(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、図面を用いて発明の構成を説明するにあたり、同じものを指す符号は異なる図面間でも共通して用いる。なお、同様のものを指す際にはハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0022】
以下の実施の形態に示す構成は、実施の形態に示す他の構成に対して適宜、適用、組み合わせ、又は置き換えなどを行って、本発明の一態様とすることができる。
【0023】
なお、図において、大きさ、膜(層)の厚さ、または領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。
【0024】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が−10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、−5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が−30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0025】
(実施の形態1)
本実施の形態では、開示する発明の一態様に係る半導体装置の回路構成、作製方法および動作について、
図1乃至
図17を参照して説明する。なお、以下の記載において、例えば、“[x,y]”は第x行第y列の要素を意味し、“[z]”は、第z行あるいは第z列のいずれかの要素を意味する。特に行や列を指定する必要がないときは、これらの表記は省略される。
【0026】
はじめに、半導体装置のメモリセルアレイの回路構成について、
図1を参照して説明する。
図1には、n行m列のメモリセルアレイの回路図が示されている。すなわち、メモリセルMC[1,1]乃至メモリセルMC[n,m]のメモリセルと、それらを制御するための書き込みワード線WWL[1]乃至書き込みワード線WWL[n]、読み出しワード線RWL[1]乃至読み出しワード線RWL[n]、書き込みビット線WBL[1]乃至書き込みビット線WBL[m]、読み出しビット線RBL[1]乃至読み出しビット線RBL[m]を有する。回路構成は、特許文献1乃至特許文献3を参照できる。
【0027】
後述するように、メモリセルMC[1,1]乃至メモリセルMC[n,m]は、基板(半導体ウェハー等)の上に立体的に積層されている。具体的には、メモリセル層114[1](メモリセルMC[1,1]乃至メモリセルMC[1,m])の上にメモリセル層114[2](メモリセルMC[2,1]乃至メモリセルMC[2,m])、というように積層されている。
【0028】
例えば、それぞれのメモリセルMCは、書き込みトランジスタWTr、読み出しトランジスタRTr、容量素子CSを有する。書き込みトランジスタWTrは、書き込みワード線WWLでオンオフが制御される。保持容量の一方の電極の電位は、読み出しワード線RWLで制御される。保持容量の他方の電極は、読み出しトランジスタRTrのゲートに電気的に接続されている。保持容量の他方の電極をメモリノードとも言う。各メモリセルのメモリノードは、書き込みトランジスタWTrのソースとドレインの一方とも電気的に接続する。
【0029】
また、書き込みトランジスタWTrのソースとドレインは、回路構成的には、隣接するメモリセルの書き込みトランジスタWTrのソースとドレインと直列に、電気的に接続する。同様に、読み出しトランジスタRTrのソースとドレインは、隣接するメモリセルの読み出しトランジスタRTrのソースとドレインと直列に、電気的に接続する。
【0030】
後述するように、各メモリセルMCの書き込みトランジスタWTr、読み出しトランジスタRTrは、それぞれ、柱状の半導体を他のメモリセルMCと共有することで、上記のような回路構成を得ることができる。具体的には、ある列の書き込みトランジスタWTrは、積層された書き込みワード線WWL[1]乃至書き込みワード線WWL[n]と、それらを貫通する第1の穴に埋め込まれた柱状の第1の半導体とによって構成できる。ここで、第1の穴の側面には、第1の半導体と書き込みワード線WWL[1]乃至書き込みワード線WWL[n]との間に絶縁膜が存在し、書き込みワード線WWL[1]乃至書き込みワード線WWL[n]と第1の半導体との間の電流の流れを妨げる作用を有する。
【0031】
同様に、ある列の読み出しトランジスタRTrは、積層された、各メモリセルMCのメモリノードに相当するnの電極層(導電体層)と、それらを貫通する第2の穴に埋め込まれた柱状の第2の半導体とによって構成できる。ここで、第2の穴の側面には、第2の半導体と読み出しワード線RWL[1]乃至読み出しワード線RWL[n]との間に絶縁膜が設けられている。一方、第1の穴は、nの電極層をも貫通し、第1の半導体とnの電極層それぞれとの間の電気的な接続が確保される。
【0032】
動作方法例について、
図2および
図3を用いて説明するが、詳細は、特許文献1乃至特許文献3を参照できる。なお、以下の説明で用いられる、ローレベル、ハイレベルは、特定の電位を意味するものではなく、また、配線が異なれば、具体的な電位も異なる可能性があることに注意すべきである。例えば、書き込みワード線WWLのハイレベル、ローレベルは、読み出しワード線RWLのハイレベル、ローレベルと、それぞれ、異なる電位であってもよい。
【0033】
最初に、データ(2値あるいは多値)を第i行第j列(iは1以上n以下、jは1以上m以下)のメモリセルMC[i,j]に書き込む例を、
図2を用いて説明する。書き込むデータは、
図1の上方(メモリセル層114[n]側)から供給されるとする。したがって、
図1に示す回路では、書き込みは、下層のメモリ層から上層のメモリ層に向かって順次おこなわれる。例えば、メモリセル層114[2]にデータを書き込んだ後、メモリセル層114[1]にデータを書き込もうとすると、一度、メモリセル層114[2]に書き込まれているデータを読み出して、保存しないと、メモリセル層114[1]にデータを書き込む段階で失われてしまう。
【0034】
下層のメモリセル層のデータを保護するためには、書き込む層より下層にある書き込みトランジスタWTrをオフとする。したがって、
図2に示されるように、メモリセルMC[i,j]にデータを書き込む場合には、書き込みワード線WWL[1]乃至書き込みワード線WWL[i−1]の電位はローレベルとして、メモリセル層114[1]乃至メモリセル層114[i−1]には、データが供給されないようにする。
【0035】
一方、メモリセル層114[i+1]乃至メモリセル層114[n]の書き込みトランジスタWTrがオフであると、メモリセル層114[i]に書き込むデータが到達しない。したがって、
図2に示されるように、書き込みワード線WWL[i]乃至書き込みワード線WWL[n]の電位はハイレベルとして、それぞれが制御する書き込みトランジスタWTrをオンとし、メモリセル層114[i]にデータが供給されるようにする。書き込みビット線WBL[j]には、書き込むべきデータ(2値あるいは多値)に応じた電位が供給される。理想的には、その電位が、メモリセルMC[i,j]のメモリノードに供給される。
