特許第6974214号(P6974214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974214
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】塗装装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 3/10 20060101AFI20211118BHJP
【FI】
   B05B3/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-33226(P2018-33226)
(22)【出願日】2018年2月27日
(65)【公開番号】特開2019-147101(P2019-147101A)
(43)【公開日】2019年9月5日
【審査請求日】2020年12月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】305003542
【氏名又は名称】旭トステム外装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】木村 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恵一
【審査官】 市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−301405(JP,A)
【文献】 実開昭58−031064(JP,U)
【文献】 実開昭63−086863(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B1/00−9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる径の筒状の複数のカップと、
前記複数のカップそれぞれに塗料を供給する複数の供給孔と、を備え、
前記複数のカップの回転軸は、同軸上に配置され、同じ回転軸を中心に一体的に回転するように構成され、
前記複数のカップが一体的に回転することで、前記複数のカップの端部から塗料が噴射され
前記複数のカップのうち、径の大きなカップに塗料を供給する供給孔の開口面積は、径の小さなカップに塗料を供給する供給孔の開口面積よりも大きい塗装装置。
【請求項2】
前記複数のカップは、それぞれ、該カップの端部において周方向に並んで配置される複数の溝を有し、
径の大きなカップの複数の溝のピッチと、径の小さなカップの複数の溝のピッチとは、異なる幅で形成される請求項に記載の塗装装置。
【請求項3】
記複数のカップのうちの径の大きなカップに塗料を供給する複数の供給孔は、それぞれ、前記カップの中心に対して点対称に配置され、
前記複数のカップのうちの径の小さなカップに塗料を供給する複数の供給孔は、それぞれ、前記カップの中心に対して点対称に配置される請求項1又は2に記載の塗装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カップを備える塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カップを備える塗装装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の塗装装置は、カップを回転することで、遠心力によって、カップの下端部から塗料を噴射して、被塗装物に対して、均一の粒径の複数の粒からなる模様を塗装する。特許文献1に記載の塗装装置は、粒径のバラツキを低減して、被塗装物に対して、均一の粒径の複数の粒からなる模様を塗装することができるとされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−188306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被塗装物に対して、デザイン上の観点から、複数種類(例えば、2種類)の大きさの粒径からなる複数の粒の模様の意匠を形成したい場合がある。しかし、特許文献1に記載の塗装装置は、1種類の大きさの粒径の複数の粒の模様しか形成できず、複数種類の大きさの粒径からなる複数の粒の模様を形成できない。複数種類の大きさの粒径からなる複数の粒の模様を形成するためには、異なる大きさの粒径の粒の模様を形成できる複数台の塗装装置を用いて、複数回に分けて塗装を行う必要があり、塗装のための設備が複雑になり易く、設備に要する費用も高くなり易い。また、複数回の塗装を行うため、塗装を行う作業が煩雑となる。そのため、複数種類の大きさの粒径からなる複数の粒の模様を容易に形成できることが求められている。
