク片を含む第2ヨーク、および、コイルを有し、前記軸部材および前記回転体の一方に設けられる電機子と、
前記電機子に対して相対回転可能に前記軸部材および前記回転体の他方に設けられ、極が周方向に並ぶ磁石と、を備え、
前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記軸部材の中心軸と平行な方向に並べられ、
前記磁石は、前記軸部材の径方向において前記第1ヨーク片と対向可能な第1磁石、および、前記軸部材の径方向において前記第2ヨーク片と対向可能な第2磁石を有し、
前記第1磁石および前記第2磁石は、前記第1磁石の極と前記第2磁石の極とが同じ極が隣接しないように、前記軸部材の中心軸と平行な方向に隣接して配置される、自転車用発電装置。
【請求項4】
前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記軸部材の周方向にそれぞれが重複しないように前記軸部材の中心軸と平行な方向に並べられる、請求項に記載の自転車用発電装置。
【請求項5】
前記第1磁石および前記第2磁石は、前記軸部材の周方向においてそれぞれのS極とN極とが互い違いになるように配置される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項6】
前記第1ヨーク片の数および前記第1磁石の極の数は等しく、
前記第2ヨーク片の数および前記第2磁石の極の数は等しい、請求項1〜5のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項7】
前記第1ヨーク片の数および前記第2ヨーク片の数は等しく、
前記第1磁石の極の数および前記第2磁石の極の数は等しい、請求項1〜6のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項8】
前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記軸部材の周方向において同一の位相に配置される、請求項1〜7のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項9】
前記第1ヨーク片は、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延びる第1部分、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延び、前記第1部分よりも前記軸部材の径方向の外側に配置される第2部分、および、前記軸部材の径方向に延びて前記第1部分の一方の端部と前記第2部分の一方の端部とを接続する第3部分を備え、
前記第1部分、前記第2部分、および、前記第3部分に囲まれた部分に前記コイルが配置される、請求項1〜8のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項10】
前記第2ヨーク片は、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延びる第4部分、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延び、前記第4部分よりも前記軸部材の径方向の外側に配置される第5部分、および、前記軸部材の径方向に延びて前記第4部分の一方の端部と前記第5部分の一方の端部とを接続する第6部分を備え、
前記第4部分、前記第5部分、および、前記第6部分に囲まれた部分に前記コイルが配置され、
前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記第1ヨーク片の前記第2部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第5部分の他方の端部とが、前記軸部材の中心軸と平行な方向において並ぶ、請求項に記載の自転車用発電装置。
【請求項11】
前記第1ヨーク片の前記第2部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第5部分の他方の端部とは、電気的に絶縁される、請求項10に記載の自転車用発電装置。
【請求項12】
前記第1ヨーク片の前記第2部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第5部分の他方の端部とは、空隙によって絶縁される、請求項11に記載の自転車用発電装置。
【請求項13】
前記第1ヨーク片は、前記第2ヨーク片とは別体に形成され、
前記第1ヨーク片の前記第1部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第4部分の他方の端部とは、互いに接触する、請求項10〜12のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項14】
前記第2ヨークは、前記軸部材の周方向に並ぶ2つ以上の前記第2ヨーク片を含み、