【0036】
なお、
図1の回路では、読み出しビット線RBLは独立に制御できるので、特定の電位にする必要は無いが、例えば、ローレベルとするとよい。また、読み出しワード線RWLの電位もローレベルとするとよい。
【0037】
次に、メモリセルMC[i,j]に保持されているデータを読み出す例を、
図3を用いて説明する。この際、各メモリセルMCに保持されたデータを維持するために、書き込みトランジスタWTrは、十分なオフ状態であることが求められる。そこで、書き込みワード線WWL[1]乃至書き込みワード線WWL[n]の電位はローレベルとされる。
【0038】
図1に示す回路では、特定のメモリセルMCのデータの読み出しは、(そのメモリセルの含まれる列の)他の全てのメモリセルの読み出しトランジスタRTrをオンとした上で、読み出すメモリセルMCの読み出しトランジスタRTrの状態を、保持されているデータに応じたものとなるように設定することでおこなわれる。
【0039】
そこで、メモリセルMC[1,j]乃至メモリセルMC[i−1,j]およびメモリセルMC[i+1,j]乃至メモリセルMC[n,j]の読み出しトランジスタが(それぞれのメモリセルMCが保持しているデータに関わらず)オンとなるように、読み出しワード線RWL[1]乃至読み出しワード線RWL[i−1]と読み出しワード線RWL[i+1]乃至読み出しワード線RWL[n]の電位はハイレベルとされる。
【0040】
一方、読み出しワード線RWL[i]の電位はローレベルとする。その結果、読み出しビット線RBL[j]の電位は、当初の電位から変動し、メモリセルMC[i,j]のメモリノードの電位(すなわち、メモリセルMC[i,j]の読み出しトランジスタRTrのゲートの電位)に応じたものとすることができる。
【0041】
例えば、読み出しビット線RBL[j]の一端(第1のノード)に0V、他端(第2のノード)に+3Vの電位を与える。そして、第1のノードをフローティングにして、その後の電位を観測する。
図3に示すように、読み出しワード線RWL[1]乃至読み出しワード線RWL[i−1]と読み出しワード線RWL[i+1]乃至読み出しワード線RWL[n]の電位をハイレベルとすると、第1のノードの電位は、第2のノードから供給される電荷によって上昇するが、メモリセルMC[i,j]の読み出しトランジスタRTrのみかけのしきい値を超えて上昇することは困難となる。
【0042】
このようにして、メモリセルMC[i,j]に保持されているデータを読み出すことができる。もちろん、メモリセルMC[i,j]の読み出しトランジスタRTrのみかけのしきい値はアナログ値とすることもでき、それに応じて、第1のノードの電位もアナログ値として読み出すこともできる。つまり、多値データを読み出すこともできる。
【0043】
以下、本実施の形態の半導体装置の構造の理解を助けるため、その作製方法について、
図4乃至
図13を用いて説明する。なお、
図4(A)、
図5(A)、
図6(A)は、作製途中の半導体装置を上方より見た模式図であり、
図4(B)、
図5(B)、
図6(B)は、
図4(A)、
図5(A)、
図6(A)中の点Aと点Bを結ぶ直線での断面模式図である。なお、
図4(A)、
図5(A)、
図6(A)中の点Aと点Bの位置は同一である。
図7乃至
図13は、上記の点Aと点Bを結ぶ直線での断面模式図である。
【0044】
図4(B)に示すように、半導体装置の基板としては、既に素子分離絶縁体102、トランジスタ103、層間絶縁物104、コンタクトプラグ105等を有する集積回路が形成された半導体ウェハー101を用いる。層間絶縁物104、コンタクトプラグ105を覆って、絶縁体106を形成する。さらに、その上に、例えば、加熱により水素を放出する物性を有する絶縁体107を形成する。絶縁体107としては、水素を含有する窒化珪素を好適に用いることができる。
【0045】
絶縁体106、絶縁体107は、スパッタリング法、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、分子線エピタキシー(MBE:Molecular Beam Epitaxy)法またはパルスレーザ堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法などを用いて形成することができる。
【0046】
なお、CVD法は、プラズマを利用するプラズマCVD(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、熱を利用する熱CVD(TCVD:Thermal CVD)法、光を利用する光CVD(Photo CVD)法などに分類できる。さらに用いる原料ガスによって金属CVD(MCVD:Metal CVD)法、有機金属CVD(MOCVD:Metal Organic CVD)法に分けることができる。
【0047】
そして、絶縁体107に読み出しワード線RWL[1]に相当する、第1の配線108[1]を埋め込む。第1の配線108[1]は、その表面が酸化等の化学反応により絶縁化するような材料であることが好ましい。例えば、珪素、アルミニウム等を用いることができる。第1の配線108[1]は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて導電性の膜を形成した後、CMP法でエッチングすることで得られる。
【0048】
図4(A)に示すように、第1の配線108[1]は、一の方向に延在する。なお、
図4(A)には、上記の第1の穴(穴119)、および第2の穴(穴116)を形成する場所を点円で示す。
図4(A)からわかるように、第1の配線108[1]は、これらの穴とは重ならないように設けられる。なお、穴116[1]、穴119[1]は、第1列のメモリセルを貫通する穴を、穴116[2]、穴119[2]は、第2列のメモリセルを貫通する穴を、それぞれ表す。なお、穴116[1]、穴116[2]、穴119[1]、穴119[2]の位置は、
図5(A)、
図6(A)にも点円で示す。
【0049】
次に、
図5(B)に示されるように、絶縁体107、第1の配線108[1]の上に接して容量絶縁膜109を形成する。容量絶縁膜109は、例えば、酸化珪素等の絶縁性の高い材料を用いるとよい。あるいは、比誘電率が10以上である高誘電性材料(例えば、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム等)を用いてもよい。容量絶縁膜109は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて形成することができる。また、容量絶縁膜109は、加熱により水素を放出する物性を有してもよい。
【0050】
容量絶縁膜109の上に、メモリノードとして、また、読み出しトランジスタのゲートとして機能するメモリノード電極110[1,1]を設ける。メモリノード電極110[1,1]は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて導電性の膜を形成した後、必要とする形状にエッチングすることで得られる。
【0051】
