特許第6974318号(P6974318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6974318有機発光デバイス、表示装置、有機発光デバイスからの発光の色温度を制御する方法、有機発光デバイスを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6974318
(24)【登録日】2021年11月8日
(45)【発行日】2021年12月1日
(54)【発明の名称】有機発光デバイス、表示装置、有機発光デバイスからの発光の色温度を制御する方法、有機発光デバイスを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/24 20060101AFI20211118BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211118BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20211118BHJP
   H05B 33/12 20060101ALI20211118BHJP
   H05B 33/26 20060101ALI20211118BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20211118BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20211118BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20211118BHJP
【FI】
   H05B33/24
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   H05B33/12 E
   H05B33/26 Z
   H05B33/22 Z
   H05B33/28
   H05B33/10
【請求項の数】21
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-524216(P2018-524216)
(86)(22)【出願日】2017年9月18日
(65)【公表番号】特表2020-520039(P2020-520039A)
(43)【公表日】2020年7月2日
(86)【国際出願番号】CN2017101996
(87)【国際公開番号】WO2018205477
(87)【国際公開日】20181115
【審査請求日】2020年9月2日
(31)【優先権主張番号】201710335018.0
(32)【優先日】2017年5月12日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】517401532
【氏名又は名称】ホーフェイ・ビーオーイー・オプトエレクトロニクス・テクノロジー・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユアンフイ・グオ
【審査官】 岩井 好子
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0266459(US,A1)
【文献】 特開2010−040304(JP,A)
【文献】 特開2015−056372(JP,A)
【文献】 特表2009−519563(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0225832(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/155925(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第106024846(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/24
H01L 51/50
H05B 33/02
H05B 33/12
H05B 33/26
H05B 33/22
H05B 33/28
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極上にあって、有機発光層を含む有機層と、
前記有機層の前記第1電極から遠い側にある第2電極と、
前記第1電極と前記有機層との間にあるエレクトロクロミック層と、
前記エレクトロクロミック層と前記有機層との間にある第3電極と、を備える
有機発光デバイスであって、
前記有機発光デバイスが、
前記第3電極に対応する第1領域にある第1マイクロキャビティと、
前記第1領域外の、前記第1電極に対応する第2領域にある第2マイクロキャビティと、を備え、
前記第1マイクロキャビティは、屈折率が可変となる
有機発光デバイス
【請求項2】
前記エレクトロクロミック層は、屈折率が可変となる
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
前記第1マイクロキャビティの光学的実効距離は、前記第1電極と前記第3電極との間での電位差への調整によって調整可能である
請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記第3電極は、前記第1領域に形成されており、前記第1電極は、前記第1領域および前記第2領域に形成されている
請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記第1電極は、金属材料を含んでおり、前記第2電極と前記第3電極は、透明電極である
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記第1電極は、アルミニウムおよびシルバーのいずれか一方またはこれらの組み合わせを含む
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
前記第1電極の一方の面を含む平面への前記第1電極と前記第2電極との正投影は、前記平面への前記エレクトロクロミック層と前記第3電極との正投影を覆う
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
前記第3電極と前記エレクトロクロミック層は、正投影が互いに重なっている
