特許第6974041号(P6974041)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974041飲料、飲料ベース、飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、オレンジフラワー様の香気の付与方法
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  • 特許6974041-飲料、飲料ベース、飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、オレンジフラワー様の香気の付与方法 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974041
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】飲料、飲料ベース、飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、オレンジフラワー様の香気の付与方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/00 20060101AFI20211118BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20211118BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20211118BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20211118BHJP
【FI】
   A23L2/00 B
   A23L2/56
   C12G3/06
   A23L2/38 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-111978(P2017-111978)
(22)【出願日】2017年6月6日
(65)【公開番号】特開2018-201431(P2018-201431A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】303040183
【氏名又は名称】サッポロビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 一樹
【審査官】 茅根 文子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−261895(JP,A)
【文献】 特開2010−000049(JP,A)
【文献】 特開2014−187966(JP,A)
【文献】 特開平10−042824(JP,A)
【文献】 特開2005−015686(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/017788(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/103596(WO,A1)
【文献】 特開昭50−077597(JP,A)
【文献】 特開2006−241063(JP,A)
【文献】 特表2013−543863(JP,A)
【文献】 特開昭63−188374(JP,A)
【文献】 Orange Flower Water,Mintel GNPD [online],2015年12月,ID#: 3607813,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/3607813/,検索日2021.04.13
【文献】 Orange Flower Water,Mintel GNPD [online],2014年08月,ID#: 2605003,https://www.gnpd.com/sinatra/recordpage/2605003/,検索日2021.04.13
【文献】 Nutrition and Food Sciences Research,2016年,Vol. 3, No. 1,pp. 43-50
【文献】 3・2・28 オレンジフラワー Orange Flower,特許庁公報 周知・慣用技術集(香料) 第III部 香粧品用香料,pp. 444-449,日本国特許庁,2001年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00−2/84
C12G 1/00−3/08
C12H 1/00−6/04
C12C 1/00−13/10
C12F 3/00−5/00
C12J 1/00−1/10
C12L 3/00−11/00
A23F 3/00−5/50
CAplus/REGISTRY(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リナロールとメチルアントラニレートとを含有し、
前記リナロールの含有量をAppbとし、前記メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bが0.04〜200であり、
