特許第6974209号(P6974209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974209
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】溶接方法および溶接装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/028 20060101AFI20211118BHJP
   B23K 9/16 20060101ALI20211118BHJP
   B23K 37/00 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   B23K9/028 C
   B23K9/028 D
   B23K9/16 L
   B23K9/16 M
   B23K37/00 301B
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-28479(P2018-28479)
(22)【出願日】2018年2月21日
(65)【公開番号】特開2019-141882(P2019-141882A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】津村 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】大島 伸紀
(72)【発明者】
【氏名】福辺 卓史
【審査官】 正木 裕也
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭56−045573(JP,U)
【文献】 実開平02−127372(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/028
B23K 9/16
B23K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の筒状の金属のワークの端部同士を突き合わせ、この第1および第2のワークの突き合わせ部分の内側に管体が存在する状態とし、前記管体と前記第1および第2のワークの内面との隙間にシールドガスを導入しながら、前記第1および第2のワークの突き合わせ部分を溶接する溶接方法において、
前記突き合わせ部分への前記管体の移動開始位置において前記管体の外側に隔離パイプをセットする隔離パイプセットステップと、
前記管体の外側にセットされた前記隔離パイプの外側に前記第1のワークをセットする第1ワークセットステップと、
前記第1のワークをセットした後に前記隔離パイプを引き抜く隔離パイプ引抜ステップと、
前記第1および第2のワークの内面に前記管体が触れないように、前記管体の軸心の位置を規制しながら、前記溶接を行う前の前記管体の前記突き合わせ部分への移動、および前記溶接を行った後の前記管体の前記突き合わせ部分からの移動を案内する案内ステップと、を備え
前記案内ステップは、前記溶接を行う前に、前記第1のワークがセットされた前記管体の移動を案内し、前記第1のワークの端部を前記第2のワークの端部に突き合わせる
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項2】
請求項に記載された溶接方法において、
前記案内ステップは、前記管体の移動をガイドレールに沿って案内する
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された溶接方法において、
前記管体と前記第1および第2のワークの内面との隙間への前記シールドガスを前記管体から吹き出すシールドガス吹出ステップを備える
ことを特徴とする溶接方法。
【請求項4】
第1および第2の筒状の金属のワークの端部同士を突き合わせ、この第1および第2のワークの突き合わせ部分の内側に管体が存在する状態とし、前記管体と前記第1および第2のワークの内面との隙間にシールドガスを導入しながら、前記第1および第2のワークの突き合わせ部分を溶接するように構成された溶接装置において、
前記突き合わせ部分への前記管体の移動開始位置において前記管体の外側にセットされ、前記第1のワークが前記管体の外側にセットされた後に、この管体の外面と前記第1のワークの内面との隙間から引き抜かれる隔離パイプと、
前記第1および第2のワークの内面に前記管体が触れないように、前記管体の軸心の位置を規制しながら、前記溶接を行う前の前記管体の前記突き合わせ部分への移動、および前記溶接を行った後の前記管体の前記突き合わせ部分からの移動を案内するように構成された案内機構と、
を備えることを特徴とする溶接装置。
【請求項5】
請求項に記載された溶接装置において、
前記案内機構は、前記管体の移動を案内するガイドレールを含む機構とされている