隣り合う2つの前記第2ヨーク片の前記第5部分の間の距離は、前記第2ヨーク片の前記軸部材の周方向の幅よりも大きい、請求項10〜13のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項15】
前記第1ヨークは、前記軸部材の周方向に並ぶ2つ以上の前記第1ヨーク片を含み、
隣り合う2つの前記第1ヨーク片の前記第2部分の間の距離は、前記第1ヨーク片の前記軸部材の周方向の幅よりも大きい、請求項9〜14のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項16】
前記電機子は、前記軸部材に設けられ、
前記磁石は、前記回転体に設けられる、請求項1〜15のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【請求項17】
前記軸部材は、ハブ軸であり、
前記回転体は、ハブシェルである、請求項1〜16のいずれか一項に記載の自転車用発電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自転車に搭載されて自転車の駆動にともなって発電する自転車用発電装置が知られている。特許文献1の自転車用発電装置は、それぞれのヨーク片が交互になるように噛み合わせられた2つのヨークを備える電機子と、これらヨークに対向する界磁とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−46538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自転車用発電装置は、装置の径方向のサイズの小型化が求められる。
本発明の目的は、径方向のサイズを小型化できる自転車用発電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う自転車用発電装置の一形態は、軸部材と、前記軸部材と同軸を有し、前記軸部材と相対回転可能な回転体と、少なくとも1つの第1ヨーク片を含む第1ヨーク、少なくとも1つの第2ヨーク片を含む第2ヨーク、および、コイルを有し、前記軸部材および前記回転体の一方に設けられる電機子と、前記電機子と相対回転可能に前記軸部材および前記回転体の他方に設けられ、極が周方向に並ぶ磁石と、を備え、前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記軸部材の周方向にそれぞれが重複しないように前記軸部材の中心軸と平行な方向に並べられ、前記磁石は、前記軸部材の径方向において前記第1ヨーク片と対向可能な第1磁石、および、前記軸部材の径方向において前記第2ヨーク片と対向可能な第2磁石を有する。
上記構成によれば、それぞれ磁石と対向する第1ヨーク片および第2ヨーク片が、軸部材の周方向にそれぞれが重複しないように軸部材の中心軸と平行な方向に並べられる。このため、周方向における第1ヨーク片と第2ヨーク片との間の間隔を小さくできる。このため、自転車用発電装置の径方向のサイズを小型化できる。
【0006】
本発明の第2側面に従う自転車用発電装置の一形態は、軸部材と、前記軸部材と同軸を有し、前記軸部材と相対回転可能な回転体と、1または複数の第1ヨーク片を含む第1ヨーク、1または複数の第2ヨーク片を含む第2ヨーク、および、コイルを有し、前記軸部材および前記回転体の一方に設けられる電機子と、前記電機子に対して相対回転可能に前記軸部材および前記回転体の他方に設けられ、極が周方向に並ぶ磁石と、を備え、前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記軸部材の中心軸と平行な方向に並べられ、前記磁石は、前記軸部材の径方向において前記第1ヨーク片と対向可能な第1磁石、および、前記軸部材の径方向において前記第2ヨーク片と対向可能な第2磁石を有し、前記第1磁石および前記第2磁石は、前記第1磁石の極と前記第2磁石の極とが前記軸部材の周方向においてずれるように配置される。
上記構成によれば、それぞれ磁石と対向する第1ヨーク片および第2ヨーク片が、軸部材の中心軸と平行な方向に並べられる。このため、第1ヨーク片および第2ヨーク片が軸部材の周方向にそれぞれ重複しない部分において周方向における第1ヨーク片と第2ヨーク片との間の間隔を小さくできる。このため、径方向のサイズを小型化できる。
【0007】
前記第2側面に従う第3側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記軸部材の周方向にそれぞれが重複しないように前記軸部材の中心軸と平行な方向に並べられる。
上記構成によれば、自転車用発電装置の径方向のサイズをさらに小型化できる。
【0008】
前記第1〜3側面のいずれか1つに従う第4側面の自転車用発電装置において、前記第1磁石および前記第2磁石は、前記軸部材の周方向においてそれぞれのS極とN極とが互い違いになるように配置される。
上記構成によれば、発電量を増加できる。
