特許第6974229号(P6974229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974229
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】車両用報知システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 11/00 20060101AFI20211118BHJP
   G01C 21/26 20060101ALN20211118BHJP
【FI】
   B60Q11/00 645B
   B60Q11/00 610B
   B60Q11/00 650A
   !G01C21/26 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-58980(P2018-58980)
(22)【出願日】2018年3月26日
(65)【公開番号】特開2019-171895(P2019-171895A)
(43)【公開日】2019年10月10日
【審査請求日】2020年9月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】390005430
【氏名又は名称】株式会社ホンダアクセス
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(74)【代理人】
【識別番号】100161665
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 知之
(74)【代理人】
【識別番号】100188994
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207653
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 聡
(72)【発明者】
【氏名】米澤 拓臣
(72)【発明者】
【氏名】熊木 優
(72)【発明者】
【氏名】光成 貴宏
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−207348(JP,A)
【文献】 実開昭56−062245(JP,U)
【文献】 特開平11−310077(JP,A)
【文献】 特開昭61−108023(JP,A)
【文献】 特開2002−240627(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 11/00
G01C 21/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の前照灯の動作情報を取得する前照灯情報取得手段と、
前記車両に備えられ、前記前照灯の点灯が必要であるか判断する点灯判断手段と、
前記車両の運転者への報知のための情報を生成する報知情報生成手段と、を備え、
前記前照灯の点灯が必要であると前記点灯判断手段が判断した場合に、前記報知情報生成手段により点灯を促す報知がなされる車両用報知システムであって、
前記点灯判断手段が前記前照灯の点灯が必要であると判断した場合であっても、前記車両が所定の領域内において停止した場合には、前記点灯を促す報知を停止する構成としたことを特徴とする車両用報知システム。
【請求項2】
前記車両が再走行し、前記所定の領域を離脱した場合に、前記点灯を促す報知を再開する構成としたことを特徴とする請求項1に記載の車両用報知システム。
【請求項3】
前記車両の車幅灯のみが点灯した状態で、前記車両が所定の領域内において停止した場合にも、前記点灯を促す報知を停止する構成としたことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両用報知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用報知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用報知システムとして、低コストで前照灯となるヘッドライトの点灯し忘れを抑制するために、ヘッドライトスイッチがオフである場合に、計時装置で算出された現在時刻が設定した点灯期間内であると、ヘッドライトを点灯すべきであることを表示や音で乗員に報知する考えが示されている(例えば、特許文献1)。またこの特許文献1では、ダッシュボードに設置された日射センサによって周囲の明るさを検知し、それが所定の閾値よりも低ければ、ヘッドライトを自動で点灯させる技術も示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−183951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したヘッドライトの自動点灯機能は、将来的には手動で解除できないように義務化される方向にあるが、それ以前の旧車両では、スイッチ操作によりヘッドライトの点灯と消灯を何時でも切替えることができる。そのため、例えば交差点での信号待ちの際に、対向車への眩しさを軽減するなどの目的で、交差点に近付くとヘッドライトをあえて手動で消灯する運転者がいる。