図5(B)からわかるように、第1の配線108[1]は、容量絶縁膜109を介して、メモリノード電極110[1,1]と対向する。したがって、第1の配線108[1]と容量絶縁膜109とメモリノード電極110[1,1]とで、容量素子CSを形成することができる。
【0052】
メモリノード電極110[1,1]は、その表面が化学的に安定である、あるいは、化学反応によって変質しても導電性を維持できる材料、あるいは、化学反応によって変質しても、他の反応によって容易に導電性を回復できる材料、化学反応によって除去される材料等で形成されることが望ましい。
【0053】
例えば、上記化学反応が酸化反応である場合、(1)金や白金のように酸化されにくい金属あるいは合金、(2)亜鉛のように酸化物が導電性である金属あるいは合金、(3)酸化亜鉛、酸化インジウム、あるいは、亜鉛および/またはインジウムを有する導電性金属酸化物(インジウム錫複合酸化物やインジウム亜鉛複合酸化物、アルミニウム亜鉛複合酸化物、インジウム亜鉛ガリウム複合酸化物等、亜鉛および/またはインジウム以外に、ガリウム、亜鉛、錫、アルミニウムのいずれか1以上を有する酸化物等)等、酸化反応によって導電性が著しく低下しない化合物、(4)錫、ニッケル、銅のように、酸化されても、容易に還元できる金属あるいは合金、あるいは、(5)グラファイト、グラフェンのように酸化されると気化し、表面に絶縁性の化合物が形成されない導電性材料、を用いるとよい。
【0054】
メモリノード電極110[1,1]は、加熱により水素を放出する材料を用いて形成されてもよい。
【0055】
図5(A)からわかるように、メモリノード電極110[1,1]は、限られた大きさに形成される。また、メモリノード電極110[1,1]に隣接して、メモリノード電極110[1,2]も設けられる。メモリノード電極110[1,1]はメモリノード電極110[1,2]に物理的に接触しない。メモリノード電極110[1,1]、メモリノード電極110[1,2]は、それぞれ、メモリセルMC[1,1]と、その隣のメモリセルMC[1,2]のメモリノードとして機能する。また、
図5(A)からわかるように、メモリノード電極110[1,1]、メモリノード電極110[1,2]には、それぞれ、穴116[1]と穴119[1]、穴116[2]と穴119[2]が貫通する。
【0056】
次に、
図6(B)に示すように、例えば、加熱により水素を放出する物性を有する絶縁体111を、容量絶縁膜109、メモリノード電極110[1,1]の上に形成する。絶縁体111としては、水素を含有する窒化珪素を好適に用いることができる。絶縁体111は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて形成することができる。
【0057】
さらに、その上に、例えば、加熱により水素を放出する物性を有する絶縁体112を形成する。絶縁体112としては、水素を含有する窒化珪素を好適に用いることができる。絶縁体112は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて形成することができる。
【0058】
そして、絶縁体112に書き込みワード線WWL[1]に相当する、第2の配線113[1]を埋め込む。第2の配線113[1]は、第1の配線108[1]と同様な材料と作製方法を用いるとよい。このようにして、第1のメモリセル層114[1]を形成する。
【0059】
図6(A)に示すように、第2の配線113[1]は、第1の配線108[1]と同じ方向に延在する。また、
図4(A)からわかるように、第2の配線113[1]には、穴119[1]、穴119[2]が貫通する。一方、第2の配線113[1]には、穴116[1]、穴116[2]が貫通することはない。
【0060】
以後は、上記を繰り返して、
図7に示すように、メモリセル層114[2]乃至第nのメモリセル層114[n]をメモリセル層114[1]上に積層する。第nのメモリセル層114[n]の上には、加熱により水素を放出する物性を有する絶縁体115を形成する。絶縁体115としては、水素を含有する窒化珪素を好適に用いることができる。
【0061】
その後、
図8に示すように、絶縁体115からコンタクトプラグ105へ達する穴116[1]を形成し、穴116[1]の側面を絶縁膜117で覆う。絶縁膜117は、酸化珪素、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウムのいずれか、あるいは、それらの多層膜を用い、厚さ10nm乃至30nmとなるようにするとよい。例えば、ALD法等によって、絶縁膜を形成した後、異方性エッチングによって、基板面に平行な部分をエッチングし、
図8に示すように、コンタクトプラグ105が露出する形状とできる。
図4(A)に示されるように、穴116[1](穴116[2])は円形の断面を有するが、これに限られない。
【0062】
その後、
図9に示すように、穴116[1]を第1の半導体118[1]で埋める。第1の半導体118は、CVD法、MBE法またはALD法などを用いて形成することができる。第1の半導体118は、多結晶でもよい。第1の半導体118としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、ガリウム砒素、窒化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の化合物半導体を用いることができる。特に、第1の半導体118は、読み出しトランジスタRTrのチャネルとなるので、オン抵抗が低いこと(オン電流が高いこと)が求められ、シリコンが好適である。
【0063】
次に、
図10に示すように、絶縁体115から層間絶縁物104へ達する穴119[1]を形成する。なお、穴119[1]は、少なくとも、絶縁体115からメモリセル層114[1]のメモリノード電極110[1,1]までを貫通していればよい。
【0064】
さらに、
図11に示すように、穴119[1]に面する第2の配線113の表面を酸化し、酸化物膜120を形成する。例えば、第2の配線113に珪素を用いる場合には、熱酸化により、表面に酸化珪素を形成することができる。一方で、この過程で、メモリノード電極110は、穴119[1]に面する表面の導電性がある程度維持される、あるいは、その後にある程度回復させることが必要とされる。メモリノード電極110が、上記(1)乃至(5)に示した材料によって構成されると好ましい。
【0065】
他の方法としては、第2の配線113が広い範囲に存在しているのに対し、メモリノード電極110が絶縁体中に分散していることに着目して、第2の配線113とメモリノード電極110との電気的な差を用いて選択的に酸化する方法がある。例えば、電解溶液中あるいはプラズマ中で、第2の配線113に何らかの電位を供給することで、穴119[1]に面する第2の配線113の表面を選択的に酸化させる。具体的には、陽極酸化法により、穴119[1]に面する第2の配線113の表面に絶縁性の酸化物膜を形成することができる。一方、メモリノード電極110には、そのような電位が供給されないので絶縁性の酸化物膜は形成されない。
【0066】
その後、