ことを特徴とする溶接装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載された溶接装置において、
前記管体は、前記管体と前記第1および第2のワークの内面との隙間への前記シールドガスを吹き出す吹出口を備える
ことを特徴とする溶接装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのワークを突き合わせて溶接する溶接方法および溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンレス配管同士を裏波溶接により突き合わせて溶接を行う場合、配管内に設置したシールドガス供給箱体の吹出口を突き合わせ溶接部に配置し、このシールドガス供給箱体の吹出口から突き合わせ溶接部の内側にシールドガスを直接吹き付けるようにしていた(例えば、特許文献1参照)。これにより、突き合わせ溶接部の酸素や水分などの濃度を低下させて溶接焼けを防止することができる。
【0003】
しかしながら、この方法では、突き合わせ溶接部の内側にシールドガスを直接吹き付けるようにしているため、吹き付け部周辺で金属蒸気の温度が下がり、配管(ワーク)の内面にヒュームとして付着するという課題があった。
【0004】
ヒュームは、ワーク中の沸点が低い金属(例えば、ステンレス配管に含まれるマンガンなど)が溶接時に金属蒸気となって空中に舞い、その後に冷却固化したものである。ヒュームは、一般的にはウエスで除去することになるが、ウエスではヒュームを一部しか除去できず、また配管内の作業になるため除去し難い。
【0005】
そこで、本出願人は先に、2つの筒状の金属のワークの端部同士を突き合わせ、このワークの突き合わせ部分の内側に管体が存在する状態とし、管体とワークの内面との隙間にシールドガスを導入しながら、ワークの突き合わせ部分を溶接する方法を提案した(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば、ワーク内面への溶接焼けを防止しつつ、ヒュームを管体外面に付着させるようにして、ワーク内面へのヒュームの付着を防止することができるようになる。
【0006】
図15に特許文献2に示された溶接装置の要部を示す。この溶接装置200は、2つのクランプ204、205と、溶接ヘッド206と、ガス流通管体207と、ガス導入管体208と、圧力調整器209と、圧力計210と、キャップ211と、ガス供給ノズル212と、アタッチメント213とから構成されている。
【0007】
図15において、201,202は筒状のワーク(例えば、ステンレス配管)であり、端部同士を突き合わせた状態で、クランプ204,205により保持されている。ワーク201,202の突き合わせ部分203の内側には、この突き合わせ部分203を越えて、ガス導入管体208の上方側の端部(先端部)208aが位置している。溶接ヘッド206は、ワーク201,202の突き合わせ部分203に相対する電極206aを有している。この溶接ヘッド206をワーク201,202の軸心を中心として回転させることにより、ワーク201,202の突き合わせ部分203を全周に渡って溶接する。
【0008】
この溶接装置200では、ワーク201,202の突き合わせ部分203を溶接する際、ガス供給ノズル212の吹出口から突き合わせ部分203の外側(ワーク201,202の外面)へ向けてシールドガスを吹き付ける。溶接ヘッド206の近傍は半閉鎖空間であり、ガス供給ノズル212から吹き出したシールドガスは外部へ排出される。これにより、ワーク201,202の突き合わせ部分203の外面の溶接焼けを防止することができる。
【0009】
また、この溶接装置200では、ワーク201,202の突き合わせ部分203を溶接する際、ガス導入管体208の下方側の端部(下端部)208bからワーク201,202の内部へシールドガスを導入する。ガス導入管体208の下端部208bは、シールドガスが外部へ漏れないよう、アタッチメント213で塞がれている。また、ワーク202の突き合わせ部分203とは反対側の端面にはキャップ211が取り付けられて、塞がれている。
【0010】
この場合、ガス導入管体208の先端部208aから吹き出され、ワーク201,202の内部へ導入されたシールドガスは、ワーク201,202とガス導入管体208の隙間208cを流れて、ガス流通管体207へ入り、排出通路207aから排出される。
【0011】
これにより、ワーク201,202の突き合わせ部分203の内面の溶接焼けを防止することができる。また、ワーク201,202の突き合わせ部分203を溶接する際、突き合わせ部分203が高温になると金属蒸気が発生するが、突き合わせ部分203に比べてガス導入管体208の温度が低いので、ガス導入管体208の外周面で金属蒸気が冷却固化してヒュームAとして付着する。これにより、ワーク201,202内面へのヒュームの付着も防止することができる。