【0009】
前記第1〜第4側面のいずれか1つに従う第5側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片の数および前記第1磁石の極の数は等しく、前記第2ヨーク片の数および前記第2磁石の極の数は等しい。
上記構成によれば、発電量を増加できる。
【0010】
前記第1〜第5側面のいずれか1つに従う第6側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片の数および前記第2ヨーク片の数は等しく、前記第1磁石の極の数および前記第2磁石の極の数は等しい。
上記構成によれば、第1ヨークおよび第2ヨークの構造を共通化できる。また、第1磁石および第2磁石の構造を共通化できる。このため、自転車用発電装置の製造が容易になる。
【0011】
前記第1〜第6側面のいずれか1つに従う第7側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記軸部材の周方向において同一の位相に配置される。
上記構成によれば、周方向における第1ヨーク片および第2ヨーク片の間隔を小さくすることができるため、第1ヨーク片および第2ヨーク片の数を増やすことができる。このため、発電効率を向上できる。また、自転車用発電装置の径方向のサイズをさらに小型化できる。
【0012】
前記第1〜第7側面のいずれか1つに従う第8側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片は、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延びる第1部分、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延び、前記第1部分よりも前記軸部材の径方向の外側に配置される第2部分、および、前記軸部材の径方向に延びて前記第1部分の一方の端部と前記第2部分の一方の端部とを接続する第3部分を備え、前記第1部分、前記第2部分、および、前記第3部分に囲まれた部分に前記コイルが配置される。
上記構成によれば、第1ヨーク片によって形成される空間を有効に利用できる。また、コイルを第1ヨーク片から軸方向においてずれた場所に配置する場合と比較して、自転車用発電装置の軸方向のサイズを小型化できる。
【0013】
前記第8側面に従う第9側面の自転車用発電装置において、前記第2ヨーク片は、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延びる第4部分、前記軸部材の中心軸と平行な方向に延び、前記第4部分よりも前記軸部材の径方向の外側に配置される第5部分、および、前記軸部材の径方向に延びて前記第4部分の一方の端部と前記第5部分の一方の端部とを接続する第6部分を備え、前記第4部分、前記第5部分、および、前記第6部分に囲まれた部分に前記コイルが配置され、前記第1ヨーク片および前記第2ヨーク片は、前記第1ヨーク片の前記第2部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第5部分の他方の端部とが、前記軸部材の中心軸と平行な方向において並ぶ。
上記構成によれば、第2ヨーク片によって形成される空間を有効に利用できる。また、コイルを第2ヨーク片から軸方向においてずれた場所に配置する場合と比較して、自転車用発電装置の軸方向のサイズを小型化できる。
【0014】
前記第9側面に従う第10側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片の前記第2部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第5部分の他方の端部とは、電気的に絶縁される。
上記構成によれば、安定して発電できる。
【0015】
前記第10側面に従う第11側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片の前記第2部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第5部分の他方の端部とは、空隙によって絶縁される。
上記構成によれば、部品点数の削減に貢献できる。また、製造が簡単になる。
【0016】
前記第9〜第11側面に従う第12側面の自転車用発電装置において、前記第1ヨーク片は、前記第2ヨーク片とは別体に形成され、前記第1ヨーク片の前記第1部分の他方の端部と、前記第2ヨーク片の前記第4部分の他方の端部とは、互いに接触する。
上記構成によれば、第1ヨーク片と第2ヨーク片との間での磁力の伝達効率の低下を抑制できる。
【0017】
前記第〜第12側面のいずれか1つに従う第13側面の自転車用発電装置において、前記第ヨークは、前記軸部材の周方向に並ぶ2つ以上の前記第ヨーク片を含み、隣り合う2つの前記第ヨーク片の前記第部分の間の距離は、前記第1ヨーク片の前記軸部材の周方向の幅よりも大きい。