図12に示すように、穴119[1]を第2の半導体121[1]で埋める。第2の半導体121は、CVD法、MBE法またはALD法などを用いて形成することができる。第2の半導体121としては、シリコン、ゲルマニウムのような単体半導体、ガリウム砒素、窒化ガリウム、インジウムガリウム亜鉛酸化物等の化合物半導体を用いることができる。特に、第2の半導体121は、書き込みトランジスタWTrのチャネルとなるので、オフ抵抗が高いこと(オフ電流が低いこと)が求められ、インジウムガリウム亜鉛酸化物が好適である。インジウムガリウム亜鉛酸化物については後述する。また、特許文献1乃至特許文献3を参照してもよい。
【0067】
第2の半導体121として、インジウムガリウム亜鉛酸化物を、絶縁体106、絶縁体107、容量絶縁膜109、メモリノード電極110、絶縁体111として、加熱により水素を放出する物性を有する材料を、それぞれ用いる場合には、その後、熱処理をおこなうことにより、絶縁体106、絶縁体107、容量絶縁膜109、メモリノード電極110、絶縁体111から、水素が第2の半導体121に拡散し、導電性を呈するようになる。すなわち、
図13に示すように、導電性領域122が選択的に形成される。この際、第2の半導体121のうち、導電性領域122が形成されない部分(第2の配線113と重なる部分)は、トランジスタのチャネルとして機能する。
【0068】
図14には、第1のメモリセル層114[1]から第3のメモリセル層114[3]までに含まれる、第1の配線108[1]乃至第1の配線108[3]、第2の配線113[1]乃至第2の配線113[3]、第1の半導体118[1]乃至第1の半導体118[3]、第2の半導体121[1]乃至第2の半導体121[3]、第1の半導体118[1]乃至第1の半導体118[3]が貫通する9つのメモリノード電極110[1,1]乃至メモリノード電極110[3,3]、の位置を立体的に示す。
【0069】
なお、第2の半導体121[1]乃至第2の半導体121[3]は
図13に示すように導電性領域122を有する。さらに、
図14には、第2の配線113を酸化して得られる酸化物膜120も示されている。
【0070】
図1と
図4乃至
図14を照合すると以下のことが開示されている。まず、基板(半導体ウェハー101)上にメモリセルMC[1,1]が、さらに、その上にメモリセルMC[2,1]が設けられている。メモリセルMC[1,1]、メモリセルMC[2,1]は、それぞれ、書き込みトランジスタWTr(第2の配線113と酸化物膜120と第2の半導体121を有する)、読み出しトランジスタRTr(メモリノード電極110と絶縁膜117と第1の半導体118を有する)、容量素子CS(第2の配線113に略平行に延在する第1の配線108と容量絶縁膜109とメモリノード電極110を有する)を有する。
【0071】
メモリセルMC[1,1]の読み出しトランジスタRTrのゲート(メモリノード電極110[1,1])は書き込みトランジスタWTrのソースまたはドレインの一方(第2の半導体121の導電性領域122のうち、第2の配線113[1]とメモリノード電極110[1,1]との間の部分)および容量素子CSの一方の電極(メモリノード電極110[1,1])と電気的に接続している。メモリセルMC[2,1]の読み出しトランジスタRTrのゲートも同様である。
【0072】
また、メモリセルMC[1,1]の読み出しトランジスタRTrのチャネル長方向の軸とメモリセルMC[2,1]の読み出しトランジスタRTrのチャネル長方向の軸(
図4(A)に示される穴116[1]を設ける位置を示す点円の中心)は、ともに、第1の半導体118[1]あるいは穴116[1]にあり、互いに重なっている。同様に、メモリセルMC[1,1]の書き込みトランジスタWTrのチャネル長方向の軸とメモリセルMC[2,1]の書き込みトランジスタWTrのチャネル長方向の軸(
図4(A)に示される穴119[1]を設ける位置を示す点円の中心)は、ともに、第2の半導体121にあり、互いに重なっている。加えて、これら4つのトランジスタのチャネル長方向は、いずれも基板(半導体ウェハー101)の上面に略垂直である。
【0073】
さらに、例えば、メモリセルMC[1,1]に着目すれば、書き込みトランジスタWTrのゲートとして機能する配線(第2の配線113[1])と、読み出しトランジスタRTrのゲートとして機能する電極(メモリノード電極110[1,1])と、これらを貫通して形成された穴(穴119[1])を埋める半導体(第2の半導体121)とを有する。
【0074】
そして、書き込みトランジスタWTrのゲートとして機能する配線(第2の配線113[1])と穴(穴119[1])を埋める半導体(第2の半導体121)との間に絶縁膜(酸化物膜120)があり、一方、穴(穴119[1])を埋める半導体(第2の半導体121)と読み出しトランジスタRTrのゲートとして機能する電極(メモリノード電極110[1,1])は電気的に接続している。なお、書き込みトランジスタWTrのゲートとして機能する配線(第2の配線113[1])と読み出しトランジスタRTrのゲートとして機能する電極(メモリノード電極110[1,1])との間には、加熱により水素を放出する物性を有する絶縁体(絶縁体111)を有する。
【0075】
書き込みトランジスタWTrのゲートとして機能する配線(第2の配線113[1])と穴(穴119[1])を埋める半導体(第2の半導体121)との間に絶縁膜(酸化物膜120)を形成する条件では、読み出しトランジスタRTrのゲートとして機能する電極(メモリノード電極110[1,1])の表面の導電性が維持される。あるいは、書き込みトランジスタWTrのゲートとして機能する配線(第2の配線113[1])と読み出しトランジスタRTrのゲートとして機能する電極(メモリノード電極110[1,1])に異なる電位を与えた状態で、書き込みトランジスタWTrのゲートとして機能する配線(第2の配線113[1])の表面が酸化される。
【0076】
<変形例1>
図13に示される半導体装置では、第1の半導体118の導電性が問題となるおそれがある。具体的には、第1の半導体118のうち、メモリノード電極110と重なる部分については、メモリノード電極110の電位を操作することで導電性を確保できる。一方、それ以外の部分については、第1の半導体118自身の導電性、あるいは、第1の半導体118とそれに接する絶縁膜117との界面準位等によって導電性が決定される。第1の半導体118を過剰に導電的とすると、読み出しトランジスタRTrのオフ特性が悪化し、第1の半導体118を過剰に絶縁的とすると、読み出し速度が低下する。
【0077】
この問題に対処するためには、
図15に示すように、例えば、第3の配線123と第4の配線124を、それぞれ、第1の配線108、第2の配線113と平行に、かつ、穴116で貫通する位置に形成すればよい。この結果、第1の半導体118の多くの部分がメモリノード電極110、第3の配線123、第4の配線124で覆われるため、第1の半導体118自体の導電性が低くても、これらの配線、電極に供給される電位を操作することで、高い導電性を得ることができる。
【0078】
図15に示される半導体装置の回路構成を
図16に示す。