【0012】
この溶接装置200では、溶接を行う前にワーク201,202内にガス導入管体208を差し入れ、溶接を行った後にワーク201,202内からガス導入管体208を引き抜き、クランプ204,205によるクランプを解除して、溶接されたワーク201,202を取り出すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平10−263812号公報
【特許文献2】特開2013−237067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、この溶接装置200では、ワーク201,202内へのガス導入管体208の差し抜きに際し、ガス導入管体208の先端部208aが振らつき、ガス導入管体208の外周面に付着しているヒュームAがワーク201,202の内面に転写してしまうことがあった。
【0015】
すなわち、溶接を行った後に、ガス導入管体208をワーク201,202内から引き抜く際、ガス導入管体208がワーク201,202の内面に接触することによって、ガス導入管体208の外周面に付着しているヒュームAがワーク201,202の内面に転写してしまう。
【0016】
また、溶接を行う前に、ガス導入管体208をワーク201,202内に差し入れる際、ガス導入管体208がワーク201,202の内面に接触することによって、前回の溶接によってガス導入管体208の外周面に付着しているヒューム(或いは、拭き残されているヒューム)Aがワーク201,202の内面に転写してしまう。
【0017】
従来の溶接装置200では、このようなヒュームAのワーク201,202の内面への転写により、顧客からクレームを受けることがあった。
【0018】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ワークの内面へのヒュームの転写を防止することが可能な溶接方法および溶接装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
このような目的を達成するために本発明は、第1および第2の筒状の金属のワーク(101,102)の端部同士を突き合わせ、この第1および第2のワークの突き合わせ部分(103)の内側に管体が存在する状態とし、管体と第1および第2のワークの内面との隙間にシールドガスを導入しながら、第1および第2のワークの突き合わせ部分を溶接する溶接方法において、第1および第2のワークの内面に管体が触れないように、管体の軸心の位置を規制しながら、溶接を行う前の管体の突き合わせ部分への移動、および溶接を行った後の管体の突き合わせ部分からの移動を案内する案内ステップ(S106,S110)を備えることを特徴とする。
【0020】
本発明では、第1および第2のワークの内面に管体が触れないように、管体の軸心の位置を規制しながら、溶接を行う前の管体の突き合わせ部分への移動、および溶接を行った後の管体の突き合わせ部分からの移動を案内する。例えば、ガイドレールを設け、このガイドレールに沿って管体の移動を案内させるようにする。
【0021】
これにより、本発明では、溶接を行う前の管体の突き合わせ部分への移動に際し、また、溶接を行った後の管体の突き合わせ部分からの移動に際し、ワークの内面に管体が触れないようにすることが可能となる。
【0022】
なお、上記説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の構成要素を、括弧を付した参照符号によって示している。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、本発明によれば、第1および第2のワークの内面に管体が触れないように、管体の軸心の位置を規制しながら、溶接を行う前の管体の突き合わせ部分への移動、および溶接を行った後の管体の突き合わせ部分からの移動を案内するようにしたので、溶接を行う前の管体の突き合わせ部分への移動に際し、また、溶接を行った後の管体の突き合わせ部分からの移動に際し、ワークの内面に管体が触れないようにして、管体の外周面に付着しているヒュームのワーク内面への転写を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第1工程を説明する図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第2工程を説明する図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第3工程を説明する図である。
図4図4は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第4工程を説明する図である。
図5図5は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第5工程を説明する図である。