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項9】
前記第3電極と前記有機層との間にある平坦化層をさらに備える
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項10】
前記平坦化層は、導電性ポリマー材料を含む
請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項11】
前記平坦化層は、厚さが100nm〜300nmである
請求項に記載の有機発光デバイス。
【請求項12】
前記第1電極は、厚さが10nm〜300nmであり、
前記第2電極は、厚さが10nm〜20nmであり、
前記第3電極は、厚さが5nm〜20nmである
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項13】
前記エレクトロクロミック層は、酸化タングステン、エレクトロクロミック材料であるポリチオフェンまたはその誘導体、エレクトロクロミック材料であるビオロゲンまたはその誘導体、エレクトロクロミック材料であるテトラチアフルバレンまたはその誘導体、およびエレクトロクロミック材料である金属フタロシアニンまたはその誘導体のいずれか一方またはこれらの組み合わせを含む
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項14】
前記第2電極はカソードであり、前記第1電極と前記第3電極はアノードである
請求項1に記載の有機発光デバイス。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の有機発光デバイスを備える表示装置。
【請求項16】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の有機発光デバイスからの発光の色温度を制御する方法であって、
前記第1電極に第1電圧信号を印加するステップと、
前記第2電極に第2電圧信号を印加するステップと、
前記第3電極に第3電圧信号を印加するステップと、を含む
方法。
【請求項17】
前記第1電極と前記第3電極との間での電位差、前記第2電極と前記第3電極との間での電位差、および前記第1電極と前記第2電極との間での電位差のいずれか一方またはこれらの組み合わせを調整することで、前記有機発光デバイスからの発光の色温度を調整するステップをさらに含む
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記有機発光デバイスは、
前記第3電極に対応する第1領域にある第1マイクロキャビティと、
前記第1領域外の、前記第1電極に対応する第2領域にある第2マイクロキャビティと、を備え、
前記方法は、
前記第1電極と前記第3電極との間での電位差、および前記第2電極と前記第3電極との間での電位差のいずれか一方またはこれらの組み合わせを調整することで、前記第1マイクロキャビティからの発光の色温度を調整するステップをさらに含む
請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記有機発光デバイスは、
前記第3電極に対応する第1領域にある第1マイクロキャビティと、
前記第1領域外の、前記第1電極に対応する第2領域にある第2マイクロキャビティと、を備え、
前記方法は、
前記第1電極と前記第2電極との間での電位差を調整することで、前記第2マイクロキャビティからの発光の色温度を調整するステップをさらに含む
請求項16に記載の方法。
【請求項20】
有機発光デバイスを製造する方法であって、
ベース基板上に第1電極を形成するステップと、
前記第1電極の前記ベース基板から遠い側にエレクトロクロミック層を形成するステップと、
前記エレクトロクロミック層の前記第1電極から遠い側に第3電極を形成するステップと、
前記第3電極および前記第1電極の前記ベース基板から遠い側に有機層を形成するステップと、
前記有機層の前記第1電極から遠い側に第2電極を形成するステップと、を含み、
前記有機層を形成するステップは、有機発光層を形成することを含み、
前記有機発光デバイスが、
前記第3電極に対応する第1領域にある第1マイクロキャビティと、
前記第1領域外の、前記第1電極に対応する第2領域にある第2マイクロキャビティと、を備え、
前記第1マイクロキャビティは、屈折率が可変となる
方法。
【請求項21】
前記エレクトロクロミック層と前記第3電極は、単一のマスク板を用いて単一のパターン形成過程において形成される
請求項20に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年5月12日に出願された中国特許出願201710335018.0号の優先権を主張するものであり、この先の出願の開示全体をここに参照のために取り込む。
【0002】
本発明は、表示技術に関し、より詳細には、有機発光デバイス、表示装置、有機発光デバイスからの発光の色温度を制御する方法、並びに有機発光デバイスを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)表示装置は、自己発光型装置であり、バックライトを必要としない。OLED表示装置は、従来の液晶表示(LCD)装置に比べてより鮮やかな色、またより広い色域を提供する。さらに、OLED表示装置は、典型的なLCDよりも柔軟性があり、薄く、軽くすることができる。
【0004】
OLED表示装置は、典型的には、アノードと、有機発光層を含む有機層と、カソードとを含む。OLEDは、ボトムエミッション型OLEDまたはトップエミッション型OLEDのいずれかであり得る。ボトムエミッション型OLEDでは、光はアノード側から取り出される。ボトムエミッション型OLEDでは、アノードは一般に透明であり、カソードは一般に反射性を持っている。トップエミッション型OLEDでは、カソード側から光が取り出される。カソードは光透過可能であり、アノードは反射性を持っている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1電極と、前記第1電極上にあって、有機発光層を含む有機層と、前記有機層の前記第1電極から遠い側にある第2電極と、前記第1電極と前記有機層との間にあるエレクトロクロミック層と、前記エレクトロクロミック層と前記有機層との間にある第3電極と、を備える有機発光デバイスを提供する。
