特許第6974051号(P6974051)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6974051-半嵌合防止コネクタ 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974051
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】半嵌合防止コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/64 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   H01R13/64
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-131637(P2017-131637)
(22)【出願日】2017年7月5日
(65)【公開番号】特開2019-16470(P2019-16470A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】501418498
【氏名又は名称】矢崎エナジーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 淳
(72)【発明者】
【氏名】太田 信之
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】安藤 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】樗木 翔
【審査官】 藤島 孝太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−231114(JP,A)
【文献】 米国特許第07329128(US,B1)
【文献】 特開平10−334996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/56− 13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁が設けられた一方の筒状のハウジングと前記一方の筒状のハウジングの隔壁の底面側の方向から見た際の中央部の回りに設けられた複数の一方の端子とロックアームを有する一方のコネクタと、
隔壁が設けられた他方の筒状のハウジングと前記一方のコネクタに嵌合した際に前記ロックアームのロック部が係止される係止部と前記他方の筒状のハウジングの隔壁の底面側の方向から見た際の中央部の回りに設けられた複数の他方の端子を有する他方のコネクタと、
前記両コネクタの前記両隔壁の各底面側の方向から見た際の中央の相対向する位置にそれぞれ設けられて半嵌合時に該両コネクタを反嵌合方向に付勢する磁性体と、を備え、
前記両コネクタに設けられた各磁性体は、同極性の磁力を有し、前記ロックアームのロック部が前記他方のコネクタの係止部に係止されるまでの前記両コネクタの半嵌合時に前記各磁性体の同極性の磁力による反発力が働くようにしたことを特徴とする半嵌合防止コネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の半嵌合防止コネクタであって、
前記両コネクタに設けられた各磁性体は、同極性の磁力を有する磁石からなることを特徴とする半嵌合防止コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半嵌合防止機能を備えた半嵌合防止コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の半嵌合防止コネクタとして、図5図6に示すものが知られている。この半嵌合防止コネクタ1は、図5図6に示すように、雌ハウジング3に雌端子4を有すると共に、雌ハウジング3の外側に一対のロックアーム3a,3aを有する雌コネクタ2と、雄ハウジング6に雄端子7を有すると共に、雌コネクタ2に嵌合した際に、ロックアーム3aのロック突部3bが係止される係止凹部6aを有する雄コネクタ5と、雄ハウジング6の一対のバネ収容部6b,6b内にスライド自在に設けられ、雌コネクタ2の嵌合方向Aに沿ってスライドする一対のスライド部材8,8と、雌,雄コネクタ2,5の半嵌合時にスライド部材8を雌コネクタ2の反嵌合方向Bに付勢して雌,雄コネクタ2,5を離間させる圧縮コイルバネ9と、を備えている。尚、図5及び図6中符号6cは、雄ハウジング6のバネ収容部6bを覆うカバーである。
【0003】
そして、半嵌合(中途嵌合)を防止するために、雌,雄コネクタ2,5の嵌合時の挿入力より圧縮コイルバネ9の反発力を強くすることで、雌コネクタ2のロックアーム3aのロック突部3bと雄コネクタ5の係止凹部6aとが係止するまで、雌コネクタ2が圧縮コイルバネ9の弾性力(復元力)により雌端子4と雄端子7が接触しない状態まで押し戻され、雌,雄コネクタ2,5の半嵌合において雌端子4と雄端子7が導通しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−111390号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来の半嵌合防止コネクタ1では、半嵌合防止用の圧縮コイルバネ9を雄コネクタ5の雄ハウジング6に形成されたバネ収容部6bに収容するため、構造が複雑となってコネクタ全体が大型となり、その取扱い性が悪かった。
【0006】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、半嵌合を防止することができ、かつ、コネクタ全体の小型化及び取扱い性の向上を図ることができる半嵌合防止コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、半嵌合を防止する機能を備えた半嵌合防止コネクタであって、隔壁が設けられた一方の筒状のハウジングと前記一方の筒状のハウジングの隔壁の底面側の方向から見た際の中央部の回りに設けられた複数の一方の端子とロックアームを有する一方のコネクタと、隔壁が設けられた他方の筒状のハウジングと前記一方のコネクタに嵌合した際に前記ロックアームのロック部が係止される係止部と前記他方の筒状のハウジングの隔壁の底面側の方向から見た際の中央部の回りに設けられた複数の他方の端子を有する他方のコネクタと、前記両コネクタの前記両隔壁の各底面側の方向から見た際の中央の相対向する位置にそれぞれ設けられて半嵌合時に該両コネクタを反嵌合方向に付勢する磁性体と、を備え、前記両コネクタに設けられた各磁性体は、同極性の磁力を有し、前記ロックアームのロック部が前記他方のコネクタの係止部に係止されるまでの前記両コネクタの半嵌合時に前記各磁性体の同極性の磁力による反発力が働くようにしたことを要旨とする。
