(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について実施形態を用いて詳細に説明する。
[積層体]
本発明の積層体は、曲げ剛性が2.0〜45.0MPa・mm
4、かつ引張弾性率が100〜9,000MPaである樹脂シート(A)と、樹脂発泡体シート(B)と、を備える積層体である。
本発明の積層体は、特定の範囲の曲げ剛性及び引張弾性率を有する樹脂シート(A)を樹脂発泡体シート(B)の支持体として有することで、樹脂発泡体シート(B)の取り扱い性及び加工性を向上させつつ、積層体にシワが発生することを抑制できる。
樹脂シート(A)が一定以上の曲げ剛性を有すると、積層体中の樹脂発泡体シートが収縮したり、或いは積層体の保管、運搬、加工等の過程において意図しない外力が加わった場合においても、シワの発生要因となる曲げ方向の変形が抑制されるため、シワの発生が抑制されるものと推定される。さらに、樹脂シート(A)が一定以上の引張弾性率を有することで、樹脂発泡体シート(B)の平面方向の変形を抑制できるため、樹脂発泡体シート(B)の伸び、破れ、シワ等の発生を抑制し、優れた取り扱い性及び加工性が得られると推定される。
以下、本発明の積層体が備える、樹脂シート(A)、樹脂発泡体シート(B)について順に説明する。
【0009】
<樹脂シート(A)>
樹脂シート(A)は、樹脂発泡体シート(B)の支持体としての役割を担う樹脂シートであり、その曲げ剛性が2.0〜45.0MPa・mm
4、かつ引張弾性率が100〜9,000MPaのものである。
樹脂シート(A)は、加工時においては支持体として樹脂発泡体シート(B)の機械強度を補強し、塗工、ラミネート等の積層加工の前後においては樹脂発泡体シート(B)から剥離される。
【0010】
(曲げ剛性)
樹脂シート(A)の曲げ剛性は、樹脂発泡体シート(B)の取り扱い性及び加工性を向上させつつ、積層体のシワの発生を抑制する観点から、2.0〜45.0MPa・mm
4であり、同様の観点から、2.5〜40.0MPa・mm
4が好ましく、3.0〜20.0MPa・mm
4がより好ましく、4.0〜15.0MPa・mm
4が更に好ましい。
一方で、樹脂シート(A)の曲げ剛性が2.0MPa・mm
4未満であると、積層体のシワの発生を抑制することが困難になり、45.0MPa・mm
4を超えると、積層体の剛性が高くなりすぎ、加工性が悪化する場合がある。
なお、曲げ剛性(MPa・mm
4)は、樹脂シート(A)の引張弾性率E(MPa)と、断面二次モーメントI(mm
4)との積(E・I)で求まり、樹脂シート(A)の断面二次モーメントIは、下記式(1)で計算される。
I=W×Z
3/12 (1)
ただし、Wは樹脂シート(A)の巾(mm)、Zは樹脂シート(A)の厚さ(mm)である。樹脂シート(A)の引張弾性率は後述の方法により測定することができる。
【0011】
(引張弾性率)
樹脂シート(A)の引張弾性率は、樹脂発泡体シート(B)の取り扱い性及び加工性を向上させつつ、積層体のシワの発生を抑制する観点から、100〜9,000MPaであり、同様の観点から、500〜7,000MPaが好ましく、1,000〜5,000MPaがより好ましく、1,500〜3,000MPaが更に好ましい。
一方で、樹脂シート(A)の引張弾性率が100MPa未満であると、樹脂発泡体シート(B)の伸び、破れ、シワ等の発生を抑制することが困難になり、9,000MPaを超えると、積層体の剛性が高くなりすぎ、加工性が悪化する場合がある。
なお、樹脂シート(A)の引張弾性率とは、23℃におけるMD方向の引張弾性率を意味し、JIS K7161−1(2014)に準拠して求めることができる。
【0012】
(樹脂シート(A)の寸法)
樹脂シート(A)の厚さは、特に限定されないが、取り扱い性の観点、及び樹脂シート(A)の曲げ剛性を上記範囲に調整しやすくする観点から、10〜500μmが好ましく、12〜200μmがより好ましく、15〜100μmが更に好ましい。
【0013】
(樹脂シート(A)の材質)
