特許第6974047号(P6974047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974047
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】鉄筋スペーサ装置
(51)【国際特許分類】
   E04C 5/16 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   E04C5/16
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-121680(P2017-121680)
(22)【出願日】2017年6月21日
(65)【公開番号】特開2019-7166(P2019-7166A)
(43)【公開日】2019年1月17日
【審査請求日】2020年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 淳輝
【審査官】 土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭49−031119(JP,U)
【文献】 特開2001−132166(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0165418(US,A1)
【文献】 特開2003−268926(JP,A)
【文献】 実公昭49−038107(JP,Y1)
【文献】 実開昭48−014821(JP,U)
【文献】 実開昭49−061313(JP,U)
【文献】 特表平01−501699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04C 5/00 − 5/20
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配筋された鉄筋に装着されて当該鉄筋の周囲に打設されるコンクリートの表面から当該鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを形成するための鉄筋スペーサ装置であって、
スペーサと、脱落規制部材と、一端側がスペーサに連結されるとともに他端側が脱落規制部材に連結されて当該脱落規制部材を付勢する弾性手段とを備え、
スペーサは、環体の一部を除去して形成された鉄筋挿入口を備えた外周構成体と、外周構成体の内側に設けられて外周構成体の中心と中心が同じ鉄筋装着部を形成するとともに当該鉄筋装着部への鉄筋装着部入口を備えた装着部形成体と、鉄筋挿入口と鉄筋装着部入口とを連結して鉄筋を鉄筋挿入口から鉄筋装着部にガイドするガイド部とを備え、
弾性手段は、脱落規制部材をスペーサの鉄筋装着部の中心線を回転中心とする回転方向に付勢するように構成され、
脱落規制部材は、弾性手段で付勢された状態において、スペーサの鉄筋装着部に装着された鉄筋からの当該スペーサの脱落を規制するとともに、弾性手段に抗して移動するように操作された状態において、鉄筋がスペーサの鉄筋装着部入口を介して鉄筋装着部に出入可能な状態に設定されることを特徴とする鉄筋スペーサ装置。
【請求項2】
脱落規制部材は、スペーサと同じ構成を有した別のスペーサにより構成されたことを特徴とする請求項1に記載の鉄筋スペーサ装置。
【請求項3】
弾性手段は、ばね、又は、ゴムであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の鉄筋スペーサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配筋された鉄筋に装着されてコンクリートのかぶり厚さとする鉄筋と型枠との間隔を保持するための鉄筋スペーサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配筋された鉄筋に装着されてコンクリートのかぶり厚さとする鉄筋と型枠との間隔を保持するための鉄筋スペーサとして、円環体の一部を除去して形成された鉄筋挿入口を備えた外周構成体と、外周構成体の内側に設けられて中心線が外周構成体の中心線と一致する鉄筋装着部を形成するとともに当該鉄筋装着部への鉄筋装着部入口を備えた装着部形成体と、鉄筋挿入口と鉄筋装着部入口とを連結して鉄筋を鉄筋挿入口から鉄筋装着部にガイドするガイド部とを備えた構成のものが知られている(例えば特許文献1,2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許2001−132166号公報