図1と比較すると明らかであるが、読み出しトランジスタRTrと直列に、複数のトランジスタ(寄生トランジスタPTr1、寄生トランジスタPTr2)が存在する。寄生トランジスタPTr1、寄生トランジスタPTr2は、それぞれ、寄生ワード線PWL1(第3の配線123に相当)、寄生ワード線PWL2(第4の配線124に相当)でオンオフが制御される。すなわち、寄生トランジスタPTr1、寄生トランジスタPTr2をオンとすることで、第1の半導体118の局所的な導電性を高めることができる。
【0079】
<変形例2>
図13および
図15に示す半導体装置では、第1の半導体118、第2の半導体121は、それぞれ、穴116、穴119に埋め込まれるため、柱状(例えば、円柱)であるが、
図17に示すように筒状(例えば、円筒)の形状にしてもよい。
図17に示される半導体装置は、円筒の第1の半導体125[1]と、円筒の第2の半導体127[1]が、穴116、穴119に設けられる。また、第1の半導体125[1]と、第2の半導体127[1]の中空部分は、絶縁体126、絶縁体128で、それぞれ埋められる。
【0080】
<第2の配線113の厚さ>
第2の配線113の厚さは、書き込みトランジスタWTrのチャネル長を決定する。一般に、書き込みトランジスタWTrのチャネルが短いと短チャネル効果でオンオフ比が低下し、長いとオン電流が低下する。前者はメモリノード電極110に蓄積されている電荷の漏出につながるため、データの保持時間を制約する要因となる。一方、後者は書き込みに長時間を要する原因となる。
【0081】
また、これらとは別に、
図13あるいは
図15より明らかなように、第2の配線113の厚さは、第1の半導体118の高さとも関連する。すなわち、第2の配線113の厚いと、その分、第1の半導体118も高くなり、結果的に、読み出しビット線RBLが長くなり、それに伴って寄生容量も増加する。すなわち、データの読み出しに長時間を要する原因となる。
【0082】
<メモリセルMCの特徴>
メモリセルMCにおいては、従来のフローティングゲート型メモリセルにおいて指摘されているトンネル絶縁膜の劣化が存在しない。これは、原理的な書き込み回数の制限が存在しないことを意味するものである。また、従来のフローティングゲート型メモリセルにおいて書き込みや消去の際に必要であった高電圧も不要である。
【0083】
図12あるいは
図13のようにメモリセルMCを構成することにより、その積層数に応じて、単位面積あたりの記憶容量を増加させることができ、また、上述のように多値データを書き込み読み出すことにより、大容量の半導体装置を提供することができる。
【0084】
<第1の半導体118>
第1の半導体118としては、例えば、多結晶シリコン又は単結晶シリコンなどの結晶性シリコンを用いることができる。ただしこれに限られず、微結晶シリコンやアモルファスシリコンなどを用いてもよいし、シリコンに限られず、ゲルマニウム、炭化シリコン、シリコンゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、酸化亜鉛、酸化ガリウムなどを用いてもよい。また、後述する第2の半導体121に用いることができる半導体を用いてもよい。
【0085】
また、第1の半導体118として多結晶シリコンなどを用いる場合、水素を供給してダングリングボンドを終端する構成としてもよい。具体的には、絶縁体106、絶縁体107、容量絶縁膜109、絶縁体111等に水素を放出する物性を有する絶縁物を用いることで、絶縁膜117を介して、第1の半導体118に水素を供給できる。あるいは、絶縁体126に水素を放出する物性を有する絶縁物を用いることでも同様な効果が得られる。
【0086】
また、第1の半導体118にp型の導電型を付与する不純物またはn型の導電型を付与する不純物が含まれるようにしてもよい。第1の半導体118がシリコンであれば、p型の導電型を付与する不純物としては、例えば、硼素(B)やアルミニウム(Al)などを用いればよい。n型の導電型を付与する不純物としては、例えば、リンやヒ素などを用いればよい。
【0087】
<絶縁膜117と絶縁体126>
絶縁膜117の詳細な構成について説明する。絶縁膜117としては、例えば、ホウ素、炭素、窒素、酸素、フッ素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、塩素、アルゴン、ガリウム、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、ネオジム、ハフニウムまたはタンタルを含む絶縁体を、単層で、または積層で用いればよい。例えば、絶縁膜117としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムまたは酸化タンタルを用いればよい。なお、本明細書等において、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多いものを指し、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多いものを指す。
【0088】
絶縁体126としては、基本的に絶縁膜117として用いることができる材料を用いればよい。ただし、第1の半導体125のダングリングボンドを水素で終端する場合は、絶縁体126に水素を含ませて第1の半導体125に水素を供給すればよい。
【0089】
<第2の半導体121>
第2の半導体121は、インジウムガリウム亜鉛複合酸化物等の金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物を用いたトランジスタは、オフ電流が極めて小さいという特徴を有している(特許文献1乃至特許文献3参照)。このため、書き込みトランジスタWTrをオフ状態とすることで、メモリノード電極110の電位を極めて長時間にわたって保持することが可能である。
【0090】
例えば、書き込みトランジスタWTrのオフ電流が10zA(=1×10
−20A)以下であり、容量素子CSの容量値が1fF程度である場合には、少なくとも10
3秒の期間において、メモリノードの電位の変動を1%以下に抑制することが可能である。すなわち、例えば、10
3秒間であれば、64値のデータを毀損させずに保持することが可能である。なお、保持特性が、書き込みトランジスタWTrのチャネル長や容量素子CSの容量値にも依存することはいうまでもない。
【0091】
第2の半導体121は、例えば、インジウムを含む金属酸化物である。金属酸化物は、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、第2の半導体121は、元素Mを含むと好ましい。元素Mは、好ましくは、Ti、Ga、Y、Zr、La、Ce、Nd、SnまたはHfを表すとする。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素との結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。または、元素Mは、例えば、金属酸化物のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、第2の半導体121は、亜鉛を含むと好ましい。金属酸化物は、亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場合がある。このような酸化物をIn−M−Zn酸化物という。