樹脂シート(A)を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル樹脂;高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体等のビニル樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸エチル等のアクリル樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド樹脂等が挙げられる。なお、これらの樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらのポリマーは、ホモポリマーであってもよく、複数の共重合単位を導入したコポリマーであってもよい。
これらの中でも、取り扱い性、汎用性、並びに引張弾性率及び曲げ剛性を上記範囲に調整しやすくする観点から、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂及びポリアミド樹脂から選ばれる1種以上が好ましく、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート及びポリアミドから選ばれる1種以上がより好ましく、ポリプロピレンが更に好ましい。
【0014】
ポリプロピレンは、プロピレン単独重合体であってもよく、共重合体であってもよいが、共重合体である場合はプロピレン単位の共重合比は50mol%以上が好ましく、70mol%以上がより好ましく、90mol%以上が更に好ましく、95mol%以上がより更に好ましい。共重合可能なモノマーとしては、α−オレフィン、アクリル酸エステル、酢酸ビニル等が挙げられる。これらのモノマーは、1種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
樹脂シート(A)は、上記した樹脂を主成分として含有することが好ましく、その含有量は、60質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。なお、本明細書における主成分とは、最も含有率が多い成分を意味する。
樹脂シート(A)は、上記した樹脂以外にも、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の添加剤を含有していてもよい。
【0016】
樹脂シート(A)は、引張弾性率及び曲げ剛性を上記範囲に調整しやすくする観点から、少なくともMD方向に延伸されたものが好ましく、MD方向及びTD方向に二軸延伸されたものがより好ましい。
延伸倍率は、樹脂シート(A)の引張弾性率及び曲げ剛性が、上記の好適な範囲に入るように適宜調整すればよいが、例えば、MD方向及びTD方向について、それぞれ2倍以上で延伸することが好ましい。MD方向及びTD方向の延伸倍率は、同じであっても異なっていてもよい。
上記の観点から、樹脂シート(A)としては、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)シート、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシート、二軸延伸ポリアミドシート等が好ましい。
【0017】
<樹脂発泡体シート(B)>
(樹脂発泡体シート(B)の寸法)
樹脂発泡体シート(B)の厚さは、0.05〜3.0mmであることが好ましい。厚さを0.05mm以上とすることで、樹脂発泡体シート(B)の機械強度及び柔軟性の確保が容易になる。一方で、厚さを3.0mm以下とすることで、薄膜化が可能になり、小型化した電子機器に好適に使用できる。これらの観点から、樹脂発泡体シート(B)の厚さは、0.08〜2.0mmがより好ましく、0.10〜1.0mmが更に好ましい。
【0018】
(見掛け密度)
樹脂発泡体シート(B)の見掛け密度は、0.05〜0.75g/cm
3であることが好ましい。見掛け密度を0.05g/cm
3以上とすることで、機械強度が高くなり、耐久性をより向上させやすくなる。一方で、見掛け密度を0.75g/cm
3以下とすることで、圧縮強度及び柔軟性が良好となり、樹脂発泡体シート(B)の衝撃吸収性、シール性等が良好となりやすい。これらの観点から、樹脂発泡体シート(B)の見掛け密度は、0.07〜0.70g/cm
3がより好ましく、0.10〜0.60g/cm
3が更に好ましい。
樹脂発泡体シート(B)の見掛け密度は、JIS K7222(2005)に準拠して測定することができる。
【0019】
(引張弾性率)
