(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
[架橋ポリオレフィン発泡体]
本発明の実施形態に係る架橋ポリオレフィン発泡体は、ポリオレフィン系樹脂組成物を架橋発泡してなり、発泡体の25%圧縮強度(kPa)と常温での抗張力(MPa)との積が35〜65となっている。
【0010】
<25%圧縮強度と常温での抗張力との積>
発泡体の柔軟性の指標では、常温25%圧縮強度の数値を用いる場合が多い。しかし、この数値が同じでも実際の触感では、柔らかい(ソフト感がある)と感じたり、固い(ソフト感がない)と感じたりする場合があった。つまり、25%圧縮強度の指標だけでは優れた手触り感が得られにくいといえる。そこで、本発明者らは、被接触物体に加わる力として、垂直方向の圧縮強度(圧縮応力)だけでなく、変形による抗張力にも着目した。圧縮される際の材料には、引張り応力が加わるので抗張力の強い物は硬度が高くなって硬い感触となり、結果として柔らかくて心地良いような優れた手触り感が得られないことを見出し、これらの2つの応力の相乗によって人の触感が影響されると考えた。一方で、柔らかくしすぎるとその後の成形(2次成形)で不良を発生することもある。これらのバランスを取るための新たな指標として、圧縮強度と抗張力との積が上記一定の範囲にあるときに、成形性が良好で、かつ優れた手触り感が得られることを見出した。
【0011】
発泡体の25%圧縮強度(kPa)と常温での抗張力(MPa)との積は、35.5〜64.5であることが好ましく、36〜64であることがより好ましい。
上記25%圧縮強度と抗張力との積は、例えば、発泡体の見かけ密度や厚みを調整することで25%圧縮強度を後述するような範囲とし、架橋度を調整することで抗張力を後述するような範囲としこれらのバランスをとることで、所望の範囲とすることができる。また、ポリプロピレン系樹脂を後述のような割合とすることで抗張力が調整しやすくなり、オレフィン系ゴムを後述のような割合とすることで圧縮強度を調整しやすくすることもできる。
発泡体の25%圧縮強度は、40〜70kPaであることが好ましく、50〜62kPaであることがより好ましい。
また、常温での抗張力は、0.5〜1.5MPaであることが好ましく、0.7〜1.1MPaであることがより好ましい。ここで、「常温」とは、23℃程度をいう。
なお、発泡体のMD方向及びTD方向により抗張力に差がある場合は、抗張力が大きいMD方向又はTD方向の値を採用する。
【0012】
<ポリオレフィン系樹脂組成物>
架橋発泡されるポリオレフィン系樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」ということがある)には、ポリプロピレン系樹脂と、オレフィン系ゴムとが含有されてなることが好ましい。
【0013】
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、プロピレン単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体が挙げられる。プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、ランダムブロック共重合体の何れであってもよいが、ランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)であることが好ましい。
プロピレンと共重合される他のオレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンが挙げられ、これらの中ではエチレンが好ましい。すなわち、ポリプロピレン樹脂としてはエチレン−プロピレンランダム共重合体が好ましい。
なお、プロピレンと他のオレフィンとの共重合体は、通常、プロピレンが90〜99.5重量%、プロピレン以外のα−オレフィンが0.5〜10質量%であるが、プロピレンが95〜99重量%、プロピレン以外のα−オレフィンが1〜5質量%であることが好ましい。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂は、そのメルトフローレート(以下、「MFR」ともいう)が0.4〜4.0g/10分であることが好ましく、0.5〜2.5g/10分であることがより好ましい。上記のMFRを有するポリプロピレン系樹脂を使用することで、樹脂組成物を発泡体に加工する際の成形性、及び発泡体を二次加工する際の成形性を良好にしやすくなる。上記のポリプロピレン系樹脂は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、MFRは、例えば、JIS K7210に基づき、ポリプロピレン系樹脂は温度230℃、荷重2.16kgf、ポリエチレン系樹脂は温度190℃、荷重2.16kgf、オレフィン系熱可塑性エラストマーは温度230℃、荷重2.16kgfの条件で測定することができる。
【0015】
(オレフィン系ゴム)
オレフィン系ゴムは、そのムーニー粘度(ML
1+4,100℃)が15〜85であるものが用いられる。ムーニー粘度を上記範囲内とすることで、柔軟性及び成形性をバランスよく向上させることが可能になる。また、柔軟性及び成形性をより良好にするために、オレフィン系ゴムの上記ムーニー粘度は、25〜75であることがより好ましく、30〜70であることが更に好ましい。なお、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)はJIS K6300−1に準拠して測定することができる。
【0016】
オレフィン系ゴムとしては、2種以上のオレフィン系モノマーが実質的にランダムに共重合した非晶質又は低結晶性のゴム状物質が好ましく、成形性及び柔軟性をバランスよく向上させる観点から、エチレン−α−オレフィン系共重合ゴムがより好ましい。