【特許文献2】特許2003−268926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の鉄筋スペーサは、鉄筋に装着された後、鉄筋に外力が加わったり、鉄筋スペーサに外力が加わったりした場合に、鉄筋装着部入口が開き、鉄筋スペーサの鉄筋装着部が鉄筋から外れて鉄筋スペーサが鉄筋から脱落してしまう可能性があるという課題があった。
本発明は、鉄筋からの脱落を防止できる鉄筋スペーサ装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る鉄筋スペーサ装置は、配筋された鉄筋に装着されて当該鉄筋の周囲に打設されるコンクリートの表面から当該鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを形成するための鉄筋スペーサ装置であって、スペーサと、脱落規制部材と、一端側がスペーサに連結されるとともに他端側が脱落規制部材に連結されて当該脱落規制部材を付勢する弾性手段とを備え、スペーサは、環体の一部を除去して形成された鉄筋挿入口を備えた外周構成体と、外周構成体の内側に設けられて外周構成体の中心と中心が同じ鉄筋装着部を形成するとともに当該鉄筋装着部への鉄筋装着部入口を備えた装着部形成体と、鉄筋挿入口と鉄筋装着部入口とを連結して鉄筋を鉄筋挿入口から鉄筋装着部にガイドするガイド部とを備え、弾性手段は、脱落規制部材をスペーサの鉄筋装着部の中心線を回転中心とする回転方向に付勢するように構成され、脱落規制部材は、弾性手段で付勢された状態において、スペーサの鉄筋装着部に装着された鉄筋からの当該スペーサの脱落を規制するとともに、弾性手段に抗して移動するように操作された状態において、鉄筋がスペーサの鉄筋装着部入口を介して鉄筋装着部に出入可能な状態に設定されることを特徴とするので、鉄筋や鉄筋スペーサ装置に何らかの外力が加わったとしても、鉄筋スペーサ装置が鉄筋から脱落しないようになる。即ち、鉄筋からの脱落を防止できる鉄筋スペーサ装置を提供できる。
また、脱落規制部材は、スペーサと同じ構成を有した別のスペーサにより構成されたことを特徴とするので、各スペーサが鉄筋に装着された場合に、鉄筋の中心線の軸方向に沿った方向のスペーサの厚さが倍増して、かつ、鉄筋の中心線に沿った方向での重量バランスが良くなるので、鉄筋スペーサ装置がコンクリートの圧力で傾き難くなり、所望のコンクリートのかぶり厚さ寸法をより正確に維持することができるようになる。
また、弾性手段は、ばね、又は、ゴムであることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】実施形態1に係る鉄筋スペーサ装置の正面図。
図2】実施形態1に係る鉄筋スペーサ装置の側面図。
図3】実施形態1に係る鉄筋スペーサ装置の分解斜視図。
図4】実施形態1に係る鉄筋スペーサ装置の鉄筋への装着後の状態、鉄筋への装着時の状態を示す斜視図、及び、正面図。
図5】実施形態2に係る鉄筋スペーサ装置の鉄筋への装着後の状態、鉄筋への装着時の状態を示す斜視図、及び、正面図。
図6】実施形態3に係る鉄筋スペーサ装置の鉄筋への装着後の状態、鉄筋への装着時の状態を示す斜視図、及び、正面図。
図7】実施形態4に係る鉄筋スペーサ装置のスペーサを示す斜視図及び正面図。
図8】実施形態5に係る鉄筋スペーサ装置のスペーサを示す斜視図及び正面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
実施形態1
図1乃至図4に示すように、実施形態1の鉄筋スペーサ装置1は、配筋された鉄筋に着脱可能に装着されて当該鉄筋の周囲に打設されるコンクリートの表面から当該鉄筋までのコンクリートのかぶり厚さを形成するための装置であって、一対のスペーサ2,2が弾性手段3により連結されて構成される。
即ち、鉄筋スペーサ装置1は、同じ構成の一対のスペーサ2,2と、各スペーサ2,2の周辺側においてこれらスペーサ2,2を連結し、後述する各スペーサ2,2の各鉄筋装着部51,51の中心線5C(各スペーサ2,2の中心線2C)を回転中心として各スペーサ2,2の回転を許容する弾性手段3とを備えた構成である。
【0008】
スペーサ2は、例えば、合成樹脂(プラスチック)や金属等により形成され、図1図3に示すように、外周構成体4と、装着部形成体5と、連結部6と、ガイド部7とを備える。
【0009】
外周構成体4は、円環体の一部を除去して形成された鉄筋挿入口41を備えた円環状体により形成されている。