樹脂発泡体シート(B)の引張弾性率は、0.5〜50.0MPaであることが好ましい。引張弾性率を0.5MPa以上とすることで、機械強度が高くなり、耐久性をより向上させやすくなる。一方で、引張弾性率を50.0MPa以下とすることで、圧縮強度、柔軟性が良好となり、樹脂発泡体シート(B)の衝撃吸収性、シール性が良好となりやすい。これらの観点から、引張弾性率は、1.0〜45.0MPaがより好ましく、2.0〜40.0MPaが更に好ましい。
なお、樹脂発泡体シート(B)の引張弾性率は、23℃におけるMD方向の引張弾性率を意味し、JIS K7161−1(2014)に準拠して求めることができる。
【0020】
(架橋度)
樹脂発泡体シート(B)は、架橋されたものであることが好ましく、その架橋度は、10〜80質量%が好ましい。架橋度を10質量%以上とすることで、機械強度が高くなり、耐久性をより向上させやすくなる。一方で、架橋度を80質量%以下とすることで、圧縮強度、柔軟性が良好となり、樹脂発泡体シート(B)の衝撃吸収性、シール性が良好となりやすい。これらの観点から、架橋度は、20〜70質量%がより好ましく、25〜65質量%が更に好ましい。
架橋度は、以下の方法により測定することができる。
<架橋度の測定方法>
樹脂発泡体シート(B)から約100mgの試験片を採取し、試験片の重量A(mg)を精秤する。次に、この試験片を120℃のキシレン30cm
3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の重量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出する。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
【0021】
(樹脂発泡体シート(B)の材質)
樹脂発泡体シート(B)に使用される樹脂としては、各種の樹脂を使用すればよいが、中でもポリオレフィン樹脂を使用することが好ましい。ポリオレフィン樹脂を使用することで、樹脂発泡体シート(B)の柔軟性を確保することが可能である。
【0022】
〔ポリオレフィン樹脂〕
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレン樹脂が好ましい。
ポリエチレン樹脂としては、チーグラー・ナッタ化合物、メタロセン化合物、酸化クロム化合物等の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が挙げられ、メタロセン化合物の重合触媒で重合されたポリエチレン樹脂が好ましい。
【0023】
また、ポリエチレン樹脂としては、直鎖状低密度ポリエチレンが好ましい。直鎖状低密度ポリエチレンを用いることにより、得られる樹脂発泡体シート(B)に高い柔軟性が得られるとともに、樹脂発泡体シート(B)の薄肉化が可能になる。この直鎖状低密度ポリエチレンは、メタロセン化合物等の重合触媒を用いて得たものがより好ましい。また、直鎖状低密度ポリエチレンは、エチレン(例えば、全モノマー量に対して75質量%以上、好ましくは90質量%以上)と必要に応じて少量のα−オレフィンとを共重合することにより得られる直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
α−オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。これらの中でも、炭素数4〜10のα−オレフィンが好ましい。
ポリエチレン樹脂、例えば上記した直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.870〜0.910g/cm
3が好ましく、0.875〜0.907g/cm
3がより好ましく、0.880〜0.905g/cm
3が更に好ましい。ポリエチレン樹脂としては、複数のポリエチレン樹脂を用いることもでき、また、上記した密度範囲以外のポリエチレン樹脂を加えてもよい。
【0024】
〔メタロセン化合物〕
メタロセン化合物としては、遷移金属をπ電子系の不飽和化合物で挟んだ構造を有するビス(シクロペンタジエニル)金属錯体等の化合物が挙げられる。より具体的には、チタン、ジルコニウム、ニッケル、パラジウム、ハフニウム、白金等の四価の遷移金属に、1又は2以上のシクロペンタジエニル環又はその類縁体がリガンド(配位子)として存在する化合物が挙げられる。