【0006】
前記エレクトロクロミック層は、屈折率が可変となってもよい。
【0007】
前記有機発光デバイスは、前記第3電極に対応する第1領域にある第1マイクロキャビティと、前記第1領域外の、前記第1電極に対応する第2領域にある第2マイクロキャビティと、を備え、前記第1マイクロキャビティは、屈折率が可変となってもよい。
【0008】
前記第1マイクロキャビティの光学的実効距離は、前記第1電極と前記第3電極との間での電位差への調整によって調整可能であってもよい。
【0009】
前記第3電極は、実質的に前記第1領域に形成されてもよく、前記第1電極は、実質的に前記第1領域および前記第2領域に形成されてもよい。
【0010】
前記第1電極は、金属材料を含んでもよく、前記第2電極と前記第3電極は、実質的に透明電極であってもよい。
【0011】
前記第1電極は、アルミニウムおよびシルバーのいずれか一方またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0012】
前記第1電極の一方の面を含む平面への前記第1電極と前記第2電極との正投影は、前記平面への前記エレクトロクロミック層と前記第3電極との正投影を覆ってもよい。
【0013】
前記第3電極と前記エレクトロクロミック層は、正投影が実質的に互いに重なってもよい。
【0014】
前記有機発光デバイスは、前記第3電極と前記有機層との間にある平坦化層をさらに備えてもよい。
【0015】
前記平坦化層は、導電性ポリマー材料を含んでもよい。
【0016】
前記平坦化層は、厚さが約100nm〜約300nmであってもよい。
【0017】
前記第1電極は、厚さが約10nm〜約300nmであり、前記第2電極は、厚さが約10nm〜約20nmであり、前記第3電極は、厚さが約5nm〜約20nmであってもよい。
【0018】
前記エレクトロクロミック層は、酸化タングステン、エレクトロクロミック材料であるポリチオフェンまたはその誘導体、エレクトロクロミック材料であるビオロゲンまたはその誘導体、エレクトロクロミック材料であるテトラチアフルバレンまたはその誘導体、およびエレクトロクロミック材料である金属フタロシアニンまたはその誘導体のいずれか一方またはこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0019】
前記第2電極はカソードであり、前記第1電極と前記第3電極はアノードであってもよい。
【0020】
本発明の他の一態様は、本明細書に記載の有機発光デバイス、または本明細書に記載の方法によって製造された有機発光デバイスを含む表示装置を提供する。
【0021】
本発明の他の一態様は、本明細書に記載の有機発光デバイス、または本明細書に記載の方法によって製造された有機発光デバイスからの発光の色温度を制御する方法であって、前記第1電極に第1電圧信号を印加するステップと、前記第2電極に第2電圧信号を印加するステップと、前記第3電極に第3電圧信号を印加するステップと、を含む方法を提供する。
【0022】
前記方法は、前記第1電極と前記第3電極との間での電位差、前記第2電極と前記第3電極との間での電位差、および前記第1電極と前記第2電極との間での電位差のいずれか一方またはこれらの組み合わせを調整することで、前記有機発光デバイスからの発光の色温度を調整するステップをさらに含んでもよい。
【0023】
前記有機発光デバイスは、前記第3電極に対応する第1領域にある第1マイクロキャビティと、前記第1領域外の、前記第1電極に対応する第2領域にある第2マイクロキャビティと、を備え、前記方法は、前記第1電極と前記第3電極との間での電位差、および前記第2電極と前記第3電極との間での電位差のいずれか一方またはこれらの組み合わせを調整することで、前記第1マイクロキャビティからの発光の色温度を調整するステップをさらに含んでもよい。
【0024】
前記有機発光デバイスは、前記第3電極に対応する第1領域にある第1マイクロキャビティと、前記第1領域外の、前記第1電極に対応する第2領域にある第2マイクロキャビティと、を備え、前記方法は、前記第1電極と前記第2電極との間での電位差を調整することで、前記第2マイクロキャビティからの発光の色温度を調整するステップをさらに含んでもよい。
【0025】
本発明の他の一態様は、有機発光デバイスを製造する方法であって、ベース基板上に第1電極を形成するステップと、前記第1電極の前記ベース基板から遠い側にエレクトロクロミック層を形成するステップと、前記エレクトロクロミック層の前記第1電極から遠い側に第3電極を形成するステップと、前記第3電極および前記第1電極の前記ベース基板から遠い側に有機層を形成するステップと、前記有機層の前記第1電極から遠い側に第2電極を形成するステップと、を含み、前記有機層を形成するステップは、有機発光層を形成することを含む方法を提供する。
【0026】
前記エレクトロクロミック層と前記第3電極は、単一のマスク板を用いて単一のパターン形成過程において形成されてもよい。
【0027】
以下の図面は、開示された様々な実施形態による例示的な目的のための単なる例であり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1A図1Aは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの構造を示す模式図である。
図1B図1Bは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの構造を示す模式図である。
図2図2は、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
図3A図3Aは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの製造プロセスを示す。
図3B図3Bは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの製造プロセスを示す。
図3C図3Cは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの製造プロセスを示す。