エチレン−α−オレフィン系共重合ゴムに使用されるα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、2−メチルプロピレン、3−メチル−1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等の炭素数3〜15、好ましくは炭素数3〜10のα−オレフィンの1種又は2種以上が挙げられる。これらの中ではプロピレン及び1−ブテンが好ましく、プロピレンがより好ましい。
【0017】
エチレン−α−オレフィン系共重合ゴムは、エチレン単位及びα−オレフィン単位に加え、他のモノマー単位を有していてもよい。
前記他のモノマー単位を形成するモノマーとしては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等の炭素数4〜8の共役ジエン;ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ジシクロオクタジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の炭素数5〜15の非共役ジエン;酢酸ビニル等のビニルエステル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸等の不飽和カルボン酸等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では炭素数5〜15の非共役ジエンが好ましく、入手容易性の観点から、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)がより好ましい。
【0018】
エチレン−α−オレフィン系共重合ゴムのエチレン単位の含有量は、通常30〜85質量%、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは45〜75質量%である。プロピレン等の炭素数3〜15、好ましくは3〜10のα−オレフィン単位の含有量は、通常10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%である。非共役ジエン等のその他の単量体単位の含有量は、通常0〜20重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0019】
また、オレフィン系ゴムとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)も使用可能である。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、一般的には、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンをハードセグメントとし、EPM、EPDMなどのゴム成分をソフトセグメントとするものである。オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、ブレンド型、動的架橋型、重合型のいずれも使用可能である。
【0020】
オレフィン系ゴムの好適な具体例としては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム(EPR)、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム(EPDM)が挙げられるが、EPDMが好ましい。なお、EPDMとしては、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合ゴムが挙げられ、これらの中では、エチレン−プロピレン−ジシクロペンタジエン共重合ゴムが好ましい。
【0021】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、そのMFRが0.8〜5.0g/10分であることが好ましく、1.5〜4.0g/10分であることがより好ましい。上記のMFRを有するオレフィン系熱可塑性エラストマーを使用することで、樹脂組成物を発泡体に加工する際の成形性、及び発泡体を二次成形する際の成形性を良好にしやすくなる。
エチレン−α−オレフィン系共重合ゴムは公知の方法で重合して得ることができる。重合方法としては、チーグラー−ナッタ触媒やメタロセン触媒のような重合触媒を用いて、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の不活性溶媒中で重合する方法が挙げられる。オレフィン系ゴムは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
(その他の成分)
ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂とオレフィン系ゴムだけで構成されてもよいが、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、それら以外の樹脂成分を含んでいてもよい。
かかる樹脂成分としては、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アルキルアクリレ−ト共重合体、又はこれらに無水マレイン酸を共重合した変性共重合体等が挙げられる。
【0023】
<樹脂組成物の配合>
樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂を、樹脂組成物に含有される樹脂全量基準で、40質量%以上含有することが好ましく、45質量%以上含有することがより好ましい。そして、90質量%以下含有することが好ましく、80質量%以下含有することがより好ましく、70質量%以下含有することが更に好ましく、60質量%以下含有することが更に好ましい。上記範囲とすることで抗張力を所望の範囲にしやすくなる。