このようなメタロセン化合物は、活性点の性質が均一であり各活性点が同じ活性度を備えている。メタロセン化合物を用いて合成した重合体は、分子量、分子量分布、組成、組成分布等の均一性が高いため、メタロセン化合物を用いて合成した重合体を含むシートを架橋した場合には、架橋が均一に進行する。これにより均一な気泡を形成することができると共に、均一に延伸できるため樹脂発泡体シート(B)の厚さを均一にできる。
【0025】
リガンドとしては、シクロペンタジエニル環、インデニル環等の環式化合物が挙げられる。これらの環式化合物は、炭化水素基、置換炭化水素基又は炭化水素−置換メタロイド基により置換されていてもよい。炭化水素基としては、メチル基、エチル基、各種プロピル基、各種ブチル基、各種アミル基、各種ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、各種ヘプチル基、各種オクチル基、各種ノニル基、各種デシル基、各種セチル基、フェニル基等が挙げられる。なお、「各種」とは、n−、sec−、tert−、iso−を含む各種異性体を意味する。
また、環式化合物をオリゴマーとして重合したものをリガンドとして用いてもよい。
更に、π電子系の不飽和化合物以外にも、塩素、臭素等の一価のアニオンリガンド又は二価のアニオンキレートリガンド、炭化水素、アルコキシド、アリールアミド、アリールオキシド、アミド、アリールアミド、ホスフィド、アリールホスフィド等を用いてもよい。
【0026】
四価の遷移金属、リガンド等を含むメタロセン化合物としては、シクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、メチルシクロペンタジエニルチタニウムトリス(ジメチルアミド)、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムジクロリド、ジメチルシリルテトラメチルシクロペンタジエニル−t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド等が挙げられる。
メタロセン化合物は、特定の共触媒(助触媒)と組み合わせることにより、各種オレフィンの重合の際に触媒としての作用を発揮する。具体的な共触媒としては、メチルアルミノキサン(MAO)、ホウ素系化合物等が挙げられる。なお、メタロセン化合物に対する共触媒の使用割合は、10〜100万モル倍が好ましく、50〜5,000モル倍がより好ましい。
樹脂発泡体シート(B)に含まれるポリオレフィン樹脂は、上記した直鎖状低密度ポリエチレンを使用する場合、上記の直鎖状低密度ポリエチレンを単独で使用してもよいが、他のポリオレフィン樹脂と併用してもよく、例えば、以下に述べる他のポリオレフィン樹脂と併用してもよい。他のポリオレフィン樹脂を含有する場合、直鎖状低密度ポリエチレン(100質量%)に対する他のポリオレフィン樹脂の割合は、40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0027】
ポリオレフィン樹脂として使用するエチレン−酢酸ビニル共重合体としては、例えば、エチレンを50質量%以上含有するエチレン−酢酸ビニル共重合体が挙げられる。
また、ポリプロピレン樹脂としては、ポリプロピレン、プロピレンを50質量%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
プロピレン−α−オレフィン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、具体的には、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。これらの中でも、炭素数6〜12のα−オレフィンが好ましい。
【0028】
樹脂としてポリオレフィン樹脂を使用する場合、ポリオレフィン樹脂を単独で使用してもよいが、ポリオレフィン樹脂以外の樹脂を含んでもよい。樹脂発泡体シート(B)において、ポリオレフィン樹脂の樹脂全量に対する割合は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
また、樹脂発泡体シート(B)に使用するポリオレフィン樹脂以外の樹脂としては、スチレン系熱可塑性エラストマー、EPDM等の各種のエラストマーが挙げられる。
【0029】
(熱分解型発泡剤)