【0005】
しかし、特許文献1に示すような車両用報知システムでは、交差点での信号待ちの際に、ユーザーとなる運転者がヘッドライトを意図的に消灯させたときにも、現在時刻が夜間などの点灯期間内であれば、運転者の意志に反してヘッドライトの点灯を促す報知が画一的に行われることから、システムとして運転者の利便性を向上させた報知のあり方が求められていた。
【0006】
本発明は上記した問題点に鑑み、前照灯の点灯を促す報知に関して、運転者の利便性に資する車両用報知システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両の前照灯の動作情報を取得する前照灯情報取得手段と、前記車両に備えられ、前記前照灯の点灯が必要であるか判断する点灯判断手段と、前記車両の運転者への報知のための情報を生成する報知情報生成手段と、を備え、前記前照灯の点灯が必要であると前記点灯判断手段が判断した場合に、前記報知情報生成手段により点灯を促す報知がなされる車両用報知システムであって、前記点灯判断手段が前記前照灯の点灯が必要であると判断した場合であっても、前記車両が所定の領域内において停止した場合には、前記点灯を促す報知を停止する構成としたことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、前記車両が再走行し、前記所定の領域を離脱した場合に、前記点灯を促す報知を再開する構成としたことを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る発明は、前記車両の車幅灯のみが点灯した状態で、前記車両が所定の領域内において停止した場合にも、前記点灯を促す報知を停止する構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、前照灯の点灯を促す報知に関して、運転者の利便性に資する車両用報知システムを提供できる。
【0011】
請求項2の構成によれば、車両が所定の領域から離脱したときに、報知を再開することができる。
【0012】
請求項3の構成によれば、車両が車幅灯のみを点灯した状態で停止した場合でも、報知のあり方を運転者の意志に反しないように対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例1を示す車両用報知システムの概略ブロック図である。
図2】同上、ナビゲーション装置の詳細と、その周辺各部の構成を示すブロック図である。
図3】同上、制御手段による報知処理手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の実施例2におけるナビゲーション装置の詳細と、その周辺各部の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照して、本発明の車両用報知システムの好ましい実施例について説明する。
【実施例1】
【0015】
図1図3は、本発明の実施例1を示すもので、システム全体の概略構成を示す図1において、1は車両Sに搭載される車載機器としてのナビゲーション装置、2は衛星軌道上に配置されるGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)衛星である。ナビゲーション装置1の内部構成は後程詳しく説明するが、ナビゲーション装置1は車両用報知システムの主要部をなす電子機器である。GPS衛星2は周知のように、測位のための特定の電波を地上に送信するもので、例えばGPS衛星2の座標情報や、電波の伝搬時間を計測するための時刻情報などを、位置情報を算出するための各種情報として送信している。
【0016】