即ち、鉄筋挿入口41は、ガイド部7への鉄筋挿入口であり、外周構成体4を形成する円環状体の円弧の一端42と他端43との間の開口により形成される。即ち、外周構成体4を形成する円環状体の円弧の一端42が鉄筋挿入口41の一端を形成するとともに、外周構成体4を形成する円環状体の円弧の他端43が鉄筋挿入口41の他端を形成する。
【0010】
装着部形成体5は、外周構成体4の内側に設けられて中心線5Cが外周構成体4の円弧の中心線(即ち、スペーサ2,2の中心線2C)と一致する鉄筋装着部51を形成するとともに当該鉄筋装着部51への鉄筋装着部入口52を備えた構成である。
【0011】
連結部6は、装着部形成体5と外周構成体4とを連結する複数の連結体61,61…により構成される。
複数の連結体61,61…は、スペーサ2の周方向に沿って所定の間隔を隔てて設けられた補強部材として機能し、スペーサ2の周方向に隣り合う連結体61と連結体61との間は、コンクリートが充填される開口62に形成されている。
【0012】
ガイド部7は、一方のガイド片71と他方のガイド片72とを備える。
一方のガイド片71は、外周構成体4を形成する円環状体の円弧の一端42から外周構成体4の円弧の中心に向けて例えば直線状に延長し、鉄筋挿入口41の一端となる外周構成体4の鉄筋挿入口41の一端42と装着部形成体5の鉄筋装着部入口52の一端53とを連結する。
他方のガイド片72は、外周構成体4を形成する円環状体の円弧の他端43から外周構成体4の円弧の中心に向けて例えば直線状に延長し、鉄筋挿入口41の他端となる外周構成体4の鉄筋挿入口41の他端43と装着部形成体5の鉄筋装着部入口52の他端54とを連結する。
即ち、ガイド部7は、鉄筋挿入口41の一端42と鉄筋装着部入口52の一端53とを連結する一方のガイド片71と、鉄筋挿入口41の他端43と鉄筋装着部入口52の他端54とを連結する他方のガイド片72とにより形成されて、外周構成体4の鉄筋挿入口41と装着部形成体5の鉄筋装着部入口52とを連結し、鉄筋Aを外周構成体4の鉄筋挿入口41から鉄筋装着部入口52を介して鉄筋装着部51にガイドするように構成されている。
【0013】
鉄筋挿入口41の一端42と他端43との間の開口により形成される鉄筋挿入口41の開口幅寸法は、鉄筋スペーサ装置1の装着対象となる鉄筋Aの径寸法よりも大きい寸法に形成される。
また、鉄筋装着部入口52の一端53と他端54との間の開口により形成される鉄筋装着部入口52の開口幅寸法は、鉄筋スペーサ装置1の装着対象となる鉄筋Aの径寸法よりも小さい寸法に形成される。
【0014】
装着部形成体5は、例えば、図1図3に示すように、複数の連結体61,61…の一端に連結された円弧部55と、鉄筋装着部入口52の一端53に設けられた円弧部56と、鉄筋装着部入口52の他端54に設けられた円弧部57とで構成される。
円弧部55の内側円弧は、鉄筋スペーサ装置1の装着対象となる鉄筋Aの直径と同じ直径の円の円周の半分とほぼ同じに形成され、円弧部56,57の内側円弧は、鉄筋スペーサ装置1の装着対象となる鉄筋Aの直径と同じ直径の円の円周の一部と同じに形成される。
そして、これら各円弧部55,56,57の各内側円弧が、外周構成体4の円弧の中心を中心とする鉄筋Aの直径と同じ円周上において互いに独立して配置されて、これら各円弧部55,56,57の内側に鉄筋Aが装着される鉄筋装着部51が構成される。
【0015】
従って、スペーサ2のガイド部7への鉄筋挿入口41を介してガイド部7に挿入された鉄筋Aが外周構成体4の円弧の中心側に近付いて一方のガイド片71及び他方のガイド片72に衝突し、一方のガイド片71及び他方のガイド片72の鉄筋装着部入口52側がガイド片71,72の弾性によって互いに離れる方向に移動することで鉄筋装着部入口52の幅が拡がり、鉄筋装着部入口52の開口幅寸法が大きくなって鉄筋Aが鉄筋装着部51に装着され、鉄筋スペーサ装置1が鉄筋Aに装着されることになる。即ち、鉄筋が各ガイド片71,72の間を通過する際に各ガイド片71,72を押圧して各ガイド片71,72が撓む。これにより、鉄筋装着部入口52の開口幅寸法が鉄筋Aの直径寸法よりも大きくなるように変化して、鉄筋Aが鉄筋装着部入口52を介して鉄筋装着部51に装着されることになる。
【0016】
しかしながら、スペーサ2単独では、上述したように、鉄筋Aに外力が加わったり、スペーサ2に外力が加わったりした場合に、装着部形成体5の鉄筋装着部入口52が開き、スペーサ2の鉄筋装着部51が鉄筋Aから外れてスペーサ2が鉄筋Aから脱落してしまう可能性がある。