図3D図3Dは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの製造プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明について実施形態を参照しながらより具体的に説明する。なお、いくつかの実施形態に係る以下の説明は、例示や説明の目的で提供されたものに過ぎず、本発明を網羅または制限するためのものではない。
【0030】
従来の有機発光デバイスでは、その発光の色温度は、有機発光デバイスに印加される電圧を調節することでしか調節できない。従来の有機発光デバイスでは、全色温度をカバーすることは困難である。さらに、大きな色温度調整は、アノードとカソードとの間の大きな電圧変化を必要とし、その結果、放出された光の光強度の変化が比較的大きくなる。
【0031】
したがって、本発明は、従来技術の限界や欠点に起因する多くの問題を解決するために、とりわけ、有機発光デバイス、表示装置、有機発光デバイスからの発光の色温度を制御する方法、並びに有機発光デバイスを製造する方法を提供する。本発明の一態様は、有機発光デバイスを提供する。いくつかの実施形態では、有機発光デバイスは、第1電極と、前記第1電極上にある有機層と、前記有機層の前記第1電極から遠い側にある第2電極と、前記第1電極と前記有機層との間にあるエレクトロクロミック層と、前記エレクトロクロミック層と前記有機層との間にある第3電極と、を備える。有機層は、有機発光層を含む。第3電極およびエレクトロクロミック層は、第1領域に実質的に形成されてもよく、第1電極および第2電極は、第1領域よりも大きくかつ該第1領域を含む領域に実質的に形成されてもよい。第1電極の一方の面を含む平面への第1電極および第2電極の正投影は、該平面へのエレクトロクロミック層および第3電極の正投影を覆ってもよい。従来の有機発光デバイスに比べると、本発明に係る有機発光デバイスからの発光の色温度は、該発光の光強度に影響を与えることなく、比較的広い範囲にわたって調整することができる。
【0032】
図1Aは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの構造を示す模式図である。図1Bは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの構造を示す模式図である。図1Aおよび図1Bに示すように、いくつかの実施形態における有機発光ダイオード素子は、ベース基板1上にある第1電極2と、第1電極2のベース基板1から遠い側にあるエレクトロクロミック層3と、エレクトロクロミック層3の第1電極2から遠い側にある第3電極4と、第3電極4および第1電極2のベース基板1から遠い側にある有機層6と、有機層6の第1電極2から遠い側にある第2電極10と、を備える。
【0033】
図1Aに示すように、いくつかの実施形態では、第3電極4は、実質的に第1領域Aにある。第1電極2および第2電極10は、第1領域Aよりも大きく、かつ第1領域Aを含む領域に実質的にある。例えば、図1Aでは、第1電極2および第2電極10は、実質的に第1領域Aおよび第2領域Bの両方にある。エレクトロクロミック層3は、必ずしも第1領域Aにあるとは限らない。エレクトロクロミック層3は、第1領域Aよりも大きく、かつ第1領域Aを含む領域に実質的にあってもよい。例えば、エレクトロクロミック層3は、実質的に第1領域Aおよび第2領域Bの両方にある。エレクトロクロミック層3は、第1電極2と第3電極4との間にある。第3電極4は、エレクトロクロミック層3と有機層6との間にある。第1電極2の一方の面(例えば、底面)を含む平面への第1電極2、第2電極10およびエレクトロクロミック層3の正投影は、該平面への第3電極4の正投影を覆ってもよい。
【0034】
図1Bに示すように、いくつかの実施形態では、第3電極4およびエレクトロクロミック層3は、実質的に第1領域Aにある。第1電極2および第2電極10は、第1領域よりも大きく該第1領域を含む領域に実質的にある。例えば、図1Bでは、第1電極2および第2電極10は、第1領域Aおよび第2領域Bの両方に実質的にある。エレクトロクロミック層3は、第1電極2と第3電極4との間にある。第3電極4は、エレクトロクロミック層3と有機層6との間にある。第1電極2の一方の面(例えば、底面)を含む平面への第1電極2と第2電極10との正投影は、該平面へのエレクトロクロミック層3と第3電極4との正投影を覆ってもよい。第3電極4とエレクトロクロミック層3は、正投影が実質的に互いに重なってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、有機発光デバイスは、第3電極4(およびエレクトロクロミック層3)に対応する第1領域Aにある第1マイクロキャビティ100と、第2領域Bにある第2マイクロキャビティ200とを含む。第1マイクロキャビティ100の光学距離は、第1電極2と第3電極4との間での電位差を調整することによって調整されてもよい。
【0036】
エレクトロクロミック層3は、エレクトロクロミック材料からなる。ここで、「エレクトロクロミック」という用語とは、電位差が印加されるとその光学特性(例えば、反射率、透過率、吸光度、および屈折率のうちの1つ以上)について安定で可逆的な変化を示す材料または層を指す。エレクトロクロミック材料または層は、電位差が印加されると色が変化してもよい。また、エレクトロクロミック材料または層は、電位差が印加されると透明性が変化してもよい。エレクトロクロミック材料は、無機エレクトロクロミック材料であってもよい。無機エレクトロクロミック材料の例としては、WO、MoO、Nbなどの遷移金属酸化物が挙げられる。有機エレクトロクロミック材料の例としては、ポリチオフェンまたはその誘導体、ビオロゲンまたはその誘導体、テトラチアフルバレンまたはその誘導体、金属フタロシアニンまたはその誘導体、ピリジン、アミノキノン、およびアジン化合物が挙げられる。
【0037】
図1Bに示すように、いくつかの実施形態におけるエレクトロクロミック層3は、(各有機発光デバイス内で)1つのエレクトロクロミックブロックを含む。エレクトロクロミック層3は、複数のエレクトロクロミックブロック、例えば、2つや3つ、またはそれ以上のエレクトロクロミックブロックを含んでもよい。
【0038】