上記構成によれば、隣り合う第ヨーク片の第部分が接触しにくいため、自転車用発電装置の製造が容易になる。また、第ヨーク片の周方向の幅を小さくできるため、第ヨーク片の数を増やすことができる。このため、発電効率を向上できる。
【0018】
前記第〜第13側面のいずれか1つに従う第14側面の自転車用発電装置において、前記第ヨークは、前記軸部材の周方向に並ぶ2つ以上の前記第ヨーク片を含み、隣り合う2つの前記第ヨーク片の前記第部分の間の距離は、前記第2ヨーク片の前記軸部材の周方向の幅よりも大きい。
上記構成によれば、隣り合う第ヨーク片の第部分が接触しにくいため、自転車用発電装置の製造が容易になる。また、第ヨーク片の周方向の幅を小さくできるため、第ヨーク片の数を増やすことができる。このため、発電効率を向上できる。
【0019】
前記第1〜第14側面のいずれか1つに従う第15側面の自転車用発電装置において、前記電機子は、前記軸部材に設けられ、前記磁石は、前記回転体に設けられる。
上記構成によれば、電機子と接続される配線の構成を簡便なものにすることができる。
【0020】
前記第1〜第15側面のいずれか1つに従う第16側面の自転車用発電装置において、前記軸部材は、ハブ軸であり、前記回転体は、ハブシェルである。
上記構成によれば、ハブに設けられる自転車用発電装置の径方向のサイズを小型化できる。
【発明の効果】
【0021】
本自転車用発電装置は、径方向のサイズを小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態の自転車用発電装置の部分断面図。
図2図1の磁石および電機子の分解斜視図。
図3図1の電機子の平面図。
図4図1の一部を拡大して示す断面図。
図5図1の磁石の斜視図。
図6図1の6−6線に沿う断面図。
図7図1の7−7線に沿う断面図。
図8】変形例の電機子の平面図。
図9図8の絶縁部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1図7を参照して、ハブダイナモとして構成される自転車用発電装置について説明する。
図1に示されるとおり、自転車用発電装置10は、いわゆるクローポール型の発電機である。自転車用発電装置10は、軸部材12と、回転体14と、電機子16と、磁石18とを備える。自転車用発電装置10は、第1軸受20、第2軸受22、第1位置決部材24、および、第2位置決部材26をさらに備える。
【0024】
軸部材12は、ハブ軸である。軸部材12は、軸方向の両端部が自転車のフレームFに回転不能に支持される。回転体14は、ハブシェルである。回転体14は、軸部材12と同軸を有し、軸部材12と相対回転可能である。回転体14は、外周部に前輪のスポーク(図示略)と連結するためのフランジ14Aを備える。回転体14は、円筒形状を有する。第1軸受20および第2軸受22は、回転体14の内周部と軸部材12の外周部との間に設けられる。第1軸受20は、軸部材12の軸方向における一方の端部に設けられる。第2軸受22は、軸部材12の軸方向における他方の端部に設けられる。第1軸受20および第2軸受22は、回転体14を軸部材12に対して回転可能に支持する。
【0025】
電機子16は、軸部材12および回転体14の一方に設けられる。図1に示す自転車用発電装置10では、電機子16は、軸部材12に設けられる。電機子16は、軸部材12の外周部に、軸部材12に対して相対回転不能に設けられる。電機子16は、第1ヨーク28、第2ヨーク30、および、コイル32を有する。電機子16は、コイル32が巻き付けられるボビン34をさらに有する。
【0026】
図2に示されるとおり、第1ヨーク28は、少なくとも1つの第1ヨーク片36を含む。第1ヨーク28は、軸部材12の周方向に並ぶ2つ以上の第1ヨーク片36を含む。一例では、第1ヨーク28は、18個の第1ヨーク片36を含む。第1ヨーク片36は、軸部材12の周方向に等間隔に配置される。図3に示されるとおり、第1ヨーク片36は、ボビン34の凹部34Aに嵌め込まれることによって互いの位置関係が保持される。
【0027】
図4に示されるとおり、第1ヨーク片36はU字形状に形成される。第1ヨーク片36は、第1部分36A、第2部分36B、および、第3部分36Cを備える。第1部分36Aは、軸部材12の中心軸Cと平行な方向に延びる。第2部分36Bは、軸部材12の中心軸Cと平行な方向に延び、第1部分36Aよりも軸部材12の径方向の外側に配置される。第2部分36Bは、U字形状の底部側の端部から開口部側の端部に向かうにつれて細くなる。第3部分36Cは、軸部材12の径方向に延びて第1部分36Aの一方の端部と第2部分36Bの一方の端部とを接続する。第1部分36A、第2部分36B、および、第3部分36Cは、一体に形成されることが好ましい。第1ヨーク片36は、積層された磁性体によって形成されることが好ましい。図3に示されるとおり、隣り合う2つの第1ヨーク片36の第2部分36Bの間の距離LA1は、第1ヨーク片36の軸部材12の周方向の幅LA2よりも大きい。