【0005】
本発明は、複数種類の大きさの粒径からなる複数の粒の模様を容易に形成できる塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、異なる径の筒状の複数のカップ(例えば、後述の外側カップ10、内側カップ20)を備え、前記複数のカップの回転軸(例えば、後述の回転軸J)は、同軸上に配置され、同じ回転軸を中心に一体的に回転するように構成され、前記複数のカップが一体的に回転することで、前記複数のカップの端部(例えば、後述の下端部10a,20a)から塗料が噴射される塗装装置(例えば、後述の塗装装置1)に関する。
【0007】
また、前記複数のカップそれぞれに塗料を供給する複数の供給孔(例えば、後述の外側供給孔222、内側供給孔223)を更に備え、前記複数のカップのうち、径の大きなカップに塗料を供給する供給孔(例えば、後述の外側供給孔222)の開口面積は、径の小さなカップに塗料を供給する供給孔(例えば、後述の内側供給孔223)の開口面積よりも大きいことが好ましい。
【0008】
また、前記複数のカップは、それぞれ、該カップの端部において周方向に並んで配置される複数の溝(例えば、後述の外側溝111、内側溝211)を有し、径の大きなカップの複数の溝(例えば、後述の外側溝111)のピッチと、径の小さなカップの複数の溝(例えば、後述の内側溝211)のピッチとは、異なる幅で形成されることが好ましい。
【0009】
また、前記複数のカップそれぞれに塗料を供給する複数の供給孔を備え、前記複数のカップのうちの径の大きなカップに塗料を供給する複数の供給孔は、それぞれ、前記カップの中心に対して点対称に配置され、前記複数のカップのうちの径の小さなカップに塗料を供給する複数の供給孔は、それぞれ、前記カップの中心に対して点対称に配置されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数種類の大きさの粒径からなる複数の粒の模様を容易に形成できる塗装装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る塗装装置を上方側から見た斜視図である。
図2】本発明の一実施形態に係る塗装装置を下方側から見た斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る塗装装置の真下から見た図である。
図4】本発明の一実施形態に係る塗装装置を上方側から見た分解斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る塗装装置を下方側から見た分解斜視図である。
図6図1のA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る塗装装置1を上方側から見た斜視図である。図2は、本発明の一実施形態に係る塗装装置1を真下から見た斜視図である。図3は、本発明の一実施形態に係る塗装装置1の下方側から見た図である。図4は、本発明の一実施形態に係る塗装装置1を上方側から見た分解斜視図である。図5は、本発明の一実施形態に係る塗装装置1を下方側から見た分解斜視図である。図6は、図1のA−A線断面図である。
【0013】
本実施形態の塗装装置1は、図1及び図2に示すように、外側カップ10及び内側カップ20を備える。外側カップ10及び内側カップ20は、それぞれ、下方が開放したベル型のカップ状に形成される。塗装装置1は、外側カップ10及び内側カップ20が回転軸Jを中心に一体的に回転することで、遠心力により、上下に離間した位置において、外側カップ10の下端部10a及び内側カップ20の下端部20aから塗料を噴射して塗装を行う装置である。塗装装置1は、例えば、デザイン上の観点から、戸建住宅などの外装に意匠を付与するために用いられる。
【0014】