ナビゲーション装置1には少なくとも、GPS受信機11と、スピーカー12と、車両信号生成部13がそれぞれ電気的に接続される。GPS受信機11は、GPS衛星2からの特定の電波を受信して、特定の電波に含まれる各種情報をデコードし、そこからGPS衛星2の緯度や経度を含む測位データを生成して、ナビゲーション装置1に出力する受信部に相当する。ここでは異なる複数のGPS衛星2からの電波を受信できるように、車両Sの適所にGPS受信機11が設置される。尚、より安定した位置情報を算出するために、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球測位衛星システム)を利用して、単にGPS衛星2だけでなく、それ以外の様々な測位衛星からの電波を受信して測位データを生成できるように、GPS受信機11を構成してもよい。またナビゲーション装置1に、上述のGPS受信機11や、スピーカー12や、車両信号生成部13を含めた構成としてもよい。
【0017】
スピーカー12は、ナビゲーション装置1からの報知信号を受けて、これを機械的振動による音声や音響などの音に変換出力するものである。本実施例では、車両Sのヘッドライトである前照灯32(図2を参照)の点灯を促す場合に、何らかの報知音を出力する報知出力部としてスピーカー12が用いられる。報知出力部としては、スピーカー12の他に、若しくはスピーカー12と併せて、例えば視覚による報知を可能にする表示器を用いてもよい。
【0018】
車両信号生成部13は、車両Sに装備された各種の車載センサからの検知信号を受けて、車両Sの各部の状況を示す車両信号を生成し、これをナビゲーション装置1に出力するものである。本実施例では、少なくとも車両Sの速度をナビゲーション装置1で判断できるようにするために、車速センサからの検知信号となる車速パルスを利用して、車両Sの速度に相当する車速情報を含んだ車両信号を生成するように車両信号生成部13が構成される。
【0019】
図2は、ナビゲーション装置1の詳細と、それに関連する各部の構成を示したものである。同図において、ナビゲーション装置1は、実質的に車両用報知システムそのものとなる制御手段21と、記憶手段となるメモリ22と、現在時刻を算出するためのカウンタを備えた計時装置23を含んで構成される。またナビゲーション装置1には、前述したGPS受信機11や、スピーカー12や、車両信号生成部13の他に、前照灯動作検出部14が電気的に接続される。車両Sには、照明用操作部となるライトスイッチ31と、ライトスイッチ31への手動操作に伴い動作が切替わる前照灯(ヘッドライト)32及び車幅灯(スモールライト)33がそれぞれ配設される。
【0020】
本実施例では図示しないが、車両Sは周囲の明るさをセンサで感知して、その明るさが予め設定した照度以下になったら、前照灯32や車幅灯33を自動的に点灯動作させるオートライト機能を装備してもよい。その場合も、運転者がライトスイッチ31を操作すれば、オートライト機能に優先して、前照灯32と車幅灯33を点灯又は消灯の何れかに切替えることができる。またライトスイッチ31は、オートライト機能の有る無しに拘らず、少なくとも前照灯32と車幅灯33を共に消灯させる第一位置と、前照灯32を消灯した状態で車幅灯33だけを点灯させる第二位置と、前照灯32と車幅灯33を共に点灯させる第三位置の何れかに手動で切替え操作でき、ライトスイッチ31をいかに操作しても、車幅灯33が消灯した状態で前照灯32を点灯できない構成となっている。
【0021】
前照灯動作検出部14は、前照灯32が点灯動作しているか否かの検出信号を、ナビゲーション装置1の制御手段21に送出するものである。このような検出信号は、例えば前照灯32に印加される電圧や、前照灯32に流れる電流の有無を監視したり、ライトスイッチ31が前述の第三位置に切替え操作されたか否かを監視したりすることで生成できる。また、車両信号生成部13が同様の検出信号を生成できる場合には、車両信号生成部13に前照灯動作検出部が組み込まれたものとして、その検出信号を制御手段21に送出してもよい。何れにせよ前照灯動作検出部14は、車幅灯33が点灯動作しているか否かに関係なく、前照灯32が点灯動作しているか否かを制御手段21に出力できれば、どのような構成であっても構わない。
【0022】
制御手段21は、主に車両Sの現在位置や、現在位置から目的地へのルート案内などを運転者に電子的に知らせるために、ナビゲーション装置1に接続する各部の駆動を有機的に制御するものである。特に本実施例の制御手段21は、制御手段21に備えた演算処理装置が、メモリ22から読み出した所定のプログラムを実行することにより機能するソフトウェア上の構成として、前照灯情報取得手段41と、点灯判断手段42と、位置情報取得手段43と、報知情報生成手段44をそれぞれ備えている。メモリ22は、前述した所定のプログラムの他に、読み出しと書き込みが可能な各種の情報として、例えば制御手段21がナビゲーション処理を行なう際に用いる地図情報や、地図情報において示される特定の地点として、例えば交差点の緯度経度となる座標情報や、前照灯32を点灯することが望ましい点灯期間などを記憶する媒体である。