【0017】
そこで、実施形態1では、図1図3に示すように、各スペーサ2,2の各鉄筋装着部51,51の中心線5C(各スペーサ2,2の中心線2C)を回転中心として各スペーサ2,2の回転を許容するように、一対のスペーサ2,2を各スペーサ2,2の周辺側で弾性手段3により連結した鉄筋スペーサ装置1を構成した。
【0018】
弾性手段3は、例えば引張コイルばねにより構成され、各スペーサ2,2を互いに反対の回転方向(鉄筋装着部51,51の中心線5Cを回転中心とする回転方向)に付勢して、図3に示すように、一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52と他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52とが、一方のスペーサ2及び他方のスペーサ2の鉄筋装着部51,51の円周上の異なる位置に位置される状態(初期状態)となるように、引張コイルばねの一端側が一方のスペーサ2に連結されるとともに引張コイルばねの他端側が他方のスペーサ2に連結されている。
例えば、図3に示すように、各スペーサ2,2の各鉄筋装着部51,51の中心線5Cが一致するように、当該中心線5Cに沿って並ぶように配置された各スペーサ2,2の互いに対向する外周構成体4,4の対向面4a,4aにそれぞれ取付穴3a,3aが形成されており、一方のスペーサ2の取付穴3aに弾性手段3の一端部が取付けられ、他方のスペーサ2の取付穴3aに弾性手段3の他端部が取付けられる。
尚、各鉄筋装着部51,51の中心線5Cが一致して、かつ、一方のスペーサ2のガイド片72と他方のスペーサ2のガイド片71とが中心線5Cに沿った方向で重なるように各スペーサ2,2が配置された状態(図1図4(a)参照)において、弾性手段3は、例えば、一方のスペーサ2の鉄筋挿入口41の中央位置から外周構成体4の周方向両側にそれぞれ中心角90°の円弧の長さ分の所定間隔を隔てて位置にそれぞれ設けられている。
即ち、2つの弾性手段3,3が、各スペーサ2,2の外周構成体4,4上の互いに180°隔てた位置にそれぞれ設けられており、各弾性手段3,3で付勢された状態(各引張コイルばねで引っ張られた状態)においては、図1図4(a)に示すように、一方のスペーサ2のガイド片72と他方のスペーサ2のガイド片71とが中心線5Cに沿った方向で重なった状態(一致した状態)となっており、各弾性手段3,3に抗して(引張コイルばねを伸長させて)各スペーサ2,2を中心線5Cを回転中心として回転させることで各スペーサ2,2の各鉄筋装着部入口52,52を中心線5Cに沿った方向で一致させた状態(図4(b)参照)とした場合に、各スペーサ2,2の各鉄筋装着部入口52,52を介して各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51を鉄筋Aに装着できるようになっている。
【0019】
実施形態1の鉄筋スペーサ装置1によれば、一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52と他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52とが、各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51の円周上の異なる位置に位置される初期状態(図1図2参照)から、作業員が、各スペーサ2,2を弾性手段3による付勢方向とは逆の回転方向に回転させることによって、一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52と他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52とが、各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51の円周上の同じ位置に位置される状態(図4(d)参照)にしてから、各スペーサ2,2の鉄筋装着部入口52,52を介して各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51を鉄筋Aに装着し(図4(c)参照)、その後、作業員が鉄筋スペーサ装置1から手を離すことにより、各スペーサ2,2が弾性手段3により付勢されて(引張られて)回転して初期状態に戻り(図4(a),(b)参照)、一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52と他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52とが、鉄筋Aの外周上において周方向に互いにずれた位置に位置されることになり、鉄筋スペーサ装置1の鉄筋Aからの脱落が規制される(図4(a)参照)。