塗装装置1において、塗装が施される被塗装物に制限はない。例えば、塗装が施される被塗装物として、窯業系サイディングにより形成された外装材や、金属系サイディングにより形成された外装材などを挙げることができる。窯業系サイディングにより形成された外装材は、主原料にセメント質と繊維質を用いて板状に形成した外装材である。金属系サイディングにより形成された外装材は、柄付けされた金属板と断熱効果のある裏打材によって構成された外装材である。
【0015】
塗装装置1に使用される塗料は、外側カップ10及び内側カップ20が回転することで、遠心力により、外側カップ10の下端部10a及び内側カップ20の下端部20aから噴射可能な液体から形成される。塗料の粘度は、遠心力で噴射して形成する粒の粒径などに応じて適宜調整される。塗装装置1に使用される塗料の種類は、特に限定されない。
【0016】
図1図6に示すように、塗装装置1は、外側カップ10と、内側カップ20と、回転軸部材30と、塗料供給管40と、を備える。本実施形態の塗装装置1は、下方側から見た場合に、図3に示すように、内側カップ20の外側に外側カップ10が配置される二重カップ構造である。外側カップ10及び内側カップ20は、回転軸部材30の回転軸Jと同軸上に配置され、回転軸Jを中心に一体的に回転可能である。
【0017】
外側カップ10は、図1図3に示すように、内側カップ20の上方側において、内側カップ20の外側に配置される。外側カップ10は、外側カップ本体11と、中間支持部12と、を有する。
【0018】
外側カップ本体11は、図4及び図5に示すように、円錐筒状に形成される。外側カップ本体11は、外側カップ10に内側カップ20を取り付けた状態において、上端部から下端部10aに向かうに従って径が大きくなるテーパ筒状に形成される。図6に示すように、外側カップ本体11の下端部10aは、内側カップ20(後述)の内側下部噴射筒体21(後述)の下端部20aよりも上方側に位置する。
【0019】
外側カップ本体11には、上部側から、塗料供給管40により塗料が供給される。図6に示すように、塗料供給管40は、外側カップ10の上部側に配置される。塗料供給管40は、筒状に形成され、上下方向に延びる。塗料供給管40の下端部は、外側カップ10の上部側の内側に配置され、外側カップ10の上部側から、回転する外側カップ10及び内側カップ20に塗料を供給する。
【0020】
外側カップ本体11の下端部10aには、図5に示すように、複数の外側溝(溝)111が形成される。複数の外側溝111は、外側カップ本体11の下端部10aの端面において周方向に並んで配置される。外側カップ本体11の下端部10aの端面は、外側カップ本体11の下端部10aの厚さ方向の内側から外側に向かうに従って下方側に向かうように傾斜して形成される。複数の外側溝111は、外側カップ本体11の下端部10aの端面において傾斜方向に延びる複数の溝状に形成される。本実施形態においては、図3に示すように、例えば、複数の外側溝111の間隔(ピッチ)は幅Aである。
【0021】
中間支持部12は、図5及び図6に示すように、外側カップ本体11の内側において、外側カップ本体11の上下方向の途中に配置される。中間支持部12は、径方向の中央に形成される中央接続部121と、径方向の外縁に形成される外縁円環部124と、径方向に延びる4枚の放射状支持板125と、4つの扇状開口部126と、を有する。
【0022】
中央接続部121の上部には、回転軸接続部122が形成され、中央接続部121の下部には、下部接続部123に形成される。
回転軸接続部122は、中央接続部121から上方に突出する円錐筒状に形成され、回転軸部材30の下端部が接続される。回転軸部材30は、上下方向に延びる。回転軸部材30は、回転駆動部(図示せず)により、回転軸Jを中心に回転駆動される。
下部接続部123は、中央接続部121から下方に突出する円筒状に形成され、内側カップ20(後述)の上部接続部221(後述)が接続される。
【0023】
外縁円環部124は、円環状に形成され、外側カップ本体11の上下方向の途中において、外側カップ本体11の内面に接続される。
【0024】
4枚の放射状支持板125は、周方向に離間して配置され、中央接続部121と外縁円環部124とを接続して径方向に延びる。4枚の放射状支持板125は、それぞれ、外側カップ10の径方向の中心側が下るように傾斜する板状に形成される。