有機層6は、少なくとも有機発光層8を含む。第1電極2と第2電極10に電圧信号が印加されると、正電荷キャリア(正孔)と負電荷キャリア(電子)がそれぞれ生成される。正電荷キャリアおよび負電荷キャリアは、有機発光層8において再結合して、励起子を形成する。励起子が基底状態に戻ると、そのエネルギは、有機発光層8における有機発光材料に伝達される。有機発光材料は、基底状態から励起状態に励起される。有機発光材料が基底状態に戻ると、そのエネルギは、放射崩壊によって光の形で放出される。有機発光層8は、厚さが約5nm〜約50nmであってもよい。
【0039】
カソードから発光層に電子を注入しかつアノードから発光層に正孔を注入するように、アノードとカソードとの間に電場が印加されると、電子と正孔との再結合で放出されたエネルギは、一定の発振周波数で励起子と光子との間を振動する。光子は、マイクロキャビティ内で、脱励起原子によって吸収されることがある。そして、脱励起原子は、再励起され、基底状態に戻ると光子を放出する。この過程は、マイクロキャビティ内で複数回繰り返されてもよく、その結果、発光ピークで発光強度が向上する。
【0040】
いくつかの実施形態では、第1電極2および第2電極10のうち、一方はアノードであり、他方はカソードである。外部電場の場合、アノードは正電荷キャリア(正孔)を生成しており、カソードは負電荷キャリア(電子)を生成する。第1電極2はアノードであり、第2電極10はカソードであってもよい。
【0041】
有機発光デバイスは、トップエミッション型有機発光デバイスであってもよく、ボトムエミッション型の有機発光デバイスであってもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、第1電極2は金属材料からなり、第2電極10は透明材料からなり、例えば、第2電極10は透明電極である。金属材料からなる第1電極2は、有機発光層8からの発光を、第2電極10に向かう方向に反射してから、第2電極10を通過させるように配置される反射ミラーであってもよい。ここで、「実質的に透明」という用語とは、可視光線透過率が少なくとも50%(例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、や少なくとも95%)であることを意味する。
【0043】
第1電極2は、アルミニウム、シルバー、またはそれらの組み合わせからなってもよい。第2電極10は、インジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物のような透明な金属酸化物からなってもよい。
【0044】
いくつかの実施形態では、第3電極4は透明材料からなり、例えば、第3電極4は透明電極である。これにより、有機発光層8からの発光は、第3電極4を通過して第1電極2に到達し、第2電極10に向かう方向に反射されることができる。第3電極4は、インジウム錫酸化物またはインジウム亜鉛酸化物のような透明な金属酸化物からなってもよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、第3電極4は、第1マイクロキャビティ100のアノードであり、第2電極10は、第1マイクロキャビティ100のカソードである。第1電極2は、第2マイクロキャビティ200のアノードであり、第2電極10は、第2マイクロキャビティ200のカソードである。いくつかの実施形態では、マイクロキャビティの長さ方向(例えば、発光面に対して実質的に垂直な方向)に沿った光強度I(λ)は、以下の式によって得られる。
【0046】
【数1】
【0047】
ただし、λは、有機発光層8からの発光の波長を表しており、xは、マイクロキャビティ内の、有機発光層8とアノードとの間の距離を表しており、Rは、金属ミラー(例えば、第1電極2)の鏡面反射率を表しており、Rは、誘電体ミラー(例えば、酸化ケイ素または酸化チタンのような誘電体材料からなるミラー)の鏡面反射率を表しており、Lはマイクロキャビティの光学的実効距離を表しており、E(λ)は、原スペクトル(自由空間スペクトル)の分布を表す。
【0048】
マイクロキャビティの光学的実効距離は、以下の式から得られる。
【0049】
【数2】
【0050】
orgは、マイクロキャビティにおける全層の実効屈折率を表しており、dorgは、マイクロキャビティにおける全層の総厚を表しており、φは、金属ミラーの反射位相シフトを表しており、φは、誘電体ミラーの反射位相シフトを表す。
【0051】
ここで、「マイクロキャビティ」という用語とは、固体発光デバイスにおける共振光キャビティを指す。例えば、本明細書では、第1電極2および第2電極10は、マイクロキャビティにおいて2つの反射ミラーを構成する。マイクロキャビティは、第1電極2と第2電極10との間の層の光路長の合計に実質的に等しい光学距離を有してもよい。ここで、「光路長」という用語とは、測定光が屈折率nを有する媒質を通過する距離と、測定光が進む媒体の屈折率nとを掛けることで得られた値を指しており、例えば、光路長は、測定光が屈折率nを有する媒質を通過するのにかかる時間で測定光が真空中を移動する距離に相当する。
【0052】
第1マイクロキャビティ100におけるアノードとカソードとの間での電位差が、第2マイクロキャビティ200におけるアノードとカソードとの間での電位差と実質的に同じであれば、第1マイクロキャビティ100における有機発光層8からの発光の波長も、第2マイクロキャビティ200における有機発光層8からの発光の波長と実質的に同じである。上記式(1)および式(2)に基づいて、この条件の下で、第1マイクロキャビティ100における有機発光層8からアノード(第3電極4)までの距離H1が第2マイクロキャビティ200における有機発光層8からアノード(第1電極2)までの距離H2とは異なるため、第1マイクロキャビティ100からの発光の光強度は、第2マイクロキャビティ200からの発光の光強度とは異なる。第1マイクロキャビティ100および第2マイクロキャビティ200におけるアノードとカソードとの間での電位差が実質的に同じであれば、第1マイクロキャビティ100からの発光と、第2マイクロキャビティ100からの発光とは、異なる波長および異なる色温度を有する。
【0053】