【0092】
ただし、第2の半導体121は、インジウムを含む金属酸化物に限定されない。第2の半導体121は、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含まず、亜鉛を含む金属酸化物、ガリウムを含む金属酸化物、スズを含む金属酸化物などであっても構わない。
【0093】
また、第2の半導体121は、外側(酸化物膜120側)と内側で組成が異なってもよい。例えば、外側と内側の元素Mの比率を高めて、より絶縁性とし、その間に、元素Mの比率の低い層を有する3層構造であってもよい。ここでは、第2の半導体121は、外側から、第1の層121a、第2の層121b、第3の層121cの3層構造となっているものとする。なお、同様なことは
図17に示される第2の半導体127にも適用できる。
【0094】
以下に、
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)を用いて、In−M−Zn酸化物が有するインジウム、元素Mおよび亜鉛の原子数比の好ましい範囲について説明する。なお、
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)には、酸素の原子数比については記載しない。また、In−M−Zn酸化物が有するインジウム、元素M、および亜鉛の原子数比のそれぞれの項を[In]、[M]、および[Zn]とする。
【0095】
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)において、破線は、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):1の原子数比(−1≦α≦1)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):2の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):3の原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):4の原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=(1+α):(1−α):5の原子数比となるラインを表す。
【0096】
また、一点鎖線は、[In]:[M]:[Zn]=5:1:βの原子数比(β≧0)となるライン、[In]:[M]:[Zn]=2:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:1:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:2:βの原子数比となるライン、[In]:[M]:[Zn]=1:3:βの原子数比となるライン、および[In]:[M]:[Zn]=1:4:βの原子数比となるラインを表す。
【0097】
また、
図18(A)、
図18(B)、および
図18(C)に示す、[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の原子数比、およびその近傍値の金属酸化物は、スピネル型の結晶構造をとりやすい。
【0098】
また、金属酸化物中に複数の相が共存する場合がある(二相共存、三相共存など)。例えば、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:2:1の近傍値である場合、スピネル型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。また、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=1:0:0の近傍値である場合、ビックスバイト型の結晶構造と層状の結晶構造との二相が共存しやすい。金属酸化物中に複数の相が共存する場合、異なる結晶構造の間において、結晶粒界が形成される場合がある。
【0099】
図18(A)に示す領域Aは、In−M−Zn酸化物が有する、インジウム、元素M、および亜鉛の原子数比の好ましい範囲の一例について示している。
【0100】
金属酸化物は、インジウムの含有率を高くすることで、金属酸化物のキャリア移動度(電子移動度)を高くすることができる。従って、インジウムの含有率が高い金属酸化物はインジウムの含有率が低い金属酸化物と比較してキャリア移動度が高くなる。
【0101】
一方、金属酸化物中のインジウムおよび亜鉛の含有率が低くなると、キャリア移動度が低くなる。従って、原子数比が[In]:[M]:[Zn]=0:1:0、およびその近傍値である場合(例えば
図18(C)に示す領域C)は、絶縁性が高くなる。
【0102】
例えば、第2の層121bに用いる金属酸化物は、キャリア移動度が高い、
図18(A)の領域Aで示される原子数比を有することが好ましい。第2の層121bに用いる金属酸化物は、例えば、MがGaの場合、In:Ga:Zn=4:2:3から4.1、およびその近傍値程度になるようにすればよい。一方、第1の層121aに用いる金属酸化物は、絶縁性が比較的高い、
図18(C)の領域Cで示される原子数比を有することが好ましい。第1の層121aに用いる金属酸化物は、例えば、MがGaの場合、In:Ga:Zn=1:3:4程度になるようにすればよい。
【0103】
特に、
図18(B)に示す領域Bでは、領域Aの中でも、キャリア移動度が高く、信頼性が高い優れた金属酸化物が得られる。
【0104】
なお、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=4:2:3から4.1、およびその近傍値を含む。近傍値には、例えば、[In]:[M]:[Zn]=5:3:4が含まれる。また、領域Bは、[In]:[M]:[Zn]=5:1:6、およびその近傍値、および[In]:[M]:[Zn]=5:1:7、およびその近傍値を含む。
【0105】
また、スパッタリングターゲットとしては、多結晶のIn−M−Zn酸化物を含むターゲットを用いると好ましい。なお、成膜される金属酸化物の原子数比は、上記のスパッタリングターゲットに含まれる金属元素の原子数比のプラスマイナス40%の変動を含む。例えば、MがGaの場合、スパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]の場合、成膜される金属酸化物の組成は、In:Ga:Zn=4:2:3[原子数比]の近傍となる場合がある。また、MがGaの場合、スパッタリングターゲットの組成がIn:Ga:Zn=5:1:7[原子数比]の場合、成膜される金属酸化物の組成は、In:Ga:Zn=5:1:6[原子数比]の近傍となる場合がある。なお、金属酸化物が有する性質は、原子数比によって一義的に定まらない。また、図示する領域は、金属酸化物が特定の特性を有する傾向がある原子数比を示す領域であり、領域A乃至領域Cの境界は厳密ではない。
【0106】
<金属酸化物の構成>