図6図6は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第6工程を説明する図である。
図7図7は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第7工程を説明する図である。
図8図8は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第8工程を説明する図である。
図9図9は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第9工程を説明する図である。
図10図10は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第10工程を説明する図である。
図11図11は、本発明の実施の形態に係る溶接方法の第11工程を説明する図である。
図12図12は、溶接されたワークからキャップおよびセットナットを取り外す様子を示す図である。
図13図13は、本発明の実施の形態に係る溶接方法を説明するフローチャートである。
図14図14は、本発明の実施の形態に係る溶接装置の全体の構成を示す図である。
図15図15は、特許文献2に示された溶接装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1図12に本発明の実施の形態に係る溶接方法の工程図を示す。
【0026】
〔第1工程(ノズルを拭く):図1
図1において、104,105はクランプ、107はガス流通管体、108はガス導入管体(以下、ノズルと呼ぶ。)である。
【0027】
クランプ104,105は、クランプ支持台114に設けられている。ガス流通管体107は、このガス流通管体107の上面107aに開口する流通路107bを備え、流通路107bはガス流通管体107の側面107cに開口する排出通路107dと連通している。
【0028】
ガス流通管体107には、流通路107bの底面107eを貫通してノズル108が固定されており、ノズル108の一方側の端部(先端部)108aは、ガス流通管体107の流通路107bを抜けて、ガス流通管体107の上面107aから所定距離L離れた位置まで突き出ている。このガス流通管体107に貫通固定されたノズル108が本発明でいう管体に相当する。本実施の形態において、ノズル108はステンレスなどの耐熱性部材で構成されている。
【0029】
また、このノズル108が貫通固定されたガス流通管体107は、ノズル108の軸方向に移動可能にガイドレール117に取り付けられている。ガイドレール117は、ノズルヘッド支持台118に固定されている。以下、ノズル108が貫通固定されたガス流通管体107をノズルヘッド116とも呼ぶ。
【0030】
ガス流通管体107の上面107aには、ノズル108を通して、ガスケット115が載置されている。また、ガス流通管体107の上端部にはその側部にネジ山107fが形成されている。
【0031】
図1は、ノズル108が後述するワーク101,102の突き合わせ部分103(図6参照)への移動開始位置STにある状態を示している。第1工程では、この状態において、ノズル108の先端部108aに付着しているであろうヒュームAを拭き取る(図13に示すステップS101)。
【0032】
〔第2工程(隔離パイプのセット):図2
次に、図2に示すように、ノズル108の外側に隔離パイプを119をセットする(図13に示すステップS102)。この隔離パイプ119のセットは、ノズル108の上方から、隔離パイプ119を落とし込むようにして行う。このとき、隔離パイプ119の下端は、ガス流通管体107の流通路107bの底面107eに当接する。また、ガス流通管体107の上方に突き出ているノズル108の外側が全て隔離パイプ119によって被い隠される。
【0033】
〔第3工程(下側のワークのセット):図3
次に、図3に示すように、ノズル108の外側にセットされた隔離パイプ119の外側に、セットナット120を用いてワーク101(下側のワーク)をセットする(図13に示すステップS103)。この下側のワーク101が本発明でいう第1のワークに相当する。
【0034】
この工程では、セットナット120のネジ溝120aとガス流通管体107のネジ山107fとを螺合させて締め付けることにより、セットナット120とガス流通管体107の上面107aとの間にガスケット115を挾んでワーク101を保持させる。このセットナット120を用いてのワーク101のセットにより、ワーク101の軸心とノズル108の軸心とが一致する。
【0035】