Aが30〜35000であり、Bが10〜1500である飲料(ただし、茶飲料を除く)
【請求項2】
前記リナロールの含有量をAppbとし、前記メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bが0.06〜150である請求項1に記載の飲料。
【請求項3】
リナロールとメチルアントラニレートとを含有し、
前記リナロールの含有量をXppbとし、前記メチルアントラニレートの含有量をYppbとし、希釈倍率をD倍とした場合、X/Yが0.04〜200であり、X/Dが30〜35000であり、Y/Dが10〜1500である飲料ベース(ただし、茶飲料を除く)
【請求項4】
リナロールの含有量をAppbとし、メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bを0.04〜200とし、Aを30〜35000とし、Bを10〜1500とする工程を含む飲料(ただし、茶飲料を除く)の製造方法。
【請求項5】
リナロールの含有量をXppbとし、メチルアントラニレートの含有量をYppbとし、希釈倍率をD倍とした場合、X/Yを0.04〜200とし、X/Dを30〜35000とし、Y/Dを10〜1500とする工程を含む飲料ベース(ただし、茶飲料を除く)の製造方法。
【請求項6】
飲料(ただし、茶飲料を除く)へのオレンジフラワー様の香気の付与方法であって、
前記飲料について、リナロールの含有量をAppbとし、メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bを0.04〜200とし、Aを30〜35000とし、Bを10〜1500とするオレンジフラワー様の香気の付与方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料、飲料ベース、飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、オレンジフラワー様の香気の付与方法に関する。
【背景技術】
【0002】
柑橘類の果実はフレッシュでフルーティな香味を呈し、多くの人に好まれることから、飲料に幅広く使用されている。そして、これまでにも、柑橘類の果実の風味を呈する飲料の味や香りについて、研究開発が進められてきた。
【0003】
例えば、特許文献1には、シトラール、リモネン、γ−テルピネン、およびα−テルピノレンを含む、レモン風味飲料であって、該飲料中のリモネンと、γ−テルピネンと、α−テルピノレンとの合計含有量(ppm)(Y)と、レモン風味飲料の製造後の経過日数(日)(X)との関係が、X≧0およびY≧0であり、かつ−0.0047X+0.89≦Y≦−0.021X+10.35である、飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−123008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係る技術をはじめとして、柑橘類の果実の風味を呈する飲料に関する従来の技術は、果実の風味に着目して開発がなされてきた。
しかしながら、消費者の嗜好性が多様化していることから、この嗜好性の多様化に対応すべく、柑橘類の風味について、より詳細に検討して商品の開発を行う必要がある。
【0006】
本発明者は、オレンジ(ネーブル)の花を千切った際に放出される香気に鮮烈な印象を受けたため、オレンジという植物の中でも、オレンジの果実ではなく、オレンジの花(特に花弁:以下、適宜「オレンジフラワー」という)の香気を呈する飲料を創出できれば、消費者の多様なニーズの1つに対応できるのではと考えた。
【0007】
そこで、本発明は、オレンジフラワー様の香気を呈する飲料、オレンジフラワー様の香気を呈する飲料ベース、オレンジフラワー様の香気を呈する飲料の製造方法、オレンジフラワー様の香気を呈する飲料ベースの製造方法、及び、オレンジフラワー様の香気の付与方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、実際にオレンジ(ネーブル)の花弁から数多くの物質を抽出し、これらの物質を単独、又は、組み合わせて、飲料に付与される香気の特徴を検討した結果、オレンジフラワー様の香気とするために必要となる物質を特定し、本発明を創出した。
【0009】
前記課題は、以下の手段により解決することができる。
(1)リナロールとメチルアントラニレートとを含有し、前記リナロールの含有量をAppbとし、前記メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bが0.04〜200であり、Aが30〜35000であり、Bが10〜1500である飲料(ただし、茶飲料を除く)
(2)前記リナロールの含有量をAppbとし、前記メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bが0.06〜150である前記1に記載の飲料。