【0020】
このように、一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52と他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52とが、鉄筋Aの周方向に互いにずれた位置に維持されることにより、これら鉄筋装着部51,51に装着された鉄筋Aが鉄筋装着部51側から一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52及び他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52を同時に通過することがなくなるので、仮に鉄筋Aや鉄筋スペーサ装置1に何らかの外力が加わったとしても、鉄筋スペーサ装置1が鉄筋Aから脱落しないようになる。
言い換えれば、各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51に装着された鉄筋Aが鉄筋装着部51,51側から一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52又は他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52を通過しようとしても、一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52の横(鉄筋Aの中心線ACに沿った方向の横)に他方のスペーサ2の鉄筋装着部51の円弧部56が位置されるとともに、他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52の横(鉄筋Aの中心線ACに沿った方向の横)に一方のスペーサ2の鉄筋装着部51の円弧部57が位置されるため、これら各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51の円弧部56,57によって鉄筋装着部51,51に装着された鉄筋Aが当該鉄筋装着部51,51に保持されることになり、鉄筋スペーサ装置1が鉄筋Aから脱落しないようになる。
【0021】
即ち、実施形態1の鉄筋スペーサ装置1は、各スペーサ2,2のうちのいずれかのスペーサ2が、鉄筋Aに装着された後に弾性手段3の付勢力によって鉄筋Aの中心線ACを回転中心として回転して鉄筋Aからの鉄筋スペーサ装置1の脱落を規制する脱落規制部材として機能するように構成される。
つまり、実施形態1の鉄筋スペーサ装置1は、弾性手段3の一端側が各スペーサ2,2のうちの一方に連結されるとともに、弾性手段3の他端側が各スペーサ2,2のうちの他方に連結された構成により、各スペーサ2,2が弾性手段3により付勢されて、スペーサ2の鉄筋装着部入口52と、脱落規制部材として機能するスペーサ2の鉄筋装着部入口52とが、各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51の円周上の異なる位置に位置される初期状態となるように構成されている。
そして、各スペーサ2,2が人為的に弾性手段3に抗して(引張コイルばねの引張力に抗して)鉄筋装着部51の中心線5Cを回転中心として回転するように操作されることによって、鉄筋Aが各スペーサ2,2の鉄筋装着部入口52,52を介して鉄筋装着部51,51に出入可能な状態に設定されて、各スペーサ2,2の鉄筋装着部51,51が鉄筋Aに装着された後、各スペーサ2,2が弾性手段3により付勢されて(引っ張られて)鉄筋Aの中心線ACを回転中心として回転して初期状態に戻り、一方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52と他方のスペーサ2の鉄筋装着部入口52とが、鉄筋Aの外周上において周方向に互いにずれた位置に位置されることになり、当該鉄筋スペーサ装置1の鉄筋からの脱落が規制される。
尚、実施形態1に係る鉄筋スペーサ装置1は、鉄筋Aに装着された後、各スペーサ2,2が人為的に弾性手段3に抗して回転するように操作されて、鉄筋Aが各スペーサ2,2の鉄筋装着部入口52,52を介して鉄筋装着部51,51に出入可能な状態に設定されることにより、鉄筋Aから簡単に取り外すことが可能である。