【0025】
4つの扇状開口部126は、それぞれ、扇状に開口して上下方向に貫通して形成され、周方向において、4枚の放射状支持板125の間に配置される。4つの扇状開口部126には、外側カップ10の上方側から塗料供給管40により供給された塗料が通過する。
【0026】
なお、本実施形態においては、4枚の放射状支持板125を4枚の板状の部材で構成し、4つの扇状開口部126を4つの扇状の開口で構成したが、4枚の放射状支持板125及び4つの扇状開口部126の形状及び数量は、これに限定されない。4枚の放射状支持板125は、中央接続部121を支持する支持部であれば、形状及び数量は限定されない。また、4つの扇状開口部126は、外側カップ本体11の下方側に塗料を供給する開口部であれば、形状及び数量は限定されない。これらの支持部及び開口部の形状及び数量は、例えば、支持部に要求される強度や、塗料を供給する供給量などに応じて適宜設計される。
【0027】
内側カップ20は、図5及び図6に示すように、外側カップ10の中間支持部12の下部の下部接続部123に接続される。内側カップ20は、図4図6に示すように、大径接続円盤体22と、内側上部筒体24と、内側下部噴射筒体21と、内側円盤体23と、を有する。
【0028】
大径接続円盤体22は、図5及び図6に示すように、円盤状に形成され、外側カップ10の外側カップ本体11の内側において、外側カップ10の中間支持部12の下部に接続される。大径接続円盤体22の外縁の側面は、外側カップ10の内面に対向して配置され、外側カップ10の内面に近接又は当接する。
【0029】
大径接続円盤体22の上面の中央には、上部接続部221が形成される。上部接続部221は、大径接続円盤体22の上面の中央から上方に突出する円柱状に形成され、外側カップ10の中間支持部12の下部接続部123に接続される。
【0030】
大径接続円盤体22の上面には、上部接続部221の径方向の外側に、内側上部筒体24が形成される。内側上部筒体24は、大径接続円盤体22の上面から上方に円筒状に立設される。内側上部筒体24の径は、大径接続円盤体22の径よりも小さい。内側上部筒体24の径方向の内側及び外側には、外側カップ10に供給された塗料が、外側カップ10の中間支持部12の4つの扇状開口部126を介して流れ込む。
【0031】
大径接続円盤体22には、図4及び図6に示すように、複数の外側供給孔222と、複数の内側供給孔223と、が形成される。
【0032】
複数の内側供給孔223は、内側上部筒体24の径方向の内側に供給された塗料を、内側カップ20の内側下部噴射筒体21(後述)に供給する。複数の内側供給孔223は、大径接続円盤体22における内側上部筒体24よりも径方向の内側において、内側上部筒体24に沿って周方向に離間して並んで配置され、上下方向に貫通して形成される。複数の内側供給孔223は、それぞれ、内側カップ20の中心Cに対して点対称に配置される(図3参照)。複数の内側供給孔223の数は、被塗装物に形成する粒の数などにより、適宜調整される。
【0033】
複数の外側供給孔222は、内側上部筒体24の径方向の外側に供給された塗料を、外側カップ10の外側カップ本体11に供給する。複数の外側供給孔222は、大径接続円盤体22の外縁から径の中心側に窪む円弧状に形成され、大径接続円盤体22の外縁において周方向に並んで配置される。複数の外側供給孔222は、それぞれ、外側カップ10の中心Cに対して点対称に配置される(図3参照)。複数の外側供給孔222は、内側カップ20が外側カップ10に取り付けられて、大径接続円盤体22の外縁の側面が外側カップ10の内面に近接又は当接して配置されることで、外側カップ10の内面との間において、上下方向に貫通して形成される。複数の外側供給孔222の数は、被塗装物に形成する粒の数などにより、適宜調整される。本実施形態においては、外側カップ10に塗料を供給する外側供給孔222の開口面積は、内側カップ20に塗料を供給する内側供給孔223の開口面積よりも大きい。
【0034】