樹脂発泡体シート(B)は、上記樹脂と熱分解型発泡剤とを含む発泡性組成物を発泡してなることが好ましい。
熱分解型発泡剤としては、有機発泡剤、無機発泡剤が使用可能である。有機発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体;トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
無機発泡剤としては、酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中でも、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミドがより好ましい。
熱分解型発泡剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
発泡性組成物における熱分解型発泡剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、1〜10質量部が好ましく、1〜8質量部がより好ましく、1.5〜7質量部が更に好ましい。
【0030】
また、発泡性組成物は、上記樹脂と熱分解型発泡剤に加えて、気泡核調整剤を含有することが好ましい。気泡核調整剤としては、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛等の亜鉛化合物、クエン酸、尿素の有機化合物等が挙げられるが、これらの中でも、酸化亜鉛が好ましい。上記した小粒径の発泡剤に加えて気泡核調整剤を使用することで、気泡径をより小さくしやすくなる。気泡核調整剤の配合量は、樹脂100質量部に対して、0.4〜8質量部が好ましく、0.5〜5質量部がより好ましく、0.8〜2.5質量部が更に好ましい。
発泡性組成物は、必要に応じて、上記以外にも、酸化防止剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、充填材等の発泡体に一般的に使用する添加剤を含有していてもよい。
【0031】
(樹脂発泡体シート(B)の製造方法)
樹脂発泡体シート(B)の製造方法は、特に制限はないが、例えば、樹脂及び熱分解型発泡剤を含む発泡性組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させることで製造する。その製造方法は、より具体的には、以下の工程(1)〜(3)を含む。
工程(1):樹脂、及び熱分解型発泡剤を含む添加剤を混合して発泡性組成物を得て、該発泡性組成物をシート状に成形する工程
工程(2):シート状の発泡性組成物に電離性放射線を照射して発泡性組成物を架橋させる工程
工程(3):架橋させた発泡性組成物を加熱し、熱分解型発泡剤を発泡させて、気泡を形成する工程
【0032】
工程(1)において、シート状の発泡性組成物を成形する方法は、特に限定されないが、例えば、樹脂及び添加剤を押出機に供給して溶融混練し、押出機から発泡性組成物をシート状に押出すことによって成形すればよい。
工程(2)において発泡性組成物を架橋する方法としては、発泡性組成物に電子線、α線、β線、γ線等の電離性放射線を照射する方法を用いる。上記電離放射線の照射量は、得られる発泡シートの架橋度が上記した所望の範囲となるように調整すればよいが、3〜15Mradが好ましく、4〜13Mradがより好ましい。
工程(3)において、発泡性組成物を加熱し熱分解型発泡剤を発泡させるときの加熱温度は、熱分解型発泡剤の発泡温度以上であればよいが、発泡温度+20〜100℃が好ましく、発泡温度+30〜70℃がより好ましい。
また、気泡を形成した後、MD方向又はTD方向のいずれか一方又は両方の方向に延伸してもよい。
【0033】
ただし、本製造方法は、上記に限定されずに、上記以外の方法により、樹脂発泡体シート(B)を得てもよい。例えば、電離性放射線を照射する代わりに、発泡性組成物に予め有機過酸化物を配合しておき、発泡性組成物を加熱して有機過酸化物を分解させる方法等により架橋を行ってもよい。
【0034】
[積層体の形態]
本発明の積層体の巾(すなわち、樹脂シート(A)と樹脂発泡体シート(B)の巾)は、その用途に応じて適宜選択すればよいが、樹脂シート(A)の曲げ剛性を上記範囲に調整しやすくする観点から、200〜3000mmが好ましく、500〜2000mmがより好ましく、800〜1500mmが更に好ましい。