以下では、CAC(Cloud−Aligned Composite)−metal oxideの構成について説明する。
【0107】
CAC−metal oxideとは、材料のある部分では導電性の機能と、材料の別の部分では絶縁性の機能とを有しつつも、材料の全体としては半導体としての機能を有する。なお、CAC−metal oxideを、トランジスタの活性層に用いる場合、導電性の機能は、キャリアとなる電子(またはホール)を流す機能であり、絶縁性の機能は、キャリアとなる電子を流さない機能である。導電性の機能と、絶縁性の機能とを、それぞれ相補的に作用させることで、スイッチングさせる機能(オンオフさせる機能)をCAC−metal oxideに付与することができる。CAC−metal oxideにおいて、それぞれの機能を分離させることで、双方の機能を最大限に高めることができる。
【0108】
また、CAC−metal oxideは、導電性領域、及び絶縁性領域を有する。導電性領域は、上述の導電性の機能を有し、絶縁性領域は、上述の絶縁性の機能を有する。また、材料中において、導電性領域と、絶縁性領域とは、ナノ粒子レベルで分離している場合がある。また、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ材料中に偏在する場合がある。また、導電性領域は、周辺がぼけてクラウド状に連結して観察される場合がある。
【0109】
また、CAC−metal oxideにおいて、導電性領域と、絶縁性領域とは、それぞれ0.5nm以上10nm以下、好ましくは0.5nm以上3nm以下のサイズで材料中に分散している場合がある。ナノ粒子レベルではより巨視的な場合と比較すると、量子的な効果が大きく、一概に、導電性領域と、絶縁性領域とは言えず、両者を合わせた物性を評価する必要が生じることがある。
【0110】
また、CAC−metal oxideは、異なるバンドギャップを有する成分により構成される。例えば、CAC−metal oxideは、絶縁性領域に起因するワイドギャップを有する成分と、導電性領域に起因するナローギャップを有する成分と、により構成される。当該構成の場合、キャリアを流す際に、ナローギャップを有する成分において、主にキャリアが流れる。また、ナローギャップを有する成分が、ワイドギャップを有する成分に相補的に作用し、ナローギャップを有する成分に連動してワイドギャップを有する成分にもキャリアが流れる。このため、上記CAC−metal oxideをトランジスタのチャネル領域に用いる場合、トランジスタのオン状態において高い電流駆動力、つまり大きなオン電流、及び高い電界効果移動度を得ることができる。
【0111】
すなわち、CAC−metal oxideは、マトリックス複合材(matrix composite)、または金属マトリックス複合材(metal matrix composite)と呼称することもできる。
【0112】
<金属酸化物の構造>
酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC−OS(c−axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc−OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a−like OS:amorphous−like oxide semiconductor)および非晶質酸化物半導体などがある。
【0113】
CAAC−OSは、c軸配向性を有し、かつa−b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0114】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC−OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう)を確認することはできない。即ち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC−OSが、a−b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためと考えられる。
【0115】
また、CAAC−OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0116】
CAAC−OSは結晶性の高い酸化物半導体である。一方、CAAC−OSは、明確な結晶粒界を確認することはできないため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、酸化物半導体の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC−OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない酸化物半導体ともいえる。従って、CAAC−OSを有する酸化物半導体は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC−OSを有する酸化物半導体は熱に強く、信頼性が高い。
【0117】
nc−OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc−OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc−OSは、分析方法によっては、a−like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0118】
a−like OSは、nc−OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する酸化物半導体である。a−like OSは、鬆または低密度領域を有する。即ち、a−like OSは、nc−OSおよびCAAC−OSと比べて、結晶性が低い。
【0119】
酸化物半導体は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a−like OS、nc−OS、CAAC−OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0120】
<金属酸化物を有するトランジスタ>
続いて、上記金属酸化物をトランジスタ(特にチャネルが形成される領域、活性層)に用いる場合について説明する。
【0121】
なお、上記金属酸化物をトランジスタに用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0122】
また、トランジスタに用いる場合は、チャネルが形成される領域におけるキャリア密度の低いことが好ましい。金属酸化物のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性と言う。例えば、キャリア密度が8×10
11/cm
3未満、好ましくは1×10
11/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
10/cm
3未満であり、1×10