架橋ポリオレフィン発泡体は、このように、ポリプロピレン系樹脂を主成分とすることで、発泡体の機械的強度、耐熱性等を良好にすることも可能になる。また、前述のとおり、ポリプロピレン系樹脂は、ランダムポリプロピレンであることが好ましい。
【0024】
オレフィン系ゴムの含有量は、樹脂組成物において樹脂成分全量基準で30〜55質量%が好ましい。30〜55質量%であると、発泡体の柔軟性を良好にして、触感を柔らかくしやすくなる。また、発泡体の成形性、機械強度等を良好にしやすくなる。発泡体の柔軟性、手触り感をより良好にする観点から、35質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。また、機械強度、成形性をより良好にする観点からは、53質量%以下がより好ましく、52質量%以下がさらに好ましい。
【0025】
樹脂組成物において、オレフィン系ゴムは、ポリプロピレン系樹脂とオレフィン系ゴムとの質量比(ポリプロピレン系樹脂/オレフィン系ゴム)で45/55〜70/30であることが好ましく、45/55〜60/40であることがより好ましい。質量比が45/55〜70/30であることで成形性を良好にすることができる。
【0026】
樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂とオレフィン系ゴムに加えて、本発明の目的を阻害しない範囲で、さらにポリエチレン系樹脂等のその他の樹脂を含有することができる。
樹脂組成物がポリエチレン系樹脂等のその他の樹脂を含有する場合は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して30質量部以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0027】
(添加剤)
本発明に用いられる樹脂組成物は、上記の樹脂成分以外に添加剤として、通常、発泡剤を含有する。また、架橋助剤及び酸化防止剤の一方又は両方を含有することが好ましい。
【0028】
・発泡剤
樹脂組成物を発泡させる方法としては、化学的発泡法、物理的発泡法がある。化学的発泡法は、樹脂組成物に添加した化合物の熱分解により生じたガスにより気泡を形成させる方法であり、物理的発泡法は、低沸点液体(発泡剤)を樹脂組成物に含浸させた後、発泡剤を揮発させてセルを形成させる方法である。発泡法は特に限定されないが、均一な独立気泡発泡体を得る観点から、化学的発泡法が好ましい。
発泡剤としては、熱分解型発泡剤が使用され、例えば分解温度が160〜270℃程度の有機系又は無機系の化学発泡剤を用いることができる。
有機系発泡剤としては、アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸金属塩(アゾジカルボン酸バリウム等)、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物、ヒドラゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、トルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジン誘導体、トルエンスルホニルセミカルバジド等のセミカルバジド化合物等が挙げられる。
【0029】
無機系発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等が挙げられる。
これらの中では、微細な気泡を得る観点、及び経済性、安全面の観点から、アゾ化合物、ニトロソ化合物が好ましく、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、N,N’−ジニトロソペンタメチレンテトラミンがより好ましく、アゾジカルボンアミドが特に好ましい。
発泡剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
熱分解型発泡剤の添加量は、発泡体の気泡が破裂せずに適切に発泡させる観点から、樹脂成分100質量部に対して1〜30質量部が好ましく、2〜15質量部がより好ましい。
【0030】
・架橋助剤
架橋助剤としては、多官能モノマーを使用することができる。例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等の3官能(メタ)アクリレート系化合物;トリメリット酸トリアリルエステル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート等の1分子中に3個の官能基を持つ化合物;1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート等の2官能(メタ)アクリレート系化合物、ジビニルベンゼン等の1分子中に2個の官能基を持つ化合物;フタル酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、エチルビニルベンゼン、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらの中では、3官能(メタ)アクリレート系化合物がより好ましい。
架橋助剤は、単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
架橋助剤を樹脂組成物に添加することによって、少ない電離性放射線量で樹脂組成物を架橋することが可能になる。そのため、電離性放射線の照射に伴う各樹脂分子の切断、劣化を防止することができる。