【0022】
また、例えば、一方のスペーサ2の装着部形成体5の円弧部55における鉄筋装着部51の中心線5Cに沿った方向の端面55a(図3参照)に設けられた当該中心線5Cを中心とする図外の円弧状のガイド溝と、当該端面55aと対向する他方のスペーサ2の装着部形成体5の円弧部55の端面より突出するように設けられて当該ガイド溝にガイドされる図外のガイド棒とによる回転ガイド機構を備えた構成とすれば、各スペーサ2,2の回転時にガイド棒がガイド溝に案内されて、各スペーサ2,2が鉄筋装着部51の中心線5Cを回転中心として回転しやすいようになるので、好ましい。
【0023】
実施形態1の鉄筋スペーサ装置1によれば、鉄筋Aや鉄筋スペーサ装置1に何らかの外力が加わったとしても、鉄筋Aからの脱落を防止できるようになる。
また、実施形態1の鉄筋スペーサ装置1によれば、スペーサとしても脱落規制部材としても機能する各スペーサ2,2を弾性手段3で連結して構成されたので、各スペーサ2,2が鉄筋Aに装着された場合に、鉄筋Aの中心線ACの軸方向に沿った方向のスペーサの厚さが倍増して、かつ、鉄筋Aの中心線ACに沿った方向での重量バランスが良くなるので、鉄筋スペーサ装置1がコンクリートの圧力で傾き難くなり、所望のコンクリートのかぶり厚さ寸法をより正確に維持することができるようになる。
【0024】
実施形態2
スペーサ2と、脱落規制部材30と、一端側がスペーサ2に連結されるとともに他端側が脱落規制部材30に連結されて、脱落規制部材30を付勢する弾性手段3とを備え、脱落規制部材30は、弾性手段3で付勢された状態において、スペーサ2の鉄筋装着部51に装着された鉄筋Aからの当該スペーサ2の脱落を規制する状態に設定されるとともに、弾性手段3に抗して移動するように操作された状態において、鉄筋Aがスペーサ2の鉄筋装着部入口52を介して鉄筋装着部51に出入可能な状態に設定される鉄筋スペーサ装置1としてもよい。
即ち、図5に示すように、鉄筋装着部51の内周面の曲率と同じ曲率を有した円弧状に延長する脱落規制部材収容体35が、スペーサ2の装着部形成体5における鉄筋装着部51の中心線5Cに沿った方向の端面51a(例えば、円弧部56の端面)に連結される。
脱落規制部材収容体35は、円弧の一端面が開口した湾曲状箱体により形成され、外面のうちの内側湾曲面35aが鉄筋装着部51の内周面と同一面上に位置されるように、上述した端面51a(例えば、円弧部56の端面)に連結されている。
脱落規制部材30は、脱落規制部材収容体35の円弧の内側面に沿った形状に形成された円弧状の板により形成される。
そして、弾性手段3の一端が脱落規制部材収容体35の円弧の他端側の内面に連結されることでスペーサ2に連結されるとともに、弾性手段3の他端が脱落規制部材30の円弧の一端に連結されることにより、円弧状の脱落規制部材30が弾性手段3によって付勢された状態(例えば脱落規制部材30が弾性手段3としての圧縮コイルばねで押圧力された状態)において、スペーサ2の鉄筋装着部入口52の横(鉄筋装着部51の中心線5Cに沿った方向の横)に当該脱落規制部材30が位置されることによって、スペーサ2の鉄筋装着部51に装着された鉄筋Aからの当該スペーサ2の脱落を規制する状態に設定される(図5(a),(b)参照)とともに、弾性手段3に抗して移動するように操作された状態(例えば脱落規制部材30の他端に設けられた操作部31を掴んで脱落規制部材30を脱落規制部材収容体35に収容される方向に移動させた状態(圧縮コイルばねは縮む))において、鉄筋Aがスペーサ2の鉄筋装着部入口52を介して鉄筋装着部51に出入可能な状態に設定される(図5(c),(d)参照)。
【0025】
実施形態2の鉄筋スペーサ装置1によれば、脱落規制部材30を弾性手段3に抗して移動させた状態で鉄筋装着部入口52を介して鉄筋装着部51を鉄筋Aに装着した(図5(c)参照)後、脱落規制部材30の操作部31を離すことで、脱落規制部材30が弾性手段3によって付勢されて鉄筋装着部入口52の横(鉄筋装着部51の中心線5Cに沿った方向の横)に位置されて鉄筋Aからの当該スペーサ2の脱落を規制する状態に設定される(図5(a)参照)ので、実施形態1の鉄筋スペーサ装置1と同様に、鉄筋Aや鉄筋スペーサ装置1に何らかの外力が加わったとしても、鉄筋Aからの脱落を防止できる鉄筋スペーサ装置1となる。
【0026】
実施形態3
図6に示すように、実施形態2で説明した弾性手段3及び脱落規制部材30が連結された脱落規制部材収容体35の内側湾曲面35aがスペーサ2の装着部形成体5の外周面の一部を形成する円弧部56の外周面51fに連結された構成とした鉄筋スペーサ装置1であってもよい。