このワーク101のセットに際して、隔離パイプ119をセットしていない場合には、ワーク101の内面にノズル108が接触する虞がある。このため、第1工程(図1)でヒュームAが拭き残されているような場合、このヒュームAがワーク101の内面に転写されてしまうことがある。これに対して、本実施の形態では、第2工程(図2)で隔離パイプ119をセットしているので、ワーク101をノズル108の外側に位置させる際にワーク101の内面にノズル108が接触することがなく、拭き残されているヒュームAがワーク101の内面へ転写されることがない。
【0036】
〔第4工程(隔離パイプの引き抜き):図4
次に、図4に示すように、隔離パイプ119を引き抜く(図13に示すステップS104)。この際、ノズル108に隔離パイプ119が接触したとしても、拭き残されているヒュームAは隔離パイプ119の内面に転写されるのみで、ワーク101の内面に転写されることはない。
【0037】
〔第5工程(上側のワークのクランプ):図5
次に、図5に示すように、クランプ105を用いて、ワーク102(上側のワーク)を固定(クランプ)する(図13に示すステップS105)。この上側のワーク102が本発明でいう第2のワークに相当する。
【0038】
この時、下側のワーク101の軸心と上側のワーク102の軸心とが一致するように、クランプ105によるワーク102の固定位置とセットナット120によるワーク101の固定位置とが定められている。なお、ワーク102の上側は、その端面にキャップ111を取り付けて塞ぐものとする。
【0039】
〔第6工程(ノズルヘッドの上昇(ジャッキ上昇)):図6
次に、図6に示すように、ノズル108が貫通固定されたガス流通管体107(ノズルヘッド116)をガイドレール117に沿って上昇(移動)させる(図13に示すステップS106)。このノズルヘッド116のガイドレール117に沿っての上昇はジャッキ121を用いて行う。
【0040】
ノズルヘッド116をガイドレール117に沿って上昇させると、このノズルヘッド116に固定されているワーク101も一体となって上昇する。このノズルヘッド116の上昇はワーク101の上側の端面がワーク102の下側の端面に突き当たるまで行う。
【0041】
このとき、ワーク101,102の突き合わせ部分103の内側に、この突き合わせ部分103を越えて、ノズル108の先端部108aが位置する。また、ノズルヘッド116のガイドレール117に沿っての上昇に際し、ノズル108の軸心とワーク101の軸心とワーク102の軸心とは一致しているので、ワーク101,102の内面にノズル108が接触することはなく、拭き残されているヒュームAがワーク101,102の内面に転写することはない。
【0042】
すなわち、ワーク101,102の内面にノズル108が触れないように、ノズル108の軸心の位置を規制しながら、ノズル108の突き合わせ部分103への移動がガイドレール117に沿って案内されるので、ワーク101,102の内面にノズル108が接触することがなく、拭き残されているヒュームAがワーク101,102の内面に転写することがない。
【0043】
〔第7工程(下側のワークのクランプ):図7
次に、図7に示すように、ワーク101の上側の端面とワーク102の下側の端面とを突き合わせた状態で、下側のワーク101をクランプ104を用いて固定(クランプ)する(図13に示すステップS107)。
【0044】
〔第8工程(溶接):図8
次に、図8に示すように、溶接ヘッド106によって、ワーク101,102の突き合わせ部分103を全周に渡って溶接する(図13に示すステップS108)。
【0045】
この突き合わせ部分103の溶接に際しては、ガス供給ノズル112の吹出口から突き合わせ部分103の外側(ワーク101,102の外面)へ向けて、クランプ104,105の外側から供給されるシールドガスを吹き付ける。溶接ヘッド106の近傍は半閉鎖空間であり、ガス供給ノズル112から吹き出したシールドガスは外部へ排出される。この例では、クランプ104,105の隙間からも外部へ排出される。これにより、ワーク101,102の突き合わせ部分103の外面の溶接焼けを防止することができる。
【0046】
また、この突き合わせ部分103の溶接に際しては、ノズル108の他方側の端部(下端部)108bからワーク101,102の内部へシールドガスを導入する。ワーク102の突き合わせ部分103とは反対側の端面にはキャップ111が取り付けられて、塞がれている。ノズル108の先端部108aから吹き出され、ワーク101,102の内部へ導入されたシールドガスは、ワーク101,102とノズル108の隙間108cを流れて、ガス流通管体107の流通路107bへ入り、排出通路107dから排出される。
【0047】
これにより、ワーク101,102の突き合わせ部分103の内面の溶接焼けを防止することができる。また、ワーク101,102の突き合わせ部分103を溶接する際、突き合わせ部分103が高温になると金属蒸気が発生するが、突き合わせ部分103に比べてノズル108の温度が低いので、ノズル108の外周面で金属蒸気が冷却固化してヒュームAとして付着する。これにより、ワーク101,102内面へのヒュームの付着も防止することができる。