架橋助剤の含有量は、樹脂組成物を発泡する際に、架橋度の調整、制御の容易さの観点から、樹脂組成物100質量部に対して0.2〜20質量部が好ましく、0.5〜15質量部がより好ましい。
【0031】
・酸化防止剤
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの中では、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤と硫黄系酸化防止剤とを併用することがより好ましい。
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3−tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等が挙げられる。
これらの酸化防止剤は、単独で又は2以上を組み合わせて用いることができる。
酸化防止剤の含有量は、樹脂組成物100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましく、0.2〜5質量部がより好ましい。
また、樹脂組成物は、必要に応じて、酸化亜鉛、ステアリン酸亜鉛、尿素等の分解温度調整剤、難燃剤、金属害防止剤、帯電防止剤、安定剤、充填剤、顔料等の上記以外の添加剤を含有してもよい。
【0032】
<架橋ポリオレフィン発泡体の物性>
本発明の架橋ポリオレフィン発泡体(以下、単に「発泡体」ともいう)は、上記した樹脂組成物を架橋し、かつ発泡してなるものである。
(密度)
発泡体の密度(見かけ密度)は、柔軟性と機械的強度をバランスよく向上させる観点から、好ましくは0.03g/cm
3以上、より好ましくは0.032g/cm
3以上、更に好ましくは0.035g/cm
3以上である。そして、好ましくは0.12g/cm
3以下、より好ましくは0.11g/cm
3以下、より更に好ましくは0.10g/cm
3以下である。
(発泡倍率)
発泡体の発泡倍率は、密度の逆数として算出され、柔軟性と機械的強度をバランスよく良好にする観点から、好ましくは8cm
3/g以上、より好ましくは9cm
3/g以上、更に好ましくは10cm
3/g以上であり、更に好ましくは15cm
3/g以上である。そして、好ましくは33cm
3/g以下、より好ましくは31cm
3/g以下、更に好ましくは29cm
3/g以下、更に好ましくは25cm
3/g以下である。
【0033】
(架橋度)
発泡体全体の架橋度(質量%)は、柔軟性、機械的強度、成形性をバランスよく向上させる観点から、30〜65%が好ましく、35〜55%がより好ましく、40〜55%が更に好ましく、45〜55%が更に好ましい。
なお、架橋度の測定方法は、後述する実施例に記載の方法により測定することができる。
【0034】
(厚み)
発泡体の厚みは、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは0.8mm以上、更に好ましくは1.2mm以上であり、そして、好ましくは8mm以下、より好ましくは6mm以下、更に好ましくは5mm以下である。発泡体の厚みがこれら範囲であると、柔軟性と成形性の両方を向上させ易く、自動車内装材に成形し易くなる。
【0035】
<発泡体の製造方法>
発泡体は、例えば、樹脂組成物を溶融混練して所望形状に成形した後、電離性放射線を照射して樹脂組成物を架橋し、さらに加熱発泡することにより製造することができる。
具体的には、以下の工程1〜3を有する製造方法がより好ましい。
工程1:樹脂組成物を構成する各成分を溶融混練した後、シート状等の所定形状の樹脂組成物を得る工程
工程2:工程1で得られた樹脂組成物に電離性放射線を照射して、架橋する工程
工程3:工程2で架橋した樹脂組成物を、熱分解型発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させ、発泡体を得る工程
【0036】
工程1では、まず、樹脂組成物を構成する各成分を混練装置に供給して、熱分解型発泡剤の分解温度未満の温度で溶融混練し、その後、溶融混練された樹脂組成物を、好ましくは溶融混練で使用した混練装置でシート状等の所望形状に成形する。
ここで使用される混練装置としては、例えば、射出成形機、押出機(単軸押出機、二軸押出機等)、バンバリーミキサー、ロール等の汎用混練装置等が挙げられるが、射出成形機や押出機が好ましく、射出成形機を用いれば、生産性よく製造することができる。
射出成形機又は押出機の内部の樹脂温度は、好ましくは120〜220℃、より好ましくは140〜200℃、更に好ましくは150〜195℃である。
【0037】
工程2では、所望形状に成形された樹脂組成物には電離性放射線が照射される。
電離性放射線としては、例えば、電子線、α線、β線、γ線、X線等が挙げられる。これらの中では、生産性及び照射を均一に行う観点から、電子線が好ましい。
電離性放射線の照射は、例えば、樹脂組成物をシート状に成形した場合、シートの片面のみに照射してもよいし、両面に照射してもよい。
電離性放射線の加速電圧は、照射する発泡性樹脂組成物の厚さにもよるが、例えば、厚さが1.5〜8mmの場合、400〜1200kVであることが好ましく、500〜1100kVであることがより好ましく、600〜1000kVであることがより好ましい。
電離性放射線の照射線量は、照射する発泡性樹脂組成物の厚さ等を考慮し、表面荒れやひび割れ等生じることなく、所望の架橋度を得ることができる量であれがよいが、通常、0.1〜10Mradが好ましく、0.2〜5Mradがより好ましく、0.3〜3Mradがより好ましい。
【0038】
工程3では、以上のように電離性放射線の照射により樹脂組成物を架橋した後、樹脂組成物を、発泡剤の分解温度以上に加熱して発泡させ、発泡と成形を同時に行い、発泡体を得ることができる。