)リナロールとメチルアントラニレートとを含有し、前記リナロールの含有量をXppbとし、前記メチルアントラニレートの含有量をYppbとし、希釈倍率をD倍とした場合、X/Yが0.04〜200であり、X/Dが30〜35000であり、Y/Dが10〜1500である飲料ベース(ただし、茶飲料を除く)
)リナロールの含有量をAppbとし、メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bを0.04〜200とし、Aを30〜35000とし、Bを10〜1500とする工程を含む飲料(ただし、茶飲料を除く)の製造方法。
)リナロールの含有量をXppbとし、メチルアントラニレートの含有量をYppbとし、希釈倍率をD倍とした場合、X/Yを0.04〜200とし、X/Dを30〜35000でとし、Y/Dを10〜1500とする工程を含む飲料ベース(ただし、茶飲料を除く)の製造方法。
)飲料(ただし、茶飲料を除く)へのオレンジフラワー様の香気の付与方法であって、前記飲料について、リナロールの含有量をAppbとし、メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bを0.04〜200とし、Aを30〜35000とし、Bを10〜1500とするオレンジフラワー様の香気の付与方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る飲料は、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率が所定範囲内となっていることから、オレンジフラワー様の香気を発揮する。
【0011】
本発明に係る飲料ベースは、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率が所定範囲内となっていることから、希釈後の飲料がオレンジフラワー様の香気を発揮する。
【0012】
本発明に係る飲料の製造方法は、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を所定範囲内とする工程を含むことから、オレンジフラワー様の香気を呈する飲料を製造することができる。
【0013】
本発明に係る飲料ベースの製造方法は、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を所定範囲内とする工程を含むことから、希釈後の飲料がオレンジフラワー様の香気を呈する飲料ベースを製造することができる。
【0014】
本発明に係るオレンジフラワー様の香気の付与方法は、飲料のリナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を所定範囲内とすることから、飲料にオレンジフラワー様の香気を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る飲料の製造方法の内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る飲料、飲料ベース、飲料の製造方法、飲料ベースの製造方法、及び、オレンジフラワー様の香気の付与方法を実施するための形態(実施形態)について説明する。
【0017】
[飲料]
本実施形態に係る飲料は、リナロールとメチルアントラニレートとを含有し、オレンジフラワー様の香気を呈する飲料である。
なお、このオレンジとは、ネーブルオレンジに限らず、清見オレンジ、みかん等、ミカン科ミカン属に属するものをいう。
【0018】
(リナロール)
リナロール(linalool)とは、モノテルペンアルコールの一種である。そして、リナロールは、メチルアントラニレートと組み合わさって、飲料の香気をオレンジフラワー様の香気とするために必要となる物質であり、特に、オレンジらしい香気の付与に強く寄与する物質である。
【0019】
本実施形態に係る飲料のリナロールの含有量は、30ppb以上が好ましく、50ppb以上がより好ましく、500ppb以上がさらに好ましい。リナロールの含有量が所定値以上であることにより、飲料の香気をオレンジフラワー様の香気とすることができる。
また、本実施形態に係る飲料のリナロールの含有量は、35000ppb以下が好ましく、20000ppb以下がより好ましく、10000ppb以下がさらに好ましい。リナロールの含有量が所定値以下であることにより、飲料の香気のオレンジらしさが強くなり過ぎてしまうことで、花らしさが低下し、オレンジフラワー様の香気とならなくなるといった事態を回避することができる。
【0020】
(メチルアントラニレート)
メチルアントラニレート(methylanthranilate:アントラニル酸メチルともいう)とは、アントラニル酸とメタノールとのエステルである。そして、メチルアントラニレートは、飲料の香気をオレンジフラワー様の香気とするために必要となる物質であり、特に、リナロールとの組み合わせによって、華やかな香気を強くしてオレンジフラワー様の香気とする(香気を付与する)ことができる。
【0021】
本実施形態に係る飲料のメチルアントラニレートの含有量は、10ppb以上が好ましく、50ppb以上がより好ましく、100ppb以上がさらに好ましい。メチルアントラニレートの含有量が所定値以上であることにより、リナロールと組み合わさって、華やかな香気を強くし、飲料の香気をオレンジフラワー様の香気とすることができる。