実施形態3の鉄筋スペーサ装置1によれば、円弧状の脱落規制部材30が弾性手段3によって付勢された状態において、スペーサ2の円弧部56の外周面51fと円弧部57の外周面57fとに跨ってスペーサ2の鉄筋装着部入口52の外側に位置されることにより、鉄筋Aからのスペーサ2の脱落を規制する状態に設定される(図6(c),(d)参照)とともに、円弧状の脱落規制部材30が弾性手段3に抗して移動するように操作された状態において、鉄筋Aがスペーサ2の鉄筋装着部入口52を介して鉄筋装着部51に出入可能な状態に設定される(図6(a),(b)参照)。
【0027】
実施形態3の鉄筋スペーサ装置1によれば、脱落規制部材30を弾性手段3に抗して移動させた状態で鉄筋装着部入口52を介して鉄筋装着部51を鉄筋Aに装着した(図6(c)参照)後、脱落規制部材30の操作部31を離すことで、脱落規制部材30が弾性手段3によって付勢されて円弧部56の外周面51fと円弧部57の外周面57fとに跨ってスペーサ2の鉄筋装着部入口52の外側に位置されて鉄筋Aからの当該スペーサ2の脱落を規制する状態に設定される(図6(a)参照)ので、実施形態1の鉄筋スペーサ装置1と同様に、鉄筋Aや鉄筋スペーサ装置1に何らかの外力が加わったとしても、鉄筋Aからの脱落を防止できる鉄筋スペーサ装置1となる。
【0028】
実施形態4
スペーサとして、上述した連結部6を備えずに、図7に示すように、鉄筋挿入口41を備えた外周構成体4Xと、外周構成体4Xの内側に設けられて中心線5Cが外周構成体4Xの中心線と一致する鉄筋装着部51を形成するとともに当該鉄筋装着部51への鉄筋装着部入口52を備えた装着部形成体5Xと、鉄筋挿入口41と鉄筋装着部入口52とを連結して鉄筋を鉄筋挿入口41から鉄筋装着部51にガイドするガイド部7とを備え、鉄筋装着部入口52の一端53と他端54との間の開口幅寸法が鉄筋Aの直径寸法よりも小さい寸法に形成されるとともに、ガイド部7を形成する各ガイド片71,72が撓むことによって当該鉄筋装着部入口52の開口幅寸法が鉄筋Aの直径寸法よりも大きくなるように構成されたスペーサ2Xを用いてもよい。
【0029】
実施形態5
スペーサとして、上述した連結部6を備えずに、図8に示すように、鉄筋挿入口41を備えた外周構成体4Yと、外周構成体4Yの内側に設けられて中心線5Cが外周構成体4Yの中心線と一致する鉄筋装着部51を形成するとともに当該鉄筋装着部51への鉄筋装着部入口52を備えた装着部形成体5Yと、鉄筋挿入口41と鉄筋装着部入口52とを連結して鉄筋を鉄筋挿入口41から鉄筋装着部51にガイドする各ガイド片71,72により形成されたガイド部7とを備え、鉄筋挿入口41及び鉄筋装着部入口52の開口幅寸法を鉄筋Aの直径寸法より若干大きい寸法に形成した構成のスペーサ2Yを用いてもよい。
【0030】
実施形態6
実施形態1のスペーサ2,2や実施形態2,3のスペーサ2の代わりに、実施形態4のスペーサ2Xや実施形態5のスペーサ2Yを用いた構成の鉄筋スペーサ装置としてもよい。
【0031】
鉄筋装着部入口52の開口幅寸法を鉄筋Aの直径寸法より若干大きい寸法に形成したスペーサ2Yと鉄筋装着部入口52の開口幅寸法を鉄筋Aの直径寸法より若干大きい寸法に形成した別のスペーサ2Yとを弾性手段3で連結した構成の鉄筋スペーサ装置であっても、スペーサ2Yと別のスペーサ2Yの各鉄筋装着部51,51を鉄筋Aに装着した後に、各鉄筋装着部51,51の中心線5Cを回転中心として各スペーサ2Y,2Yが弾性手段3の付勢力によって回転して、スペーサ2Yの鉄筋装着部入口52と別のスペーサ2Yの鉄筋装着部入口52とが、鉄筋Aの外周上において周方向に互いにずれた位置に位置されるので、鉄筋Aからの脱落を防止できる鉄筋スペーサ装置となる。
【0032】
尚、弾性手段3として、圧縮コイルばね、その他のばね、あるいは、ゴム等を使用してもよい。
【0033】
また、外周構成体4は、三角形、四角形、多角形等の環状体で構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 鉄筋スペーサ装置、2 スペーサ、3 弾性手段、4 外周構成体、
5 装着部形成体、5C 鉄筋装着部の中心線、7 ガイド部、30 脱落規制部材、
41 鉄筋挿入口、51 鉄筋装着部、52 鉄筋装着部入口、A 鉄筋、
AC 鉄筋の中心線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8