ここで、樹脂組成物を加熱発泡させる温度は、発泡剤として使用される熱分解型発泡剤の分解温度によるが、通常140〜300℃、好ましくは150〜280℃、より好ましくは160〜260℃である。また、発泡シートは、発泡後、又は発泡されつつMD方向又はCD方向の何れか一方又は双方に延伸されてもよい。
本発明の発泡体は、独立気泡構造であることが好ましいが、連続気泡を含む独立気泡構造であってもよい。
【0039】
[成形体]
本発明の実施形態に係る成形体は、本発明の架橋ポリオレフィン発泡体を公知の方法で成形して得られるものである。成形体を製造するに際し、基材、表皮材等の他の素材を積層し貼り合せて製造することもできる。すなわち、架橋ポリオレフィン発泡体に表皮材等を積層し一体化してなる構成とすることもできる。
基材は成形体の骨格となるものであり、通常、熱可塑性樹脂が用いられる。基材用の熱可塑性樹脂としては、上述したポリオレフィン系樹脂、エチレンとα−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等との共重合体、ABS樹脂、及びポリスチレン樹脂等を適用することができる。
表皮材としては、ポリ塩化ビニルシート、ポリ塩化ビニルとABS樹脂との混合樹脂からなるシート、熱可塑性エラストマーシート、天然繊維や人造繊維を用いた織物、編物、不織布、人工皮革や合成皮革等のレザー等が挙げられる。また、本革や、石や木等から転写した凹凸を付したシリコーンスタンパ等を用いて、表面に皮目や木目模様等の意匠が施された複合成形体としてもよい。
表皮材を貼り合わせる方法としては、例えば、押出ラミネート法、接着剤を塗布した後張り合わせる接着ラミネート法、熱ラミネート法(熱融着法)、ホットメルト法、高周波ウェルダー法等が挙げられるが、如何なる方法でも両者が接着されればよい。
【0040】
本発明の成形体の成形方法としては、スタンピング成形法、真空成形法、圧縮成形法、射出成形法等が挙げられる。これらの中ではスタンピング成形法、真空成形法が好ましい。真空成形法としては、雄引き真空成形法、雌引き真空成形法のいずれも採用しうるが、雄引き真空成形法がより好ましい。
本発明の積層発泡シートを成形してなる成形体は、断熱材、クッション材等として使用することができるが、特に自動車分野において、天井材、ドア、インスツルメントパネル等の自動車内装材として好適に使用できる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各物性の測定方法、及び発泡シートの評価方法は以下のとおりである。
【0042】
(1)発泡体の密度及び発泡倍率
発泡シートの密度(見かけ密度)はJISK7222に準拠して測定した。
発泡倍率は、得られた密度の逆数として算出した。
(2)架橋度
発泡シートから約100mgの試験片を採取し、試験片の質量A(mg)を精秤する。
次に、この試験片を120℃のキシレン30cm
3中に浸漬して24時間放置した後、200メッシュの金網で濾過して金網上の不溶解分を採取、真空乾燥し、不溶解分の質量B(mg)を精秤する。得られた値から、下記式により架橋度(質量%)を算出した。
架橋度(質量%)=100×(B/A)
(3)発泡体の厚み
ダイヤルゲージで計測した。
(4)25%圧縮強度
JIS K6767に準拠して測定した。
(5)抗張力
発泡シートの抗張力を、常温(23℃)で引張試験機を用いてJIS K6767(A法)に準拠して行った。
(6)触感官能評価(ソフト感官能評価)
各実施例、比較例で得られた発泡体を指で押して触感を1〜5の5段階で評価した。なお、“1”が最も硬いことを示し、数字が大きいほど、柔らかいことを示す。
(7)成形性評価
各実施例、比較例で得られた発泡体を表面温度120℃の条件で真空成形機により成形し、直径80mm、高さ56mmの有底円筒のカップ状の成形体に成形した。この成形体を目視で観察し、その成形性を以下の5段階で評価した。
1:全面破れ、2:部分破れ、3:多数スケあり、4:部分スケあり、5:全面均等
【0043】
実施例1〜4、及び比較例1〜3
表1に示す各樹脂成分及び添加剤を、表1に示した部数で単軸押出機に投入して、樹脂温度180℃にて溶融混練して押し出し、所定厚さのシート状の樹脂組成物を得た。このシート状の樹脂組成物の両面に、加速電圧800kVで電子線を1Mradで照射することにより樹脂組成物を架橋した。その後、架橋した樹脂組成物を、熱風オーブンにより220〜280℃で5分間加熱し、その加熱により発泡させて所定厚み及び密度の架橋ポリオレフィン発泡体とした。物性及び評価の結果を表1に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示す樹脂成分及び添加剤の詳細は以下のとおりである。
PP(ランダムPP):エチレン−プロピレンランダム共重合体、日本ポリプロ株式会社製、製品名:ノバテックEG7F、MFR:1.3g/10分、エチレン含有量:3質量%
EPDM:エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、住友化学株式会社製、製品名:エスプレン301、ムーニー粘度(ML
1+4,100℃)=55、エチレン含有量:62質量%、DCPD含有量:3質量%
LL(LLDPE):直鎖状低密度ポリエチレン、ダウケミカル社製、製品名:2036P、MFR:2.5g/10分
発泡剤:アゾジカルボンアミド
架橋助剤:トリメチロールプロパントリメタクリレート
酸化防止剤1:2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール
酸化防止剤2:ジラウリルチオジプロピオネート
【0046】
以上のように、実施例1〜4で得られた架橋ポリオレフィン発泡体は、成形性が良好で、手触り感(ソフト感)も優れていた。
一方、比較例1〜3で得られた架橋ポリオレフィン発泡体は、柔軟性が悪化したり、成形性が良好でなかったりした。