【0023】
前照灯情報取得手段41は、前照灯動作検出部14から制御手段21に送出される前記検出信号を、車両Sの前照灯32の動作情報として取得するものである。また点灯判断手段42は、前照灯情報取得手段41からの動作情報により、前照灯32が点灯していないのを認識すると、計時装置23から取得又は算出される現在時刻が、メモリ22から読み出した点灯期間内にあるか否かによって、前照灯32の点灯が必要であるか否かを判断するものである。具体的には、点灯判断手段42は、前照灯32が点灯しているとの検出信号が前照灯動作検出部14から送出される間は、現在時刻が点灯期間内にあるか否かに拘らず、前照灯32の点灯が必要ではないと判断する。それに対して、前照灯32が消灯しているとの検出信号が前照灯動作検出部14から送出されると、現在時刻が点灯期間外であれば、前照灯32の点灯が必要ではないと判断するのに対し、現在時刻が点灯期間内であれば、前照灯32の点灯が必要であると判断する。尚、メモリ22に記憶する点灯期間は、午後の日没前後の時刻から午前の日の出前後の時刻までの期間を指す。また、日付に応じた点灯期間をメモリ22に記憶させてもよく、この場合は計時装置23から現在時刻だけでなく、現在の日付を取得又は算出できるように構成して、現在の日付に対応する点灯期間をメモリ22から呼び出せばよい。
【0024】
別な例として、車両Sの周囲の明るさを検知する日射センサを、制御手段21と電気的に接続してもよい。点灯判断手段42は、前照灯情報取得手段41からの動作情報により、前照灯32が点灯していないのを認識した場合に、日射センサからの検知出力に応じて、前照灯32の点灯が必要であるか否かを判断するように構成される。
【0025】
位置情報取得手段43は、GPS受信機11から送出される測位データを、車両Sが現在どの位置に存在するのかを特定する位置情報として取得するものである。尚、GPS受信機11以外の位置検出装置を利用して、そこからの位置情報を取得する構成としてもよい。
【0026】
報知情報生成手段44は、点灯判断手段42による判断結果と、位置情報取得手段43が取得した位置情報と、車両信号生成部13から取得した車両信号に含まれる車速情報とに基づき、これらが所定の条件を満たしたときに、車両Sの運転者への報知のための情報として、報知出力部となるスピーカー12への報知信号を生成するものである。
【0027】
具体的には報知情報生成手段44は、前照灯32の点灯が必要であると点灯判断手段42が判断した場合に、車速情報から得られる車両Sの速度と、予め設定した値とを比較する。車両Sの速度が設定した値を上回って走行中であると判断すれば、車両Sの現在位置となる位置情報に関係なく報知信号を生成し、この報知信号をスピーカー12に送出して、前照灯32の点灯を促す音の報知をスピーカー12から行なわせる。それに対して、車両Sの速度が予め設定した値以下で、停止していると判断すれば、メモリ22から読み出される座標情報を利用して、車両Sの現在位置が交差点のような特定の地点から所定の領域内にあるのか否かを判断し、所定の領域内にあればスピーカー12からの前記音の報知を停止させる一方で、所定の領域外であれば報知信号を生成して、前照灯32の点灯を促す音の報知をスピーカー12から行なわせる。尚、スピーカー12から前照灯32の点灯を促す音の報知を停止させるには、例えば報知情報生成手段44が報知信号の生成を停止する構成にしてもよいし、報知情報生成手段44がスピーカー12に報知信号を送出しないように構成してもよいし、報知情報生成手段44からスピーカー12に至る報知信号の配線をリレーやスイッチなどで遮断する構成にしてもよい。
【0028】
したがって報知情報生成手段44は、計時装置23から得られる現在時刻が前照灯32を点灯させるべき点灯期間中に、実際の前照灯32が消灯していたら、車両Sが走行中であればどの場所であっても、また車両Sが停止していれば、交差点のような特定の地点を含む所定の領域外で、普段からの運転者への注意喚起として、前照灯32の点灯を促す報知をスピーカー12から行なわせる。その一方で、車両Sが停止しているときに、所定の領域内でライトスイッチ31への手動操作により、実際の前照灯32が点灯から消灯に切替えられたら、運転者による意図的な前照灯32の消灯に対応して、スピーカー12からの余計な報知を停止させる。さらに報知情報生成手段44は、車両Sが所定の領域内で前照灯32を消灯したまま、停止した状態から再走行して、その速度が設定した値を上回り、さらに車両Sの現在位置が所定の領域を離脱したら、前照灯32の点灯を促す報知をスピーカー12から再開させる。これにより、特定の地点で前照灯32を消灯させようとする運転者の意志を極力反映しつつも、所定の領域外で運転者への注意喚起を怠らないようにすることができる。