第2マイクロキャビティ200における有機発光層8からアノード(第1電極2)までの距離H2が、第1マイクロキャビティ100における有機発光層8からアノード(第3電極4)までの距離H1よりも大きいため、第1マイクロキャビティ100および第2マイクロキャビティ200におけるアノードとカソードとの間での電位差が実質的に同じであれば、第2マイクロキャビティ200からの発光の光強度は、第1マイクロキャビティ100からの発光の光強度よりも大きい。この状態で、第1マイクロキャビティ100からの発光と第2マイクロキャビティ200からの発光とを比較すると、第2マイクロキャビティ200からの発光は、スペクトルの長波長側でのより高いスペクトルエネルギー分布、より低い色温度、および赤色シフトを有する。一方、第1マイクロキャビティ100からの発光は、スペクトルの短波長側でのより高いスペクトルエネルギー分布(例えば、第1マイクロキャビティ100からの発光は、第2マイクロキャビティ200からの発光よりも小さい波長を有する)、比較的に高い色温度、および青色シフトを有する。したがって、第1マイクロキャビティ100および第2マイクロキャビティ200におけるアノードとカソードとの間での電位差が実質的に同じであれば、第1マイクロキャビティ100からの発光と第2マイクロキャビティ200からの発光とは、色温度が異なる。また、第1マイクロキャビティ100および第2マイクロキャビティ200におけるアノードとカソードとの間での電位差の調整範囲が実質的に同じであれば、第1マイクロキャビティ100と第2マイクロキャビティ200とは、色温度の調整範囲が異なる。
【0054】
したがって、第1色温度を有した第1マイクロキャビティ100からの発光と、第2色温度を有した第2マイクロキャビティ200からの発光との合成光は、第3色温度を有する。第3色温度を有する合成光は、有機発光デバイスから発光する。第1色温度、第2色温度、および第3色温度は、互いに異なってもよい。したがって、第1色温度と第2色温度との両方が第3色温度の値に影響を及ぼし、有機発光デバイスからの発光の色温度への調整範囲を効果的に増加させることができる。
【0055】
本発明の有機発光デバイスでは、有機発光デバイスからの発光の色温度を多様な方法で調節することができる。第一に、第1電極2と第2電極10との間での電位差を調整することで、第2マイクロキャビティ200の長さ方向に沿った光強度I(λ)を調整することができ、それによって有機発光デバイスからの発光の色温度が調整される。第二に、第3電極4と第2電極10との間での電位差を調整することで、第1マイクロキャビティ100からの発光の色温度を調整することができる。第三に、第3電極4と第1電極2との間での電位差を調整することで、第1マイクロキャビティ100からの発光の色温度を調整することもできる。
【0056】
いくつかの実施形態では、第3電極4と第1電極2との間での電位差を調整することで、エレクトロクロミック層3の屈折率、および第1マイクロキャビティ100内の全層の実効屈折率を調整することができる。上記式(2)に基づいて、第1マイクロキャビティ100の光学的実効距離、または第1マイクロキャビティ100からの発光の光強度と色温度も、第3電極4と第1電極2との間での電位差を調整することによって調整できる。
【0057】
本発明に係る有機発光デバイスにおけるエレクトロクロミック層3を有することで、第1マイクロキャビティ100の光学的実効距離を調整可能とされ、第1マイクロキャビティ100からの発光または有機発光デバイスからの発光の色温度の調整範囲を効果的に増加させる。
【0058】
(第3色温度を有する)有機発光デバイスからの発光は、(第1色温度を有する)第1マイクロキャビティ100からの発光と(第2色温度を有する)第2マイクロキャビティ200からの発光との合成光であり、第3色温度の変化は、第1色温度の変化と第2色温度の変化とを合成したものである。第1色温度および第2色温度に関わる比較的小さな変化は、第3色温度に関わる比較的大きな変化をもたらす。したがって、第1マイクロキャビティ100または第2マイクロキャビティ200におけるアノードとカソードとの間での電位差の小さな変化は、有機発光デバイスの光強度をあまり変化させずに、より大きな色温度変化をもたらし得る。
【0059】
第1電極2は、厚さが約10nm〜約300nm、例えば、約10nm〜約100nm、約100nm〜約200nm、または約200nm〜約300nmであってもよい。第1電極2の厚さを10nm以上とすることで、第1電極2は比較的高い反射率を維持することができる。第1電極2の厚さを300nm以下とすることで、有機発光デバイスの薄型化を図ることができる。
【0060】
第2電極10は、厚さが約10nm〜約20nmであってもよい。第3電極4は、厚さが約5nm〜約20nmであってもよい。第2電極10および第3電極4がこれらの範囲での厚さを有することで、第2電極10および第3電極4は、比較的高い導電性を維持するとともに、有機発光デバイスを薄くすることができる。
【0061】
図1Aおよび図1Bに示すように、いくつかの実施形態における有機層6は、正孔輸送層7および電子輸送層9をさらに含む。正孔輸送層7は、第3電極4(アノード)と有機発光層8との間にある。電子輸送層9は、有機発光層8と第2電極10(カソード)との間にある。正孔輸送層7は、有機発光デバイスの正孔輸送効率を向上させる。電子輸送層9は、有機発光デバイスの電子輸送効率を向上させる。ホール輸送層7は、厚さが約5nm〜約50nmであってもよい。電子輸送層9は、厚さが約5nm〜約50nmであってもよい。
【0062】
図1Aおよび図1Bに示すように、いくつかの実施形態における有機発光デバイスは、第一電極2と有機層6との間、および第3電極4と有機層6との間にある平坦化層5をさらに含む。平坦化層は、導電性ポリマー材料を含んでもよい。導電性ポリマー材料の例としては、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート)(PEDOT:PSS)が挙げられる。導電性高分子材料からなる平坦化層5は、平坦化機能を有するだけでなく、電気を通して有機層5に正孔を注入する。
【0063】
平坦化層5は、厚さが約100nm〜約300nmであってもよい。平坦化層5が100nm以上の厚さを有することで、有機発光デバイスを十分に平坦化することができる。平坦化層5が300nm以下の厚さを有することで、有機発光デバイスをより薄くすることができる。
【0064】
本発明に係る有機発光デバイスでは、有機発光デバイスからの発光の色温度は、第2電極10と第3電極4との間での電位差を調整し、また、第1電極2と第2電極10との間での電位差を調整することによって調整できる。さらに、有機発光デバイスからの発光の色温度は、エレクトロクロミック層3の屈折率を変化させる、第1電極2と第3電極4との間での電位差を調整することによって調整できる。その結果、本発明に係る有機発光デバイスは、色温度の調整範囲が非常に広い。