内側下部噴射筒体21は、円錐筒状に形成され、大径接続円盤体22の下面から下方に延びる。内側下部噴射筒体21は、図4及び図5に示すように、上端部から下端部20aに向かうに従って径が大きくなるテーパ筒状に形成される。図6に示すように、内側下部噴射筒体21の上端部は、外側カップ10の下端部10aよりも上方に位置し、内側下部噴射筒体21の下端部20aは、外側カップ10の下端部10aよりも下方に位置する。
【0035】
内側下部噴射筒体21の下端部20aには、図5に示すように、複数の内側溝(溝)211が形成される。複数の内側溝211は、内側下部噴射筒体21の下端部20aの端面において周方向に並んで配置される。内側下部噴射筒体21の下端部20aの端面は、内側下部噴射筒体21の下端部20aの厚さ方向の内側から外側に向かうに従って下方側に向かうように傾斜して形成される。複数の内側溝211は、内側下部噴射筒体21の下端部20aの端面において傾斜方向に延びる複数の溝状に形成される。本実施形態においては、図3に示すように、例えば、複数の内側溝211の間隔(ピッチ)は幅Bである。
【0036】
本実施形態においては、外側カップ10の外側カップ本体11の下端部10aに形成される複数の外側溝111の間隔の幅Aと、内側カップ20の内側下部噴射筒体21の下端部20aに形成される複数の内側溝211の間隔の幅Bとは、例えば、略同一の幅(幅A=幅B)で形成される。
【0037】
内側円盤体23は、図6に示すように、内側下部噴射筒体21の内周面の径よりも小さい径で形成され、内側下部噴射筒体21の径方向の内側において、大径接続円盤体22の下面に接続される。内側円盤体23は、小径部分231と、大径部分232と、を有する。小径部分231及び大径部分232は、上下方向に並んで一体的に形成され、大径接続円盤体22側から、この順に配置される。小径部分231は、複数の内側供給孔223が並ぶ円の径よりも小さい径で形成される。大径部分232は、複数の内側供給孔223が並ぶ円の径よりも大きい径で形成される。
【0038】
大径部分232の径方向の端部の側面は、内側下部噴射筒体21の内面から径方向の内側に離間して配置される。大径部分232の径方向の端部の側面と内側下部噴射筒体21の内面との間には、隙間Sが形成される。
【0039】
以上のように構成される内側円盤体23は、内側カップ20の複数の内側供給孔223から供給された塗料を、内側下部噴射筒体21の内面に沿って下方に移動させて、複数の内側溝211へ誘導する。
【0040】
なお、本実施形態においては、内側円盤体23を内側下部噴射筒体21と一体で構成した。しかし、内側円盤体23を内側下部噴射筒体21と一体で構成することに限定されず、内側円盤体23を内側下部噴射筒体21と別体で構成してもよい。
【0041】
次に、塗装装置1を使用して被塗装物に塗装する場合の作用について説明する。
図6に示すように、塗装装置1を使用して被塗装物に塗装する場合には、モータなどの回転駆動部(図示せず)により回転軸部材30を回転軸Jを中心に回転させることで、外側カップ10及び内側カップ20を回転軸Jを中心に一体的に回転させる。本実施形態においては、外側カップ10の回転軸接続部122が回転軸部材30の下端部に接続されると共に、外側カップ10の下部接続部123が内側カップ20の上部接続部221に接続されている。そのため、回転駆動部(図示せず)により回転軸部材30が回転軸Jを中心に回転されることで、外側カップ10及び内側カップ20は、回転軸Jを中心に一体的に回転する。
【0042】
同時に、外側カップ10に、塗料供給管40を介して塗料を供給する。ここで、外側カップ10及び内側カップ20の回転数や、外側カップ10に塗料を供給する燃料の供給速度は、被塗装物に形成する複数の粒の粒径などにより、適宜調整される。
【0043】
外側カップ10に供給された塗料は、外側カップ10の4つの扇状開口部126を介して、内側カップ20の内側上部筒体24の内側と、内側カップの内側上部筒体24の外側と、に流れ込む。
【0044】