【0029】
本実施例では前述のように、ライトスイッチ31を第一位置又は第二位置に合せたときに、何れも前照灯32を消灯させることができるが、ライトスイッチ31が第一位置にあるときだけでなく、ライトスイッチ31が第二位置にあって、車幅灯33のみが点灯した状態でも、前照灯32が消灯しているとの検出信号が前照灯動作検出部14から制御手段21に送出される。このとき現在時刻が点灯期間内であれば、点灯判断手段42により前照灯32の点灯が必要であると判断されるので、報知情報生成手段44は車幅灯33のみが点灯した状態であっても、前述のように車両Sが所定の領域内で停止した場合には、スピーカー12からの前照灯32の点灯を促す音の報知を停止させ、そこから車両Sが所定の領域を離脱した場合には、当該報知を再開させる。
【0030】
以上は、前照灯32の点灯が必要であると点灯判断手段42が判断したときの報知情報生成手段44の説明である。報知情報生成手段44は、前照灯32の点灯が必要ではないと点灯判断手段42が判断した場合に、スピーカー12からの不必要な報知を避けるために、位置情報や車速情報に関係なく報知信号を生成しない構成となっている。
【0031】
次に上記構成について、制御手段21による一連の報知処理手順を、図3のフローチャートに基づき説明する。尚、本処理中に位置情報取得手段43は、車両Sの現在位置を特定するために、所定の周期で位置情報の取得を行なう。
【0032】
ステップS1において、車両Sは、計時装置23から得られる現在時刻が前照灯32を点灯すべき点灯期間内に、路上を走行しているものとする。ここでライトスイッチ31が第一位置又は第二位置にある場合、前照灯情報取得手段41は前照灯動作検出部14からの検出信号を受けて、前照灯32が点灯していない旨の動作情報を取得する。点灯判断手段42はこの動作情報を受けて、前照灯32の点灯が必要であると判断するので、報知情報生成手段44は、車両Sが走行中であると判断すれば、車両Sの現在位置に関係なく報知信号を生成し、運転者への注意喚起として、前照灯32の点灯を促す音の報知をスピーカー12から行なわせる。
【0033】
こうしたスピーカー12からの報知に対し、運転者がライトスイッチ31を第一位置又は第二位置から第三位置に切替え操作して、前照灯32を車幅灯33と共に点灯させると(ステップS2)、前照灯情報取得手段41は前照灯32が点灯している旨の動作情報を取得する。点灯判断手段42はこの動作情報を受けて、前照灯32の点灯が必要ではないと判断するので、ステップS3における車両Sが停止したか否かの判断で、車両Sが停止せずに走行中である場合や、車両Sが停止した場合でも、次のステップS4における車両Sの現在位置が交差点付近であるか否かの判断で、車両Sが交差点付近ではない交差点以外の場所で停止した場合に、何れもステップS10に移行して、スピーカー12から前照灯32の点灯を促すような無駄な報知(警告)を行なわないように、報知情報生成手段44がスピーカー12の動作を制御する。
【0034】
尚、上記ステップS1やステップS3において、報知情報生成手段44は、車速情報から得られる車両Sの速度が、予め設定した値を上回るか否かで、車両Sが停止したか或いは走行中であるかを判断する。また、ステップS4において報知情報生成手段44は、位置情報取得手段43で取得した車両Sの現在位置を示す位置情報が、特定の地点となる交差点から所定の範囲(例えば300メートル)内にまで接近しているか否かで、車両Sの現在位置が所定の領域内となる交差点付近であるか否かを判断する。具体的には、例えばメモリ22に記憶される交差点の緯度経度となる座標情報を読み出し、この交差点の緯度経度と位置情報が示す緯度経度とを比較することにより、両地点の距離を算出する。
【0035】
そしてステップS4において、算出した両地点の距離が所定の範囲内であれば、車両Sの現在位置は交差点付近であると判断し、次のステップS5で報知情報生成手段44は、ライトスイッチ31の操作により前照灯32が消灯したか否かを判断する。ライトスイッチ31への切替え操作が行われず、前照灯32が点灯状態を保持したままであれば、点灯判断手段42は引き続き前照灯32の点灯が必要ではないと判断し、前述のステップS10に移行して、報知情報生成手段44はスピーカー12からの無駄な警告を行なわせない。