−9/cm
3以上とすればよい。
【0123】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0124】
また、金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い酸化物半導体にチャネル領域が形成されるトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0125】
従って、トランジスタの電気特性を安定にするためには、チャネル中の不純物濃度を低減することが有効である。また、チャネル中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0126】
<不純物>
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0127】
金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、金属酸化物において欠陥準位が形成される。このため、チャネルにおけるシリコンや炭素の濃度(SIMSにより得られる濃度)を、2×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0128】
また、金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。従って、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている金属酸化物を用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、チャネルにおいて、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られるチャネル中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×10
18atoms/cm
3以下、好ましくは2×10
16atoms/cm
3以下にする。
【0129】
また、金属酸化物において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、チャネルに窒素が含まれているトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。従って、チャネルにおいて、窒素はできる限り低減されていることが好ましい、例えば、チャネル中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×10
19atoms/cm
3未満、好ましくは5×10
18atoms/cm
3以下、より好ましくは1×10
18atoms/cm
3以下、さらに好ましくは5×10
17atoms/cm
3以下とする。
【0130】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。従って、チャネルに水素が多く含まれているトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、チャネル中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×10
20atoms/cm
3未満、好ましくは1×10
19atoms/cm
3未満、より好ましくは5×10
18atoms/cm
3未満、さらに好ましくは1×10
18atoms/cm
3未満とする。
【0131】
チャネル中の不純物を十分に低減することで、トランジスタに安定した電気特性を付与することができる。
【0132】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。先の実施の形態に示す半導体装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルカメラ(ビデオカメラも含む)、録画再生装置、ナビゲーションシステムなど)の記憶装置に適用できる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータや、ノート型のコンピュータや、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。または、先の実施の形態に示す半導体装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。
図19にリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す半導体装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
【0133】
図19(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ200は、筐体201、キャップ202、USBコネクタ203および基板204を有する。基板204は、筐体201に収納されている。例えば、基板204には、メモリチップ205、コントローラチップ206が取り付けられている。基板204のメモリチップ205などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0134】
図19(B)はSDカードの外観の模式図であり、
図19(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード210は、筐体211、コネクタ212および基板213を有する。基板213は筐体211に収納されている。例えば、基板213には、メモリチップ214、コントローラチップ215が取り付けられている。基板213の裏面側にもメモリチップ214を設けることで、SDカード210の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板213に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード210間の無線通信によって、メモリチップ214のデータの読み出し、書き込みが可能となる。基板213のメモリチップ214などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0135】
図19(D)はSSDの外観の模式図であり、
図19(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD220は、筐体221、コネクタ222および基板223を有する。基板223は筐体221に収納されている。例えば、基板223には、メモリチップ224、メモリチップ225、コントローラチップ226が取り付けられている。メモリチップ225はコントローラチップ226のワークメモリであり、例えばDRAMチップを用いればよい。基板223の裏面側にもメモリチップ224を設けることで、SSD220の容量を増やすことができる。基板223のメモリチップ224などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。