【0065】
本発明の他の一態様は、有機発光デバイスを駆動する方法、例えば有機発光デバイスからの発光の色温度を制御する方法を提供する。いくつかの実施形態では、この方法は、第1電極に第1電圧信号を印加するステップと、第2電極に第2電圧信号を印加するステップと、第3電極に第3電圧信号を印加するステップと、を含む。該方法は、第1マイクロキャビティからの発光の色温度および/または第2マイクロキャビティからの発光の色温度を調整することで、有機発光デバイスからの発光の色温度を調整することをさらに含んでもよい。第1マイクロキャビティからの発光の色温度は、第1電極と第3電極との間での電位差を調整することによって調整されてもよい。第1マイクロキャビティからの発光の色温度は、第2電極と第3電極との間での電位差を調整することによって調整されてもよい。第2マイクロキャビティからの発光の色温度は、第1電極と第2電極との間での電位差を調整することによって調整されてもよい。有機発光デバイスからの発光の色温度は、第1電極と第3電極との間での電位差への調整、第2電極と第3電極との間での電位差への調整、および第1電極と第2電極との間での電位差への調整の組み合わせによって調整されてもよい。
【0066】
本発明の他の一態様は、有機発光デバイスを製造する方法を提供する。図2は、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスの製造方法を示すフローチャートである。図2に示すように、いくつかの実施形態における方法は、ベース基板上に第1電極を形成するステップと、第1電極のベース基板から遠い側にエレクトロクロミック層を形成するステップと、エレクトロクロミック層の第1電極から遠い側に第3電極を形成するステップと、第3電極および第1電極のベース基板から遠い側に有機層を形成するステップと、有機層の第1電極から遠い側に第2電極を形成するステップと、を含む。有機層を形成するステップは、有機発光層を形成することを含む。該有機発光デバイスは、第1電極の一方の面を含む平面への第1電極と第2電極との正投影が、該平面へのエレクトロクロミック層と第3電極との正投影を覆ってもよい。第3電極とエレクトロクロミック層は、正投影が実質的に互いに重なってもよい。
【0067】
様々な適切な材料および様々な適切な製造方法を使用して、第1電極を作製することができる。例えば、金属材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスまたはスパッタリングプロセス、例えば、マグネトロンスパッタリングプロセスによって堆積されてもよい。堆積された金属材料層は、厚さが約10nm〜約300nmであってもよい。そして、堆積された金属材料層は、例えば、リソグラフィプロセスによってパターン化される。第1電極を作製するための適切な金属材料の例としては、アルミニウム、シルバー、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
様々な適切な材料および様々な適切な製造方法を使用して、エレクトロクロミック層を作製することができる。例えば、エレクトロクロミック材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスによって堆積されてもよい。そして、堆積されたエレクトロクロミック材料層は、例えば、リソグラフィプロセスによってパターン化される。エレクトロクロミック層を作製するための適切なエレクトロクロミック材料の例としては、酸化タングステン、エレクトロクロミック材料であるポリチオフェンまたはその誘導体、エレクトロクロミック材料であるビオロゲンまたはその誘導体、エレクトロクロミック材料であるテトラチアフルバレンまたはその誘導体、やエレクトロクロミック材料である金属フタロシアニンまたはその誘導体が挙げられる。
【0069】
種々の適切な材料および種々の適切な製造方法を使用して、第3電極を作製することができる。例えば、透明導電材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスまたはスパッタリングプロセス、例えば、マグネトロンスパッタリングプロセスによって堆積されてもよい。堆積された導電材料層は、厚さが約5nm〜約20nmであってもよい。そして、堆積された導電材料層は、例えば、リソグラフィプロセスによってパターン化される。第3電極を作製するための適切な金属材料の例としては、インジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物のような金属酸化物が挙げられる。
【0070】
エレクトロクロミック層および第3電極は、単一のプロセスで、例えば単一のマスクプレートを使用してパターン化される。まずエレクトロクロミック材料層をベース基板上に堆積させ、その後、透明な導電材料層をエレクトロクロミック層のベース基板から遠い側に堆積させてもよい。エレクトロクロミック材料層と透明導電材料層は、単一のマスク板を用いてパターニングされることで、エレクトロクロミック層と第3電極が得られる。
【0071】
様々な適切な材料および様々な適切な製造方法を用いて、有機発光層を作製することができる。例えば、有機発光材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスまたはコーティングプロセスによって堆積されてもよい。堆積された有機発光材料層は、厚さが約5nm〜約50nmであってもよい。有機発光層は、単層構造であってもよく、多層構造を有し複数のサブ層を含んでもよい。
【0072】
有機層を形成するステップは、例えば第1電極と有機発光層との間に、正孔輸送層を形成することをさらに含んでもよい。種々の適切な材料および種々の適切な製造方法を使用して、正孔輸送層を作製することができる。例えば、正孔輸送材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスまたはコーティングプロセスによって堆積されてもよい。堆積された正孔輸送材料層は、厚さが約5nm〜約50nmであってもよい。適切な正孔輸送材料の例としては、N、N’−ビス−(1−ナフタレニル)−N、N’−ビス−フェニル−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(NPB)が挙げられる。