【0008】
また、本発明の半嵌合防止コネクタは、前記両コネクタに設けられた各磁性体が同極性の磁力を有する磁石からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半嵌合防止用のバネ部材の代わりに同極性の磁力を有する磁性体を用いることで、従来のようなバネ部材を収容する部分が不要となり、その分、構造の簡素化を図ることができる。この構造の簡素化により、コネクタ全体の小型化及び取扱い性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態の半嵌合防止コネクタの要部を断面で示す斜視図である。
図2】上記半嵌合防止コネクタの嵌合前の状態を示す断面図である。
図3】上記半嵌合防止コネクタの嵌合途中の状態を示す断面図である。
図4】上記半嵌合防止コネクタの嵌合完了状態を示す断面図である。
図5】従来の半嵌合防止コネクタの嵌合前の状態を示す説明図である。
図6】上記従来の半嵌合防止コネクタの嵌合完了の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態の半嵌合防止コネクタの要部を断面で示す斜視図、図2は同コネクタの嵌合前の状態を示す断面図、図3は同コネクタの嵌合途中の状態を示す断面図、図4は同コネクタの嵌合完了状態を示す断面図である。
【0013】
図1図4に示すように、半嵌合防止コネクタ10は、硬質合成樹脂製の雌ハウジング21の円筒状の内側ハウジング22内に複数の雌端子(一方の端子)25を有し、円筒状の外側ハウジング24の上下部に一対のロックアーム27,27を有する雌コネクタ(一方のコネクタ)20と、硬質合成樹脂製の雄ハウジング31の円筒状のフード部32の隔壁33に複数の雄端子(他方の端子)35を有し、円筒状のフード部32の隔壁33に対向する位置にロックアーム27のロック突起(ロック部)28が係止・離脱される係止凹部(係止部)38を有する雄コネクタ(他方のコネクタ)30と、雌ハウジング21の隔壁23の中央及び雄ハウジング31の隔壁33の中央に設けられ、ロックアーム27のロック突起28が雄ハウジング31の係止凹部38に係止されるまでの両コネクタ20,30の半嵌合時において両コネクタ20,30を離間させる反発力(磁力)を有する円柱状で同極性の磁石(磁性体)29,39と、を備えている。
【0014】
雌コネクタ20の円筒状の内側ハウジング22と円筒状の外側ハウジング24を仕切る円板状の隔壁23の底面側の方向から見た際の中央部の回りには、複数の円筒状の雌端子25を突設してある。各雌端子25には電線26が接続されている。
【0015】
また、雌ハウジング21の外側ハウジング24の上下部には、各一対のスリット24a,24aを形成してあり、この各一対のスリット24a,24a間には、先端にロック突起28を有した一対のロックアーム27,27を撓み変形自在に一体突出形成してある。
【0016】
さらに、雌ハウジング21の隔壁23の底面側の方向から見た際の中央には、例えばN極の磁性を有した円柱状の磁石29の基部29aを埋設してある。
【0017】
雄コネクタ30の円筒状のフード部32の円板状の隔壁33の底面側の方向から見た際の中央部の回りには、複数のピン状の雄端子35を突設してある。各雄端子35には電線36が接続されている。
【0018】
また、雄ハウジング31の隔壁33の底面側の方向から見た際の中央には、例えばN極の磁性を有した円柱状の磁石39の基部39aを埋設してある。雌コネクタ20の磁石29と雄コネクタ30の磁石39は共に同極性を有するため、互いに近接すると反発し合うようになっている。尚、図3において、雄コネクタ30に対して雌コネクタ20を反嵌合方向(嵌合方向の逆方向)Bに付勢して雌,雄コネクタ20,30を離間させる磁石29,39の反発力が働く距離(空間)を符号Hで示す。
【0019】
さらに、雄ハウジング31の円筒状のフード部32の上下部には、ロックアーム27のロック突起28が接触して摺動する長溝凹状のロックアーム接触部37をそれぞれ形成してある。この各長溝凹状のロックアーム接触部37の中央には、ロックアーム27のロック突起28が係止・離脱される係止凹部38を形成してある。
【0020】
以上実施形態の半嵌合防止コネクタ10によれば、図3に示すように、雌コネクタ20と雄コネクタ30の嵌合開始時に、雄ハウジング31のロックアーム接触部37により雌コネクタ20のロックアーム27が持ち上げられる。雌ハウジング21を雄ハウジング31の方向に移動させることにより、雌ハウジング21のロックアーム27のロック突起28と雄ハウジング31の係止凹部38に係止することで、図4に示すように、完全嵌合状態となる。
【0021】
雌ハウジング21と雄ハウジング31にそれぞれ組み込まれた磁石29,39を同極性にすることにより、雌,雄コネクタ20,30の半嵌合(中途嵌合)時に、雌コネクタ20と雄コネクタ30の離脱力を超える反発力が発生する。これにより、両コネクタ20,30が完全嵌合状態とならない限り、磁石29,39の反発力によって、雌端子25と雄端子35は接触しない位置まで戻されるため、半嵌合による雌コネクタ20の雌端子25と雄コネクタ30の雄端子35の導通を防止することができる。
【0022】
また、磁石29,39を用いることで、従来のコネクタに設けられているバネ部材を収容する部分が不要となるため、その分、構造の簡素化を図ることができる。この構造の簡素化により、コネクタ全体を小型化することができ、かつ、その取扱い性を向上させることができる。
【0023】
尚、前記実施形態によれば、N極同士の磁石で反発させたが、S極同士の磁石で反発させるようにしても良い。また、磁性体として円柱状の磁石を用いたが、矩形体状の磁石でも良い。
【符号の説明】
【0024】
10 半嵌合防止コネクタ
20 雌コネクタ(一方のコネクタ)
21 円筒状の雌ハウジング(筒状の一方のハウジング)
23 隔壁
25 雌端子(一方の端子)
27 ロックアーム
28 ロック突起(ロック部)
29 磁石(磁性体)
30 雄コネクタ(他方のコネクタ)
31 円筒状の雄ハウジング(筒状の他方のハウジング)
33 隔壁
35 雄端子(他方の端子)
38 係止凹部(係止部)
39 磁石(磁性体)
B 反嵌合方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6