【0028】
図2に示されるとおり、第2ヨーク30は、少なくとも1つの第2ヨーク片38を含む。第2ヨーク30は、軸部材12の周方向に並ぶ2つ以上の第2ヨーク片38を含む。一例では、第2ヨーク30は、18個の第2ヨーク片38を含む。第1ヨーク片36は、第2ヨーク片38とは別体に形成される。第1ヨーク片36の材料と第2ヨーク片38の材料とは、同一であることが好ましい。第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、同一の形状を有することが好ましい。第1ヨーク片36の数および第2ヨーク片38の数は等しい。第2ヨーク片38は、軸部材12の周方向に等間隔に配置される。図3に示されるとおり、第2ヨーク片38は、ボビン34の凹部34Aに嵌め込まれることによって互いの位置関係が保持される。
【0029】
図4に示されるとおり、第2ヨーク片38はU字形状に形成される。第2ヨーク片38は、第4部分38A、第5部分38B、および、第6部分38Cを備える。第4部分38Aは、軸部材12の中心軸Cと平行な方向に延びる。第5部分38Bは、軸部材12の中心軸Cと平行な方向に延び、第4部分38Aよりも軸部材12の径方向の外側に配置される。第5部分38Bは、U字形状の底部側の端部から開口部側の端部に向かうにつれて細くなる。第6部分38Cは、軸部材12の径方向に延びて第4部分38Aの一方の端部と第5部分38Bの一方の端部とを接続する。第4部分38A、第5部分38B、および、第6部分38Cは、一体に形成されることが好ましい。第2ヨーク片38は、積層された磁性体によって形成されることが好ましい。図3に示されるとおり、隣り合う2つの第2ヨーク片38の第5部分38Bの間の距離LB1は、第2ヨーク片38の軸部材12の周方向の幅LB2よりも大きい。
【0030】
図3に示されるとおり、第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、軸部材12の中心軸Cと平行な方向に並べられる。第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、軸部材12の周方向にそれぞれが重複しないように軸部材12の中心軸Cと平行な方向に並べられる。第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、軸部材12の周方向において同一の位相に配置される。第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、互いのU字形状の開口部が対向するように軸方向に対称にボビン34に保持される。
【0031】
図4に示されるとおり、第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、第1ヨーク片36の第2部分36Bの他方の端部と、第2ヨーク片38の第5部分38Bの他方の端部とが、軸部材12の中心軸Cと平行な方向において並ぶ。第1ヨーク片36の第2部分36Bの他方の端部と、第2ヨーク片38の第5部分38Bの他方の端部とは、電気的に絶縁される。第1ヨーク片36の第2部分36Bの他方の端部と、第2ヨーク片38の第5部分38Bの他方の端部とは、空隙Sによって絶縁される。第1ヨーク片36の第1部分36Aの他方の端部と、第2ヨーク片38の第4部分38Aの他方の端部とは、互いに接触する。このため、第1ヨーク片36の第1部分36Aと第2ヨーク片38の第4部分38Aとは連続する。
【0032】
コイル32は、第1部分36A、第2部分36B、および、第3部分36Cに囲まれた部分に配置される。コイル32は、第4部分38A、第5部分38B、および、第6部分38Cに囲まれた部分に配置される。具体的には、コイル32は、ボビン34の外周部と第1ヨーク片36の第2部分36Bおよび第2ヨーク片38の第5部分38Bとの間に配置される。コイル32は、ボビン34の外周部に巻き付けられている。
【0033】
図1に示す第1位置決部材24は、環状に形成される。第1位置決部材24は、軸部材12に嵌め込まれる。第1位置決部材24は、電機子16の一方の端部に取り付けられて、電機子16の軸方向の移動を規制する。第2位置決部材26は、軸部材12に嵌め込まれる。第2位置決部材26は、電機子16の他方の端部に取り付けられて、電機子16の軸方向の移動を規制する。
【0034】
図1および図2に示されるとおり、磁石18は、電機子16と相対回転可能に軸部材12および回転体14の他方に設けられ、極が周方向に並ぶ。図1に示す自転車用発電装置10では、磁石18は、回転体14に設けられる。磁石18は、回転体14に対して相対回転不能に回転体14の内周部に設けられる。
【0035】
図5に示されるとおり、磁石18は、第1磁石40および第2磁石42を有する。