【0073】
有機層を形成するステップは、例えば有機発光層と第2電極との間に、電子輸送層を形成することをさらに含んでもよい。様々な適切な材料および種々の適切な製造方法を使用して、電子輸送層を作製することができる。例えば、電子輸送材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスまたはコーティングプロセスによって堆積されてもよい。堆積された電子輸送材料層は、厚さが約5nm〜約50nmであってもよい。適当な電子輸送材料の例としては、4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(Bphen)が挙げられる。
【0074】
様々な適切な材料および様々な適切な製造方法を使用して、第2電極を作製することができる。例えば、透明導電材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスまたはスパッタリングプロセス、例えば、マグネトロンスパッタリングプロセスによって堆積されてもよい。堆積された導電材料層は、厚さが約10nm〜約20nmであってもよい。そして、堆積された導電材料層は、例えば、リソグラフィプロセスによってパターン化される。第2電極を作製するための適切な金属材料の例としては、インジウムスズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物のような金属酸化物が挙げられる。
【0075】
該方法は、第3電極と有機層との間に平坦化層を形成することをさらに含んでもよい。様々な適切な材料および様々な適切な製造方法を使用して、平坦化層を作製することができる。例えば、平坦化材料は、プラズマ加速化学蒸気相蒸着(PECVD)プロセスまたはスパッタリングプロセス、例えば、マグネトロンスパッタリングプロセスによって堆積されてもよい。堆積された平坦化材料層は、厚さが約100nm〜約300nmであってもよい。そして、堆積された平坦化材料層は、例えば、リソグラフィプロセスによってパターン化される。平坦化層を形成するための適切な金属材料の例としては、PEDOT:PSSのような導電性ポリマー材料が挙げられる。
【0076】
図3A図3Dは、本発明に係るいくつかの実施形態における有機発光デバイスを製造するプロセスを示す。図3Aに示すように、ベース基板1上に第1電極2が形成され、第1電極2のベース基板1から遠い側にエッチング停止材料層3’が形成され、エッチング停止材料層3’の第1電極2から遠い側に透明導電材料層4’が形成されている。図3Bに示すように、透明導電材料層4’のエッチング停止材料層3’から遠い側にフォトレジスト層11が形成されている。フォトレジスト層11は、マスクプレート12を用いて形成されたフォトレジストパターンを有する。フォトレジストパターンは、第1領域Aおよび第2領域Bを有する。フォトレジスト材料は、第1領域Aにおいて除去される。図3Cに示すように、エッチング停止材料層3’および透明導電材料層4’は、エッチングされることで、第1領域Aにおけるエッチング停止材料および透明導電材料が除去され、それによって第1領域Aにエッチング停止層2および第3電極4が形成される。図3Dに示すように、第1領域Aにおける第3電極4のベース基板1から遠い側、および第2領域Bにおける第1電極2のベース基板1から遠い側に、平坦化層5が形成される。続いて、平坦化層5のベース基板1から遠い側に、(正孔輸送層7、有機発光層8、および電子輸送層9を含む)有機層6が形成され、かつ有機層6の平坦化層5から遠い側に第2電極10が形成されている。
【0077】
本発明の他の一態様は、本明細書に記載の有機発光デバイス、または本明細書に記載の方法によって製造された有機発光デバイスを有する表示パネルを提供する。別の態様では、本発明は、本明細書に記載の有機発光デバイス、または本明細書に記載の方法によって製造された有機発光デバイスを有する表示装置を提供する。適切な表示装置の例としては、電子ペーパー、携帯電話、タブレットコンピュータ、テレビ、モニタ、ノートブックコンピュータ、デジタルアルバム、GPSなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明の実施形態について前述した説明は、例示または説明するためのものである。前述した説明は、本発明を網羅すること、または、詳細な形態や例示的実施例に限定することを意図していない。従って、前述した説明は、限定ではなく例示とみなされるべきである。当業者であれば、様々な変形や変更が行えることは明らかであろう。実施形態は、本発明の原理または本発明を実行する最良の態様を説明する目的で提供されたものであり、それにより、当業者にとっては、実際的または意図的な適用に応じて、本発明が様々な実施形態および変更態様として実施することができることは明らかである。本発明の範囲は、添付した特許請求の範囲及びその均等物によって定義されることが意図されており、ここで使用されるすべての用語は特に説明しない限り、それらの最も広くて合理的な意味を表す。従って、「発明」、「本発明」などのような用語は、必ずしも請求の範囲を特定の実施形態に限定するものではない。本発明の実施形態に関する記載は、特に限定する意味ではなく、そのような限定も推測されるべきではない。本発明は、添付した特許請求の範囲の精神や範囲のみによって限定されるものである。また、これらの請求項は、名詞または構成要素が続く「第1」、「第2」などを使用する場合がある。数を特定しない限り、そのような用語は、名称と理解されるべき、構成要素の数量を制限するように解釈されるものではない。上記した利点および効果のいずれかは、すべての実施形態に適用されない場合がある。当業者であれば、特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲から逸脱することなしに、前述した実施形態に様々な変更を行うことができるのが好ましい。また、本開示における構成要素または部品は、クレームされているかどうかに関係なく、公衆に献呈されたとはいえない。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D