また、本実施形態に係る飲料のメチルアントラニレートの含有量は、1500ppb以下が好ましく、1000ppb以下がより好ましく、800ppb以下がさらに好ましい。メチルアントラニレートの含有量が所定値以下であることにより、飲料の香気がバランスの悪い香気になるといった事態を回避することができる。
【0022】
(リナロールの含有量/メチルアントラニレートの含有量)
リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を特定することにより、リナロールとメチルアントラニレートとが好適に相互に作用し、飲料の香気をバランスのとれたオレンジフラワー様の香気とすることができる。詳細には以下のとおりである。
本実施形態に係る飲料のリナロールの含有量をAppbとし、メチルアントラニレートの含有量をBppbとした場合、A/Bは、0.04以上であり、0.06以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。A/Bが所定値以上であることにより、飲料のオレンジフラワー様の香気に必要となるオレンジらしい香気を強くすることができる。
また、A/Bは、200以下であり、150以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。A/Bが所定値以下であることにより、オレンジフラワー様の香気に必要となる華やかな香気を強くすることができる。
【0023】
本実施形態に係る飲料において、前記したリナロール、メチルアントラニレートの含有量は、以下の方法によって測定することができる。
試料をジクロロメタンで抽出し、対象成分を濃縮した後、例えば、Agilent社製GC/MS(GC:7890A、MS:5975C inert XL)により定量することができる。GC/MSの条件は次の通りである。まず、オーブンを40℃で2分間保持した後、2℃/分にて200℃まで昇温し、48分間保持する。注入口温度は250℃とし、スプリット比は10:1とする。カラムはDB-WAX(Agilent社製、内径0.25mm、膜厚0.25μm、カラム長60m)を用い、キャリアガスはヘリウムを1.2ml/分で流す。MSのインターフェース温度は280℃、イオン源温度は230℃とすればよい。
なお、本明細書において1ppbとは、詳細には1×10−7w/w%である。
【0024】
(アルコール)
本実施形態に係る飲料は、アルコールを含有してもよい。
アルコールは飲用することができるアルコールであればよく、種類、製法、原料などに限定されることがないが、蒸留酒又は醸造酒であることが好ましい。蒸留酒としては、例えば、焼酎、ブランデー、ウォッカ、ウイスキー等の各種スピリッツ、原料用アルコール等が挙げられ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。醸造酒としては、例えば、ビール、発泡酒、果実酒、甘味果実酒などを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本明細書においてアルコールとは、特に明記しない限り、エタノールのことをいう。
【0025】
(アルコール度数)
本実施形態に係る飲料のアルコール度数は、特に限定されないが、アルコール飲料とする場合は、1v/v%以上であることが好ましく、3v/v%以上であることがさらに好ましい。また、本実施形態に係る飲料のアルコール度数は、20v/v%以下であることが好ましく、10v/v%以下であることがさらに好ましい。
そして、アルコール度数は、前記の飲用のアルコールの含有量によって調節することができる。
本実施形態に係る飲料のアルコール度数は、例えば、国税庁所定分析法(訓令)3清酒3−4アルコール分(振動式密度計法)に基づいて測定することができる。
【0026】
(発泡性)
本実施形態に係る飲料は、非発泡性であっても、発泡性であってもよい。ここで、本実施形態における発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2以上であることをいい、非発泡性とは、20℃におけるガス圧が0.5kg/cm2未満であることをいう。
【0027】
(その他)
本実施形態に係る飲料は、本発明の所望の効果が阻害されない範囲で飲料として通常配合される甘味料、高甘味度甘味料、酸化防止剤、香料、酸味料、塩類、食物繊維、果汁など(以下、適宜「添加剤」という)を添加することもできる。甘味料としては、例えば、果糖ぶどう糖液糖、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、ラクトース、スクロース、マルトース、グリコーゲンやデンプンなどを用いることができる。高甘味度甘味料としては、例えば、ネオテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、サッカリン、サッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、チクロ、ズルチン、ステビア、グリチルリチン、ソーマチン、モネリン、アスパルテーム、アリテームなどを用いることができる。