内側カップ20の内側上部筒体24の内側に流れ込んだ塗料は、複数の内側供給孔223を介して、内側円盤体23の小径部分231の外側を通り、内側円盤体23の大径部分232の径方向の端部の側面と内側下部噴射筒体21の内面との間の隙間Sに誘導される。そして、内側下部噴射筒体21の内面側に誘導された塗料は、内側カップ20の内側下部噴射筒体21の内面に沿って下方に移動され、内側カップ20の内側下部噴射筒体21の下端部20aに供給される。内側下部噴射筒体21の下端部20aに供給された塗料は、内側下部噴射筒体21の下端部20aに形成された複数の内側溝211を介して、遠心力により、径方向の外側に噴射される。このようにして、内側円盤体23は、内側カップ20の複数の内側供給孔223から供給された塗料を、内側下部噴射筒体21の内面に沿って下方に移動させて、複数の内側溝211へ誘導する。これにより、内側カップ20の下端部20aから噴射された複数の粒からなる塗料が、被塗装物に塗装される。内側カップ20の下端部20aから噴射された塗料の複数の粒の粒径は、均一の粒径に形成される。
【0045】
一方、内側カップ20の内側上部筒体24の外側に流れ込んだ塗料は、複数の外側供給孔222を介して、外側カップ本体11の内面に沿って下方に移動され、外側カップ本体11の下端部10aに供給される。外側カップ本体11の下端部10aに供給された塗料は、外側カップ本体11の下端部10aに形成された複数の外側溝111を介して、遠心力により、径方向の外側に噴射される。これにより、外側カップ10の下端部10aから噴射された粒径の複数の粒からなる塗料が、被塗装物に塗装される。外側カップ10の下端部10aから噴射された塗料の複数の粒の粒径は、内側カップ20の下端部20aから噴射された塗料の粒の粒径よりも大きく形成され、均一の粒径に形成される。
【0046】
外側カップ10及び内側カップ20から噴射されて被塗装物に塗装された複数の粒からなる塗料は、塗装後に、加熱されて乾燥される。
【0047】
ここで、外側カップ10の下端部10aは、内側カップ20の下端部20aよりも上方に位置する。そのため、外側カップ10及び内側カップ20は、上下方向にずれた位置において、遠心力により、外側カップ10の下端部10a及び内側カップ20の下端部20aの両方から、径方向の外側に向けて、それぞれ、均一の粒径の複数の塗料の粒が噴射される。
【0048】
また、外側カップ10の径が内側カップ20の径よりも大きいため、外側カップ10の下端部10aは、内側カップ20の下端部20aよりも径方向の外側に位置する。これにより、外側カップ10及び内側カップ20の径の大きさの差による遠心力の差により、外側カップ10の外側カップ本体11の下端部10aから噴射された塗料の複数の粒の粒径は、内側カップ20の内側下部噴射筒体21の下端部20aから噴射された塗料の複数の粒の粒径よりも大きく形成される。
【0049】
以上により、外側カップ10と内側カップ20の径の大きさを異ならせることで、塗料の複数の粒の粒径を2種類の大きさに異ならせて、それぞれ、異なる粒径の粒(大径の粒、小径の粒)の塗料を混在させた状態で、外側カップ10の下端部10a及び内側カップ20の下端部20aの両方から、異なる粒径の粒(大径の粒、小径の粒)の塗料を径方向の外側に向けて噴射できる。
【0050】
以上説明した本実施形態の塗装装置1によれば、以下のような効果を奏する。
本実施形態の塗装装置1は、異なる径の筒状の外側カップ10及び内側カップ20を備え、外側カップ10及び内側カップ20の回転軸Jは、同軸上に配置され、同じ回転軸Jを中心に一体的に回転するように構成される。
【0051】
そのため、外側カップ10と内側カップ20の径の大きさを異ならせることで、外側カップ10の下端部10aからは、複数の均一の粒径の塗料の粒が噴射され、内側カップ20の下端部20aからは、外側カップ10から噴射される粒よりも粒径が小さな粒の複数の均一な塗料の粒が噴射される。これにより、塗料の複数の粒の粒径を2種類の大きさに異ならせて、それぞれ、異なる粒径の粒(大径の粒、小径の粒)の塗料を混在させた状態で、外側カップ10の下端部10a及び内側カップ20の下端部20aの両方から、径方向の外側に向けて噴射できる。更に、異なる粒径の粒(大径の粒、小径の粒)それぞれについて、複数の粒の粒径の大きさを均一に形成できる。よって、2種類の大きさの粒径(大径の粒、小径の粒)からなる複数の粒の模様を容易に形成できる。また、1台の塗装装置により異なる粒径の粒(大径の粒、小径の粒)の模様を塗装できるため、設備を増加せずに、コストを低減できる。また、塗装パターンを予め設計して塗装するインクジェット方式の塗装装置により塗装を行うよりも、設備が簡易であるため、塗装に要するコストを低減できる。