【0036】
それに対して前述のステップS5で、運転者が意図的に前照灯32を消灯させるために、ライトスイッチ31を第三位置から第一位置又は第二位置に切替え操作した場合、点灯判断手段42の判断は前照灯32の点灯が必要であるに切替わる。しかし、次のステップS6において報知情報生成手段44は、車両Sが交差点付近で停止している状態であると判断して、やはりスピーカー12からの警告を行なわせない。つまり本実施例では、運転者による意図的な前照灯32の消灯に対応して、報知のあり方が運転者の意志に反しないように、あえてスピーカー12からの余計な報知を報知情報生成手段44により停止させている。こうした報知の停止は、続くステップS7で、車両Sの速度が設定した値を上回って、再走行を開始したと報知情報生成手段44が判断するまで継続する。
【0037】
そしてステップS7において、報知情報生成手段44により車両Sが再走行を開始したと判断されると、次のステップS8で報知情報生成手段44は、ライトスイッチ31の操作により前照灯32が消灯したか否かを判断する。ライトスイッチ31への切替え操作が行われず、車両Sの前照灯32が消灯したままであれば、点灯判断手段42は引き続き前照灯32の点灯が必要であると判断するので、報知情報生成手段44は、車両Sの現在位置が交差点付近の領域から離脱するまで移動したら、次のステップS9において、運転者への注意喚起を怠らないように再び報知信号を生成して、前照灯32の点灯を促す音の報知をスピーカー12から再開させる。
【0038】
それに対してステップS8において、車両Sの現在位置が交差点付近の領域から離脱する前に、運転者がライトスイッチ31を第一位置又は第二位置から第三位置に切替え操作して、車両Sの前照灯32を点灯させてあれば、点灯判断手段42は前照灯32の点灯が必要ではないと判断し、前述のステップS10に移行して、報知情報生成手段44はスピーカー12からの無駄な警告を行なわせない。
【0039】
以上のように本実施例では、請求項1に対応して、車両Sの前照灯32の動作情報を取得する前照灯情報取得手段41と、車両Sに備えられ、前照灯32の点灯が必要であるか否かを判断する点灯判断手段42と、車両Sの運転者への報知のための情報を生成する報知情報生成手段44と、を備え、前照灯32の点灯が必要であると点灯判断手段42が判断した場合に、報知情報生成手段44により点灯を促す報知がなされる車両用報知システムであって、車両Sが所定の領域内において停止した場合には、報知出力部となるスピーカー12からの報知を停止するように、報知情報生成手段44がスピーカー12の動作を制御する構成としている。
【0040】
そのため、車両Sの外部環境に応じて、前照灯32の点灯が必要であると点灯判断手段42が判断した場合には、前照灯32の点灯を促す報知を行ないつつ、交差点のような特定の地点を含む所定の領域内では、あえてそのような報知を停止することで、所定の領域内での運転者の意図的な前照灯32の消灯に対応すべく、報知のあり方を運転者の意志に反しないように変化させることが可能となる。したがって、前照灯32の点灯を促す報知に関して、運転者の利便性に資する車両用報知システムを提供できる。
【0041】
また本実施例では、請求項2に対応して、車両Sが停止から再走行し、位置情報取得手段43からの位置情報により、車両Sの現在位置が所定の領域を離脱したと判断した場合に、前照灯32の点灯を促す報知を再開するように、報知情報生成手段44がスピーカー12の動作を制御する構成としているから、車両Sが再走行で所定の領域から離脱した場合に、運転者への注意喚起を怠らないように、前照灯32の点灯を促す報知を再開することができる。
【0042】
また本実施例では、請求項3に対応して、車両Sの照明灯32が消灯し、車幅灯33のみが点灯した状態で、車両Sが所定の領域内において停止した場合にも、スピーカー12からの報知を停止するように、報知情報生成手段44がスピーカー12の動作を制御する構成としている。そのため、車両Sが所定の領域内において、照明灯32を消灯して車幅灯33のみを点灯した状態で停止した場合でも、前照灯32の点灯を促す報知を停止して、報知のあり方を運転者の意志に反しないように対応することができる。
【0043】
その他、実施例上の効果として、車両Sの照明灯32が消灯し、車幅灯33のみが点灯した状態で、車両Sが所定の領域内において停止から再走行して、所定の領域から離脱した場合にも、スピーカー12からの報知を再開するように、報知情報生成手段44がスピーカー12の動作を制御する構成としている。そのため、車両Sが再走行して所定の領域を離脱すると、照明灯32を消灯して車幅灯33のみを点灯した状態で停止した場合であっても、運転者への注意喚起を怠らないように、前照灯32の点灯を促す報知を再開することができる。