酸化防止剤としては、例えば、ビタミンC、ビタミンE、ポリフェノールなどを用いることができる。酸味料としては、例えば、アジピン酸、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸などを用いることができる。塩類としては、例えば、食塩、酸性りん酸カリウム、酸性りん酸カルシウム、りん酸アンモニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、メタ重亜硫酸カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸カリウム、硫酸アンモニウムなどを用いることができる。食物繊維としては、例えば、難消化性デキストリン、ペクチン、ポリデキストロース、グアーガム分解物などを用いることができる。果汁としては、例えば、濃縮果汁、還元果汁、ストレート果汁といった各種果汁、果実ピューレ(火を通した果実あるいは生の果実をすりつぶしたり裏ごししたりした半液体状のもの)、これらの希釈液、濃縮液、混合液などを用いることができる。さらに、果汁は、オレンジ(ネーブル等)のみを原料としてもよいし、オレンジ以外にさらに1種類以上の果実を原料としてもよい。
【0028】
そして、前記したリナロール、メチルアントラニレート、アルコール、添加剤は、一般に市販されているものを使用することができる。
なお、リナロール、メチルアントラニレートは、如何なる製造方法によって得られたものでもよいが、例えば、オレンジの花弁から溶剤抽出(エタノール等による抽出)によって得られたものを使用してもよい。
【0029】
本実施形態に係る飲料は、香気をオレンジフラワー様とするための有効成分としてリナロール、メチルアントラニレートを含有するが、これら以外の香気成分(飲料に香気を付与するために添加される成分)を本発明の所望の効果が阻害されない範囲で含有してもよい。
なお、本実施形態に係る飲料とは、例えば、ニアウォーター、炭酸飲料、アルコール飲料等が挙げられるが、通常、これらの飲料に含まれる各成分(香気成分を除いた成分)は、飲料の香気に大きな影響を与えない。
【0030】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料は、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率が所定範囲内となっていることから、オレンジフラワー様の香気を発揮する。
【0031】
[飲料ベース]
本実施形態に係る飲料ベースは、後記する割り材で希釈されることにより前記の飲料とすることができる。
なお、本実施形態に係る飲料ベースは、消費者や飲食店などに提供されるに際して、飲料ベースの状態(RTS:Ready To Serve)で提供された後に割り材で希釈されてもよいし、飲料ベースを割り材で希釈した後に飲料の状態(RTD:Ready To Drink)で提供されてもよい。
【0032】
以下、本実施形態に係る飲料ベースを説明するに際して、前記の飲料と共通する構成については説明を省略し、相違する構成(特に含有量等)を中心に説明する。
【0033】
(リナロール)
本実施形態に係る飲料ベースのリナロールの含有量をXppbとし、希釈倍率をD倍とした場合、X/Dは30以上が好ましく、50以上がより好ましく、500以上がさらに好ましい。また、X/Dは35000以下が好ましく、20000以下がより好ましく、10000以下がさらに好ましい。
【0034】
(メチルアントラニレート)
本実施形態に係る飲料ベースのメチルアントラニレートの含有量をYppbとし、希釈倍率をD倍とした場合、Y/Dは10以上が好ましく、50以上がより好ましく、100以上がさらに好ましい。また、Y/Dは、1500以下が好ましく、1000以下がより好ましく、800以下がさらに好ましい。
【0035】
(リナロールの含有量/メチルアントラニレートの含有量)
本実施形態に係る飲料ベースのリナロールの含有量をXppbとし、メチルアントラニレートの含有量をYppbとした場合、X/Yは、0.04以上であり、0.06以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。また、X/Yは、200以下であり、150以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましい。
【0036】
(アルコール度数)
本実施形態に係る飲料ベースのアルコール度数は特に限定されないが、飲料ベースのアルコール度数をEv/v%とし、希釈倍率をD倍とした場合、E/Dは、1以上であることが好ましく、3以上であることがさらに好ましい。また、E/Dは、20以下であることが好ましく、10以下であることがさらに好ましい。
【0037】
(割り材)
割り材とは、本実施形態に係る飲料ベースの希釈に用いるものである。