【0052】
また、本実施形態においては、径の大きな外側カップ10に塗料を供給する外側供給孔222の開口面積は、径の小さな内側カップ20に塗料を供給する内側供給孔223の開口面積よりも大きい。そのため、外側供給孔222により外側カップ10の下端部10aに供給される塗料の量は、内側供給孔223により内側カップ20の下端部20aに供給される塗料の量よりも多い。これにより、外側カップ10の下端部10aから噴射される塗料の粒の粒径を、内側カップ20の下端部20aから噴射される塗料の粒の粒径よりも大きくすることができる。よって、より粒径の差が大きい異なる2種類の粒径の粒の模様の塗装を容易に形成できる。
【0053】
また、本実施形態においては、外側カップ10に塗料を供給する複数の外側供給孔222は、それぞれ、外側カップ10の中心Cに対して点対称に配置され、内側カップ20に塗料を供給する複数の内側供給孔223は、それぞれ、内側カップ20の中心Cに対して点対称に配置される。これにより、外側カップ10及び内側カップ20が回転して塗料を噴射して塗装するため、外側カップ10及び内側カップ20が回転して塗料を噴射する際に、窯業系サイディングにより形成された外装材や、金属系サイディングにより形成された外装材などに、均一に塗料を噴射することができる。
【0054】
以上、本発明の塗装装置1の好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記実施形態においては、塗装装置1を、径の異なる2つのカップを備えて構成したが、これに限定されない。径の異なる3つ以上のカップを備えて構成してもよい。この場合には、3つ以上の異なる粒径の複数の粒の模様を塗装することができる。
【0055】
また、前記実施形態では、塗装装置1を、図1に示すように、外側カップ10及び内側カップ20の別体で構成したが、これに限定されず、外側カップ10及び内側カップ20を一体で構成してもよいし、図1に示す外側カップ10、内側カップ20、回転軸部材30及び塗料供給管40を一体で構成してもよい。また、塗装装置を3つ以上のカップで構成した場合においても、3つ以上のカップを一体で構成してもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、外側カップ10の下端部10aに形成される複数の外側溝111の間隔(ピッチ)の幅Aと、内側カップ20の下端部20aに形成される複数の内側溝211の間隔(ピッチ)の幅Bとを略同一の幅に形成したが、これに限定されず、異なる幅で形成してもよい。例えば、外側カップ10の複数の外側溝111の間隔(ピッチ)の幅Aを、内側カップ20の複数の内側溝211の間隔(ピッチ)の幅Bよりも大きく形成する(幅A>幅B)ことで、溝の間隔(ピッチ)を略同一の幅に形成した場合よりも、外側カップ10の下端部10aから噴射される塗料の粒の粒径を、内側カップ20の下端部20aから噴射される塗料の粒の粒径よりも大きくすることができる。従って、より粒径の差が大きい異なる2種類の粒径の粒の模様の塗装を容易に形成できる。
【0057】
また、前記実施形態においては、外側カップ10の下端部10aに複数の外側溝111を設けると共に、内側カップ20の下端部20aに複数の内側溝211を設けたが、これに限定されない。例えば、外側カップ10及び内側カップ20の両方に複数の溝を設けなくてもよく、いずれか一方にのみ複数の溝を設けてもよい。
【0058】
また、前記実施形態においては、外側カップ10及び内側カップ20の主な部分の形状を円錐筒状で形成したが、これに限定されない。外側カップ10及び内側カップ20の主な部分の形状を、円筒状や角筒状や角錐筒状などで形成してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 塗装装置
10 外側カップ(カップ)
10a 下端部(端部)
20 内側カップ(カップ)
20a 下端部(端部)
111 外側溝(溝)
211 内側溝(溝)
222 外側供給孔(供給孔)
223 内側供給孔(供給孔)
J 回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6