第1磁石40は、円筒形状の第1支持部材44の内周部に複数の磁石40Aが取り付けられることによって形成される。第1支持部材44は、マーカ44Aを含む。マーカ44Aは、例えば第1支持部材44の縁に形成される切欠である。第1磁石40の軸部材12の軸方向の長さは、第1ヨーク片36の第2部分36Bの軸方向の長さ以上であることが好ましい。第1磁石40は、ネオジウム磁石であることが好ましい。第1磁石40は、焼結磁石であることが好ましいが、ボンド磁石であってもよい。
【0036】
第2磁石42は、円筒形状の第2支持部材46の内周部に複数の磁石42Aが取り付けられることによって形成される。第2支持部材46は、マーカ46Aを含む。マーカ46Aは、例えば第2支持部材46の縁に形成される切欠である。第2磁石42の軸部材12の軸方向の長さは、第2ヨーク片38の第5部分38Bの軸方向の長さ以上であることが好ましい。第2磁石42は、ネオジウム磁石であることが好ましい。第2磁石42は、焼結磁石であることが好ましいが、ボンド磁石であってもよい。
【0037】
図5に示されるとおり、第1磁石40および第2磁石42は、第1磁石40の極と第2磁石42の極とが軸部材12の周方向においてずれるように配置される。第1磁石40および第2磁石42は、軸部材12の周方向においてそれぞれのS極とN極とが互い違いになるように配置される。このため、軸部材12の軸方向において、第1磁石40のS極と第2磁石42のS極とは並ばず、第1磁石40のN極と第2磁石42のN極とは並ばない。第1磁石40および第2磁石42は、回転体14への組み付け時に、第1支持部材44のマーカ44Aと第2支持部材46のマーカ46Aとが同一の位相に合わせられる。これによって、軸部材12の周方向においてそれぞれのS極とN極とが互い違いになるように配置される。
【0038】
図6に示されるとおり、第1磁石40は、軸部材12の径方向において第1ヨーク片36と対向可能である。第1ヨーク片36の数および第1磁石40の極の数は等しい。図7に示されるとおり、第2磁石42は、軸部材12の径方向において第2ヨーク片38と対向可能である。第2ヨーク片38の数および第2磁石42の極の数は等しい。第1磁石40の極の数および第2磁石42の極の数は等しい。
【0039】
図4の矢印は、自転車用発電装置10に生じる磁界を示す。図4に示す第1ヨーク片36および第2ヨーク片38の磁力線は、第1磁石40のN極から第1ヨーク片36の第2部分36B、第3部分36C、第1部分36A、第2ヨーク片38の第4部分38A、第6部分38C、第5部分38B、および、第2磁石42のS極に伝達される。図4に示す第1ヨーク片36および第2ヨーク片38と周方向において隣り合う第1ヨーク片36および第2ヨーク片38の磁力線の方向は、図4に示す第1ヨーク片36および第2ヨーク片38の磁力線と反対になる。第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、軸部材12の軸方向に並んで配置されるため、自転車用発電装置10に生じる磁界は、軸部材12の軸方向と平行する平面においてループする磁力線を形成することができる。
【0040】
図3を参照して、自転車用発電装置10の作用について説明する。
自転車用発電装置10は、周方向において第1ヨーク片36および第2ヨーク片38が軸部材12の周方向にそれぞれが重複しないように軸部材12の中心軸Cと平行な方向に並べられるため、周方向における第1ヨーク片36の間隔、および、周方向における第2ヨーク片38の間隔を小さくすることができる。このため、第1ヨーク片36および第2ヨーク片38が周方向において互い違いに配置される構成と比較して、第1ヨーク片36および第2ヨーク片38の数、および、磁石18の極数を増やすことができる。このため、自転車用発電装置10の径方向のサイズを小さくしても発電量が低下することを抑制できる。
【0041】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従う自転車用発電装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う自転車用発電装置は、例えば以下に示される上記実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
・第1ヨーク片36の第2部分36Bの他方の端部と、第2ヨーク片38の第5部分38Bの他方の端部とを絶縁体で絶縁することもできる。図8に示す電機子16Aは、2つ以上の絶縁部材48をさらに備える。各絶縁部材48は、絶縁体によって形成される。各絶縁部材48は、例えば樹脂材料を含む。各絶縁部材48は、第1ヨーク部分48A、第2ヨーク部分48B、および、中間部分48Cを備える。第1ヨーク部分48Aは、周方向において隣り合う第1ヨーク片36の第2部分36Bの間に嵌め込まれる。第2ヨーク部分48Bは、周方向において隣り合う第2ヨーク片38の第5部分38Bの間に嵌め込まれる。中間部分48Cは、第1ヨーク片36の第2部分36Bと第2ヨーク片38の第5部分38Bとの間に嵌め込まれる。図9に示されるとおり、中間部分48Cは、複数の第1ヨーク部分48Aおよび複数の第2ヨーク部分48Bを接続する。2つ以上の絶縁部材48が第1ヨーク片36と第2ヨーク片38との間に嵌め込まれることによって電機子16Aの全周において第1ヨーク片36の第2部分36Bの他方の端部と、第2ヨーク片38の第5部分38Bの他方の端部とが絶縁体で絶縁される。