割り材としては、例えば、アルコール、水、炭酸水、お湯、氷、牛乳、茶等を挙げることができ、これらのうちの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、割り材を用いた希釈は、本実施形態に係る飲料ベースが1.2〜20倍、好ましくは1.5〜10倍、さらに好ましくは2〜5倍となるように実施すればよい。
【0038】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料ベース(希釈倍率:D倍用)は、X/Yが所定範囲内となっている、言い換えると、希釈後(飲用時)の飲料のリナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率が所定範囲内となっている。その結果、希釈後の飲料がオレンジフラワー様の香気を発揮する。
【0039】
[容器詰め飲料、及び、容器詰め飲料ベース]
本実施形態に係る飲料、及び、飲料ベースは、各種容器に入れて提供することができる。各種容器に飲料又は飲料ベースを詰めることにより、長期間の保管による品質の劣化を好適に防止することができる。
なお、容器は密閉できるものであればよく、金属製(アルミニウム製又はスチール製など)のいわゆる缶容器・樽容器を適用することができる。また、容器は、ガラス容器、ペットボトル容器、紙容器、パウチ容器などを適用することもできる。容器の容量は特に限定されるものではなく、現在流通しているどのようなものも適用することができる。なお、気体、水分および光線を完全に遮断し、長期間常温で安定した品質を保つことが可能な点から、金属製の容器を適用することが好ましい。
また、各種容器に飲料ベースを詰める場合は、その容器に、前記した割り材等によって希釈して飲んでもよい旨の表示(例えば、希釈倍率等)を付してもよい。
【0040】
[飲料、及び、飲料ベースの製造方法]
次に、本実施形態に係る飲料、及び、飲料ベースの製造方法を説明する。
本実施形態に係る飲料、及び、飲料ベースの製造方法は、混合工程S1と、後処理工程S2と、を含む。
【0041】
混合工程S1では、混合タンクに、水、リナロール、メチルアントラニレート、飲用アルコール、添加剤などを適宜投入して混合後液を製造する。
この混合工程S1において、リナロールの含有量、メチルアントラニレートの含有量、A/B、X/Y、X/D、Y/D等が前記した所定範囲内となるように各原料を混合し、調整すればよい。
【0042】
そして、後処理工程S2では、例えば、ろ過、殺菌、容器への充填などの処理を必要に応じて選択的に行う。
なお、後処理工程S2のろ過処理は、一般的なフィルター又はストレーナーによって行うことができる。また、後処理工程S2の殺菌処理は、処理速度等の観点から、プレート殺菌によって行うのが好ましいが、同様の処理を行うことができるのであればこれに限定されることなく適用可能である。また、後処理工程S2の充填処理は、飲料品の製造において通常行われる程度にクリーン度を保ったクリーンルームにて充填するのが好ましい。
【0043】
なお、混合工程S1及び後処理工程S2にて行われる各処理は、ソフトドリンク、RTD、RTS飲料などを製造するために一般的に用いられている設備にて行うことができる。
また、混合工程S1の前に、オレンジの花弁から溶剤抽出等によってリナロール、メチルアントラニレートを抽出する抽出工程を設けてもよい。
【0044】
以上説明したように、本実施形態に係る飲料の製造方法は、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を所定範囲内とする工程を含むことから、オレンジフラワー様の香気を呈する飲料を製造することができる。
また、本実施形態に係る飲料ベースの製造方法は、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を所定範囲内とする工程を含むことから、希釈後の飲料がオレンジフラワー様の香気を呈する飲料ベースを製造することができる。
【0045】
[オレンジフラワー様の香気の付与方法]
次に、本実施形態に係るオレンジフラワー様の香気の付与方法を説明する。
本実施形態に係るオレンジフラワー様の香気の付与方法は、飲料について、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を所定範囲内とする。
なお、各成分の含有量や比率の値については、前記した「飲料」において説明した値と同じである。
【0046】
以上説明したように、本実施形態に係るオレンジフラワー様の香気の付与方法は、飲料のリナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率を所定範囲内とすることから、飲料にオレンジフラワー様の香気を付与することができる。
【実施例】
【0047】
次に、本発明の要件を満たす実施例とそうでない比較例とを例示して、本発明について説明する。
【0048】
[実施例1]
まず、実施例1では、リナロールの含有量、メチルアントラニレートの含有量、両者の含有量の比率が、各評価に与える影響について確認する。
【0049】
(サンプルの準備)
リナロール、メチルアントラニレート、蒸留水を混合してサンプル液を準備した。
【0050】