【0035】
本発明の積層体を構成する樹脂シート(A)の樹脂発泡体シート(B)と対向する側の面、樹脂発泡体シート(B)の樹脂シート(A)と対向する側の面は、表面処理されていてもよい。表面処理の方法としては、コロナ処理、プラズマ放電処理、オゾン、紫外線照射処理等が挙げられ、これらの中でも、コロナ処理が好ましい。
なお、コロナ処理は、樹脂シート(A)と樹脂発泡体シート(B)のいずれか一方に施してもよく、両方に施してもよいが、加工時においては支持体を補強材として有効に機能させつつ、加工後においては支持体を容易に剥離できるようにする観点から、いずれか一方に施すことが好ましい。
【0036】
[積層体の製造方法]
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されないが、樹脂シート(A)と樹脂発泡体シート(B)とを貼り合わせて製造することが好ましい。
樹脂シート(A)と樹脂発泡体シート(B)との貼り合わせは、加圧して行うことが好ましい。加圧は、ロールプレス、平板プレス等を用いて行うことができるが、生産性の観点から、ロールプレスにより貼り合わせることが好ましい。加圧する際の、圧着圧力は、支持体の材質等に応じて適宜決定すればよいが、例えば、0.5〜3.0MPaの範囲とすることができる。また、加圧時には加熱してもよく、加熱温度は、例えば、30〜70℃の範囲とすることができる。
本発明の積層体は、生産効率の観点から、ロール・トゥ・ロール方式の製造設備を用いて製造することが好ましい。得られた積層体は、巻き取りロールに巻き取ってロール状の積層体としてもよい。
【0037】
[積層板の用途等]
本発明の積層体は、通常、加工等を行った後、樹脂発泡体シート(B)から樹脂シート(A)は剥離される。
本発明の積層体が備える樹脂発泡体シート(B)の用途は、特に限定されないが、例えば、電子機器内部で使用することが好ましい。本発明の積層体は、取り扱い性に優れるため、特に、樹脂発泡体シート(B)を配置するスペースが小さい各種の携帯電子機器内部で好適に使用できる。携帯電子機器としては、携帯電話、カメラ、ゲーム機器、電子手帳、パーソナルコンピュータ等が挙げられる。また、本発明の積層体が備える樹脂発泡体シート(B)を、電子機器内部において、衝撃吸収材、シール材として使用可能であり、粘着テープに使用してもよい。
【実施例】
【0038】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
[測定方法]
各物性の測定方法及び評価方法は、次の通りである。
【0040】
<見掛け密度及び発泡倍率>
樹脂発泡体シートの見掛け密度は、JIS K7222(2005)に準拠して測定し、その逆数を発泡倍率とした。
【0041】
<引張弾性率>
樹脂シート及び樹脂発泡体シートの引張弾性率は、JIS K7222(2005)に準拠して、23℃におけるMD方向の引張弾性率を求めた。
【0042】
<曲げ剛性>
樹脂シートの曲げ剛性は、上記の測定方法で得られた引張弾性率を用いて、上記式(1)に基づいて計算した。
【0043】
<ロール・トゥ・ロール(RtoR)加工時の伸びの発生>
RtoR加工時の伸びの発生は、各例で得られた積層体又は樹脂発泡体シートを、ロール間距離が2m、ロール間張力が70N/mとなる状態でRtoR装置に設置し、室温にて搬送速度10m/minの条件下で連続搬送した場合における伸びの有無を、シート幅の測定により確認した。一般に、シートがMD方向に伸張されると、ポアソン効果により直行するTD方向の長さ(=シート幅)が減少することが知られている。これを、JIS−B−7512に適合したコンベックスルールを用いて、搬送後のロール間のシート幅を測定し、シート幅が20mm以上減少した場合は伸びが発生し、減少量が20mm未満の場合は伸びが発生しなかったと判断した。伸びが確認されなかった場合を「A」、伸びが確認された場合を「B」とした。
【0044】
<シワの発生面積率>
シワの発生面積率は、各例で得られた積層体又は樹脂発泡体シートについて、300m長さの観察領域中におけるシワが発生している領域の面積を計測し、その面積率(%)(シワ発生面積×100/観察領域面積)を求めた。
なお、測定対象の積層体又は樹脂発泡体シートは、製造後、ロール形態で23℃で160時間保管したものとした。シワが発生している領域は、特定のシワを含むTD方向の領域全体の領域とした。