【0043】
・ボビン34に肉抜きを設けてもよい。図8に示されるボビン34は、軸方向の端部に肉抜き34Bが設けられる。肉抜き34Bは、隣り合う凹部34Aの間の部分に設けられる。肉抜き34Bは、隣り合う凹部34Aの間の部分の全てに設けられてもよく、一部のみに設けられてもよい。
【0044】
・第1磁石40の極の数と第1ヨーク片36の数とを異ならせてもよい。また、第2磁石42の極の数と第2ヨーク片38の数とを異ならせてもよい。
・第1ヨーク片36の数と第2ヨーク片38の数とを異ならせてもよい。この場合、第1磁石40の極の数を第1ヨーク片36の数と等しくし、第2磁石42の極の数を第2ヨーク片38の数と等しくし、第1磁石40の極の数と第2磁石42の極の数とを異ならせてもよい。
【0045】
・隣り合う2つの第1ヨーク片36の第2部分36Bの間の距離LA1は、第1ヨーク片36の軸部材12の周方向の幅LA2以下にしてもよい。
・隣り合う2つの第2ヨーク片38の第5部分38Bの間の距離LB1は、第2ヨーク片38の軸部材12の周方向の幅LB2以下にしてもよい。
【0046】
・第1ヨーク片36および第2ヨーク片38を一体に形成してもよい。
・第1ヨーク片36および第2ヨーク片38を、軸部材12の周方向においてずらして配置してもよい。
・軸部材12の軸方向において向かい合う第1ヨーク片36と第2ヨーク片38とが接触するのではなく、軸部材12の周方向においてずれて配置される第1ヨーク片36と第2ヨーク片38とが接触してもよい。例えば、軸部材12の周方向において1ピッチずれた第1ヨーク片36の第2部分36Bおよび第2ヨーク片38の第5部分38Bを有する第1ヨーク片36および第2ヨーク片38が接触する。具体的には、第1ヨーク片36の第1部分36Aが、第3部分36Cから第2ヨーク片38に向かうにつれて周方向の一方向に傾斜するように配置される。また、第2ヨーク片38の第4部分38Aが、第6部分38Cから第1ヨーク片36に向かうにつれて周方向の他方向に傾斜するように配置される。この場合、第1磁石40の極および第2磁石42の極は、軸部材12の周方向においてそれぞれのS極とN極とが全部重複するように配置することができる。この場合、第1磁石40と第2磁石42とを一体に形成することもできる。
【0047】
・第1ヨーク片36および第2ヨーク片38は、軸部材12の周方向にそれぞれが一部重複するように軸部材12の中心軸Cと平行な方向に並べられてもよい。この場合、例えば、一部の第1ヨーク片36の第2部分36Bの他方の端部が、一部の第2ヨーク片38の第5部分38Bの他方の端部よりも第2ヨーク片38の第6部分38C側に位置する。
【0048】
・第1磁石40の極および第2磁石42の極は、軸部材12の周方向においてそれぞれのS極とN極とが一部または全部重複するように配置されてもよい。また、第1磁石40の各磁石40Aの周方向の幅および第2磁石42の各磁石42Aの周方向の幅の少なくとも一方を小さくし、各磁石40A,42Aを周方向において離して配置することもできる。
【0049】
・第1磁石40および第2磁石42の少なくとも一方は、支持部材44,46、または、回転体14の内周部に着磁することによって形成されてもよい。また、第1磁石40および第2磁石42の少なくとも一方は、支持部材44,46を省略し、回転体14に直接的に取り付けられてもよい。
【0050】
・支持部材44,46のマーカ44A,46Aは、支持部材44,46の外周部から径方向の外側に突出する凸部および凹部の一方であってもよい。この場合、回転体14の内周部に凸部および凹部の一方が嵌め込まれる凹部および凸部の他方が形成される。
【0051】
・電機子16を回転体14に設け、磁石18を軸部材12に設けることもできる。この場合、電機子16に生じた電流は、スリップリングを介して外部に出力するようにしてもよい。
【0052】
・自転車用発電装置10は、後輪のハブに設けられてもよい。また、クランク軸、変速機に設けられてもよい。要するに、軸部材と回転体とを備える自転車のコンポーネントであれば、いずれのコンポーネントにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0053】
10…自転車用発電装置、12…軸部材、14…回転体、16…電機子、18…磁石、28…第1ヨーク、30…第2ヨーク、32…コイル、36…第1ヨーク片、36A…第1部分、36B…第2部分、36C…第3部分、38…第2ヨーク片、38A…第4部分、38B…第5部分、38C…第6部分、40…第1磁石、42…第2磁石、S…空隙。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9