(試験内容)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された専門のパネル3名が下記評価基準に則って「オレンジらしさ(オレンジの果実らしさ)」、「オレンジの花らしさ」、「総合評価」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
なお、いずれの試験も、サンプルを飲まずに香りを確認(いわゆるトップノートを確認)して評価を行った。
【0051】
(オレンジらしさ:評価基準)
5点:オレンジらしい香りが非常に強かった。
4点:オレンジらしい香りが強かった。
3点:オレンジらしい香りがした。
2点:オレンジらしい香りが僅かにした。
1点:オレンジらしい香りがしなかった。
【0052】
(オレンジの花らしさ:評価基準)
5点:オレンジの花らしい香りが非常に強かった。
4点:オレンジの花らしい香りが強かった。
3点:オレンジの花らしい香りがした。
2点:オレンジの花らしい香りが僅かにした。
1点:オレンジの花らしい香りがしなかった。
【0053】
(総合評価:評価基準)
5点:オレンジらしい香りとオレンジの花らしい香りのバランスが非常にとれていた。
4点:オレンジらしい香りとオレンジの花らしい香りのバランスがとれていた。
3点:オレンジらしい香りとオレンジの花らしい香りのバランスがある程度とれていた。
2点:オレンジらしい香りとオレンジの花らしい香りのバランスが若干とれていなかった。
1点:オレンジらしい香りとオレンジの花らしい香りのバランスが全くとれていなかった。
【0054】
表1、2に、各サンプルの規格を示すとともに、各評価の結果を示す。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
(結果の検討)
サンプル1−1〜1−7の結果を確認すると明らかなように、メチルアントラニレートの含有量が多くなると、オレンジの花らしさが強くなることが確認できた。詳細には、サンプル1−2〜1−7のオレンジの花らしさの点数が2.0以上となり、サンプル1−4〜1−7のオレンジの花らしさの点数が3.0以上となっていた。
また、サンプル1−1〜1−7の結果を確認すると明らかなように、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率が所定範囲内である場合には、総合評価の点数が良く、バランスのよい香気が感じられることが確認できた。詳細には、サンプル1−2〜1−7の総合評価の点数が2.0以上となり、サンプル1−3〜1−6の総合評価の点数が2.5以上となっていた。
【0058】
サンプル2−1〜2−7の結果を確認すると明らかなように、リナロールの含有量が多くなると、オレンジらしさが強くなることが確認できた。詳細には、サンプル2−2〜2−7のオレンジらしさの点数が2.0以上となっていた。
また、サンプル2−1〜2−7の結果を確認すると明らかなように、リナロールの含有量とメチルアントラニレートの含有量との比率が所定範囲内である場合には、総合評価の点数が良く、バランスのよい香気が感じられることが確認できた。詳細には、サンプル2−2〜2−7の総合評価の点数が2.0以上となり、サンプル2−3〜2−6の総合評価の点数が3.0以上となっていた。
【0059】
[実施例2]
次に、実施例2では、本発明を「炭酸飲料」、「アルコール飲料(RTD)」に適用した場合の各飲料の香味について確認する。
【0060】
(サンプル3−1の準備:炭酸飲料)
果糖ぶどう糖液糖(昭和産業ニューフラクト55)を8.0w/w%、クエン酸(無水:磐田化学)を0.06w/w%、クエン酸ナトリウム(和光純薬)を0.01w/w%、リナロールを0.0001w/w%、メチルアンスラニレートを0.00005w/w%、炭酸水を混合して、サンプル液(炭酸飲料:20℃におけるガス圧が2.0kg/cm)を準備した。
【0061】
(サンプル3−2の準備:アルコール飲料)
果糖ぶどう糖液糖(昭和産業ニューフラクト55)を8.0w/w%、クエン酸(無水:磐田化学)を0.06w/w%、クエン酸ナトリウム(和光純薬)を0.01w/w%、原料用アルコール(65.5%アルコール)を7.1w/w%、リナロールを0.0001w/w%、メチルアンスラニレートを0.00005w/w%、炭酸水を混合して、サンプル液(アルコール飲料:20℃におけるガス圧が2.0kg/cm)を準備した。
【0062】
(試験内容、各評価基準)
前記の方法により製造した各サンプルについて、訓練された専門のパネル3名が実施例1と同じ評価基準に則って「オレンジらしさ(オレンジの果実らしさ)」、「オレンジの花らしさ」、「総合評価」について、1〜5点の5段階評価で独立点数付けし、その平均値を算出した。
【0063】
表3に、各サンプルの各評価の結果を示す。
【0064】
【表3】
【0065】
(結果の検討)
サンプル3−1の炭酸飲料、サンプル3−2のアルコール飲料は、いずれも各評価の点数が高く、オレンジフラワー様の香気を呈することが確認できた。
よって、本発明を炭酸飲料、アルコール飲料に適用しても、発明の効果が問題なく発揮されることがわかった。
【符号の説明】
【0066】
S1 混合工程
S2 後処理工程
図1