【0048】
〔第9工程(セットナットを外す):図9
この突き合わせ部分103の溶接後、図9に示されるように、セットナット120を緩め、ガス流通管体107からセットナット120を外す(図13に示すステップS109)。これにより、ノズルヘッド116がフリーとなる。
【0049】
〔第10工程(ノズルヘッドの下降(ジャッキ解除)):図10
次に、ジャッキ121によるノズルヘッド116の支持を解除(ジャッキ解除)する(図13に示すステップS110)。
【0050】
すると、図10に示すように、ノズルヘッド116が自重により、ガイドレール117に沿って下降(移動)し、元の位置(移動開始位置ST)に戻る。
【0051】
このノズルヘッド116のガイドレール117に沿っての下降に際し、ノズル108の軸心とワーク101の軸心とワーク102の軸心とは一致しているので、ワーク101,102の内面にノズル108が接触することはなく、付着しているヒュームAがワーク101,102の内面に転写することはない。
【0052】
すなわち、ワーク101,102の内面にノズル108が触れないように、ノズル108の軸心の位置を規制しながら、ノズル108の突き合わせ部分103からの移動がガイドレール117に沿って案内されるので、ワーク101,102の内面にノズル108が接触することがなく、付着しているヒュームAがワーク101,102の内面に転写することがない。
【0053】
〔第11工程(クランプ解除):図11
次に、図11に示すように、クランプ104,105によるワーク101,102のクランプを解除する(図13に示すステップS111)。この場合、溶接されたワーク101,102には、キャップ111とセットナット120が残されている。このため、図12に示されるように、キャップ111を外して、セットナット120を取り除き、溶接されたワーク101,102を取り出す。
【0054】
図14に、このような工程を経てワーク101,102の突き合わせ部分103の溶接を行う溶接装置100の全体の構成を示す。図14においては、隔離パイプ119をノズル108の外側に被せたままの状態としているが、この隔離パイプ119は上述した第4工程(図4)において引き抜かれるものであり、ワーク101,102の突き合わせ部分103の溶接に際しては存在しない。
【0055】
なお、上述した実施の形態では、ワーク101を固定したノズルヘッド116をガイドレール117に沿って上昇させるようにしたが、ワーク101とワーク102とを突き合わせてクランプ104,105により固定した後、ノズルヘッド116をガイドレール117に沿って上昇させるようにしてもよい。このようにすると、隔離パイプ119やセットナット120を省略することができる。
【0056】
また、上述した実施の形態では、ワーク102の上側の端面にキャップ111を取り付けるようにしたが、ワーク102の上側の端面が最初から塞がれている有底筒状のワークを用いる場合にはキャップ111は不要である。
【0057】
また、上述した実施の形態では、ノズル108の先端部108aからシールドガスを吹き出すようにしたが、例えば、ノズル108に相当する管体に冷却材を流通させ、この管体とワーク101,102との隙間にシールドガスを流しながら、ワーク101,102の突き合わせ部分103の溶接を行うようにしてもよい。この場合、冷却材ではなく、単に外気を連通させるだけでもよい。また、ワーク101,102よりも温度が低くなる部材であれば、管体は棒(円柱)部材などであっても構わない。
【0058】
また、上述した実施の形態では、ノズルヘッド116の移動をガイドレール117に沿って案内させるようにしたが、ノズルヘッド116の移動を案内させる機構はガイドレールに限られるものではなく、ボールねじを用いた機構などを採用してもよい。
【0059】
〔実施の形態の拡張〕
以上、実施の形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明の技術思想の範囲内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【符号の説明】
【0060】
100…溶接装置、101,102…ワーク、103…突き合わせ部分、104,105…クランプ、106…溶接ヘッド、107…ガス流通管体、108…ガス導入管体(ノズル)、108a…先端部、108b…下端部、108c…隙間、111…キャップ、112…ガス供給ノズル、115…ガスケット、116…ノズルヘッド、117…ガイドレール、119…隔離パイプ、120…セットナット、A…ヒューム、ST…移動開始位置。
図1
図2
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