【0045】
<展開性>
展開性は、各例で得られた積層体又は樹脂発泡体シートのロールから、積層体又は樹脂発泡体シートを、23℃にて10m/minの速度で送り出し、積層体同士又は樹脂発泡体シート同士が密着することなく送り出せるかどうかを目視にて確認した。
積層体同士又は樹脂発泡体シート同士が密着せず、樹脂発泡体シートの損傷なく送り出し可能であった場合を「A」、積層体同士又は樹脂発泡体シート同士が密着して、樹脂発泡体シートの損傷なく送り出すことができなかった場合を「B」とした。
【0046】
[実施例1]
表1に示す配合組成で、樹脂、熱分解型発泡剤、気泡核調整剤及び酸化防止剤を押出機に供給して130℃で溶融混練し、長尺状の発泡性組成物からなる樹脂シートに押出した。
次に、上記長尺状の樹脂シートの両面に加速電圧500kVの電子線を5.0Mrad照射して樹脂シートを架橋した後、架橋した樹脂シートを熱風及び赤外線ヒーターにより250℃に保持された発泡炉内に連続的に送り込んで加熱して発泡させて、厚さ300μmの発泡シートを得た。得られた樹脂発泡体シートは、支持体である樹脂シートとの密着性を向上させることを目的として、コロナ処理を行った。なお、コロナ処理は、春日電機株式会社製の高周波電源「AGF−B20」と、ワイヤー型電極とを用いて、温度23℃、湿度60%RH雰囲気下で、コロナ処理密度1.0kW・min/m
2の条件で行った。
次いで、ロール・トゥ・ロール方式の製造装置を用いて、上記で得られた樹脂発泡体シートを一方のロールから送り出し、表1に示す二軸延伸ポリプロピレン(OPP)シートを他方のロールから送り出して、両者をロールプレスを使用して、温度30℃、圧着圧力1.0MPaの条件下で加圧して貼り合わせて積層体を得た。ロールプレスして形成された積層体は、その後、ロールに巻き取ってロール状の形態とした。
【0047】
[実施例2〜6、比較例1〜3、7〜9]
実施例1において、樹脂シート(A)及び樹脂シート(B)を、表1に示すものに変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0048】
[比較例4]
実施例1において、樹脂発泡体シートと二軸延伸ポリプロピレン(OPP)シートとの貼り合わせを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層体を得た。
【0049】
[比較例5]
実施例3において、樹脂発泡体シートと二軸延伸ポリプロピレン(OPP)シートとの貼り合わせを行わなかったこと以外は、実施例4と同様にして積層体を得た。
【0050】
[比較例6]
実施例4において、樹脂発泡体シートと二軸延伸ポリプロピレン(OPP)シートとの貼り合わせを行わなかったこと以外は、実施例5と同様にして積層体を得た。
【0051】
上記の各例で得られた積層体の評価結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
(*1)
・OPP:二軸延伸ポリプロピレンシート(フタムラ化学株式会社製、商品名:FOA)
・PET:二軸延伸ポリエチレンテレフタレートシート(東洋紡株式会社製、商品名:E3120−12)
・LL:直鎖状低密度ポリエチレンシート(東洋紡株式会社製、商品名:SE620L)
・CPP:無軸延伸ポリプロピレンシート(東洋紡株式会社製、商品名:P1128)
(*2)直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(エクソン・ケミカル社製、商品名「EXACT3027」、密度:0.900g/cm
3)
(*3)アゾジカルボンアミド
(*4)酸化亜鉛
【0054】
表1から、樹脂シート(A)として、曲げ剛性が2.0〜45.0MPa・mm
4、かつ引張弾性率が100〜9,000MPaである樹脂シートを使用した実施例1〜6の積層体は、RtoR加工時の伸びが抑制されると共に展開性にも優れ、シワ発生面積率を低く抑えられていることが分かる。一方、曲げ剛性が2.0MPa・mm
4未満の樹脂シートを使用した比較例1〜3及び7〜9の積層体は、シワ発生面積率が大きかった。また、支持体として樹脂シートを使用しなかった比較例4〜6の樹脂発泡体シートは、RtoR加工時の伸びが発生すると共に、展開性に劣っていた。