【実施例2】
【0044】
図4は本発明の実施例2を示し、上記実施例1と同一部分に同一符号を付し、その説明を省略して詳述する。同図に示すように、この例では、メモリ22に座標情報が記憶されていない場合でも、車両Sが交差点のような特定の地点から所定の領域内にあるのか否かを、ナビゲーション装置1の報知情報生成手段44が判断できるようにするために、車両Sに搭載される撮像手段としての画像認識カメラ51を、ナビゲーション装置1の制御手段21と電気的に接続している。画像認識カメラ51は、車両Sの主に進行方向の画像を撮影し、これを電気的な撮影情報として制御手段21に送出するものである。また本実施例では、ナビゲーション装置1本来の機能として、GPS受信機11と位置情報取得手段43がそれぞれ設けられるものの、報知情報生成手段44は位置情報生成手段43からの位置情報を取り込む必要がなく、画像認識カメラ51からの映像情報だけで、車両Sが所定の領域内にあるのか否かを判断する構成となっている。その他の構成は、実施例1と共通する。
【0045】
そして報知情報生成手段44は、前照灯32の点灯が必要であると点灯判断手段42が判断した場合に、車両Sの速度が予め設定した値以下で、停止していると判断すれば、画像認識カメラ51から取り込んだ映像情報を利用して、車両Sが交差点のような特定の地点から所定の領域内にあるのか否かを画像認識により判断し、所定の領域内にあればスピーカー12からの音の報知を停止させる一方で、所定の領域外であれば報知信号を生成して、前照灯32の点灯を促す音の報知をスピーカー12から行なわせる。これにより本実施例でも、車両Sが停止しているときに、所定の領域内でライトスイッチ31への手動操作により、実際の前照灯32が点灯から消灯に切替えられたら、運転者による意図的な前照灯32の消灯に対応して、スピーカー12からの余計な報知を停止させることができる。
【0046】
さらに報知情報生成手段44は、車両Sが所定の領域内で前照灯32を消灯したまま、停止した状態から再走行して、その速度が設定した値を上回り、さらに画像認識カメラ51から取り込んだ映像情報の画像認識により、車両Sが所定の領域を離脱したと判断したら、前照灯32の点灯を促す報知をスピーカー12から再開させる。これにより、交差点のような特定の地点で前照灯32を消灯させようとする運転者の意志を極力反映しつつも、所定の領域外で運転者への注意喚起を怠らないようにすることができる。
【0047】
制御手段21による一連の報知処理手順は、実施例1で示した図3のフローチャートと概ね一致する。但し、ステップS4において報知情報生成手段44は、画像認識カメラ51から取り込んだ映像情報を利用して、車両Sが特定の地点となる交差点から所定の範囲内にまで接近しているか否かにより、車両Sが交差点付近で停止しているか否かを画像認識で判断する。また、ステップS8でも報知情報生成手段44は、画像認識カメラ51から取り込んだ映像情報を利用して、車両Sが交差点付近の領域から離脱したか否かを画像認識で判断する。
【0048】
以上のように本実施例の車両用報知システムも、実施例1と同様の作用効果が発揮される。また実施例上の効果として、本実施例では、車両S周辺の画像を撮影して映像情報を出力する撮像手段としての画像認識カメラ51を備え、報知情報生成手段44は画像認識カメラ51からの映像情報を取り込んで、車両Sが所定の領域内にあるのか否かを判断する構成となっている。この場合の画像は、静止画像若しくは動画像の何れでも構わない。これにより、予めメモリ22に所定の領域を特定する座標情報を記憶させておく必要がなく、また位置情報取得手段43で得られた車両Sの現在位置を、ナビゲーション装置1本来の、例えば目的地までのルート探索などに集中して利用できる。
【0049】
尚、本発明は、本実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、車両Sの走行や停止を判断するために、車両信号生成部14からの車速情報ではなく、若しくはその車速情報に加えて、GPS受信機11からの測位データを取り込んでもよい。また実施例では、車両用報知システムをナビゲーション装置1に組み込んだ例を示したが、ナビゲーション装置1を介さず車両Sの内部に直接組み込んでもよい。
【符号の説明】
【0050】
32 前照灯
33 車幅灯
41 前照灯情報取得手段
42 点灯判断手段
44 報知情報生成手段
S 車両
図1
図2
図3
図4